JP2010234452A - 表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体の表面に、Ti化合物層からなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆cBN基焼結工具において、工具基体と上記硬質被覆層の間に、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の構成成分であるバインダーの非晶質層、非晶質ほう化チタン層、非晶質窒化珪素層の何れかからなる非晶質密着層を形成する。
【選択図】 なし
Description
さらに、cBN工具基体と硬質被覆層との密着強度を向上させるために、cBN工具基体表面にイオン注入を行って拡散層を形成し、その拡散層を非晶質化することも知られている。
(a)cBN工具基体表面に硬質被覆層を形成する前に、cBN工具基体表面にArボンバード処理を行うことにより、cBN工具基体表面に存在するバインダー成分のみを非晶質層に改質すると、この層が非晶質密着層として作用し、cBN工具基体と硬質被覆層との密着接合強度を高めることができる。
(b)cBN工具基体表面に硬質被覆層を形成する前に、硬質の非晶質ほう化チタン(TiB2)層、非晶質窒化珪素(Si3N4)層を形成すると、この非晶質層が、cBN工具基体と硬質被覆層との密着接合強度を高める。
(c)cBN工具基体表面に硬質被覆層を形成する前に、結晶質のほう化チタン(TiB2)層、窒化珪素(Si3N4)層を被覆し、その後、このほう化チタン(TiB2)層、窒化珪素(Si3N4)層にボンバード処理を行って非晶質化すると、この非晶質層がcBN工具基体と硬質被覆層との密着接合強度を高める。
「(1) 立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具において、
上記立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料は、平均粒径0.5〜8μmの立方晶窒化ほう素粉末を40〜80体積%含有し、残部はバインダーからなり、
また、上記硬質被覆層は、チタンの窒化物層、炭窒化物層のうちの少なくとも1層からなるTi化合物層からなり、
さらに、上記工具基体と上記硬質被覆層の間には、非晶質密着層が形成されており、該非晶質密着層は、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の構成成分であるバインダーの非晶質層であることを特徴とする表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。
(2) 上記非晶質密着層は、工具基体の表面に被覆された非晶質ほう化チタン層あるいは非晶質窒化珪素層である前記(1)記載の表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。
(3) 上記非晶質密着層は、工具基体の表面に被覆したほう化チタン結晶質層あるいは窒化珪素結晶質層をボンバード処理によって非晶質化したものである前記(2)記載の表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。」
に特徴を有するものである。
cBN工具基体:
cBN工具基体は、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料から構成されるが、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料におけるcBN含有量が40体積%より少なくなると、cBN焼結材料の硬さが低下し、超高圧焼結材料製インサートを用いて高硬度鋼の高速切削加工を行うに際し、最小限必要とされる硬さを備えることができなくなり、耐摩耗性が低下し、一方、cBN含有量が80体積%より多くなると、非晶質密着層を介在形成したとしても、cBN工具基体と硬質被覆層の密着強度を確保しにくくなり、その結果硬質被覆層の剥離が生じやすくなるため、この発明では、cBN工具基体を構成する立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料におけるcBN含有量を40〜80体積%と定めた。
なお、cBN粒子の平均粒径については、これが0.5μmより小さくなると所望の耐摩耗性が得られず、一方、平均粒径が8μmを超えると十分な付着強度が得られないため、cBN粒子の平均粒径は0.5〜8μmと定めた。
一方、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料を構成するバインダーについては、既によく知られている成分、例えば、Ti、Al、Mg、Siの窒化物、ほう化物およびこれらの相互固溶体等、を用いればよく、特に制限されるものではない。
非晶質密着層およびその形成法を具体的に述べると、次の(a)〜(c)のとおりである。
(a)cBN工具基体表面のバインダー成分のみをボンバード処理で改質した非晶質密着層:
cBN工具基体表面に硬質被覆層を形成する前に、例えば、
雰囲気ガス:Arガス ,
雰囲気圧力:1〜10Pa、
cBN工具基体温度:300〜500℃、
バイアス電圧:−200〜−300V、
の条件で、cBN工具基体表面にArボンバード処理を行い、その後に、
雰囲気ガス:Arガス、
雰囲気圧力:1〜10Pa、
cBN工具基体温度:500℃、
アーク電流値:100〜200A、
バイアス電圧:−800〜−1000V、
の条件で、cBN工具基体表面にTiボンバード処理を行い、さらにその後、
雰囲気ガス:Arガス、
雰囲気圧力:1〜10Pa、
cBN工具基体温度:300〜500℃、
バイアス電圧:−800〜−1000V、
の条件で、cBN工具基体表面にArボンバード処理を行うと、
cBN粒子に変化はないが、cBN工具基体表面に露出し、かつ、cBN粒子間隙に存在するバインダー成分のみがボンバード処理によって非晶質化し、非晶質密着層に改質される。
そして、この上に硬質被覆層を蒸着形成した場合に、バインダー成分のみからなる非晶質層が、cBN工具基体と硬質被覆層の密着接合強度を高める。
cBN工具基体表面に硬質被覆層を形成する前に、例えば、
雰囲気ガス:Arガス、
雰囲気圧力:0.2〜0.6Pa、
cBN工具基体温度:300〜500℃、
スパッタ電力:1200〜1500W、
バイアス電圧:−1000〜−1200V、
の条件でスパッタリングを行い、cBN工具基体表面に非晶質ほう化チタン(TiB2)層、あるいは、非晶質窒化珪素(Si3N4)層を蒸着形成すると、上記非晶質ほう化チタン(TiB2)層、非晶質窒化珪素(Si3N4)層は、cBN工具基体と硬質被覆層との密着接合強度を高めるばかりか、cBN工具基体と硬質被覆層との界面でのクラックの進展を抑制する効果がある。
cBN工具基体表面に硬質被覆層を形成する前に、例えば、
雰囲気ガス:Arガス、
雰囲気圧力:0.2〜0.6Pa、
cBN工具基体温度:300〜500℃、
スパッタ電力:800〜1000W、
バイアス電圧:−100〜−200V、
の条件でスパッタリングを行い、cBN工具基体表面に結晶質のほう化チタン(TiB2)層、窒化珪素(Si3N4)層を被覆し、その後、上記ほう化チタン(TiB2)層、窒化珪素(Si3N4)層に、
雰囲気ガス:Arガス ,
雰囲気圧力:1〜10Pa、
cBN工具基体温度:500℃、
カソード電極:金属Ti
アーク電流値:100〜200A、
バイアス電圧:−1000〜−1200V、
の条件で、Tiボンバード処理を行うと、cBN工具基体表面の結晶質ほう化チタン(TiB2)層、結晶質窒化珪素(Si3N4)層が非晶質化し、この非晶質層がcBN工具基体と硬質被覆層との密着接合強度を高めるばかりか、cBN工具基体と硬質被覆層との界面でのクラックの進展を抑制する効果がある。
非晶質密着層の層厚が10nm未満では、密着強度向上効果を期待できず、一方、cBN工具基体表面に対する硬質被覆層の密着性向上効果は、表面からの深さが50nmで十分であるから、非晶質密着層の層厚は10〜50nmと定めた。
また、上記(b)の非晶質密着層の場合には、cBN工具基体の表面に被覆する硬質非晶質膜の膜厚を10〜50nmとすることにより、また、上記(c)の非晶質密着層の場合には、ボンバード処理によって改質する硬質結晶質膜の膜厚を10〜50nmとすることにより、非晶質密着層の層厚を10〜50nmとすることが必要であり、これは、前記(a)の場合と同様、層厚が10nm未満では、非晶質密着層を設けたことによる密着強度向上効果を期待できず、一方、BN工具基体表面に対する硬質被覆層の密着性向上効果は、層厚が50nmで十分であるという理由による。
この発明では、cBN工具基体表面に、前記非晶質密着層を介して硬質被覆層として、TiN層およびTiCN層のうちの少なくとも1層以上からなるTi化合物層を蒸着形成するが、上記Ti化合物層は、いずれも高温硬さ、靭性にすぐれたものであって、被覆cBN基焼結工具の耐摩耗性向上に寄与する。
(a)上記のcBN工具基体A〜Eのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるAIP(アークイオンプレーティング)装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、
(b)装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入して、表2に示される条件でArボンバード処理およびTiボンバード処理を行い、cBN工具基体表面のcBN粒子間隙に存在するバインダー成分のみを非晶質化して、表3に示される所定層厚の非晶質密着層を形成し、
(c)その後、装置内に反応ガスとして窒素ガス(あるいは更にメタンガス等)を導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ硬質被覆層形成用金属Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記cBN工具基体の表面に、表3に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、
本発明の被覆cBN基焼結工具1〜10(本発明工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
(a)上記のcBN工具基体A〜Eのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、一方側のカソード電極(蒸発源)として非晶質ほう化チタン又は非晶質窒化珪素を、また、他方側のカソード電極(蒸発源)として硬質被覆層形成用金属Tiを配置した図1に示されるAIP(アークイオンプレーティング)装置とSP(スパッタリング)装置を併設した物理蒸着装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、
(b)装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入して、0.7Paの雰囲気とすると共に、前記テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによってボンバード洗浄し、表4に示されるスパッタリング条件でcBN工具基体表面に非晶質ほう化チタン層又は非晶質窒化珪素層を蒸着して、表5に示される所定層厚の非晶質密着層を形成し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガス(あるいは更にメタンガス)を導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ硬質被覆層形成用金属Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記cBN工具基体の表面に、表5に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、
本発明の被覆cBN基焼結工具11〜20(本発明工具11〜20という)をそれぞれ製造した。
(a)上記のcBN工具基体A〜Eのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、非晶質密着層形成用の結晶質ほう化チタン又は結晶質窒化珪素からなるカソード電極(蒸発源)、ボンバード処理および硬質被覆層形成用の金属Tiからなるカソード電極(蒸発源)をそれぞれ配置した図1に示されるAIP(アークイオンプレーティング)装置とSP(スパッタリング)装置を併設した物理蒸着装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、
(b)装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを導入して、0.7Paの雰囲気とすると共に、前記テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによってボンバード洗浄し、表6に示されるスパッタリング条件でcBN工具基体表面に、表7に示される結晶質ほう化チタン層又は結晶質窒化珪素層を蒸着形成し、
(c)ついで、表6に示されるボンバード条件でTiボンバードすることにより、上記結晶質ほう化チタン層又は結晶質窒化珪素層を非晶質化して、表7に示される所定層厚の非晶質密着層を形成し、
(d)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガス(あるいは更にメタンガス)を導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転するcBN工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ硬質被覆層形成用金属Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記cBN工具基体の表面に、表7に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、
本発明の被覆cBN基焼結工具21〜30(本発明工具21〜30という)をそれぞれ製造した。
上記のcBN工具基体A〜Eのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示されるアークイオンプレーティング装置内に装着し、硬質被覆層形成用の金属Tiカソード電極(蒸発源)を配置し、
装置内に反応ガスとして窒素ガス(あるいは更にメタンガス等)を導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記cBN工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、硬質被覆層形成用金属Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記cBN工具基体の表面に、表8に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、
従来被覆cBN基焼結工具1〜10(従来工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
さらに、本発明工具1〜30の非晶質密着層については、透過型電子顕微鏡を用いて組織観察(倍率:50万倍)したところ、cBN工具基体表面と硬質被覆層間に非晶質密着層の形成が確認され、また、非晶質密着層の層厚についても、透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ10〜50nmであることが確認された。
これに対して、従来工具1〜10では、cBN工具基体表面と硬質被覆層間には、非晶質層の形成は見られなかった。
なお、本発明工具1〜30について測定した非晶質密着層の層厚を、表3、5、7にそれぞれ示す。
[切削条件A]
被削材:JIS・SCM420(硬さ:HRC60)の丸棒、
切削速度: 240 m/min.、
切り込み: 0.15 mm、
送り: 0.12 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件での浸炭焼入れ合金鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は180m/min.)、
[切削条件B]
被削材:JIS・SCr420(硬さ:HRC61)の丸棒、
切削速度: 220 m/min.、
切り込み: 0.20 mm、
送り: 0.12 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件での浸炭焼入れクロム鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は180m/min.)、
[切削条件C]
被削材:JIS・SUJ2(硬さ:HRC61)の丸棒、
切削速度: 260 m/min.、
切り込み: 0.12 mm、
送り: 0.12 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件での焼入れ軸受鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は170m/min.)、
そして、上記の各切削加工試験における被削材の仕上げ面精度について、JIS・B0601−1994に従い、Rz(μm)を測定した。
この測定結果を表9、10に示す。
なお、従来工具1〜10については、切削時間終了後、すべて被削材の仕上げ面精度(Rz(μm))が3.0μmから外れてしまっていたため、上記所定の基準値を超えたときの切削時間を寿命(分)と判断し、表10には、従来工具1〜10の寿命(分を記載した。
Claims (3)
- 立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具において、
上記立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料は、平均粒径0.5〜8μmの立方晶窒化ほう素粉末を40〜80体積%含有し、残部はバインダーからなり、
また、上記硬質被覆層は、チタンの窒化物層、炭窒化物層のうちの少なくとも1層からなるTi化合物層からなり、
さらに、上記工具基体と上記硬質被覆層の間には、非晶質密着層が形成されており、該非晶質密着層は、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の構成成分であるバインダーの非晶質層であることを特徴とする表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。 - 上記非晶質密着層は、工具基体の表面に被覆された非晶質ほう化チタン層あるいは非晶質窒化珪素層である請求項1記載の表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。
- 上記非晶質密着層は、工具基体の表面に被覆したほう化チタン結晶質層あるいは窒化珪素結晶質層をボンバード処理によって非晶質化したものである請求項2記載の表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具。
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