JP2010230310A - サーボ型振動センサ及び振動制御装置 - Google Patents

サーボ型振動センサ及び振動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外乱を受けて振動する制御対象物の慣性空間に対する絶対速度、あるいは絶対変位を、広い周波数帯域で直接検出する振動センサ、及びこの振動センサを用いたアクティブ精密除振台、アクティブ動吸振器などの振動制御装置を提供する。
【解決手段】センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータの駆動部に帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、地動絶対速度、あるいは地動絶対変位を検出するために、積分帰還用増幅器をセンサのサーボ回路に配置して、この積分帰還用増幅器から検出信号を取り出したものである。さらに、この積分器の極の構成と、検出信号を取り出す方法に工夫を施すことにより、広い検出帯域でゲイン・位相特性をフラットにできることを理論的に見出したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、基礎に対して支持され、外乱を受けて振動する制御対象物の慣性空間に対する絶対速度、あるいは絶対変位を、広い周波数帯域で信号検出する振動センサ、もしくは除振制御装置に関するものである。
1.世の中のトレンド
半導体製造プロセス、液晶製造プロセス、精密機械加工などの様々な分野で、微細な振動を遮断・抑制するための振動制御の利用が広がっている。これらのプロセスで用いられる走査型電子顕微鏡、半導体露光装置(ステッパ)などの微細加工・検査装置は、装置の性能を保障するための厳しい振動許容条件が要求される。今後、製品のさらなる高集積化・微細化と共に、加工プロセスの高速化と装置の大型化が進み、振動許容条件はますます厳しくなる傾向にある。
2.除振装置が除去すべき外乱
近年、振動制御対象の構造物(たとえば、精密除振台)の複数箇所に配置された振動センサからの変位・速度・加速度情報に基づいて制御信号を作り、制御装置を制御するアクティブ振動制御技術が普及している。
図44に、従来のアクティブ除振台のモデル図を示す。このアクティブ除振台は、特許文献1、特許文献2にも記載されているように公知のものである。床面400には、定盤401を支持するための複数組の空気圧アクチュエータ(402a、402b)が配置されている。この定盤401の上に精密装置(図示せず)が搭載される。403は、定盤401の垂直・水平方向の加速度を検出するための加速度センサ、404は、床面400の加速度(基礎の振動状態)を検出する加速度センサである。405a、405bは、床面400に対する定盤401の垂直・水平方向相対変位をそれぞれ検出するための変位センサである。これら各センサからの出力信号がそれぞれコントローラ406に入力される。空気圧アクチュエータ402aには、配管407を介して、コントローラ406により制御されるサーボ弁408が接続されている。このサーボ弁408により、空気圧アクチュエータ402aへ供給・排気される圧縮空気の流量を調整することで、アクチュエータ402aの内圧が制御されて、空気圧アクチュエータを駆動する。
除振装置において除去すべき外乱は、設置床の振動に起因する地動外乱と、除振台上から入力される直動外乱に大別される。
地動外乱となる振動の発生源として、歩行振動と呼ばれる人の移動によるものは1〜3Hz、エアコンなどのモータによるものは6〜35Hz、床や壁の共振点は10〜100Hz程度である。超高層・免振ビルでは0.2〜0.3Hz近傍に固有振動数を有する。また風揺れによって、建築物は0.1〜1.0Hzの微振動が発生する。したがって、除振台には、高周波の振動抑制だけではなく、低い周波数の振動を取り除くことも要求される。
直動外乱による高周波振動の発生源として、除振台にたとえば位置決めステージ409が搭載されている場合、ステージの加減速運転によって、除振台を含めた構造物は打撃を受け、かつ駆動反力によって揺動する。この打撃による振動および駆動反力に起因した揺れを抑制しなければステージの性能を維持できない。要約すれば、除振装置は地動外乱による「除振」に加えて、直動外乱による「制振」の両方を併せ持つ機能が要求される。
3.振動センサのアクティブ除振装置における役割
アクティブ振動制御では、状態フィードバックによる制御方法が採られている。これは、振動制御対象の構造物の複数個所に配置された振動センサからの加速度・速度・変位情報に基づいて、制御装置を制御する方法である。広い周波数領域で除振性能を得るために、たとえば、加速度信号は主に10Hz以上の状態量を制御し、速度信号は1〜10Hz、変位信号は1Hz以下の状態量を制御するのに用いられる。たとえば、
(1)定盤401上に配置された加速度センサ(図44の加速度センサ403を利用)からの信号を用いて、加速度フィードバックを施せば、質量Mの増加と等価となり、固有振動数を低下させ、共振ピークを低減させるなどの効果が得られる。
(2)上記加速度センサ(図44の403)からの信号を絶対速度あるいは絶対変位信号に変換し、フィードバックあるいはフィードフォワードを施せば、広い周波数領域で大幅な除振性能の改善ができる。
(3)定盤401直下に配置された加速度センサ(図38の404)からの信号を用いて、その信号を絶対速度あるいは絶対変位信号に変換し、同様にフィードフォワードを施せば、広い周波数領域で除振性能の改善ができる。
上記(2)(3)の制御を行うためには、慣性空間に対する速度、位置情報が必要である。加速度センサは慣性空間に対する加速度を計測することができるため、加速度センサを制御対象に取り付けることで、制御対象に加わる加速度が検出できる。したがって、従来のアクティブ除振装置では、加速度センサの出力を1回積分することで速度信号を求め、さらに2回積分することで変位信号を求める方法が採用されている。
特開2006-283966号公報 特開2007-155038号公報 実公平6-28698号公報 特許3561344号公報 特許389989号公報
1.従来のアクティブ精密除振台の課題
精密除振台には、(1)定盤が設置された床面と定盤間の相対変位、(2)慣性空間に対する定盤の絶対変位、上記(1)(2)の制御が必要とされる。
(1)の相対変位については、床面に対して設置された変位センサにより、比較的容易にその検出が可能である。しかし、(2)の絶対変位を検出するためには、後述する加速度センサを用いざるを得ない場合が多く、次のような課題があった。
(1)積分器に完全積分1/sを用いた場合、信号を増幅するアンプ類にはドリフト等の直流成分があり、主信号に重畳された直流成分も同時に積分されるため、本来必要な主信号(たとえば変位信号)の正確な情報が得られない。
(2)上記問題を解消するために、通常、不完全積分1/(s+a)により、加速度セ
ンサの出力を積分して近似的な速度信号を得て、さらに、この速度信号を
同様な積分器により積分して近似的な変位信号を得る方法が採用されてい
る。完全積分の場合は、全周波数領域で位相遅れ角度Φは一定(1/sでΦ
=-90°、1/s2でΦ=-180°)である。しかし、不完全積分を経由した信号は、
低周波数領域において位相の遅れ角度は上記完全積分の場合の値にはなら
ず、その結果、正確な負帰還信号は得られない。
たとえば、f=0.01〜1Hzの低周波数領域における除振性能の向上を図るために、上記(2)の不完全積分を用いて、絶対変位フィードバックを施した場合、低周波数領域で位相が遅れると共に、ゲインが増大するなどの問題があった。
2.従来加速度センサの基本構成と検出原理
ここで、従来から用いられている加速度センサの基本構成と検出原理について説明する。図45は、従来の静電容量型加速度センサの一例を示すモデル図である。301はセンサの各部材を収納する本体部、302は質量体、303は振動測定面Aに対して質量体302を機械的に支持するバネ、304は減衰器である。質量体302は静電容量型センサの可動側電極も兼ねている。305は可動側電極(質量体302)の対抗面側に配置された固定側電極、306は前記2つの電極間の空隙部である。
307は振動測定面Aに対して、質量体302を垂直方向に駆動する電磁アクチュエータである。空隙部306の間隙の大きさで静電容量Cが決まるため、
この静電量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの
差である相対変位U-Xを検出できる。サーボ回路310(2点鎖線で示す)は、
記相対変位信号U-Xを利得KPで増幅する変位増幅器311から構成される。
以下、加速度センサの検出原理について、数式を用いて説明する。質量体302の質量をm、前記質量体を支持する機械ばね303のばね定数をk、減衰器304の減衰係数をc、アクチュエータ307の駆動力をF=Afi0とすれば、次の運動方程式が成り立つ。
相対変位u-xが零になるように、比例ゲイン定数KPの増幅器により、アク
チュエータの電流i0が制御される。
比例ゲイン定数KPが十分に大きく、式数3の右辺における第3項と比べて、第1項、第2項が無視できるとすれば、
式数2、式数4からアクチュエータに流す電流i0を検出すれば、質量体302の加速度を近似的に求めることができる。
3.従来速度・変位センサの課題
従来の加速度センサを道いた場合の、アクティブ精密除振台に係る上述した問題を解決するために、速度信号、あるいは変位信号を直接検出するサーボ型センサが提案されている。
(1)相対変位信号を入力として、微分回路を経由してアクチュエータを駆動する方法
実公平6-28698号には、地動絶対変位uと質量体の絶対変位xの差である相
対変位信号u-xを入力として、微分回路を経由してアクチュエータを駆動し、
検出された相対変位の増幅器出力から絶対速度信号を得る方法が開示されてい
る。この方法では、微分回路の微分ゲイン定数KDを他のパラメータと比べて十
分に大きく設定ことにより、質量体の絶対速度が得られる、としている。
図46において、質量体500(振子)は一対の支持バネ(機械ばね)501A,501Bによって支持されると共に、その一部には減衰器502が接続されている。質量体500に作用した振動は変位検出器503によって、その速度成分(電気信号)が検出され、これがアンプ504を介して出力端子505に導出される。従って、端子505には質量体500に作用した振動成分のうち速度出力E1が検出されたことになる。出力端子505から得られた速度出力E1は、さらに微分回路506を経て駆動部507を構成する可動部508の可動コイル509に流す電流を制御する。これによって、可動部508(アクチュエータ)には速度出力E1の微分出力(電流)の大きさに対応した、質量体500を元の位置に戻す復原力が得られる。
前述した従来加速度センサの場合と同様に、同公報における速度信号の検出原理について、以下数式を用いて説明する。同公報に記載されている数式、記号、要素部品の名称は若干異なるが、本明細書では従来例と本発明(後述)との違いを明確にするために、共通の数式、記号を、また要素部品の名称については同一の表現を用いることにする。質量体500の質量をm、前記質量体を支持する機械ばねのばね定数をk、減衰器の減衰係数をc、アクチュエータの駆動力をF=Afi0とすれば、次の運動方程式が成り立つ。
前術した加速度センサと異なり、相対変位信号を入力として、微分回路を経由してアクチュエータを駆動するため、アクチュエータの駆動力、及び運動方程式は
微分ゲイン定数KDが十分に大きく、式数7の右辺における第3項と比べて、第1項、第2項が無視できるとすれば、
式数8の両辺を積分して速度を求めると
式数9から速度出力E1を検出すれば、地動絶対速度に起因する質量体500の絶対速度を近似的に求めることができる。
図47は、上記提案による速度センサの周波数に対するゲイン・位相特性を評価するために行った解析結果を示すものである。解析条件として、質量体500の質量は十分に軽く、m=1.25gと仮定する。また、減衰係数c=3.5Ns/m、微分ゲイン定数KD=3.91である。ばね定数kを各種変えた場合の結果を同図中に対比して示す。但し、上記質量の条件で、共振周波数fn=40Hzとなるばね定数をk0=79.0N/mとする。同図から、ばね定数kが大きくなると、ゲインが降下を始める周波数、及び、位相φ=0に対して進む周波数が高い方へ移行する。つまり、ばね定数kが大きくすると、センサの検出可能な周波数領域が狭くなってしまうのである。ばね定数を限りなく小さくして、k→0にすれば、ゲイン特性、位相特性共、低い周波数領域まで特性はフラットとなり、理想的なセンサ特性となる。しかし、この場合、電子制御を施さない状態で、可動側電極(質量体)の位置保持機能が弱いセンサは、衝撃に弱く構造体として脆弱である。また質量体の変位が重力の影響を受けるため、センサの取り付け位置・方向が限定される。質量体500の質量を十分に大きくすれば、ばね定数kも相対的に大きくできるが、この場合センサの小型軽量化が困難となる、などの課題があった。
(2)相対変位信号をポジティブ・フィードバックして、バネ定数を制御面から低減させる方法
前述した提案の欠点であるセンサ単体の構造体としての脆弱さを解消するた
めに、地動絶対変位uと質量体の絶対変位xの差である相対変位u-xをポジテ
ィブ・フィードバック(正帰還)することにより、等価バネ定数を制御面から
低減させる方法が、特許第3561344号、及び特許第389989号に開示されている。
図48(特許第3561344号参照)において、絶対速度・絶対変位センサ601は、被検出体としてのセンサハウジング602と、センサハウジング602にばね603及び減衰器604によって支持された質量体605と、質量体605に対するセンサハウジング602の相対変位u-xを電気的に検出する検出手段606と、検出した相対変位u-xをポジティブに、相対変位u-xを一次微分することにより得られる相対速度vを本例ではネガティブに、相対変位u-xを二次微分することにより得られる相対加速度αをネガティブに夫々フィードバックさせて、センサハウジング602の絶対変位uに起因する質量体605の変位を制御するフィードバック制御手段607を具備している。
上記提案によれば、質量体の持つ状態量(変位・速度・加速度)をフィードバックすることにより、構造的な欠陥を生じさせることなく固有振動数を下げることができ、検出可能な周波数帯域を広げることができる、としている。
図49は、上記提案による絶対変位センサの周波数に対するゲイン・位相特性を評価するために行った解析結果を示すものである。解析条件は、質量m=1.25g、減衰係数c=1.0×10-3Ns/mである。また、非制御時の固有振動数がfn0=40Hzとなるように、機械的ばね定数を十分大きく、k=79.0N/mに設定した。次に、制御時の固有振動数 fnを決め、ポジティブ・フィードバックで低減するばね定数と、ポジティブ・フィードバックのゲイン定数KAを求めている。同図から、固有振動数 fnを低くする程、ゲイン特性はより低い周波数までフラットになることがわかる。f<fnの領域では、ゲインは大きく低下し、また位相特性はΦ→+180degに漸近していく。したがって、理想的なセンサ特性を得るためには、制御時の固有振動数 fnを、たとえばfn=0.1〜0.2Hz近傍に設定せねばならない。
しかしこの場合、制御時の機械的ばねに相当する復元力、すなわち、質量体605が外力によって動作点(原点)から偏芯した場合の原点復帰能力が極めて弱いため、上記提案の適用範囲は限定されると予想される。
上述した振動センサ(加速度・速度・変位センサ)の代わりに、たとえば、ドップラー効果を利用したレーザ光によるヘテロダイン計測計を用いて、精度の高い速度と変位の計測ができる。しかし、通常6軸以上の制御自由度を必要とする除振台の振動計測に、高価な上記レーザ計測計を用いるのは実用的ではない場合が多い。また上記レーザ計測計は、床面に対する測定対象物の相対速度・変位の計測は可能であるが、慣性空間に対する絶対変位・速度の計測は困難である。
本発明は、前述した従来提案では得られなかった、次のような特性を持つ絶対速度、及び、絶対変位検出センサを実現するものである。
(1)たとえば、f=0.01Hz以下の低周波領域から、f=1000Hz近傍の高周波数領域まで、広い信号検出帯域を有する。
(2)センサ単体の機械ばね剛性と制御時の比例ゲインを共に充分大きくできる
ために、構造体しても強固で衝撃に強く、軽量・小型化が図れる。
上記(1)(2)を実現させるために、本発明は、地動絶対速度、あるいは地動絶対変位を検出するために、積分帰還用増幅器をセンサのサーボ回路に配置して、この積分帰還用増幅器から検出信号を取り出したものである。さらに、この積分器の極の構成と、検出信号を取り出す方法に工夫を施すと共に、センサの可動電極である質量体の絶対速度・絶対変位に対する検出信号の周波数依存性が極力小さくなるように、各制御要素のパラメータを最適化することにより、広い検出帯域でゲイン・位相特性をフラットにできることを理論的に見出したものである。本発明の振動センサを適用することにより、たとえば、低い周波数領域から高い周波数まで、優れた除振・制振性能を有するアクティブ精密除振台、アクティブ動吸振器などを実現することができる。
しかして、請求項1の発明に係るサーボ型振動センサは、センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる前記相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には前記相対変位信号を積分する積分帰還用増幅器が設けられており、この積分帰還用増幅器の出力をセンサ検出信号としたものである。
すなわち、本発明は、サーボ回路に前記相対変位信号を積分する積分帰還用増幅器を設けて、かつその出力をセンサ検出信号とすることで、低周波数領域におけるゲイン・位相特性が大幅に改善された振動センサを得ることができる。
低周波数領域での用途に主眼点をおいた絶対速度センサとして、また広い周波数帯域で用いる絶対変位センサに適用できる。また、質量体の原点復帰力(機械ばね剛性と比例ゲイン)を十分に大きく設定しても、低周波数領域での絶対速度、あるいは、絶対変位信号の検出が可能である。また、センサ単体の機械ばね剛性と制御時の比例ゲインを共に充分大きくできるために、衝撃に強く、構造体としても強固なセンサが実現できる。
請求項2の発明に係るサーボ型振動センサは、前記サーボ回路は、前記相対変位信号を帰還する変位帰還用増幅器と、前記相対変位信号を増幅する信号検出用比例増幅器を有し、前記信号検出用比例増幅器の出力と前記センサ検出信号を加算して得られた出力から絶対速度信号を得るように構成したものである。
すなわち、本発明は、信号検出用比例増幅器の出力と、積分器の出力を加算することにより、より高い周波数領域まで信号検出範囲を広げることができる。
請求項3の発明に係るサーボ型振動センサは、前記サーボ回路に前記相対変位信号を微分して帰還する速度帰還用増幅器を設けたものである。
すなわち、本発明は、速度帰還用増幅器をサーボ回路に並列に設けることにより、微分ゲイン定数の選択によってセンサの検出周波数範囲が選択できる。微分ゲイン定数を大きく設定すれば、より高い周波数まで検出範囲を広げることができる。
請求項4の発明に係るサーボ型振動センサは、前記速度帰還用増幅器の出力と前記センサ検出信号を加算して得られた出力から絶対速度信号を得るように構成したものである。
すなわち、本発明においては、請求項2の発明に係る信号検出用比例増幅器と速度帰還用増幅器を兼用して、かつ速度帰還用増幅器出力と積分器出力を加算することにより、質量体の絶対速度信号が得られるように構成したものである。本発明により、サーボ回路の簡素化が図れる。
請求項5の発明に係るサーボ型振動センサは、極の実数部が正の符号を持つ不完全積分により前記積分帰還用増幅器を構成したものである。
すなわち、本発明は制御要素として元来不安定とされる、極の実数部が正の符号を持つ不完全積分[a>0である積分1/(s-a)]が、負帰還ループの中に局所的に組み込まれて、かつ適切なパラメータ選定が系全体で為されることで、従来積分と逆方向の位相遅れ特性が低周波数領域でのゲイン・位相特性に大幅な改善効果をもたらすと共に、制御系全体としては安定性を維持できるということを見出したものである。また、相対変位を微分すれば速度に関連する値が算出されることは当然であるが、相対変位信号を積分して速度が算出されるという事に関しては直観的にはわかりづらく、当業者に容易に想到されるようなものではない。
請求項6の発明に係るサーボ型振動センサは、前記サーボ回路は、前記相対変位信号を帰還する変位帰還用増幅器を有し、この変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記支持ばねのばね定数をk、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記積分帰還用増幅器に不完全積分を用いて、かつ、この不完全積分の極の実数部の値をaとして、下式数10が概略成り立つように構成したものである。
すなわち、本発明においては、上式が概略成り立つように振動センサの前記支持ばね定数k、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数KP、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数KI、前記不完全積分の極の実数部の値aを設定すれば、低周波数領域においてフラットなゲイン・位相特性を有するセンサ検出信号が得られる。
請求項7の発明に係るサーボ型振動センサは、前記支持ばねのばね定数をk、この支持ばねと並列に機能する減衰手段の減衰定数をc、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記速度帰還用増幅器の微分ゲイン定数をKD、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記信号検出用比例増幅器の比例ゲイン定数をKX、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、以下の式数11、数12が概略成り立つように構成したものである。
すなわち、本発明においては、質量体速度に対する検出速度信号の伝達特性を、たとえば、ラプラス演算子sによる伝達函数で表示したとき、この伝達関数の分母・分子のsの多項式を相殺するように、各制御要素のパラメータを選定することにより、上記伝達特性の周波数依存性は抹消され、単なる比例関係の特性として取り扱えることに着目したものである。上式が成り立つように、センサの各パラメータを選定することにより、たとえば、f=0.01Hzからf=1000Hz近傍まで、フラットなゲイン・位相特性を有する絶対速度検出センサが実現できる。また、選択するパラメータによって、センサの検出周波数範囲を変えることができる。
請求項8の発明に係るサーボ型振動センサは、前記支持ばねのばね定数をk、この支持ばねと並列に機能する減衰手段の減衰定数をc、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記速度帰還用増幅器の微分ゲイン定数をKD、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、下式が概略成り立つように構成したものである。
すなわち本発明により、サーボ回路の簡素化と、制御系の最適化を図るパラメータ数の低減が図れる。
請求項9の発明に係るサーボ型振動センサは、前記支持ばねのばね定数をk、この支持ばねに並列して機能する減衰手段の減衰定数をc、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記サーボ回路に設けられた変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、速度帰還用増幅器の微分ゲイン定数KD、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、以下の式数14,15が概略成り立つように構成され、前記センサ検出信号から絶対変位信号を得るようにしたものである。
すなわち、本発明においては、質量体変位に対する検出変位信号の伝達特性を、たとえば、ラプラス演算子sによる伝達函数で表示したとき、この伝達関数の分母・分子のsの多項式を相殺するように、各制御要素のパラメータを選定することにより、上記伝達特性の周波数依存性は抹消され、単なる比例関係の特性として取り扱えることに着目したものである。上式が成り立つように、センサの各パラメータを選定することにより、たとえば、f=0.01Hzからf=1000Hz近傍まで、フラットなゲイン・位相特性を有する絶対変位検出センサが実現できる。また、選択するパラメータによって、センサの検出周波数範囲を変えることができる。
請求項10の発明に係るサーボ型振動センサは、サーボ回路に設けられた前記相対変位信号を増幅する信号検出用比例増幅器の出力と前記積分帰還用増幅器の出力を加算して得られた出力を絶対速度検出信号とし、前記積分帰還用増幅器の出力を絶対変位検出信号として、前記絶対速度検出信号と前記絶対変位検出信号が同一のセンサで検出できるように構成したものである。
すなわち、本発明により前記絶対速度検出信号に積分回路を追加して経由することなく、絶対変位検出信号を共用の出力である前記積分帰還用増幅器から検出できるため、主信号が積分を経由することによる弊害が解消される。
請求項11の発明に係るサーボ型振動センサは、下式数16、下式数17、下式数18が概略成り立つように構成したものである。
すなわち、本発明により上式が成り立つように、センサの各パラメータを選定することにより、たとえば、f=0.01Hzからf=1000Hz近傍まで、共にフラットなゲイン・位相特性を有すると共に、絶対速度信号と絶対変位信号の検出ができる共用センサが実現できる。
請求項12の発明に係るサーボ型振動センサは、前記減衰定数c、前記微分ゲイン定数KD、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、下式が成り立つように構成したものである。
すなわち、本発明においては上式が成立するとき、地動速度に対する検出速度信号、あるいは、地動変位に対する検出変位信号の伝達関数の極の実数部の符号が負になるため、制御系は安定となる。
請求項13の発明に係るサーボ型振動センサは、地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分帰還用増幅器の極の実数部の基準値をa0、前記積分帰還用増幅器に適用する極の実数部をaとしてξ=a/a0を定義したとき、0<ξ≦1となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、ξ=a/a0がξ≦1となるように、前記不完全積分の極の実数部aの値を設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく一定値を保持、あるいは安定に減衰する作用を有する。さらに、0<ξとなるように極の実数部aの値を設定することで、極の実数部aの符号は正の値を保つため、低周波数領域におけるゲイン・位相特性の改善が図れる。
請求項14の発明に係るサーボ型振動センサは、地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分ゲイン定数の基準値をKI0、前記積分帰還用増幅器に適用する積分ゲイン定数をKIとしてη=KI/KI0 を定義したとき、1.0≦η<1.5となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、η=KI/KI0が1.0≦η<1.5となるように、前記積分ゲイン定数KIの値を設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく一定値を保持、あるいは安定に減衰する作用を有する。また、低周波数領域において、実用上充分に満足のいくゲイン・位相特性が得られる。
請求項15の発明に係るサーボ型振動センサは、地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数の基準値をKP0、前記変位帰還用増幅器に適用する比例ゲイン定数をKPとして、φ=KP/KP0 を定義したとき、0.4<φ≦1.0となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、φ=KP /KP0が0.4<φ≦1.0となるように、前記比例ゲイン定数KPの値を設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく一定値を保持、あるいは安定に減衰する作用を有する。また、低周波数領域において、実用上充分に満足のいくゲイン・位相特性が得られる。
請求項16の発明に係るサーボ型振動センサは、極の実数部が負の符号を持つ安定積分により前記積分帰還用増幅器を構成し、この積分帰還用増幅器を経由して、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータの駆動部に正帰還するように構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記積分帰還用増幅器に安定積分 [a<0である積分1/(s-a)]を用いる。この安定積分を経由して前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータの駆動部に正帰還すると、極の実数部が正の不安定積分[a>0である積分1/(s-a)]を用いた場合と同様な作用により、センサのゲイン・位相特性に大幅な改善効果をもたらすことを見出したものである。
請求項17の発明に係るサーボ型振動センサは、地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分帰還用増幅器の極の実数部の基準値をa0、前記積分帰還用増幅器に適用する極の実数部をaとしてξ=a/a0を定義したとき、1≦ξ≦1.5となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、安定積分を用いた請求項16の発明において、ξ=a/a0が1≦ξ≦1.5となるように、前記不完全積分の極の実数部aの値を設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく一定値を保持、あるいは安定に減衰する作用を有する。さらに、低周波数領域におけるゲイン・位相特性の改善も同時に図かることができる。
請求項18の発明に係るサーボ型振動センサは、地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分ゲイン定数の基準値をKI0、前記積分帰還用増幅器に適用する積分ゲイン定数をKIとしてη=KI/KI0 を定義したとき、0.6≦η≦1.0となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、安定積分を用いた請求項16の発明において、η=KI /KI0が0.6≦η≦1.となるように、前記積分ゲイン定数KIの値を設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく一定値を保持、あるいは安定に減衰する作用を有する。また、低周波数領域において、実用上充分に満足のいくゲイン・位相特性が得られる。
請求項19の発明に係るサーボ型振動センサは、地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数の基準値をKP0、前記変位帰還用増幅器に適用する比例ゲイン定数をKPとして、φ=KP/KP0 を定義したとき、1.0≦φ≦1.4となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、安定積分を用いた請求項16の発明において、φ=KP/KP0が1.0≦φ≦1.4となるように、前記比例ゲイン定数KPをの値を設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく一定値を保持、あるいは安定に減衰する作用を有する。また、低周波数領域において、実用上充分に満足のいくゲイン・位相特性が得られる。
請求項20の発明に係るサーボ型振動センサは、極の実数部が正の符号を持つ不完全積分により前記積分帰還用増幅器を構成し、かつ、地動ステップ速度入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記極の実数部をa0としたとき、前記積分帰還用増幅器に適用する不完全積分の極が負の符号を持つ実数部a≒-a0となるように符号を変換し、かつ、0<a0≦0.2となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、サーボ回路における直流成分のドリフト、外乱の発生などに対して、いかなる場合でも支障のない安定積分 [a<0である積分1/(s-a)]を用いるという前提で、低周波数領域におけるゲイン・位相特性の改善を図ったものである。前記a0の値が充分に小さくなるように、質量体の速度・絶対変位に対する検出信号の周波数依存性が抹消される「最適条件」を求め、さらに、前記a0の符号を負に変換させて極の実数部aを設定することにより、低周波数領域におけるゲイン・位相特性の十分な改善が図れる「準最適条件」を得ることができる。
請求項21の発明に係るサーボ型振動センサは、請求項24の発明において、0<a0≦0.1となるように、前記不完全積分の極の実数部a≒-a0を構成したものである。
すなわち、本発明においては、a0の上限値をより小さく、a0≦0.1となるように前記支持ばねのばね定数をk、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数KIを選定することにより、低周波数領域におけるゲイン・位相特性の一層の改善が図れる。
請求項22の発明に係る振動制御装置は、除振対象物を基礎に対して支持する支持アクチュエータと、この支持アクチュエータを駆動する駆動手段と、前記除振対象物の振動状態を検出する振動センサと、このサーボ型振動センサからの情報に基づいて前記除振対象物の慣性空間に対する絶対変位、及び、又は絶対速度を目標値となるように前記駆動手段を制御する制御装置から構成される振動制御装置において、請求項1で記載される前記サーボ型振動センサを用いて、このサーボ型振動センサからの情報を基に前記除振対象物を制御するアクティブ制振装置を構成したものである。
すなわち、本発明においては、たとえば、f=0.01Hz以下の低周波領域から、f=1000Hz近傍の高周波数領域まで、慣性空間に対する絶対速度・絶対変位を、広い周波数帯域で信号検出できる請求項1記載の前記サーボ型振動センサを用いることにより、優れた除振性能、制振性能を有するサスペッション形のアクティブ精密除振台、あるいは、付加質量駆動形のアクティブ動吸振器などが実現できる。
請求項23の発明に係る振動制御装置は、除振対象物を基礎に対して支持する支持アクチュエータと、この支持アクチュエータを駆動する駆動手段と、前記除振対象物の変位及び又は振動状態を検出するサーボ型振動センサと、このサーボ型振動センサからの情報に基づいて前記除振対象物と前記基礎との間の相対変位、及び、前記除振対象物の慣性空間に対する絶対変位を目標値となるように前記駆動手段を制御する制御装置から構成される振動制御装置において、前記サーボ型振動センサに絶対速度センサを用いて、この絶対速度センサの出力信号が極の実数部が正の符号を持つ不完全積分を経由することにより、前記除振対象物を制御する絶対変位信号を得るアクティブ制振装置を構成したものである。
すなわち、本発明においては、慣性空間に対する前記除振対象物(定盤)の絶対変位信号を得るのに、絶対速度センサの出力を1回積分して近似的な変位信号を得ている。この絶対速度センサに請求項2の振動センサを用いて理想的な速度検出信号を得ると共に、前記積分器に「極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いることで、アクティブ除振装置の除振性能の改良、たとえば、低周波数領域0.01 <f<1Hzで位相遅れが小さく、ピークが小さいゲイン特性が実現できる。すなわち、
(1) 本発明による絶対速度センサ
(2)「極の実数部の符号が正の不完全積分」が組み込まれたアクティブ精密除
振台の制御システム
上記(1)(2)を組み合わせた相乗効果により、より優れた除振性能を有するアクティブ精密除振台が実現できる。
請求項24の発明に係るサーボ型振動センサの設計方法は、センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には前記相対変位信号を極の実数部が正の符号を持つ不完全積分により積分する積分帰還用増幅器が設けられており、ラプラス変換演算子sの多項式、あるいはz変換演算子の式、あるいは微分方程式で記述される、質量体速度もしくは質量体変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を僅少化するように、伝達関数の分母・分子の式、あるいは微分方程式の両辺の各項を概略相殺するセンサ・パラメータを選定したものである。
すなわち、本発明においては、質量体変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を抹消、あるいは僅少化するセンサ・パラメータを選定することにより、たとえば、f=0.01Hzからf=1000Hz近傍まで、フラットなゲイン・位相特性を有する絶対速度、あるいは絶対変位検出センサが設計できる。また、センサの検出周波数範囲、直流ドリフトなどに対する安定性裕度などを設計目標値として、サーボ回路の比例・微分・積分ゲイン、積分の極などのパラメータの選択が可能である。
請求項25の発明に係るサーボ型振動センサの設計方法は、センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には前記相対変位信号を極の実数部が負の符号を持つ不完全積分により積分して、かつ、前記アクチュエータの駆動部に正帰還する積分帰還用増幅器が設けられており、ラプラス変換演算子sの多項式、あるいはz変換演算子の式、あるいは微分方程式で記述される、質量体速度もしくは質量体変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を僅少化するように、伝達関数の分母・分子の式、あるいは微分方程式の両辺の各項を概略相殺するセンサ・パラメータを選定したものである。
すなわち、本発明においては、質量体変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を抹消、あるいは僅少化するセンサ・パラメータを選定することにより、たとえば、f=0.01Hzからf=1000Hz近傍まで、フラットなゲイン・位相特性を有する絶対速度、あるいは絶対変位検出センサが設計できる。また、センサの検出周波数範囲、直流ドリフトなどに対する安定性裕度などを設計目標値として、サーボ回路の比例・微分・積分ゲイン、積分の極などのパラメータの選択が可能である。
請求項25の発明に係るサーボ型振動センサの設計方法は、センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる前記相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には利得KIの積分帰還用増幅器、及び、前記相対変位信号を帰還する利得KPの変位帰還用増幅器と、利得KXの信号検出用比例増幅器と、利得KDの速度帰還用増幅器のいずれかが前記積分帰還用増幅器と共に配置されており、前記積分帰還用増幅器の積分回路は、極の実数部aが正の符号を持つ不安定積分、あるいは、極の実数部aが負の符号を持ちその出力が前記アクチュエータの駆動部に正帰還される安定積分により構成され、前記各増幅器の利得前記KI、前記KP、前記KX、前記KD、及び、前記極の実数部aの数値の選択、及び、前記各増幅器出力からのセンサ信号の取り出し方の選択により、任意のゲイン・位相特性をを得るようにしたものである。
すなわち、本発明においては、センサを適用する制御対象の特性に合せた任意のゲイン・位相特性の設定ができる。本発明が見出した「a>0である不安定積分1/(s-a)の適用」、「安定積分をポジティブ・フィードバックする方法」、「比例・速度増幅器の各出力を加算して検出信号を取り出す方法」などの工夫と、パラメータの適切な選択により、本発明の振動センサにおいては、従来センサと比べて、センサ特性選択の自由度を大幅に広げることができる。この特徴を利用して、たとえば、センサを適用する制御対象の伝達特性が、大きな周波数依存性を持っている場合、この周波数依存性を補償する伝達特性(ゲイン・位相特性)を振動センサ側に持たせてもよい。その結果、制御システム全体として制御特性の向上が図れる。
本発明を適用した振動センサにより、次のような特徴を有する絶対速度センサ及び絶対変位センサが実現できる。
(1)広い周波数帯域で、フラットなゲイン・位相特性を有する検出信号が得ら
れる。
(2)大きな原点復帰能力(充分に大きな剛性の機械ばねと比例ゲイン)を有す
るため、構造体としても強固で衝撃に強く、軽量・小型化が図れる。
本発明を、たとえば、アクティブ制振装置に適用することにより、低周波数領域での除振性能の向上、高周波数領域での制振性能の向上が図れる。その効果は絶大である。
本発明の実施形態1の絶対速度センサの構成を示すモデル図。 本発明の実施形態1の制御ブロック図。 本発明に導入された「極の実数部が正の符号を持つ不完全積分」と従来の不完全積分のゲイン・位相特性を示す図。 本発明の実施形態1のゲイン・位相特性の解析結果。 本発明の実施形態1の過渡応答の解析結果。 本発明の実施形態1の長時間過渡応答の解析結果。 本発明の実施形態1において、バネ定数kが0.5倍〜1.5倍変化した場合のゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 本発明の実施形態1において、減衰係数cが0.5倍〜1.5倍変化した場合にゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 本発明の実施形態1において、積分増幅器の有無がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 本発明の実施形態1において、検出信号の取り出し方法がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 本発明の実施形態1において、ξが-0.5から1.5まで変化した場合にゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 本発明の実施形態1において、KXが0.5倍から1.5倍まで変化した場合にゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 本発明の実施形態2の絶対速度センサの制御ブロック図。 本発明の実施形態3の絶対変位センサの構成を示すモデル図。 本発明の実施形態3の制御ブロック図。 本発明の実施形態3のゲイン・位相特性の解析結果。 本発明の実施形態3の過渡応答の解析結果。 本発明の実施形態4の速度・変位共用センサ制御ブロック図。 本発明の実施形態4の検出速度のゲイン・位相特性解析結果。 本発明の実施形態4の検出変位のゲイン・位相特性解析結果。 本発明の実施形態5の加速度センサの制御ブロック図。 本発明の実施形態5の検出加速度のゲイン・位相特性解析結果。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合の制御ブロック図。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合のゲイン・位相特性。 速度一定のステップ応答とξの関係を示すグラフ。 速度一定のステップ応答とηの関係を示すグラフ。 ηの値がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 速度一定のステップ応答とφの関係を示すグラフ。 φの値がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合の速度一定のステップ応答とξの関係を示すグラフ。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合のξの値がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合の速度一定のステップ応答とηの関係を示すグラフ。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合のηの値がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合の速度一定のステップ応答とφの関係を示すグラフ。 ポジティブ・フィードバックを用いる場合のφの値がゲイン・位相特性に与える影響を示す図。 極aを変えて、準最適条件を求めるゲイン・位相特性のグラフ。 本発明の実施形態8のアクティブ除振器の制御ブロック図。 本発明の実施形態8のゲイン・位相特性の解析結果。 本発明の実施形態9のアクティブ除振器の制御ブロック図。 本発明の実施形態9のゲイン・位相特性の解析結果。 本発明の実施形態10のアクティブ除振器の制御ブロック図。 本発明の実施形態10のゲイン・位相特性の解析結果。 従来加速度センサを用いたアクティブ除振器の制御ブロック図。 アクティブ除振器の全体構成の一例を示す図。 従来の加速度センサの構成を示すモデル図。 従来提案による速度センサの構成を示すモデル図。 従来提案による速度センサのゲイン・位相特性を評価した解析結果の一例。 従来提案による速度・変位センサの制御ブロック図。 従来提案による変位センサのゲイン・位相特性を評価した解析結果の一例。
以下、本発明を次のステップで説明する。
[1] 理想的条件における絶対速度・絶対変位センサ
[2] 実用性を重視した場合の絶対速度・絶対変位センサ
最初に、上記[1]章から [第1実施形態]を基に説明する
[第1実施形態]
1.本発明による絶対速度センサの原理
1−1.基本構造
図1は、本発明の実施形態1に係る静電容量型速度センサの一例を示すモデル図である。1はセンサの各部材を収納する本体部(センサ外郭)、2は質量体、3は振動測定面A(基礎)に対して質量体2を機械的に支持するバネ(支持ばね)、4は減衰器である。質量体2は電極間の空隙を検出する静電容量型の変位検知器の可動側電極も兼ねている。5は可動側電極(質量体2)の対抗面側に配置された固定側電極、6は前記2つの電極間の空隙部6である。空隙部6の間隙の大きさで静電容量Cが決まるため、この静電容量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの偏差ε=U-Xを、相対変位信号として検出できる。したがって、可動側電極(質量体2)、固定側電極5、空隙部6により、静電容量型の変位検知器を構成している。7は振動測定面Aに対して、質量体2を上記偏差ε→0になるように、垂直方向に駆動する電磁アクチュエータである。この電磁アクチュエータは、ボイスコイルなどの機構部(図示せず)と、この機構部を駆動する駆動回路(図示せず)を含むものとする。
図1にサーボ回路8の概要を、図2にサーボ回路8を含む制御ブロック図の
詳細を示す。サーボ回路8(2点鎖線で示す)は、前記相対変位信号を利得KPで増幅する変位増幅器9と、前記相対変位信号を利得KDの微分増幅器10を経て、この増幅された信号を微分する微分器11と、前記相対変位信号を利得KIの積分増幅器12を経て、この増幅された信号を積分する積分器13(積分帰還用増幅器)から構成され、これらの信号が加算器14により加算されて、電磁アクチュエータ7を駆動する信号となる。
本発明の実施例においては、前述した積分器13には、「極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いている。ここで、積分器13の出力信号をセンサ検出信号とする。その理由は、後述するように、積分器13の出力だけからも絶対速度信号、絶対変位信号が得られるからである。15は前記相対変位信号を、利得KXで増幅する信号検出用比例増幅器である。16は、前記静電容量型の変位検知器から得られた相対変位信号U-Xを、利得Kaで増幅する相対変位検出用増幅器である。また、全周波数領域で、同一振幅の地動速度が信号入力17から与えられるものとする。信号検出用比例増幅器15の出力と、積分器13の出力(センサ検出信号)を加算器17により加算することにより、広い周波数帯域を有する地動絶対速度の検出信号Zが得られる。
1−2.本発明による速度センサの特徴
さて、本発明を適用した絶対速度センサは、後述する解析結果が示すように、従来の提案では得られなかった次のような特徴を有する。
(1)広い周波数帯域で検出信号が得られる。特に低い周波数帯域での本発明の
効果は顕著である。
(2)大きな原点復帰能力を有する。質量体(可動側電極)を充分に大きな剛性
の支持バネで支えることができ、かつ比例ゲインを大きくとれる。そのため、センサ単体の機械ばね剛性と制御時の比例ゲインを共に大きく設定できるために、衝撃に強く、構造体としても強固なセンサが実現できる。
上記特徴は、(1)地動絶対速度を検出するために、積分帰還用増幅器をセンサのサーボ回路に配置して、この積分帰還用増幅器から検出信号を取り出すことにより実現したものである。さらに、(2)積分器の極の構成と、検出信号を取り出す方法に工夫を施すと共に、センサの可動電極である質量体の絶対速度に対する検出信号の周波数依存性が僅少化するように、各制御要素のパラメータを最適化する。すなわち、上記(1)(2)を組み合わせることにより、広い周波数領域で、フラットなゲイン・位相特性が得られることを見出したものである。以下、本発明適用の絶対速度センサが成立するパラメータの最適条件を、理論解析により導出する。
1−3.速度センサの理論解析
(1)相対変位に対する絶対変位の伝達関数
地動絶対変位をU(s)、質量体(センサの可動側電極)の絶対変位をX(s)としたとき、相対変位E(s)[=U(s)-X(s)]に対する上記絶対変位X(s)の伝達関数G1(s)は、図2の制御ブロック図から次のように得られる。
但し式数20は、相対変位検出用増幅器Ka=1として求めた。その理由は、増幅器16の利得Kaは、各増幅器の利得KP、KD、KI、KXに同一の値が乗算されるため、以降の数式展開の際に、パラメータ数を減らし数式を簡素化するためである。図2のサーボ回路において、Ka=1以外の値を設定する場合は、本発明の他の実施例も同様であるが、たとえば、Ka×KP→KP 、Ka×KI→KI して各増幅器の利得を再設定すればよい。加算器14の出力側に設けられたアクチュエータを駆動する増幅器Kb(図示せず)を考慮する場合も同様であり、各増幅器の利得に同一の値Kbを乗算すればよい。また、図2における実用微分回路11は、完全微分に置き換えて、すなわちs/(Ts+1)→ sとして求めた。定数Tが十分に小さければ、上記近似は成立する。加算器14の出力からアクチュエータ7の駆動力が求められ、F(s)=[ KP+KD+KI/(s-a)]×E(s)である。質量体の絶対速度V(s)=sX(s)として
(2)質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達関数
ここで、センサのサーボ回路から絶対速度信号を取り出すために、たとえば、次の方法が考えられる。
(1)比例増幅器の出力だけを利用する
(2)積分器の出力だけを利用する
(3)2つの積分の和(第1積分器の出力+第2積分器の出力)を利用する
(4)比例増幅器と積分器との和を利用する
本実施例では、上記(4)の方法、すなわち、センサの速度信号出力=「信号検出用比例増幅器15の出力+積分器13の出力」に着目した。この選択の妥当性については、[4]章の補足(2)、及び、[1]章の[2-4]節で詳細を説明する。上記(4)の場合、絶対速度検出信号Z(s)は
式数22に式数21を代入し、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達函数G2(s)=Z(s)/V(s)とすれば、
(3)伝達関数G2(s)の分母と分子が相殺される条件
ここで、数23の伝達関数G2(s)の分母と分子のsの多項式を相殺することを試みる。上式の分母・分子のsの多項式を相殺できるならば、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達特性の周波数依存性は抹消され、単なる比例関係の特性として取り扱えるのではないか、というのが本発明の着眼点である。分母と分子共sの2次式であることに注目し、分母=分子となる条件は、
式数24から
数25を展開すると、aは右辺、左辺で消去されて
したがって、式数26、数27が同時に成り立つとき、式数23の分母と分子のsの多項式は相殺されて、センサの検出値Z(s)は、質量体の絶対速度V(s)に正比例した値として求められる。
ここで、伝達函数G2(s)の周波数依存性を抹消する条件が成立するためには、式数26から、積分要素1/(s-a)に用いられる極a>0でなければならない点に注目する。a>0である積分1/(s-a)は、元来不安定積分とされるものである。すなわち、「極の実数部aが正の符号を持つ積分(極s=aであり、かつa>0)」を、センサのサーボ回路に導入することで、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達特性の周波数依存性は完全に抹消され、単なる比例関係の特性として取り扱うことが可能となるのである。ちなみに、本明細書においては、積分1/sを完全積分、積分1/(s+a)は、aの符号に関係なく不完全積分と呼ぶ。また、a<0である積分1/(s-a)は、積分の極s=a<0であるため安定積分、a>0である積分1/(s-a)は、積分の極s=a>0であるため不安定積分と呼ぶことにする。
(4)地動速度に対する検出速度信号の伝達関数
次に、地動速度に対する質量体速度V(s)の伝達関数を求める。質量体の絶対変位X(s)は、式数20から
式数20のG1(s)を式数29に代入し、V(s)=sX(s)とおけば
式数30を式数28に代入すると
式数26から、K−(k+K)=0の条件を用いると、地動速度に対する検出速度信号Z(s)の伝達関数が次式で求められる。
2次の伝達関数である式数32において、安定条件が成立する条件、すなわち、極の実数部の符号が負になる条件は
したがって、前述した「伝達関数の分母と分子を相殺する条件」である、式数26、数27に加えて、式数33を満足するように、センサを構成するパラメータ、すなわち、ばね定数k、減衰係数c、比例ゲイン定数KP、微分ゲイン定数KD、信号検出用比例増幅器の比例ゲイン定数KX、「極の実数部の符号が正の不完全積分」の積分ゲイン定数KIと、積分の極の実数部aの値を選択すれば、広い周波数領域でフラットなゲイン・位相特性を有すると共に、制御面から安定な絶対速度検出センサが実現できる。
以上、本発明のポイントを要約すれば次のようである。制御要素として元来不安定とされる、a>0である積分1/(s-a)は、閉ループの制御系の中に局所的に組み込まれて、かつ適切なパラメータ選定が系全体で為されることで、センサ特性に大幅な改善効果をもたらすことができる。図3に、a=0.222として、本発明に導入された「極の実数部が正の符号を持つ不完全積分」である1/(s-a)、従来からサーボ回路に使用されている不完全積分1/(s+a)、及び、完全積分1/sのゲイン・位相特性を対比して示す。
積分1/(s-a)と1/(s+a)を比較すると、ゲイン特性は同一である。しかし、周波数が小さくf→0になると、積分1/(s+a)の位相はφ→0に漸近するのに対して、積分1/(s-a)の位相はφ→-180degに漸近する。この、従来積分と逆方向の位相遅れがセンサ特性に大幅な改善効果をもたらすのである。しかし、制御要素として不安定とされる上記積分1/(s-a)は、制御システム全体の伝達特性、すなわち、地動速度に対する検出速度信号Z(s)の伝達関数[式数32]には表れず、系全体としては安定性を維持できるのである。
2.速度センサの実施例
2−1.4つの条件のゲイン・位相特性比較
図4は、表1に示す4つの条件でパラメータを設定した場合について、絶対速度センサのゲイン・位相特性を示すものである。表1の4つの条件はいずれも、式数33の安定条件を満足している。条件(4)は、微分ゲインKD=0の場合である。速度帰還用増幅器をサーボ回路に並列に設けることにより、微分ゲインKDの選択によってセンサの検出周波数範囲が選択できる。微分ゲインKDを大きく設定すれば、より高い周波数まで検出範囲を広げることができる。
なお、他の実施例も同様であるが、図4のグラフにおいて、式数28から求められるセンサの検出値をZ→Z×(KD+c)/KXに置き換えて、ゲイン特性(図4上図のY軸の値)を整理している。
2−2.過渡応答特性
図5は、表1に示す条件(1)〜(3)でパラメータを設定した場合について、速度センサの過渡応答特性(t=0.002sでステップ入力を与えた場合)を示すものである。いずれの場合も、立ち上がり時間Tr<0.001秒であり、速度センサとして広い周波数帯域を有するゲイン・位相特性の解析結果(図4)と対応している。また、そのなかでも、検出周波数範囲が広い条件のサンサ程、応答性が速いことがわかる。
図6は、条件(1)のセンサにおいて、t=10sでステップ入力を与えて、長時間100秒までの過渡応答特性を求めたもので、本制御系の安定性を評価したものである。元来不安定とされる積分要素1/(s-a)が系に組み込まれていても、本発明センサは制御システムとして安定であることがわかる。
2−3.相殺条件から決まるパラメータに誤差がある場合
図7〜図8は、前述した速度センサが成立する条件[式数26、式数27]を満足するように選定された各パラメータのうち、バネ定数kと減衰係数cが所定の設定値に対して誤差がある場合、あるいは所定の設定値から変動した場合について、センサのゲイン・位相特性に与える影響を考察したものである。バネ定数kと減衰係数cは、センサの構造面から予め決まるもので、制御装置では任意に設定できないものである。
図7は、表1、条件(1)のパラメータにおいて、バネ定数kが0.5倍〜1.5倍変化した場合を示す。変化させるのは、kの値だけで、他のパラメータの既設定値は不変である。バネ定数kの変動は10Hz以下のゲイン特性に若干の影響を与えるが、主に0.1Hz以下の位相特性に大きな影響を与える。この理由は、kの値の変化は、式数26から積分の極aの値を変え、極aの値は低周波数領域のゲイン・位相特性に大きな影響を与えるからである。
図8は、表1、条件(1)のパラメータにおいて、減衰係数cが0.5倍〜1.5倍変化した場合を示す。ゲイン特性は、f=0.01〜10Hzまではフラットであるため、減衰係数cの変動は10Hz以上のゲイン特性に影響を与えると考えてよい。また1Hz以上の位相特性に大きな影響を与える。cの値の変化は、ゲイン・位相特性をフラットにするための2つの条件式[式数26、式数27]のうち、式数27の条件を不成立にさせる。この結果から、式数27を不成立にさせるパラメータの変動は、主にf=1〜10Hz以上のゲイン・位相特性に影響を与えることがわかる。
2−4.積分増幅器の有無、検出信号の取り出し方法がゲイン・位相特性に与
える影響
前節までの実施例の説明は、比例・微分・積分の各増幅器がすべて完備され、かつ、センサの速度信号出力=「信号検出用比例増幅器の出力+積分増幅器の出力」と仮定した場合であった。以下、下記項目、
(i)積分増幅器の有無、(ii)上記積分の極の符号、(iii)検出信号の取り出し方法、上記(i)〜(iii)がセンサのゲイン・位相特性に与える影響ついて述べる。図9は、図2の制御ブロック図を用いて、表2の各条件下における絶対速度センサのゲイン・位相特性の解析結果を示すものである。速度帰還用増幅器10は、そのゲインの大きさで検出周波数帯域を調整できるが、本発明の速度センサを実現する上で必須ではないため、全条件下で微分ゲイン定数KD=0とする。また、表2の条件(4)は、表1の条件(4)と同一のもので、式数26、式数27を同時に満足する最適パラメータを設定している。
(i)積分増幅器の有無がゲイン・位相特性に与える影響
図9において、条件(7)の結果は、積分回路12、13を省略し、信号検出用比例増幅器15だけを経由して速度検出信号とした場合である。f=20〜30Hzより低い周波数ではゲインは大きく低下し、また位相はΦ→+90degに漸近していく。したがって、積分回路を省略した比例増幅器だけの場合は、速度センサとして適用するのは難しい。
条件(6)の結果は、センサの速度信号出力=「信号検出用比例増幅器の出力+積分増幅器の出力」として、かつ、「極の実数部aが負の符号を持つ安定積分」を用いた場合を示す。条件(7)と比べて、ゲイン特性は大幅に改善され、位相進みも小さくなっている。速度検出周波数がf>0.1Hzでよい用途を対象とした場合は、十分に実用に供することができる。
(ii)上記積分の極の符号がゲイン・位相特性に与える影響
条件(6)は、式数26で決まる最適条件aの絶対値はそのままで、符号のみを負(a<0の安定積分)に変えた場合である。条件(5)は、積分器に完全積分(a=0)を用いた場合であり、条件(6)と比べて、ゲイン・位相特性は若干改善される。
(iii)検出信号の取り出し方法がゲイン・位相特性に与える影響
図10は、図2の制御ブロック図を用いて、表2の条件(4)で、
(1)速度信号出力=信号検出用比例増幅器の出力+積分増幅器の出力
(2)速度信号出力=積分増幅器の出力
上記(1)(2)を比較したものである。(2)の積分増幅器だけから検出信号を取り出す場合と比べて、(1)の比例増幅器と積分増幅器を加算して検出信号を取り出す場合は、検出周波数帯域は高域側で大幅に改善される。しかし、(2)の場合でも、f<10Hz以下の周波数では、フラットなゲイン・位相特性が得られるため、適用する用途次第では十分に実用に供することができる。
2−5.最適条件を満足させるための各式が、ゲイン・位相特性に与える影響
1−3節において、式数26、数27が同時に成り立つとき、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達特性の周波数依存性は完全に抹消され、広い周波数帯域でフラットなゲイン・位相特性が得られることを見出すことができた。ここで、式数26;a0= KI/(k+KP)、及び、式数27;KX= KI(c+KD)/(k+KP)のそれぞれの式が、ゲイン・位相特性のどの周波数帯域で大きな影響を与えるかについて考察する。
図11は、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、積分の極の実数部の値aが最適値a0=0.222を中心に、上下に変化させた場合(ξ=a/ a0=-0.5〜1.5をNo(1)〜No(6)で整理)のゲイン・位相特性を示す。変化させるのは、式数26のaの値だけで、式数27を満足させる条件、及び他のパラメータの既設定値は不変である。極の実数部aの値が上記最適値a0から離れる程、f=0.1Hz以下の低い周波数でゲインは低下する。また、極aの大きさは、f=1Hz以下の位相特性に大きな影響を与える。a>a0(ξ>1)の場合、位相は一層遅れてマイナスの方向へ移行し、a<a0(ξ<1)の場合、位相はプラスの方向へ移行する。
図12は、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、信号検出用比例ゲインKXを0.5〜1.5倍変化させた場合のゲイン・位相特性を示す。変化させるのはKXの値だけで、式数26を満足させる条件、及び他のパラメータの既設定値は不変である。KXを変化させても、f=0.01〜1.0Hz近傍まで、ゲイン・位相特性はフラットな状態を保つ。この結果から、理想的な絶対速度センサを実現する上での前述した2つの条件式 [式数26と式数27]のうち、低周波数領域のゲイン・位相特性を支配するのは、積分の極の実数部の値aの値を決定する式数26;a0= KI/(k+KP)であることが分かる。後述する絶対変位センサの場合も同様であり、2つの条件式 [式数41と式数42]のうち、低周波数領域のゲイン・位相特性を支配するのは、式数41である。ちなみに、式数26と式数41は同一の式である。
[第2実施形態]
3.本発明による絶対速度センサの改良
3−1.基本構造
図13の制御ブロック図で示す実施例は、信号検出用比例増幅器(図2の15)と微分増幅器(図2の10)と兼用して、かつ微分増幅器出力と積分器出力を加算することにより、質量体の絶対速度信号を求めたものである。本構成により、パラメータ数の低減と制御システムの簡素化が図れる。
図13の制御ブロック図において、サーボ回路30(2点鎖線で示す)は、前記相対変位信号U-Xを利得KPで増幅する変位増幅器31と、信号U-Xを利得KDの微分増幅器32を経て、この増幅された信号を微分する微分器33と、信号U-Xを利得KIの積分増幅器34を経て、この増幅された信号を積分する積分器35から構成され、これらの信号が加算器36により加算されて、電磁アクチュエータ(図示せず)を駆動する。37は、検知器としての前記静電容量型変位センサから得られた前記相対変位信号U-Xを、利得Kaで増幅する相対変位検出用増幅器である。また、全周波数領域で、同一振幅の地動速度が信号入力38から与えられるものとする。本実施例においては、前述した積分器35には、第1実施形態同様に、「極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いている。また、微分増幅器32の出力と、積分器35の出力を加算器37により加算することにより、地動絶対速度の検出信号Zが得られる。
3−2.伝達関数の分母と分子が相殺される条件
ここで、式数23における分母と分子のsの多項式を相殺する条件は、式数27においてKX=KDとおけば
したがって、式数34の条件が成り立つように各パラメータの値を選択すれば、広い周波数領域でフラットなゲイン・位相特性を有すると共に、制御面から安定な絶対速度検出センサが実現できる。
なお、本実施例では、信号検出用比例増幅器の代わりに微分増幅器を用いたが、他の増幅器(例えば、変位増幅器)を用いてもよい。
[第3実施形態]
4.本発明による変位センサの原理
4−1.基本構造
図14は、本発明の実施形態3に係る静電容量型変位センサの一例を示すモデル図である。51はセンサの各部材を収納する本体部(センサ外郭)、52は質量体、53は振動測定面B(基礎)に対して質量体52を機械的に支持するバネ、54は減衰器である。質量体52は電極間の空隙を検出する静電容量型の変位検知器の可動側電極も兼ねている。55は可動側電極(質量体52)の対抗面側に配置された固定側電極、56は前記2つの電極間の空隙部である。57は振動測定面Bに対して、質量体52を垂直方向に駆動する電磁アクチュエータである。空隙部56の間隙の大きさで静電容量Cが決まるため、この静電容量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの偏差ε=U-Xを、相対変位信号として検出できる。図14にサーボ回路58の概要を、図15にサーボ回路58を含む制御ブロック図の詳細を示す。サーボ回路58(2点鎖線で示す)は、前記相対変位信号を利得KPで増幅する変位増幅器59と、前記相対変位信号を利得KDの微分増幅器60を経て、この増幅された信号を微分する微分器61と、前記相対変位信号を利得KIの積分増幅器62を経て、この増幅された信号を積分する積分器63から構成され、これらの信号が加算器64により加算されて、電磁アクチュエータ7を駆動する信号となる。65は、前記変位検知器から得られた相対変位信号U-Xを、利得Kaで増幅する相対変位検出用増幅器である。また、全周波数領域で、同一振幅の地動変位が信号入力66から与えられるものとする。本発明の実施例においては、前述した積分器63には、「極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いている。積分器63の出力から、地動絶対変位の検出信号Zが得られる。
4−2.本発明による変位センサの特徴
さて、前述したように、第1及び第2実施形態で前述した速度センサは、
(1)地動絶対速度を検出するために、積分帰還用増幅器をセンサのサーボ回路に配置して、この積分帰還用増幅器から検出信号を取り出すことにより実現したものである。さらに、(2)積分器の極の構成と、検出信号を取り出す方法に工夫を施すと共に、センサの可動電極である質量体の絶対速度・絶対変位に対する検出信号の周波数依存性が極力小さくなるように、各制御要素のパラメータを最適化する。すなわち、上記(1)(2)を組み合わせることにより、広い周波数領域で、フラットなゲイン・位相特性が得られることを見出したものである。この考え方は、絶対変位検出センサにも適用できる。本発明を適用した絶対変位センサは、後述する解析結果が示すように、従来の提案では得られなかった次のような特徴を有する。
(1)広い周波数帯域で検出信号が得られる。特に低い周波数帯域での本発明の
効果は顕著である。
(2)大きな原点復帰能力を有する。質量体(可動側電極)を充分に大きな剛性の支持バネで支えることができ、かつ比例ゲインを大きくとれる。そのため、センサ単体の機械ばね剛性と制御時の比例ゲインを共に大きく設定できるために、衝撃に強く、構造体としても強固なセンサが実現できる。
以下、本発明適用の変位センサが成立するパラメータの最適条件を、理論解析により導出する。
4−3.変位センサの理論解析
(1)相対変位に対する絶対変位の伝達関数
地動絶対変位をU(s)、質量体(センサの可動側電極)の絶対変位をX(s)としたとき、相対変位E(s)[=U(s)-X(s)]に対する上記絶対変位X(s)の伝達関数は式数20から次のように得られる。また、実施形態1同様に、図15における実用微分回路61は、完全微分に置き換えて、すなわちs/(Ts+1)→ sとして求めた。相対変位検出用増幅器65の利得はKa=1とする。
したがって、
(2)質量体変位Xに対する検出変位信号の伝達関数
ここで、絶対変位出力=積分回路出力(センサ検出信号)と仮定する。
式数37に式数36を代入すると
(3)伝達関数の分母と分子が相殺される条件
式数38のsの多項式において、分母=分子となる条件は、
式数39、及び式数40から
したがって、式数41、数42が成り立つとき、センサの検出値Z(s)は、質量体の絶対変位X(s)に正比例した値として求められる。
(4)地動変位に対する検出変位信号の伝達関数
次に、地動変位U(s)に対する質量体変位X(s)の伝達関数を求める。
式数30から、X(s)とU(s)の関係を求める。V(s)=sX(s)として、
式数39、式数40の条件、K−(k+K)a=0及びk+K−(K+c)a=0から式数44は
式数45を式数43に代入すると、地動変位Uに対する検出変位信号Z(s)の伝達関数が次式で求められる。
1次の伝達関数である式数46において、安定条件が成立する条件、すなわち、極の実数部の符号が負になる条件は
この結果は、第1実施形態で前述した速度センサの場合の安定条件[式数33]と同一である。したがって、前述した「伝達関数の分母と分子を相殺する条件」である、式数41、式数42に加えて、式数47を満足するように、センサを構成するパラメータ、すなわち、ばね定数k、減衰係数c、比例ゲイン定数KP、微分ゲイン定数KD、「極の実数部の符号が正の不完全積分」の積分ゲイン定数KIと、積分の極の実数部aの値を選択すれば、広い周波数領域でフラットなゲイン・位相特性を有すると共に、制御面から安定な絶対変位検出センサが実現できる。
5.変位センサの実施例
5−1.3つの条件のゲイン・位相比較
図16は、表3に示す3つの条件でパラメータを設定した場合について、変位センサのゲイン・位相特性を示すものである。表3の3つの条件はいずれも、式数47の安定条件を満足するように選択されている。前述した速度センサ同様に、パラメータの選択によって、センサの検出周波数範囲が選択できることがわかる。
5−2.過渡応答特性
図17は、表3に示す3つの条件でパラメータを設定した場合について、速度センサの過渡応答特性(t=0.002sでステップ入力を与えた場合)を示すものである。いずれの場合も、立ち上がり時間Tr<0.5ms秒であり、絶対変位センサとして広い周波数帯域を有するゲイン・位相特性の解析結果(図16)と対応している。また、そのなかでも、検出周波数範囲が広い条件のセンサ程、応答性が速いことがわかる。
5−3.積分器の出力から絶対変位信号が得られる理由
さて、前述した絶対速度センサの場合も、積分器の出力だけから絶対速度信号が得られることを、[2-4]節で述べた。この速度センサと同様なサーボ回路で、積分器の出力から絶対変位信号が得られる理由は次の通りである。
もしセンサ・パラメータを絶対速度センサ用に設定された条件で、地動変位信号(全周波数領域で変位振幅一定)を入力した場合、その出力は地動速度信号を入力した場合に対して位相φ=0→90deg進み、またゲインは周波数(対数表示)に対して直線的に増大するカーブとなる。
たとえば、速度センサのパラメータ:表1の条件(1)と、変位センサのパラメータ:表3の条件(8)を比較する。
(1)変位信号出力=積分増幅器出力+比例増幅器出力から、変位信号出力=積分増幅器出力にすることで、ゲインが周波数に対して直線的に増大する状態から、周波数に対してフラットになる周波数はf=200→10Hz近傍にまで低下し、位相がφ=90degから降下を始める周波数はf=100→1Hz近傍にまで低下する。(図10参照)
(2)微分ゲインをKD=1.0→80.7に増大させることにより、ゲインが周波数に対してフラットになる周波数は、さらにf=10→1Hz近傍にまで低下し、逆に高い周波数領域では、フラットになる周波数はf=1000Hz近傍まで伸びる。
位相がφ=90degから降下を始める周波数はf=1→0.1Hz近傍にまで低下する。
(3)積分器の極の実数部a=0.222→1.41に増大させることにより、f<1Hz以下の周波数で、不安定積分の効果(図3参照)により、位相は一層大きく降下して、φ→0degに漸近していく。
したがって、検出信号を取り出す方法と、各制御要素のパラメータの最適化により、積分器の出力から広い周波数帯域で絶対変位信号が得られるのである。
[第4実施形態]
6.本発明による速度と変位の共用センサの原理
6−1.基本構造
図18は、本発明の実施形態4に係る静電容量型の速度と変位共用センサの一例を示す制御ブロック図である。サーボ回路100(2点鎖線で示す)は、前記相対変位信号U-Xを利得KPで増幅する変位増幅器101と、信号U-Xを利得KDの微分増幅器102を経て、この増幅された信号を微分する微分器103と、信号U-Xを利得KIの積分増幅器104を経て、この増幅された信号を積分する積分器105から構成され、これらの信号が加算器106により加算されて、電磁アクチュエータ(図示せず)を駆動する入力信号となる。107は、前記静電容量型の変位検知器から得られた相対変位信号U-Xを、利得Kaで増幅する相対変位検出用増幅器である。本発明の実施例においては、前述した積分器105には、前述した実施例同様に、「極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いている。微分増幅器102の出力と、積分器105の出力を加算器108により加算することにより、質量体(図示せず)の絶対速度信号Z1が得られる。また、積分器105の出力から質量体の絶対変位信号Z2が得られる。
6−2.速度センサと変位センサが共用できる条件
本実施例においては、速度センサと変位センサが共用できる条件は、実施形態2(速度センサ)で求めた式数34、及び、実施形態3(変位センサ)で求めた式数42から求めることができる。
したがって、式数48、式数49、式数50が同時に成り立つように、各パラメータを選定すれば、絶対速度検出と絶対変位検出が共用できるセンサが実現できる。
なお、速度センサの実施例である実施形態1のように、速度信号を取り出すのに信号検出用比例増幅器(利得KX)を別途設ける場合は、式数26、式数27、式数42が同時に成り立つ条件を求めれば良い。
7.速度と変位共用センサの実施例
表4に、式数48、式数49、式数50が同時に成り立つパラメータの一例を示す。
また、図19に検出速度信号のゲイン・位相特性、図20に検出変位信号のゲイン・位相特性の解析結果を示す。
[第5実施形態]
図21に、本発明の実施形態5に係る静電容量型の加速度センサの一例を示す制御ブロック図である。サーボ回路150(2点鎖線で示す)は、前記相対変位信号を利得KPで増幅する変位増幅器151と、前記相対変位信号を利得KDの微分増幅器152を経て、この増幅された信号を微分する微分器153と、前記相対変位信号を利得KIの積分増幅器154を経て、この増幅された信号を積分する積分器155から構成され、これらの信号が加算器156により加算されて、電磁アクチュエータ(図示せず)を駆動する信号となる。本発明の実施例においては、前述した積分器155には、前述した実施例同様に、「極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いている。また、微分増幅器152の出力と、積分器155の出力を加算器157により加算することにより、質量体(図示せず)の絶対速度信号ZVが得られ、さらに微分器158を経て加速度信号ZA[図21の検出加速度信号(1)]が得られる。図22に、表1における条件(1)で解析した加速度センサのゲイン・位相特性を示す。
加速度信号を得る他の方法として、本実施例では絶対速度信号ZVを利用したが、比例ゲインKPを他の増幅器のゲインと比べてより大きくとれるように、センサ・パラメータを式数26、式数27から設定し、加算器156の出力から加速度信号[図21の検出加速度信号(2)]を取り出してもよい。この場合、新たな微分器を追加する必要がないため、ノイズに対して有利となる。
以上、本発明を適用した絶対速度センサ・変位センサの「ゲイン・位相特性」、「過渡応答特性」の解析結果から次のことが明らかとなった。
(1)低い周波数0.01Hz以下から、1000Hz近傍までフラットなゲイン・位相特性が得られる。
(2)立ち上がり時間T=1ms以下の優れた応答性を有する。
(3)同一のセンサから、絶対変位信号、絶対速度信号、加速度信号を得ることができる。
また、本発明を適用した振動センサは、前述した従来提案と異なり、非制御時の固有振動数(センサ単体としての固有振動数)fn0と機械ばね定数k、及び、制御時の固有振動数fnと比例フィードバックゲインKPを充分に大きく設定できる。そのため、非制御時、制御時を問わず、質量体の位置保持機能が強いため、耐衝撃性に優れ、構造体として強固である。また、質量体の質量を十分に小さくできるため、センサの小型軽量化が容易となる。
[第6実施形態]
8.ポジティブ・フィードバックを用いる場合の速度センサの原理
8−1.基本構造
以下、従来から用いられている安定積分、すなわち、「極の実数部が負の符号を持つ積分」を用いた場合でも、不安定積分を用いた場合と同様に、低い周波数までフラットなゲイン・位相特性が得られる方法について述べる。具体的には、極の実数部が負の符号を持つ安定積分により積分帰還用増幅器を構成し、この積分帰還用増幅器を経由して、検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータの駆動部に正帰還(ポジティブ・フィードバック)するように構成したものである。この方法では、前記積分帰還用増幅器に安定積分
[a<0である積分1/(s-a)]を用いる。この安定積分を経由して、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータの駆動部に正帰還すると、極の実数部が正の不安定積分[a>0である積分1/(s-a)]を用いた場合と同様な作用により、制御系全体に大幅な改善効果をもたらすことができる。
安定積分を用いて正帰還を施すことで、不安定積分と同様な効果が得られる原理は次のようである。a>0である安定積分G1(s)=k/(s+a)の出力を入力側に正帰還した場合、オープンループの伝達函数G2(s)= G1(s)/[1-G1(s)]=K/(s+a-k)である。したがって、a<kとなるようにパラメータを設定すれば、「極の実数部が正の符号を持つ不安定積分」と等価となる。
図23にサーボ回路900を含む制御ブロック図の詳細を示す。サーボ回路900(2点鎖線で示す)は、前記相対変位信号を利得KPで増幅する変位増幅器901と、前記相対変位信号を利得KDの微分増幅器902を経て、この増幅された信号を微分する微分器903と、前記相対変位信号を利得KIの積分増幅器904を経て、この増幅された信号を積分する積分器905から構成され、これらの信号が加算器906により加算されて、電磁アクチュエータ(図示せず)を駆動する信号となる。本発明の実施例においては、前述した積分器905には、「極の実数部(極s=a)の符号が負の安定積分、すなわち、a<0である積分1/(s-a)」を用いている。907は前記相対変位信号を、利得KXで増幅する信号検出用比例増幅器である。908は、前記変位検知器から得られた相対変位信号U-Xを、利得Kaで増幅する相対変位検出用増幅器である。全周波数領域で、同一振幅の地動速度が信号入力909から与えられるものとする。信号検出用比例増幅器907の出力と、積分器905の出力を加算器909により加算することにより、質量体の絶対速度信号Zが得られる。積分器905の出力は、加算器906にマイナスの符号で入力され、さらに、加算器911でマイナスの符号で入力される。したがって、検知器から得られる相対変位信号は、積分帰還用増幅器を経由してアクチュエータの駆動部に正帰還される。
8−2.ポジティブ・フィードバックによる速度センサの理論解析
(1)相対変位に対する絶対変位の伝達関数
以下、ポジティブ・フィードバックを用いた本発明の原理を、前述した絶対速度センサの場合を対象にして、理論解析により明らかにする。地動絶対変位をU(s)、質量体(センサの可動側電極)の絶対変位をX(s)としたとき、相対変位E(s)[=U(s)-X(s)]に対する上記絶対変位X(s)の伝達関数G1(s)は、定数Tが十分に小さければ、図23の制御ブロック図から次のように得られる。実施形態1同様に、図23における実用微分回路903は、完全微分に置き換えて、すなわちs/(Ts+1)→ sとして求めた。また、相対変位検出用増幅器908の利得はKa=1とする。
質量体の絶対速度V(s)=sX(s)として
(2)質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達関数
ここで、センサのサーボ回路から速度信号出力を取り出す方法として、[1]節同様に、センサの速度信号出力=「信号検出用比例増幅器907の出力+積分器905の出力」を適用する。検出速度信号Z(s)は
式数53に式数52を代入し、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達函数G2(s)=Z(s)/V(s)とすれば、
(3)伝達関数の分母と分子が相殺される条件
ここで、式数54の伝達関数G2(s)の分母と分子のsの多項式を相殺する条件を求める。分母=分子となる条件は、
式数55から
式数56を展開すると、aは右辺、左辺で消去されて
したがって、式数57、式数58が同時に成り立つとき、式数59の分母と分子のsの多項式は相殺されて、センサの検出値Z(s)は、質量体の絶対速度V(s)に正比例した値として求められる。
ここで、伝達函数G2(s)の周波数依存性を抹消する条件が成立するためには、式数57から、積分要素1/(s-a)に用いられる極a<0でなければならない。a<0である積分1/(s-a)は、元来、安定積分とされるものである。すなわち、「極の実数部aが負の符号を持つ安定積分」をセンサのサーボ回路に導入し、かつ、ポジティブ・フィードバックを施すことで、「極の実数部aが正の符号を持つ不安値積分」を用いる場合と同様に、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達特性の周波数依存性は完全に抹消され、単なる比例関係の特性として取り扱うことが可能となる。
(4)地動速度に対する検出速度信号の伝達関数
次に、[1]節と同様に地動速度に対する質量体速度V(s)の伝達関数を求める。質量体の絶対変位X(s)は、式数51から
式数51のG1(s)を式数60に代入し、V(s)=sX(s)とおけば
式数61を式数59に代入すると
式数57、式数58の条件を用いると、地動速度に対する検出速度信号Z(s)の伝達関数が次式で求められる。
2次の伝達関数である式数63において、a<0であるため、
したがって、安定積分をセンサのサーボ回路に導入し、かつ、ポジティブ・フィードバック(正帰還)を施せば、a<0である限り、極の実数部の符号が負になる条件は常に成立するため系は安定である。
8−3.ポジティブ・フィードバックによる速度センサの実施例
図24は、安定積分で構成される表5の条件(12)〜条件(14)の絶対速度センサにおいて、ポジティブ・フィードバックを施した場合のゲイン・位相特性を示すものである。各条件を、第1実施形態同様に負帰還(図23の加算器906にマイナスの符号で入力)を施した場合を、同図中に対比して示す。
本実施例では安定積分を用いているため、前記積分帰還用増幅器に用いる積分器の直前の入力側に発生するドリフトなどに対して有利となる。
[2] 実用性を重視した場合の絶対速度・絶対変位センサについて
1.振動センサの適用範囲の拡大を図る方法
前章 [1]では、「極の実数部が正の符号を持つ積分」を導入して、質量体の速度・変位に対する検出信号の周波数依存性を僅少化する最適なパラメータ条件を選定することにより、広い周波数領域で、フラットなゲイン・位相特性が得られることを見出すことができた。また、制御要素として元来不安定とされる、a>0である積分1/(s-a)は、フィードバック制御の閉ループの中に局所的に組み込まれて、かつ適切なパラメータ選定が系全体で為されることで、制御システム全体の伝達特性、すなわち、地動速度、あるいは地動変位に対する検出速度信号の伝達関数には表れず、系全体としては安定性を維持できるのである。また、従来から用いられている安定積分を正帰還することで、不安定積分の特性を等価的に持たせる場合も同様であった。これらの結果は、振動センサが適用される環境温度が整備され、また振動センサのサーボ回路における直流ドリフトの発生防止が十分に配慮されていれば問題はない。たとえば、振動センサの主信号をできるだけデジタル回路で処理し、またアナログ回路であっても、温度係数が小さく、精度の高い回路素子で構成されると共に、実消費電力/許容電力が十分小さく設計されるならば、実用性に支障はなかった。
そこで本章では、本発明の振動センサの適用範囲の拡大を図るために、振動センサを適用するより過酷な環境条件を配慮して、またサーボ回路を安価なアナログ素子で構成した場合でも、一層の安定性が保証されると共に、実用上充分に満足できるセンサ特性を得る方法について述べる。
(1)センサ・パラメータを最適値ではなく、安定側に設定する方法
(2)「準最適条件」を用いる方法
まず、絶対速度センサを対象にして上記(1)から説明する。
2.不安定積分を用いて、センサ・パラメータを最適値ではなく安定側に設定
する方法
2−1.極の実数部aの値を最適値ではなく、安定側に設定する方法
図25は、図2の制御ブロック図において、地動速度入力17に速度一定のステップ入力を与えた場合の、検出速度出力(ステップ応答)を示すグラフである。同図中に記載されたξ=a/ a0の条件は、第1実施形態で示した絶対速度センサを対象に、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、積分の極の実数部の値aが最適値(基準値)a0=0.222を中心に、上下に変化させた場合(ξ=a/ a0=-0.5〜1.5をNo(1)〜No(6)で整理)を示す。変化させるのはaの値だけで、他のパラメータは一定である。上記同一条件におけるゲイン・位相特性は、既に図11に記載している。a>a0(ξ>1)の場合、検出速度信号は増大し、a<a0(ξ<1)の場合は、検出速度信号は零に収束していく。この結果から、a<a0(ξ<1)の範囲に設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく安定に減衰する作用を有する。さらに、ξ>0となるように極の実数部aの値を設定することで、極の実数部aの符号は正の値を保つため、低周波数領域におけるゲイン・位相特性の改善が図れる。
要約すれば、前記支持ばねのばね定数をk、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記積分帰還用増幅器に不完全積分を用いて、かつ、この不完全積分の極の実数部の値をaとして、式数26からa0= KI/(k+KP)を定義したとき、不完全積分の極の実数部a= a0となるように設定すれば、低周波数領域において、理想的なゲイン・位相特性が得られる。また、0<a<a0(0<ξ<1)となるように設定すれば、ドリフト発生に対しても安定で、かつ、極の実数部の値a>0の積分を用いているため、ゲイン・位相特性が改善された性能を持つ振動センサが実現できる。
2−2.積分ゲイン定数KIの値を最適値ではなく、安定側に設定する方法
図26は、図2の制御ブロック図において、地動速度入力17に速度一定のステップ入力を与えた場合の、検出速度出力(ステップ応答)を示すグラフである。同図中に記載されたη=KI /KI0 の条件は、第1実施形態で示した絶対速度センサを対象に、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、積分ゲイン定数KIを最適値(基準値)KI0=87.7を中心に、上下に変化させた場合(η=KI /KI0 =0.6〜1.6をNo(1)〜No(6)で整理)を示す。ここで、KI0=a(k+KP)である。変化させるのはKIの値だけで、他のパラメータは一定である。図26の、ステップ応答において、t=2.0秒における出力の値がηの設定で異なるのは、KI の値により検出出力Z(s)の絶対値が変わるからである。上記同一条件におけるゲイン・位相特性を、図27に示す。KI<KI0(η<1)の場合、検出速度信号は増大し、KI>KI0(η>1)の場合は、検出速度信号は零に収束していく。この結果から、KI>KI0(η>1)の範囲に設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく安定に減衰する作用を有する。η=KI /KI0 を大きく設定する程、より安定側に移行するが、ゲイン・位相特性が劣化していく。適用実験の結果、1.0≦η≦1.2の範囲に設定すればベストであり、1.0≦η<1.5の場合でも、実用上十分な性能が得られた。
2−3.比例ゲイン定数KPの値を最適値ではなく、安定側に設定する方法
図28は、図2の制御ブロック図において、地動速度入力17に速度一定のステップ入力を与えた場合の、検出速度出力(ステップ応答)を示すグラフである。同図中に記載されたφ=KP /KP0 の条件は、第1実施形態で示した絶対速度センサを対象に、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、比例ゲイン定数KPを最適値(基準値)KP0=316を中心に、上下に変化させた場合(φ=KP /KP0=0.4〜1.4をNo(1)〜No(6)で整理)を示す。変化させるのはKPの値だけで、他のパラメータは一定である。ここで、KP0=KI/a-kである。図28の、ステップ応答において、t=2.0秒における出力の値がφの設定で異なるのは、KPの値により検出出力Z(s)の絶対値が変わるからである。上記同一条件におけるゲイン・位相特性を、図29に示す。KP>KP0(φ>1)の場合、検出速度信号は増大し、KP<KP0(φ<1)の場合は、検出速度信号は零に収束していく。この結果から、KP<KP0(φ<1)の範囲に設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく安定に減衰する作用を有する。φ=KP /KP0を小さく設定する程、より安定側に移行するが、ゲイン・位相特性が劣化していく。適用実験の結果、0.8≦φ≦1.0の範囲に設定すればベストであり、0.4<φ≦1.0の場合でも、実用上十分な性能が得られた。
3.「安定積分+ポジティブ・フィードバック」を用いて、センサ・パラメータを最適値ではなく安定側に設定する方法
3−1.極の実数部aの値を最適値ではなく、安定側に設定する方法
図30は、図2の制御ブロック図において、地動速度入力17に速度一定のステップ入力を与えた場合の、検出速度出力(ステップ応答)を示すグラフである。同図中に記載されたξ=a/a0の条件は、第1実施形態で示した絶対速度センサを対象に、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、積分の極の実数部の値aが最適値(基準値)a0=-0.222を中心に、上下に変化させた場合(ξ=a/a0=-0.5〜1.5をNo(1)〜No(6)で整理)を示す。変化させるのはaの値だけで、他のパラメータは一定である。上記同一条件におけるゲイン・位相特性を図31に示す。a<a0(ξ<1)の場合、検出速度信号は増大し、a>a0(ξ>1)の場合は、検出速度信号は零に収束していく。この結果は、[2-1]節で述べた不安定積分を負帰還する場合とは逆となる。したがって、a>a0(ξ>1)の範囲に設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく安定に減衰する作用を有する。さらに、ξ<1.5となるように極の実数部aの値を設定することで、低周波数領域におけるゲイン特性の低下も十分に小さく、位相特性の進みも抑制できる。
要約すれば、前記支持ばねのばね定数をk、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記積分帰還用増幅器に安定な不完全積分を用いて、かつ、この不完全積分の極の実数部の値をaとして、式数57からa0= -KI/(k+KP)を定義したとき、不完全積分の極の実数部a= a0となるように設定すれば、低周波数領域において、理想的なゲイン・位相特性が得られる。また、1≦ξ≦1.5となるように設定すれば、ドリフト発生に対しても安定で、かつ、ゲイン・位相特性が十分に改善された性能を持つ振動センサが実現できる。
3−2.積分ゲイン定数KIの値を最適値ではなく、安定側に設定する方法
図32は、図2の制御ブロック図において、地動速度入力17に速度一定のステップ入力を与えた場合の、検出速度出力(ステップ応答)を示すグラフである。同図中に記載されたη=KI /KI0 の条件は、第1実施形態で示した絶対速度センサを対象に、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、積分ゲイン定数KIを最適値(基準値)KI0=87.7を中心に、上下に変化させた場合(η=KI/KI0 =0.6〜1.6をNo(1)〜No(6)で整理)を示す。ここで、式数57からKI0=-a(k+KP)である。変化させるのはKIの値だけで、他のパラメータは一定である。図32の、ステップ応答において、t=2.0秒における出力の値がηの設定で異なるのは、KI の値により検出出力Z(s)の絶対値が変わるからである。上記同一条件におけるゲイン・位相特性を、図33に示す。KI>KI0(η>1)の場合、検出速度信号は増大し、KI<KI0(η<1)の場合は、検出速度信号は零に収束していく。この結果は、[2-2]節で述べた不安定積分を負帰還する場合とは逆となる。したがって、KI<KI0(η<1)の範囲に設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく安定に減衰する作用を有する。η=KI /KI0 を小さく設定する程、より安定側に移行するが、ゲイン・位相特性が劣化していく。適用実験の結果、0.6≦η≦1.0の範囲に設定すれば、実用上十分な性能が得られた。
3−3.比例ゲイン定数KPの値を最適値ではなく、安定側に設定する方法
図34は、図2の制御ブロック図において、地動速度入力17に速度一定のステップ入力を与えた場合の、検出速度出力(ステップ応答)を示すグラフである。同図中に記載されたφ=KP/KP0 の条件は、第1実施形態で示した絶対速度センサを対象に、表1、条件(1)のパラメータを基本にして、比例ゲイン定数KPを最適値(基準値)KP0=316を中心に、上下に変化させた場合(φ=KP /KP0=0.4〜1.4をNo(1)〜No(6)で整理)を示す。変化させるのはKPの値だけで、他のパラメータは一定である。ここで、式数57からKP0=-KI/a-kである。図34の、ステップ応答において、t=2.0秒における出力の値がφの設定で異なるのは、KPの値により検出出力Z(s)の絶対値が変わるからである。上記同一条件におけるゲイン・位相特性を、図35に示す。KP<KP0(φ<1)の場合、検出速度信号は増大し、KP>KP0(φ>1)の場合は、検出速度信号は零に収束していく。この結果は、[2-3]節で述べた不安定積分を負帰還する場合とは逆となる。この結果から、KP>KP0(φ>1)の範囲に設定することにより、ステップ状の速度入力に対して、あるいは、緩やかな直流成分のドリフトが前記積分帰還用増幅器の入力側に発生した場合に対しても、センサ出力は発散することなく安定に減衰する作用を有する。φ=KP /KP0を小さく設定する程、より安定側に移行するが、ゲイン・位相特性が劣化していく。適用実験の結果、1.0≦φ≦1.4の範囲に設定すれば実用上十分な性能が得られた。
なお、上記[1] [2]節において、極の実数部a、積分ゲイン定数KI、比例ゲイン定数KPの最適値a0、KI0、KP0を理論的に求める場合を示したが、[4]章(7)で詳細に述べるように、実験的、あるいは、数値解析シミュレーションから試行錯誤的に求めてもよい。
4.「準最適条件」による方法
以下、従来から用いられている安定積分、すなわち、「極の実数部が負の符号を持つ積分」の場合でも、実用上充分なセンサ特性を得る方法、すなわち、質量体の絶対速度・絶対変位に対する検出信号の周波数依存性が抹消される条件が近似的に成り立つ「準最適条件」について述べる。この準最適条件でセンサ・パラメータを選定すれば、「極の実数部が負の符号を持つ安定積分」を用いても、ゲイン・位相特性が充分に低い周波数までフラットな、実用上充分な性能を持つ絶対速度・絶対変位センサが実現できる。以下、準最適条件を次の(1)〜(3)のステップで求める。
(1)伝達関数G2(s)を求める
質量体速度V(s)に対する検出信号Z(s)の伝達関数をG2(s)とする。絶対速度センサの場合は、前述した式数23に相当する。
(2)パラメータの最適条件
伝達関数G2(s)の分母・分子を相殺する条件式において、積分の極aは、できるだけ0に近い値を選ぶ。たとえば、絶対速度センサの場合、式数26のa=KI/(k+KP)→0となるように、機械的バネ定数k、積分ゲイン定数KI、比例ゲイン定数KPを選ぶ。次に、式数27のKX=KI(c+KD)/(k+KP)を満足させるように各パラメータを選定する。
(3)パラメータの「準最適条件」の決定
上記で選んだa=a0とおき、他のパラメータは同一のままで、極の符号だけをa=-a0に置き換える。
[第7実施形態]
図36は、第1実施形態である絶対速度センサを対象にして、表5に示す条
件下でのゲイン・位相特性を示すものである。条件(15)は「極の実数部が正の符号を持つ積分(不安定積分)」を用いた場合を示し、条件(16)は安定積分を用いて、積分の極の実数部aの値をa=-0.2〜-0.02の範囲で変えた場合(6ケース)を示す。
条件(16)において、aの絶対値が小さいほど、低い周波数までゲインの低下は小さく、位相の進みは小さい。たとえば、a=-0.02の場合、f=0.01Hzまでゲインの低下は無視出来るほど僅少である。位相の進みも小さく、f=0.1Hzにおける位相の進みφは5deg以下である。a=-0.1の場合、f=0.1Hzにおけるゲインの低下は0.5dB程度、位相の進みφは20deg程度である。a=-0.2の場合、f=0.1Hzにおけるゲインの低下は1.5dB程度、位相の進みφは35deg程度である。aの値を様々に変えた適用実験の結果、次のことが明らかとなった。要約すれば、(1)前記支持ばねのばね定数をk、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKIとして、a0= KI/(k+KP)を定義したとき、前記不完全積分の極が負の符号を持つ実数部a≒-a0となるように構成し、かつ、0<a0≦0.2となるように構成すれば、実用上十分なセンサ特性が得られた。
(2)上記(1)において、さらに、0<a0≦0.1となるように構成すれば、ほぼベストに近いセンサ特性が得られた。
なお、極の実数部の最適値a0を理論的に求める場合を示したが、[4]章(7)で詳細に述べるように、ステップ応答から実験的に求めてもよい。
[3] 本発明を適用したアクティブ精密除振台
以下、本発明をアクティブ精密除振台の制御システムに適用した実施例について説明する。本発明の適用により、たとえば、f=0.01〜1Hzの低周波数領域において、優れた除振特性を有する精密除振台が実現できる。
[第8実施形態]
図37は、本発明を適用した精密除振台における相対変位と絶対変位の制御方法の一例を示すモデル図である。アクティブ精密除振台は、図44で説明した同様の構造のものである。精密除振台には、前述したように、(1)定盤(質量体)が設置された床面(基礎)と定盤間の相対変位、(2)慣性空間に対する定盤の絶対変位、上記(1)(2)の制御が必要とされる。(1)の相対変位については、床面に対して設置された変位センサにより、比較的容易にその検出が可能である。(2)の絶対変位を検出するために、本実施例では低い周波数までフラットなゲイン・位相特性を有する本発明の絶対速度センサを用いて、この絶対速度センサの出力を不完全積分で積分して、絶対変位信号を得ている。
一点鎖線で囲まれた部分201が定盤(図44の401に相当する)の質量M、粘性C、ばねKを負荷とする除振装置の制御対象を示す。202は相対変位を制御するための制御装置(伝達函数GR )、203は絶対変位を制御するための制御装置(伝達函数GA
)であり、この2つの制御装置の出力から制御対象を駆動する駆動力が得られる。204は絶対速度センサであり、たとえば、本発明の第1実施形態で説明したものである。205は積分器であり、積分器205により絶対速度センサ204の出力206を積分して、近似的な絶対変位信号207を得ている。積分器205は、従来からサーボ回路に用いられている「極の実数部の符号が負の不完全積分(極s=-aであり、a=0.628の安定積分)」である。
図43に、従来加速度センサを用いて、精密除振台に相対変位と絶対変位制御を施す場合のモデル図を示す。一点鎖線で囲まれた部分701が(図44の401に相当)の質量M、粘性C、ばねKを負荷とする除振装置の制御対象を示す。702は相対変位を制御するための制御装置(伝達函数GR )、703は絶対変位を制御するための制御装置(伝達函数GA
)、704は加速度センサ、705、706は積分器である。積分器705により加速度センサの出力707を積分して近似的な速度信号708を得て、さらにこの信号708を積分器706により積分して近似的な変位信号709を得ている。積分器705,706は、いずれも従来からサーボ回路に用いられている「極の実数部の符号が負の不完全積分(極s=-aであり、a=0.628の安定積分)」である。
図38に、本実施例における精密除振台の除振特性(地動変位に対する定盤変位のゲイン・位相特性)を示す。同図中に、従来加速度センサを用いた場合(図43)を対比して示す。解析条件は、いずれも、M=60Kg、C=150Ns/m、a=2×π×0.1=0.628である。また、相対変位の比例ゲインをKPR、絶対変位の比例ゲインをKPAとしたとき、KPA/ KPR=5に設定した。ちなみに、加速度フィードバックを施すことにより、共振点(f=30Hz)近傍での共振ピークを抑制でき、速度フィードバックを施すことで、たとえば、1
<f<10Hzの範囲における除振性能を改良できる。但し、本発明の効果を従来例と比べてより明確に相対評価するために、これらの制御は施さない場合を記載した。
ゲイン特性を比較すると、従来加速度センサを用いた場合は、f=0.1Hz近傍で+10dB程度のピークが発生する。本発明の絶対速度センサを用いた場合は、ゲインのピークは僅少である。位相特性を比較すると、0.01 <f<1Hzの範囲で、いずれの場合も位相遅れが発生するが、従来加速度センサの場合の方が位相遅れは大きい。この解析結果から、アクティブ精密除振台の制御システムに本発明の絶対速度センサを適用することにより、除振特性の改善が図れることがわかる。
[第9実施形態]
図39は、本発明を適用した精密除振台における相対変位と絶対変位の制御方法の一例を示すモデル図である。絶対変位を検出するために、本実施例では低い周波数までフラットなゲイン・位相特性を有する本発明の絶対変位センサを用いている。一点鎖線で囲まれた部分251が定盤(質量体)の質量M、粘性C、ばねKを負荷とする除振装置の制御対象を示す。252は相対変位を制御するための制御装置(伝達函数GR)、253は絶対変位を制御するための制御装置(伝達函数GA)であり、この2つの制御装置の出力から制御対象を駆動する駆動力が得られる。254は絶対変位センサであり、たとえば、本発明の第3実施形態で説明したものである。
図40に、本実施例における精密除振台の除振特性を、従来加速度センサを用いた場合(図43)を対比して示す。解析条件は、いずれも、M=60Kg、C=150Ns/m、a=2×π×0.1=0.628である。また、相対変位の比例ゲインをKPR、絶対変位の比例ゲインをKPAとしたとき、KPA/ KPR=5に設定した。従来加速度センサを用いた場合とゲイン特性を比較すると、従来加速度センサを用いた場合は、f=0.1Hz近傍で+10dB程度のピークが発生するのに対して、本発明の絶対変位センサを用いた場合は、f=0.1Hz近傍で-5dB程度に低減する。位相特性を比較すると、0.01 <f<1Hzの範囲で、従来加速度センサの場合は、最大-90deg程度の位相遅れが発生するが、絶対変位センサを用いた場合は、位相遅れは最大-45deg程度に低減する。この解析結果から、アクティブ精密除振台の制御システムに本発明の絶対変位センサを適用することにより、除振特性の改善が図れることがわかる。
[第10実施形態]
図41は、本発明を適用した精密除振台における相対変位と絶対変位の制御方法の一例を示すモデル図である。絶対変位を検出するために、本実施例では本発明の絶対速度センサを用いると共に、速度センサの出力から絶対変位信号を得るために、「極の実数部の符号が正の不完全積分」、すなわち、a>0である積分1/(s-a)を用いている。一点鎖線で囲まれた部分801が定盤(質量体)の質量M、粘性C、ばねKを負荷とする除振装置の制御対象を示す。802は相対変位を制御するための制御装置(伝達函数GR)、803は絶対変位を制御するための制御装置(伝達函数GA)であり、この2つの制御装置の出力から制御対象を駆動する駆動力が得られる。
804は絶対速度センサであり、たとえば、本発明の第1実施形態で説明したものである。805は積分器であり、積分器805により絶対速度センサ804の出力806を積分して、近似的な絶対変位信号807を得ている。積分器805は、「極の実数部の符号が正の不完全積分(極s=aであり、a=0.628)」を用いている。
図42に、本実施例における精密除振台の除振特性を、同図中に、従来加速度センサを用いた場合(図44)を対比して示す。解析条件は、いずれも、M=60Kg、C=150Ns/m、a=2×π×0.1=0.628である。また、相対変位の比例ゲインをKPR、絶対変位の比例ゲインをKPAとしたとき、KPA/ KPR=5に設定した。
従来加速度センサを用いた場合とゲイン特性を比較すると、従来加速度センサを用いた場合は、f=0.1Hz近傍で+10dB程度のピークが発生するのに対して、本発明の「絶対速度センサ+極の実数部の符号が正の不完全積分」を用いた場合は、f=0.1Hz近傍で-5dB程度に低減する。位相特性を比較すると、0.01 <f<1Hzの範囲で、従来加速度センサの場合は、最大-90deg程度の位相遅れが発生するが、本発明の場合は、位相遅れは最大-25deg程度に低減する。この効果は、前述した絶対変位センサを用いた場合よりも大きい。すなわち、
(1) 本発明の絶対速度センサ
(2)「極の実数部の符号が正の不完全積分」が組み込まれたアクティブ精密除振台の制御システム
上記(1)(2)を組み合わせた相乗効果により、より優れた除振性能を有するアクティブ精密除振台が実現できるのである。
[4] 補足説明
(1)本発明による振動センサの応用について
以上、本発明の振動センサを精密除振台に適用した場合について説明した。しかし、絶対変位、絶対速度が直接出力でき、耐衝撃性に優れ、小型・軽量で、広い周波数帯域でゲイン・位相特性がフラットな特性を有するセンサの用途は、精密除振台に留まらない。
アクティブ制振装置の構成は、大きく2つに分類できる。加振源と制振対象機器の間に制振装置を挿入して振動を遮断するサスペッション・タイプと、対象機器上の付加質量を駆動したときの反力を利用して、振動を打ち消す付加質量駆動形である。サスペッション形は、たとえば、精密除振台として、図38に記載しているものである。付加質量駆動形として、アクチュエータにリニアモータ、ボールねじ、レシプロモータ等を使用してフィードバック制御を行うアクティブ動吸振器が広く用いられている。アクティブ動吸振器の場合、ばね力や減衰力に相当する力をアクチュエータで任意に発生させることができるため、ばね定数や減衰定数が機械的に固定されたパッシブ形動吸振器と比べて、精度の高い制振制御が可能である。このアクティブ動吸振器を対象として、可動部(付加質量)の慣性空間に対する絶対速度・絶対変位が、広い周波数帯域で検出できる本発明の振動センサを適用すれば、従来加速度センサ(あるいは相対変位センサ)を用いた場合ではできなかった優れた制振制御が実現できる。
今日、工場、建設作業場で使用される加工機、圧縮機による振動、自動車走行に起因する地盤・路面振動による集合・一般住宅への環境問題として、振動・騒音対策がクローズアップされている。そのための防振対策としてアクティブ振動制御技術の適用が有力である。例えば、省エネルギ化を図るために乗用車の軽量化が求められているが、軽量化に付随する車の振動増加に対する解決策として、あるいは、大地震に対する橋梁や建物の破壊を防止する対策として、また基準座標の無い宇宙空間での柔軟構造物の運動制御に対して、理想的なアクティブ制御を施すためには、制御対象物の絶対変位信号、あるいは絶対速度信号を広い周波数帯域で検出でき、小型・軽量で、耐衝撃性に優れ、取り付け方向の制約の無い絶対速度・絶対変位センサが必須である。
(2)センサの速度信号出力の取出し方について
速度センサの実施例である[1]章の[1-3]節において、センサの速度信号出力=「比例増幅器の出力+積分器の出力」と仮定した。この仮定の根拠について、理論解析を用いてより詳細に述べる。センサの速度信号出力を取り出す方法として、たとえば、上記以外に次の方法が考えられる。
(i)比例増幅器の出力だけを利用する
(ii)積分器の出力だけを利用する
(iii)2つの積分の和(第1積分器の出力+第2積分器の出力)を利用する
最初に上記(i)の場合について考察する。センサの速度信号出力は
式数65に式数21を代入すると
式数66における分母と分子のsの多項式を相殺する条件は、
式数67から得られる次式は、[第1実施形態]の場合と同一である。
しかし、式数68から
すなわち、質量体速度V(s)に対する検出速度信号Z(s)の伝達特性の周波数依存性を無くするためには、ばね定数と比例ゲインを限りなくゼロにしなければならない。これは、可動側電極(質量体)の位置保持機能と衝撃に弱く、構造体として脆弱な従来提案センサと同様な課題を抱えることになる。
上記(ii)の場合、センサの速度信号出力は
式数71に式数20を代入すると
式数72から、K−(k+K)a=0の条件を用いると、
式数73において、K>(k+K)aとすれば、Z(s)/V(s)は1次のローパスフィルタとなる。したがって、[1]章の[2-4]節で前述したように、低い周波数領域ではフラットなゲイン・位相特性が得られるため、適用する用途次第では実用に供することができる。
上記(iii)の場合、質量体速度V(s)に対する速度信号出力Z(s)の伝達関数において、「分母のsの次数」>「分子のsの次数」となる。したがって、分母と分子のsの多項式を相殺する条件が成立しない。
(3)本発明に適用する「極の実数部の符号が正の不完全積分」について
実施例では、「極の実数部の符号が正の不完全積分」に最もシンプルな1次の積分、すなわち、ラプラス演算子sで記述した場合、1/(s-a)を用いた場合を説明したが、本発明に適用できる積分の形態は、上記1/(s-a)に限定されない。
特性方程式(伝達関数の分母)が、G(s)=ansn+an-1sn-1 ・・・ +a0で記述されるsの多項式1/G(s)でもよい。要は、実数部の符号が正の極(特性方程式の根)を有すればよい。あるいは、伝達関数は、sの多項式では記述できない非線形でもよい。非線形の微分方程式を、動作点近傍で線形化したときの近似的な伝達関数から、実数部の符号が正の極となるように特性方程式を求めればよい。
あるいは、a>0である安定積分G1(s)= k2/(s+a)の出力を入力側に正帰還した場合、オープンループの伝達函数G2(s)= G1(s)/[1-G1(s)]= k2/(s+a-k2)である。したがって、a<k2となるように回路単体で閉ループを有する積分器のパラメータを設定すれば、「極の実数部が正の符号を持つ不安定積分」と等価となる。
また、実施例の説明では、信号伝達を連続系として取り扱ったため、ラプラス変換を用いたが、離散系(サンプル値制御系)として取り扱う場合はz変換、(あるいは、拡張z変換)を用いてもよい。たとえば、最適なセンサ・パラメータを選定する方法として、ラプラス変換演算子sの代わりにz変換演算子の式で記述される、「質量体速度あるいは質量体変位に対する検出信号」の伝達関数を求め、周波数依存性を抹消するように前記伝達関数の分母・分子を相殺する条件を求めてもよい。ラプラス変換演算子sで記述される伝達関数は連続系の微分方程式に対応し、z変換演算子で記述される伝達関数は離散系の差分方程式に対応している。そのため、微分方程式、差分方程式の左右の各項を相殺する条件から、周波数依存性を抹消するパラメータの条件を求めても良い。
(4)絶対変位信号を得る方法
本発明を適用した速度センサの絶対速度検出信号から、絶対変位信号を得る方法として、前述したように絶対速度と絶対変位の共用センサを用いてもよいが、絶対速度検出信号に別途積分器を経由して絶対変位信号を得てもよい。
本センサを、たとえばアクティブ除振台に適用する場合、別途設ける前記積分器はセンサに内蔵してもよいが、アクティブ除振台本体の制御システム側に設けても良い。
(5)減衰器について
静電容量型センサの場合、アクチュエータの減衰作用は電極間の空隙による粘性効果(スクイーズ効果)によって生じるため、減衰器を敢えて独立して設置する必要はない。しかし、より大きな減衰作用が要求される場合は、減衰器を個別に設けても良い。
(6)インテリジェント・センサについて
図7、図8に示したように、バネ定数k、減数係数cが変動すると、速度センサの場合は、式数26、式数27で示す最適条件、変位センサの場合は、式数41、式数42で示す最適条件を満たさなくなる。この対策として、たとえば、
(1)減数係数cは、隙間の変化で発生する粘性流体のスクイーズ作用が極力小さく、微分ゲイン定数KD≫cとなるように電極形状を設計する。
(2)バネ定数kは、センサ自身の固有振動数fn(質量体mは不変)を常時計測して、この固有振動数fnからバネ定数kを求める。
上記(2)の結果を基に、最適条件を満足するように、たとえば、デジタル・コントローラによる演算プログラムで各ゲイン定数を決定すれば、いかなる環境条件の変化、経年変化によらず、センサはベストの性能を維持できる。但し、センサを真空中で使用する場合は、c→0となる。
(7)ゲイン・位相特性とステップ応答の関係について
振動センサが低い周波数(たとえば、f=0.01〜0.1Hz)までフラットな上記ゲイン・位相特性を有するためには、
(1)極の実数部が正の積分器(不安定積分)から検出信号を取り出すと共に、この積分器の出力を入力側に負帰還する。
(2)極の実数部が負の積分器(安定積分)から検出信号を取り出すと共に、この積分器の出力を入力側に正帰還する。
上記(1)(2)のいずれかの手段の導入が必須である。第2章の[2] [3]節において、上記(1)(2)のいずれ場合も、ゲイン・位相特性が低い周波数領域(たとえば、f=0.01〜0.1Hz近傍)でフラットな特性を有するとき、地動ステップ入力に対して、センサ出力は時間軸に並行なステップ状の応答を示した。周波数f→0に漸近したとき、位相がφ=0から低い方へ遅れる場合は、地動ステップ入力に対してセンサ出力は発散し、逆に位相がφ=0から高い方へ進む場合は、センサ出力は零に収束する。したがって、ゲイン・位相特性を求める代わりに、地動ステップ入力に対する応答曲線を求めれば、サーボ回路において、上記(1)(2)が効果的に機能し、かつ、その他のセンサ・パラメータ(各増幅器のゲイン定数等)が適切に設定されているかどうかが評価できる。
速度センサと変位センサの最適なパラメータを、前述した各式 [たとえば、式数26、式数27、あるいは、式数41、数42]から理論的に求める代わりに、上記ステップ応答から試行錯誤的に求めてもよい。ステップ入力を与える方法として、センサ本体に運動を与える代わりに、ステップ入力に相当する電気信号をサーボ回路に与えてもよい。たとえば、第2章[2-1]節において、地動ステップ速度入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答(時間軸に対して並行な出力)を示すときの極の実数部a0、及び、比例ゲイン定数KP、積分ゲイン定数KI等の最適な組み合わせを実験的に求める。ここで、上記a0だけに注目して、このa0を極の最適値とする。次に、極以外のパラメータは一定のままで、積分器に実際に適用する極の実数部をa、ξ=a/a0を定義して、0<ξ≦1の範囲に収まるように、前記極の実数部aを、安定性とセンサのゲイン・位相特性の兼ね合いから決定すればよい。同様に、積分ゲイン定数の最適値KI0、比例ゲイン定数の最適値KP0を求めて、第2章[2] [3]節で述べたように、安定性とゲイン・位相特性が両立する積分ゲイン定数KI、比例ゲイン定数KPを決定してもよい。
ステップ応答の実測が困難ならば、たとえば、f=0.01〜0.1Hz近傍で位相特性がΦ→ 0に漸近するセンサ・パラメータ(a0、KI0、KP0等)を求めてもよい。
(8)任意のゲイン・位相特性を得る方法について
以上、本発明の実施例では、絶対変位、絶対速度、加速度検出信号のゲイン・位相特性は、広い周波数領域で、周波数に対してフラットであることが理想というのが前提であった。しかし、本発明を適用すれば、センサを適用する制御対象の特性に合せた任意のゲイン・位相特性の設定ができる。
第1章の[5-3]節で一例を示したように、センサ・パラメータを適切に選択すれば、積分帰還用増幅器の出力から、絶対速度信号と絶対変位信号を同一の出力端子から得ることができた。すなわち、本発明が見出した「a>0である不安定積分1/(s-a)の適用」、「安定積分をポジティブ・フィードバックする方法」、「比例・速度増幅器の各出力を加算して検出信号を取り出す方法」などの工夫と、パラメータの選択により、本発明の振動センサにおいては、従来センサと比べて、センサ特性選択の自由度を大幅に広げることができるのである。この特徴を利用して、たとえば、センサを適用する制御対象(たとえばアクチュエータ)の伝達特性が、大きな周波数依存性を持っている場合、この周波数依存性を補償する伝達特性(ゲイン・位相特性)を振動センサ側に持たせてもよい。その結果、制御システム全体として制御特性の向上が図れる。
あるいは、変位、速度、加速度の各状態量の検出信号が、同一のセンサ出力端子から、それぞれ特定の周波数領域でベストなゲイン・位相特性をもつようにする。たとえば、10Hz以上では加速度信号、1〜10Hzでは速度信号、1Hz以下で変位信号が、それぞれ周波数領域でフラットなゲイン・位相特性が得られるようにすれば、アククティブ除振台にとって最も相応しい振動センサとなる。この場合、第1章で述べたような質量体速度、あるいは変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を抹消するのではなく、逆に伝達特性を利用することで、制御対象に合せたゲイン・位相特性の設定をすればよい。
1・・・センサ外郭
2・・・質量体
3・・・支持ばね
7・・・アクチュエータ
2,5,6・・・検知器
8・・・サーボ回路
13・・・積分帰還用増幅器

Claims (26)

  1. センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には前記相対変位信号を積分する積分帰還用増幅器が設けられており、この積分帰還用増幅器の出力をセンサ検出信号としたことを特徴とするサーボ型振動センサ。
  2. 前記サーボ回路は、前記相対変位信号を帰還する変位帰還用増幅器と、前記相対変位信号を増幅する信号検出用比例増幅器を有し、前記信号検出用比例増幅器の出力と前記センサ検出信号を加算して得られた出力から絶対速度信号得ることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  3. 前記サーボ回路は、前記相対変位信号を微分して帰還する速度帰還用増幅器を有することを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  4. 前記速度帰還用増幅器の出力と前記センサ検出信号を加算して得られた出力から絶対速度信号を得ることを特徴とする請求項3記載のサーボ型振動センサ。
  5. 極の実数部が正の符号を持つ不完全積分により前記積分帰還用増幅器を構成したことを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  6. 前記サーボ回路は、前記相対変位信号を帰還する変位帰還用増幅器を有し、この変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記支持ばねのばね定数をk、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記積分帰還用増幅器に不完全積分を用いて、かつ、この不完全積分の極の実数部の値をaとして、下式数74が概略成り立つように構成されていることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  7. 前記支持ばねのばね定数をk、この支持ばねと並列に機能する減衰手段の減衰定数をc、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記速度帰還用増幅器の微分ゲイン定数をKD、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記信号検出用比例増幅器の比例ゲイン定数をKX、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、
    上式数75、上式数76が概略成り立つように構成されているサーボ型振動センサであることを特徴とする請求項5記載のサーボ型振動センサ。
  8. 前記支持ばねのばね定数をk、この支持ばねと並列に機能する減衰手段の減衰定数をc、前記変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、前記速度帰還用増幅器の微分ゲイン定数をKD、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、下式数77が概略成り立つように構成されているサーボ型振動センサであることを特徴とする請求項4記載のサーボ型振動センサ。
  9. 前記支持ばねのばね定数をk、この支持ばねに並列して機能する減衰手段の減衰定数をc、前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数をKI、前記サーボ回路に設けられた変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数をKP、速度帰還用増幅器の微分ゲイン定数KD、前記不完全積分の極の実数部の値をaとして、
    上式数78、上式数79が概略成り立つように構成され、前記センサ検出信号から絶対変位信号を得ることを特徴とする請求項5記載のサーボ型振動センサ。
  10. サーボ回路に設けられた前記相対変位信号を増幅する信号検出用比例増幅器の出力と前記積分帰還用増幅器の出力を加算して得られた出力を絶対速度検出信号とし、前記積分帰還用増幅器の出力を絶対変位検出信号として、前記絶対速度検出信号と前記絶対変位検出信号が同一のセンサで検出するサーボ型振動センサであることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  11. 下式数80、下式数81、下式数82が概略成り立つように構成されているサーボ型振動センサであることを特徴とする請求項7又は9記載のサーボ型振動センサ。
  12. 下式が成り立つように構成されているサーボ型振動センサであることを特徴とする請求項7、又は9記載のサーボ型振動センサ。
  13. 地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分帰還用増幅器の極の実数部の基準値をa0、前記積分帰還用増幅器に適用する極の実数部をaとしてξ=a/a0を定義したとき、0<ξ≦1であることを特徴とする請求項5記載のサーボ型振動センサ。
  14. 地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数の基準値をKI0、前記積分帰還用増幅器に適用する積分ゲイン定数をKIとしてη=KI/KI0 を定義したとき、1.0≦η<1.5であることを特徴とする請求項5記載のサーボ型振動センサ。
  15. 地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数の基準値をKP0、前記変位帰還用増幅器に適用する比例ゲイン定数をKPとして、φ=KP/KP0 を定義したとき、0.4<φ≦1.0であることを特徴とする請求項5記載のサーボ型振動センサ。
  16. 極の実数部が負の符号を持つ不完全積分により前記積分帰還用増幅器を構成し、
    この積分帰還用増幅器を経由して、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータの駆動部に正帰還することを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  17. 地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分帰還用増幅器の極の実数部の基準値をa0、前記積分帰還用増幅器に適用する極の実数部をaとしてξ=a/a0を定義したとき、1≦ξ≦1.5であることを特徴とする請求項16記載のサーボ型振動センサ。
  18. 地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記積分帰還用増幅器の積分ゲイン定数の基準値をKI0、前記積分帰還用増幅器に適用する積分ゲイン定数をKIとしてη=KI/KI0 を定義したとき、0.6≦η≦1.0であることを特徴とする請求項16記載のサーボ型振動センサ。
  19. 地動ステップ入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの変位帰還用増幅器の比例ゲイン定数の基準値をKP0、前記変位帰還用増幅器に適用する比例ゲイン定数をKPとして、φ=KP/KP0 を定義したとき、1.0≦φ≦1.4であることを特徴とする請求項16記載のサーボ型振動センサ。
  20. 極の実数部が正の符号を持つ不完全積分により前記積分帰還用増幅器を構成し、かつ、地動ステップ速度入力に対してセンサ出力が概略ステップ状の応答を示すときの前記極の実数部をa0としたとき、前記積分帰還用増幅器に適用する不完全積分の極が負の符号を持つ実数部a≒-a0となるように符号を変換し、かつ、0<a0≦0.2であることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動センサ。
  21. 0<a0≦0.1であることを特徴とする請求項20記載のサーボ型振動センサ。
  22. 除振対象物を基礎に対して支持する支持アクチュエータと、この支持アクチュエータを駆動する駆動手段と、前記除振対象物の振動状態を検出するサーボ型振動センサと、この振動センサからの情報に基づいて前記除振対象物の慣性空間に対する絶対変位、及び、又は絶対速度を目標値となるように前記駆動手段を制御する制御装置から構成される振動制御装置において、請求項1で記載される前記サーボ型振動センサを用いて、このサーボ型振動センサからの情報を基に前記除振対象物を制御するアクティブ制振装置であることを特徴とする振動制御装置。
  23. 除振対象物を基礎に対して支持する支持アクチュエータと、この支持アクチュエータを駆動する駆動手段と、前記除振対象物の変位及び又は振動状態を検出する振動センサと、この振動センサからの情報に基づいて前記除振対象物と前記基礎との間の相対変位、及び、前記除振対象物の慣性空間に対する絶対変位を目標値となるように前記駆動手段を制御する制御装置から構成される振動制御装置において、前記振動センサに絶対速度センサを用いて、この絶対速度センサの出力信号が極の実数部が正の符号を持つ不完全積分を経由することにより、前記除振対象物を制御する絶対変位信号を得るアクティブ制振装置であることを特徴とする請求項22記載の振動制御装置。
  24. センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には前記相対変位信号を極の実数部が正の符号を持つ不完全積分により積分する積分帰還用増幅器が設けられており、ラプラス変換演算子sの多項式、あるいはz変換演算子の式、あるいは微分方程式で記述される、質量体速度もしくは質量体変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を僅少化するように、伝達関数の分母・分子の式、あるいは微分方程式の両辺の各項を概略相殺するセンサ・パラメータを選定したことを特徴とするサーボ型振動センサの設計方法
  25. センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には前記相対変位信号を極の実数部が負の符号を持つ不完全積分により積分して、かつ、前記アクチュエータの駆動部に正帰還する積分帰還用増幅器が設けられており、ラプラス変換演算子sの多項式、あるいはz変換演算子の式、あるいは微分方程式で記述される、質量体速度もしくは質量体変位に対する検出信号の伝達特性の周波数依存性を僅少化するように、伝達関数の分母・分子の式、あるいは微分方程式の両辺の各項を概略相殺するセンサ・パラメータを選定したことを特徴とするサーボ型振動センサの設計方法
  26. センサ外郭に対して質量体を支持する支持ばねと、前記センサ外郭と前記質量体の間の相対変位を検知する検知器と、前記センサ外郭と前記質量体の間に配置され前記質量体を負荷として駆動するアクチュエータと、前記検知器から得られる前記相対変位信号を前記アクチュエータに帰還するサーボ回路を備えたサーボ型振動センサにおいて、前記サーボ回路には利得KIの積分帰還用増幅器、及び、前記相対変位信号を帰還する利得KPの変位帰還用増幅器と、利得KXの信号検出用比例増幅器と、利得KDの速度帰還用増幅器のいずれかが前記積分帰還用増幅器と共に配置されており、前記積分帰還用増幅器の積分回路は、極の実数部aが正の符号を持つ不安定積分、あるいは、極の実数部aが負の符号を持ちその出力が前記アクチュエータの駆動部に正帰還される安定積分により構成され、前記各増幅器の利得前記KI、前記KP、前記KX、前記KD、及び、前記極の実数部aの数値の選択、及び、前記各増幅器出力からのセンサ出力信号の取り出し方の選択により、任意のゲイン・位相特性を得ることを特徴とするサーボ型振動センサの設計方法。
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