JP2010224366A - 近赤外線吸収フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルム等の基材に、バインダー樹脂、近赤外線吸収化合物などを含む近赤外線吸収層を積層した構成の近赤外線吸収フィルムにおいて、良好な耐久性を発現し、且つ、近赤外線吸収層に粘着層を積層し、ガラス板等の被着物へ添付した際、粘着層の被着物への移行を防ぐことができる近赤外線吸収フィルムを提供する。
【解決手段】基材上に近赤外線吸収層を積層した構成である近赤外線吸収フィルムにおいて、該近赤外線吸収層の主成分であるバインダー樹脂のガラス転移温度が60℃以上であり、且つ、該近赤外線吸収層の表面のダイナミック硬度が、1.0〜20mN/μmの範囲にあることを特徴とする近赤外線吸収フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルムに関する。詳しくは、耐久性、加工性に優れた近赤外線吸収フィルムに関する。
透明性があり近赤外線をカットする材料は、様々なところにおいて必要とされ、使用されている。例えば、普及が進んでいるフラットパネルディスプレイには、可視光線以外に不要な波長の光を発生する場合がある。プラズマディスプレイは、発光部となるセルの中にキセノンガスを封入しているが、キセノンガスを起因として近赤外線が発生し、近赤外線リモコンを使用する電子機器が誤動作を起こす問題がある。このため、プラズマディスプレイの前面には透明な近赤外線をカットする部材が使用されている。
また、ビデオカメラ、デジタルカメラなどに使用される固体映像素子として、CCDやCMOSなどがあるが、これらには近赤外線にも感度があり、視感度補正のため近赤外線をカットするフィルターが必要とされる。
さらに、室内の冷房効果を高めるなど室内温度コントロールに、窓から入光する太陽光の熱線を遮断するのに、透明な赤外線カット部材が使われている。
透明な、すなわち可視光線を透過させ、近赤外線をカットする部材としては、(1)銅や鉄などの金属イオンを含有した燐酸系ガラス、(2)屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルター、(3)共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルム、(4)バインダー樹脂に近赤外線吸収化合物を分散又は溶解した層を積層した近赤外線吸収フィルムなどが提案されている。これらの中で、(4)の近赤外線吸収フィルムは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きく、各種の方法が提案されている(特許文献1〜8参照)。
ところで、(4)の場合、近赤外線吸収フィルムは、ガラス板等の被着物に粘着層を介して貼り合わせて使用される。粘着層を近赤外線吸収層側または基材側に積層し、被着物に貼り合わせるが、位置ずれ、皺入り、空気入り、異物の挟み込みなど正常に貼り合わせができなかった場合、近赤外線吸収フィルムをガラス板等の被着物より剥がして貼りなおす作業が必要となる。このような作業をリワークという。しかしながら、その際、近赤外線吸収フィルムを剥がしたとき、ガラス板等の被着物に粘着層が残存し、リワーク性不良が生じる問題がある。特に、近赤外線吸収層に粘着層を積層した場合は、リワーク性が悪く、粘着層の被着物への移行が起きやすい。
リワーク性が悪くなる原因として、近赤外線吸収層と粘着層との密着性が低いことが挙げられ、この密着性を向上させることがリワーク性を改善させる方策となる。近赤外線吸収層と粘着層との密着性を向上させる方策として、例えば、基材に軟質層を設け、赤外線遮断などの機能を併せた貼着用機能性複合フィルムが提案されており(特許文献9)。そこでは、自己粘着性のある軟質層が被着物への密着性に影響し、近赤外線吸収層を軟質化させることで密着性が増加することを言及している。また、リワーク性を向上させるその他の方法として、近赤外線吸収層にポリオキシアルキレン化合物を添加し、近赤外線吸収層に柔軟性を付与する方法が提案されている(特許文献10)。
特開平11−323121号公報 特開2002−82219号公報 特開2002−138203号公報 特開2002−264278号公報 特開2002−303720号公報 特開2002−333517号公報 特開2003−96040号公報 特開2003−114323号公報 特開2001−139903号公報 特開2008−250057号公報
しかしながら、特許文献9では軟質層に近赤外線吸収化合物を添加した場合、近赤外線吸収化合物の中には、柔軟性ポリマーの影響により著しく耐久性が低下したり、凝集してしまったりするものがある。そのため、使用できる近赤外線吸収化合物の種類が限られてしまい、光学設計する自由度が大きく制限されてしまう。
特許文献10では、リワーク性が良好な近赤外線吸収フィルムが得られている。しかし、被着物の多様化に伴い、粘着層として多様な種類の粘着剤、溶剤が用いられつつある。このような多様な粘着層に対しては、特許文献10の方法ではリワーク性不良をきたす場合が見られた。そのため、より広範な粘着層に対してもリワーク性の良好な近赤外線吸収層が必要であった。
さらに、近赤外線吸収層と粘着層との密着性を向上させる別の方策として、粘着層を改良することが考えられる。しかし、ガラス基板等の被着物への粘着特性と両立しなければならず、粘着層の設計の自由度が制限されてしまう。さらに、粘着層を構成する粘着性樹脂のモノマー成分によっては、近赤外線吸収層に含まれる近赤外線吸収化合物の耐久性が低下する場合がある。
本発明の目的は、前記の従来技術の課題を解決するためになされたものであり、すなわち、基材に近赤外線吸収層を設けた近赤外線吸収フィルムにおいて、近赤外線吸収化合物や粘着層の選択の自由度が高く、良好な耐久性と近赤外線吸収層と粘着層との密着性という二律背反する特性を高度の両立させることにより、被着物への粘着層の移行を防ぎ、リワーク性が良好となる近赤外線吸収フィルムを提供することにある。
前記の課題を解決することができた本発明は、以下の構成からなる。
第1の発明は、基材上に近赤外線吸収層を積層した構成である近赤外線吸収フィルムにおいて、該近赤外線吸収層の主成分であるバインダー樹脂のガラス転移温度が60℃以上であり、且つ、該近赤外線吸収層の表面のダイナミック硬度が、1.0〜20mN/μmの範囲にあることを特徴とする近赤外線吸収フィルムである。
第2の発明は、該近赤外線吸収層が、バインダー樹脂に対し0.01〜20質量%の粘着性樹脂を含むことを特徴とする前記近赤外線吸収フィルムである。
第3の発明は、バインダー樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする前記近赤外線吸収フィルムである。
第4の発明は、該近赤外線吸収層に粘着層が積層された前記近赤外線吸収フィルムである。
第5の発明は、前記近赤外線吸収フィルムを構成部材とするディスプレイ用光学フィルターである。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、近赤外線吸収化合物や粘着層の選択の自由度が高く、良好な耐久性を有し、被着物への粘着層の移行がなくリワーク性が良好で優れた加工特性を有する。よって、本発明の好ましい態様として、高い近赤外線吸収能と可視域での高い透過性を奏することができ、透明な赤外線カット部材等に適している。
以下、本発明を詳細に説明する。
(近赤外線吸収層)
本発明において、近赤外線吸収層の主成分は、ガラス転移温度が60℃以上である硬質なバインダー樹脂である。硬質でガラス転移温度の高いバインダー樹脂を用いることにより、近赤外線吸収層に添加される近赤外線吸収化合物の安定性が向上し、耐久性も良好になる。さらには、使用できる近赤外線吸収化合物の種類が増え、光学設計の自由度が広がる。ガラス転移温度が60℃より低くなると、室温では硬質であるものの、高温で耐久テストを実施した場合、軟質化してしまい、近赤外線吸収化合物の安定性が低下したり、耐ブロッキング性が低下する場合がある。
なお、ここで「主成分」とは、近赤外線吸収層を構成する固形成分のうち50質量%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上を構成する成分をいう。
さらに、バインダー樹脂のガラス転移温度は65℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、75℃以上がよりさらに好ましい。バインダー樹脂のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、生産性の点から180℃以下が好ましい。上記バインダー樹脂のガラス転移温度の上限は、170℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、150℃以下がよりさらに好ましく、140℃以下が特に好ましい。180℃より高い場合は、近赤外線吸収層を形成時の乾燥工程において、溶剤が蒸発し難くなることがある。
バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの合成高分子樹脂。ゼラチン、セルロース誘導体などの天然高分子樹脂などを用いることができるが、特に、単量体の種類が比較的豊富でバインダー樹脂の設計の自由度が大きいアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
バインダー樹脂として、アクリル系樹脂を用いた場合、重量平均分子量としては10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、30,000〜700,000の範囲であることがさらに好ましい。10,000より小さくなると、近赤外線吸収層を形成した際、もろくなりやく、1,000,000より大きいと、塗液から近赤外線吸収層を形成するときに、塗液の粘度が高くなり塗工適性が低下する場合がある。本発明において、重量平均分子量は粘度法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等によって測定することができる。
本発明者は近赤外線吸収層と粘着層との密着性に関し鋭意検討を行った結果、赤外線吸収層の表層の物性、特に表面硬度が粘着層との密着性に重要な影響を及ぼすことを見出し、本願発明に至った。すなわち、本発明は、バインダー樹脂の主成分として上記のような高いガラス転移温度を有する樹脂を使用しながら、層全体を軟質化するのではなく、その表面の物性を改質することで、良好な耐久性と、近赤外線吸収層と粘着層との密着性を高度な両立を可能とする。これにより、広範な粘着層に対応可能な近赤外線吸収フィルムを提供することができる。本発明の近赤外線吸収層のダイナミック硬度は20mN/μm以下とすることが重要である。これにより、粘着層との密着性が著しく向上することができる。さらに、リワーク性が良好になり、ガラス板等の被着物への粘着層の移行を防ぐことに成功した。20mN/μmを超えた場合には、近赤外線吸収層と粘着層の密着性が低下してしまい、ガラス板等の被着物に貼り合わせたのち、剥がした場合には、粘着層の被着物への移行が起こってしまう。本発明の近赤外線吸収層のダイナミック硬度は、より好ましくは18mN/μm以下であり、さらに好ましくは15mN/μm以下であり、最も好ましくは10mN/μm以下である。また、近赤外線吸収層のダイナミック硬度の下限は1.0mN/μmである。1.0mN/μmより低くなる場合、近赤外線吸収層の表面が柔らかくなりすぎて、べとつき性やタック性が現れ、例えば、フィルムを重ね合わせた場合にはブロッキングが生じる場合がある。近赤外線吸収層のダイナミック硬度の下限は好ましくは2.0mN/μmであり、より好ましくは3.0mN/μmである。
ここで、ダイナミック硬度について説明する。ダイミック硬度は、微小領域の硬さを表すものであり、試料に圧子を押し当て、圧子を押し込んでいく過程の荷重と押し込み深さから求められる。具体的には、荷重をP(mN)、圧子の試料への侵入量(押し込み深さ)D(μm)とした場合、ダイナミック硬度DHは、下記式により求めることができる。ここでαは圧子形状による定数を表す。
DH=αP/D
本発明者は、近赤外線吸収層にガラス転移温度が高く硬質なバインダー樹脂を用いながら、前述したような近赤外線吸収層の表面の硬度を制御できる方策を見出した。具体的には、近赤外線吸収層に粘着性樹脂を少量添加することで、層全体を軟質化するのではなく、その表面物性のみを改質することができるという驚くべき効果を見出した。さらには、上記手段は、表面のべとつき性やタック性は発現せず、ブロッキングなどの悪影響も現れないため、非常に有利な方策であることも本発明者は見出した。
粘着性樹脂を少量添加した場合、表面の硬度が低くなり、粘着層との密着性が高められ、さらにはべとつき性やタック性が発現しない理由については明確には解明できていないが、以下のような機構と推察している。
基材に近赤外線吸収層用の塗液が塗工されたのち、溶剤が乾燥により除去され、バインダー樹脂と粘着性樹脂は混ざり合いながら近赤外線吸収層が形成される。このとき、粘着性樹脂がバインダー樹脂より表面エネルギーが低く、ある程度時間を要して乾燥させた場合、近赤外線吸収層の表面エネルギーを低くしようする力が働き、粘着性樹脂が表面付近に移行し偏析する。結果、表面付近のみが柔軟になり、粘着層との密着性が高められるものと考えられる。さらに、偏析した粘着性樹脂の層はかなり薄いために、べとつき性やタック性が発現しないものと推察される。
本発明において、粘着性樹脂の組成比としては、近赤外線吸収層中のバインダー樹脂に対して、0.01〜20.0質量%の範囲であることが望ましい。上記粘着性樹脂の組成比の下限は、0.05質量%であることがより好ましく、0.1質量%であることがさらに好ましく、0.5質量%であることがよりさらに好ましい。また、上記粘着性部室の組成比の上限は、15.0質量%であることがより好ましく、12.0質量%であることがさらに好ましく、10.0質量%であることがよりさらに好ましい。上記粘着性樹脂の組成比が0.01質量%より少なくなると、近赤外線吸収層と粘着剤との密着性の向上の効果が見られない。上記粘着性樹脂の組成比が20.0質量%より多くなると、近赤外線吸収層の見かけのガラス転移温度が低下し、近赤外線吸収化合物の耐久性が低下する。
本発明において、近赤外線吸収層に添加する粘着性樹脂とは、常温付近で粘着性を示し、ガラス転移温度の低い樹脂である。本発明において、粘着性樹脂のガラス転移温度は、−80℃〜0℃の範囲であることが好ましい。上記粘着性樹脂のガラス転移温度の下限は、−75℃であることがより好ましく、−70℃であることがさらに好ましい。上記粘着性樹脂のガラス転移温度の上限は、−10℃がより好ましく、−30℃がさらに好ましく、−40℃がよりさらに好ましい。上記粘着性樹脂のガラス転移温度が−80℃より低くなるとバインダー樹脂の見かけのガラス転移温度を引き下げすぎてしまい、近赤外線吸収層が軟質化し、色素の耐久性が低下する場合がある。上記粘着性樹脂のガラス転移温度が0℃より高くなると、表面の硬度が下がらず、結果、粘着層との密着性が低下してしまう。粘着性物質のガラス転移温度は、NMR分析による組成比からGordon−Taylor式を用いて理論的に求めることができる。
粘着性物質の重量平均分子量としては、10,000〜3,000,000の範囲であることが好ましい。上記粘着性物質の重量平均分子量の下限は、50,000がより好ましく、100,000がさらに好ましい。上記粘着性物質の重量平均分子量の上限は、2,000,000がより好ましく、1,000,000がさらに好ましい。粘着性物質の重量平均分子量が10,000より小さい場合、粘着剤との密着性の効果が小さく、3,000,000より大きいと、近赤外線吸収層を形成する際に塗布法を用いた場合、溶液の粘度に著しく影響してしまう。
本発明において、粘着性樹脂としては、アクリル系、シリコン系、ゴム系、ポリエステル系など特に制限されるものではないが、近赤外線吸収層の主成分となる樹脂バインダーと粘着性樹脂が完全に分離してしまい、海島構造のようになったり、不規則に混ざり合い透明性が損なわれることは好ましくない。また、前述した機構のように、樹脂バインダーとある程度、混ざり合いながらも表面付近に粘着性樹脂が偏析することが好ましい形態と本発明者は考えている。そのためには、樹脂バインダーと粘着性樹脂が適度な相溶性を示すことが好ましい。従って、樹脂バインダーと粘着性樹脂は同種類であることが好ましい。本発明においては、樹脂バインダーにアクリル系樹脂を用いることが好ましいが、粘着性樹脂にもアクリル系を用いることが好ましい。さらに、粘着性樹脂の表面エネルギーが樹脂バインダーの表面エネルギーより低くなることが好ましい。
アクリル系の粘着性樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の単量体を重合することにより得られる。単量体の具体的な例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、必要に応じて複数を共重合することもできる。
さらに、親水性基を有する単量体を共重合することもできる。親水性基を有する単量体を共重合することで、被着物との密着性を増加させることができる。具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基などを有する単量体である。さらに具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、カルボキシル基を含むスチレン、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
粘着性樹脂は、アクリル系樹脂の場合、前記単量体を逐次重合することにより作製することができるが、重合反応を加速するため重合開始剤を添加する。重合開始剤の添加量としては、単量体に対し、0.005重量%〜2.0重量%の範囲が好ましく、0.01重量%〜1.0重量%の範囲がさらに好ましい。
重合開始剤の具体的な例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´ーアゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物などを挙げることができる。
このような粘着性樹脂は、市販品から入手することもでき、本発明においても使用することができる。
本発明において、近赤外線吸収層の組成物である近赤外線吸収化合物は特に制限はなく用いることができるが、特に、有機系の色素を用いるのが好ましく、そのうち、800nm〜1200nmに極大吸収を有する色素を用いるのが好ましく、可視域の透過性が高いことが好ましい。有機系の色素の例としては、ジイモニウム塩系、フタロシアニン系、金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、ポリメチン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドオコリン系、トリフェニルメタン系、シアニン系、アゾ系、アミニウム系等の色素が挙げられる。これらは、単独または複数を組み合わせて使用することができる。本発明においては、耐久性が優れる点で、ジイモニウム塩系、フタロシアニン系、金属錯体系化合物のいずれかを含むことが好ましい。ジイモニウム塩系化合物としては、例えば、以下で表される化合物が挙げられる。
Figure 2010224366
(式中、R1〜R8は、水素原子、アルキル基、アリ−ル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基を表わし、それぞれ同じであっても、異なっていても良い。R9〜R12は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基を表わし、それぞれ同じであっても、異なっていても良い。R1〜R12で置換基を結合できるものは置換基を有しても良い。Xは陰イオンを表し、例えば、Cl、Br、I、ClO 、BF 、PF 、SbF 、(CFSO、(CFSOなどを挙げることができる。
上記式でR1〜R8の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基などが、アリール基としてはフェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル、ナフチル基などが、アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などが、アラルキル基としては、ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基などが挙げられ、R9〜R12は、水素、フッ素、塩素、臭素、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。また、日本化薬社製Kayasorb IRG−068、IRG−069、IRG−079、日本カーリット社製 CIR−1085、CIR−RLなども好適に用いることができる。
また、フタロシアニン系化合物としては、例えば、日本触媒社製IR−1、IR−10A、IR−12、IR−14、TX−EX906B、TX−EX910Bなどを用いることができる。
金属錯体系化合物としては、例えば、山本化成社製SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159、みどり化学社製MIR−101、MIR−102、MIR−103、MIR−105、MIR−111、MIR−121、林原生物化学研究所社製NKX−1199などを用いることができる。
シアニン系色素としては、例えば、日本化薬社製CY−10、CY−20、CY−30、CY−40MC、CY−4646林原生物化学研究所社製NK−8758、NK−8759、NK−9028、ADEKA社製TZ−121、TZ−122、TZ−123、TZ−126、TZ−133、TZ−136などを用いることができる。
本発明において、近赤外線吸収化合物の組成比としては、バインダー樹脂に対して、0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲であることがさらに好ましい。最も好ましくは、0.5〜8.0質量%の範囲である。0.05質量%より少ない場合には、目的とする近赤外線吸収能を達成するため積層量を増やす必要があるが、積層量を増加させると溶剤の蒸発量を増え乾燥工程に負荷がかかる。逆に、20質量%より多い場合には、特に塗工後の乾燥や耐熱テストなどの加熱下で近赤外線吸収化合物の凝集が起こり、近赤外域の吸収能の低下やヘイズが高くなるなどの悪影響が現れる。
さらに、近赤外線吸収層に添加できる機能としてネオン光カット機能が挙げられる。プラズマディスプレイは、電極間で放電が起こることが発光源となるが、放電が起こる空間にはネオンガスが封入されており、これを起因とするオレンジ色のいわゆるネオン光が発光する。ディスプレイとしては、オレンジ色の発光は好ましくなく、ネオン光を抑えることが望ましい。本発明においては、必要に応じて、ネオン光をカットする化合物を近赤外線吸収層に添加することもできる。ネオン光をカットする化合物としては、570nmから600nmの間に極大吸収があり、他の可視光域の吸収は小さいことが好ましい。さらに吸収ピークの半値巾が60nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50nm以下である。また、極大吸収値が、透過率10〜60(%)の範囲であることが好ましい。ネオン光をカットする化合物として、具体的例を挙げると、シアニン系、ポリメチン系、スクアリリウム塩系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、キノン系、アゾ系、アゾキレート系、アズレニウム系、ピリリウム系、クロコニウム系、インドアニリンキレート系、インドナフトールキレート系、アゾキレート系、ジチオール金属錯体系、ピロメテン系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系、テトラアザポルフィリン系化合物などがある。さらに、アデカ社製TY−102、山田化学工業社製TAP−2、TAP−12、TAP−18、TAP−45、協和発酵ケミカル社製SD−184、SD−883、SD−929、三井化学社製PD−311、PD−319なども用いることができる。
さらに、本発明においては、耐光性を向上させる目的で紫外線吸収剤を近赤外線吸収層に混合することも可能である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤に大別されるが、透明性の確保の観点からは有機系紫外線吸収剤(低分子タイプ、高分子タイプ)の使用が望ましい。有機系紫外線吸収剤(低分子タイプ)としては特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系など、およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中で、耐久性の観点からはベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、近赤外線吸収層の光劣化を抑制できる様に、380nm以下の波長における透過率が10%以下となるように調整することが好ましい。具体的には、紫外線吸収剤の含有量は、硬質なバインダー樹脂に対し、0.1〜4.0質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜2.0質量%の範囲であることがより好ましい。紫外線吸収剤量が少なすぎると紫外線吸収能が小さくなり、多すぎると黄変する場合がある。
本発明において、近赤外線吸収層の形成方法としては、層の幅方向及び流れ方向の均一性が得られ易い点から、近赤外線吸収化合物等とバインダー樹脂を溶剤に溶解し基材上に塗工、乾燥して積層する塗布法が好ましい。
塗布法における溶剤は、バインダー樹脂、粘着性樹脂、近赤外線吸収化合物等を均一に溶解または分散できる溶剤であることが好ましい。さらに、本発明においては、有機溶剤であることが好ましい。
該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、(6)n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
溶媒の沸点は、40℃〜180℃の範囲であることが好ましく、60℃〜150℃の範囲であることがさらに好ましい。沸点が低い場合には、塗工中に溶剤の蒸発が進みすぎて、塗液の固形分濃度が変化し、塗工厚みが不安定性を招く。逆に、沸点が高い場合には、溶剤を蒸発させるのに乾燥工程に負荷かかかる。また、塗膜中に残存する有機溶媒量が増え、経時安定性が不良を招く。
本発明において、界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤を含有させることにより、塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキが改善される。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できる。
塗液中に含まれる樹脂及び添加物等の固形分濃度は、10質量%〜60質量%の範囲であることが好ましい。固形分濃度が低い場合には、塗液の粘度が低くなりすぎ、乾燥中に塗工ムラが生じやすくなる。逆に、固形分濃度が高い場合には、塗液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となりやすい。塗工液の粘度は、10cp〜10000cpの範囲であることが塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように固形分濃度、有機溶媒等を調整することが好ましい。
本発明においては、バインダー樹脂、粘着性樹脂、近赤外線吸収化合物等を含む塗液を、基材上に塗工、乾燥することで均一な厚みの層を形成し使用されることが好ましいが、塗布の具体的な方法としては、例えば、実験室で作製するようなスケールの小さい場合には、ワイヤーバー、アプリケーターなどを用いて基材上に塗布、乾燥して層を形成する方法などが適用できる。また、スケールが比較的大きく、基材がロール状で連続的に層を形成するような場合には、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式、ダイコート方式など通常用いられている方法が適用できる。
塗液を乾燥する方法としては、公知の熱乾燥、熱風乾燥、赤外線ヒーターを用いた乾燥等が挙げられる。乾燥時の好ましい温度は、60℃以上180℃以下である。特に好ましくは、下限値が80℃であり、上限値は160℃である。温度が低い場合には、塗膜中の溶媒が減少しにくくなり、逆に、高温の場合には、近赤外吸収化合物が熱により劣化を招く。また、乾燥時間としては、5秒以上300秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には層中の残留する溶媒が多くなり、耐久性に影響を与え、逆に時間が長い場合には、近赤外線吸収化合物が劣化を起こしてしまう。
本発明の近赤外線吸収層の積層量は特に限定されないが、1g/m以上50g/m以下が好ましく、より好ましくは2g/m以上 20g/m以下である。1g/mより少ない場合には、近赤外線吸収量を大きくするためには、バインダー樹脂中の近赤外線吸収化合物の濃度を高くしなければならず、そうした場合、近赤外線吸収化合物が凝集し析出し外観特性の低下を招く。50g/mより多いと、溶剤を除去するための乾燥に時間を要し、コスト的に不利となる。
(基材)
本発明において、基材は特に制限されるものではないが、プラスティックフィルム、ガラス上に形成するのが一般的である。プラスティックフィルムを用いる場合、種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン、アクリル、ポリスチレンなどが挙げられる。本発明では、特に2軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。また、プラスティックフィルムの厚みは10〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがさらに好ましい。また、本発明においては、該密着性向上層を積層する面とは反対側の面は、いわゆる易接着層を設けてあっても良く、2軸延伸フィルムの場合、延伸前または延伸後に積層することができる。
(粘着層)
本発明で用いる粘着層は、粘着性樹脂が主成分で、5〜100μm、好ましくは10〜50μmのほぼ均一な厚さの層である。粘着層に用いられる粘着性樹脂は、常温付近で粘着性を示し、ガラス転移温度の低い樹脂であり、粘着層にした際、透明性が高く曇り度(ヘイズ)が低いものが好ましい。本発明において、粘着層に用いられる粘着性樹脂のガラス転移温度は、−80℃〜0℃の範囲であることが好ましく、−70℃〜−10℃であればさらに好ましい。特に制限されるものではなく、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ゴム系、シリコン系樹脂などが挙げられるが、本発明においてはアクリル系樹脂を主成分とするものが好ましい。アクリル系樹脂は(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の単量体を重合することにより得ることができる。単量体の具体的な例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、必要に応じて複数を共重合することもできる。
さらに、親水性基を有する単量体を共重合することが好ましい。親水性基を有する単量体を共重合することで、架橋反応を促進することができる。具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基などを有する単量体である。さらに具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、カルボキシル基を含むスチレン、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
さらに、粘着力の制御や保持力を高めるのに樹脂間を架橋しておくことが好ましい。架橋反応を促進するために前述した親水性基を有する単量体を共重合することと架橋剤を混合しておくことが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、メラミン系、金属錯体系などを挙げることができる。
このような粘着性樹脂組成物は、市販品としても入手可能で、本発明においても使用することができる。
本発明においては、近赤外線吸収層に粘着層を積層することが好ましく、粘着層を近赤外線吸収フィルムに積層する方法としては、特に定まったものではないが、例えば、粘着性樹脂を含む組成物を、直接、近赤外線吸収フィルムに均一な厚みに塗工するか、一旦、離型フィルム等剥離が可能な基材上に該組成物を均一に塗工してフィルム状にしたのち、近赤外線吸収フィルムに貼り合わせて積層する方法などがある。
(他の機能材との複合化)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、そこで必要とされる他の機能材と複合化することができる。例えば、ディスプレイの前面に設置して使用する場合には、ディスプレイから放出される有害電磁波を遮断する目的で、導電層を直接或いは基材を介して設けてもよい。該導電層は金属メッシュと導電薄膜の何れを用いても良く、金属メッシュを用いた場合、開口率が50%以上の金属メッシュ導電層を有している必要がある。金属メッシュの開口率が低ければ電磁波シ−ルド性は良好となるが光線透過率が低下する問題が有る、この為、良好な光線透過率を得る為には開口率が50%以上は必要となる。本発明に用いられる金属メッシュとしては、電気電導性の高い金属箔にエッチング処理を施して、メッシュ状にしたものや、金属繊維を使った織物状のメッシュや、高分子繊維の表面に金属をメッキ等の手法を用いて付着させた繊維を用いてもよい。該電磁波吸収層に使われる金属は、電気電導性が高く、安定性が良ければいかなる金属でも良く特に限定されるものではないが、加工性、コストなどの観点より、好ましくは、銅、ニッケル、タングステンなどがよい。
また、導電薄膜を用いた場合、透明導電層はいかなる導電膜でもよいが、好ましくは、金属酸化物であることが好ましい。これによって、より高い可視光線透過率を得ることが出来る。また、本発明において透明導電層の導電率を向上させたい場合は、金属酸化物/金属/金属酸化物の3層以上の繰り返し構造であることが好ましい。金属を多層化することで、高い可視光線透過率を維持しながら、電導性を得ることができる。本発明に用いられる。金属酸化物は、電導性と可視光線透過性が有していれば如何なる金属酸化物でもよい。一例として、酸化錫、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ビスマスなどがある。以上は一例であり、特に限定されるものではない。また、本発明に用いられる金属層は、導電性の観点より、金、銀及びそれらを含む化合物が好ましい。
更に、導電層を多層化した場合、例えばくり返し層数が3層の場合、銀層の厚さは50〜200Åが好ましく、より好ましくは50〜100Åである。これよりも膜厚が厚い場合は、光線透過率が低下し、薄い場合は抵抗値が上がってしまう。また、金属酸化物層の厚さとしては、好ましくは、100〜1000Å、より好ましくは、100〜500Åである。この厚さより厚い場合には着色して色調が変ってしまい、薄い場合には抵抗値が上がってしまう。さらに、3層以上多層化する場合、例えば、金属酸化物/銀/金属酸化物/銀/金属酸化物のように5層とした場合、中心の金属酸化物の厚さは、それ以外の金属酸化物層の厚さよりも厚いことが好ましい。この様にすることで、多層膜全体の光線透過率が向上する。
また、反射防止機能と複合化することも可能である。反射防止機能とは、表面反射を防ぎ、蛍光灯等の映り込みを防止する機能を有する。該反射防止機能を付与する方法は限定させず任意に選択できるが、例えば、基材の表面に屈折率の異なる層を積層し、該層の界面における反射光の干渉を利用して低減する方法、表面に凹凸を付与する方法が挙げられる。該方法の反射防止膜を形成する方法として、大きくは下記の2方法が挙げられる。その一つの方法は、基材の表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止膜を形成する方法であり、他の一つの方法は、基材の表面に、反射防止用塗布液を塗布し乾燥させることにより反射防止膜を形成する方法である。一般論としては、反射防止特性では前者が、経済性では後者が優れていると言われているが、本発明においては、どちらの方法を用いても構わない。反射防止膜は、例えば、透明なポリエステルフィルムのような基材の設けることができる。また、本発明の近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層を積層した面とは反対面に、反射防止膜を形成することで複合化できる。
(光学フィルター)
プラズマディスプレイの前面には、ディプレイから発生する近赤外線、電磁波をカットすると共に、ディスプレイの視認性向上の為の反射防止、色再現性の向上等、更には、ディスプレイの保護など各々の機能を一体としたフィルターが設置される。本発明の近赤外線吸収フィルムは各々の機能と合わせて、光学フィルターの構成部材に使用するのに適する。
該光学フィルターの基材には通常ガラス板が使用されるが、軽量化、高画質化の為に、ガラス板を用いず、直接プラズマディスプレイのパネルに貼り合わせる直貼りフィルターにすることも可能である。本発明の近赤外線吸収フィルムは、直貼りフィルターに好適に用いることができる。
次に本発明の実施例及び比較例を示す。近赤外線吸収フィルムの透過率、色調、耐久性、近赤外線吸収層のダイナミック硬度、リワーク性は次のように評価した。
<透過率>
分光光度計(島津製作所社製 UV−3150型)を用い、波長300nm〜1200nmの範囲で測定し、450nm、550nm、850nm、950nmの透過率を評価した。
<色調>
JISZ8701に準じて、測色色差計(日本電色工業社製 ZE−2000型)を用い、光源C、2度視野にて測定し、色度(x、y)を評価した。
<耐久性>
高温、高湿下、長期間放置したときの透過率および色調の変化の大きさを測定することにより近赤外線吸収フィルムの耐久性を評価した。具体的には、60℃90%RHの雰囲気下500時間放置したのちの近赤外線吸収フィルムについて上記測定方法により透過率、色調を評価し、処理前後の変化量を求めた。透過率の変化量については、4%以内であれば良好とし、4%を超えれば不良と判定した。色度の変化量については、x、yがそれぞれ0.005以内であれば良好とし、0.005を超えれば不良と判定した。
<近赤外線吸収層のダイナミック硬度>
島津ダイナミック超微小硬度計DUH−201を用い、室温20〜23℃、湿度40〜80%の環境下で、下記条件にて測定し、下記式により算出した。
圧子 三角すい圧子115°
試験荷重 0.20gf
負荷速度 10(0.0145gf/秒)
5回の測定をした後、押し込み深さ1μmのダイナミック硬さを解析データからピックアップして平均値を求め、そのサンプルのダイナミック硬さとした。このダイナミック硬さ(DH)は圧子を押し込んでいく過程の荷重と押し込み深さから得られる硬さで、以下の式(1)で定義される。
DH=αP/D*D (1)
DH:ダイナミック硬度
α:圧子形状による定数
P:試験荷重、D:押し込み深さ(μm)
<リワーク性>
市販品のアクリル系粘着剤(綜研化学社製、銘柄:SK−1435、固形分濃度30質量%溶液)100質量部に架橋剤(綜研化学社製、銘柄:TD−75)0.3質量部を混合し、固形分濃度が20質量%になるように溶剤(トルエン:2−ブタノン=1:1(質量比))で希釈し塗液を調合した。この塗液を離型フィルム(表面をシリコン加工したポリエステルフィルム)上にアプリケーターを用いて膜厚が均一になるように塗工し、100℃、2分間乾燥し溶剤を留去し、粘着シートを作製した。
作製した近赤外線吸収フィルムを幅30mm×長さ150mmの大きさにカットし、近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層側に、幅25mmにカットした前記粘着シートを、粘着シートにラミネートしている離型フィルムを剥がしながら、ゴムロールを用いて貼り合わせた。次に、粘着シートのもう一方の面にラミネートしている離型フィルムを剥がしながら、ゴムロールを用いてガラス板(工業用青ガラス;50mm×150mm×2mm)に貼り合わせた。貼り合わせた近赤外線吸収フィルムの上に、重さ5kgのローラーを10往復させて圧着させたのち、50℃で30分加熱したのち、室温まで冷却させて、粘着剤を十分に定着させた。次に、300mm/分で近赤外線吸収フィルムを180度の角度で引き剥がし、ガラス板の残留粘着剤について評価した。評価基準は次のようにした。なお、評価は目視観察で行った。
○: 残留粘着剤がガラス板に全くない
△: 残留粘着剤が貼り付けた面積の30%未満
×: 残留粘着剤が貼り付けた面積の30%以上
<バインダー樹脂のガラス転移温度>
バインダー樹脂のガラス転移温度は、JISK7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製 DSC6200)を使用して、25−300℃の温度範囲にわたって10℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度を測定し、ガラス転移温度とした。
<粘着性樹脂のガラス転移温度>
粘着性樹脂をNMR分析し組成比を求めたのち、式(2)で定義されるGordon−Taylor式を用いて、ガラス転移温度を求めた。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi) (2)
Tg:粘着性樹脂のガラス転移温度(K)
Wi:粘着性樹脂を構成する各モノマーの組成比率(%)
Tgi:粘着性樹脂を構成する各モノマーが、単独重合した場合のポリマーのガラス転移温度(K)
参考例1
近赤外線吸収層の添加する粘着性樹脂を次のように作製した。
窒素置換した反応容器に、n−ブチルアクリレート95質量部、アクリル酸5質量部、酢酸エチル150質量部、過酸化ベンゾイル0.1質量部を投入し、70℃に昇温、攪拌しながら6時間反応させた後、80℃に昇温し1時間反応を行い、反応物をトルエン:2−ブタノン=1:1(質量比)の混合溶媒で希釈し、固形分濃度18質量%の粘着性樹脂溶液Aを作製した。さらに、粘着性樹脂の組成比をNMR測定により求め、粘着性樹脂のガラス転移温度を求めたところ、−52℃であった。また、重量平均分子量は、500,000であった。
参考例2
近赤外線吸収層の添加する粘着性樹脂を次のように作製した。
窒素置換した反応容器に、n−ブチルアクリレート90質量部、エチルアクリレート10質量部、酢酸エチル150質量部、過酸化ベンゾイル0.1質量部を投入し、70℃に昇温、攪拌しながら6時間反応させた後、80℃に昇温し1時間反応を行った。反応物をトルエン:2−ブタノン=1:1(質量比)の混合溶媒で希釈し、固形分濃度18質量%の粘着性樹脂溶液Bを作製した。参考例1と同様に粘着性樹脂のガラス転移温度を求めたところ、−50℃であり、重量平均分子量は、600,000であった。
参考例3
近赤外線吸収層の添加する粘着性樹脂を次のように作製した。
窒素置換した反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート90質量部、エチルアクリレート10質量部、酢酸エチル150質量部、過酸化ベンゾイル0.1質量部を投入し、70℃に昇温、攪拌しながら6時間反応させた後、80℃に昇温し1時間反応を行った。反応物をトルエン:2−ブタノン=1:1(質量比)の混合溶媒で希釈し、固形分濃度18質量%の粘着性樹脂溶液Cを作製した。参考例1と同様に粘着性樹脂のガラス転移温度を求めたところ、−58℃であり、重量平均分子量は、450,000であった。
実施例1
表1で示した組成の塗液を調合し、基材(ポリエステルフィルム/東洋紡績社製、A4300、厚さ100μm)上にワイヤーバー#24を用いて厚みが一定になるよう塗工した。塗工後、150℃で1分30秒 乾燥して溶剤を留去し、基材上に近赤外線吸収層を積層した近赤外線吸収フィルムを作製した。作製した近赤外線吸収フィルムの透過率、色調、耐久性、ダイナミック硬度、リワーク性を評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好で、ガラス板への移行も見られなかった。結果を表3に示す。
実施例2
表1で示したように実施例1に比べて、粘着性樹脂の組成比を変更した以外は実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好で、ガラス板への移行も見られなかった。結果を表3に示す。
実施例3
表1で示したように実施例1に比べて、粘着性樹脂の組成比を変更した以外は実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好でガラス板への移行も見られなかった。結果は表3に示す。
実施例4
表1で示したように異なる粘着性樹脂を用いた以外は実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好で、粘着層のガラス板への移行も見られなかった。結果は表3に示す。
実施例5
表1で示したように異なる粘着性樹脂を用いた以外は実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好で、粘着層のガラス板への移行も見られなかった。結果は表3に示す。
実施例6
表1で示したようにガラス転移温度の異なるバインダー樹脂を用いた以外は実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好で、粘着層のガラス板への移行も見られなかった。結果は表3に示す。
実施例7
表1で示したようにガラス転移温度の異なるバインダー樹脂を用いた以外は実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であり、リワーク性も良好で、粘着層のガラス板への移行も見られなかった。結果は表3に示す。
比較例1
表2で示したように、粘着性樹脂を添加しなかった以外は、実施例1と同様に塗液を調合し、近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であったが、リワーク性が不良であり、粘着層がガラス板へほとんど移行してしまった。結果は表4に示す。
比較例2
表2で示したように、粘着性樹脂の組成比を変更した以外は実施例1と同様に近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であったが、リワーク性が不良であり、粘着層がガラス板へほとんど移行してしまった。結果は表4に示す。
比較例3
表2で示したように、粘着性樹脂の組成比を変更した以外は実施例1と同様に近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。粘着層との密着性は良好で、ガラス板への移行は見られなかったが、耐久性は、可視光線域の変化が大きくなり低下した。結果を表4に示す。
比較例4
表2で示したように、バインダー樹脂として、ガラス転移温度の異なるアクリル系樹脂を用いた以外は実施例1と同様に近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。リワーク性は良好であったが、耐久性は、可視光線域の変化が大きくなり低下した。結果を表4に示す。
参考例4
表2で示したように、添加剤として、ポリオキシアルキレン化合物(ポリプロピレングリコール、Mn:500)、シリコーン系界面活性剤を加えた塗液を調合し、実施例1と同様に基材に塗工、乾燥し近赤外線吸収フィルムを作製し、評価した。耐久性は良好であったが、リワーク性が不良であり、粘着層がガラス板へ移行してしまった。結果は表4に示す。
Figure 2010224366
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本発明の近赤外線吸収フィルムは、近赤外線域の吸収が大きく、可視光線域の透過率が高く、耐久性が良好であり、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置、さらに、ビデオカメラ、デジタルカメラなどに使用されるCCDやCMOSなどの視感度補正用のフィルター、さらには、窓から入光する太陽光の熱線を遮断する透明な赤外線カット部材として使用するのに適している。加えて、近赤外線吸収層にフィルムを積層しガラス板等の被着物に添付した際、リワーク性が良好で、生産性、歩留まりの向上に寄与する。

Claims (5)

  1. 基材上に近赤外線吸収層を積層した構成である近赤外線吸収フィルムにおいて、該近赤外線吸収層の主成分であるバインダー樹脂のガラス転移温度が60℃以上であり、且つ、該近赤外線吸収層の表面のダイナミック硬度が、1.0〜20mN/μmの範囲にあることを特徴とする近赤外線吸収フィルム。
  2. 該近赤外線吸収層が、バインダー樹脂に対し0.01〜20質量%の粘着性樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収フィルム。
  3. バインダー樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルム。
  4. 該近赤外線吸収層に粘着層が積層された請求項1〜3に記載の近赤外線吸収フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルムを構成部材とするディスプレイ用光学フィルター。
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