JP2010222506A - ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホンおよび芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法 - Google Patents

ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホンおよび芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法 Download PDF

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昭紀 鹿又
Koji Yamauchi
幸二 山内
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Abstract

【課題】 熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のアロイ化剤として好適な、反応性ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン、および該芳香族ポリエーテルスルホンを経済的且つ簡易な方法で短時間に効率よく製造する方法を提供することを課題とする
【解決手段】 アロイ化剤として好適なヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホンを、重合により得た芳香族ポリエーテルスルホンの溶液と二価フェノール化合物および/または水と塩基性化合物を非プロトン性極性溶媒中で加熱することを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は従来の製造方法では製造困難であったヒドロキフェニル末端を多量に含有する芳香族ポリエーテルスルホン(以下PESと略す)とその製造方法に関する。より詳しくは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂アロイ用として相溶化効果に優れる高ヒドロキシフェニル末端基含量であり、かつ高純度のPESと、該ポリマーを経済的且つ簡易な方法で効率よく製造する方法に関する。
PESは、その優れた耐熱性、機械特性、電気的特性、難燃性、耐薬品性、耐加水分解性、耐放射線性、低誘電特性、成形加工性により、射出成形用の回路基盤、光ディスク、磁気ディスク等のディスク用支持板、電気絶縁性保護膜、集積回路用層間絶縁膜、集積回路基盤材料などの電気、電子部品、自動車部品、航空機部品および医療用機器部品などに幅広く用いられている。
また、前記優れた性質を活かし、PESを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に配合することにより、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の性能を向上させる改質剤としても、幅広く使用されている。
PESをアロイ化する方法としては、例えば、(1)熱可塑性樹脂とPESを溶融混練する方法、(2)熱可塑性樹脂とPESを溶媒中でアロイ化する方法のほか、(3)熱硬化性樹脂のプレポリマーにPESを溶媒中、あるいは溶媒非存在下において溶解させ、その後、硬化させることによりアロイ化する方法などが知られている。
(1)熱可塑性樹脂アロイとしては、ポリカーボネートにPESを特定組成でアロイ化し、モルホロジーを制御することにより、ポリカーボネートの耐薬品性を向上させ、かつPESの成形性を改良する方法が開示されている(特許文献1)。
(2)熱可塑性樹脂とPESを溶媒中でアロイ化する例として、ポリアミドイミド樹脂にPESをNMP溶液中でアロイ化させ、ポリアミドイミド樹脂の可とう性や耐衝撃性を改良する方法が開示されている(特許文献2)。
(3)熱硬化性樹脂のプレポリマーにPESを溶解させ、硬化させることによりアロイ化する例として、エポキシ樹脂やマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂にPESをアロイ化することにより強靱性を向上させる方法や、熱感光性樹脂や配線板用材料として使用されるエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの熱硬化性樹脂にPESをアロイ化することにより、マトリックスの熱硬化性樹脂本来の特性を維持し、機械物性を向上させる方法が開示されている(特許文献3、4)。
アロイ化による樹脂組成物の品質向上のためには、各ポリマー成分の相分離構造を微細化する必要があるが、前記(1)〜(3)の技術では、マトリックスとなる樹脂中にPESが粗大分散しているのが現状であり、アロイ化による品質向上には、さらなる微分散化技術が必要であった。
ポリマーの分散性を向上させる方法として、一般的には相溶化剤を使用する方法やアロイ成分を化学反応により分子レベルで結合させることにより、分散性を向上させたり、さらには相溶化させることが知られており、これらの知見は、例えば高分子学会編、東京化学同人出版の「ポリマーアロイ 基礎と応用」などの総説にレビューされている。
特許文献5では、前記(3)で述べた方法により、熱硬化性樹脂マトリックス中にPESを、より微分散化させるために熱硬化性樹脂マトリックスの原料として多官能のエポキシ樹脂を用い、PESのポリマー末端にエポキシ基と反応しうる官能基、例えばヒドロキシフェニル末端基を導入することにより、ポリマー間での反応を促進させ、PESを熱硬化性樹脂マトリックス中に微分散化させる方法が開示されている。また本技術を用いたエポキシ樹脂組成物からなる繊維強化複合材料は、PESがマトリックス樹脂中に微分散化されており、さらに該材料の剛性(例えば圧縮強度)、および靭性(例えば、衝撃後圧縮強度)に優れることが開示されている。
同様に特許文献6、7ではPESのポリマー末端にエポキシと反応しうる官能基として、アミノフェニル末端を導入し、同様の効果が発現することが開示されている。さらに特許文献8、9、10ではアロイ化の際に、PESのヒドロキシフェニル末端基とマトリックス樹脂との反応を均一に起こすために、PESの形状を粒子径の小さい粒子とすることで、アロイ時の微分散化、混練時間の短縮等に効果的であることが開示されている。
また、芳香族ポリエーテルスルホン粒子の製造方法としては、機械的粉砕法、化学的粒子化法などが開示されている。
特許文献8では機械的粉砕法として、市販のPESを粉砕機を用いて数十μmサイズの粒子を得る方法が開示されている。しかしながら、粒子径を50μm以下に小さくするほど、粉砕に要する時間、コスト等が極端に増加し、生産性が低下するという問題点がある。また、粒子径分布も広くなるのが現状であった。
特許文献9では化学的粒子化法として、市販のPESをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、エタノールを加えた溶液を、オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを溶解した純水中に添加し、粒子径1μm以下の水性分散液を得る方法が開示されている。しかしながら、用いる溶媒の種類が多く工程が煩雑になるという問題点がある。
また特許文献10では、液中乾燥法による粒子化法についても開示されているが、実施例中において、具体的な方法については明記されておらず、実現性の判断は難しい。一般に液中乾燥法は、工程が煩雑であり、溶媒除去が高コストになるため、生産性に劣るという問題点がある。
一般にPESは、有機極性溶媒中、アルカリ金属化合物の存在下、ジハロゲノジフェニルスルホン化合物と二価フェノール化合物との重縮合反応、あるいは、二価フェノール化合物のアルカリ金属二塩をあらかじめ合成しておいて、ジハロゲノジフェニル化合物との重縮合反応によって得られることが知られている(特許文献11、12、13)。
通常重縮合反応は、高分子量化するためには二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノジフェニル化合物は、通常等モル使用され、この時、理論上ポリマー末端の一方はヒドロキシフェニル末端基、もう片一方がハロゲノフェニル末端基となる。しかしながら、従来技術により重合されるPESは、溶融粘度が高く、通常の押出成形、射出成形可能なエンジニアリングプラスチックに比べると、加工性に課題があった。すなわちガラス転移温度の高い材料であるため、高温条件での溶融加工が必要となり、そのため溶融加工の段階で、溶融粘度が増加することが知られていた。これは、従来の技術で重合されるPESの末端には活性の高いヒドロキシフェニル末端基が含まれており、加熱によってハロゲノフェニル末端と反応したり、あるいはヒドロキシフェニル末端基の熱劣化や酸化劣化によるものと考えられている。
そのため、PESのヒドロキシフェニル末端基を低減し、溶融安定性を向上させる方法として、例えば特許文献14、15では、2価フェノール化合物、アルカリ金属塩、およびジハロゲノジフェニルスルホンからPESを重合後、クロロメタンを反応させることにより、反応活性なヒドロキシフェニル末端基を封鎖する方法や、特許文献16には、ジハロゲノフェニルスルホンを二価フェノール化合物よりも過剰に用いて重合後、さらに過剰分のハロゲノフェニル末端に対して、当量以上の1価フェノール化合物を添加して末端封鎖することにより、反応不活性なフェニル基を導入し、溶融可能性を改善する方法が開示されている。
また特許文献17では、重合時の副反応を抑制し、ポリマーの溶融安定性を向上させることに着想し、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを重合溶媒として用いる方法も開示されている。
前述のように、PESの溶融加工性を改良するため様々な工夫が実施されてきたが、その中でも溶融加工性を低下させる原因となるヒドロキシフェニル末端基を低減、あるいは封鎖し、反応不活性なハロゲノフェニル末端にすることが好ましい。しかしながら、PESを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のアロイ用改質材として使用する場合は、反応活性なヒドロキシフェニル末端基を有するPESの方が、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂との反応を促進することが可能となるため、好ましいと考えられるが、ポリマーそのものの製造の問題だけでなく、アロイ化の際の溶融加工性が悪いという問題があった。ポリマー製造面や溶融加工性に優れる、反応不活性なハロゲノフェニル末端のPESをアロイ化剤として使用した場合、前記特許文献1〜3に記載したように、PESが熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散せず、粗大分散するという課題があった。
一方、特許文献5では、ヒドロキシフェニル末端基のPESを製造する方法については、詳細の記載がないものの、通常公知の方法、すなわち二価フェノール化合物をジハロゲノフェニルスルホンを原料とした重縮合により製造されている。通常公知の重縮合は、その重縮合理論から二価フェノール化合物をジハロゲノフェニルスルホンよりも過剰に用いて重合したり、あるいは重合終了時にハロゲノフェニル末端に対して、当量以上の二価フェノール化合物を添加することにより、ハロゲノフェニル末端基よりも、反応活性なヒドロキシフェニル末端基を当量以上導入することが可能となる(理論上、ジハロゲノジフェニルスルホンと二価フェノール化合物の仕込み比が1:1と、当量の場合に、最も高分子量化が可能となり、その時の末端基組成は、ハロゲノフェニル末端基:ヒドロキシフェニル末端基=50:50(モル%)となる)。しかしながら、仕込み比を1:1と、当量仕込んだ場合でも、重合条件によっては、重合途中の成長末端となるアルカリ金属のフェノキシドや二価フェノール化合物のアルカリ金属塩などは、重合時に容易に酸化され、重合時に着色するという課題や、重合時の酸化反応により、仕込みモルバランス、成長末端基バランスが崩れ、高分子量化が困難になるという課題、ハロゲノフェニル末端基量がヒドロキシフェニル末端基量よりも多くなるという課題など、酸化反応により理想的な重縮合反応が妨げられ、分子量制御やヒドロキシ末端基量制御が困難という課題があった。さらに反応性のヒドロキシフェニル末端基量を高めるために、積極的に過剰の二価フェノール化合物を使用した場合では、重縮合理論で知られている通り、2成分のモノマーのモルバランスをずらすことにより、末端基量を微増加することが可能となるものの、同時にポリマー分子量が著しく低下するという課題があった。すなわちヒドロキシフェニル末端基量の増加とポリマー分子量の著しい減少が、同時に進行するという重縮合方法の本質的問題があった。
さらに、積極的に過剰の二価のフェノール化合物を重合開始前、重合終了時に使用した場合、得られたPES中に、過剰に加えた酸性の二価フェノール化合物や二価フェノール化合物のアルカリ金属塩、およびアルカリ金属塩そのもののが、ポリマー中に残存し、ポリマーの熱安定性、滞留安定性を低下させるという問題、ヒドロキシフェニル末端基との相互作用により、精製・除去がより困難になるという問題があった。通常、PESは、重合反応後、重合反応溶液をPESを析出させる貧溶媒中に投下する、場合によって、酸処理することにより、白色固体を析出させ、洗浄・濾過等のクリーン化を実施して、あるいは濾過等を実施することなく、ポリマー粉末を回収するが、ヒドロキシルフェニル末端基量を増加させることにより、同時にポリマー分子量を低分子量化させると、高分子量PESのように粉体状態として回収することが困難になり、場合によっては貧溶媒中で軟化し、塊の状態でポリマーが回収されるという課題があった。このようにポリマーを貧溶媒に析出させる段階において、粉体状態として回収することが困難なため、ヒドロキシフェニル末端基を増加させるために、過剰に加えた酸性の二価フェノール化合物や二価フェノール化合物のアルカリ金属塩、あるいはアルカリ金属塩そのものの再沈殿精製・未反応モノマーの除去工程において生産性が顕著に低下するという問題のほか、ヒドロキシフェニル末端基を有するPES中にアルカリ金属塩が残存するという課題があった。このようなPESを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ化すると、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂の種類によっては、熱分解、アロイ化による着色、加水分解が加速したり、滞留安定性が低下したり、あるいは電気特性が顕著に低下するという問題があり、アロイ用改質剤として使用するには、さらなる純度向上が必要であった。
一方、特許文献6(12頁右上15行)、7(10頁右上10行)のいずれも、ヒドロキシフェニル末端基よりも、エポキシとの反応性が高いアミノ末端基を導入したPESにより、前記特許文献5と同様の効果が得られることが開示されている。本特許文献6で使用されているアミノ基を導入したPESは、ジハロゲノジフェニルスルホンと二価フェノール化合物のカリウム金属塩との重縮合後、アミノフェノール化合物のカリウム塩との反応により得られることが開示されている。しかしながら特許文献6、7のいずれの方法も前記ヒドロキシフェニル末端基PESの公知例と同様の課題を有しており、さらにアミノフェノール化合物やその金属塩は、二価フェノール化合物やその金属塩よりも、さらに熱分解や酸化分解しやすいという化学的性質を有している。さらにアミノフェノール化合物による末端封鎖の場合、アミノ基、ヒドロキシフェニル基のいずれもが、ポリマー成長末端と反応する。そのため、末端基制御・分子量制御が困難となり、かつ精製・後処理効率も低下するという問題があった。さらに得られるPESは熱安定性、滞留安定性、耐加水分解性がさらに劣るという問題の他、反応性の異なるアミノフェニル末端とヒドロキシフェニル末端の両方が存在するため、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ化の際に、均一な反応を促進することが困難であり、その結果、分散性の均一化が困難という問題があった。
またこのようにして得られたPESの微粒子化方法として、特許文献11では機械的粉砕法を用いて、市販のPESを粉砕機を用いて数十μmサイズの粒子を得る方法が開示されているものの、粒子径を50μm以下と小さくすればするほど、粉砕に要する時間、コスト等が極端に増加し、生産性が低下するという問題点がある。また、均一な形状では得られず粒子径分布も広くなるのが現状であった。
特許文献12では化学的粒子化法として、市販のPESをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、エタノールを加えた溶液を、オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを溶解した純水中に添加し、粒子径1μm以下の水性分散液を得る方法が開示されているが、用いる溶媒の種類が多く工程が煩雑になるという問題点がある。
また特許文献13では液中乾燥法による、粒子化法についても開示されているが、実施例中において、具体的な方法については明記されておらず、実現性の判断は難しい。一般に液中乾燥法は、工程が煩雑であり、溶媒除去が高コストになるため、生産性に劣るという問題点がある。
このように、PES粒子化の技術に関しては、高コスト、用いる溶媒が多く工程が煩雑等、生産性の低下を免れることはできず、満足のいくものでは無かった。
特開平7−11134号公報(請求項1) 特開平6−228438号公報(請求項1) 特開平6−157906号公報(請求項1) 特開2001−106921号公報(請求項8) 特開2005−105151号公報(請求項1) 特開平1−118565号公報(請求項1、請求項5) 特開平2−58569号公報(請求項12) 特開2007−231234号公報(請求項1) 特開2000−80329号公報(請求項1) 特開平4−325590号公報(請求項1) 特公昭42−7799号公報(請求項1) 特公昭45−21318号公報(請求項1) 特開昭48−19700号公報(請求項1) 特開昭53−12991号公報(請求項1) 特開昭53−16098号公報(請求項1) 特開平5−163352号公報(請求項1) 特開平5−86186号公報(請求項1)
本発明は上記従来技術の課題を解決し、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とPESをアロイ化する際に、マトリックス樹脂中のPESを微分散化、さらにはナノサイズに分散化させるのに好適な、反応性のヒドロキシフェニル末端基を有する高純度なPESを、経済的且つ簡易な方法で短時間に効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
上記課題に対し本発明は、
(1)一般式(I)で表されるジハロゲノフェニル化合物ならびに一般式(II−1)および/または(II−2)で表される二価フェノール化合物および塩基性化合物、あるいはあらかじめ調製した一般式(II−1)および/または(II−2)で表される二価フェノール化合物および塩基性化合物を、非プロトン性極性溶媒中で加熱し、一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を有する芳香族ポリエーテルスルホン(A)を含む溶液を得、さらに、得られた芳香族ポリエーテルスルホン(A)を含む溶液に、一般式(b−1)および/または(b−2)で表される二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を加えて加熱することを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法
Figure 2010222506
Figure 2010222506
Figure 2010222506
(式中のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、およびCHから選ばれるいずれかを表す)、
(2)塩基性化合物(D)が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムおよび無水炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種である(1)に記載のヒドロキシフェニル末端を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法、
(3)非プロトン性極性溶媒が、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドおよびスルホランから選ばれる少なくとも1種である(1)または(2)のいずれかに記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法、
(4)芳香族ポリエーテルスルホン(A)の合成時における加熱温度が100〜350℃であり、かつヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の合成時における加熱温度が100〜200℃であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法、
(5)芳香族ポリエーテルスルホン(A)を含む溶液に、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を加えて加熱して得られたヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)と酸を接触させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法、
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の、ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の溶液と、界面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液を得、さらに、得られた均一溶液または懸濁液に、非プロトン性極性溶媒とは異なる第2の溶媒を加えて芳香族ポリエーテルスルホン粒子を析出させることを特徴とする、ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法、
(7)界面活性剤が、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする(6)に記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法、
(8)界面活性剤の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)の合成時に用いたジハロゲノフェニル化合物と二価フェノール化合物の総量100質量部に対し、1〜200質量部であることを特徴とする(6)または(7)のいずれかに記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法、
(9)第2の溶媒が、水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とPESをアロイ化する際に、PESを微分散化させるのに好適な反応性のヒドロキシフェニル末端基を有するPESを、原料となる通常重合によるPESの回収・洗浄を必要とせずに合成することが可能であるため、回収溶媒や時間、エネルギーなど製造コストを削減し、経済的且つ簡易な方法で短時間に効率よく該ヒドロキシフェニル末端基を有するPESを製造する方法を提供できる。
参考例1で得たPES、実施例2で得たPESのNMRチャートを示す図である。 実施例20で得たPES粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例25で得たエポキシ樹脂組成物の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例26で得たエポキシ樹脂組成物の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 実施例27で得たエポキシ樹脂組成物の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例9で得たエポキシ樹脂組成物の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)芳香族ポリエーテルスルホン(A)(以下PES(A)と略す)
本発明で用いられるPES(A)とは、一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を有し、式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、もしくはC(CHを表す。
Figure 2010222506
(式中のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、およびCHから選ばれるいずれかを表す) このようなPES(A)は、通常公知の方法により製造することができ、例えば前記特許文献11〜17記載の方法により製造することが可能である。
例えば、アルカリ金属化合物の存在下、有機溶媒中、一般式(I)で表されるジハロゲノフェニル化合物と一般式(II−1)および/または(II−2)で表される二価フェノール化合物とを重縮合させ、あるいはジハロゲノフェニル化合物と、あらかじめ調製した一般式(II−1)および/または(II−2)で表される二価フェノール化合物とアルカリ金属化合物とを重縮合させることにより製造することができる。
Figure 2010222506
(式中のXは、ClまたはFを表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、およびCHから選ばれるいずれかを表す。)
二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノジフェニル化合物は、通常等モル使用される。分子量や末端基組成を微調整するために、二価フェノール化合物を等モルからわずかに過剰量あるいは過小量で使用することもできる。また分子量や末端基組成を調整するために、少量のモノハロゲノジフェニル化合物あるいは一価フェノール化合物を重合溶液中に添加することもできる。
重縮合の反応温度は、使用する溶媒の特性に依存するが、通常100〜350℃で実施するのが好ましい。350℃以上より高温で重縮合すると、生成ポリマーの分解反応が進行するため、高分子量体や高純度のPESが得られなくなる傾向があり、100℃より低い温度で重縮合すると、高分子量体が得られない傾向にある。
反応時間は、反応原料成分の種類、重合反応の形式、反応温度により大幅に変化するが、通常は10分〜100時間の範囲であり、好ましくは30分〜24時間の範囲で実施される。反応雰囲気としては、酸素が存在しないことが好ましく、窒素もしくはその他の不活性ガス中で行うことが好ましい。二価フェノール化合物のアルカリ金属塩は酸素の存在下で加熱すると酸化されやすく、目的とする重合反応が妨げられ、高分子量化が困難になるほか、重合体の着色原因ともなる。
また重縮合反応は、重合終了時に、適当な末端停止剤、例えば、メチルクロライド、t−ブチルクロライド、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのような単官能クロライド、多官能クロライドを、反応溶液に重合体の末端停止剤として添加し、例えば90〜150℃で反応させることによって末端封鎖することができる。
ここで、使用される有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドンなどのピペリドン系溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの2−イミダゾリノン系溶媒、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホンなどのジフェニル化合物、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、スルホランなどのスルホラン系溶媒、これら2種以上の混合物などが挙げられる。
また、重合時に微量の水分、反応中に外部から入ってくる水分、重合時に発生する水は重合の進行を阻害するため、これら反応系内の水を分離する目的で、非プロトン性極性溶媒に相溶し、かつ0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒を用いることが出来る。このような溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒等、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、安息香酸等のカルボン酸系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン系溶媒、エチレンジアミン、アニリン、ピリジン、メチルピリジン等のアミン系溶媒などが挙げられ、好ましくは、炭化水素、さらに好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
水共沸溶媒の使用量は、系内の水分を除去可能な量であれば特に制限はないが、全モノマーの重量に対して、0.01〜10倍重量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.02〜5倍量である。
またアルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。なかでも炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩が好ましく、とりわけ無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムなどの無水アルカリ金属塩が好ましい。
本発明で使用されるPES(A)を含む溶媒は、前記の方法により製造することが可能であるが、最終的に得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を効率よく、高純度で製造するためには、本数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF、標準物質としてポリスチレンより換算した数平均分子量(Mn)で測定した数平均分子量が、33000〜140000のものが好ましく、さらに好ましくは47000〜110000、より好ましくは54000〜80000である。
上記分子量から、溶媒中に含まれるPES(A)をDMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した還元粘度に置き換えると、その還元粘度としては、0.25〜1.0が好ましく、さらに好ましくは0.35〜0.8、より好ましくは0.4〜0.6のものである。
本発明の製造方法で使用するPES(A)の数平均分子量(還元粘度)が低いと、最終的に得られるヒドロキシル基含有PES(E)の分子量が極めて小さくなり、低分子量側のポリマーやオリゴマーが貧溶媒に溶解、あるいは膨潤したりし、その結果、ポリマーの回収率や洗浄効率が低下する傾向が認められる。さらに洗浄効率の低下により、ポリマー中にアルカリ金属化合物などの不純物量が増加するという傾向が認められる。また低分子量化に伴いガラス転移温度が低下し、PESの本来の特徴である耐熱性が低下する場合がある。
PES(A)の数平均分子量が高いと、好ましい範囲の分子量を有するヒドロキシフェニル末端基含有PES(E)を得るためには、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)や塩基性化合物(D)の添加量が増えるため、酸性を示す未反応の二価フェノール化合物(B)や、塩基性化合物(D)がポリマー中に残存したり、ポリマーが着色や、洗浄・回収・分離が困難となる傾向がある。
(2)反応性のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の製造方法(工程I)
本発明の反応性のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)は、通常公知の方法、すなわち二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノジフェニル化合物の重縮合により直接製造したり、重縮合の後半で末端封鎖剤を添加して製造するのではなく、高分子量のPES(A)を合成し、さらに二価フェノール化合物(B)および/または水(C)および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒中で加熱することにより、反応性のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を製造することを特徴とするものである。
従来の製造方法では、二価フェノール化合物とジハロゲノジフェニル化合物を原料モノマーとし、直接重合するため、高い比率のヒドロキシフェニル末端基が得られないのに対し、本発明の方法では、高い比率でヒドロキシフェニル末端基を有するPESを得ることができる点で大きく異なる。
Figure 2010222506
Figure 2010222506
Figure 2010222506
(式中のXは、ClまたはFを表し、Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、およびCHから選ばれるいずれかを表し、nは1以上の整数を表す。)
さらに本発明を明確にするため、反応スキームを上記式に示した。まず目的とするヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)よりも、相対的に分子量の高いPES(A)をあらかじめ重合して製造する。ここでは、ジハロゲノジフェニル化合物(I)と二価フェノール化合物(II)(ここではII−1を例示)より、従来公知の方法により重合した後、重合溶液をそのまま、もしくはろ過した後に使用することができる。
PES(A)を含む溶媒を中間原料として、二価フェノール化合物(B)(ここではb−1を例示)および/または水(C)および塩基性化合物(D)と非プロトン性極性溶媒中で加熱することにより、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)によるPES(A)のポリマー主鎖への求核置換反応により(式中矢印αの位置)、ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を誘導するものである。
また本発明の反応では、前記ポリマー主鎖への求核置換反応のほかに、ハロゲノフェニル末端と二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の求核置換反応によっても(式中βの位置)、ヒドロキシフェニル末端基が生成する。ポリマー主鎖モル数に対し、ハロゲノフェニル末端は、ポリマー末端にのみ極わずかに存在するため、ポリマー主鎖への求核置換反応が確率的に優勢となるが、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の添加量や、塩基性化合物(D)の添加量、反応温度、反応時間を調整することにより、ポリマー主鎖への求核置換反応だけでなく(αの反応)、ハロゲノフェニル末端への求核置換反応(βの反応)も同時に進行させることが可能となり、ヒドロキシフェニル末端基量の高いPES(E)を誘導することができる。
一方、公知の重縮合の場合、二価のフェノール化合物とジハロゲノフェニルスルホンの仕込みモル比(r)、その時得られるポリマー分子量、ポリマー末端基組成は、高分子化学序論(第2版)(化学同人発行、p206)などに記載されているように、r=ジハロゲノフェニルスルホンの仕込みモル数(a)/二価のフェノール化合物の仕込みモル数(b)(ここで過剰成分を分母とし、a/b=rと置く)、反応率をpと置くと、その時得られるポリマーの数平均重合度(Pn)は、
Pn=(1+r)/[2r(1−p)+(1−r)]と表される。
反応率が100%と仮定すると(p=1)、
Pn=(1+r)/(1−r)
この式から、二価のフェノール化合物が1%過剰に存在する場合、その数平均重合度は201となる。また末端基比率は、各モノマー成分の仕込みモル比に準じ、[ジハロゲノフェニル末端]/[ヒドロキシフェニル末端]=r=1.0/1.01となり、ヒドロキシフェニル末端基組成は50.2%程度となる(なお反応率が100%以下の場合は、さらに低い値になる)。
一方、得られるポリマー中のヒドロキシフェニル末端を過剰に生成させるために、二価のフェノール化合物を10%過剰に仕込む場合(r=1.0/1.1)、その数平均重合度は21、ヒドロキシフェニル末端基組成は52.4%程度、さらに二価のフェノール化合物を50%過剰に仕込んだ場合(r=1.0/1.5)、数平均重合度はわずかに5、生成するヒドロキシフェニル末端基組成は60モル%程度であり、その時の理論分子量はきわめて低分子量となってしまい、分子量が高く、高ヒドロキシフェニル末端基組成のポリマーを得ることは、理論的にも不可能であった。
本発明者らは、本反応により効率よく、かつ定量的にヒドロキシフェニル末端を導入できることを見いだし、さらに本反応によれば、高収率で目的のヒドロキシフェニル末端基を有するPESが得られ、さらに好ましいことに、本反応により高ヒドロキシフェニル末端基を有し、従来の方法に比べ高分子量であり、さらに後処理工程が極めて単純化でき、かつ純度の高いPESが得られることを見いだした。
本発明で使用される二価フェノール化合物(B)は、下記一般式(b−1)、および/または(b−2)で表されるものである。
Figure 2010222506
(式中のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、およびCHから選ばれるいずれかを表す)
このような二価フェノール化合物(B)としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジフェニルスルホン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのジヒドロキシフェニルエーテル類、およびこれらの構造異性体が挙げられるが、これらの中で、入手性や実用性、価格面から、ハイドロキノン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノール−A)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、4,4’−エチリデンビスフェノール(ビスフェノール−E)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが好ましく、またこれら二価フェノールの化合物(B)の構造異性体を使用することもできるが、より好ましくは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノール−A)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、4,4’−エチリデンビスフェノール(ビスフェノール−E)であり、特に好ましくは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノール−A)である。
本反応で使用する二価フェノール化合物(B)の添加量は、最終的に得ようとするヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の目標とする末端基量や目標とする分子量によるが、むしろこれらは、二価フェノール化合物(B)の添加量により制御することが可能となる。
本発明で使用する水(C)は、特に制限はないが、得られるポリマー中の不純物含量などを考慮すると、出来る限り不純物の少ない水を用いることが好ましい。
本反応で使用する水(C)の添加量は、最終的に得ようとするヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の目標とする末端基量や目標とする分子量によるが、むしろこれらは、水(C)の添加量により制御することが可能となる。
なお本発明では添加する水(C)の量や塩基性化合物(D)の量などで目標とするPES(E)の末端基量や分子量を制御するため、原料中に含まれる微量の水分、反応中に外部から入ってくる水分、塩基性化合物調製時の水分などは、本発明の目的の反応、すなわち中間原料であるPES(A)と添加した水(C)の求核置換反応以外に、系内に存在する水による反応が進行することがあるため、ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の目標とする末端基量や、目標とする分子量の制御が困難となるため、これらの水分は可能な限り除去することが好ましい。
本発明の反応を定量的に進行させるため、本反応の有機溶媒として、非プロトン性極性溶媒を使用する。具体的には、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチル−2−ピペリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびこれら2種以上の混合物などが挙げられるが、特に好ましくは、ジメチルスルホキシド、DMF、NMPが挙げられる。
本反応に使用される非プロトン性極性溶媒量は、PES(A)、二価フェノール化合物(B)を溶解させる量であれば、特に制限はないが、全モノマーの重量に対して、0.5〜20倍重量の範囲が好ましい。さらに好ましくは2〜10倍量である。
0.5倍未満では原料となるPES(A)、二価フェノール化合物(B)が溶解せず、また反応時の攪拌等の操作が困難となり、均一な反応が困難となる。また溶媒量が20倍量を超えると、ポリマー濃度や二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の濃度が下がり、反応速度が遅くなったり、再沈殿生成、洗浄、回収が困難になる傾向が認められ、何よりも溶媒量の増加により、生産量の低下、溶媒回収コストに影響する。
なお本発明では非プロトン性極性溶媒中で本反応を実施することが重要であるが、場合によっては、非プロトン性極性溶媒以外の有機溶媒を併用することもできる。特に、原料中に含まれる微量の水分、反応中に外部から入ってくる水分、使用する塩基性化合物の結合水、塩基性化合物水溶液中、塩基性化合物調製時の水分などは、本発明の目的の反応、すなわち中間原料であるPES(A)と二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の求核置換反応以外に、系内に存在する水による加水分解が進行することがある。反応系内の水分は、本発明の反応を阻害することがあることから、これら反応系内の水を分離する目的で、非プロトン性極性溶媒に相溶し、かつ0.101MPa下において、水と共沸混合物を形成する溶媒を用いることが出来る。このような溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブチルアルコール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒等、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、安息香酸等のカルボン酸系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン系溶媒、エチレンジアミン、アニリン、ピリジン、メチルピリジン等のアミン系溶媒などが挙げられ、好ましくは、炭化水素、さらに好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
水共沸溶媒の使用量は、系内の水分を除去可能な量であれば特に制限はないが、全モノマーの重量に対して、0.01〜10倍重量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.02〜5倍量である。また本発明の反応では、反応系に塩基性化合物(D)を添加すると、さらに反応速度を向上させることができる。使用する塩基性化合物(D)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン、N、Nージメチルアミン、N、Nージエチルアミン等の二級アミン、N−メチルアミン、N−エチルアミン等の一級アミン、アンモニアなどが挙げられる。これらの中でも、取り扱い易さから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムなどを使用することができ、なかでも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上を好ましく使用することができる。
塩基性化合物(D)の添加量は、使用する二価フェノール化合物(B)1モルに対し、0.1〜3倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1倍モルである。
塩基性化合物(D)の添加量が二価フェノール化合物(B)1モルに対し、3倍モル以上では、PES(E)酸性の二価フェノール化合物や二価フェノール化合物の塩、さらには塩基性化合物(D)自身がポリマー中に残存したり、ポリマーが着色する傾向がある。一方、0.5以下では、反応性のヒドロキシフェニル末端基を導入することが困難となる。
また水を用いた場合の塩基性化合物(D)の添加量は、使用する水(C)1モルに対し、0.01〜2倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1倍モルである。
塩基性化合物(D)の添加量が、水(C)1モルに対し、2倍モル以上では、塩基性化合物(D)が溶媒へ溶解せずに不均一に存在する傾向が見られ、これら過剰な塩基性化合物はポリマー中に残存したり、ポリマーが着色する傾向がある。一方、0.01倍モル以下では、反応性のヒドロキシフェニル末端基を導入することが困難となる。
加熱温度は、使用する溶媒種、溶媒の沸点、反応溶液の濃度、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の添加量、塩基性化合物(D)の添加量に依存するが、通常100〜250℃で実施するのが好ましく、さらに好ましくは100〜200℃である。250℃以上より高温で反応すると、二価フェノール化合物塩の熱分解、反応系内で生成したヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)そのものの熱分解が進行するため、分子量の制御やヒドロキシフェニル末端基導入量の制御が困難となったり、最終的に得られるPES(E)の熱安定性・滞留安定性の低下や、着色といった傾向が認められるようになる。一方、100℃より低い温度で本反応を行うと、反応が非常に遅くなるという問題がある。
反応に要する時間は、二価フェノール化合物(B)の種類・添加量および/または水(C)の添加量、塩基性化合物(D)の種類・添加量、反応濃度、反応温度により大幅に変化するが、通常は10分〜10時間の範囲であり、好ましくは30分〜5時間の範囲で実施される。反応雰囲気としては、酸素が存在しないことが好ましく、窒素もしくはその他の不活性ガス中で行うとよい結果が得られる。二価フェノール化合物の塩基性化合物は酸素の存在下で加熱すると酸化されやすく、目的とする反応が妨げられ、その結果、分子量制御、ヒドロキシフェニル末端基導入量の制御が困難となるほか、重合体の着色原因ともなる。
本発明の方法により得られた粗ヒドロキシフェニル末端基を有するPESは、反応溶液中に含まれている塩基性化合物を濾過あるいは遠心分離によって分離した後、あるいは濾過や遠心分離をせずに、反応溶液に貧溶媒を加えて、あるいは貧溶媒に反応溶液を加えて、析出固体として分離することができる。ヒドロキシフェニル末端基を有するPESの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどのニトリル類、水などを挙げることができる。またこれらの貧溶媒を2種以上混合して用いることができる。また上記の貧溶媒には、ポリマーが析出可能な範囲で、前記の重合反応溶媒などのポリマーの良溶媒が含有されていてもよい。
(3)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)粒子の製造方法(工程II)
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホンを粒子化する方法としては、工程(I)の後、界面活性剤の共存下で、PES粒子を析出させることにより製造することができる。
PES粒子を析出させる方法としては、例えば、
(a)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で冷却することにより析出させる方法、
(b)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で溶媒を除去することにより析出させる方法、
(c)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で溶液にPESと非相溶の溶媒を加えることにより析出させる方法、
(d)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で溶液にPESとPESを溶解する溶媒に非相溶の溶媒を加え、エマルジョンを形成させ、PESを溶解する溶媒を除去することにより析出させる方法、
等が挙げられる。なお、界面活性剤は、PESが析出する際に共存さえすれば、添加方法、添加手順等に関しては、いずれの方法でも構わない。工程の容易さから、(c)が好ましく用いられる。
界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、塩化トリアルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等のカチオン系界面活性剤、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンアミン、ポリビニルピロリドン、セルロース等ノニオン系界面活性剤、およびアルキルアミノカルボン酸塩、カルボキシベタイン等の両性の界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の混合系を用いることができる。なお、ここで言うアルキルとは、炭素数2〜30までの直鎖状または分岐状飽和炭化水素基、および直鎖状または分岐状不飽和炭化水素基を表す。このうち好ましいものとしては、数平均分子量が1000以上の界面活性剤である。特に好ましくは、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物である。なお、ここで言う数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて算出したものである。
界面活性剤の添加量としては、PES(A)100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは50〜200質量部である。添加量が上記範囲より少ない場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物として得られ、粒子径分布も広くなる傾向であり好ましくない。上記範囲より多い場合、界面活性剤が非プロトン性極性溶媒に残存するため、好ましくない。
PESを析出させるための第2の溶媒としては、25℃におけるPESの溶解度が1質量%以下の溶媒を使用する。このような溶媒としては、上記範囲であれば特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、2−メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒等、クロロホルム、ブロモホルム、1,2−ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、および水の中から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。このうち、好ましいものとしては、水、メタノール、およびエタノールなどが挙げられ、これらはその1種または2種以上の混合溶媒として使用できる。また上記の溶媒には、PES(A)の溶解度が1質量%以下の範囲で、上記記載の非プロトン性極性溶媒が含有されていてもよい。
第2の溶媒の添加量は、PES(A)の均一溶液または懸濁液100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上である。添加量が上記範囲より少ない場合、PES(E)の粒子が析出しない。
第2の溶媒の添加速度は、PESの均一溶液または懸濁液100質量部に対して、10質量部/分以下が好ましく、より好ましくは5質量部/分である。添加速度が上記範囲より速い場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物として得られる傾向であり好ましくない。
第2の溶媒を添加時の、PESの均一溶液または懸濁液の温度としては、0〜80℃が好ましく、より好ましくは10〜60℃である。PESの均一溶液または懸濁液の温度が上記範囲より高い場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物として得られる傾向であり、好ましくない。
以上の手法により、PES(E)粒子の分散液を得ることができる。
PES粒子の分散液からPES(E)粒子の単離を行うためには、通常公知の固液分離、洗浄、乾燥の手法を用いることができる。以下詳細に説明する。
PES粒子の分散液に含まれるPES(E)粒子、非プロトン性極性溶媒、第2の溶媒、界面活性剤から、PES(E)粒子を単離する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などが挙げられる。
PES(E)の洗浄方法としては、二価フェノール(B)、塩基性化合物(D)、非プロトン性極性溶媒、界面活性剤がPES(E)に残存しないよう、十分洗浄することが好ましい。
PES(E)の洗浄溶媒としては、第2の溶媒を用いることが好ましく、より好ましくは水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
固液分離を行った後の溶媒は、回収を行い、PESの製造方法の各工程中のいずれか、又はPES粒子の製造方法での洗浄工程において、再利用することも可能であり、これにより生産性を向上させることができる。
PES(E)の乾燥方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。加熱する場合、温度は、ガラス転移点温度より低い温度が好ましく、50〜150℃が好ましい。
以上の手法により、ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の粒子を得ることができる。
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を得るためには、本発明のいずれかの工程において酸を接触させることが好ましい。接触させる工程は特に限定されないが、好ましくは、反応後の溶液あるいは貧溶媒による析出時、あるいは回収後、いずれかの工程で、PESと酸を接触させることで、PESに含まれる塩基性化合物を効率よく取り除くことが可能となる。
使用される酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、亜硫酸、クロム酸、次亜塩素酸、過塩素酸、シアン化水素、臭素水素酸、ホウ酸などの無機酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸、酒石酸、ステアリン酸、ナフテン酸、ピクリン酸、りんご酸などの有機酸から選ばれる1種または2種以上の混酸を用いることができ、酸の種類はこれらに限るものではない。
使用する酸の量としては、用いる溶媒への溶解性などの影響を受けるため、特に制限はないが、PES1モルに対し、0.001〜2倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1倍モルである。酸の量が上記範囲より少ない場合、アルカリ金属塩が十分に取り除くことができず、好ましくない。
酸接触後のPESを貧溶媒で洗浄後、乾燥させることによって、ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を得ることができる。
(4)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の特性
本発明によって得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の末端基組成は、例えば、重水素化DMSO溶媒中、400MHz H−NMRを用い、積算回数100回により、7.7ppmにクロル置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HCl)と、6.9ppmにヒドロキシル基で置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HOH)が高分解能で観測できること、1H−NMRの面積比は周知の通り、そのモル数を反映していることから、ヒドロキシフェニル末端基、クロロフェニル末端基組成(モル%)は、下記式により算出することができる。
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
[1HOHのピーク面積]/([1HOHのピーク面積]+[1HClのピーク面積])×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
[1HClのピーク面積]/([1HOHのピーク面積]+[1HClのピーク面積])×100
すなわち、ヒドロキシフェニル末端基とクロロフェニル末端基が1:1存在する場合は、ヒドロキシフェニル末端基/クロロフェニル末端基組成は、50/50モル%で表すことができる。
本発明の製造方法によれば、PES(A)の末端基組成、反応時に使用する二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の添加量などの反応条件を、本発明の範囲内で選択することにより、ヒドロキシフェニル末端基量や分子量を適宜調整することが可能であるが、最終的に得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の好ましいヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)は、60モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
特に本発明の製造方法によれば、従来公知の製造方法では製造困難であった、ヒドロキシフェニル末端が60モル%以上のもの、さらには80モル%以上のものも製造可能である。
本発明の好ましい態様によって得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)は、反応性の高いヒドロキシフェニル末端基を高含有量含んでおり、さらに耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特に従来の方法により得られるPES(A)や、あるいはモルバランスをずらしてヒドロキシフェニル末端基量を増加させた低分子量PESに比べて、生産性に優れ、さらにヒドロキシフェニル末端基量が高く、分子量分布が狭く、且つ、金属含有量が著しく少ないという特徴もある。
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の好ましい分子量は、最終的に得られるポリマーのヒドロキシフェニル末端基量、分子量、ガラス転移温度や、本ポリマーを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にアロイ化する際の、末端基反応性のほか、末端基反応による相溶性の向上効果の面から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF中、標準物質としてポリスチレンより換算した数平均分子量(Mn)としては、20000〜54000のものが好ましく、さらに好ましくは26000〜54000である。
本分子量を該ポリマーのDMF中、25℃で測定した還元粘度に置き換えると、その還元粘度としては0.15〜0.4が好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.4である。
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)は、反応温度や反応時間、水分量や用いる原料の種類などの影響があるため、特に限定はされないが、好ましい態様によって得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)は、原料となるPES(A)の分子量や、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の添加量により、得られる分子量やヒドロキシフェニル末端基量に依存する傾向が見られる。
例えば150℃、5時間、DMSO中で、好ましい態様によって得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)のヒドロキシフェニル末端基量は二価フェノール化合物(B)および/または水(C)の添加量に比例する。また、ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の好ましい分子量である数平均分子量26000〜54000、ヒドロキシフェニル末端基量60〜100%、を得るためには、ヒドロキシフェニル末端基量が50%のPES(A)を用いた場合、好ましいPES(A)の数平均分子量はおおよそ33000〜75000以上の範囲となり、ヒドロキシフェニル末端基量が0%のPES(A)を用いた場合、好ましいPES(A)の数平均分子量おおよそ47000〜100000以上の範囲となる。
しかし、使用するPES(A)の数平均分子量が低いと、最終的に得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の分子量が小さくなり、低分子量側のポリマーやオリゴマーが貧溶媒に溶解、あるいは膨潤したりし、その結果、ポリマーの回収率や洗浄効率が低下する傾向が認められる。さらに洗浄効率の低下により、ポリマー中にアルカリ金属化合物などの不純物量が増加するという傾向が認められる。また低分子量化に伴いガラス転移温度が低下し、PESの本来の特徴である耐熱性が低下する場合がある。また、PES(A)の数平均分子量が高いと、好ましい範囲の分子量を有するヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を得るためには、二価フェノール化合物(B)や塩基性化合物(D)および/または水(C)および塩基性化合物(D)の添加量が増えるため、酸性を示す未反応の二価フェノール化合物(B)や、塩基性化合物(D)がポリマー中に残存したり、ポリマーが着色や、洗浄・回収・分離が困難となる傾向があるため、原料のPES(A)の数平均分子量は54000を越え80000以下のものが最も好ましい。
なお、ここで言う数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF、標準物質としてポリスチレンより換算した数平均分子量(Mn)で測定した数平均分子量である。
本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の粒子化方法を採用することにより、数平均粒子径は、0.1〜50μmのPES(E)粒子を得ることができる。数平均粒子径のより好ましい範囲は、0.1〜30μmである。数平均粒子径が上記範囲より小さいと、取扱い性が低下し、回収等が困難になるため、収率が低下する傾向である。数平均粒子径が上記範囲より大きいと、二価フェノール(B)や塩基性化合物(D)を粒子内に多く残存する傾向であるため、洗浄効率の悪化、着色等PESの品質が低下するため好ましくない。なお、PES粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真にて、任意粒子100個を観測、直径を測定し、以下の式(1)より算出する。なお、粒子が真円でない場合は、長径を測定するものとする。
さらに本発明のPES(E)粒子の粒子径分布は、1.0〜1.5の範囲であるとより好ましい。均一な粒子径は、ポリマーアロイ用添加剤、触媒担持体、電子写真用のトナー、液晶スペーサーなどに適用する場合、予期した以上の性能を発現することがあるため好ましい。例えば、ポリマーアロイ用添加剤として用いた場合、混練時間の短縮等、生産性の大幅な向上がある。 なお、粒子径分布は、以下の式(3)に従い、数平均粒子径に対する体積平均粒子の比により算出する。体積平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真にて、任意粒子100個を観測、直径を測定し、以下の式(2)より算出する。なお、粒子が真円でない場合は、長径を測定するものとする。
Figure 2010222506
ここで、
Di:粒子個々の粒子径、
n:測定数100、
Dn:数平均粒子径、
Dv:体積平均粒子径、
PDI:粒子径分布とする。
またヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)中に残存するアルカリ金属量は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ化の際の熱安定性、滞留安定性、着色への影響から、少ないほど好ましい。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ用として使用目的、および本発明の好ましい態様によって得られる残存アルカリ金属量として、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは500ppm、さらに好ましくは100ppm以下である。
また好ましい態様によって得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)は、各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ用ポリマーとして、熱安定性、滞留安定性、非着色性などに優れるだけでなく、本発明のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)をアロイ化した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる組成物は、PES(E)がポリマーマトリックス中に微分散、さらにはナノサイズにまで分散し、さらに使用するヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の末端基量、その分子量、配合量によっては完全相溶した構造を呈し、機械特性、耐熱性、および電気的特性が極めて優れた熱可塑性樹脂アロイ、熱硬化性樹脂アロイを提供することが可能となる。
特に本発明の製造方法によれば、これらのアロイ用に好適な、反応性のヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を、極めて簡易的な方法で、効率よく、かつ所望のヒドロキシフェニル末端基量、所望の分子量のポリマーを定量的に製造することが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
(1)還元粘度(ηsp/c)
還元粘度は、オストワルド毛細管粘度計を用い、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した。
なお還元粘度(ηsp/c)は、下記し記に基づき計算し、5回の測定値を平均化した値を使用した。
ηsp/c=(t−t)/t/c
t;重合体溶液の粘度計における標線間の通過時間(秒)
;純溶媒の粘度計の標線間の通過時間(秒)
c;重合体溶液の濃度(g/dl)
(2)アルカリ金属含有量の定量
PES中のアルカリ金属含有量の定量は下記の方法により行った。試料を石英るつぼに秤量し、電気炉を用いて灰化し、灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)に処した。
(3)PESの加熱時重量減少率の測定
PESの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用い、下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下 100℃〜600℃、昇温速度10℃/分。
試料仕込み重量:約10mg
上記条件により測定し、10%重量減量を示した温度を「10%重量減量温度」とし、熱安定性を評価した。
(4)PESの数平均分子量測定
ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。GPC測定は、検出器に株式会社島津製作所製UV検出器SPD−10Avpを用い、ポンプにLC−10ADvpを用い、カラムは昭和電工株式会社製GPC用カラム、Shodex KD−806Mを2本接続して行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶離液にジメチルホルムアミド(DMF)を用い、試料濃度はPES(A)の場合、PES(A)を含む合成溶媒を10mg/mL、PES(E)の場合、PES(E)を1mg/mLの溶液に調整し、0.1mL注入した。
(5)界面活性剤の数平均分子量の測定
界面活性剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリエチレングリコール換算の数平均分子量を求めた。GPC測定は、検出器に株式会社島津製作所製示差屈折計RID−10Aを用い、ポンプにLC−10ADvpを用い、カラムは昭和電工株式会社製GPC用カラム、Shodex GF−7MHQを2本接続して行った。測定条件は、流速1.0mL/minとし、溶離液に水(イオン交換水)を用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(6)PES末端基組成
400MHz H−NMR(核磁気共鳴)装置(日本電子株式会社製 AL−400)を用い、試料濃度1mg/mLの重水素化DMSO溶液中、積算回数100回で測定した。
7.7ppmにクロロ基に隣接する2つのプロトン(2×HCl)と、6.9ppmにヒドロキシル基に隣接する2つプロトン(2×HOH)が、観察される。これらのピーク面積比を用い、末端基組成を下記関係式より算出した。
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
[HOHのピーク面積]/([HOHのピーク面積]+[HClのピーク面積])×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
[HClのピーク面積]/([HOHのピーク面積]+[HClのピーク面積])×100
(7)熱可塑性樹脂とのアロイ化
東洋精機製小型ブラベンダーを用い、所定温度で15分間配合して溶融混合し、得られた組成物はペレタイズし、乾燥した。
(8)熱硬化性樹脂とのアロイ化
試験管中で熱硬化性樹脂とPESを加熱・混合させ均一にし、得られた混合物を冷却し、硬化剤を添加し、脱泡混練機(株式会社シンキー製:あわとり練太郎ARV−310)を用いて2000rpmで3分混練した後、2000rpmで5分、0.6KPaで減圧・脱泡しながら均一によく混合した。得られた組成物は加熱・硬化した。
(9)熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂アロイのモルフォロジー観察
透過型電子顕微鏡(HITACHI、ELECTRON MICROSCOPE H−700)を用いて、得られた樹脂組成物の断面についてモルフォロジー観察を行い、写真上に撮影された、分散した個々の球状分散相の最も長い粒子系を30点測定し、それらの値を平均化した値を平均粒径とした。
(10)熱特性測定
セイコー電子工業(株)製ロボットDSCを用い、サンプル量5〜8mg、窒素雰囲気下で、30℃〜280℃まで20℃/分で昇温、5分滞留後、30℃まで20℃/分で降温、5分滞留し、300℃まで20℃/分で昇温して、2回目の昇温時に得られたガラス転移温度(Tg)を測定した。
(11)数平均粒子径、体積平均粒子径、粒子径分布の算出法
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、PES粒子を観察、平均粒子径を測定した。なお、粒子が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
数平均粒子径(Dn)、体積平均粒子径(Dv)は、任意粒子100個の平均より数式(1)および(2)に従い、算出した。
粒子径分布(PDI)は、数式(3)に従い、算出した。
Figure 2010222506
なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布とする。
<PES(A)の調製>
[参考例1]PES(A−1)の調製
特許文献17(特開平5−86186)に記載の本文、実施例を参考に、攪拌機、温度計、冷却器、留出物分液器および窒素導入管を備えた1Lの四口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下DHDPSと略す)(50.56g、0.202mol)、トルエン100ml、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(250.8g)、40%水酸化カリウム水溶液(56.0g、0.390mol)を秤量し、攪拌しながら窒素ガスを通じ、反応系をすべて窒素置換した。窒素ガスを通じながら130℃まで加熱した。反応系の温度が上昇するとともにトルエンの環流が開始され、反応系内の水をトルエンとの共沸で除去し、トルエンを反応系に戻しながら共沸脱水を130℃で4時間行った。この後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(以下DCDPSと略す)(57.43g、0.200mol)をトルエン40gとともに反応系に加え、反応系を150℃に加熱した。トルエンを留出させながら4時間反応させ、高粘度の茶褐色の溶液を得た。反応液の温度を室温まで冷却し、反応溶液をメタノール1kgに投下し、ポリマー粉を析出させた。濾過によりポリマー粉を回収し、これに水1kgを加え、さらに1Nの塩酸を加え、スラリー溶液をpH3〜4になるまで加え、酸性にした。濾過によりポリマー粉を回収した後、ポリマー粉を水1kgで2回洗浄した。さらにメタノール1kgで洗浄し、150℃で12時間真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は88.3g(収率95.0%:収率=(88.3/464.53(PES(A)の分子量)/0.2×100より算出)、ガラス転移温度(Tg)=234℃、10%重量減量温度は510℃であった。還元粘度は0.58であった。400MHz H−NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=50/50(mol%)であった。一連の結果を表1に示した。
[参考例2]PES(A−2)の調製
特許文献16(特開平5−163352)記載の方法により、PESを調製した。攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた1Lの四口フラスコに、ジフェニルスルホン(611.6g)、DCDPS(57.43g、0.200mol)、DHDPS(49.81g、0.199mol)、無水炭酸カリウム(30.4g、0.220mol)を秤量し、窒素雰囲気下、130℃まで徐々に加熱した。ジフェニルスルホンが溶解した後、反応溶液を攪拌しながら反応温度を300℃にまで上昇させ、重合を開始した。反応時間2時間で反応を終了し、反応溶液を1kgのアセトン/メタノール1:1混合溶媒に投下し、析出固体を粉砕、1kgの水で洗浄を2回繰り返し、130℃で12時間真空乾燥した。溶液粘度は0.35(g/dl)であった。400MHz H−NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=52/48(mol%)であった。結果を表1に示した。
[参考例3]クロロフェニル末端基を有するPESの製造方法(A−3)
特許文献16(特開平5−163352)の方法により、末端封鎖したPESを調製した。攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた1Lの四口フラスコに、ジフェニルスルホン(611.6g)、DCDPS(57.44g、0.20mol)、DHDPS(48.04g、0.19mol)、無水炭酸カリウム(30.4g、0.22mol)を秤量し、窒素雰囲気下、130℃まで徐々に加熱した。ジフェニルスルホンが溶解した後、反応溶液を攪拌しながら反応温度を300℃にまで上昇させ、重合を開始した。反応時間2時間後、クロロメタン0.096L(0.04mol)を吹き込み、末端封鎖した後、反応溶液を1kgのアセトン/メタノール1:1混合溶媒に投下し、析出固体を粉砕、1kgの水で2回洗浄し、130℃で真空乾燥した。溶液粘度は0.35であった。H−NMRより、ヒドロキシフェニル末端基は確認されないことから、全末端がクロロフェニル末端基に変換したと推測される。結果を表1に示した。
[参考例4]
住友化学社製“スミカエクセル 3600P”
還元粘度は0.36、ガラス転移温度224℃、5%重量減量温度510℃、H−NMRより、クロロフェニル末端基のみが観察された。
[参考例5]
住友化学社製“スミカエクセル 4800P”
還元粘度は0.48、ガラス転移温度230℃、5%重量減量温度510℃、H−NMRより、クロロフェニル末端基のみが観察された。
Figure 2010222506
<二価フェノールを用いたヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の製造>
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管、温度計、ディーンスターク共沸蒸留装置を取り付けた2Lの四口フラスコに、参考例1と同条件でPESを合成し、合成後の溶媒を室温まで冷却、さらにDHDPS(11.0g、44.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)600mL、無水炭酸カリウム(6.80g、49.2mmol)を秤量し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間5時間で反応を終了し、反応溶液を1%濃度の酸メタノール10Lに投下し、析出固体をろ過・回収し、次いで5Lの水と5Lのメタノールでそれぞれ洗浄し、80℃で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は94.1g、収率90.6%(収率は回収したPESの重量/(合成したPESの100%収率時の重量+仕込みDHDPS)×100により算出)、ガラス転移温度=201℃、5%重量減量温度は453℃、還元粘度(ηsp/c)は0.21であった。H−NMRではクロロフェニル末端基は確認されず、ヒドロキシフェニル末端基組成が100mol%のPESが得られた。アルカリ金属含量は、150ppmであった。結果を表2にまとめて示す。
[実施例2]
水共沸溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。すなわち、攪拌機、窒素導入管、温度計、ディーンスターク共沸蒸留装置を取り付けた2Lの四口フラスコに、参考例1と同条件でPESを合成し、合成後の溶媒を室温まで冷却、さらにDHDPS(11.0g、44.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)600ml、水共沸溶媒としてトルエン20ml、無水炭酸カリウム(6.80g、49.2mmol)を秤量し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、水をトルエンとの共沸として取り除きながら、反応時間2時間で反応を終了し、反応溶液を1%濃度の酸メタノール10Lに投下し、析出固体をろ過・回収し、次いで5Lの水と5Lのメタノールでそれぞれ洗浄し、80℃で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は97.7g、収率94.0%(収率は回収したPES重量/(合成したPESの100%収率時の重量+仕込みDHDPS)×100により算出)、ガラス転移温度=197℃、5%重量減量温度は422℃、還元粘度(ηsp/c)は0.20であった。H−NMRではクロロフェニル末端基は確認されず、ヒドロキシフェニル末端基組成が100mol%のPESが得られた。アルカリ金属含量は、90ppmであった。結果を表2にまとめて示す。
[実施例3]
参考例1と同条件でPESを合成した後、溶媒としてNMPの代わりにDMSOを使用した以外は実施例2と同様の方法で実施した。結果を表2にまとめて示す。
[実施例4〜6]
参考例1と同条件でPESを合成した後、表2に示した仕込み組成により、DHDPSの添加量、無水炭酸カリウム添加量を変更した以外は実施例2と同様の方法で実施した。一連の結果を表2に示した。
[実施例7、8]
参考例1と同条件でPESを合成した後、塩基性化合物として、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムを使用した以外は、実施例2と同様の方法で実施した。一連の結果を表2に示した。
[実施例9、10]
参考例1と同条件でPESを合成した後、二価フェノール化合物として、DHDPSの代わりにビスフェノール−A、ハイドロキノンを使用した以外は、実施例2と同様の方法で実施した。一連の結果を表2に示した。
[実施例11、12]
参考例1と同条件でPESを合成した後、反応温度を表2記載の条件に変更した以外は、実施例4と同様の条件で実施した。一連の結果を表2に示した。
[比較例1]
DHDPSとDCDPSの仕込み量を変更し、DHDPS(55.06g、0.220mol)をDCDPS(57.43g、0.200mol)と、DHDPSをDCDPSに対し、1.1倍モル過剰に使用した以外は、参考例1と同様に実施した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は68.8g(収率74.1%:収率=(68.8/464.53(PESの分子量)/0.2×100)、ガラス転移温度=155℃、5%重量減量温度は311℃であった。還元粘度は0.05dl/gであった。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=48/52(mol%)、再沈殿中にポリマーの軟化挙動が認められ、アルカリ金属残存量は、890ppmであった。
[比較例2]
DHDPSとDCDPSの仕込み量を変更し、DHDPS(60.07g、0.240mol)、DCDPS(57.43g、0.200mol)と、DHDPSをDCDPSに対し、1.2倍モル過剰に使用した以外は、参考例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
Figure 2010222506
実施例1〜実施例12より、PESを公知の方法で合成した後のPESを含んだ溶媒に、DHDPS、ビスフェノール−A、HQなどの二価フェノール化合物(B)を無水炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの塩基性化合物(D)の存在下、非プロトン性極性溶媒中で反応することにより、二価フェノール化合物の添加量に応じ、ヒドロキシフェニル末端基を導入することができ、また回収率も高く、さらにはアルカリ金属含量の低いポリマーが得られることがわかる。
実施例1〜6の結果から、PES合成後の溶液にDHDPSを添加することで、ヒドロキシフェニル末端組成を増加させることができることがわかった。また水共沸溶媒を用いた実施例2では、共沸溶媒を加えていない実施例1よりも反応が進行していることがわかる。すなわち反応系の水分を留去することにより、本発明の反応速度を高めることができる。また実施例3から反応溶媒としてNMP、DMSOのいずれを用いても、ほぼ同等の結果が得られることがわかる。
実施例4〜6の結果から、PES合成後に添加した二価フェノールの量によって得られるPESの特性が影響されることがわかる。
実施例7、8の結果から、無水炭酸カリウムの代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムを用いると、若干収率の低下や残存金属量の増加などの傾向は認められるものの、いずれの場合においても高ヒドロキシフェニル末端基含有量のPESが得られており、その熱安定性や残存アルカリ金属含量は低く、熱安定性、ポリマー純度に優れるポリマーが得られたことがわかる。
実施例9、10の結果から、二価フェノール化合物としてDHDPSの代わりに、ビスフェノール−AやHQを用いても、同様の結果が得られることが確認された。
実施例11、12からは、反応温度が高いほど反応が進行しやすいことがわかる。
一方、DCDPSとDHDPの仕込みモル比をずらして、直接重縮合した比較例1、2では、仕込みモル比をずらしたことにより、ヒドロキシフェニル末端基が若干増加するものの、その含有量は実施例1〜12に比べ低く、さらにモル比をずらしたことによるポリマー分子量低下は顕著となり、さらに回収工程でのロスが多く、ポリマー収率の顕著な低下が認められた。さらに熱安定性が低下し、ポリマー中不純物であるアルカリ金属残存量が増加していることがわかる。
H−NMRの結果から、原料に用いた参考例1のPESでは確認された、7.7ppm付近に観察されるクロロ基に隣接するプロトン(b)が、反応後の実施例2では観察されず、6.9ppm付近に観察されるヒドロキシル基に隣接するプロトン(a)が増えていることが確認できる。(図1参照)
<水を用いたヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の製造>
[実施例13]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジムロート)を取り付けた200mLの四口フラスコに、参考例1の1/20スケールでPESを合成し、合成後の溶媒を室温まで冷却、さらに水(2.52g、140mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP) 100ml、無水炭酸カリウム(1.50g、10.9mmol)を秤量し、NMP反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間5時間で反応を終了し、反応溶液を0.1%濃度の酸メタノール1000mlに滴下し、析出粉体、500mlの水で2回、500mlのメタノールで1回洗浄し、80℃で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で、収量は11.1g、収率94.3%(収量/合成したPESの100%収率時の重量+仕込み水重量)×100により算出)、ガラス転移温度=200℃、5%重量減量温度は455℃、還元粘度(ηsp/c)は0.21であった。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=0/100(mol%)のPESが得られた。アルカリ金属含量は、110ppmであった。結果を表3に示す。
[実施例14]
溶媒をNMPの代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)にした以外は、実施例13と同様に実施した。得られたポリマー粉は白色粉末状で、収率94.5%、ガラス転移温度=195℃、5%重量減量温度は420℃、還元粘度(ηsp/c)は0.20であった。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=0/100(mol%)のPESが得られた。アルカリ金属含量は、70ppmであった。結果を表3に示す。
[実施例15〜17]
表3に示した仕込み組成により、水の添加量、無水炭酸カリウムの添加量を変更した以外は、実施例13と同様の方法で実施した。結果を表3に示す。
[比較例3]
アルカリ金属を添加しない以外は、実施例13と同様の方法で実施した。結果を表3に示す。
[比較例4]
水を添加しない以外は、実施例13と同様の方法で実施した。結果を表3に示す。
Figure 2010222506
実施例13〜17より、PES合成後の溶液に水と塩基性化合物を添加し、加熱することで、ヒドロキシフェニル末端基を導入することができ、また回収率も高く、さらにはアルカリ金属含量の低いポリマーが得られることがわかる。
また実施例14から、反応溶媒としてNMPの代わりにDMSOを用いても、ほぼ同等の結果が得られることがわかる。
実施例15〜17の結果から、水の添加量に応じ、ヒドロキシフェニル末端基を導入することができることがわかる。
一方、比較例3、4の結果から、水や塩基性化合物を添加しなかった場合は、反応が全く進行していないことがわかる。
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)粒子の製造>
[実施例18]
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジムロート)を取り付けた200mLの四口フラスコで、スケールを1/10にした以外は実施例6と同様の方法でヒドロキシフェニル末端を有するPESを合成し、その後室温まで冷却した後に、ポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学工業株式会社製,ゴーセノール,GL−05,数平均分子量8000)5.00gを加え、90℃の温度下、2時間撹拌した。混合溶液は懸濁液であった。室温まで冷却し、水100gを流速1g/分の速度で添加した。得られたスラリー溶液を濾別し、濾物を1%濃度の酸メタノール100gで洗浄した後水100gで3回洗浄した。その後、温度80℃において真空乾燥させ、PES粒子10.4gを得た。H−NMRではクロロフェニル末端基は確認されず、ヒドロキシフェニル末端基組成が80mol%であった。数平均粒子径は28μm、体積平均粒子径は40μm、粒子径分布は1.43であった。アルカリ金属含量は40ppmであった。結果を表4に示す。
[実施例19]
ヒドロキシフェニル末端を有するPESを実施例15と同様の方法で合成した以外は実施例18と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=1/99(mol%)であった。数平均粒子径は21μm、体積平均粒子径は31μm、粒子径分布は1.48であった。アルカリ金属含量は30ppmであった。結果を表4に示す。
[実施例20]
ヒドロキシフェニル末端を有するPESを実施例5と同様の方法で合成し、PVAを2.50gとした以外は実施例18と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=9/91(mol%)であった。数平均粒子径は32μm、体積平均粒子径は52μm、粒子径分布は1.63であった。アルカリ金属含量は50ppmであった。結果を表4に示す。得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
[実施例21]
ポリビニルアルコール(PVA)を添加しない以外は、実施例18と同様の方法で実施した。得られたPESは粒子状ではなく1mm以上の凝集体であった。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=20/80(mol%)であった。アルカリ金属含量は220ppmであった。結果を表4に示す。
[比較例5]
PES合成後に二価フェノールを添加しない以外は、実施例20と同様の方法で実施した。400MHz H−NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=100/0(mol%)であった。数平均粒子径は42μm、体積平均粒子径は60μm、粒子径分布は1.43であった。アルカリ金属含量は480ppmであった。結果を表4に示す。
Figure 2010222506
実施例18〜20、比較例5より、PESの組成に関わらず、PVAを加えることで粒子が得られることがわかる。実施例21は目的とするPESが得られているが、PVAを加えていないため、粒子化が得られていないことがわかる。
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)と熱可塑性樹脂のアロイ化>
[実施例22〜24、比較例6〜8]
アロイ用熱可塑性樹脂として、下記3種類のポリマーを使用した。
・Tm=255℃、Tmc=178℃、固有粘度1.15(フェノール/テトラクロロエタン=5/5(V/V)、25℃)のポリエチレンテレフタレート樹脂(東レ製T704T)(以下PETと略す)
・Tm=226℃、固有粘度0.85のポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ製1100S)(以下PBTと略す)
・Tm=225℃、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.80のナイロン6樹脂(東レ製CM1010)(以下N6と略す)
表5に示した条件により、実施例1の条件で合成したPESと、参考例4のPESをそれぞれ5gと、前記熱可塑性樹脂45gを東洋精機製小型ブラベンダーを用い、所定温度で15分間配合して溶融混合し、得られた組成物はペレタイズした。
熱可塑性樹脂マトリックス中のPESのモルフォロジー観察は、透過型電子顕微鏡(HITACHI、ELECTRON MICROSCOPE H−700)を用いて、得られた樹脂組成物ペレットの断面についてモルフォロジー観察を行い、写真上に撮影された、分散した個々の球状分散相の最も長い粒子径を測定し、数平均した値を平均粒径とした。
一連の結果を表5に示したが、実施例22〜24と比較例6〜8のアロイ化検討結果から、本発明の方法により得られるヒドロキシフェニル末端基を有するPESは、PET、PBTなどのポリエステルやナイロンなどの熱可塑性樹脂とのアロイ化に好適であることがわかった。
Figure 2010222506
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)と熱硬化性樹脂のアロイ化>
[実施例25〜27、比較例9]
エポキシ樹脂としてテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(Epikote 604)(ジャパンエポキシレジン社製)と表6に示したPESを、試験管中で130℃に加熱し、3時間以上かけて混合させ均一にした。ついで得られた混合物を80℃まで冷却し、硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(以下DDSと略す)を表6に示す割合で添加し、脱泡混練機(株式会社シンキー製:あわとり練太郎ARV−310)を用いて2000rpmで3分混練した後、2000rpmで5分、0.6KPaで減圧・脱泡しながら均一によく混合してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を加熱炉中、180℃で2時間反応、硬化させ、エポキシ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂中に微分散されているPESの平均粒径測定は、実施例22と同じ方法により測定した。結果を表6に示した。
Figure 2010222506
実施例25〜27で得られたヒドロキシフェニル末端基を有するPESを用いたエポキシ樹脂硬化物は、ヒドロキシフェニル末端基を含まないPESを用いた比較例9の場合に比較して、エポキシ樹脂中にPESがより微分散していることがわかる。また、そのヒドロキシフェニル末端基が多く、分子量が低い程微分散していることがわかる。
得られたエポキシ樹脂組成物の断面を透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果を図3(実施例25)、図4(実施例26)、図5(実施例27)、図6(比較例9)、に示した。
ヒドロキシフェニル末端を有さないPESを混練した比較例9では分散せず、相分離している様子が観察されるのに対し、実施例27では平均粒径35nmでPESが微分散しており、実施例25では10nm以下で微分散していることがわかる。
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E)粒子と熱硬化性樹脂のアロイ>
[実施例28]
攪拌機付き試験管に、エポキシ樹脂としてテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(Epikote 604)(ジャパンエポキシレジン株式会社製)100gと実施例18で合成したPES粒子40gを加え、140℃に加熱し撹拌した。撹拌時間1時間と3時間時のエポキシ樹脂組成物中のPES粒径を透過型電子顕微鏡にて測定した。結果を表7に示す。
[比較例10]
参考例5のPES粉体を用いた以外は、実施例28と同様の方法で実施した。結果を表7に示す。
Figure 2010222506
ヒドロキシフェニル末端基を有する実施例28では、PES粒子がエポキシ中で0.1μm以下に溶解することが分かり、混練時間の短縮等、生産性向上効果があることが分かる。
一方、ヒドロキシフェニル末端基を有さないPESを用いる比較例10では、エポキシへの溶解速度が非常に遅いことが分かる。
以上の結果から、PESのヒドロキシフェニル末端基量が多いほど、アロイ時の分散性が向上し、混練時に均一に混練することでさらに分散性が向上することがわかる。また、粒子化することで、アロイ時にさらに均一に微分散する傾向が見られ、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のアロイ化剤として好適である。

Claims (9)

  1. 一般式(I)で表されるジハロゲノフェニル化合物ならびに一般式(II−1)および/または(II−2)で表される二価フェノール化合物および塩基性化合物、あるいはあらかじめ調製した一般式(II−1)および/または(II−2)で表される二価フェノール化合物および塩基性化合物を、非プロトン性極性溶媒中で加熱し、一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を有する芳香族ポリエーテルスルホン(A)を含む溶液を得、さらに、得られた芳香族ポリエーテルスルホン(A)を含む溶液に、一般式(b−1)および/または(b−2)で表される二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を加えて加熱することを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
    Figure 2010222506
    Figure 2010222506
    Figure 2010222506
    (式中のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、およびCHから選ばれるいずれかを表す)
  2. 塩基性化合物(D)が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムおよび無水炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
  3. 非プロトン性極性溶媒が、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドおよびスルホランから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
  4. 芳香族ポリエーテルスルホン(A)の合成時における加熱温度が100〜350℃であり、かつヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の合成時における加熱温度が100〜200℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
  5. 芳香族ポリエーテルスルホン(A)を含む溶液に、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を加えて加熱して得られたヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)と酸を接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の溶液と、界面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液を得、さらに、得られた均一溶液または懸濁液に、非プロトン性極性溶媒とは異なる第2の溶媒を加えて芳香族ポリエーテルスルホン粒子を析出させることを特徴とする、ヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法。
  7. 界面活性剤が、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項6に記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法。
  8. 界面活性剤の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)の合成時に用いたジハロゲノフェニル化合物と二価フェノール化合物の総量100質量部に対し、1〜200質量部であることを特徴とする請求項6または7のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法。
  9. 第2の溶媒が、水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)粒子の製造方法。
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