JP2010221131A - 酸廃液の中和処理方法及び浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】費用及び環境負荷を低減した酸廃液の処理を行える酸廃液の中和処理方法を提供することである。
【解決手段】水素よりイオン化傾向が大きい金属または金属合金の陽極電極と炭素の陰極電極とを酸廃液中に挿入して配置し、陽極電極と陰極電極との間に電圧を印加し、金属または金属合金の金属と水酸イオンとを反応させて金属水酸化物を生成し、金属水酸化物の水酸イオンと酸廃液中の水素イオンとを反応させて金属イオンと水とを生成し、酸廃液中の金属イオン及び陽イオンを陰極電極に吸引させ、酸廃液を中和する。
【選択図】 図1
【解決手段】水素よりイオン化傾向が大きい金属または金属合金の陽極電極と炭素の陰極電極とを酸廃液中に挿入して配置し、陽極電極と陰極電極との間に電圧を印加し、金属または金属合金の金属と水酸イオンとを反応させて金属水酸化物を生成し、金属水酸化物の水酸イオンと酸廃液中の水素イオンとを反応させて金属イオンと水とを生成し、酸廃液中の金属イオン及び陽イオンを陰極電極に吸引させ、酸廃液を中和する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば、管内面に付着したスケールを化学洗浄する際に発生する酸廃液の中和処理方法及び浄化方法に関する。
火力発電プラントや石油・化学プラントなどの設備では、ボイラや熱交換器を有しており、運転中にはそのボイラ・熱交換器用細管に高温の流体が流れる。その際に、流体に含まれる金属類やシリカ等がボイラ・熱交換器の管内面に付着し、スケール(金属類・シリカ等)が生成される。
そこで、熱効率の低下や管の過熱損傷を起こさないようにするために、定期的に化学洗浄(酸洗浄)を行いスケールを除去するようにしている。化学洗浄は薬品を使用してのスケール溶解処理であり、通常は洗浄液として塩酸が用いられ、また、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムを用いるようにしたものもある(例えば、特許文献1参照)。
図6は、従来の火力発電プラントのボイラ洗浄の一例の説明図である。図6では、火力発電プラントのボイラ洗浄を洗浄液を用いて行う場合を示している。通常、火力発電プラントの運転中においては、復水器11からボイラ給水配管12を通ってボイラ13に水が供給され、ボイラ13に供給された水は、ボイラ・熱交換器用細管14で熱交換されて蒸気となり、主蒸気管15を通って蒸気タービン16に送られる。そして、蒸気タービン16で発電機17を駆動し、蒸気タービン16で仕事を終えた蒸気は復水器11で水に戻される。
このような火力発電プラント内におけるボイラ・熱交換器用細管14内においては、配管系統に配置された機器の構成材料から水に溶出した金属や金属酸化物が水に溶出して付着しスケール化する。その付着量によっては局部過熱や伝熱障害が生じるので、このスケール除去のために塩酸等の洗浄液で酸洗浄を行う。
すなわち、火力発電プラントの定期検査の際に、ボイラ給水配管12及び主蒸気管15の途中を開放して、一方にボイラ・熱交換器用細管14に洗浄液を注入する洗浄液注入装置18を接続し、他方に洗浄後の酸廃液を蓄積する仮設廃液槽19を接続する。そして、洗浄液注入装置18から洗浄液を注入して、ボイラ・熱交換器用細管14を洗浄し、洗浄後の酸廃液を仮設廃液槽19に蓄積する。
図7はボイラ洗浄前後におけるボイラ・熱交換器用細管内の状態の説明図であり、図7(a)は洗浄前の運転状態のときのボイラ・熱交換器用細管14内の状態を示す説明図、図7(b)は洗浄後のボイラ・熱交換器用細管14内の状態を示す説明図である。図7(a)に示すように、洗浄前の運転状態のときはボイラ・熱交換器用細管14内には水や蒸気が通過しており、ボイラ・熱交換器用細管14の内面にはスケール20が付着している。一方、火力発電プラントの定期検査の際には、ボイラ・熱交換器用細管14に洗浄液を注入してスケール20を溶かして、スケール20を除去するので、図7(b)に示すように、ボイラ・熱交換器用細管14の内面からスケール20が除去される。除去されたスケール20は洗浄液に溶け込んでいることになる。
洗浄液として塩酸を使用した場合には、洗浄を行った後の酸廃液は強酸(pH2〜4)かつ大量に発生するため、取扱いにおいては安全性を考慮する必要がある。現状では、より取扱いを容易にするため酸廃液をアルカリ性の薬剤にて中和した後に廃液処理を行っている。中和した酸廃液の廃液処理は、処理水と汚泥や濃縮水とに分離され、処理水は排水基準をクリアした水質まで処理をした後に放流し、汚泥や濃縮水は産業廃棄物として処理をしている。
しかし、化学洗浄(酸洗浄)後の酸廃液は強酸(pH2〜4)であるため、pH調整剤としてアルカリ性の薬剤、例えば苛性ソーダにてpH6〜7の中性になるように調整を行っている。このように、アルカリ性の薬剤を用いて酸廃液の中和処理を行っているので、環境負荷が大きいものとなっている。すなわち、酸廃液の処理においては、酸洗浄による溶解物質や浮遊物の凝集沈殿による汚泥化と水の浄化を行わなければならず、pH調整剤として使用するアルカリ性の薬剤も取扱いや管理する上で危険性を伴う場合があるので、より安全な酸廃液の処理が望まれている。
このように、従来のpH調整剤(例えば、苛性ソーダ等の薬品)による酸廃液の中和処理方法では、大量の薬品を投入使用するため、酸廃液の処理後に発生する汚泥量が増加すると共に処理費用や環境に対する負荷も大きなものとなっている。
本発明の目的は、費用及び環境負荷を低減した酸廃液の処理を行える酸廃液の中和処理方法及び浄化方法を提供することである。
請求項1の発明に係わる酸廃液の中和処理方法は、水素よりイオン化傾向が大きい金属または金属合金の陽極電極と炭素の陰極電極とを酸廃液中に挿入して配置し、前記陽極電極と前記陰極電極との間に電圧を印加し、前記金属または金属合金の金属と水酸イオンとを反応させて金属水酸化物を生成し、前記金属水酸化物の水酸イオンと前記酸廃液中の水素イオンとを反応させて金属イオンと水とを生成し、前記酸廃液中の前記金属イオン及び陽イオンを前記陰極電極に吸引させ、前記酸廃液を中和することを特徴とする。
請求項2の発明に係わる酸廃液の中和処理方法は、請求項1の発明において、前記陽極電極はマグネシウムまたはマグネシウム合金であり、前記陰極電極は多孔質の炭素であることを特徴とする。
請求項3の発明に係わる酸廃液の中和処理方法は、請求項1または請求項2の発明において、前記酸廃液の温度が所定値を超えないように、前記陽極電極と前記陰極電極との間に電圧を印加することを特徴とする。
請求項4の発明に係わる酸廃液の浄化方法は、請求項1乃至3のいずれか1項の酸廃液の中和処理方法により中和された中和処理水を逆浸透膜を通して透過処理し浄化することを特徴とする。
本発明によれば、陽極電極である水素よりイオン化傾向が大きい金属または金属合金の金属と水酸イオンとを反応させて金属水酸化物を生成し、その金属水酸化物の水酸イオンと酸廃液中の水素イオンとを反応させて金属イオンと水とを生成し、酸廃液中の金属イオン及び陽イオンを陰極電極に吸引させて酸廃液を中和するので、酸廃液の中和に薬剤を使用せずに、酸廃液の中和処理を行うことができ、併せて酸廃液中の金属イオン及び陽イオンの低減も図れる。従って、費用及び環境負荷を低減できる。
また、陽極電極としてマグネシウムまたはマグネシウム合金を使用し、陰極電極として多孔質の炭素を使用するので、陽極電極の取り扱いが安全であり、陰極電極に吸引された酸廃液中の金属イオン及び陽イオンを容易に除去できる。さらには、酸廃液の温度が所定値を超えないように、陽極電極と陰極電極との間に印加する電圧を調整するので、酸廃液の温度が高温となることを防止でき安全性が確保できる。
また、酸廃液中の金属イオン及び陽イオンを陰極電極に吸引させて酸廃液を中和した中和処理水を逆浸透膜を通して透過処理して浄化するので、中和処理水の浄化処理が軽減できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる酸廃液の中和処理方法を示すフローチャートである。
図1において、まず、酸廃液中に陽極電極と陰極電極とを配置する(S1)。陽極電極は、水素よりイオン化傾向が大きい金属または金属合金を用いる。例えば、周期表1族元素(アルカリ金属)または周期表2族元素(アルカリ土類金属)を用いる。これは、酸廃液の水素イオン指数pHに影響を与える水酸イオン(OH−)と反応して金属水酸化物を生成する金属とするためである。本発明の実施の形態では、陽極電極の取り扱いの安全性を考慮して、マグネシウムまたはマグネシウム合金を使用する。以下の説明ではマグネシウムMgを用いた場合で説明する。また、陰極電極としては、多孔質の炭素を使用する。これは、後述するように、酸廃液中の金属イオン及び陽イオンを容易に吸着できるようにするためである。
次に、陽極電極と陰極電極との間に直流電圧を印加する(S2)。これは、陽極電極であるマグネシウムMgと酸廃液の水H2Oとの反応を促進し、水酸化マグネシウムMg(OH)2の生成を促進するためである。これにより、金属化合物である水酸化マグネシウムMg(OH)2を生成する(S3)。
図2は、廃液槽21の酸廃液中に陽極電極22と陰極電極23とを配置して直流電源24から直流電圧を印加した際の化学反応(1)の説明図である。図2に示すように、酸廃液中には酸の陽イオンである水素イオンH+と水H2Oとが含まれる。また、スケールに含まれる各種の陽イオンが含まれる。図2では、陽イオンとしての鉄イオンFe+が含まれたものを示している。酸廃液中には水素イオンH+と水H2Oとが含まれることから、陽極電極22と陰極電極23とに直流電圧を印加することにより、下記に示す化学反応(1)が促進される。すなわち、陽極電極であるマグネシウムMgと酸廃液中の水H2Oとの反応が促進され、水酸化マグネシウムMg(OH)2と水素H2とが生成される。
Mg+2H2O→Mg(OH)2 +H2 …(1)
次に、この化学反応(1)で生成された水酸化マグネシウムMg(OH)2と酸廃液中の水素イオンH+とを反応させる(S4)。図3は、廃液槽21の酸廃液中で生成された水酸化マグネシウムMg(OH)2と酸廃液中の水素イオンH+とが反応する化学反応(2)の説明図である。図3に示すように、酸廃液中で生成された水酸化マグネシウムMg(OH)2が酸の陽イオンである水素イオンH+と水酸化マグネシウムMg(OH)2の陰イオンである水酸イオン(OH)−と反応してマグネシウムMgと水H2Oとに変化する。この化学反応(2)を下記に示す。
次に、この化学反応(1)で生成された水酸化マグネシウムMg(OH)2と酸廃液中の水素イオンH+とを反応させる(S4)。図3は、廃液槽21の酸廃液中で生成された水酸化マグネシウムMg(OH)2と酸廃液中の水素イオンH+とが反応する化学反応(2)の説明図である。図3に示すように、酸廃液中で生成された水酸化マグネシウムMg(OH)2が酸の陽イオンである水素イオンH+と水酸化マグネシウムMg(OH)2の陰イオンである水酸イオン(OH)−と反応してマグネシウムMgと水H2Oとに変化する。この化学反応(2)を下記に示す。
Mg(OH)2 +2H→Mg+2H2O …(2)
そして、この化学反応(2)で得られた陽極電極22の金属のマグネシウムイオンMg+や最初から酸廃液中に含まれていた陽イオン(例えば鉄イオンFe+)を陰極電極23に吸引する(S5)。これにより、酸廃液中の酸の陽イオンである水素イオンH+を除去するとともに、化学反応(2)で得られた陽極電極22の金属イオンや陽イオンを陰極電極23に吸引して除去する。
そして、この化学反応(2)で得られた陽極電極22の金属のマグネシウムイオンMg+や最初から酸廃液中に含まれていた陽イオン(例えば鉄イオンFe+)を陰極電極23に吸引する(S5)。これにより、酸廃液中の酸の陽イオンである水素イオンH+を除去するとともに、化学反応(2)で得られた陽極電極22の金属イオンや陽イオンを陰極電極23に吸引して除去する。
図4は化学反応(1)、(2)が連続的に行われた結果の廃液槽21の状態の説明図である。化学反応(1)、(2)が連続的に行われることによって、酸の陽イオンである水素イオンを水酸化イオンと反応させることにより水に変化させ、酸廃液中の水素イオンを除去でき、酸廃液は中和される。それとともに、陽極電極22の金属イオン(マグネシウムイオンMg+)や陽イオン(例えば、鉄イオンFe+)は陰極電極23に吸引して除去する。陰極電極23は多孔質で形成されているので、金属イオンや陽イオンの吸着が容易に行える。従って、吸着した後の陰極電極23の廃棄処分も容易に行える。また、陰極を炭で形成した場合には、そのまま廃棄処分できる。
ここで、上述の化学反応(1)においては水素が発生するとともに反応熱も発生する。この反応熱により、廃液槽21が高温になると危険であるので、廃液槽21の酸廃液の温度が所定値を超えないように酸廃液の温度を調整する。すなわち、陽極電極22と陰極電極23との間に印加する直流電圧を調整して酸廃液の温度が所定値を超えないように制御する。水素の引火を防止するとともに作業員の火傷を防止できる程度の温度とする。これにより、作業の安全性を確保する。
次に、図5は本発明の実施の形態に係わる酸廃液の浄化方法を示すフローチャートである。この酸廃液の浄化方法は、図1に示した酸廃液の中和処理方法に対し、ステップS6を追加して、図1に示した酸廃液の中和処理方法で得られた中和処理水を浄化するようにしたものである。図1とステップには同一符号を付し重複した説明は省略する。
図5に示すように、ステップS1〜S5にて酸廃液の中和処理した中和処理水を逆浸透膜を通して浄化する(S6)。すなわち、ステップS1〜S5にて酸廃液の中和処理した中和処理水を浄化設備に導き、浄化設備の逆浸透膜(RO)フィルターを通して透過水と濃縮水とを得る。透過水は、さらに逆浸透膜フィルターを通して、排水基準をクリアした水質まで浄化する。一方、濃縮水は高濃度廃液として産廃処理することになる。
このように、本発明の実施の形態では、陽極電極としてマグネシウムMgを採用し、金属イオン溶出効果により中和処理を行うので、酸廃液の中和に薬剤(例えば、苛性ソーダ)を使用せずに、酸廃液の中和処理を行うことができる。中和処理を行う材料が金属材料(マグネシウムMg)であるので、従来の苛性ソーダに比較して取り扱いも非常に安全であり、管理の仕方も極めて簡単になる。
酸廃液中に溶け込んだスケール(金属類・シリカ等)は陽イオン物質であるために陰極電極の方向に吸い寄せられ析出できる。従って、酸廃液中に溶け込んだスケールの陽イオンの捕集と、酸廃液の中和処理とが同時並行的に進められるので作業が簡略化でき、また、陰極電極にスケールの陽イオンが捕集されるため、逆浸透膜フィルターを使用しての浄化処理では、中は処理水の浄化水処理も低減でき、逆浸透膜フィルターの寿命を延ばすことができる。
11…復水器、12…ボイラ給水配管、13…ボイラ、14…ボイラ・熱交換器用細管、15…主蒸気管、16…蒸気タービン、17…発電機、18…洗浄液注入装置、19…仮設廃液槽、20…スケール、21…廃液槽、22…陽極電極、23…陰極電極、24…直流電源
Claims (4)
- 水素よりイオン化傾向が大きい金属または金属合金の陽極電極と炭素の陰極電極とを酸廃液中に挿入して配置し、前記陽極電極と前記陰極電極との間に電圧を印加し、前記金属または金属合金の金属と水酸イオンとを反応させて金属水酸化物を生成し、前記金属水酸化物の水酸イオンと前記酸廃液中の水素イオンとを反応させて金属イオンと水とを生成し、前記酸廃液中の前記金属イオン及び陽イオンを前記陰極電極に吸引させ、前記酸廃液を中和することを特徴とする酸廃液の中和処理方法。
- 前記陽極電極はマグネシウムまたはマグネシウム合金であり、前記陰極電極は多孔質の炭素であることを特徴とする請求項1記載の酸廃液の中和処理方法。
- 前記酸廃液の温度が所定値を超えないように、前記陽極電極と前記陰極電極との間に電圧を印加することを特徴とする請求項1または2記載の酸廃液の中和処理方法。
- 請求項1乃至3のいずれか1項の酸廃液の中和処理方法により中和された中和処理水を逆浸透膜を通して透過処理し浄化することを特徴とする酸廃液の浄化方法。
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