JP2010220403A - 板状冷却管 - Google Patents

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Abstract

【課題】内部に冷媒を流通させても、冷媒の圧力によって変形や漏洩の発生が無い、軽量な冷却管を提供すること。
【解決手段】ピッチ系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックを、板状冷却管の外表面に配し、内側にポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックを組み合わせて、冷媒流通路を形成する管体を備えた板状冷却管である。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄型の板状冷却管に関し、特に工作機械あるいは半導体製造装置等の精密送りの用途に利用されるリニアモータの冷却装置に好適に使用される板状冷却管に関する。
たとえば、半導体露光装置や高精度加工機などで使用される精密位置決め装置では、駆動源としてリニアモータが使用されている。特に、半導体の製造装置や検査装置においては高精度化、高効率化が要求されており、これに伴って、前記装置に搭載されるステージ装置の駆動に用いられるリニアモータにおいては高制御性、高精度、高加速度、高速度、長ストローク等の性能が必要とされてきている。
ここで、高加速度を必要とする場合には、可動部の質量を小さくするとともに、リニアモータの推力を大きくすることが重要となってくる。
また、リニアモータの推力を大きくする方法としては、通常、コイル体の巻数を増やすことでリニアモータの推力を大きくすることが多い。リニアモータは、原理的にコイルに電流を流して生じる電磁力によって直線方向の推力を発生させるので、必要な推力が大きくなるにしたがってコイルに流す電流は多くなり、コイルに流れる電流が多くなるとコイルの発熱量が多くなる。リニアモータからの発熱は、構造部材の熱変形や計測手段の誤差をもたらし、位置決め精度を悪化させる場合がある。このため、リニアモータから発生する熱を効率良く除去して周囲の空間及び部材の温度上昇を抑制することが重要となっている。
このため冷却管が使用されているが、冷却管として金属を用いる場合は、特性や加工性の観点からステンレスが使用されることが多い。ところが、ステンレスは、比重が大きく、冷却管の重量化を招くという不都合があった。そこで、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPと記す)を使用した冷却管が提案されている(特許文献1)。
また、前記したように、精密位置決め装置等では高性能化に伴って、リニアモータの高出力化が要求されており、そのためにコイルに流れる電流を増加させる必要がある。その結果、発熱量も大きく増大するため、冷却能力のさらなる増強が必要となっている。そこで、コイル体を有するリニアモータにおいて、コイル体の全体を温調する第1温調装置と、コイル体のうちの局所部分との間で熱交換を行う第2温調装置とを有する、二段階で冷却するシステムのリニアモータが提案されている(特許文献2)。
しかしながら、特許文献1では金型を使用して冷却管を作製しているため、コスト増となってしまう。このためCFRPからなる積層体を機械加工により凹み形状に加工したものを2枚貼り合せて冷却管を得ていた。特許文献2では、CFRPからなる板状冷却管が用いられているが、異種の炭素繊維を用いたFRPの異なる特性に着目してそれらを組み合わせたCFRPを使用することは開示されていない。
特開2003−199318 特開2004−357426
ところで、板状冷却管の内部に冷却液を導入すると、板状冷却管内部には冷媒の圧力がかかるため、冷却管が外側に膨張する力が加わる。このため、前記先行技術文献にあるように炭素繊維で補強したCFRPが採用されてきているが、使用する炭素繊維の種類によっては耐圧強度や耐漏洩性が充分ではないことがある。
特に、耐圧強度が重要視される用途には弾性率の高いピッチ系の繊維が使用されているが、ピッチ系の繊維の断面構造は繊維方向に対してポーラスな構造を持っているため、繊維断面が冷媒中に露出すると、僅かではあるが漏洩が発生する危険性があることから、耐漏洩性に問題があることが判明した。
本発明は上記課題に鑑み、なされたものであり、軽量で、内部に冷媒を流通させても、冷媒の圧力によって変形や漏洩の発生が無い板状冷却管を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、板状冷却管において、その外側には弾性率の高いピッチ系炭素繊維で補強されたCFRPを配し、内側には耐漏洩性に問題がなく、強度の高い、中間層となるポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強されたCFRPを配して、構成することで、耐漏洩性に優れ、変形しにくく、軽量の板状の冷却管を製造することができることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、以下
(1)内部に管状の冷媒流通路を有する、発熱体を冷却するための薄板状部材からなる板状冷却管であって、前記薄板状部材がポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートからなる中間層とその両面に積層されてなるピッチ系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートからなる表裏層とを有し、かつ前記中間層に管状の冷媒流通路を設けてなるものであることを特徴とする板状冷却管、
(2)ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートの周縁部以外の部分に連続して凹状へこみが形成されてなる上記(1)に記載の板状冷却管、
(3)ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートの周縁部以外の部分が連続して打ち抜かれてなる上記(1)に記載の板状冷却管、
(4)前記ピッチ系炭素繊維の引張り弾性率が400〜1000GPaである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の板状冷却管、
(5)前記ピッチ系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートと、前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートとを接着シートで貼り合せてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の板状冷却管、
(6)前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシート同士が接着シートで貼り合されてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の板状冷却管および
(7)リニアモータの冷却装置用である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の板状冷却管を提供する。
本発明により、軽量で、内部に冷媒を導入しても冷媒の圧力によって変形や漏洩が発生するおそれの無い板状冷却管を得ることが可能となる。
板状冷却管の構造の一例を示す図である。 板状冷却管の製造(薄板状部材等の積層)手順の一例を示す図である。 板状冷却管の構造の別の一例を示す図である。 板状冷却管の製造(薄板状部材等の積層)手順の別の例を示す図である。
リニアモータ等の発熱部を冷却するために好適な本発明の板状冷却管は前記発熱部に接触させて用いられるものである。
本発明の板状冷却管は、ピッチ系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチック(以下、Pitch−CFRPと記載する)シートとポリアクリロニトリル(以下、PANと記載する)系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチック(以下、Pan−CFRPと記載する)シートが積層されてなり、内側に温度調整用冷媒流通路となる管状の隙間を有し、前記Pitch−CFRPシートが前記Pan−CFRPシートの外側(両表面)に積層され、冷媒はPitch−CFRPシートに接触しない構造を有している。
また、前記Pitch−CFRPシートと前記Pan−CFRPシート、またはPan−CFRPシート同士を接着シートで貼り合せてなることが好ましい。
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明の板状冷却管の構造の一例を示す図であり、「a」はPitch−CFRPシートと打ち抜き加工した中間層となるPan−CFRPシートを積層した積層板の平面図、「b」は同積層板の側面図、「c」は同積層板右側端部の断面図、「d」はPan−CFRPシートを内側に対向させて「b」を2枚積層して得られる板状冷却管の側面図である。
図1において、「1」はPitch−CFRPシート、「2」はPan−CFRPシート(2には、点線で示す凹状へこみまたは打ち抜き部が形成されており、「2」が内側に配置されるように対向させて2枚の「b」を積層することにより管状の冷媒流通路が形成される)、「3」は接着シート、「4」は「2」が内側に配置されるように対向させて2枚の「b」を貼り合わせることにより形成される冷媒の入り口または出口となる通路を示す。
Pitch−CFRPシートの厚さは、たとえば、板状冷却管の平面方向のサイズが幅5cm×長さ50cm程度の場合、0.5〜10mm程度、好ましくは1〜5mmであり、Pan−CFRPの厚さは通常、1〜30mm程度、好ましくは1〜10mmである。Pitch−CFRPの厚さを0.5mm以上とすることにより、強度を確保し、10mm以下とすることにより、板状冷却管全体をコンパクトな厚さにするとともに熱伝導性を確保する。Pan−CFRPの厚さを1mm以上とすることにより、適度な深さの凹状へこみに切削するか打ち抜くことにより冷媒流通量が確保され、30mm以下とすることにより、板状冷却管全体をコンパクトな厚さに保つことができる。
Pitch−CFRPシートおよびPan−CFRPシートの平面方向のサイズは幅10〜100mm程度、長さ300〜3000mm程度であり、板状冷却管として使用されるリニアモータ等の発熱部のサイズに合わせて決められる。
図2は板状冷却管の製造(薄板状部材等の積層)手順を示す図である。
本発明の板状冷却管は、熱硬化性樹脂を含浸させたPAN系炭素繊維で補強された中間層となるPan−CFRPシートと、熱硬化性樹脂をピッチ系炭素繊維に含浸させたPitch−CFRPシートとを重ね合わせ、下記のような手順で加工・組み立てることにより得られる。
すなわち、図2(1)に示すようにPan−CFRPシートとPitch−CFRPとシートを一体に成形した複合積層体を2枚準備し、それぞれを図2(2)に示すように切削加工等によりPan−CFRPシート側に凹状のへこみを形成させる。次いで、接着シートを介して凹状のへこみを形成させた面が内側になるように対向させて2枚の複合積層体の周縁部同士を接着シート〔図2の3〕等を用いて貼り合せることにより内部に管状の冷媒流通路が形成され、かつ、Pitch−CFRPシートに冷媒が接触しない構造を有する本発明の板状冷却管が得られる。
また、図3の「e」に示すように、薄板状のPan−CFRPシートの内側を打ち抜いたものを用いる場合はその両側に打ち抜いていない薄板状のPan−CFRPシートを積層し、さらにその両側に薄板状のPitch−CFRPシートを積層することによっても内部に管状の冷媒流通路が形成され、Pitch−CFRPシートに冷媒が接触しない構造の本発明の板状冷却管が得られる。冷媒をPitch−CFRPシートに接触させずに漏洩を防止するためには、冷媒流通路を形成する両側のPan−CFRPシート部分の厚さは、たとえば、板状冷却管の平面サイズが幅5cm×長さ50cm程度の場合、少なくとも0.1mm程度であることが好ましい。
本発明で使用されるPAN系炭素繊維は、東邦テナックスのベスファイトHTAシリーズや三菱レイヨンのパイロフィルが好適に使用できる。本製品の内周側に使用する炭素繊維は、引張り強度が3〜6GPaのものが好適に使用される。
また、本発明で使用されるピッチ系炭素繊維は、引張り弾性率400〜1000GPaのものが好適に使用される。
さらに、これら高弾性を特徴とするピッチ系炭素繊維は、日本グラファイトファイバーのGRANOCヤーンのYSH−Aシリーズ、YS−Aシリーズ、XNシリーズや三菱化学産資のダイアリードから選択したものが好適に使用できる。
これら炭素繊維は、織布でも一方向引き揃えでも使用できる。織布の場合は平織り、綾織、朱子織りなどが使用でき、特に限定されるものではない。
ここで用いる炭素繊維は、表面にシランカップリング剤によりサイジング処理を行い、耐薬品性を維持するようにすることが好ましく、このサイジング処理を行うサイジング剤としては、アルカリ成分との反応性が低く、マトリックス樹脂に対するぬれ性が良い薬剤が挙げられ、具体的には、メタクリルシランやウレイドシラン等のシランカップリング剤又はそれらの混合品であることが好ましい。
本発明におけるPitch−CFRPおよびPan−CFRPに用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、なかでも強度、成形性の観点からエポキシ樹脂が好ましく使用でき、質量平均分子量が700〜2000のエポキシ樹脂が特に好ましい。
熱硬化性樹脂として、例えばエポキシ樹脂を用いた場合、より具体的には、その樹脂組成物の成分構成は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂用硬化剤と、(C)硬化促進剤であることが好ましい。
エポキシ樹脂(A)としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂が好適である。これには、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。また、このエポキシ樹脂には、グリシジルエーテル系の変性エポキシ樹脂も含む。変性エポキシ樹脂として例えば、ビスマレイミドトリアミン(BT)樹脂などを使用することができる。
このエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂用硬化剤(B)としては、ジシアンジアミド(DICY)とその誘導体、芳香族ジアミン等のアミン系硬化剤、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、アミノ変性ノボラック型フェノール樹脂、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸等の酸無水物硬化剤等ポリビニルフェノール樹脂、有機酸ヒドラジッド、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、メラミンとその誘導体、アミンイミド、ポリアミン塩、モレキュラーシーブ、アミン、酸無水物、ポリアミド、イミダゾール等を用いることができる。
また、このとき硬化促進剤(C)を任意で配合することができ、この硬化促進剤(C)としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、芳香族アミン、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等を用いることができる。
エポキシ樹脂組成物の場合の配合割合は、(A)エポキシ樹脂が通常60〜96質量%程度、(B)硬化剤が通常0.5〜35質量%程度、(C)硬化促進剤が通常0〜5質量%程度である〔(A)、(B)および(C)の全量は100質量%〕。
これらの配合成分の他にも、本発明の効果を阻害しない範囲で、適宜必要な添加剤を配合することができる。
そして、前記エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂に上記硬化剤等を配合して溶媒に溶解し、固形分30〜80質量%程度、好ましくは50〜70質量%のワニスを調製してPAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維に含浸させた後、乾燥による半硬化を行なうことにより、Pan−CFRPシート用のプリプレグおよびPitch−CFRPシート用のプリプレグを作製することができる。溶媒としては、メチルエチルケトン/セロソルブ、メチルエチルケトン/トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。
また、Pan−CFRPシート用のプリプレグおよびPitch−CFRPシート用のプリプレグともに樹脂成分の質量比率が40質量%以下であることが好ましく、35〜25質量%であることが特に好ましい。樹脂成分の質量比率があまりに低いと、積層した後に表面平滑性が低下するおそれがあり、樹脂成分の質量比率が高すぎると強度が低下するので好ましくない。ここで用いられるPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維ともに織布または不織布として使用できるが、一方向に引き揃えた繊維束を使用しても良い。
本発明の板状冷却管における薄板状部材となる複合積層体〔例えば、図2(1)〕は、切削により形成された凹状のへこみの深さに合わせて、Pan−CFRPシート用のプリプレグと、Pitch−CFRPのシート用のプリプレグの構成(例えば、厚さや枚数)が決定される。すなわち、凹状のへこみの深さ以上の厚さに相当するPan−CFRPシート用のプリプレグ複数枚と、板状冷却管の外側厚さに相当するPitch−CFRPシート用のプリプレグ複数枚を組み合わせて、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で加熱加圧成形する。加熱加圧成形は通常、温度170〜200℃、圧力5〜50MPaで、60〜150分程度で行われる。
次いで、公知の切削加工により凹状のへこみが形成された、所定形状〔図2(2)〕に加工して得られた上下部材の凹状のへこみが形成された側が内側に配置されるように対向させて接着シート〔図2の3〕を介して2枚貼り合せることによって本発明の板状冷却管が得られる〔図2(4)〕。
ここで使用される接着シートは、エラストマーとしての特性を有する熱硬化性樹脂組成物からなるものが好ましく、特に(a)少なくとも一種のエポキシ樹脂、(b)エポキシ樹脂用硬化剤、(c)エポキシ樹脂用硬化促進剤、(d)エラストマーを含み、前記(d)エラストマーの含有量は熱硬化性樹脂組成物全量中10〜80質量%であるような組成を有することが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。上記要件を満足しない場合は、接着強度不足によって耐漏洩性に劣る場合がある。前記成分(a)〜(c)の配合割合は前記(A)〜(C)の配合割合と同じでよい。
前記エポキシ樹脂(a)としては、前記エポキシ樹脂(A)と同じものを使用することができる。また、前記エポキシ樹脂用硬化剤(b)としては、前記エポキシ樹脂用硬化剤(B)と同じものを使用することができる。さらに、エポキシ樹脂用硬化促進剤(c)も前記エポキシ樹脂用硬化促進剤(C)と同じものを使用することができる。
前記エラストマー(d)としては、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルゴム、ブタジエンゴム、カルボキシル含有アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル含有アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリビニルブチラール等のハロゲンを含まないゴムのうち少なくとも1種を用いることができる。また、必要に応じて無機充填剤を配合することができる。
前記無機充填剤としては、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
上記接着シートは、上述したような材料組成の原材料物質をプロピレングリコールモノメチルエーテル等の好適な有機溶剤に溶解して、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥するという通常の方法によりフィルム状接着シートとして得ることができる。なお、上記接着シートは、接着の信頼性の観点より、0.010〜0.2mmの厚さで使用することが好ましく、0.025〜0.05mmの厚さで使用することがより好ましい。
所定の形状に打抜いた上記接着シートを、板状冷却管用の各部材の接着面に位置合わせして貼り付け、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で加熱下、加圧成形する。加熱下の加圧成形は通常、温度100〜220℃、好ましくは150〜170℃、圧力1〜10MPa、好ましくは2〜5MPaで、60〜150分程度、好ましくは60〜90分程度で行われる〔図2(3)および(4)参照〕。
図3は、本発明の他の構成の一例を示す図であり、図4はその製造(薄板状部材等の積層)手順の一例を示す図である。
本発明の板状冷却管は、熱硬化性樹脂を含浸した前記Pan−CFRPシート用のプリプレグを複数枚積層して加熱下、加圧成形した後、冷媒通路となる打ち抜き部を形成したプリプレグの積層体〔図4(1)〕の上下(両側)に、打ち抜き部を形成していないPan−CFRPシート用のプリプレグの積層体を積層し、さらにその上下(両側)に、熱硬化性樹脂を含浸した前記Pitch−CFRPシート用のプリプレグを複数枚積層して加熱硬化させることにより積層体を前記接着シートを介して重ね合わせて、一体に成形することによっても得られる〔図4(2)、(3)参照〕。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1001(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)70質量部およびクレゾールノボラックエポキシ樹脂のYDCN−704P(東都化成株式会社製、商品名)30質量部、硬化剤としてジシアンジアミド3質量部及び2E4MZ(四国化成工業株式会社製の2−エチル−4−メチル−イミダゾール)0.07質量部からなる混合物に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分65質量%のワニスを調製した。
ピッチ系炭素繊維XN−60−60S(日本グラファイトファイバー製品名)に前記ワニスを塗布し、含浸及び乾燥による半硬化を行い、樹脂分が25質量%のPitch―CFRPシート用のプリプレグ1(厚さ0.12mm)を得た。
同様に、PAN系炭素繊維TR50S−15L(東邦テナックス製品名)に前記ワニス1を塗布し、含浸及び乾燥による半硬化を行い、樹脂分が25質量%のPAN―CFRPシート用のプリプレグ2(厚さ0.12mm)を得た。
Pitch―CFRPシート用のプリプレグ1を8枚、PAN―CFRPシート用のプリプレグ2を12枚、計20枚のCFRPシート用のプリプレグを組み合わせ、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度175℃×90分、圧力3.0MPaの条件で加熱下、加圧成形を行い、厚さ2.4mmの2枚の積層板1を得た。
前記2枚の積層板1を、幅5cm×長さ50cmに外形加工した後、エンドミルを使用してPAN―CFRPシート用のプリプレグ2側を切削加工することにより冷媒流通路となる深さ1.3mmの凹状へこみを形成し、板状冷却管用の上下部材〔図1のa、b〕を作製した。
厚さ50μmの接着シートTFA−890(京セラケミカル製品名)を前記上下部材の接合面の形状に合わせて裁断し、前記上下部材を位置合わせして仮固定する。仮固定した前記上下部材を離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaの条件で加熱下、加圧成形を行い、厚さ4.8mm、幅5cm、長さ50cmの板状冷却管を得た。
得られた板状冷却管に所定の圧力で通水し形状保持性試験と耐漏洩性試験を行い、結果を表1と表2に示した。
(実施例2)
前記Pitch―CFRPシート用のプリプレグ1(厚さ0.12mm)を8枚、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaの条件で加熱加圧成形を行い、厚さ1.0mmの積層板2を2枚作製した。
同様にして、前記PAN―CFRPシート用のプリプレグ2(厚さ0.12mm)を24枚、離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度175℃×90分、圧力3.0MPaの条件で加熱加圧成形を行い、厚さ2.8mmの積層板3を1枚作製した。
前記2枚の積層板2及び1枚の積層板3を、それぞれ幅5cm×長さ50cmに外形加工した後、積層板3に切削加工により冷媒流通路となる矩形うち抜き部および両端の穿孔部を形成〔図3のe参照〕し、積層されて板状冷却管となる上中下(両表面および中間)3枚の部材を作製した。
次に、積層板3と同じ形状に打ち抜いた厚さ50μmの接着シートTFA−890(京セラケミカル製品名)の2枚それぞれを前記上下(両表面)部材の接合面側に合わせて積層し、次いで、前記積層板3の両側周縁部に位置合わせして仮固定した。仮固定した前記上中下部材を離型フィルムで被覆して鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で硬化温度175℃×60分、圧力3.0MPaの条件で加熱加圧成形を行い、厚さ4.8mm、幅5cm、長さ50cmの板状冷却管を得た。
得られた板状冷却管に所定の圧力で通水し形状保持性試験と耐漏洩性試験を行い、結果を表1と表2に示した。
(比較例1)
PF−YSH50A−140(ピッチ系炭素繊維、日本グラファイトファイバー製品名)で補強されたピッチ系炭素繊維強化プラスチック〔Pitch―CFRPシート用のプリプレグ(厚さ0.12mm)〕のみ各20枚からなる2枚の積層板(各厚さ2.4mm)を使用し、各積層板の片側に深さ1.3mmの凹状へこみを形成させてその凹状へこみ側が内側になるように対向させて接着シートを用いて接合した以外は、実施例1と同様にして厚さ4.8mm、幅5cm、長さ50cmの板状冷却管を作製した。得られた板状冷却管に通水し形状保持性試験と耐漏洩性試験を行い、結果を表1と表2に示した。
(比較例2)
W−3101(PAN系炭素繊維、東邦テナックス製品名)使用したPAN―CFRPシート用のプリプレグ2のみ20枚からなる2枚の積層板(各厚さ2.4mm)を使用し、各積層板の片側に深さ1.3mmの凹状へこみを形成させてその凹状へこみ側が内側になるように対向させた以外は、実施例1と同様にして実施例1の板状冷却管と同じサイズの板状冷却管を作製した。得られた板状冷却管に通水し形状保持性試験と耐漏洩性試験を行い、結果を表1と表2に示した。
(比較例3)
炭素繊維の代わりにガラス繊維(2116タイプ、旭化成エレクトロニクス製)を使用した強化プラスチックのみからなる2枚の積層板(各厚さ2.4mm)を使用し、各積層板の片側に深さ1.3mmの凹状へこみを形成させてその凹状へこみ側が内側になるように対向させた以外は、実施例1と同様にして実施例1の板状冷却管と同じサイズの板状冷却管を作製した。得られた板状冷却管に通水し形状保持性試験と耐漏洩性試験を行い、結果を表1と表2に示した。
<形状保持性試験>
実施例1、2及び比較例1から3で作製した板状冷却管(いずれも、幅5cm×長さ50cm×厚さ5mm)に入り口側圧力0.1MPaで通水した時の変形量を測定し、変形量50μm未満の場合を○、50μm以上150μm未満の場合を△、150μm以上の場合を×として評価した。
Figure 2010220403
<耐漏洩性試験>
実施例1、2及び比較例1から3で作製した板状冷却管(いずれも、幅5cm×長さ50cm×厚さ5mm)に圧力0.1MPa〜0.6MPaまで加圧し、壁面からの漏洩を検漏液で観察し、漏洩が確認されないものを○、確認されたものを×と判定した。
Figure 2010220403
1:ピッチ系炭素繊維に含浸させた薄板状部材
2:PAN系炭素繊維に含浸させた薄板状部材
3:接着シート
4:冷媒の流入または流出口
a:実施例1のピッチ系炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた薄板状部材と、PAN系炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた薄板状部材の複合材料からなる薄板状部材
e:実施例2のPAN系炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた薄板状部材
h:実施例2のピッチ系炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた薄板状部材
d:実施例1の板状冷却管
k:実施例2の板状冷却管

Claims (7)

  1. 内部に管状の冷媒流通路を有する、発熱体を冷却するための薄板状部材からなる板状冷却管であって、前記薄板状部材がポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートからなる中間層とその両面に積層されてなるピッチ系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートからなる表裏層とを有し、かつ前記中間層に管状の冷媒流通路を設けてなるものであることを特徴とする板状冷却管。
  2. ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートの周縁部以外の部分に連続して凹状へこみが形成されてなる請求項1記載の板状冷却管。
  3. ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートの周縁部以外の部分が連続して打ち抜かれてなる請求項1記載の板状冷却管。
  4. 前記ピッチ系炭素繊維の引張り弾性率が400〜1000GPaである請求項1〜3のいずれかに記載の板状冷却管。
  5. 前記ピッチ系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートと、前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシートとを接着シートで貼り合せてなる請求項1〜4のいずれかに記載の板状冷却管。
  6. 前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維で補強された炭素繊維強化プラスチックシート同士が接着シートで貼り合されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の板状冷却管。
  7. リニアモータの冷却装置用である請求項1〜6のいずれかに記載の板状冷却管。
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