JP2010217291A - プロジェクター、プロジェクションシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】シンプルな構成でありながらスペックルを低減することができ、高品質な画像を表示可能なプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明のプロジェクターは、コヒーレント光を射出する光源装置と、光源装置から射出される光を変調する変調装置と、変調装置により変調された光を表示領域に表示する表示光学系と、光源装置と表示光学系との間の光路に配置されて動的散乱状態で駆動される複屈折性の液晶層136を有する、液晶装置13aと、を含んでいる。
【選択図】図2
【解決手段】本発明のプロジェクターは、コヒーレント光を射出する光源装置と、光源装置から射出される光を変調する変調装置と、変調装置により変調された光を表示領域に表示する表示光学系と、光源装置と表示光学系との間の光路に配置されて動的散乱状態で駆動される複屈折性の液晶層136を有する、液晶装置13aと、を含んでいる。
【選択図】図2
Description
本発明は、プロジェクター、プロジェクションシステムに関する。
従来から、大画面の画像を表示可能な装置の1つとしてプロジェクターが知られている。プロジェクターは、光源装置、変調回路や空間光変調装置等の変調装置、投射光学系や走査光学系等の表示光学系を含んでいる。変調装置により変調された光は、表示光学系によってスクリーン等の表示画面に拡大された画像として表示される。
近年、レーザー光源を用いたプロジェクターが提案されている。レーザー光源は、放電発光管等を用いたランプ光源に比べて色再現性に優れること、瞬時点灯が容易であること、小型化が容易であること、長寿命であること等の長所を有している。また、空間光変調装置として直線偏光を変調する液晶ライトバルブ等を採用する場合には、レーザー光源が直線偏光を射出するので、偏光変換素子等を省くこともできる。
一方で、レーザー光源を用いると、レーザー光のコヒーレンスに起因するスペックルにより表示画像にギラツキ感を生じて、画像品質が低下するおそれがある。スペックルは、表示画像において不規則に生じる明るさの明点、暗点の分布のことである。スペックルは、表示画面の各点で反射・散乱したレーザー光が不規則な位相関係で干渉することにより生じる。スペックルを低減する技術としては、特許文献1、2に開示されている技術が挙げられる。
特許文献1は、光拡散素子を通った光により画像を表示させる無スペックル・ディスプレイ装置に関するものである。光拡散素子を振動・回転させることにより、観察可能な表示の書換え時間よりも短時間でスペックルのパターンを変化させることができる。これにより、スペックルが時間的に平均化されて観察され、スペックルが固定のパターンとして観察されにくくなる。
特許文献2は、複数の独立位相変調領域に区画された液晶位相変調部を含んだスペックルキャンセラーに関するものである。このスペックルキャンセラーは、複数の独立位相変調領域で液晶分子の配向状態を空間的に変化させることや、独立位相変調領域ごとに液晶分子の配向状態を時間的に変化させることが可能になっている。これにより、液晶位相変調部から射出される光の位相を空間的・時間的に変化させることができ、射出された光のコヒーレンスを低下させることによりスペックルを低減することができる。
特許文献1、2の技術を用いればスペックルを低減することは可能であるが、以下のように改善すべき点もある。特許文献1では光拡散素子を物理的に変位させるので、モーター等の変位装置が必要になり、プロジェクターが大型になるおそれがある。特許文献2によれば、特許文献1の不都合を解消することが可能であるが、液晶位相変調部を独立位相変調領域ごとに駆動するために、駆動系が複雑になるおそれがある。
本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、シンプルな構成でありながらスペックルを低減することができ、高品質な画像を表示可能なプロジェクター、プロジェクションシステムを提供することを目的の1つとする。
本発明のプロジェクターは、コヒーレント光を射出する光源装置と、前記光源装置から射出される光を変調する変調装置と、前記変調装置により変調された光を表示領域に表示する表示光学系と、前記光源装置と前記表示光学系との間の光路に配置されて動的散乱状態で駆動される複屈折性の液晶層を有する、液晶装置と、を含んでいることを特徴とする。
このような構成のプロジェクターによれば、変調装置により変調された光が、表示光学系によりスクリーン等に表示されて表示画像が得られる。液晶装置の液晶層が動的散乱状態になると、液晶層において液晶分子の方位角が空間的・時間的に不規則になる。液晶層の複屈折性に起因する位相変調による位相変化量が液晶層において空間的に変化するので、液晶層を通った光は、進行方向に垂直な面内における2方向の振動の位相差、すなわち偏光状態が空間的に不均一になる。これにより、液晶層を通った光は、コヒーレンスが低くなり、スペックルが生じにくくなる。液晶層の位相変調による位相変化量は時間的にも変化するので、液晶層を通った光によりスペックルが生じた場合でもスペックルのパターンが時間的に変化し、スペックルが固定のパターンとして観察されにくくなる。このように、表示画像にスペックルが観察されることが格段に低減され、スペックルによる画像品質の低下が格段に低減される。
ところで、液晶層を動的散乱状態にするには、液晶層の特性により定まる閾値以上の電圧で液晶層を駆動すればよい。したがって、液晶層の部分ごとに異なる駆動条件で液晶層を駆動する必要性が低くなり、駆動系をシンプルにすることができる。
以上のように、本発明のプロジェクターは、シンプルな構成でありながらスペックルを格段に低減することができ、高品質な画像を表示可能になっている。
以上のように、本発明のプロジェクターは、シンプルな構成でありながらスペックルを格段に低減することができ、高品質な画像を表示可能になっている。
また、前記液晶装置は、前記液晶層において光が入射する部分に一括して電界を印加する駆動系を含んでいることが好ましい。
このようにすれば、液晶層の部分ごとに異なる電界を印加する場合に比べて、駆動系を格段にシンプルな構成にすることができる。
このようにすれば、液晶層の部分ごとに異なる電界を印加する場合に比べて、駆動系を格段にシンプルな構成にすることができる。
また、前記液晶層は、誘電異方性が負の液晶材料からなっているとよい。
このようにすれば、液晶層を動的散乱状態にするために必要な駆動電圧を低くすることができ、液晶装置の駆動電圧を低くすることができる。
このようにすれば、液晶層を動的散乱状態にするために必要な駆動電圧を低くすることができ、液晶装置の駆動電圧を低くすることができる。
また、前記液晶装置が反射型であってもよい。
このようにすれば、液晶層に入射した光が液晶層を2回以上通るので、液晶層の位相変調による位相変化量の分布幅を増すことができる。また、位相変化量の分布幅を保持しつつ液晶層の厚みを減らすこともできる。これにより、液晶層を動的散乱状態にするのに必要な駆動電圧を減らすことができ、液晶装置の駆動電圧を低くすることができる。
このようにすれば、液晶層に入射した光が液晶層を2回以上通るので、液晶層の位相変調による位相変化量の分布幅を増すことができる。また、位相変化量の分布幅を保持しつつ液晶層の厚みを減らすこともできる。これにより、液晶層を動的散乱状態にするのに必要な駆動電圧を減らすことができ、液晶装置の駆動電圧を低くすることができる。
また、前記液晶装置が透過型であってもよい。
このようにすれば、透過型の光学系内に液晶装置を配置することが容易になり、プロジェクターを小型化することが容易になる。
このようにすれば、透過型の光学系内に液晶装置を配置することが容易になり、プロジェクターを小型化することが容易になる。
また、前記液晶層の厚み方向が、該液晶層に入射する光の入射方向に対して非平行になっていてもよい。
液晶層の厚み方向が入射方向となす角度が大きくなるほど、液晶層の厚みに対して液晶層内の光の経路が長くなる。光の経路が長くなるほど位相変調による位相変化量の分布幅が広くなり、スペックルの発生を低減する効果を高めることができる。また、液晶層における光の経路長を所定の値以上に確保しつつ、液晶層の厚みを減らすことができ、動的散乱状態にするために必要な駆動電圧を減らすことができ、液晶装置の駆動電圧を低くすることができる。
液晶層の厚み方向が入射方向となす角度が大きくなるほど、液晶層の厚みに対して液晶層内の光の経路が長くなる。光の経路が長くなるほど位相変調による位相変化量の分布幅が広くなり、スペックルの発生を低減する効果を高めることができる。また、液晶層における光の経路長を所定の値以上に確保しつつ、液晶層の厚みを減らすことができ、動的散乱状態にするために必要な駆動電圧を減らすことができ、液晶装置の駆動電圧を低くすることができる。
また、前記表示光学系が画像の中間像を形成して投射する投射光学系であるとともに、前記投射光学系において前記中間像が形成される位置に前記液晶装置が配置されていてもよい。
表示光学系が投射光学系である場合には、変調装置により変調された光が中間像の形成位置にて結像する。これにより、中間像の形成位置の各点に二次光源が形成され、二次光源からの光の干渉によりスペックルが生じることがありえる。前記のようにすれば、中間像の形成位置に液晶装置が配置されているので、中間像からの光によりスペックルが生じることやスペックルが固定のパターンとして観察されることが低減され、スペックルが観察されることが格段に低減される。また、位相変調による変調装置を採用する場合には、プロジェクター内の光の進行方向において液晶装置が変調装置よりも下流に配置されるので、液晶装置での偏光状態の変化が変調装置の位相変調に影響しなくなり、変調装置を良好に機能させることができる。
表示光学系が投射光学系である場合には、変調装置により変調された光が中間像の形成位置にて結像する。これにより、中間像の形成位置の各点に二次光源が形成され、二次光源からの光の干渉によりスペックルが生じることがありえる。前記のようにすれば、中間像の形成位置に液晶装置が配置されているので、中間像からの光によりスペックルが生じることやスペックルが固定のパターンとして観察されることが低減され、スペックルが観察されることが格段に低減される。また、位相変調による変調装置を採用する場合には、プロジェクター内の光の進行方向において液晶装置が変調装置よりも下流に配置されるので、液晶装置での偏光状態の変化が変調装置の位相変調に影響しなくなり、変調装置を良好に機能させることができる。
本発明のプロジェクションシステムは、コヒーレント光により画像を表示するプロジェクターと、前記プロジェクターから光が入射する領域に配置されて動的散乱状態で駆動される液晶層を有する、動的散乱スクリーンと、を含んでいることを特徴とする。
動的散乱スクリーンの液晶層が動的散乱状態になると、液晶層の複屈折性に起因する位相変調による位相変化量が液晶層において空間的・時間的に変化する。これにより、スペックルが生じることやスペックルが固定のパターンとして観察されることが低減される。したがって、動的散乱スクリーンに表示された画像にスペックルが観察されることが格段に低減され、スペックルによる画像品質の低下が格段に低減される。液晶層を動的散乱状態にするので、液晶層の部分ごとに異なる駆動条件で液晶層を駆動する必要性が低くなり、駆動系をシンプルにすることができる。
以上のように、本発明のプロジェクションシステムは、シンプルな構成でありながらスペックルを低減することができ、高品質な画像を表示可能になっている。
動的散乱スクリーンの液晶層が動的散乱状態になると、液晶層の複屈折性に起因する位相変調による位相変化量が液晶層において空間的・時間的に変化する。これにより、スペックルが生じることやスペックルが固定のパターンとして観察されることが低減される。したがって、動的散乱スクリーンに表示された画像にスペックルが観察されることが格段に低減され、スペックルによる画像品質の低下が格段に低減される。液晶層を動的散乱状態にするので、液晶層の部分ごとに異なる駆動条件で液晶層を駆動する必要性が低くなり、駆動系をシンプルにすることができる。
以上のように、本発明のプロジェクションシステムは、シンプルな構成でありながらスペックルを低減することができ、高品質な画像を表示可能になっている。
また、前記プロジェクターが走査型のプロジェクターであってもよい。
一般に、走査型のプロジェクターは、投射型のプロジェクターよりも小型にすることができる。本発明のプロジェクションシステムは、プロジェクター内にスペックル低減用の装置を設けなくともよいので、プロジェクターを格段に小型にすることができる。
一般に、走査型のプロジェクターは、投射型のプロジェクターよりも小型にすることができる。本発明のプロジェクションシステムは、プロジェクター内にスペックル低減用の装置を設けなくともよいので、プロジェクターを格段に小型にすることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るプロジェクター1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、プロジェクター1は、光学像形成系10a〜10c、色合成素子15、投射光学系(表示光学系)16を含んでいる。プロジェクター1は、概略すると以下のように動作する。光学像形成系10a〜10cは、それぞれ赤色の光学像、緑色の光学像、青色の光学像を形成する。光学像形成系10a〜10cにより形成された3色の光学像は、色合成素子15により合成された後、壁やスクリーン等を表示領域2として投射光学系16により拡大投射される。これにより、フルカラーの画像が拡大表示される。以下、プロジェクター1の構成要素について説明する。
図1は、第1実施形態に係るプロジェクター1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、プロジェクター1は、光学像形成系10a〜10c、色合成素子15、投射光学系(表示光学系)16を含んでいる。プロジェクター1は、概略すると以下のように動作する。光学像形成系10a〜10cは、それぞれ赤色の光学像、緑色の光学像、青色の光学像を形成する。光学像形成系10a〜10cにより形成された3色の光学像は、色合成素子15により合成された後、壁やスクリーン等を表示領域2として投射光学系16により拡大投射される。これにより、フルカラーの画像が拡大表示される。以下、プロジェクター1の構成要素について説明する。
本実施形態の光学像形成系10aは、反射による光軸変換を含まない透過型の光学系になっている。光学像形成系10aは、レーザー光源装置11a、ビーム整形光学系12a、スペックル低減用の液晶装置13a、変調装置14aを含んでいる。光学像形成系10b、10cは、光学像形成系10aと同様の構成になっており、それぞれレーザー光源装置11b、11c、ビーム整形光学系12b、12c、液晶装置13b、13c、変調装置14b、14cを含んでいる。光学像形成系10a〜10cは、レーザー光源装置11a〜11cから射出されるレーザー光の波長帯域が異なる点、ビーム整形光学系12a〜12cの特性が入射するレーザー光の波長帯域に応じて調整されている点を除いて同様の構成になっている。ここでは、光学像形成系10a〜10cを代表して光学像形成系10aの構成を説明する。
本実施形態のレーザー光源装置11aは、略直線偏光の赤色レーザー光(コヒーレント光)Laを射出する。レーザー光源装置11aは、例えば直接的に赤色レーザー光を発生させる半導体レーザー素子により構成される。レーザー光源装置としては、赤色レーザー光以外の波長帯域のレーザー光(例えば、赤外レーザー光)を発生させる半導体レーザー素子と、このレーザー光を赤色レーザー光に変換する波長変換素子(SHG)とを組み合わせた構成でもよい。半導体レーザー素子は、端面発光型、面発光型等の各種半導体レーザー素子を用いることができる。
ビーム整形光学系12aは、回折光学素子121、平行化レンズ122を含んでいる。回折光学素子121は、例えば計算機生成ホログラム素子(CGH)等により構成される。回折光学素子121は、入射した赤色レーザー光Laのスポット形状を変調装置14aの変調領域と略相似な形状(ここでは略矩形)に整形する。また、回折光学素子121は、入射した赤色レーザー光Laの拡散角を広げて射出する。回折光学素子121から射出された赤色レーザー光Laは、平行化レンズ122により平行化され、レーザー光源装置11aから射出された状態よりもスポットサイズが大きくなる。このように、ビーム整形光学系12aは、レーザー光源装置11aから射出された赤色レーザー光Laについて、スポット形状やスポットサイズを変調装置14aの変調領域に整合させる。
ビーム整形光学系12aから射出された赤色レーザー光Laは、液晶装置13aを経て変調装置14aに入射する。液晶装置13aの構成については後述するが、本実施形態の液晶装置13aは透過型になっており、変調装置14aの入射側偏光板142と同じ保持具に取り付けられて変調装置14aと一体化されている。変調装置14aは、色合成素子15と一体化されている。
変調装置14aは、入射側偏光板142と射出側偏光板143との間に、透過型の液晶ライトバルブ141が配置された構成になっている。入射側偏光板142は、レーザー光源装置11aからの赤色レーザー光Laを通すように、透過軸方向が調整されている。液晶ライトバルブ141は、その詳細な構造を図示しないが、複数の画素領域に区画された変調領域を有している。変調領域と重なる部分に液晶層が配置されており、液晶層は駆動回路から供給される駆動信号により画素領域ごと駆動される。液晶層を通った光は、画素領域ごとに位相変調されて偏光状態が変化する。液晶ライトバルブ141から射出された赤色レーザー光Laは、偏光状態に応じてその一部が射出側偏光板143に吸収される。これにより、赤色レーザー光Laは、画素ごとに駆動信号に応じた階調になり、全体として赤色の光学像に形成される。
光学像形成系10b、10cは、光学像形成系10aと同様にして、それぞれ緑色の光学像、青色の光学像を形成する。光学像形成系10a〜10cから射出された光(光学像)は、色合成素子15に入射する。
色合成素子15は、ダイクロイックプリズム等により構成される。ダイクロイックプリズムは、4つの三角柱プリズムが互いに貼り合わされた構造になっている。三角柱プリズムにおいて貼り合わされる面には、赤色レーザー光Laが反射し緑色レーザー光Lbが透過するミラー面と、青色レーザー光Lcが反射し緑色レーザー光Lbが透過するミラー面とが互いに直交して形成されている。色合成素子15に入射した緑色レーザー光Lbは、ミラー面を通ってそのまま射出される。色合成素子15に入射した赤色レーザー光La、青色レーザー光Lcは、ミラー面で選択的に反射あるいは透過して光軸が略90°折り曲げられて、緑色レーザー光Lbの射出方向と同じ方向に射出される。これにより、3色の光(光学像)が重ね合わされて合成され、合成された光は投射光学系16に入射する。
投射光学系16は、複数のレンズを含んでおり、必要に応じてレンズ間隔を調整する移動機構(ズーム機構やフォーカス機構等)が設けられる。投射光学系16は、合成された光学像の各点からの光を表示領域2上の各点にて結像させる。これにより、表示領域2にフルカラーの画像が表示される。通常のプロジェクターでは、コヒーレント光により光学像を形成して表示すると、スペックルが生じて画像品質が低下することがある。プロジェクター1にあっては、液晶装置13a〜13cを設けていることにより、スペックルが格段に低減されている。以下、液晶装置13a〜13cを代表して液晶装置13aについて説明する。
図2(a)は、液晶装置13aの概略構成を示す側断面図であり、図2(b)は動的散乱状態を示す概念図である。図2(a)に示すように、液晶装置13aは、第1電極131を有する第1基板132、第2電極133を有する第2基板134を含んでいる。第1電極131、第2電極133は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)等の透明導電材料からなっている。第1基板132、第2基板134は、例えばガラス基板等の透明基板からなっている。
第1基板132及び第2基板134は、第1電極131及び第2電極133を内側にして対向配置されている。第1電極131、第2電極133は、それぞれ駆動回路135と電気的に接続されており、駆動回路135とともに駆動系を構成している。第1電極131と第2電極133との間に、液晶層136が封入されている。液晶層136は、第1基板132、第2基板134の周縁部に設けられた封止材137により封止されている。
第1電極131、第2電極133は、駆動回路135から供給される駆動電圧波形を液晶層136に印加する。ここでは、液晶装置13aにおいて、赤色レーザー光Laが入射する領域A1の全域にわたって第1電極131、第2電極133がベタ状に設けられている。これにより、第1電極131、第2電極133は、領域A1と重なる部分の液晶層136に一括して同一の駆動電圧波形を印加するようになっている。
本実施形態の液晶層136は、主として誘電異方性が負の液晶材料からなり、少量の導電性不純物を含んでいる。導電性不純物の含有量は、例えば液晶層136の比抵抗が1010Ω・cm以下になる程度の量である。ここでは、液晶層136がホメオトロピック配向(垂直配向)になっている。液晶層136の厚みd1は、液晶層136の複屈折性Δnとの積(Δn・d1)が、液晶層136に入射する光(ここでは赤色レーザー光La)の波長と同程度(例えば、0.5〜2倍)になるように設定されている。屈折性Δnは、液晶分子のダイレクタ方向における屈折率と、ダイレクタ方向に対する直交方向における屈折率との屈折率差により定まる。Δn・d1は、液晶層の配向状態によらない値である点で、通常のリタデーション値と異なるが、以下の説明では、便宜上Δn・d1をリタデーション値と称する場合がある。
液晶層136に閾値以上の電圧を印加すると、液晶分子に対して電流による配向効果が電界による配向効果よりも大きくなり、流体力学的な不安定現象が生じる。この不安定現象は、カー・ヘルフリッヒ効果と呼ばれている。この効果により、液晶層136中に乱流を生じて、図2(b)に示すように液晶層136が動的散乱状態(Dynamic Scattering)になる。
液晶層136が動的散乱状態になると、液晶分子136aの方位角が乱流に起因して空間的・時間的に不規則に変化する。すると、局所的な複屈折性が、液晶層136内で空間的に不規則に変化し、複屈折性に起因する位相変調による位相変化量が空間的に不規則に変化する。液晶層136を通った赤色レーザー光Laは、位相変化量の分布にしたがって光束内での位相が不均一になる。
詳しくは、液晶層136を通った赤色レーザー光Laは、進行方向に直交する面内の2方向における振動の位相差が光束の部分ごとに不規則に変化しており、多様な偏光状態を含んでいる。したがって、赤色レーザー光Laは、偏光状態が揃っている状態よりもコヒーレンスが低くなり、スペックルが生じにくくなる。また、液晶層136内の任意の部分において複屈折性が時間的に不規則に変化するので、赤色レーザー光Laが干渉した場合でも、干渉によるスペックルのパターンが時間的に不規則に変化する。これにより、スペックルが時間的に平均化されて観察されることになり、スペックルが固定のパターンとして観察されにくくなる。
なお、液晶分子に対して電流による配向効果が電界による配向効果よりも大きくなるように液晶層136に電圧を印加すれば、液晶層136を動的散乱状態にすることができる。したがって、スペックルの発生を低減する観点では、液晶層の配向としてホモジニアス配向(水平配向)やねじれネマティック配向(TN配向)等を採用してもよい。例えば、ホモジニアス配向の液晶層である場合には、ウイリアムスドメインを経て動的散乱状態に遷移する。電圧印加を停止した後に液晶層136を所定の配向に戻す必要がない場合には、液晶層136としては液晶分子が方向秩序を持たないもの、例えば配向処理を行っていないものを用いてもよい。
いずれの配向状態の液晶層を採用する場合であっても、液晶層のリタデーション値が大きくなるほど位相変調量の分布幅が大きくなり、スペックルの発生を低減する効果(スペックル低減効果)が高くなると考えられる。液晶分子が一定の方向秩序を有していない液晶層については、液晶分子を仮想的に配向させた場合のリタデーション値を実験や数値シミュレーション等により求めて、位相変化量の分布幅を評価することができる。また、液晶層の部分ごとのリタデーション値を測定して、リタデーション値の分布幅を求めること等により位相変化量の分布幅を評価することもできる。
スペックル低減効果に関するパラメーター値としては、位相変化量の分布幅の他に、液晶層136に印加する電圧の絶対値の最大値(最大電圧値)や、液晶層136に閾値以上の電圧を印加する時間(印加時間)等が考えられる。最大電圧値が高くなるほど、また印加時間が長くなるほど、スペックル低減効果が高くなると考えられる。最大電圧値や印加時間は、駆動回路135から供給される駆動電圧波形により設定可能である。
本発明では、液晶層136が動的散乱状態になるように、駆動回路135から供給される駆動電圧波形の最大電圧値が閾値電圧以上に設定されている。駆動電圧波形としては、交流電圧波形、直流電圧波形のいずれを用いてもよいが、交流電圧波形にすれば液晶層136を長寿命にすることができる。本実施形態では、駆動電圧波形として交流電圧波形を用いており、交流電圧波形の最大電圧値(片振幅)やデューティ、液晶層136のリタデーション値を、スペックが観察されない範囲内の最小限度の値に設定している。ここでいうデューティとは、交流電圧波形の1周期における電圧の絶対値の時間平均値が、電圧の片振幅に占める割合のことである。
パラメーター値を高くするほど位相変化量の分布幅が広くなり、液晶層136を通った赤色レーザー光Laにおける位相のばらつきの分布幅が広くなる。一方で、パラメーター値を高くするほど、赤色レーザー光Laにおいて楕円偏光の占める割合が増加して、変調装置14aにおける光の利用効率が低下する。パラメーター値を最小限度の値に設定することにより、光の利用効率が低下を最小限度にすることができる。なお、スペックが観察されない範囲内の最小限度の値は、実験等により求めることができる。
以上のようにプロジェクター1は、液晶装置13a〜13cの液晶層136が動的散乱状態で駆動される。したがって、液晶層136を部分ごとに異なる駆動条件で駆動しなくても、自ずと液晶層136における位相変調の位相変化量が空間的・時間的に変化する。よって、シンプルな構成でありながら表示画像にスペックルが観察されることが格段に低減され、高品質な画像を表示することができる。
また、第1実施形態では、液晶層136として一定の方向秩序を有するものを採用しているので、動的散乱状態と所定の配向状態とを切替えることができ、液晶層136から射出される光において所定の直線偏光が占める割合を制御することができる。詳しくは、第1実施形態のように液晶層136が垂直配向のものであれば、電界非印加状態で液晶層136を通る光は偏光状態がほとんど変化せずに射出される。電界非印加状態の期間に対する動的散乱状態の期間の比率を低くするほど、液晶層136から射出される光において直線偏光の占める割合が高くなる。動的散乱状態の期間の比率をスペックルが観察されない最低限度に設定することにより、変調装置14aの入射側偏光板142に吸収される光の割合を最低限度にすることができ、変調装置14aにおける光の利用効率の低下を最小限度にすることができる。
水平配向の液晶層を採用する場合には、液晶層が動的散乱状態に至らない程度の電圧を液晶層に印加することにより、液晶層の複屈折性を発現させないことができる。これにより、垂直配向の液晶層136と同様に、液晶層から射出される光において所定の直線偏光が占める割合を制御することができる。垂直配向の液晶層136を採用すれば、電界非印加状態で射出される光が直線偏光になるので、低消費電力にする観点で水平配向の液晶層よりも優れている。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るプロジェクターを説明する。第2実施形態のプロジェクターは、3系統の光学像形成系を含んでおり、3系統の光学像形成系で形成された光学像は色合成素子により合成されて拡大投射される。第2実施形態が、第1実施形態と異なる点は、スペックル低減用の液晶装置を光学像形成系内に配置するのではなく、投射光学系内に配置している点である。
次に、本発明の第2実施形態に係るプロジェクターを説明する。第2実施形態のプロジェクターは、3系統の光学像形成系を含んでおり、3系統の光学像形成系で形成された光学像は色合成素子により合成されて拡大投射される。第2実施形態が、第1実施形態と異なる点は、スペックル低減用の液晶装置を光学像形成系内に配置するのではなく、投射光学系内に配置している点である。
図3は、第2実施形態に係るプロジェクター3の概略構成を示す模式図である。図3には、1つの光学像形成系30aを代表的に図示しており、他の2系統の光学像形成系の図示と、色合成素子の図示とを省略している。図3に示すようにプロジェクター3は、光学像形成系30a、色合成素子、投射光学系36を含んでいる。投射光学系36は、中間像を形成する中間像形成レンズ361、362、中間像形成レンズ361の焦点位置に配置された絞り363、中間像を表示領域2に拡大投射する投射レンズ364を含んでいる。中間像形成レンズ361、362により中間像が形成される位置に、スペックル低減用の液晶装置33が配置されている。液晶装置33は、第1実施形態で説明した液晶装置13aと同様のものである。
光学像形成系30aは、第1実施形態の光学像形成系10aから液晶装置13aを除いたものとほぼ同様である。光学像形成系30aから射出された光(光学像)は、他の光学像形成系から射出された光と色合成素子により合成された後、中間像形成レンズ361に入射する。変調装置14aの変調領域の1点(例えば1つの画素領域)から射出された光に着目すると、各点からの拡散光を含んだ光は、中間像形成レンズ361で屈折して絞り363の開口を通り、中間像形成レンズ362に入射する。中間像形成レンズ362に入射した光は、中間像形成レンズ362で屈折して、中間像形成位置に配置された液晶装置33の1点に結像する。変調装置14aの各点から射出された光が、それぞれ中間像形成位置の各点に結像することにより、光学像形成系30aにより形成された光学像と相似な中間像が中間像形成位置に形成される。
中間像の各点に結像した光は、液晶装置33を通ることより、光束内での位相が不均一になる。これにより、中間像の各点からの光は、コヒーレンスが低くなりスペックルが生じにくくなる。また、各点からの光が干渉した場合でも、液晶装置33の液晶層の任意の部分において複屈折性が時間的に不規則に変化するので、スペックルのパターンが時間的に不規則に変化し、スペックルが固定のパターンとして観察されにくくなる。
中間像の各点からの光は、液晶装置33から射出された後、投射レンズ364に入射する。液晶装置33を通った光は、液晶層により散乱されており、液晶層への入射前に比べて拡散角が大きくなっている。投射レンズ364は、中間像の各点からの光が表示領域2上の各点に結像するように、フォーカス値(Fナンバー)が設定されている。これにより、表示領域2に鮮明なフルカラーの画像が拡大表示される。
以上のような構成のプロジェクター3にあっては、第1実施形態と同様に、シンプルな構成でありながら表示画像にスペックルが観察されることが格段に低減され、高品質な画像を表示することができる。
ところで、中間像形成位置の各点では、光学像形成系30aにより形成された光学像の各点からの光が結像するため、結像した光が干渉しやすいと考えられる。しかしながら、中間像形成位置にスペックル低減用の液晶装置33が配置されているので、各点に結像した光のコヒーレンスが低くなり、スペックルの発生が低減される。特に、本実施形態では、中間像の各点から光が表示領域2に至る前に結像することがないので、二次的にスペックルが発生することもない。
また、プロジェクター3における光の進行方向において、液晶装置33が光学像形成系30aよりも下流に配置されているので、液晶装置33の位相変調が光学像形成系30aの変調装置14aの位相変調に影響を及ぼさない。したがって、液晶装置33が光学像形成系30aよりも上流に配置される場合に比べて変調装置14aへの入射光において楕円偏光の占める割合が少なくなり、変調装置14aにおける光の利用効率が高くなる。
以上のようにプロジェクター3によれば、格段にスペックルが低減可能であることに加えて光の利用効率を高めることができる。
以上のようにプロジェクター3によれば、格段にスペックルが低減可能であることに加えて光の利用効率を高めることができる。
なお、第2実施形態では投射光学系36として、中間像形成レンズ361、362、絞り363が両側テレセントリック光学系である構成を採用しているが、投射光学系36の構成としては両側テレセントリック光学系以外にも適宜選択可能である。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るプロジェクターを説明する。第3実施形態のプロジェクターは、3系統の光学像形成系を含んでおり、3系統の光学像形成系で形成された光学像は色合成素子により合成されて拡大投射される。第3実施形態が、第1実施形態と異なる点は、スペックル低減用の液晶装置が反射型の液晶装置により構成されている点である。
次に、本発明の第3実施形態に係るプロジェクターを説明する。第3実施形態のプロジェクターは、3系統の光学像形成系を含んでおり、3系統の光学像形成系で形成された光学像は色合成素子により合成されて拡大投射される。第3実施形態が、第1実施形態と異なる点は、スペックル低減用の液晶装置が反射型の液晶装置により構成されている点である。
図4は、第3実施形態に係るプロジェクター4の概略構成を示す模式図である。図4に示すようにプロジェクター4は、光学像形成系40a〜40c、色合成素子、投射光学系36を含んでいる。投射光学系36は、第2実施形態と同様のものである。光学像形成系40a〜40cはいずれも同様の構成になっており、光学像形成系40aについて代表的に説明する。
光学像形成系40aは、レーザー光源装置11a、ビーム整形光学系12a、スペックル低減用の液晶装置43、変調装置14aを含んでいる。レーザー光源装置11aから射出された赤色レーザー光Laは、ビーム整形光学系12aによりスポット形状やスポットサイズが調整された後、液晶装置43に入射する。液晶装置43は、入射した赤色レーザー光Laのコヒーレンスを低下させるとともに、赤色レーザー光Laを反射させる。赤色レーザー光Laは、液晶装置43で反射して光軸が折れ曲がり(ここでは略90°)、変調装置14aに入射する。変調装置14aに入射した赤色レーザー光Laは、変調装置14aにより位相変調されて、赤色の光学像に形成される。光学像形成系40aから射出された光(光学像)は、他の光学像形成系から射出された光と色合成素子により合成された後、投射光学系36により表示領域2に投射される。
図5(a)は、液晶装置43の概略構成を示す側断面図、図5(b)は動的散乱状態を示す概念図、図5(c)は液晶層436における光の経路長を示す説明図である。図5(a)に示すように、液晶装置43は、第1実施形態で説明した液晶装置13aと概略同様の構成になっている。液晶装置43が液晶装置13aと異なる点は、第2電極433が例えばアルミニウム等の光反射材料により形成されている点、第1電極131と第2電極433との間における液晶層436の厚みd2が液晶装置13aの液晶層136の厚みd1よりも小さくなっている点である。
図5(b)に示すように、液晶装置43に入射した赤色レーザー光Laは、第1電極131を通って液晶層436に入射する。液晶層436に入射した赤色レーザー光Laは、液晶層436の厚み方向に対して斜め方向に(ここでは略45°の角度をなして)進行し、第2電極433に入射する。第2電極433に入射した赤色レーザー光Laは、第2電極433で反射して液晶層136の厚み方向に対して斜め方向に進行し、液晶装置43から射出される。
図5(c)に示すように、液晶層436において第1電極131から第2電極433へ向かう光の経路長dLは、液晶層436の厚みd2、入射方向が厚み方向(第2電極433の法線方向)となす角度θを用いると以下の式(1)で表される。
dL=d2/cosθ ・・・(1)
dL=d2/cosθ ・・・(1)
式(1)から分かるように、入射方向が厚み方向と非平行の場合(0°<θ<90°)には、経路長dLが厚みd2よりも大きくなる。液晶層436を光が1回通った時点での光の位相変化量の分布幅はΔn・dLにより定まり、光の入射方向が第2電極433の法線方向である場合に比べて、スペックル低減効果が高くなる。特に、本実施形態のように反射型の液晶装置43では、液晶層436における光の往路と復路とで位相変調効果が得られるので、実質的なリタデーション値は(2・Δn・dL)となり、スペックル低減効果が格段に高くなる。仮に、反射型の液晶装置43においてd2=d1、θ=45°である場合(ケース1)について、透過型の液晶装置13aにおいてθ=0°である場合(ケース2)と比較する。ケース1では、実質的なリタデーション値がケース2の2.8倍程度になる。すなわち、反射型の液晶装置43においてθ=45°である場合には、d2をd1の1/3程度にしてもケース2と同程度のスペックル低減効果が期待できる。
以上のような構成のプロジェクター4にあっては、シンプルな構成でありながらスペックルが格段に低減され、高品質な画像を表示することができる。また、スペックル低減用の液晶装置が透過型である場合や、液晶層への光の入射方向が液晶層の厚み方向と平行である場合と比較して、スペックル低減効果を高めることができる。また、スペックル低減効果を同程度に保持しつつ液晶層436の厚みd2を減らすことができ、最大電圧値を閾値電圧と同程度まで低くすることができる。最大電圧値を閾値程度まで低くした上で、スペックル低減効果が過剰である場合等には、スペックル低減効果を確保しつつ駆動電圧波形のデューティを低下させることもできる。これにより、スペックル低減用の液晶装置43を低消費電力にすることができる。
なお、第3実施形態では第2電極433を反射電極にすることにより、反射型の液晶装置を構成しているが、第2電極を透明電極にするとともに、第2電極に対して液晶層と反対側に反射膜等を設けることにより反射型の液晶装置を構成してもよい。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るプロジェクターを説明する。第4実施形態のプロジェクターは、第1〜3実施形態と異なり走査型である。
次に、本発明の第4実施形態に係るプロジェクターを説明する。第4実施形態のプロジェクターは、第1〜3実施形態と異なり走査型である。
図6は、第4実施形態に係るプロジェクター5の概略構成を示す模式図である。図6に示すように、プロジェクター5は、画像信号処理系50、レーザー光源装置51、リレー光学系52、スペックル低減用の液晶装置53、走査光学系(表示光学系)54を含んでいる。プロジェクター1は、概略すると以下のように動作する。
PC等の信号源6から供給された電気信号は、画像信号処理系50により処理されて、レーザー光源装置51や走査光学系54に出力される。レーザー光源装置51は電気信号に応じた階調のレーザー光(コヒーレント光)を射出し、このレーザー光はリレー光学系52、液晶装置53を経て走査光学系54に入射する。走査光学系54に入射したレーザー光は、走査光学系54により電気信号に応じた方向に射出されて、表示領域2を走査する。これにより、表示領域2に画像が描画(表示)される。以下、プロジェクター5の構成要素について説明する。
画像信号処理系50は、インターフェース501、画像信号処理回路502、変調回路(変調装置)503、タイミング生成回路504、及びミラー駆動回路505を含んでいる。インターフェース501は、信号源6から画像信号や同期信号を含んだ電気信号を受け取り、この電気信号を画像信号と同期信号とに分離する。分離された画像信号は画像信号処理回路502に出力され、分離された同期信号はタイミング生成回路504に出力される。
タイミング生成回路504は、画像の解像度やフレームレート、走査方式等に応じて、画像に含まれる複数の画素に対して画素ごとの表示タイミングを示すタイミング信号を生成する。タイミング信号により、信号源6から供給される画像信号をプロジェクター5の走査方式に整合した形式に変換することが可能である。タイミング信号は、画像信号処理回路502やミラー駆動回路505に出力される。
ミラー駆動回路505は、走査光学系54を構成する第1偏向ミラー541、第2偏向ミラー542の駆動信号をタイミング信号に基づいて生成し、駆動信号を走査光学系54に出力する。
ミラー駆動回路505は、走査光学系54を構成する第1偏向ミラー541、第2偏向ミラー542の駆動信号をタイミング信号に基づいて生成し、駆動信号を走査光学系54に出力する。
画像信号処理回路502は、画像信号にガンマ処理等の各種画像処理を行う。また、画像信号処理回路502は、画像信号に含まれる画素データが走査方式に整合した時間順次で変調回路503に出力されるように、タイミング信号に基づいて画像信号を調整する。
変調回路503は、レーザー光源装置51から射出されるレーザー光の強度が画素ごとの階調に対応して時間変化するように、画像信号に基づいてレーザー光源装置51の出力を調整する。レーザー光源装置51は、その詳細な構成を図示しないが、レーザー光源装置51は、射出光の波長が異なる複数の半導体レーザー素子を含んでいる。変調回路503は、複数の半導体レーザー素子のそれぞれに対して出力を調整する。複数の半導体レーザー素子から射出されたレーザー光は、ダイクロイックミラー等の色合成素子により合成され、合成されたレーザー光がレーザー光源装置51から射出される。
変調回路503は、レーザー光源装置51から射出されるレーザー光の強度が画素ごとの階調に対応して時間変化するように、画像信号に基づいてレーザー光源装置51の出力を調整する。レーザー光源装置51は、その詳細な構成を図示しないが、レーザー光源装置51は、射出光の波長が異なる複数の半導体レーザー素子を含んでいる。変調回路503は、複数の半導体レーザー素子のそれぞれに対して出力を調整する。複数の半導体レーザー素子から射出されたレーザー光は、ダイクロイックミラー等の色合成素子により合成され、合成されたレーザー光がレーザー光源装置51から射出される。
リレー光学系52は、レンズ521、522を含んでいる。レーザー光源装置51から射出されたレーザー光は、レンズ521により集光されて結像した後、表示領域2上にて結像するようにレンズ522によって集光される。レンズ521によりレーザー光が結像する位置に液晶装置53が配置されている。リレー光学系52に関しては、レーザー光源装置51の配光特性等に応じて適宜変更することができる。例えば、レーザー光源装置から射出される光の平行度が極めて高い場合には、リレー光学系52を簡略化、あるいは省略することもできる。また、リレー光学系52にスポット形状やスポットサイズを調整する機能を持たせてもよい。また、レーザー光源装置51からのレーザー光をレンズ521により平行化して、平行化されたレーザー光を液晶装置53に入射させてもよい。
レーザー光の結像位置に液晶装置53を配置すれば、液晶装置53においてレーザー光のスポットサイズが最小になり、液晶装置53を小型にすることができる。また、第2実施形態で説明したように二次的なスペックルの発生を低減することもできる。
平行化されたレーザー光が液晶装置53に入射するように液晶装置53を配置すれば、液晶装置53にてレーザー光を結像させる場合よりも液晶装置53でのスポットサイズが大きくなる。したがって、光束内における位相のばらつきの分布幅を広げること容易になり、スペックル低減効果を高めることができる。
平行化されたレーザー光が液晶装置53に入射するように液晶装置53を配置すれば、液晶装置53にてレーザー光を結像させる場合よりも液晶装置53でのスポットサイズが大きくなる。したがって、光束内における位相のばらつきの分布幅を広げること容易になり、スペックル低減効果を高めることができる。
走査光学系54は、入射光の光軸を表示領域2に対して主走査方向に変化させる第1偏向ミラー541と、入射光の光軸を表示領域2に対して副走査方向に変化させる第2偏向ミラー542とを含んでいる。例えば、主走査方向は水平走査方向であり、副走査方向は水平走査方向と略直交する垂直走査方向である。第1偏向ミラー541はMEMS技術等により形成されるマイクロメカニカルミラー等により構成され、第2偏向ミラー542はガルバノミラー等により構成される。
第1偏向ミラー541は、ミラー駆動部(図示略)に駆動される。ミラー駆動部は、ミラー駆動回路505から駆動量を受け取り、所定の回転軸まわりに第1偏向ミラー541を駆動量に応じた角速度、振幅で回動させる。これにより、第1偏向ミラー541において光が入射する面の法線方向が、入射するレーザー光の光軸に対して変化し、この面で反射したレーザー光の光軸がタイミング信号に基づいて変化する。第2偏向ミラー542は、第1偏向ミラー541と同様にミラー駆動部により駆動される。
以上のような構成のプロジェクター5にあっては、第1実施形態と同様に、シンプルな構成でありながら表示画像にスペックルが観察されることが格段に低減され、高品質な画像を表示することができる。投射型のプロジェクターに比べて、変調装置や表示光学系を小型にすることが容易であり、プロジェクターを小型にすることができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るプロジェクションシステムを説明する。図7(a)は、第5実施形態のプロジェクションシステム7を示す模式図であり、図7(b)は、変形例のプロジェクションシステム8を示す模式図である。
次に、本発明の第5実施形態に係るプロジェクションシステムを説明する。図7(a)は、第5実施形態のプロジェクションシステム7を示す模式図であり、図7(b)は、変形例のプロジェクションシステム8を示す模式図である。
図7(a)に示すように、プロジェクションシステム7は、プロジェクター71、動的散乱スクリーン72を含んでいる。プロジェクター71は、コヒーレント光により画像を表示するものである。プロジェクター71としては、例えば第1〜3実施形態のプロジェクターからスペックル低減用の液晶装置を除いた投射型のプロジェクターや、第4実施形態のプロジェクターからスペックル低減用の液晶装置を除いた走査型のプロジェクター、また空間光変調装置としてデジタルミラーデバイス(DMD)を用いたプロジェクター等を用いることができる。
動的散乱スクリーン72は、プロジェクター71から光が入射する部分が、図5(a)に示したスペックル低減用の液晶装置43と同様の構成になっている。動的散乱スクリーン72としては、光入射領域のほぼ全体が1つの液晶装置により構成されているものや、光入射領域が複数の分割領域に分かれており分割領域ごとに液晶装置が設けられているものを用いることができる。例えば、動的散乱スクリーン72と同程度の寸法の液晶装置を製造することが難しい場合には、分割領域ごとに液晶装置を設けるとよい。
以上のような構成のプロジェクションシステム7において、プロジェクター71から射出された光は動的散乱スクリーン72の一方の面に入射する。動的散乱スクリーン72に入射した光は、動的散乱スクリーン72の液晶層を通ることにより光束内での位相が不均一になる。また、動的散乱スクリーン72の液晶層を通る光は、動的散乱スクリーン72で反射して前記一方の面を通って射出される。動的散乱スクリーン72で反射・散乱された光が、観察者Kに観察されることにより画像が表示される。動的散乱状態で駆動された液晶層を通った光により画像が表示されるので、表示画像においてスペックルの発生が低減され、またスペックルが固定のパターンとして観察されることが低減される。以上のように、プロジェクションシステム7によれば、シンプルな構成でありながらスペックルが格段に低減され、高品質な画像を表示することができる。
図7(b)に示すように、変形例のプロジェクションシステム8は、プロジェクター81、動的散乱スクリーン82を含んでいる。プロジェクター81としては、第5実施形態と同様に、各種プロジェクターを用いることができる。動的散乱スクリーン82は、プロジェクター81から光が入射する部分が、図2(a)に示したスペックル低減用の液晶装置13aと同様の構成になっている。プロジェクター81から射出された光は動的散乱スクリーン82の他方の面に入射する。動的散乱スクリーン82に入射した光は、動的散乱スクリーン82の液晶層を通ることにより光束内での位相が不均一になり、動的散乱スクリーン82の一方の面から射出される。動的散乱スクリーン82で散乱された光が、観察者Kに観察されることにより画像が表示される。以上のように本発明のプロジェクションシステムは、第5実施形態のようなフロントプロジェクション型、変形例のようなリアプロジェクション型のいずれにも適用可能である。
1、3、4、5・・・プロジェクター、7、8・・・プロジェクションシステム、11a〜11c、51・・・光源装置、13a〜13c、33、43、53・・・スペックル低減用の液晶装置、136、436・・・液晶層、14a〜14c・・・変調装置、16・・・投射光学系(表示光学系)、503・・・変調回路(変調装置)、54・・・走査光学系(表示光学系)、71、81・・・プロジェクター、72、82・・・動的散乱スクリーン
Claims (9)
- コヒーレント光を射出する光源装置と、
前記光源装置から射出される光を変調する変調装置と、
前記変調装置により変調された光を表示領域に表示する表示光学系と、
前記光源装置と前記表示領域との間の光路に配置されて動的散乱状態で駆動される複屈折性の液晶層を有する、液晶装置と、を含んでいることを特徴とするプロジェクター。 - 前記液晶装置は、前記液晶層において光が入射する部分に一括して電界を印加する駆動系を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター。
- 前記液晶層は、誘電異方性が負の液晶材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクター。
- 前記液晶装置が反射型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロジェクター。
- 前記液晶装置が透過型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロジェクター。
- 前記液晶層の厚み方向が、該液晶層に入射する光の入射方向に対して非平行になっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロジェクター。
- 前記表示光学系が画像の中間像を形成して投射する投射光学系であるとともに、前記投射光学系において前記中間像が形成される位置に前記液晶装置が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロジェクター。
- コヒーレント光により画像を表示するプロジェクターと、
前記プロジェクターから光が入射する領域に配置されて動的散乱状態で駆動される液晶層を有する、動的散乱スクリーンと、を含んでいることを特徴とするプロジェクションシステム。 - 前記プロジェクターが走査型のプロジェクターであることを特徴とする請求項8に記載のプロジェクションシステム。
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