JP2010215516A - 皮膚外用剤および粘膜外用剤 - Google Patents

皮膚外用剤および粘膜外用剤 Download PDF

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Abstract

【課題】美白効果を有するとともに、活性酸素の除去、保湿、炎症・抗アレルギー症・皮膚老化の予防等に効果を発揮して一層の美肌効果を得られる皮膚外用剤、および粘膜に作用して優れた抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用を発揮する粘膜外用剤を提供する。
【解決手段】アグリモニインを有効成分として含有する皮膚および粘膜外用剤である。アグリモニインは、高いチロシナーゼ阻害活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有し、美白用化粧品をはじめ、ニキビ、しみの防止、治療を目的とする皮膚外用剤として用いることができる。また、鼻粘膜等の粘膜に対する粘膜外用剤として用いることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚に塗ったり、染みこませたり、擦ったり、接触させたりすることによって経皮的に皮膚内部へ浸透させ、既にできたシミ、ソバカス等を低減、退色させて、本来の皮膚の色を取り戻すために用いられ、主として化粧水、化粧クリーム等の基礎化粧品や入浴剤、薬用石けん等として用いることができる皮膚外用剤、および粘膜に作用して優れた抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用を発揮する粘膜外用剤に関するものである。
近年の成層圏オゾン層の破壊に基づいて増加する紫外線から肌を守り、皮膚の老化、黒化を防止するとともに、シミ、ソバカス、くすみをなくして皮膚本来の美しさを取り戻すことを目的とした美白用基礎化粧品の需要が高まっている。特に、1990年代に流行した顔黒のために、紫外線を照射して日焼けさせた女性たちが、美白化の流行に転換するようになり、日焼けがおさまった後に残ったシミ、ソバカスを取り除くことについて、強い要望がある。
美白用化粧品としては、紫外線照射により生じる活性酸素による色素産生を抑制して、肌の老化に伴うくすみを改善しようとするものや、シミの原因となるメラニン生成反応の一部を触媒するチロシナーゼ活性を阻害することによりシミを低減しようとするものがある。前者の化粧品としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等の抗酸化剤を含有させた化粧品が販売されている。しかし、ビタミンC、E等のビタミン類は、一般に安定性が悪く、また活性酸素で酸化された後に生じる酸化型ビタミンA、酸化型ビタミンEが悪影響を及ぼすため、美白という点では満足できるものではない。安定性に優れた合成抗酸化剤は、近年の消費者の安全性志向、自然志向、健康志向から、敬遠される傾向にある。
このような状況のもと、自然派化粧品を好む消費者の要望に応えるべく、美肌、美白化に有用な成分として、ハーブエキス又は生薬エキスを使用した美白用自然派化粧品が提案されている。
例えば、特許文献1には、チロシナーゼ活性阻害に基づくメラニン生成抑制剤として、ウコン、チョウジ等の生薬抽出物を含有する皮膚化粧料が開示されている。ここで用いられるウコン抽出物は、ウコンの根茎部を水、メタノール、エタノール等の親水性有機溶剤で抽出した抽出物である。
特許文献2には、バンウコン、ササゲ、ワサビノキ等の生薬抽出物が不飽和脂肪酸酸化防止作用及び活性酸素消去作用に優れ、これらを含有する皮膚外用剤がくすみ改善に対してビタミンEよりも優れていることが開示されている。ここで用いられているバンウコンの抽出物は、地下茎の熱水抽出物、全草のエタノール抽出物、地下茎の1,3-ブチレングリコールの抽出物であり、当該抽出物の優れた抗酸化作用により、シワ、ハリ、さらには肌のくすみを改善しようとするものである。
特許文献3には、グリセリンやヒアルロン酸Na等の水溶性増粘剤、エタノール等の抗菌性アルコール、トコフェロール類等の抗酸化ビタミン類、メフェナム酸やトラネキサム酸等の抗炎症剤とともに、美白成分として、オウゴン、ボタン、アロエ、にんじん、ウコン等の植物抽出物を添加した化粧用組成物が開示されている。
特開平6−227960 特開2002−121144 特開2002−212052
抗酸化成分による活性酸素の捕捉は、紫外線照射によるシミ、ソバカスの新生を抑制しようとするものであり、既にできているシミ、ソバカスの低減、消失、退色といった美白効果に対しては、更なる向上が望まれている。また、美白効果だけでなく、お肌の潤いを保つための保湿効果や、炎症・抗アレルギー症・皮膚老化の予防や抑制に効果を発揮するものであれば一層の美肌効果が得られ、このような皮膚外用剤の開発が強く望まれている。
一方、近年は、アトピー性皮膚炎や花粉症等の各種アレルギー性疾患患者が増加しており、その治療が社会的な問題になっている。しかしながら、現在のところ対症療法に頼るところが大きく、アレルギー疾患の根本的治療につながる優れた治療薬が切望されながら、その開発は今尚暗中模索の域にあると言わざるを得ない。最近は、抗ヒスタミン薬や、SRS-Aの産生を抑えるかそれに拮抗する薬剤が種々開発されてきているが、副作用の面で十分とは言えず、副作用の少ない天然物由来の治療物質の開発が強く望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、紫外線照射による日焼けをはじめ、老化に伴うシミ・ソバカスの低減、退色・消去により皮膚本来の色・艶をよみがえらせる美白効果を有するとともに、活性酸素の除去、保湿、炎症・抗アレルギー症・皮膚老化の予防等に効果を発揮して一層の美肌効果を得られ、高い抗アレルギー作用によりアレルギー性の皮膚炎等の治療や緩和効果も期待できる皮膚外用剤、および粘膜に作用して優れた抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用を発揮する粘膜外用剤を提供することをその目的とする。
本発明の皮膚外用剤は、アグリモニインを有効成分として含有することを要旨とする。
本発明の粘膜外用剤は、アグリモニインを有効成分として含有することを要旨とする。
本発明はアグリモニインを有効成分として含有する。アグリモニインは、高いチロシナーゼ阻害活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有し、美白用化粧品をはじめ、ニキビ、しみの防止、治療を目的とする皮膚外用剤として用いることができる。また、鼻粘膜等の粘膜に対する粘膜外用剤として用いることができる。
イチゴ葉抽出物の高速液体クロマトグラフィーの測定プロファイルを示す図。 Compound 1の推定構造を示す図。 Compound 2の推定構造を示す図。 Compound 3の推定構造を示す図。 イチゴ葉抽出物の高速液体クロマトグラフィーの測定プロファイルを示す図。
本発明の皮膚外用剤および粘膜外用剤は、アグリモニインを有効成分として含有することを特徴とする。
上記アグリモニインは、例えば、バラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎から抽出したエキスに含まれるものを用いることができる。
上記バラ科オランダイチゴ属植物としては、いわゆる食用として栽培されているオランダイチゴであれば各種の品種のものを用いることができる。例えば、とよのか、女峰(にょほう)、とちおとめ、章姫(あきひめ)、アイベリー、とちひめ、レッドパール、さちのか、あまおう、宝交早生、紅ほっぺ等各種の品種の植物を用いることができる。使用する植物としては、バラ科オランダイチゴ属に属するものである必要があるが、上述した品種に限定する趣旨ではない。
バラ科オランダイチゴ属植物のエキスを抽出するために使用する抽出溶媒としては、供する製品の使用目的、種類あるいは後に行う加工処理等を考慮した上で選択すれば良いが、上記バラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎のエキスは、水および/またはアルコールで抽出した抽出物とするのが好ましい。このようにすることにより、美肌に有効な成分を破壊することなく効果的に抽出できると考えられるからである。
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等を用いることができる。これらは単独でもしくは併せて用いることができる。
抽出に際しては、例えばバラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎を水で抽出した後メタノールで抽出するなど、複数段階で抽出を行ってもよいが、美白成分の含有率を高めるために、水とエタノールの混合液による抽出工程を含むようにすることが好ましい。
これらの溶媒で抽出したエキス含有溶液をそのまま皮膚外用剤として用いても良いし、必要に応じて濃縮、希釈、濾過、乾燥等の処理をして用いても良い。また、抽出後、アルコールを乾燥等により揮発させてしまって、美白成分の含有率が高い粉末を得るようにしてもよい。
上記バラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎は、食用果実として栽培されている植物であれば使用することができるが、果実収穫後の葉および/または茎を採取して使用するのが好ましい。従来廃棄していた果実収穫後の葉および/または茎を有効利用してリサイクル面から好ましいからである。
上記バラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎は、栽培されているものを採取してその状態のまま水および/またはアルコールで抽出することもできるが、採取後自然乾燥もしくは人工的に乾燥したのち、水および/またはアルコールで抽出することが好ましい。このようにすることにより、乾燥によって濃縮されたエキスを抽出することができると考えられるからである。また、乾燥することにより、葉および/または茎の状態が安定し、状態のばらつきが少なくなって抽出されるエキスの品質も安定化するとともに、葉および/または茎の保存性もよくなって取扱い性が格段に向上するからである。
また、抽出方法は、水のみまたはアルコールのみで抽出してもよいし、水とアルコールの混合液で抽出してもよい。また、加熱抽出することもできるが、常温で抽出するのが好ましい。加熱によるエキスの破壊が少なくなり、美肌に有効な成分が効果的に抽出されると考えられるからである。
本発明の皮膚外用剤および粘膜外用剤は、上記バラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎のエキスを適当な溶媒、基剤に含有させて使用してもよいし、上記エキスをエッセンスとして、化粧品や医薬部外品に添加してもよい。具体的には、美白料だけでなく、クレンジングクリーム、クレンジングローション、洗顔クリーム、石けん等の皮膚洗浄剤;保湿化粧水、柔軟化粧水、収斂化粧水等の整肌料;ミルキィローション、エモリエントミルク、バニシングクリーム等の保護料;マッサージクリーム、マッサージローション、フォームパック、ピールオフパック等の賦活料;入浴剤;パップ剤などに、美白成分として添加してもよい。いずれの場合も、経皮的に有効成分が皮膚内部に取り込まれて、シミ、ソバカスの退色、低減、消失に働くことができる。
最終製品におけるバラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎のエキスの含有割合は、最終製品の種類に応じて適宜選択されるが、化粧料の場合、1〜80質量%程度が好ましい。
本発明の皮膚外用剤および粘膜外用剤は、最終製品に応じて、抽出物の効果を損ねない範囲で、基剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤類、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート成分を配合することができる。
油性基剤としては、ミツロウ、カカオ油;カルナバロウ、高級脂肪酸、固形パラフィン、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の固形状油性原料;ワセリン、ラノリン等の半固形状油性原料;スクワラン、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油、ピーナッツ油、流動パラフィン、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸オクチルドデシル、シリコーン油などを用いることができる。
水性基剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸及びその塩、コラーゲン、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩等の保湿剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム等の増粘剤などが用いられる。
界面活性剤としては、イソステアリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル等の非イオン型界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム等のアニオン型界面活性剤;塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等のカチオン型界面活性剤;ショ糖脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、レシチン、コラーゲン等の天然型界面活性剤などが用いられる。
pH調整剤としては、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
この他、必要に応じて添加され得るものとして、パラジメチルアミノ安息香酸、ウロカニン酸エチル、ジイソプロピル桂皮酸エチル、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、サリチル酸トリエタノールアミン等の紫外線吸収剤;エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等の消炎剤;パルミチン酸レチノール等のビタミンA類、リボフラビン,ニコチン酸アミド等のビタミンB類、コレカルシフェロール等のビタミンD類、dl-α-トコフェロール等のビタミンE類などの抗酸化剤;エリソルビン酸ナトリウム、セージエキス、パラヒドロキシアニソール等の酸化防止剤;ローヤルゼリー、コレステロール誘導体各種アミノ酸等の賦活剤;γ-オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウム等の血行促進剤;チタンイエロー、カーサミン、ベニバナ等の色剤;その他の植物エキスが挙げられる。
以下、本発明の皮膚外用剤および粘膜外用剤の有効成分であるアグリモニインを含むものとして、バラ科オランダイチゴ属植物の葉および/または茎から抽出したエキスを用いた実施例について説明する。
実施例の機能評価は、以下の項目において行った。
美白効果をチロシナーゼ阻害活性、抗酸化作用をSOD様活性、保温効果をヒアルロニダーゼ阻害活性試験により評価した。
また、化粧品への適応性について、in vitroで行うチロシナーゼ阻害活性試験よりin vivoに近いマウス由来B16メラノーマ細胞を用いた細胞毒性試験およびメラニン合成抑制試験、ヒト新生児由来線維芽細胞NB1RGBを用いた細胞増殖活性試験によりそれぞれ評価した。
さらに、生活習慣病への機能評価として、α-グルコシダーゼ阻害活性試験ならびに脂質蓄積抑制活性試験により評価を行った。
〔1.オランダイチゴ葉部からの活性成分の抽出ならびに単離〕
福岡県産オランダイチゴ,品種(甘王)の果実収穫後の乾燥葉(87.6g)を50%エタノール(1.8l)で3日間常温にて抽出した。抽出液は吸引ろ過(桐山製作所,No.5C,150φm/m)を行った。抽出残渣は、再度同様の操作を行った。その後、抽出液を減圧濃縮し、先の抽出物とまとめ、オランダイチゴ葉50%エタノール抽出物(35.2g,収率40.2%)を得た。
得られた抽出物(20.4g)を水と酢酸エチルにて液液分配後、それぞれを減圧濃縮し、水画分(11.4g)と酢酸エチル画分(2.6g)を得た。
次に、水画分をDIAION HP-20 カラムクロマトグラフィー(三菱化学)を用いて分画を行い、水とメタノール混合溶媒を溶出液としてメタノールの含有率を変化させながら、水溶出画分(3.9g)、25%メタノール溶出画分(1.9g)、50%メタノール溶出画分(1.3g)、75%メタノール溶出画分(134.0mg)、メタノール溶出画分(33.9mg)の5画分に分画した。さらに、25%メタノール溶出画分(866.9 mg)をHPLCを用いて精製を行い、compound 1(44.8 mg,収率0.22%),compound 2(11.9 mg,収率0.06%),compound 3(34.8 mg,収率0.17%)をそれぞれ単離した(図1)。
ここで、HPLC分取条件は次の通りである。 HPLC (Shimadzu Class VP HPLC system)、カラム(Imtakt Unison US-C18 20×150 mm)、カラム温度(40℃)、移動相(0.05%ギ酸:18%アセトニトリル)、流速(10ml/min)、検出波長(210nm,254nm)。
〔2.有効成分の同定〕
得られた3種の化合物について、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量スペクトル(MS)を用いた構造解析を行い、compound 2をagrimoniin、compound 3をquercetin-3-ο-D-glucuronideと同定した。
2-1.compound 1
Compound 1の13C-NMRをcompound 3の13C-NMRと比較すると、67.3,71.7,77.6,82.4,101.7ppm以外のピークがほぼ、compound 3と一致した。また、ESI-MSMSより中性フラグメント303,176,132の部分構造が存在し、それらはcompound 1の13C-NMRがcompound 3の13C-NMRに類似していることを考慮に入れると、それぞれ、303(quercetin+H),176(glucuronic acid−H2O),132(糖−H2O)であると考えられる。この132(糖−H2O)は、5炭糖の分子量と一致する。
以上の事より、compound 1は、compound 3(quercetin-3-ο-D-glucuronide)にさらに5炭糖が結合した化合物であると推測した(図2)。5炭糖には、xylose、arabinose、1yxoseなど様々あるが、xyloseおよびarabinoseは配糖体として多くの植物体に含まれていることが報告されている(三橋博ら:天然物化学,南江堂,70(1989))ことから、このどちらかではないかと考えられる。また、quercetin 3-ο-xylosyl glucosideなど他の2糖をもつ化合物の多くがC2”に結合していることから、compound 1もquercetin-3-ο-D-glucuronideのC2”位に結合しているのではないかと思われる。
ESI-MS:ion at m/z=611.1803[M+H]+,479.1318,303.0862
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm):3.17-3.94(9H,m,sugar),4.75(1H,anomeric proton),5.59(1H,anomeric proton),6.17(1H,brs),6.36(1H,brs),6.86(1H,d,J=8.0 Hz),7.60(1H,s),7.62(1H,d,J=8.0 Hz).
13C-NMR(CD3OD)δ(ppm):67.3,71.7,73.4,75.5,77.6,77.7,78.4,82.4,95.4,100.6,101.7,106.0,106.5,116.8,118.0,123.8,124.3,135.6,146.8,150.5,159.1,159.2,163.8,166.5,172.9,180.0.
2-2.compound 2
compound 2は、詳細な構造解析および文献値(Takao Okuda et al.: Tannins of Rosaceous Medicinal Plants. I. Structures of Potentillin,Agrimonic Acids A and B, and Agrimoniin,a Dimeric Ellagitannnin. Chem. Pharm. Bull.,32(6), 2165-2173 (1984))との比較を行ない、アグリモニイン(agrimoniin)と同定した(図3)。
MALDI-TOFMS(Matrix : α-CHCA),Positive mode : m/z=1895[M+Na]+
1H-NMR(CD3COCD3)δ(ppm):3.69(1H,d,J=13.5Hz),3.79(1H,d,J=13.5Hz),4.50(1H,dd,J=6.0,10.0Hz),4.65(1H,dd,J=6.0,10.0Hz),5.11-5.59(8H,m),6.33(1H,s),6.34(1H,s),6.43(1H,s),6.54(1H,d,J=3.9Hz),6.56(1H,d,J=3.9 Hz),6.59(1H,s),6.60(1H,s),6.64(1H,s),6.65(1H,s),6.92(1H,d,J=1.9 Hz),7.31(1H,s),7.40(1H,d,J=1.9 Hz).
13C-NMR(CD3OD)δ(ppm):64.5,69.8,70.4,72.2,72.4,75.8,77.2,77.4,92.2,92.7,108.3,108.6,109.0,109.1,109.3,109.6,109.7,111.1,112.5,113.3,115.7,115.9,115.9,116.2,116.3,116.7,117.1,117.3,117.7,120.9,126.3,126.6,126.8,127.0,127.2,127.5,138.0,138.0,138.2,138.3,138.4,138.5,141.2,142.0,143.1,145.1,145.5,145.5,145.6,145.8,146.5,146.5,146.6,146.6,146.7,148.1,149.1,166.2,166.4,169.8,169.9,170.3,170.5,170.7,171.2,171.4.
2-3. compound 3
compound 3につき、FAB-MS、1H-NMR、13C-NMRの各スペクトルデータおよび文献値(K. R. Price et.al. :Composition and Content of Flavonol Glycosides in Green Beans and Their Fate During Processing. J. Agric. Food Chem., 46, 4898-4903 (1998))により、quercetin-3-ο-D-glucuronideと同定した(図4)。
FAB-MS(グリセロール)m/z=479[M+H]+
1H-NMR(CD3OD)δ(ppm):3.43-3.77(4H,m,C2”,C3”,C4”,C5”),5.33(1H,d,J=7.4Hz,C1”),6.19(1H,d,J=1.8Hz,C6),6.38(1H,d,J=1.8Hz,C8),6.84(1H,d,J=9.0Hz,C5’),7.62(2H,C2’C6’).
13C-NMR(CD3OD)δ(ppm):73.6(C4”),76.2(C2”),77.8(C5”),78.4(C3”),95.5(C8),100.7(C6),105.0(C1”),106.4(C10),116.8(C5’),118.0(C2’),123.6(C1’),124. 3 (C6’),136.2(C3),146.7(C3’),150.7(C4’),159.2(C9),159.8(C2),163.8(C5),166.8(C7),173.1(C6”),180.0(C4).
〔3.チロシナーゼ阻害活性、SOD様活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性〕
美白効果をチロシナーゼ阻害活性、抗酸化作用をSOD様活性、保温効果をヒアルロニダーゼ阻害活性試験により評価した。
3-1.チロシナーゼ阻害活性試験
チロシナーゼ阻害活性試験は、以下の方法で行った。
メラニンは、チロシンからL-β-(3,4-Dihydroxypheny1)alanine(L-DOPA)、DOPAキノンを経て生合成さる。この初期反応であるチロシンからL-DOPAは酸化還元酵素チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)により触媒される。 DOPAキノン以降の生合成反応は自動酸化により反応が進むため、メラニン生成を抑制し美白効果を得るためにはチロシナーゼ阻害することが重要になる。
試料溶液(100μl)と1/15 Mリン酸緩衝液(pH 6.8株式会社ヤトロン,400μl)を混合し、マッシュルーム由来チロシナーゼ懸濁液(30 unit,SIGMA,60μl)を加え、37℃の恒温槽で20分開静置した。その後、基質として2 mM L-DOPA(Wako,440μl)を加え37℃、5分間反応させた(S)。同時に試料溶液を添加しないもの(C)、チロシナーゼを添加しないもの(S-B1)、試料溶液、チロシナーゼともに添加しないもの(C-B1)として、反応生成物であるDOPAキノンの吸収波長475nm の吸光度を測定し、式1に従ってチロシナーゼ阻害率を算出した。サンプル、チロシナーゼおよびL-DOPAは1/15Mリン酸緩衝液(pH 6.8)に溶解させたものを用いた。なおC-BLは吸光度測定の時のブランク溶液(対照液)として使用した。
チロシナーゼ阻害率(%)=C−(S−S−B1)/C×100 (式1)
3-2.SOD様活性試験
SOD様活性試験は、以下の方法で行った。
SOD様活性は株式会社同仁化学研究所のSOD Assay Kit-WST(WST-1法)を用いて測定した。本試験系では、キサンチンとキサンチンオキシダーゼにより、活性酸素の一つであるスーパーオキシドラジカルが発生する。発生したスーパーオキシドラジカルは発色試薬であるテトラゾリウム塩(WST-1)と反応し、高水溶性ホルマザンであるWST-1ホルマザンを形成し黄色く発色する。反応溶液中にSOD様の物質が存在すると、WST-1ホルマザンの生成は抑制され、スーパーオキシドラジカルの一部はH2O2と02に不均一化されることから、WST-1ホルマザンに起因する吸光度を測定することでSOD様活性を評価する。
96 wells plate に試料溶液(20μl)と発色試薬(テトラゾリウム塩WST-1,キサンチン,200μl)を加えプレートミキサーで1分間擾絆し、さらにキサンチンオキシダーゼ(20μ)を加え、37℃で20分間酵素反応させた(S)。その後、マイクロプレートリーダーで450 nmにおける吸光度を測定した。同時に試料溶液を添加しないもの(C)、キサンチンオキシダーゼを添加しないもの(S-B1)、試料溶液、酵素溶液ともに添加しないもの(C-B1)とした。得られた吸光度を式2に従って算出し、SOD様活性とした。なお、試料は蒸留水に溶解した。
SOD様活性(%)={(C−C-B1)−(S−S-B1)}/C−C−B1×100 (式2)
3-3.ヒアルロニダーゼ阻害活性試験
ヒアルロニダーゼ阻害活性試験は、以下の方法で行った。
肌の保温成分として重要なヒアルロン酸は生体内酵素であるヒアルロニダーゼ(EC 3. 2.1.35)により、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンに分解される。ヒアルロン酸の分解を抑制し肌の保温効果を維持するためにはヒアルロニダーゼの働きを阻害することが重要になる。
試料溶液(200μl)とヒアルロニダーゼ(400 unit,SIGMA,100μl)を混合し37℃、20分間反応させた。ヒアルロニダーゼ活性化剤としてcompound 48/80(SIGMA,200μl)を加え37℃、20分間インキュベート後、基質としてヒアルロン酸ナトリウム溶液(500μl)加えて37℃、40分間インキュベートした。反応停止液として0.4N NaOH(200μl)を加え氷上に静置した。ホウ酸水溶液(200μl)加えて100℃で3分間処理した後、氷上へ移した。発色試薬であるp-ジメチルアミノベンズアルデヒド(p-DAB)溶液(Wako,600μl)に反応溶液(140μl)を加え、37℃で20分間反応させた後、585nmにおける吸光度を測定した(S)。同時に、試料溶液を添加しないもの(C)、酵素溶液を添加しないもの(S-B1)、試料溶液、酵素溶液ともに添加しないもの(C-B1)を設定した。ヒアルロニダーゼ阻害率は式3に従い算出した。なおC-BLは吸光度の測定ブランクとして使用した。なお、試料は0.1M酢酸緩衝液(pH 4.0)に溶解させたものを使用した。また、ヒアルロニダーゼ、compound 48/80 およびヒアルロン酸ナトリウムは0.1M酢酸緩衝液(pH 4.0)に溶解させ、それぞれの処理濃度を400unit/ml、O.5mg/ml、0.4mg/mlとしたものを用いた。0.4N NaOH は蒸留水に溶解させたものを用い、ホウ酸溶液はホウ酸4.95gを蒸留水50mlに溶解させ、1N NaOHにてpH 9.1に調整後、蒸留水を加えて100mlとしたものを用いた。また、p-DAB溶液はp-DAB(10g)、10N塩酸溶液(12.5ml)および酢酸(87.5ml)を混合し、使用直前に酢酸で10倍希釈した。
ヒアルロニダーゼ阻害率(S)=C−(S−S-B1)/C×100 (式3)
3-4.チロシナーゼ阻害活性、SOD様活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性の評価
オランダイチゴ葉50%エタノール抽出物は81.1%のチロシナーゼ阻害活性、97.0%のヒアルロニダーゼ阻害活性、99.5%のSOD様活性とすべての評価試験で、それぞれの活性指標物質と比べ高活性を示した。これまでにオランダイチゴ葉にはフラボノイドやタンニンが豊富に含まれていることが報告されており(山田修平ら:イチゴのポリフェノース成分,日本食品化学学会誌,5, 201-205 (1998))、このことから多くのSOD様活性物質を有することが予想されるが、本研究では試験方法が比較的容易なチロシナーゼ阻害活性を指標として活性化合物の精製を実施した(表1)。
単離・同定した化合物については、すべての評価試験を行った。なお、活性指標物質としてチロシナーゼ阻害活性にはβ-arbutin、SOD様活性およびヒアルロニダーゼ阻害活性には(+)-catechinを用いた(表2,3,4)。
その結果、単離した3種のポリフェノール成分は、SOD様活性を示した。また、加水分解性タンニンであるagrimoniinは、高いチロシナーゼ阻害活性およびヒアルロニダーゼ阻害活性を示した。
Figure 2010215516
Figure 2010215516
Figure 2010215516
Figure 2010215516
〔4.細胞毒性、メラニン合成抑制活性、細胞増殖活性〕
化粧品への適応性について、in vitroで行うチロシナーゼ阻害活性試験よりin vivoに近いマウス由来B16メラノーマ細胞を用いた細胞毒性試験およびメラニン合成抑制活性試験、ヒト新生児由来線維芽細胞NB1RGBを用いた細胞増殖活性試験によりそれぞれ評価した。
4-1.マウス由来B16メラノーマ細胞を用いた細胞毒性試験
メラニン合成抑制試験に用いる試料濃度を決定するため、事前に細胞毒性試験を実施した。細胞毒性試験は、下記の方法で行った。
96 wells plate (CORNING)に5% FBS-MEMで5×104cells/mlに調製したB16メラノーマ細胞の懸濁液を200μlずつ播種し、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した。24時間後、培地を取り除き、5% FBS-MEM(100μl)を添加した。その後、任意の濃度に調整した試料溶液(100μl)を加えた(Sample・S)。60-72時間培養後、培地を除去し、終濃度が0.25 mg/mlとなるように培地に溶解した3-(4, 5-Dimethylthiazol-2-y1)-2, 5-dipheny1-tetrazoliumbromide(MTT)溶液(200μl)を加え、37℃、5% CO2インキュベーター内で3時間培養後、MTT溶液を除去し、Dimethylsulfoxide(DMSO)(生化学用,Wako,100μl)を加えて色素を抽出した。抽出液は、マイクロプレートリーダーで570nm における吸光度を測定した。試料溶液を加えなかったものをControl(C)として、式5に従い阻害率を求めた。
阻害率(%)=100−(S/C×100) (式5)
4-2.マウス由来B16メラノーマ細胞を用いたメラニン合成抑制試験
メラニン合成抑制試験は、下記の方法で行った。
5% FBS-MEMで5×104cells/mlに調製したB16メラノーマ細胞の懸濁液を組織培養用シャーレ(φ60mm,NUNCLON)に5ml播種し、24時間、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した。その後、培地をメラニン合成促進物質であるテオフィリンを含む(培地100mlあたり50mMテオフィリン溶液(4ml)を添加)5% FBS-MEMと任意の濃度に調製した試料溶液を全量5mlとなるように交換し、60-72時間、37℃、5% CO2下で培養した。培養後、培地を捨て、PBS(-)250μl×2回で細胞を洗浄し残った培地を完全に取り除いた。そこへ0.85NKOH(500μl)を加え、細胞を融解することでメラニンの抽出を行い、抽出液を回収後、PBS(-)(500μl)で洗浄し、先の抽出液と合わせてメラニン抽出液(Sample・S)とし、吸光度で405nmにおける吸光度を測定し、メラニン量とした。試料溶液を添加しなかったものをControl(C)として比較することで、メラニン合成抑制率を算出した(式6)。
メラニン合成抑制率(%)=(C−S)/C×100 (式6)
4-3.ヒト新生児由来線維芽細胞NB1RGBを用いた細胞増殖活性試験
細胞増殖活性試験は、下記の方法で行った。
96 wells plate (CORNING)に5% FBS-MEMで2.5×104cells/mlに調製したNB1RGB細胞の懸濁液を200μlずつ播種し、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した。24時間後、96 wellsplateの培地を取り除き、0.5% FBS-MEM(100μl)を添加した。その後、任意の濃度に調整した試料溶液(100μl)を加えた(Sample・S)。5日間培養後、培地を除去し、終濃度が0.25mg/mlとなるように培地に溶解したMTT溶液(200μl)を加え、37℃、5% CO2インキュベータ一内で3時間培養後、MTT溶液を除去し、DMSO(100μl)を加えて色素を抽出した。抽出液は、マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定した。試料溶液を加えなかったものをControl(C)として、式7に従い阻害率を求めた。ポジティブコントロール(PC) には、5% FBS-MEMを用いた。
細胞増殖率(%)=S/C×100 (式7)
4-4.細胞毒性、メラニン合成抑制活性、細胞増殖活性の評価
細胞毒性試験を行った結果、イチゴ葉50%エタノール抽出物は3μg/ml、compound 1は1.5μM、agrimoniinは12.5μM、quercetin-3-ο-D-glucuronideは1.5μM、活性指標物質であるα-arbutinは1mMで細胞毒性を考慮した最大濃度であることが示された。そこで、メラニン合成抑制試験ではそれぞれの検定試料をこれらの処理量以下で検定した。その結果、agrimoniinが最も高いメラニン合成抑制活性を示した(表5)。
細胞増殖活性試験では50%エタノール抽出物および単離した化合物のすべてにおいて活性を示さなかった。
Figure 2010215516
〔5.α-グルコシダーゼ阻害活性、脂質蓄積抑制活性〕
5-1.a-グルコシダーゼ阻害活性試験
a-グルコシダーゼ阻害活性試験は、以下の方法で行った。
α-グルコシダーゼとは、α-1.4-グルコシド結合を加水分解し、α-glucoseを生成する酵素である。小腸内に存在するこの酵素によって、デンプンなどの多糖類が分解され、単糖となり血液中に吸収される。
本試験で、基質として用いたρ-nitropheny1-α-D-glucopyranoside(PNPG)は(α-グルコシダーゼにより分解され、グルコースとρ-ニトロフェノールを生成する。そこで、PNPGの反応生成物であるρ-ニトロフェノールの吸収波長における405nmにおける吸光度を測定し、ρ-ニトロフェノールの生成阻害からα-グルコシダーゼ阻害率を求めた。
市販ラット小腸アセトンパウダー(SIGMA社)0.1gに、0.1Mリン酸緩衝液(pH 6.8)3.0mlを加え、氷上でソニケーション(10秒×20回,SONIFIER 450,Beckman)を行った後、11000rpm、4℃、15分間遠心分離を行い、上清をリン酸緩衝液にて1.2μg/ml/minのタンパク量に酵素溶液を調製した。
任意の濃度に調製した試料溶液(50μl)に酵素溶液(100μl)を加え、5分間、37℃でプレインキュベートを行った後、基質として1.5 mM PNPG (100μl)を加え、15分間インキュベートを行った。この時、ブランクには同量のリン酸緩衝液を加えた。その後、100℃のヒートブロックで加熱失活させて酵素反応を停止させた。5分後ヒートブロックから取り出し、6000 rpm、4℃で5分間遠心分離を行った後、上清を405nmにおける吸光度を測定した。なお、検定試料はリン酸緩衝液(pH 6.8)で溶解し、試験に用いた。α-グルコシダーゼ阻害率は検定試料を処理しなかったものをcontrol(C)、検定試料を処理したものをsample(S)とし、式4に従い算出した。
α-グルコシダーゼ阻害率(%)=C-S/C×100 (式4)
5-2.マウス胎児由来3T3-L1前駆脂肪細胞を用いた脂質蓄積抑制試験
脂質蓄積抑制試験は、下記の方法で行った。
試験には、10% FBS-DMEM、分化誘導培地、成熟促進培地の3種を用いた。分化誘導培地は、10% FBS-DMEMに0.25μM dexamethasone(Dex)、0.5mM 3-isobuty1-1-methylxanthine、10μg/ml insulinを、成熟促進培地は、10% FBS-DMEMに10μg/ml insulinを加えたものを調製した。
24 wells plate (CORNING)に10% FBS-DMEMで3.0×104cells/mlに調製した3T3-L1細胞の懸濁液を1mlずつ播種し、37℃、5% CO2インキュベーターで2日間培養した。その後、脂肪細胞への分化を誘導するため培地を分化誘導培地に交換し、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した。2日後、任意の濃度に調製した試料溶液を含む成熟促進培地に交換し、37℃、5% CO2インキュベーターで6日間培養した。任意の濃度に調製した試料溶液を含む成熟促進培地は、2日間毎に培地交換を行った。
Oi1 Red O染色法による脂質蓄積抑制活性は株式会社プライマリーセルのLipid Assay Kitを用いて測定した。Oi1 Red Oは、親油性の赤色色素で脂肪細胎内に蓄積された脂肪を染色し、さらに有機溶媒を用いて色素を抽出することにより脂肪量を定量することができる。
Lipid Assay Kit(プライマリーセル)には、固定液、Oi1 Red O原液、抽出液が含まれる。0i1 Red O原液を6:4の割合で蒸留水と混和し、室温で10〜15分間静置し0.8μmシリンジフィルターにてろ過する。培養液を除去後、各we11に固定液(500μl)を添加し、室温で1時間固定した後、蒸留水500μlで洗浄した。洗浄後、Oi1 Red O液500μlを加え、室温にて静置する。15分後、Oi1 Red O液を除去し、水(500μl)にて3回以上着色が認められなくなるまで洗浄し、乾燥させ、観察した。次に、色素を抽出するため抽出液500μlを添加し、室温にて1時間プレートミキサーにて擾件後、540nmにおける吸光度を測定した。脂質蓄積抑制活性は式8に代入し算出した。
脂質蓄積抑制率(%)=(C−B)−(S−B)/(C−B)×100 (式8)
5-3.α-グルコシダーゼ阻害活性、脂質蓄積抑制活性の評価
イチゴ葉50%エタノール抽出物においてα-グルコシダーゼ阻害活性試験を行った結果、処理濃度1mg/mlで13.3%と活性を示さなかった。今回、50%エタノール抽出物が活性を示さなかったため単離した化合物を用いたα-グルコシダーゼ阻害活性試験は実施しなかった。
イチゴ葉50%エタノール抽出物において脂質蓄積抑制活性試験を行った結果、処理濃度25μg/mlで3T3-L1前駆脂肪細胞の継代数が6回目の時の試験では20.8%、7回目では33.9%と脂質蓄積抑制活性を示したが、8回目以降では、全く活性を示さなかった。
〔6.ポリフェノール成分の定量、含有量〕
ポリフェノール成分の定量と、活性成分の定量分析を行った。
6-1.ポリフェノール成分の定量
ポリフェノール成分の定量は、以下の方法で行った。
イチゴの葉部には、タンニンやフラボノイドに分類されるポリフェノール成分が多く含有されていることが報告されていることから、Folin-Denis法により定量した。
Folin-Denis法とは、ポリフェノールの還元性を利用してアルカリ性でリンタングステン、モリブデン酸を還元して生じる青色の色素を比色定量するものである。
タングステン酸ナトリウム(12.5g)、リンモリブテン酸(2.5g)、リン酸(6.25ml)、水(94ml)を2.5時間還流煮沸し、冷却後、水を加えて500ml とし、Folin試薬を調製した。任意の濃度に調製した検液(5ml)にFolin試薬(5ml)を加えてよく混和し、3分後に10%炭酸ナトリウム水溶液(5ml)を加え振とうした後、1時間室温に放置した。その後760nmの吸光度を測定した。試料のポリフェノール含有量は加水分解性タンニンである代表的な没食子酸を用いた検量線から求めた没食子酸当量とした。
6-2.活性成分の定量分析
活性成分の定量分析は、以下の方法で行った。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、イチゴ葉50%エタノール抽出物から単離・同定した化合物を定量した。分析条件は、HPLC(Shimadzu Class VP HPLC system)、カラム(Imtakt unison UK-C18 4.6×150mm)、カラム温度(40℃)、移動相(0.05%ギ酸:18%アセトニトリル)、流速(1ml/min)、検出波長(210nm,330nm)。
イチゴ葉50%エタノール抽出物より単離・同定した各化合物を用いて検量線を作成した。イチゴ葉50%エタノール抽出物をHPLCにて定量を行い、イチゴ葉50%エタノール抽出物1g中の含有量を算出した。
6-3.定量分析結果
イチゴ葉50%エタノール抽出物1g中に203mgのポリフェノールが含有されていることが認められた。また、単離した化合物を指標としたイチゴ葉の品質評価を行う目的で、HPLCによる定量を行った(図5)。その結果、イチゴ葉50%エタノール抽出物1g中にcompound1は21.9mg、agrimoniinは32.2mg、quercetin-3-ο-D-glucuronideは17.8mg含まれていた。
以上に述べた結果から、以下のことがわかる。
オランダイチゴ葉50%エタノール抽出物から単離同定したポリフェノールとして、アグリモニイン(agrimoniin)およびquercetin-3-ο-D-glucuronideが同定された。
これらポリフェノール成分は、抗酸化活性およびメラニン合成抑制活性を示した。また、加水分解性タンニンであるagrimoniinには高いチロシナーゼ阻害活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性が認められた。
イチゴ葉50%エタノール抽出物1g中には、203mgのポリフェノール成分が含有されていることが認められ、今回単離した化合物以外にも多数のポリフェノール成分が含まれている。ポリフェノール成分には、これまでに抗ウイルスや抗菌活性など様々な生理活性が報告されている。
これらの化合物は、いずれも水やアルコールに比較的溶けやすいことから、お茶や、健康飲料としての利用が可能である。また現状ではイチゴ葉は、果実を収穫した後の農業廃棄物であることから、廃棄物の有効利用という観点でも、本研究の成果は環境にやさしい技術開発の一助になる。
そして、本実施形態の皮膚外用剤は、経皮的に皮膚内部に取り込まれて、チロシナーゼの活性を阻害することにより、シミの原因となるメラニンの生成を抑制し、さらに皮膚のターンオーバーに伴って、すでにできたシミ、ソバカスを退色、低減を期待できるので、化粧料、入浴剤に配合される美白エッセンスとして有効である。また、本発明の皮膚外用剤は、チロシナーゼ阻害活性効果とともに、優れたSOD様活性値を示すことから活性酸素消去効果をも発揮する。さらに、本発明の皮膚外用剤は、チロシナーゼ阻害活性効果および活性酸素消去効果とともに、優れたヒアルロニダーゼ阻害率値を示すことからお肌の潤いを保つための保湿効果や、炎症・抗アレルギー症・皮膚老化の予防や抑制に効果を発揮するものであれば一層の美肌効果が得られる。また、優れた抗アレルギー作用によりアレルギー性の皮膚炎等の治療や緩和効果も期待できる。
また、本実施形態の粘膜外用剤は、鼻粘膜等の粘膜に対する粘膜外用剤として用いることができる。粘膜に作用して優れた抗アレルギー作用、抗ヒスタミン作用を発揮し、特に鼻粘膜に作用して鼻水やクシャミ等のいわゆる花粉症の症状を緩和することができる。
本発明の皮膚外用剤は、高いチロシナーゼ阻害活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有し、美白用化粧品をはじめ、ニキビ、しみの防止、治療を目的とする皮膚外用剤として用いることができる。また、鼻粘膜等の粘膜に対する粘膜外用剤として用いることができる。

Claims (2)

  1. アグリモニインを有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤。
  2. アグリモニインを有効成分として含有することを特徴とする粘膜外用剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017095585A (ja) * 2015-11-24 2017-06-01 靖志 鎌田 粉末洗浄剤

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