JP2010205571A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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幸彦 杉尾
Nobumitsu Aihara
伸光 相原
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Abstract

【課題】緑色の残光が抑制され、良好な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】YGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料により形成した緑色蛍光体層を備えるプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体材料が含有するYGdAl(BO:Tbが、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1.2倍以下の強度である。
【選択図】図4

Description

本発明は、真空紫外線によって励起され発光する蛍光体材料により形成された蛍光体層を備えるプラズマディスプレイパネルに関する。
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられるカラー表示デバイスにおいて、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、以下、「PDP」という。)は、大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。
一般に、PDPは、放電空間を挟んで互いに対向する二枚のガラス基板によって形成される。前面板と呼ばれるガラス基板には、複数の電極対が列方向に併設されて誘電体層で被覆され、この誘電体層上に酸化マグネシウムからなる保護層が蒸着法などによって形成される。他方の背面板ガラス基板側には、行電極対と列電極対とが交差する部分にマトリックス状に配列される放電セルが形成されており、セル内には蛍光体が塗布されている。
PDPは、いわゆる3原色(赤、緑、青)を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、PDPには3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に発光する蛍光体層が備えられ、この蛍光体層を構成する蛍光体粒子はPDPの放電セル内で発光する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している(特許文献1参照)。
特開2003−131580号公報
ところで、赤色蛍光体としては(Y,Gd)BO:Euが知られ、緑色蛍光体としてはZnSiO:Mnおよび(Y,Gd)BO:Tbが知られ、青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Euが知られている。
ここで、PDPはコントラスト及び応答速度において液晶に比べ優れた特性を持つ。PDPは技術の向上によりコントラストが向上し、近年では30000:1というものまで存在する。しかし、コントラストが向上してくると、これまで目立たなかった緑色の残光が目視で認識できるようになってしまう。
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、緑色の残光が抑制され、良好な画像表示が可能なPDPを提供することを目的とする。
上記目的を実現するために本発明のPDPは、YGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料により形成した緑色蛍光体層を備えるPDPであって、前記蛍光体材料が含有するYGdAl(BO:Tbが、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1.2倍以下の強度であるというものである。
また、同じく上記目的を実現するために本発明のPDPは、YGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料により形成した緑色蛍光体層を備えるPDPであって、
前記蛍光体材料が含有するYGdAl(BO:Tbが、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1/2以下の強度であるというものである。
本発明によれば、緑色の残光が抑制され、良好な画像表示が可能なPDPを提供することが可能となる。
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて、図を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
まず、本発明の一実施の形態によるPDPの構造について図1を用いて説明する。図1に示すように、PDPは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うように誘電体層5が形成され、誘電体層5上には保護層6が形成されている。
また、背面基板2上には絶縁体層7で覆われた複数のデータ電極8が設けられ、その絶縁体層7上には井桁状の隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に赤色、緑色、青色、それぞれに発光する蛍光体層10が設けられている。
そして、走査電極3および維持電極4とデータ電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、パネルの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
以上の構成において、本願発明は緑色の蛍光体層10に特徴があり、以下、詳細に説明する。
まず、蛍光体層10のうち緑色に発光する蛍光体層10を形成する蛍光体材料として、(Y,Gd)BO:Tbを含有する蛍光体材料が用いられる場合がある。しかしながらこのような場合、近年の、例えば30000:1という高コントラストの場合において、上記蛍光体材料自身の残光時間が11msと長く、且つ、発光色が緑のため人間にとって視感度が高いことから、動画表示で緑の尾引きが目立ってしまっていた。
そこで、残光時間の短い緑色蛍光体材料として、例えば、YGdAl(BO:Tbが用いられることがあるが、この蛍光体材料を用いてPDPを作製すると、PDPの寿命試験において、放電電圧(例えば前面板における面放電を起こす際の放電維持電圧)の上昇が大きく、電圧寿命が短いという不具合が発生することが、本発明者らの検討により明らかとなった。ここで、放電電圧の上昇は、放電強度を低下させ、放電ミスの増加、輝度寿命悪化の要因となる。
そして上述したような不具合は、本発明者らが行なった検討の結果、YGdAl(BO:TbによりPDP内に持ち込まれた不純ガスが、PDP点灯中に徐々にPDP内に放出されて、保護層であるMgOや他の色の蛍光体層と反応することにより、発生すると推測されることがわかった。
例えば、不純ガスがMgOと反応すると、MgOが結晶成長し、スパッタリングレートが上昇するため、放電中にMgOが削り取られてしまう。すると、MgOによる保護層からの二次電子放出が低下し、放電電圧が上昇してしまう。
ここで、PDPではその製造時において、PDP内部の不純ガスを除去する(脱ガスする)目的で行われる排気・ベーキング工程があるが、その際のベーキング温度は概ね500℃程度であり、蛍光体層を構成する蛍光体材料が保持する不純ガスを脱ガスする目的としては十分なベーキング温度とは言えない。
現に、本発明者らが昇温脱離ガス分析(TDS)法にて蛍光体材料を分析したところ、蛍光体材料からの発生ガス曲線は、600℃から1000℃の温度範囲でガス発生ピークを持つ蛍光体材料も存在し、このような高温部に存在するガス発生ピークの基となる吸着不純ガスは、前述のようなベーキング温度では十分には除去できない。
そこで本発明の一実施の形態によるPDPにおいては、緑色蛍光体層の形成に、短残光であるYGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料を用い、且つ、YGdAl(BO:Tbに存在するHOやCOやCOの総量を一定範囲以下、具体的には、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1.2倍以下の強度、および/または、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1/2以下の強度、とし、このことにより、PDP内に持ち込まれる不純ガス量を低減しているので、もって、短残光化、且つ、放電電圧の低電圧化、安定放電、電圧寿命の改善、すなわち良好な画像表示が実現可能となる。
以下、詳細に説明する。
(蛍光体層)
本発明の一実施の形態によるPDPは、YGdAl(BO:Tbという組成式で表される材料を含有する蛍光体材料により形成された緑色に発光する蛍光体層(緑色蛍光体層)を備える。
図2に示すように、YGdAl(BO:Tb蛍光体は、PDPで一般に使用されている緑色に発光する蛍光体材料である、ZnSiO:Mnや(Y,Gd)BO:Tbに比べ、残光値が短いという特徴があり、PDPの応答速度を向上させることができる。
また、輝度寿命に関しても、ZnSiO:Mnに比べ、真空紫外線による輝度低下が生じず、PDPの寿命を向上させることができる。
さらに、帯電性においても、ZnSiO:Mnや(Y,Gd)BO:Euに比べ、プラス側に位置しており、放電電圧が低下するため、PDPの放電特性を向上させることができる。
(ガス分析の方法)
ところで、前述したように、YGdAl(BO:Tbを用いると、(Y,Gd)BO:Tbを使用した場合に比べ、パネルの寿命試験において、放電電圧の変動が大きく、緑の輝度寿命が悪化するという結果が得られた。本発明者らの検討により、YGdAl(BO:Tbは(Y,Gd)BO:Tbに比べ、PDP内に持ち込む不純ガスが多いのではないかという推測がなされた。そこで確認のため、昇温脱離ガス分析にて、(Y,Gd)BO:TbおよびYGdAl(BO:Tbのガス分析を行った。
ガス分析用のサンプルは、実際に用いる蛍光体と有機バインダ樹脂を含有したビヒクルを混合して蛍光体ペーストを作成し、乾燥し焼成したサンプルを用いた。分析したサンプルの量は30mgである。また、昇温は、1000℃まで行った。
(蛍光体材料の製造方法)
緑色蛍光体材料であるYGdAl(BO:Tbは以下のようにして得た。
すなわち、まず、上記蛍光体材料を製造するための原料として、酸化イットリア物などのイットリア化合物、酸化ガドリニウム化合物、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物、および酸化硼素などの硼素化合物を用意し、これら各原料を上述した組成式に従って、秤量、採取し、湿式もしくは乾式によって十分混合する。
引き続いて、この混合物をアルミナ、炭素、あるいは白金からなる「るつぼ」等の耐熱容器内に充填し、400℃〜600℃の温度で予備焼成を行う。その後、大気中で900℃〜1200℃の温度で3〜20時間の本焼成を行い、得られた焼成物に対し、粉砕、洗浄、乾燥、および篩別処理を施すことで、YGdAl(BO:Tbの蛍光体材料が得られる。
ここで、本発明の一実施の形態によるPDPが備える緑色蛍光体層を形成する緑色蛍光体材料が含有するYGdAl(BO:Tbとしては、上述のようにして得られたYGdAl(BO:Tbに対し、炭化系ガスを低減するための以下の処理(ガス放出量低減処理)を行なっている。
すなわち、一旦得られたYGdAl(BO:Tbを再び、900℃〜1200℃の温度で焼成し(再燃焼)、その後、同様に、粉砕、洗浄、乾燥、および篩別の処理を行うというものである。
このような処理を行なった後のYGdAl(BO:Tbからは炭化系ガスの放出量が低減する。
以下に、YGdAl(BO:Tbについて、上述したようなガス放出量低減処理を一切行なわなかった場合と、上述したガス放出量低減処理を行なった場合での比較を、図を用いて示す。なお、図中においては、YGdAl(BO:TbはYABと表記している。
まず、図3は、横軸に放出ガスの種類を、縦軸に1000℃まで昇温速度30℃/minで加熱した場合のガス圧力(Pa)と昇温時間の積、すなわちガスの総量として、ガス放出量低減処理の有無による、YGdAl(BO:Tbからのガス放出量の違いを示している。
図3から、ガス放出量低減の処理を行なうことで、H、HO、CO、COのいずれのガスの放出量も低減されていることがわかる。
図4は、COに着目した、YAB(YGdAl(BO:Tb)からの放出量の、処理ありとなしとでの比較を示す図である。横軸は加熱温度、縦軸はCOガスの圧力を示している。ガス低減処理なしのYGdAl(BO:Tb蛍光体に比べ、ガス低減処理を行なったYGdAl(BO:Tbは、600℃〜1000℃の温度領域でのガス放出量が大幅に減っており、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値は、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1.2倍以下の強度となっていることが確認できる。
図5は、COに着目した、YAB(YGdAl(BO:Tb)からの放出量の、処理ありとなしとでの比較を示す図である。ガス低減処理なしのYGdAl(BO:Tbに比べ、ガス低減処理を行ったYGdAl(BO:Tbは、600℃〜1000℃の温度領域でのガス放出量が大幅に減っており、600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値は、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1/2以下の強度となっていることが確認できる。
(パネル化しての性能の評価)
上述したような、ガス放出量低減処理の有無を異ならせたYAB(YGdAl(BO:Tb)を用いてPDPをそれぞれ作製し、その輝度変化率を測定した。
なお、緑色蛍光体材料としては、YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理の有無に関わらず、ZnSiO:Mn:YGdAl(BO:Tb=3:7の割合に混合したものを使用した。
図6に示すように、ガス放出量低減処理をしていないYABを含有する蛍光体材料により形成した蛍光体層を備えるPDPにおいては、緑輝度の維持率が加速時間100〔a.u.〕において−7%程度劣化するのに対し、ガス放出量低減処理を行ったYAB蛍光体を含有する蛍光体材料により形成した蛍光体層を備えるPDPでは、緑輝度の維持率が加速時間100〔a.u.〕において−2%程度と、緑輝度の劣化に対し、大幅に改善されることが確認できる。
また、図7に示すように、ガス放出量低減処理をしていないYABを含有する蛍光体材料により形成した蛍光体層を備えるPDPにおいては、緑色蛍光体の電圧変化率が加速時間100〔a.u.〕において11〔a.u.〕程度上昇するのに対し、ガス放出量低減処理を行ったYAB蛍光体を含有する蛍光体材料により形成した蛍光体層を備えるPDPでは、緑色蛍光体の電圧変動率が加速時間100〔a.u.〕において3〔a.u.〕程度の上昇と、電圧ドリフトに対する抑制効果が大幅に向上していることが確認できる。
以上、上述した本発明の一実施の形態によるPDPによれば、緑色蛍光体層は、ガス放出量低減処理を行なった、短残光なYGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料を用いて形成されるので、短残光化、且つ、放電電圧の低電圧化、安定放電、電圧寿命が改善された、すなわち良好な画像表示が可能なPDPを提供することができる。
なお、YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理としては、上述した処理以外に、例えば、再焼成、粉砕は行なわずに、洗浄、乾燥のみの処理を行うというものであっても、炭化系ガスの放出量を低減させることができる。
また、上述したガス放出量低減処理における洗浄として、純水を用いた湿式洗浄を用い、この湿式洗浄工程中にイオン系分散剤を添加することで、さらに炭化系ガスの放出量を低減することができる。
また上述したように、ガス放出量低減処理を行なったYGdAl(BO:Tbに対し、例えば、ZnSiO:Mnとを混合した蛍光体材料により緑色蛍光体層を形成したPDPであっても、本発明の効果は同様に得られ、その結果、短残光で且つ色再現性の良い良好な画像表示が可能なPDPを実現することができる。
以上のように本発明は、大画面、高精細のPDPを提供する上で有用な発明である。
本発明の一実施の形態によるPDPの要部構造を示す断面斜視図 緑色蛍光体材料の残光値を示す図 YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理の有無によるガス放出量の違いを示す図 YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理の有無によるCOガス放出量の違いを示す図 YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理の有無によるCOガス放出量の違いを示す図 YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理の有無によるPDPでの緑輝度劣化の違いを示す図 YGdAl(BO:Tbに対するガス放出量低減処理の有無によるPDPでの電圧ドリフトの違いを示す図
1 前面基板
2 背面基板
3 走査電極
4 維持電極
5 誘電体層
6 保護層
7 誘電体層
8 データ電極
9 隔壁
10 蛍光体層

Claims (2)

  1. YGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料により形成した緑色蛍光体層を備えるプラズマディスプレイパネルであって、
    前記蛍光体材料が含有するYGdAl(BO:Tbが、
    600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1.2倍以下の強度であるプラズマディスプレイパネル。
  2. YGdAl(BO:Tbを含有する蛍光体材料により形成した緑色蛍光体層を備えるプラズマディスプレイパネルであって、
    前記蛍光体材料が含有するYGdAl(BO:Tbが、
    600℃〜1000℃の温度範囲内でのCOガスの発生量のピーク最大値が、600℃以下の温度範囲内でのCOガス発生量のピーク最大値に比べ、1/2以下の強度であるプラズマディスプレイパネル。
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