しかしながら、このような従来の製塩方法及びその方法により得られる粒状塩にあっては、粒状塩のミネラル含有量を多くさせることはできるものの、得られた粒状塩の味を調整することが出来ないという問題があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、ミネラルの含有量が多く、所要の味を呈する粒状塩及びその製塩方法を提供する。
本発明者らは、海水中のミネラルは塩化ナトリウムの結晶の表面に析出するので、結晶の粒径を相対的に小さくすれば、単位質量当たりの表面積が相対的に広くなり、従って結晶の単位質量当たりに含有されるミネラルの割合を増大させることができるということに着目して鋭意検討した結果、蒸発槽の内表面が適宜の粗さである場合、また、蒸発槽に貯留する鹹水を適宜深さになした場合に、得られる結晶において、相対的に小さい粒径の割合を増大させることができるという知見を得て本発明を完成するに至った。
すなわち、(1)本発明に係る粒状塩は、粒径0.25mm以上2mm以下の粒子からなり、当該粒子の結晶表面に、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄のうち少なくとも1種類が、粒状塩の結晶全重量に対して4質量%以上22質量%以下存在することを特徴とするものである。
本発明の粒状塩は、粒径0.25mm以上2mm以下の粒子からなり、当該粒子の結晶表面に、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄のうち少なくとも1種類が、粒状塩の結晶全重量に対して4質量%以上22質量%以下存在する。
このように、粒径0.25mm以上2mm以下の粒子からなる粒状塩の結晶表面に、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄のうち少なくとも1種類が、粒状塩の結晶全重量に対して4質量%以上22質量%以下存在することで、含有ミネラル分が増し、複数の当該ミネラル分が引き立てあって各種の味を呈することとなり、豊かな滋味をもたらすことができると考えられる。
(2)また、本発明に係る粒状塩を得る製塩方法は、海水を原料とする原料水を加熱して適宜密度まで一次濃縮して得た一次濃縮液を塩晶析用槽内に貯留し、これを加熱することによって適宜密度まで二次濃縮して粒状塩を晶析させる製塩方法であって、内面を適宜の表面粗さになした塩晶析用槽に一次濃縮液を貯留して二次濃縮を実施し、又は/及び塩晶析用槽に適宜の深さになるように一次濃縮液を貯留して二次濃縮を実施し、二次濃縮で得られた塩から所要粒径以下の結晶の塩を分取することを特徴とする。
本発明の製塩方法にあっては、海水を原料とする原料水を加熱して適宜密度まで一次濃縮して得た一次濃縮液を塩晶析用槽内に貯留し、これを加熱することによって適宜密度まで二次濃縮して粒状塩を晶析させる製塩方法であって、内面を適宜の表面粗さになした塩晶析用槽に一次濃縮液を貯留して二次濃縮を実施し、又は/及び塩晶析用槽に適宜の深さになるように一次濃縮液を貯留して二次濃縮を実施し、二次濃縮で得られた塩から所要粒径以下の結晶の塩を分取する。
内面を適宜の表面粗さになした塩晶析用槽に一次濃縮液を貯留して二次濃縮を実施した場合、当該塩晶析用槽の内面の表面粗さを構成する複数の微細な凹凸が結晶の核を発生させる核発生サイトとして機能するため、各核発生サイトから微細な結晶粒子が発生する割合が向上する。これによって、晶析した塩には直径が1mm以下といった粒径が相対的に小さい結晶の含有率が増大するものと考えられる。
また、塩晶析用槽に適宜の深さになるように一次濃縮液を貯留して二次濃縮を実施した場合、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液の深さが深くなるに連れて晶析速度が遅くなり、それによって晶析される結晶の粒径が漸次小さくなる。従って、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液が所要深さ以上である場合、直径が1mm以下といった粒径が相対的に小さい結晶の含有率が増大させることができる。
ここで、粒径が相対的に小さい結晶にあっては、それより粒径が大きい結晶に比べて、Mg及びCaの含有率が高い。これらMg及びCaにあっては、塩化マグネシウム及び硫酸カルシウムを構成して甘味を呈するので、所要の味を呈することができる。
(3)また、本発明に係る製塩方法は必要に応じて、前記塩晶析用槽の内面が、0.1μm以上0.4μm以下の平均表面粗さを有することを特徴とする。
本発明の粒状塩にあっては、前記塩晶析用槽の内面が、0.1μm以上0.4μm以下の平均表面粗さを有する。
本発明者らが鋭意検討した結果、塩晶析用槽の内表面の平均表面粗さが0.1μm以上0.4μm以下である場合、直径が1mm以下といった粒径が相対的に小さい結晶の含有率が増大させることができた。
一方、平均表面粗さが0.1μm未満の塩晶析用槽を用いた場合、目的とする粒径の結晶の含有率を増大させる作用が働かなかった。
また、平均表面粗さが0.4μmを超えた塩晶析用槽を用いた場合、晶析した塩が塩晶析用槽の内表面に固着してしまうという不都合があった。
(4)更に、本発明に係る製塩方法は必要に応じて、前記塩晶析用槽内に一次濃縮液を、塩晶析用槽の深さ寸法の19%以上50%以下の深さになるように貯留して前記二次濃縮を実施することを特徴とする。
本発明の製塩方法にあっては、塩晶析用槽内に一次濃縮液を、塩晶析用槽の深さ寸法の19%以上50%以下の深さになるように貯留して二次濃縮を実施する。
本発明者らが鋭意検討した結果、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液が所要深さ以上、すなわち塩晶析用槽の深さ寸法の19%以上である場合、直径が1mm以下といった所要粒径の結晶の含有率を増大させることができた。
一方、一次濃縮液の導入量が塩晶析用槽の深さ寸法の50%を超えた場合、二次濃縮が終了する前に、晶析した塩の結晶が塩晶析用槽の上縁まで延出することがあり、この場合、延出した結晶の毛細管現象により二次濃縮液が塩晶析用槽の外へ漏出してしまうという不都合が生じた。
(5)一方、本発明に係る製塩方法は必要に応じて、二次濃縮で得られた塩から直径が1mm以下の結晶の塩を分取することを特徴とする。
本発明の製塩方法にあっては、二次濃縮で得られた塩から直径が1mm以下の結晶の塩を分取する。
直径が1mm以下の結晶の塩にあっては、それより粒径が大きい結晶の塩に比べて、Mg及びCaの含有率が高い。これらMg及びCaにあっては、塩化マグネシウム及び硫酸カルシウムを構成して甘味を呈するので、所要の味を呈することができる。
(6)ところで、本発明に係る製塩方法は必要に応じて、前記一次濃縮液は、原料水の密度が1.12以上1.22以下の適宜の値に達するまで一次濃縮を実施し、この一次濃縮にて晶析した結晶を除去することによって得ることを特徴とする。
本発明の製塩方法にあっては、一次濃縮液は、原料水の密度が1.12以上1.22以下の適宜の値に達するまで一次濃縮を実施し、この一次濃縮にて晶析した結晶を除去することによって得ることを特徴とする。
原料水の比重が1.12に達すると硫酸カルシウムが晶析し始め、原料水の比重が1.22に達すると硫酸カルシウムの晶析が停止する。
かかる硫酸カルシウムは槽の内表面に固着し易い上に、硫酸カルシウムは熱伝導率が非常に低いため、槽の内表面に硫酸カルシウムが付着した場合、加熱による原料水の一次濃縮効率が極端に低下するため、固着した硫酸カルシウムを槽から除去する必要があるが、そのような除去作業には多くの労力を要する上に、完全に除去するのは困難である。
このような一次濃縮を実施せずに二次濃縮を行った場合、前同様の現象が生じるが、このように一次濃縮によって適宜量の硫酸カルシウムを予め晶析・除去しておくことによって、二次濃縮で用いる塩晶析用槽の内表面に硫酸カルシウムが固着するのを防止することができる。これによって二次濃縮を効率的に実施することができる。
一方、硫酸カルシウムは淡い甘みを呈する成分であり、一次濃縮を終了するときの比重を1.12から1.22までの適宜の値に設定することによって、ユーザの嗜好に応じた量の硫酸カルシウムが一次濃縮液中に残存するようにすることができる。
(7)また、本発明に係る製塩方法は必要に応じて、前記二次濃縮は、前記一次濃縮液の密度が1.24以上1.29以下の適宜の値に達するまで実施することを特徴とする。
本発明の製塩方法にあっては、二次濃縮は、一次濃縮液の密度が1.24以上1.29以下の適宜の値に達するまで実施する。
一次濃縮液の比重が1.24以上になると塩化ナトリウムが晶析するが、このとき晶析した塩化ナトリウムの結晶の表面に、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、及び硫酸マグネシウム等のミネラルが晶析する。ここで、硫酸カルシウムは淡い甘味を呈し、また、塩化マグネシウムは甘みのある旨味を呈し、塩化カリウムは爽やかな酸味を呈し、硫酸マグネシウムは深い苦味を呈する。従って、最終製品がユーザの嗜好に応じた呈味バランスとなるように予め設定した比重値に達したときに二次濃縮を停止する。
(7)一方、本発明に係る製塩方法は必要に応じて、篩い分けによって所要粒径以下の結晶の塩を分取することを特徴とする。
本発明の製塩方法にあっては、篩い分けによって所要粒径以下の結晶の塩を分取する。
このように、篩い分けによって所要粒径以下の結晶の塩を分取するため、簡単な設備で実施することができ、設備コストを廉価にすることができる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る製塩の手順を示すフローチャートである。
図1に示したように、原料水を調製する(ステップS1)。
ここで原料水としては、海水、海水を濃縮した鹹水、又は海水及び鹹水の混合水を用いることができる。また、鹹水は、逆浸透膜といった膜を用いて海水を濃縮する膜濃縮法、減圧下で海水を噴霧して水分を蒸発させる真空フラッシュ蒸発法、散水された海水が竹又はネットの表面上を流下する間に水分を蒸発させる流下法、塩田に導入した海水中の水分を天日によって蒸発させる方法等、種々の方法によって得られたものを用いることができる。かかる原料水は必要に応じて、混入した夾雑物を濾別しておく。また、必要に応じて原料水のpHを中性付近に調整しておく。
次に、かかる原料水を蒸発槽内に適宜量貯留し(ステップS2)、天日又はヒータによって蒸発槽内の原料水を加熱して原料水から水分を蒸発させる一次濃縮を開始し(ステップS3)、一次濃縮液の比重が1.12から1.22までの適宜の値に達したと判断する(ステップS4)まで一次濃縮を実施する。そして、適宜の密度に達した場合、一次濃縮を終了し(ステップS5)、晶析した硫酸カルシウム(CaSO4)と一次濃縮液とを固液分離する(ステップS6)。
ここで、天日によって原料水を加熱するとは、太陽熱によって原料水に熱を加えることをいい、屋外及び屋内の別を問わない。従って、ビニールハウス内に蒸発槽を設置した場合、太陽熱を効率的に利用することができるため好適である。
ところで、原料水が濃縮されて比重が1.12に達すると、硫酸カルシウムが晶析し始め、原料水の比重が1.22に達すると、硫酸カルシウムの晶析が停止する。
一方、かかる硫酸カルシウムは濃縮槽の内表面に固着し易い上に、硫酸カルシウムは熱伝導率が非常に低いため、濃縮槽の内表面に硫酸カルシウムが付着した場合、加熱による原料水の濃縮効率が極端に低下するため、固着した硫酸カルシウムを濃縮槽から除去する必要があるが、そのような除去作業には多くの労力を要する上に、完全に除去するのは困難であった。
しかしながら、一次濃縮を30℃程度以下の適宜温度で実施した場合、硫酸カルシウムは針状結晶として晶析するため、濃縮槽の内表面に固着することが防止され、濃縮槽から外へ容易に除去することができる。
かかる一次濃縮を実施せずに後述する二次濃縮を行った場合、前同様の現象が生じるが、このように一次濃縮によって適宜量の硫酸カルシウムを予め晶析・除去しておくことによって、二次濃縮で用いる塩晶析用槽の内表面に硫酸カルシウムが固着するのを防止することができる。これによって二次濃縮を効率的に実施することができる。
ところで、硫酸カルシウムは淡い甘みを呈する成分であり、ユーザの嗜好に応じた量が一次濃縮液中に残存するように、一次濃縮を終了するときの一次濃縮液の比重を1.12から1.22までの適宜の値に設定する。
ここで、晶析した硫酸カルシウムと濃縮液との固液分離は、硫酸カルシウムを濾別することによって行うことができ、また、硫酸カルシウムを沈下させ、上清の濃縮液を別の容器へ排出させることによっても行うことができる。更に、遠心分離によってもよい。
次に、このように分離して得られた一次濃縮液を塩晶析用槽内に適宜量貯留し(ステップS10)、天日又はヒータによって蒸発槽内の原料水を60℃未満の適宜温度に加熱して一次濃縮液から水分を蒸発させる二次濃縮を開始し(ステップS11)、二次濃縮液の比重が1.24から1.29までの適宜の値に達したと判断する(ステップS12)まで二次濃縮を実施し、適宜の密度に達したと判断した場合、二次濃縮を終了する(ステップS13)。
ここで、塩晶析用槽としては、0.1μm以上0.4μm以下の平均表面粗さを、その内面の一次濃縮液の接触領域に有するものを用いる。
このような平均表面粗さの内面を備える塩晶析用槽を用いた場合、当該内表面に形成された複数の微細な凹凸が核発生サイトとして機能するため、晶析した塩には直径が1mm以下といった粒径が相対的に小さい結晶の含有率が増大するものと考えられる。
一方、0.1μm未満、又は0.4μmを超える平均表面粗さになした内面を備える塩晶析用槽を用いた場合はいずれも、前述した如き所要粒径の結晶の含有量が増大する効果を奏せず、特に後者の場合は、晶析した結晶が塩晶析用槽の疵付け処理された当該疵の中に固着してしまい、結晶の回収が困難になるという問題も生じる。
かかる塩晶析用槽の材質としては樹脂材、金属材、金属酸化物材又は陶磁器材等、種々のものを使用することができる。例えば、ポリスチロール樹脂、硬質アルミニウムを用いることができる。
ところで、かかる二次濃縮を行う場合、前述したように二次濃縮液の温度を60℃未満の適宜温度に保持する。二次濃縮時の液温が60℃以上である場合、硫酸カルシウムは1/2水和物として晶析するため、得られる製品の質を低下させてしまう。しかしながら、二次濃縮時の液温が60℃未満である場合、硫酸カルシウムは2水和物として晶析するため、かかる製品の質の低下が防止される。
一方、前述したように二次濃縮液の比重が1.24以上になると塩化ナトリウムが晶析するが、このとき晶析した塩化ナトリウムの結晶の表面に、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、及び硫酸マグネシウム等のミネラルが晶析する。ここで、前述した如く硫酸カルシウムは淡い甘味を呈し、また、塩化マグネシウムは甘みのある旨味を呈し、塩化カリウムは爽やかな酸味を呈し、硫酸マグネシウムは深い苦味を呈する。従って、最終製品がユーザの嗜好に応じた呈味バランスとなるように予め設定した比重値に達したときに二次濃縮を停止する。
このようにして塩の晶析が終了すると、残留液の排出、濾過又は遠心分離といった固液分離を行うことによって、晶析させた塩を回収する(ステップS20)。
そして、天火、加熱又は通風等の乾燥操作を行うことによって回収した塩を所要の水分含量(例えば、5質量%程度)になるまで乾燥させた(ステップS21)後、篩分けを行って、直径が1mm以下といった所要粒径の結晶の塩(製品)を分取する(ステップS22)。
二次濃縮液中のミネラルは塩化ナトリウムの結晶の表面に析出するので、晶析される結晶の粒径が相対的に小さいと、結晶の単位質量当たりの表面積が相対的に広いため、当該結晶の単位質量当たりに含有されるミネラルの割合が相対的に高い。直径が1mm以下の粒径の塩にあっては、結晶の単位質量当たりの表面積が十分に広く、ミネラルが析出される割合が高いため、呈味に対して大きく作用する。しかも、後述するように直径が1mm以下の粒径の塩にあっては、硫酸カルシウム及び塩化マグネシウムといった甘味を呈するミネラル成分が析出する率が高いので、甘味が増大した所要の味を呈する塩を得ることができる。
一方、以上説明してきた製塩方法によって、前述したように直径が1mm以下といった粒径が小さい結晶の塩を高効率に製造することができる。
従って、本製塩方法にあっては、ミネラルの含有量が多く、甘味が増大した所要の味を呈する塩(製品)を効率的に製造することができる。
このような塩にあっては、従来の天日製の塩より甘味が相対的に強いので、例えば、肉炒め、ステーキ、シチュー等の肉料理に用いると味が良く合うため好適である。
なお、本実施の形態にあっては、一次濃縮に用いる濃縮槽と二次濃縮に用いる塩晶析用槽とを異なる容器にて構成したが、本発明はこれに限らず、塩晶析用槽を用いて一次濃縮も行う構成になしてもよい。これによって製塩設備を単純化して、設備コストを低減することができる。
一方、一次濃縮に用いる濃縮槽と二次濃縮に用いる塩晶析用槽とを異なる容器にて構成した場合、塩晶析用槽の所要の表面粗さを有する内表面に硫酸カルシウムが固着する虞が殆ど無いため、硫酸カルシウムの除去作業が不要となり、また塩晶析用槽の寿命を長くすることができる。
ところで、ステップS22で分取した粒径の結晶以外の結晶は、従来の天日製の塩と同等のミネラルを含有するものの、前述した如く分取した塩と比べて、甘味が相対的に弱く、塩辛さが相対的に強いが、例えば、野菜サラダ、野菜の煮物等の野菜料理に用いると味が良く合うため、廃棄することなく、適宜の料理に使用することができる。
(第2の実施形態)
図2及び図3は、第2の実施形態に係る製塩の手順を示すフローチャートであり、二次濃縮の塩晶析用槽における鹹水の深さを調整することによって、粒径が相対的に小さい結晶の晶析率を増大させるようになしてある。
図2に示した如く、前述した図1のステップS1で説明した操作と同様の操作を行って原料水を調製する(ステップS31)。この原料水を適宜量だけ濃縮槽に貯留して(ステップS32)、天日又はヒータによって蒸発槽内の原料水を加熱して原料水から水分を蒸発させる一次濃縮を開始し(ステップS33)、原料水の比重が1.12から1.22までの適宜の値に達したと判断する(ステップS34)まで一次濃縮を実施する。そして、適宜の密度に達した場合、一次濃縮を終了し(ステップS35)、晶析した硫酸カルシウム(CaSO4)と一次濃縮液とを分離する(ステップS36)。
次に、分離して得た一次濃縮液の塩晶析用槽内への貯留を開始する(ステップS40)。一次濃縮液の深さが塩晶析用槽の深さ寸法に対して所定の割合に達したと判断する(ステップS41)まで一次濃縮液の貯留を実行し、所定の割合に達した場合、一次濃縮液の貯留を終了する(ステップS42)。
天日又はヒータによって蒸発槽内の一次濃縮液を60℃未満の適宜温度に加熱して一次濃縮液から水分を蒸発させる二次濃縮を開始し(ステップS43)、二次濃縮液の比重が1.24から1.29までの適宜の値に達したと判断する(ステップS44)まで二次濃縮を実施する。そして、所定の比重に達した場合、二次濃縮を終了する(ステップS45)。
ここで、塩晶析用槽としては、所要の深さを有するものであれば、内表面が平坦なものであっても用いることができる。
塩晶析用槽の深さとしては、2cm程度以上10cm程度以下とすることができる。塩晶析用槽の深さが2cm程度より浅い場合は、二次濃縮が終了する前に、塩晶析用槽の内面に結晶が塩晶析用槽の上縁まで延出し、延出した結晶の毛細管現象によって、塩晶析用槽内に貯留させた一次濃縮液が塩晶析用槽の外へ漏出してしまうという不都合が生じる。また、塩晶析用槽の深さが10cm程度より深い場合は、二次濃縮に長時間を要し易く、所要の粒径の塩の結晶を得ることができないという不都合が生じるからである。
一方、塩晶析用槽として前同様、0.1μm以上0.4μm以下の平均表面粗さを、二次濃縮液の接触領域に有するものを用いた場合、この平均表面粗さによる前述した如き効果も生じるため好適である。
かかる塩晶析用槽に一次濃縮液を、塩晶析用槽の深さ寸法の19%以上50%以下の深さになるように貯留した後、二次濃縮を開始して、塩を晶析させる。
このように、一次濃縮液の導入量を塩晶析用槽の深さ寸法の19%以上50%以下とすることによって、晶析した塩には直径が1mm以下といった粒径が相対的に小さい結晶の含有率が増大する。
これは、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液の深さが深くなるに連れて晶析速度が遅くなり、それによって晶析される結晶の粒径が漸次小さくなるためである。従って、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液が所要深さ以上、すなわち塩晶析用槽の深さ寸法の19%以上である場合、直径が1mm以下といった所要粒径の結晶の含有率を増大させることができるのである。
一方、一次濃縮液の導入量が塩晶析用槽の深さ寸法の50%を超えた場合、二次濃縮が終了する前に、晶析した塩の結晶が塩晶析用槽の上縁まで延出することがあり、この場合、延出した結晶の毛細管現象により二次濃縮液が塩晶析用槽の外へ漏出してしまうという不都合が生じる。
前述したように、二次濃縮液の比重が1.24から1.29までの適宜の値に達すると二次濃縮を終了した後、残留液の排出、濾過又は遠心分離といった固液分離を行うことによって、晶析させた塩を回収する(ステップS50)。
そして、天火、ヒータによる加熱又は通風等の乾燥操作を行うことによって回収した塩を所要の水分含量になるまで乾燥させた(ステップS51)後、篩分けを行って、例えば直径が1mm以下といった所要粒径の結晶の塩(製品)を分取する(ステップS52)。
これによって、前同様、ミネラルの含有量が多く、所要の味を呈する塩を効率的に製造することができる。
(実施例1)
本発明の粒状塩に関して検証を行った結果について説明する。
本発明の粒状塩は、上記実施形態に従い、上記ステップS11において、天日又はヒータによって蒸発槽内の原料水を20℃〜60℃、好ましくは20℃〜45℃に加熱して一次濃縮液から水分を蒸発させる二次濃縮を開始し、二次濃縮で20℃〜60℃、好ましくは20℃〜45℃に保温して晶析されたものである。図4は、晶析温度と収率の関係を表す実験結果である。
図4に示すように、45℃より高い温度で晶析される項番1,2,3は、SSサイズの粒状塩の収率が高々30%程度であるが、45℃以下で晶析される項番4,5,6は、SSサイズの粒状塩の収率が30%より高くなる。図中の項番1〜6は、塩晶析用槽として、ポリスチロール製容器を使用した場合の結果であるが、琺瑯の容器又は硬質アルミニウム製の容器を使用しても、同様の結果が得られる。琺瑯の容器又は硬質アルミニウム製の容器を使用した場合の結果例を、図中の項番6(琺瑯)及び項番6(アルミ)で示す。これらは、ポリスチロール製容器よりもさらにSSサイズの粒状塩の収率が高いという結果が得られた。
また、本発明の製塩方法により製造されたMサイズ、Sサイズ、SSサイズ及び市販品(Mサイズ)の粒状塩に対して、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(株式会社島津製作所製Rayny EDX-800HS)を用いて、粒状塩の結晶表面に存在するミネラル成分を確認した。
本発明の粒状塩は、粒径0.25mm以上2mm以下の粒子(Sサイズ及びSSサイズ)から構成されるものである。図5は、本発明の粒状塩に含有されるミネラル元素の検証結果である。図5に示すように、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄のミネラル分が、粒状塩の結晶全重量に対して各々4.039質量%及び5.802質量%含まれていた。
また、同図に示されるように、粒径2mmより大きい粒子(Mサイズ)から構成される粒状塩は、このミネラル分が粒状塩の結晶全重量に対して、3.269質量%含まれていた。また、同図に示されるように、市販品(Mサイズ)の粒状塩は、このミネラル分が粒状塩の結晶全重量に対して、1.867質量%含まれていた。
このように、本発明の粒状塩は、他の粒状塩と比較して、含有するミネラル分が豊富であることから、含有する複数のミネラル分が各種の味を呈することとなり、豊かな滋味をもたらすことができる。
また、本発明の粒状塩は、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄が、粒状塩の結晶全重量に対して、4質量%以上22質量%以下含まれるものである。カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄が、粒状塩の結晶全重量に対して、4質量%以下の粒状塩の場合には、同図の粒径2mmより大きい粒子(Mサイズ)から構成される粒状塩及び市販品(Mサイズ)の粒状塩のように、ミネラル分が少ないことから、ミネラル分による深い滋味が得られない。また、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄が、粒状塩の結晶全重量に対して、22質量%以上の粒状塩の場合には、海水中の塩化ナトリウムが78質量%であることから、天日製塩法では実施できないことに加え、塩化ナトリウムが過少であることから、塩化ナトリウムにより呈される本来の塩味が失われてしまう。
この塩化ナトリウムにより呈される本来の塩味という観点から、ナトリウムは、粒状塩の結晶全重量に対して、55質量%以上であることが好ましい。ナトリウムが、粒状塩の結晶全重量に対して55質量%より小さい例としては、同図に示される粒径2mmより大きい粒子(Mサイズ)から構成される粒状塩(ナトリウム含有量が54.997質量%)があり、ナトリウム量が過少なために塩化ナトリウムによる本来の塩味が薄れてしまう。
さらに、本発明の粒状塩は、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄が、粒状塩の結晶全重量に対して、4質量%以上6質量%以下含まれるものであることが好ましい。この場合の粒状塩は、図5に示すSサイズ及びSSサイズの粒状塩であり、含有するミネラルバランスが適切であることから、含有する複数のミネラル分が各種の味を相互に引き立てることとなり、さらに豊かな滋味をもたらすことができる。
また、上記では、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄の全種類が、ミネラル分として含有されていたが、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫黄のうち少なくとも1種類がミネラル分として含有されていてもよい。含有する種類が少ない場合には、各ミネラル分の味覚的特長が粒状塩に現れやすいという利点がある。
また、図6は、塩粒子の表面、破断面の電子プローブマイクロアナライザ 日本電子(株)JXA−8800Rによる電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)写真である。同図から、本発明のSSサイズの粒状塩は、市販品(Mサイズ)及びMサイズの粒状塩よりも、微細なミネラル分が表面に多量に付着していることが判る。また、本発明のSSサイズの破断面から、破断面の内部は平滑であり、微細なミネラル分の粒子は見られないということが判る。このように、微細なミネラル分の粒子が塩粒子の表面に多量に付着していることから、微細なミネラル分の粒子の存在による味覚作用を効果的に得ることができる。
また、図7及び図8は、塩粒子の表面、破断面、半径方向の電子プローブマイクロアナライザ 日本電子(株)JXA−8800RによるSEM写真(SL)および、同視野における面分析である。この面分析から、各ミネラル元素(ナトリウム(Na),塩素(Cl),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),硫黄(S),カリウム(K)のX線検出強度が、Mサイズ表面よりもSSサイズ表面で増大しており、微細なSSサイズ表面の方が多量に付着しているということが判る。
また、図9は、電子プローブマイクロアナライザ 日本電子(株)JXA−8800RによるSSサイズの粒状塩の破断により生じた界面から内部におけるSEM像(SL)および、同視野における各ミネラル元素(ナトリウム(Na),塩素(Cl),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),硫黄(S),カリウム(K)の面分析及び線分析である。この面分析及び線分析から、各ミネラル分(マグネシウム:Mg,カルシウム:Ca,硫黄:S,カリウム:K)は、粒状塩の表面に微粒子の各種ミネラル塩として晶析しているということが判る。
また、晶析により得られた粒状塩(結晶粒)のX線回折図を、図10(a)に示す。このX線回折図から,NaClとCaSO4 2H2Oに対応する回折線が確認できる。CaSO42H2Oに対応する回折線のピーク強度は結晶粒のサイズが小さいほど高くなっている。この結果から、結晶粒が小さいほど、CaSO42H2Oの含有が多いことを示唆している。
また、採塩後の乾燥過程で塩粒子表面に晶析する海水成分結晶のX線回折図を、図10(b)に示す。同図は、採塩後の乾燥過程で塩粒子表面に晶析する海水成分結晶のX線回折図を示している。採塩後の塩表面に存在するミネラル成分は、乾燥による水の蒸発と共に塩分濃度の上昇が生じ、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムの順に晶析すると考えられる。各面分析の実験結果から、硫酸カルシウムやこれら晶析塩は塩の粒子表面に粒子として晶析していることを確認した。このように、本発明の粒状塩に含有されるミネラル成分であるカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)及び硫黄(S)は、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)等の無機化合物として晶析していることが理解される。
(実施例2)
塩晶析用槽について比較試験を行った結果について説明する。
図11は、疵付け処理を施した塩晶析用槽と疵付け処理を施していない塩晶析用槽とを用いて二次濃縮を行い、晶析した結晶の粒径別の収率を計測した結果を示すヒストグラムであり、縦軸は収率を、横軸は結晶の粒径をそれぞれ示している。なお、図中、(a)は疵付け処理を施した塩晶析用槽を用いた結果を、(b)は疵付け処理を施していない塩晶析用槽とを用いた結果をそれぞれ示している。
塩晶析用槽には、市販のポリスチロール樹脂製の容器(バットA78、大創産業株式会社製)を用いた。なお、容器の寸法は、縦が23cmであり、横が31.6cmであり、高さが4.3cmである。
また、疵付け処理は、平均粒径が2mm程度の粉状の硫酸カルシウムを5g程度取り、それを前記容器に投入して、投入した粉体を容器の内表面に5分間、布を用いてこすりつけることによって行った。その後、容器の内部を洗浄して前記粉体を除去し、当該容器を乾燥させて試験に用いた。
両塩晶析用槽にそれぞれ、密度が1.22の一次濃縮液を1000ml貯留し、60℃未満の天日によって、密度が1.27になるまで二次濃縮を行った後、固液分離して塩を得、それを水分含量が2.5質量%になるまで乾燥させた。なお、密度は塩水撰種計(200mm JAN 702007、石原温度計製作所製)を用いて測定した。
そして、乾燥させた塩を、直径が2mmを超えるMサイズ、直径が1mmを超え2mm以下のSサイズ、直径が1mm以下のSSサイズにそれぞれ篩い分けし、各サイズの収率をそれぞれ計測した。
その結果、図11から明らかなように、Mサイズにあっては、疵付け処理を施していない塩晶析用槽を用いた方が収率が多かったものの、Sサイズにあっては、疵付け処理を行った塩晶析用槽を用いた方が収率が多かった。
更に、本発明に係る塩のサイズであるSSサイズにあっては、疵付け処理を施した塩晶析用槽を用いた場合は12質量%程度の収率があったのに対して、疵付け処理を施していない塩晶析用槽を用いた場合は2質量%程度の収率しかなく、両収率には6倍の差があった。
以上のように、疵付け処理を施した塩晶析用槽を用いることによって、SSサイズの粒状塩を高効率に得ることができた。
(実施例3)
次に、塩晶析用槽の表面粗さ及び材質と晶析される塩の結晶のサイズとの関係を検討した結果について説明する。
図12は、種々の塩晶析用槽の平均表面粗さを測定した結果を示すグラフであり、図中、(a)は実施例1で説明したポリスチロール製の容器であって疵付け処理を施していないものを、(b)は実施例1で説明したポリスチロール製の容器であって疵付け処理を施したものを、(c)は硬質アルミニウム製の容器を、(d)はステンレス製の容器を、(e)は有田焼の容器をそれぞれ示している。
なお、硬質アルミニウム製の容器は赤尾アルミバッド4号を用いており、ステンレス製の容器はSUS304・18−8を用いている。
また、平均表面粗さは、表面粗さ測定装置(サーフコムLC−3424、株式会社東京精密)を用いてJISB−0601(1994年)に従って測定した。
図12から明らかなように、疵付け処理を施していない(a)の容器の平均表面粗さは0.069μmであったのに対し、疵付け処理を施した(b)の容器の平均表面粗さは0.251μmであった。また、硬質アルミニウム製の容器の平均表面粗さは0.386μmであり、ステンレス製の容器の平均表面粗さは0.135μmであり、有田焼の容器の平均表面粗さは0.304μmであった。
これらの各容器を用いて実施例2で説明した操作と同様の操作を行い、得られた塩をそれぞれ篩い分けして各サイズの結晶の収率をそれぞれ求めたところ、(b)〜(e)のいずれの容器を用いた場合であっても(a)の容器を用いた場合に比べて、SSサイズの結晶の収率が増大していた。
以上の結果及び経験より本発明者らは、直径が1mm以下といった所要粒径の結晶の含有率を増大させる効果は、平均表面粗さが少なくとも0.1μm以上0.4μm以下である容器を用いることによって得られるという知見を得た。
(実施例4)
次に、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液の深さの影響について試験を行った結果について説明する。
図13は、塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液の深さを異ならせて二次濃縮を行い、晶析した結晶の粒径別の収率を計測した結果を示すヒストグラムである。図中、縦軸は収率を、横軸は結晶の粒径をそれぞれ示しており、また、(a)は一次濃縮液を350ml貯留させた場合の結果を、(b)は一次濃縮液を500ml貯留させた場合の結果を、(c)は一次濃縮液を750ml貯留させた場合の結果を、(d)は一次濃縮液を1000ml貯留させた場合の結果をそれぞれ示している。
塩晶析用槽には、実施例2に記載した容器と同じ材質であり、同じ寸法であるものを用いたが、内表面に疵付け処理は施していない。
4つの塩晶析用槽にそれぞれ、密度が1.20の一次濃縮液を350ml(a)、500ml(b)、750ml(c)、1000ml(d)貯留させた。従って、各塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液の深さはそれぞれ、0.48cm(a)、0.69cm(b)、1.03cm(c)、1.38cm(d)である。前述した如く塩晶析用槽の深さ寸法は4.3cmであるので、塩晶析用槽の深さ寸法に対する貯留された一次濃縮液の深さの割合はそれぞれ、11.2%(a)、16.0%(b)、24.0%(c)、32.1%(d)である。
塩晶析用槽それぞれにおいて、天日によって53℃の温度条件で、密度が1.27になるまで二次濃縮を行った後、固液分離して塩を得、それを水分含量が2質量%になるまで乾燥させた。そして、乾燥させた塩を、直径が2mmを超えるMサイズ、直径が1mmを超え2mm以下のSサイズ、直径が1mm以下のSSサイズにそれぞれ篩い分けし、各サイズの収率をそれぞれ計測した。
その結果、図13から明らかなように、SSサイズにあっては、塩晶析用槽の深さ寸法に対する貯留された一次濃縮液の深さの割合が24.0%(c)より大きい場合は20質量%程度以上の収率があったのに対して、塩晶析用槽の深さ寸法に対する貯留された一次濃縮液の深さの割合が16.0%(b)より小さい場合は、多くても12質量%程度の収率しかなかった。
なお、図13には示していないが、塩晶析用槽の深さ寸法に対する貯留された一次濃縮液の深さの割合が19.0%(本実施例と同じ条件における600mlに相当する。)程度以上において、SSサイズの収率増大効果が得られた。
以上より、塩晶析用槽の深さ寸法に対する当該塩晶析用槽に貯留された一次濃縮液の深さの割合を19.0%以上に設定することによって、SSサイズの塩を高効率に得ることができる。
(実施例5)
次に、実施例2で得られた塩について成分元素の含有率を測定した結果について説明する。
図14は、実施例2で得られた本発明に係るSSサイズの塩を構成する複数の成分元素の含有率と、実施例2で篩い分けされた他のサイズの塩を構成する複数の成分元素の含有率とを測定した結果を示すグラフであり、縦軸は含有率を、横軸は篩い分けされた塩のサイズをそれぞれ示している。また、図中、四角印はMgを示しており、三角印はCaを示しており、菱型印はNaを示しており、また丸印はKを示している。なお、Naの含有量は1/100の値で示してあり、実際の含有率はグラフの数値を100倍した値である。
なお、各成分元素の含有量は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(Rayny EDX800HS、株式会社島津製作所)を用いて測定した。
図14から明らかなように、本発明に係るSSサイズの塩にあっては、それより粒径が大きいSサイズ及びMサイズの塩に比べて、Mg及びCaの含有率がそれぞれ1.3倍以上及び3倍以上多く含まれていた。
Mg及びCaにあってはそれぞれ、塩化マグネシウム及び硫酸カルシウムを構成して甘味を呈するので、本発明に係るSSサイズの塩にあっては、所要の味を呈することができる。
(実施例6)
次に、本発明に係るサイズの塩と、他のサイズの塩とについてそれぞれ官能試験を行った結果について説明する。
官能試験は次のようにして実施した。
官能試験に供した試料としては、本発明例として実施例2で示したSSサイズの塩を、また比較例として実施例2で示したMサイズの塩を用いた。そして、両サイズの塩をそれぞれ乳鉢を用いて粉砕し、篩によって粒径が0.25mm以上1mm以下の塩を分取することによって、互いに粒径を揃えた試料とした。
年齢が22歳の女性、12名を被検者とし、各被検者が両試料を各別に小皿に分け入れ、各試料が呈する色、香り、塩味、甘味、苦味及びうま味を、−3から+3までの7段階の尺度を用いた2点識別・嗜好試験法により比較検討した。そして、得られた検討データをt検定によって統計処理した。
図15は、本発明例の試料と比較例の試料とを2点識別・嗜好試験法により比較検討した結果を示すグラフである。なお、図中、アスタリスクマークが1つ付されているときは危険率が1%未満である場合を、またアスタリスクマークが2つ付されているときは危険率が5%未満である場合を示しており、いずれの場合も有意であると判断した。
図15から明らかなように、本発明例の試料にあっては比較例の試料に比べて、塩味は有意に弱く、甘味は有意に強く、苦味は有意に弱いものであった。つまり、本発明例の試料にあっては所謂カドが取れてマイルドであり、苦味(えぐみ)が無い所要の味が得られていた。
(実施例7)
次に、異なる密度の一次濃縮液を用いて製造した塩を構成する複数の成分元素の含有率を測定した結果について説明する。
図16は、密度が1.17の一次濃縮液を用いて製造して得られた本発明に係るSSサイズの塩を構成する複数の成分元素の含有率と、その製造工程において篩い分けされた他のサイズの塩を構成する複数の成分元素の含有率とを測定した結果を示すグラフであり、図17は、密度が1.22の一次濃縮液を用いて製造して得られた本発明に係るSSサイズの塩を構成する複数の成分元素の含有率と、その製造工程において篩い分けされた他のサイズの塩を構成する複数の成分元素の含有率とを測定した結果を示すグラフである。両図において、縦軸は含有率を、横軸は篩い分けされた塩のサイズをそれぞれ示している。また、図中、四角印はMgを示しており、三角印はCaを示しており、菱型印はNaを示しており、また丸印はKを示している。なお、Naの含有量は1/100の値で示してあり、実際の含有率はグラフの数値を100倍した値である。
なお、二次濃縮はどちらも同じ密度に達したときに停止させてある。一方、塩晶析用槽には、実施例2に記載した容器と同じ材質であり、同じ寸法であるものを用いたが、内表面に疵付け処理は施していない。
両図16及び図17から明らかなように、Caの含有率は、本発明に係るSSサイズの塩を含むいずれのサイズにあっても、密度が1.17の一次濃縮液を用いた場合に比べて密度が1.22の一次濃縮液を用いた場合の方が低かった。
これは、一次濃縮を停止させる密度を高く設定するに従って、硫酸カルシウムの晶析量が多くなるので、密度が1.17の一次濃縮液に含まれるCaの濃度より、密度が1.22の一次濃縮液に含まれるCaの濃度の方が低いためであると考えられる。
一方、Mgの含有率は、本発明に係るSSサイズの塩を含むいずれのサイズにあっても、密度が1.17の一次濃縮液を用いた場合に比べて密度が1.22の一次濃縮液を用いた場合の方が高かった。
また、本発明に係るSSサイズの塩にあっては、密度が1.17の一次濃縮液を用いた場合と密度が1.22の一次濃縮液を用いた場合とで、Caの含有率とMgの含有率とのバランスが異なっていた。
ここで、前述したようにCa及びMgはそれぞれ、塩化マグネシウム及び硫酸カルシウムを構成し、硫酸カルシウムは甘味のある旨味を呈し、塩化マグネシウムは淡い甘味を呈する。
以上より、異なる密度の一次濃縮液を用いることによって、得られる塩の味を調整できる。