(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図2を用いて説明する。図2は、本発明のダイバーシティアンテナ装置のブロック図である。
図2において、本発明のダイバーシティアンテナ装置1は、第1アンテナエレメント2と、第2アンテナエレメント3と、第1アンテナエレメント2に電気的に接続された第1可変移相器4と、第2アンテナエレメント3に電気的に接続された第2可変移相器5と、第1可変移相器4の出力信号と第2可変移相器5の出力信号とを合成する合成器6と、合成器6の出力側に電気的に接続される信号処理部7とを有している。
そして、信号処理部7は、信号処理部7に入力される信号の信号品質値を導出し、この信号品質値に基づいて第1可変移相器4と第2可変移相器5の移相量を制御する。
以下、図2を用いて、本発明のダイバーシティアンテナ装置1の動作について説明する。
第1アンテナエレメント2で受信された信号は、第1可変移相器4に入力される。そして、第1可変移相器4は、入力された信号の位相を所定の移相量だけ回転させた後、第1可変増幅器8へ出力する。第1可変増幅器8は、入力された信号の振幅を所定量だけ増幅させた後、合成器6へ出力する。
第2アンテナエレメント3で受信された信号は、第2可変移相器5に入力される。そして、第2可変移相器5は、入力された信号の位相を所定の移相量だけ回転させた後、第2可変増幅器9へ出力する。第2可変増幅器9は、入力された信号の振幅を所定量だけ増幅させた後、合成器6へ出力する。
合成器6は、第1可変増幅器8と第2可変増幅器9とから入力される信号を足し合わせた後、復調回路(図示せず)へ出力される。
合成器6の出力信号の一部は信号処理部7に入力されると共に、信号処理部7は、入力された信号の信号品質値を導出する。ここで、信号品質値とは、信号の品質を表す指標を指しており、具体的には、BER(Bit Error Rate)やC/N(Carrier/Noise)、S/N(Signal/Noise)等の指標を指している。そして、信号処理部7は、導出された信号品質値が最も良化するように、第1可変移相器4と第2可変移相器5のそれぞれの移相量と、第1可変増幅器8と第2可変増幅器9のそれぞれの利得とを制御する。
尚、図2においては、一例として、第1可変移相器4、第2可変移相器5、第1可変増幅器8、第2可変増幅器9は、第1グランド30に近接して配置されており、合成器6は第2グランド31に近接して配置されている。また、信号処理部7は第1グランド30と第2グランド31の両方に近接して配置されている。第1可変移相器4等の回路ブロックを第1グランド30と第2グランド31のどちらに、又は両方に近接させて配置するかは、任意に決定しても良い。また、第1グランド30と第2グランド31とは、リアクタンス素子32を介して電気的に接続されている。
本願発明のダイバーシティアンテナ装置1の構成において、特徴的な構成は、第1アンテナエレメント2の入力インピーダンスと前記第2アンテナエレメント3の入力インピーダンスとが概ね同一値である点である。
以下、なぜこの構成により良好な受信特性が得られるのかについて、図3を用いて説明する。
図3に示すダイバーシティアンテナ装置10は、お互い近接して配置された第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3と、第1アンテナエレメント2と電気的に接続される第1給電部11と、第2アンテナエレメント3と電気的に接続される第2給電部12と、第1給電部11と第2給電部12とが電気的に接続されるグランド板13とを有している。尚、図3においては、簡略化のため第1給電部11と第2給電部12を用いて表現しているが、実際的には、第1給電部11と第2給電部12は、図1の第1可変移相器4、第2可変移相器5、第1可変増幅器8、第2可変増幅器9等により構成されている。また、簡略化のため、図3においては、合成器6、信号処理部7等を標記していない(このことは図3以降の同様の図においても適用される)。
図3のように、一般に2本のアンテナエレメントが近接して配置された場合、それぞれのアンテナエレメントが電磁結合し、それによって受信特性が劣化してしまうという課題を有していた。具体的には、一方のアンテナエレメントから輻射された信号の一部が、電磁結合している他方のアンテナエレメントで受信され、他方のアンテナエレメント直下に接続されている負荷抵抗で消費されてしまう現象である。そのため、この電磁結合による損失を減らすため、図34に示したクロスダイポールアンテナのように、アンテナエレメントそのものを直交させ、アンテナエレメント上に発生する放射に寄与する電流を直交させることで、電磁結合による損失を減らすといった手法が、従来、採用されていた。
この場合、アンテナエレメント上の放射に寄与する電流が直交していることから、それによってできる二つのアンテナの指向性のピーク方向は直交し、二つの直交する偏波をもつこととなり、良好なダイバーシティ効果が得られていた。
しかし、クロスダイポールアンテナは、2組のダイポールアンテナを直交した状態で保持する必要があり、その構造を実現するのに困難性が伴っていた。
また、単純に、アンテナ間隔を離すことで電磁結合の損失を減らすといった手法もよく採用されていた。
この場合、それぞれのアンテナエレメント上の放射に寄与する電流は、アンテナエレメント同士が離れていることから互いに影響を及ぼさないこととなる。更に、2つのアンテナエレメントの間隔が離れていることから、それぞれのアンテナエレメントの受信信号は、2つのアンテナエレメントの間隔に起因して生じる信号の通路長差分だけ異なる位相回転項がかけられ、これにより二つのアンテナの受信信号は異なるものが得られることとなる。
結果、良好なダイバーシティ効果が得られていた。しかし、上記の従来のダイバーシティアンテナ装置の場合、2つのアンテナエレメントを離間して配置する必要があるため、大型化するという課題を有していた。
本発明のダイバーシティアンテナ装置の特長の一つとしては、図3のように、それぞれのアンテナエレメントが近接し結合している状態においても、相関の少ない2つの信号を受信でき、良好な受信感度が得られる点である。
図3において、第1アンテナエレメント2に電気的に接続される第1給電ポート14と、第2アンテナエレメント3に電気的に接続される第2給電ポート15との2ポートのSパラメータは、(数1)で表される。
(数1)において、第1給電ポート14から第1アンテナエレメント2を見たときの入力インピーダンスはS11、第2給電ポート15から第2アンテナエレメント3を見たときの入力インピーダンスはS22、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3との間の結合はS21であり、それぞれのアンテナエレメントがパッシブ回路であることからS21=S12となる。
即ち、アンテナエレメント間が結合している状態は、(数2)の場合といえる。
本願のダイバーシティアンテナ装置においては、(数2)で表されるアンテナエレメント間が電磁結合をしている状態においても良好なダイバーシティ効果を得ることができるように設計される。
図2に示すダイバーシティアンテナ装置1の各アンテナエレメントへの給電の方法においては、アンテナ上に発生する放射に寄与する電流は互いに結合するため直交せず、それによってできる各アンテナエレメントの指向性のピーク方向も直交せず、二つの直交する偏波を発生させる事はできない。
そこで、本願のダイバーシティアンテナ装置においては、それぞれのアンテナエレメントを同相(コモンモード)、逆相(ディファレンシャルモード)で給電することを考えてみた。
第1給電ポート14と第2給電ポート15とから2つのアンテナエレメントに対してコモンモードで給電する場合の入力インピーダンスをSccで表し、第1給電ポート14と第2給電ポート15とから2つのアンテナエレメントに対してディファレンシャルモードで給電する場合の入力インピーダンスをSddで表し、コモンモード、ディファレンシャルモード間の結合をSdc(=Scd)とすると、これは(数3)で表すことができる。
(数3)において、上述の通り、S21=S12であることから、(数3)は(数4)のようになる。
(数4)において、本願発明の特長であるS11=S22の条件を考慮すれば、(数5)のようになる。
(数5)より、コモンモード、ディファレンシャルモード間の結合を表すSdc(=Scd)の項を0とすることができ、2つの給電モードで給電した場合の給電モード間の電磁結合を概ね無くする事が出来、結果、電磁結合による受信特性の劣化を、原理的にほぼ無くする事ができる。
すなわち、第1給電ポート14と第2給電ポート15とにコモンモード給電、ディファレンシャルモード給電することにより、第1アンテナエレメント2、第2アンテナエレメント3、グランド板13等に流れるそれぞれの給電モードに起因した電流は、互いに影響を及ぼさない関係となっている。
次に、この動作原理を物理的に説明する。
第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3に対して、コモンモード給電、ディファレンシャルモード給電するということは、図4に示したような給電を行うことを表している。つまり、第1給電部11は、第1給電ポート14と第2給電ポート15に対してディファレンシャルモード給電を行い、第2給電部12は、第1給電ポート14と第2給電ポート15に対してコモンモード給電を行うこととなる。
まず、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3に対して、第2給電部12がコモンモード給電した場合について、図5を用いて説明する。
この場合、各アンテナエレメントの各給電ポートから見た入力インピーダンスが概ね同じであることから、第1給電ポート14と、第2給電ポート15とは概ね同電位で給電されることとなる。
すなわち、図5中における第1給電部11(ディファレンシャルモード給電側)の給電点のプラス側、マイナス側が常に同電位になり、第1給電部11へは第2給電部12からの信号が流れず、第1給電部11と第2給電部12とはアイソレーションが原理的に取れることとなる。
次に、第1給電部11(ディファレンシャルモード給電側)が、第1給電ポート14と第2給電ポート15に対してディファレンシャルモード給電を行った場合を、図6を用いて説明する。
この場合、各アンテナエレメントの各給電ポートから見た入力インピーダンスは概ね同じであることから、第1給電ポート14と、第2給電ポート15とでは逆電位で給電されることとなる。
すなわち、図6における第2給電部12(コモンモード給電側)の給電点のプラス側においては、第1給電ポート14と第2給電ポート15とに発生する逆位相の信号が合成されて、常に概ね零電位となる。よって、第2給電部12側へは第1給電部11から信号が流れず、第1給電部11と第2給電部12とはアイソレーションが原理的に取れることとなる。
これより、第1給電ポート14と第2給電ポート15に対してコモンモード給電、ディファレンシャルモード給電することにより、それぞれの給電方法に係る信号が、互いに影響を及ぼさないようすることができる。
さらに、互いに影響を及ぼしていないということは、放射に寄与する電流は直交することとなる。
すなわち、それぞれのアンテナが近接し結合している状態においても、このアンテナは放射に寄与する2つの直交する電流を作ることができる。
よって、二つのアンテナの指向性のピーク方向は直交し、二つの直交する偏波をもつこととなり、良好なダイバーシティ効果を得ることができる。
例えば、2本のモノポールアンテナのような小型なアンテナエレメント(それぞれの放射パターンの偏波は直交していない)を用いても、2つのモノポールアンテナの合成の放射パターンにおいては、給電のモード(コモンモード及びディファレンシャルモード)により、直交する2つの偏波を得る事ができ、最大比合成方式および等利得合成方式のダイバーシティ方式において、良好な受信特性を得る事ができる。
これにより、近接して配置された第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3を用いたとしても、第1給電部11と第2給電部12とにおいて、相関の低い2つの信号を受信する事が可能となり、小型で且つ受信特性の優れたダイバーシティアンテナ装置を実現することができる。
本願発明のダイバーシティアンテナ装置の構成により、どうして上記のようなコモンモード給電、ディファレンシャルモード給電が行えているかについて、以下、説明する。
本願発明のダイバーシティアンテナ装置は、図7に示す回路ブロックにより実現できる。図7において、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とは、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16に接続される。ここで、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16は、図4に示した第1給電ポート14、第2給電ポート15、第1給電部11、第2給電部12等から構成されている。
また、第1給電部11で受信された信号は図7中の第1チューナ17に入力され、第2給電部12で受信された信号は図7中の第2チューナ18に入力される。そして、第1チューナ17と第2チューナ18とは、ダイバーシティ合成器19に電気的に接続されている。
ダイバーシティ合成器19は、第1チューナ17からの信号が入力される第1可変移相器4と、第1可変移相器4からの信号が入力される第1可変増幅器8と、第2チューナ18からの信号が入力される第2可変移相器5と、第2可変移相器5からの信号が入力される第2可変増幅器9と、第1可変増幅器8からの信号と第2可変増幅器9からの信号とが合成される合成器6とを有している。
合成器6の出力信号の一部は信号処理部7(図7中には便宜上、図示せず)に入力されると共に、信号処理部7は入力された信号の信号品質値を導出する。そして、導出された信号品質値に基づいて、信号処理部7はこの信号品質値が最良となる様に、第1可変移相器4と第2可変移相器5の移相量と、第1可変増幅器8と第2可変増幅器9の利得とを制御する。
図7に示すように、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16を介して第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3に接続する事で、図4に示したコモンモード給電、ディファレンシャルモード給電を行った事と等価となるため、上記の本願発明の顕著な効果を得る事ができる。
尚、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16は、図8に示す位置に配置しても、同様の効果を得る事ができる。
次に、図9を用いて、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16の具体的な実現方法を示す。
図9において、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16は、第1アンテナエレメント2と電気的に接続された第1給電ポート14と、第2アンテナエレメント3と電気的に接続された第2給電ポート15と、第1給電ポート14に電気的に接続されると共に移相量が90度の第1移相器20と、第1給電ポート14に電気的に接続されると共に移相量が90度の第3移相器22と、第2給電ポート15に電気的に接続されると共に移相量が90度の第2移相器21と、第2給電ポート15に電気的に接続されると共に移相量が−90度の第4移相器23と、第1移相器20と第2移相器21とが電気的に接続された第1交点24と、第3移相器22と第4移相器23とが電気的に接続された第2交点25とを備えている。そして、第1交点24は第1チューナ17と電気的に接続されており、第2交点25は第2チューナ18と電気的に接続されている。
図9においては、第1交点24から給電した場合、第1給電ポート14と第2給電ポート15とはコモンモードで給電され、第2交点25から給電した場合、第1給電ポート14と第2給電ポート15とはディファレンシャルモードで給電されたこととなる。
第1交点24から給電した場合、それぞれ、移相量が90度の第1移相器20と、第2移相器21とを介して、第1給電ポート14と第2給電ポート15とに到達するため、第1給電ポート14と第2給電ポート15の電圧は概ね同電位となる。そのため、第2交点25においては、それぞれ、移相量90度の第3移相器22と、移相量−90度の第4移相器23とを介した後、逆電位で足し合わされることとなる。すなわち、第2交点25は、常に概ね零電位となり、接地されているように見える。
よって、第1交点24から入力された信号は、第2交点25の給電点には影響を及ぼさないと共に、第1給電ポート14と第2給電ポート15とに発生するコモンモードの信号は、第2交点25には概ね現れない事となる。
上記の通り、第2交点25が接地されていることと等価であることから、図10のように表せる。図10に示したように、第1給電ポート14と第2給電ポート15とは、それぞれ、90度、−90度の移相器を介してグランドに接地されている事となる。よって、この構成がショートスタブとして動作し、第1給電ポート14から第2交点側と、第2給電ポート15から第2交点側とは開放状態として見え、図11に示す回路と等価と言える。
以上より、第1給電ポート14と第2給電ポート15とにコモンモードの信号が供給された場合には、第1給電ポート14から第2交点25側と、第2給電ポート15から第2交点25側とは開放状態のように見え、第2交点25側へは信号が入力されないこととなる。
次に、第2交点25から給電した場合、それぞれ、移相量90度の第3移相器22と、移相量−90度の第4移相器23とを介して、第1給電ポート14と第2給電ポート15とに到達するため、第1給電ポート14と第2給電ポート15の電圧は逆電位になる。そのため、第1交点24においては、それぞれ、移相量90度の第1移相器20と第2移相器21とを介した後、逆電位で足し合わされることとなる。すなわち、第1交点24は、常に概ね零電位となり、接地されているように見える。
よって、第2交点25から入力された信号は、第1交点24の給電点には影響を及ぼさないと共に、第1給電ポート14と第2給電ポート15とに発生するディファレンシャルモードの信号は、第1交点24には概ね現れない事となる。
上記の通り、第1交点24が接地されていることと等価であることから、図12のように表せる。図12に示したように、第1給電ポート14と第2給電ポート15とは、それぞれ、90度、90度の移相器を介してグランドに接地されている事となる。よって、この構成がショートスタブとして動作し、第1給電ポート14から第1交点側と、第2給電ポート15から第1交点側とは開放状態として見え、図13に示す回路と等価と言える。
以上より、第1給電ポート14と第2給電ポート15とにディファレンシャルモードの信号が供給された場合には、第1給電ポート14から第1交点24側と第2給電ポート15から第1交点24側とは開放状態のように見え、第1交点24側へは信号が入力されないこととなる。
図9におけるコモンモードディファレンシャルモード分波回路16の位置ではなく、図14に示したように、第1チューナ17、第2チューナ18と、ダイバーシティ合成奇19との間に配置しても、同様の効果が期待できる。
図9、又は、図14に示すように、信号処理部17(図示せず)により最適制御される第1可変移相器4、第2可変移相器5とをダイバーシティ合成器19が有するような、最大比合成方式または等利得合成方式のダイバーシティアンテナ装置においては、実質的に、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16を削除しても(図15に示した構成としても)、図9や図14で示すダイバーシティアンテナ装置と同様の効果を得ることができる。
以下、何故、このようなことが言えるかについて、図16を用いて説明する。
図16において、第1アンテナエレメント2の受信信号をx1(t)とし、第2アンテナエレメント3の受信信号をx2(t)とすると、x1(t)とx2(t)とは、それぞれ(数6)のように表される。
ここで、s1(t)は第1アンテナエレメント2の受信ベースバンド信号であり、s2(t)は第2アンテナエレメント3の受信ベースバンド信号である。また、fcはキャリア周波数である。
第1チューナ17及び第2チューナ18において、キャリア周波数fcからベースバンドへ周波数変換されるため、第1チューナ17及び第2チューナ18の出力側においては、(数6)のexp(j*2*pi*fc*t)の項がなくなる。更に、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16によって、ダイバーシティ合成器19の入力信号は、それぞれ、(数7)のように表される。
(数7)に示した二つの信号によって、ダイバーシティ合成が行われる。
第1可変移相器4と第1可変増幅器8のダイバーシティ最適化後の重み付けの総和がαであったとし、第2可変移相器5と第2可変増幅器9のダイバーシティ最適化後の重み付けの総和がβであったとすると、合成器6からの出力信号は、(数8)のように表される。
ここで、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16がない場合の合成器6からの出力信号を、図17を用いて考えてみる。
図17において、第1アンテナエレメント2の受信信号をx1(t)とし、第2アンテナエレメント3の受信信号をx2(t)とすると、x1(t)とx2(t)とは、それぞれ(数6)と同様に表される。
そして、図16の場合と同様に、第1チューナ17及び第2チューナ18において、キャリア周波数fcからベースバンドへ周波数変換されるため、第1チューナ17及び第2チューナ18の出力側においては、(数6)のexp(j*2*pi*fc*t)の項がなくなる。
よって、ダイバーシティ合成器19の入力信号は、それぞれs1(t)、s2(t)と表される。この二つの信号によって、ダイバーシティ合成が行われることとなる。
第1可変移相器4と第1可変増幅器8のダイバーシティ最適化後の重み付けの総和がα'であったとし、第2可変移相器5と第2可変増幅器9のダイバーシティ最適化後の重み付けの総和がβ'であったとすると、合成器6からの出力信号は、(数9)のように表される。
すなわち、ダイバーシティ合成器19において、第1可変移相器8、第2可変移相器9、第1可変増幅器8、第2可変増幅器9の内、少なくとも1つが信号処理部7(図17においては便宜上、図示せず)により最適化されることにより、(数10)のように動作した場合、合成器6からの出力信号は、(数8)と同じものとなることが分かる。
故に、コモンモードディファレンシャルモード分波回路(または演算処理によりコモンモードディファレンシャルモード分波回路を実現した場合は、その演算処理回路)は、削除しても同様の効果を得ることができる。
これまで本願の一つの特長である小型、簡易な構成で且つ相関係数の低いダイバーシティアンテナ装置が、コモンモード給電及びディファレンシャルモード給電により実現される点を説明してきた。しかし、我々は、第1アンテナエレメント2、第2アンテナエレメント3にコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数とが、多くの場合に異なるという課題を新たに発見した。コモンモード給電の場合とディファレンシャルモード給電の場合とでダイバーシティアンテナ装置の共振周波数が異なると、コモンモード給電の場合とディファレンシャルモード給電の場合とでダイバーシティアンテナ装置の放射効率を高くできる周波数が異なることとなる。このため、例えばコモンモード給電の場合のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数においてダイバーシティアンテナ装置を使用する場合、ディファレンシャルモード給電の場合の放射効率の最大化が図れないという課題が生じてしまう。
コモンモード給電の場合とディファレンシャルモード給電の場合とでダイバーシティアンテナ装置の共振周波数が異なるのは、コモンモード給電の場合とディファレンシャルモード給電の場合とで、ダイバーシティアンテナ装置に発生する放射に寄与する電流の分布が異なるためである。
本願発明のダイバーシティアンテナ装置は、コモンモード給電の場合とディファレンシャルモード給電の場合とでダイバーシティアンテナ装置の共振周波数が異なる課題を改善できることを特長としている。
この課題を克服するため、本願発明のダイバーシティアンテナ装置1は、図2に示すように、第1グランド30と第2グランド31と、第1グランド30と第2グランド31とを電気的に接続するリアクタンス素子32を有している。
図2において、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とがコモンモード給電された場合、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とが1本のアンテナエレメント(以後、アンテナエレメントAと呼ぶ)として等価的に見ることができる。同様に、第1グランド30と第2グランド31とリアクタンス素子32とも、等価的に1本のアンテナエレメント(以後、アンテナエレメントBと呼ぶ)として見ることが出来る。故に、1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とがコモンモード給電された場合、アンテナエレメントAとアンテナエレメントBとがアンテナとして動作することとなる。
ここで、リアクタンス素子32のリアクタンス値が変更されると、アンテナエレメントBの電気長が変更されるため、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とがコモンモード給電された場合のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数が変更されることとなる。
一方、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とがディファレンシャルモード給電された場合、放射に寄与する電流の大半は第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とにのみ分布することとなり、第1グランド30と第2グランド31とリアクタンス素子32には、概ね、放射に寄与する電流は分布しないこととなる。よって、一方、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とがディファレンシャルモード給電された状態でリアクタンス素子32の素子値を変更しても、ダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数が変化することは概ね無い。
本願発明の上記特長を活かせば、第1アンテナエレメント30と第2アンテナエレメント31とがコモンモード給電された場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電された場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数とを一致させることが可能となる。つまり、コモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数は、主に、第1アンテナエレメント30と第2アンテナエレメント31の電気長により決定し、このコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数とが一致するように、リアクタンス素子32の素子値を調整すればよい。
このような作業をすることにより、第1アンテナエレメント30と第2アンテナエレメント31とがコモンモード給電された場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電された場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数とを一致させることが可能となり、容易に放射効率の高いダイバーシティアンテナ装置を実現することが出来る。
なお、上記説明はシングルキャリアの場合で説明したが、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)のようなマルチキャリア信号の場合でも、同様な処理を行うことができる。
また、特許請求の範囲における「第1アンテナエレメントの入力インピーダンス」とは(数1)、(数3)〜(数5)のS11のことであり、具体的には、第1アンテナエレメント2の給電点からアンテナ側を見た時のインピーダンス、または、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16の第1給電ポート14からアンテナ側を見た時のインピーダンス、または、ダイバーシティ合成器19の第1可変移相器8の入力ポート(図示せず)からアンテナ側を見た時のインピーダンス等を表す。
同様に、特許請求の範囲における「第2アンテナエレメントの入力インピーダンス」とは(数1)、(数3)〜(数5)のS22のことであり、具体的には、第2アンテナエレメント3の給電点からアンテナ側を見た時のインピーダンス、または、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16の第2給電ポート15からアンテナ側を見た時のインピーダンス、または、ダイバーシティ合成器19の第2可変移相器9の入力ポート(図示せず)からアンテナ側を見た時のインピーダンス等を表す。
なお、本願発明に係るダイバーシティアンテナ装置と、このダイバーシティアンテナ装置の出力側に電気的に接続された表示部とを有した電子機器は、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とが近接した状態でありながら、上述した有利な効果が得られるダイバーシティアンテナを実現できるため、小型で且つ受信性能に優れた電子機器を実現できる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図18〜図27を用いて説明する。
図18は、本発明のダイバーシティアンテナ装置の一例である。図2と同一部分に関しては、同一符号を付記し、説明を割愛する。
図18において、ダイバーシティアンテナ装置1を構成する第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とは、任意面において概ね面対称、又は任意線において概ね線対称となることを特徴とする。尚、特許請求の範囲における「第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントは任意線において概ね線対称となる、又は、任意面において概ね面対称となり」は、それぞれのアンテナエレメントの電気長において、電気的に線対称または面対称であることを含んでいる。
本願発明においては、図18のように、それぞれのアンテナエレメントが近接し、電磁結合している状態においても、良好なダイバーシティアンテナ装置の受信感度が得られる方式を提案する。
実施の形態1と同様、図19のように、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とをコモンモード給電(図20中の第2給電部12が該当)と、ディファレンシャルモード給電(図21中の第1給電部11が該当)とをすることを考える。
まず、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とが、コモンモード給電された場合について、図20を用いて説明する。
図20において、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とが電気的に対称に構成されていることから、第1給電ポート14と第2給電ポート15とは同電位で給電されることとなる。すなわち、第1給電部11のプラス側、マイナス側が常に同電位になり、第2給電部12からの信号が第1給電部11へ流れ込まず、2つの給電部の間のアイソレーションが原理的に取れることが分かる。
同様に、ディファレンシャルモード給電した場合を図21に示す。
この場合、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とが、電気的に対称に構成されていることから、第1給電ポート14と第2給電ポート15とは逆電位で給電されることとなる。すなわち、第2給電部12のプラス側は、第1給電ポート14と第2給電ポート15の合成電位となり、常に概ね零電位となる。故に、第1給電部11からの信号は、第2給電部12へは流れ込まず、2つの給電部間のアイソレーションは原理的に取れることが分かる。
これより、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とをコモンモード給電、ディファレンシャルモード給電することにより、2つの給電部は互いに影響を及ぼさないようすることができる。
さらに、第1給電ポート14と第2給電ポート15とをコモンモード給電した場合、各アンテナエレメント上の電流分布は図22に示したものとなる。つまり、対称面(線)28に概ね直交する電流は打ち消され、対称面(線)28に概ね平行な電流のみが放射に寄与する電流として残る形となる。その結果、放射パターンのピークは、対称面(線)28に概ね直交する方向を向く事となる。
次に、第1給電ポート14と第2給電ポート15とをディファレンシャルモード給電した場合、各アンテナエレメント上の電流分布は図23に示したものとなる。つまり、対称面(線)28に概ね平行な電流は打ち消され、対称面(線)28に概ね直交な電流のみが放射に寄与する電流として残る形となる。その結果、放射パターンのピークは、対称面(線)28に概ね平行な方向を向く事となる。
故に、これらを組み合わせると、図24のように、コモンモード給電時とディファレンシャルモード給電時のそれぞれの放射パターンのピーク方向は直交し、結果、本願のダイバーシティアンテナ装置は二つの直交する偏波をもつこととなり、良好なダイバーシティ効果が得ることができる。
なお、本発明の場合、実施の形態1と同様、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16(または同様の効果を得るための演算処理を実施する演算処理回路)を、第1チューナ17、第2チューナ18の入力側または出力側に接続しても良い(図25、図26参照のこと)。
また、ダイバーシティ合成方式として最大比合成方式または等利得合成方式を用いる場合、実施の形態1で説明した理由により、コモンモードディファレンシャルモード分波回路16(または同様の効果を得るための演算処理を実施する演算処理回路)を削除する事もできる。これにより、簡易にダイバーシティアンテナ装置を実現する事ができる。
なお、第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とを任意面に対して電気的に概ね面対称、又は任意線に対して電気的に概ね線対称とすることにより、図18〜図27に示した各アンテナエレメントの形状以外の形状であったとしても、コモンモード給電時は対称面(線)28に概ね平行な偏波が、ディファレンシャルモード給電時は、対称面(線)28に概ね直交する偏波が生まれる。このため、本願発明の特徴である「第1アンテナエレメント2と第2アンテナエレメント3とを任意面に対して電気的に概ね面対称、又は任意線に対して概ね概ね線対称である」により、ダイバーシティアンテナ装置としては理想的な直交する2つの偏波を生成することができる。
ここで、図22において示したコモンモード給電した場合の共振周波数と、図23において示したディファレンシャルモード給電の場合の共振周波数とは異なってしまうことが多い。このため、本願発明のダイバーシティアンテナ装置においては、図18のリアクタンス素子32の素子値を変更してコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置1の共振周波数を調整することで、ディファレンシャルモード給電時とコモンモード給電時のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数を一致させることができる。
また、図18において、リアクタンス素子32を配置する位置を対称面(線)上に配置しても良いし、複数のリアクタンス素子を対称面(線)に対して電気的に対称となるように配置しても良い。これにより、第1グランド30、第2グランド31、リアクタンス素子32についても対称面(線)に対して電気的に対称な形状とすることができ、コモンモード給電の場合の最大利得方向とディファレンシャルモード給電の場合の最大利得方向とを直交させることが容易となる。これによりダイバーシティ利得を向上させることができる。
尚、第1アンテナエレメントと第2アンテナエレメントが、共に、電気的に任意面または任意線に対して平行な成分しか有していない場合には、指向性ダイバーシティアンテナが実現できなくなる。
この具体的な状況を、図28を用いて説明する。図28に示すように、第1アンテナエレメント2の偏波と第2アンテナエレメント3とが、共に、対称面(線)28に対して電気的に平行であった場合、ディファレンシャルモード給電しても、対称面(線)28に直交する偏波を生成する事が極めて困難であるため、2つの直交する偏波を生成する事が不可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3のダイバーシティアンテナ装置について、図29を用いて詳述する。
図29は、本発明のダイバーシティアンテナ装置のブロック図である。図29において、本実施の形態3のアンテナ装置201は、第1端子202、第2端子203、第3端子204、および第4端子205の4端子を少なくとも有するアンテナ素子206(図29においては、アンテナ素子206の形状を特定せず、ブラックボックスの状態で記載している)と、このアンテナ素子206の第1端子202に一方が接続される第1線路207と、アンテナ素子206の第2端子203に一方が接続される第2線路208と、アンテナ素子206の第3端子204に一方が接続される第3線路209と、アンテナ素子206の第4端子205に一方が接続される第4線路210とを有し、第1線路207の他方と第2線路208の他方とは第1交点211において接続され、第3線路209の他方と第4線路210の他方とは第2交点212において接続されている。
更に、本実施の形態3のアンテナ装置201は、第1線路207の途中に接続された第1整合回路213と第1位相器217と、第2線路208の途中に接続された第2整合回路214と第2位相器218と、第3線路209の途中に接続された第3整合回路215と第3位相器219と、第4線路210の途中に接続された第4整合回路216と第4位相器220とを有している。
また、第1交点211とグランドとの間には第1負荷回路221が接続されており、第2交点212とグランドとの間には第2負荷回路222が接続されている。
更に、アンテナ素子206は、第5端子223と第6端子224と第7端子225と第8端子226とを有する。ここで、第1交点211から信号を入力した場合、第3線路29の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
また、当然の事であるが、第2交点212から信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
上記の条件を満たすように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とは、適切な値となるように設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路221から送信された信号は、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路110の第2交点112側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点212から第2負荷回路222側へ概ね伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路222から送信された信号についても、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点211から第1負荷回路221側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間でアイソレーションが確保できる事となる。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、1つのアンテナ素子206を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、時間的、周波数的な制限を課せられる事も無く、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
尚、第1交点211から第2交点212側へ信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点212から第1交点211側へ信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点211から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差は±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点11側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点211から第1負荷回路側へ信号は概ね伝搬して行くこととなる。
このように、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように信号分波器1が設計される事により、第1端子202と第2端子203との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路221へ伝搬させることができる。
更に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、特許請求の範囲の請求項2に記載の条件とを考慮した場合、第1端子202から第2交点212までの位相変化量と、第2端子203から第2交点212までの位相変化量との差は、零となる。つまり、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点212において同相で足し合わされ、第2交点212から第2負荷回路222側へ概ね伝搬されてゆく。
逆に、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点212において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点212から第2負荷回路222側へ概ね伝搬されて行かない。よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路221側のみへ伝搬されてゆき、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路222側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態のアンテナ装置1は、アンテナ素子206を介して第1端子202と第2端子203との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬する信号のコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点211においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点211は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点211から第1端子202、及び第2端子203までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第1交点211側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点211側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点212側へ伝搬して行く事となる。これにより、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。また、第1負荷回路221へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合に、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬する信号のコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型のダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子202から第2交点212までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第2交点212までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路209、第4線路210との線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とは、設計されてもよい。これにより、例えば、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子202から第2交点212までの位相変化量と、第2端子203から第2交点212までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点212においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点212は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点212から第1端子202、及び第2交点212から第2端子203までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第2交点212側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点212側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点211側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路221へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を向上させる事ができると共に、第2負荷回路222へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合に、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型ダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第3端子204から第2交点211までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第4端子205から第2交点212までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路209、第4線路210との線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とは、設計されてもよい。これにより、例えば、第3端子204と第4端子205との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第3端子204から第2交点211までの位相変化量と、第4端子205から第2交点212までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点212においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点212は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点212から第3端子204、及び第4端子205までの位相変化量は共に90度となることより、第3端子204及び第4端子205から、それぞれ第2交点12側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第3端子204と第4端子205との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点212側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点211側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路221へ伝搬するコモンモードの信号に対するディファレンシャルモードの信号の比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路222へ伝搬するディファレンシャルモードの信号に対するコモンモードの信号の比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第3端子204と、第4端子205とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
故に、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図29において、特許請求の範囲に示した条件を満足できるのであれば、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、第4整合回路216、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、第4位相器220のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210における伝送ロスを低減できると共に、部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点211と第1負荷回路221との間、第2交点212と第2負荷回路222との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態のダイバーシティアンテナ装置201と第1負荷回路221との間、及び、ダイバーシティアンテナ装置201と第2負荷回路222との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、第4整合回路216、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、第4位相器220とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、特許請求の範囲における請求項4に記載の条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路207が送信経路と受信経路との2つの経路を有しており、それぞれの経路が送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
上記において、実施の形態3に係るダイバーシティアンテナ装置の特長の一つである小型でありながら相関係数の低い特性を実現できる点を説明してきた。
しかし、実施の形態3に係るダイバーシティアンテナ装置201においては、コモンモード給電した場合の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電の場合の共振周波数とが異なってしまうことが多い。このため、本願発明のダイバーシティアンテナ装置においては、図29のリアクタンス素子32の素子値を変更してコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置201の共振周波数を調整することで、ディファレンシャルモード給電時とコモンモード給電時のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数を一致させることができる。
尚、図29における第1グランド30、第2グランド31の形状は一例であって、任意に決定しても良い。リアクタンス素子32の配置する位置に関しても、任意に決定してもよい。
(実施の形態4)
以下に、本発明のダイバーシティアンテナ装置の実施の形態4について、図30を用いて説明する。図30は、本発明のアンテナ装置201のブロック図である。尚、実施の形態3と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図30において、実施の形態4のアンテナ装置1は、少なくとも3端子を有するアンテナ素子206(図30においては、アンテナ素子206の形状を特定せず、ブラックボックスの状態で記載している)と、アンテナ素子206の第1端子202に一方が接続される第1線路207と、アンテナ素子206の第2端子203に一方が接続される第2線路208と、アンテナ素子206の第3端子204に一方が接続される第3線路209とを有し、第1線路207の他方と第2線路208の他方とは第1交点211に接続されている。そして、第3線路209の他方から信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208、及び第3線路209の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、及び第3整合回路215と、第1位相器217、第2位相器218、及び第3位相器219とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路221から送信された信号は、第3線路209の他方側及び第3端子204において相殺されるため、第2負荷回路222側へ概ね伝搬して行かない。逆に、第2負荷回路222から送信された信号についても、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点211から第1負荷回路221側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間でアイソレーションが確保できる事となる。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、アンテナ素子206を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、時間的、周波数的な制限を受けることなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態4のアンテナ装置201は、実施の形態3のアンテナ装置と比較して第3端子204と第2負荷回路222とを接続する線路の数、整合回路の数、位相器の数を減らす事ができるため、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第3線路209の他方から信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207及び第2線路208の線路長と、第1整合回路213及び第2整合回路214と、第1位相器217及び第2位相器218とが設計されていても良い。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点211から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点211から第1負荷回路側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行くこととなる。
このように、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子202と第2端子203との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路221へ伝搬させることができる。
更に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、特許請求の範囲の請求項5に記載の条件とを考慮した場合、第1端子202から第3端子204までの位相変化量と、第2端子203から第3端子204までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第3端子204において同相で足し合わされ、第2負荷回路222側へ概ね伝搬されてゆき、逆に、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第3端子204において逆相で足し合わされて相殺され、第2負荷回路222側へ概ね伝搬されて行かない。
よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路221側のみへ伝搬されてゆき、逆に、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路222側のみへ伝搬されて行くこととなる。
つまり、本実施の形態のアンテナ装置201は、第1端子202と第2端子203との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。尚、この場合に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点211においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点211は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点211から第1端子202、及び第2端子203までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第1交点211側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点211側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点212側へ伝搬して行く事となる。
これにより、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路221へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
故に、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、特許請求の範囲の各請求項に示した条件を満足できるのであれば、図30において第1整合回路213、第2整合回路214、第1位相器217、第2位相器218のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路207及び第2線路208における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点211と第1負荷回路221との間、第3端子204と第2負荷回路222との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態のダイバーシティアンテナ装置201と第1負荷回路221との間、及び、ダイバーシティアンテナ装置201と第2負荷回路222との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路213、第2整合回路214、第1位相器217、及び第2位相器218は、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、特許請求の範囲における請求項6に記載の条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路207が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
上記において、実施の形態4に係るダイバーシティアンテナ装置の特長の一つである小型でありながら相関係数の低い特性を実現できる点を説明してきた。
しかし、実施の形態4に係るダイバーシティアンテナ装置201においては、コモンモード給電した場合の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電の場合の共振周波数とが異なってしまうことが多い。このため、本願発明のダイバーシティアンテナ装置においては、図30のリアクタンス素子32の素子値を変更してコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置201の共振周波数を調整することで、ディファレンシャルモード給電時とコモンモード給電時のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数を一致させることができる。
尚、図30における第1グランド30、第2グランド31の形状は一例であって、任意に決定しても良い。リアクタンス素子32の配置する位置に関しても、任意に決定してもよい。
(実施の形態5)
以下に、本発明のダイバーシティアンテナ装置の実施の形態5について、図31を用いて説明する。図31は、本発明のダイバーシティアンテナ装置201のブロック図である。尚、実施の形態3と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図31において、本実施の形態5のアンテナ装置201は、第1端子202、及び第2端子203の2端子を少なくとも有するアンテナ素子206(図31においては、アンテナ素子206の形状を特定せず、ブラックボックスの状態で記載している)と、第1端子202に一方が接続される第1線路207と、第1端子202に一方が接続される第3線路209と、第2端子203に一方が接続される第2線路208と、第2端子203に一方が接続される第4線路210とを有し、第1線路207の他方と第2線路208の他方とは第1交点211に接続され、第3線路209の他方と第4線路210の他方とは第2交点212に接続されている。
そして、第1交点211から信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とは設計されている。
このことから、例えば、第1負荷回路221から送信された信号は、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の位相と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点212から第2負荷回路222側へ概ね伝搬して行かない。
逆に、第2負荷回路222から送信された信号についても、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点211から第1負荷回路221側へ概ね伝搬して行かない。
よって、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間でアイソレーションが確保できる事となる。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、アンテナ素子206を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。
つまり、第1負荷回路221と第2負荷回路222とは、時間的、周波数的な選択をする必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態5のダイバーシティアンテナ装置201は、実施の形態3のダイバーシティアンテナ装置と比較して、ダイバーシティアンテナ素子206との間を2つの接続端子のみで接続する事が可能であり、構造の簡易化を図ることが可能となる。
尚、第1交点211から第2交点212側へ信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とが設計されていても良い。
また、同様に、第2交点212から第1交点211側へ信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、及び第4整合回路216と、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、及び第4位相器220とが設計されていてもよい。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とは設計されてもよい。
ここで、例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子202と第2端子203との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となっている。故に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路8の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点211から第1負荷回路側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端20子2と第2端子203との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となっている。故に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差が±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点211において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点211から第1負荷回路側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行くこととなる。
このように、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、同振幅の絶対値の信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子202と第2端子203との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1負荷回路221へ伝搬させることができる。
更に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の位相と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件と、特許請求の範囲の請求項3に記載の条件とを考慮した場合、第1端子202から第2交点212までの位相変化量と、第2端子203から第2交点212までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点212において同相で足し合わされ、第2交点212から第2負荷回路222側へ概ね伝搬されてゆき、逆に、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点212において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点212から第2負荷回路222側へ概ね伝搬されて行かない。
よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1負荷回路221側のみへ伝搬されてゆき、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2負荷回路222側のみへ伝搬されて行くこととなる。つまり、本実施の形態のアンテナ装置1は、第1端子202と第2端子203との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子202と、第2端子203とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬する信号のコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
これにより、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器219、第2位相器220とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子202と第2端子203との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子202から第1交点211までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第1交点211までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点211においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点211は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点211から第1端子202、及び第2端子203までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第1交点211側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点211側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点212側へ伝搬して行く事となる。
これにより、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1負荷回路221へ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路207の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路208の第1交点211側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路207、第2線路208の線路長と、第1整合回路213、第2整合回路214と、第1位相器217、第2位相器218とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点211に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点211から第1負荷回路221側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子202から第2交点211までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子203から第2交点212までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路209、第4線路210との線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とは、設計されてもよい。
これにより、例えば、第1端子202と第2端子203との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子202から第2交点211までの位相変化量と、第2端子203から第2交点212までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点212においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点212は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点212から第1端子202、及び第2端子203までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子202及び第2端子203から、それぞれ第2交点212側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子202と第2端子203との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点212側へ概ね伝搬して行かず、概ね第1交点211側へ伝搬して行く事となる。これにより、第1負荷回路221へ伝搬するディファレンシャルモードの信号の顧問モードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2負荷回路222へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子202と、第2端子203とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路209の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路210の第2交点212側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路209、第4線路210の線路長と、第3整合回路215、第4整合回路216と、第3位相器219、第4位相器220とが設計されていてもよい。
これにより、第2交点212に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点212から第2負荷回路222側へ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子206に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャル信号の信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図31において、特許請求の範囲の各請求項に示した条件を満足できるのであれば、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、第4整合回路216、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、第4位相器220のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路207、第2線路208、第3線路209、及び第4線路210における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
また、必要であれば、第1交点211と第1負荷回路221との間、第2交点212と第2負荷回路222との間のうち少なくとも一方に、整合回路を接続しても良い。これにより、本実施の形態のダイバーシティアンテナ装置201と第1負荷回路221との間、及び、ダイバーシティアンテナ装置201と第2負荷回路222との間の整合状態を良好にすることができ、これらの間の反射損を低減でき、結果、電子機器の通信品質を良好なものにする事が可能となる。
尚、第1整合回路213、第2整合回路214、第3整合回路215、第4整合回路216、第1位相器217、第2位相器218、第3位相器219、第4位相器220とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、特許請求の範囲における請求項4に記載の条件を満たすために、レジスタンス素子や増幅回路(例えば、第1線路207が送信経路、受信経路を有しており、それぞれに送信用増幅回路、受信用増幅回路を有するような構成等)等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1負荷回路221と第2負荷回路222との間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
上記において、実施の形態5に係るダイバーシティアンテナ装置の特長の一つである小型でありながら相関係数の低い特性を実現できる点を説明してきた。
しかし、実施の形態5に係るダイバーシティアンテナ装置201においては、コモンモード給電した場合の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電の場合の共振周波数とが異なってしまうことが多い。このため、本願発明のダイバーシティアンテナ装置においては、図31のリアクタンス素子32の素子値を変更してコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置201の共振周波数を調整することで、ディファレンシャルモード給電時とコモンモード給電時のダイバーシティアンテナ装置の共振周波数を一致させることができる。
尚、図31における第1グランド30、第2グランド31の形状は一例であって、任意に決定しても良い。リアクタンス素子32の配置する位置に関しても、任意に決定してもよい。
(実施の形態6)
以下に、本発明のダイバーシティアンテナ装置の実施の形態5について、図32を用いて説明する。実施の形態1と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図32において、ダイバーシティアンテナ装置301は、第1アンテナエレメント302と第2アンテナエレメント303とが、電気長が1波長となるループアンテナにより構成されている。また、第1可変移相器4、第2可変移相器5、第1可変増幅器8、第2可変増幅器9、合成器6、信号処理部7は第1グランド30に近接して配置されており、第2グランド31は第1アンテナエレメント302の一端と電気的に接続されていると共に、第2アンテナエレメント303の一端とも電気的に接続されている。そして、図2の場合の第2グランド31と比較して、図32の第2グランド31のサイズはきわめて小さいものとなっている。
そして、第1グランド30と第2グランド31とは、リアクタンス素子32により電気的に接続されている。
図32のような構成とすることにより、第1アンテナエレメント302と第2アンテナエレメント303とがコモンモード給電された場合、放射に寄与する電流が、概ね、第1アンテナエレメント302と第2アンテナエレメント303とに分布することとなり、第2グランド31を小型化することが出来る。
また、ダイバーシティアンテナ装置302は、実施の形態1〜5において説明したのと同様の原理で、リアクタンス素子32の素子値を調整することにより、第1アンテナエレメント302と第2アンテナエレメント303とがコモンモード給電された場合の共振周波数と、ディファレンシャルモード給電された場合の共振周波数とを一致させることが出来るという有効な効果を有している。
尚、第1アンテナエレメント302、第2アンテナエレメント303、第1グランド30、第2グランド31、リアクタンス素子32は、任意の面(線)に対して電気的に対称な形状としてもよい。これにより、第1アンテナエレメント302と第2アンテナエレメント303をコモンモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置301の最大利得方向と、ディファレンシャルモード給電した場合のダイバーシティアンテナ装置301の最大利得方向とを直交させることが容易となる。
また、図32においては、図2の回路ブロック図を中心に示したが、図31に示した回路ブロックの場合においても、同様の効果が期待できる。
更に、図32においては、リアクタンス素子32が1素子の場合を示したが、図33に示すように、第2グランド31を2つに分割し、リアクタンス素子32を2つ用いた構成として、同様の効果が得られる。