《1》実施の形態1.
《1−1》概要.
図1は、本発明の実施の形態1による画像処理装置(すなわち、実施の形態1による画像処理方法を実施することができる装置)の構成を概略的に示すブロック図である。実施の形態1の画像処理装置は、mビット(mは自然数)のデジタルの入力画像信号Daをnビット(nは自然数)のデジタルの出力画像信号Dbに変換するビット数(階調数)拡張(n>m)の階調変換処理を行うことができる階調変換手段1を備えている。階調変換手段1による階調変換処理は、例えば、mビットの入力画像信号Daに、入力画像信号Daよりも下位のビットデータである補正ビットデータCdを付加することによってビット数を拡張且つ階調値を補正して、nビットの出力画像信号Dbを生成する処理である。
図1に示される階調変換手段1は、入力画像信号Daの空間方向の画素間の階調値の差分を階調が変化した際の階調変化量dfとして求め、求められた階調変化量dfに基づいて、各画素を、階調変化量dfが値0になる「階調平坦領域」(Ar=0)に属する画素、入力画像信号Daに含まれるノイズ成分によって階調変化量dfが値0ではない値になる「ノイズ領域」(「ノイズ階調変化領域」とも言う。)に属する画素、並びに、階調平坦領域及びノイズ領域のいずれでもない「非ノイズ階調変化位置」(「非ノイズ階調変化領域」とも言う。)の画素のいずれかに分類する判定を行い、該判定の結果を示す領域信号Arを出力する。すなわち、階調変換手段1は、画素領域を、階調平坦領域、ノイズ領域、非ノイズ階調変化位置の3つの領域に分割するための判定を行い、該判定の結果を示す領域信号Arを出力する。実施の形態1においては、階調平坦領域(df=0)の画素についての領域信号Arは値‘0’(Ar=0)であり、ノイズ領域の画素についての領域信号Arは値‘1’(Ar=1)であり、非ノイズ階調変化位置の画素についての領域信号Arは値‘2’(Ar=2)である。ただし、領域信号Arの値は、各画素が3つの領域のいずれに属する画素であるかを示す値であれば、他の値を採用してもよい。また、本発明は、階調平坦領域とノイズ領域とを1つ共通領域(後述する「平坦・ノイズ領域」)として扱う場合をも含んでいるので、領域信号Arとして、共通領域と非ノイズ階調変化位置との2つの領域を示す値を採用することも可能である。
また、階調変換手段1は、領域信号Arに基づいて、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素である基準画素から次に現れる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素までの間にある階調平坦領域及びノイズ領域(階調平坦領域及びノイズ領域(Ar=0,1)を「平坦・ノイズ領域」と言う。)の幅である「平坦・ノイズ領域幅」の予測値を示す「平坦・ノイズ領域幅データ予測値」を生成する。この基準画素の直後の平坦・ノイズ領域の幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstは、基準画素の直前の平坦・ノイズ領域幅と基準画素の直前に検出された直前基準画素において生成された直前平坦・ノイズ領域幅データ予測値とに基づいて計算(例えば、後述する図18(f)の「(0+7)/2」の計算、「(4+7)/2」の計算など)される。
さらに、階調変換手段1は、階調変化量dfを振幅制限して得られた振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとに基づいて、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の基準画素の直後の平坦・ノイズ領域における変換後データの階調値の傾きを設定する際に用いる傾きデータ値Kslを求め、階調変化量dfに基づいて画像のエッジ(輪郭)による出力画像信号の階調値の傾きを制限する補正制限係数rcを設定し、振幅制限階調変化量Xlmと傾きデータ値Kslと補正制限係数rcとを用いて、入力画像信号Daの階調値La(x)の補正値を求め、該補正値に対応する補正ビットデータCdを生成し、入力画像信号Daの階調値La(x)の画素のデータに対し補正ビットデータCdに応じた値を減算又は加算して、変換後データで構成される出力画像信号Dbを生成する。
実施の形態1の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれている場合であっても、ノイズ領域(Ar=1)を非ノイズ階調変化位置(Ar=2)と区別して検出し、入力画像信号Daの階調値が非常に緩やかに変化する区間における平坦・ノイズ領域幅(ノイズ成分がない場合には「階調平坦領域幅」ともいう。)をノイズ成分に影響されずに正確に検出することができる。このため、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを用いて算出される傾きデータ値Kslをノイズ成分により影響されずに適切に求めることができ、この傾きデータ値Kslを用いて算出される補正ビットデータCdを適切に求めることができ、補正ビットデータCdを用いて行われる画像信号の階調変換処理を適切に行うことができる。その結果、入力画像信号Daの非常に緩やかに階調値が変化する区間における画像を、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることなく、階調の変化が滑らかな高品位な画像として表示させることができる出力画像信号Dbを生成することができる。また、実施の形態1における階調変換手段1の処理には、平坦・ノイズ領域幅に相当する容量の画像メモリを用いる必要がないので、上記階調変換処理を、回路規模を大幅に増やさず、実時間の信号処理により実現することができる。
《1−2》構成.
《1−2−1》画像処理装置.
図1に示されるように、実施の形態1の画像処理装置は、時間方向及び空間方向に離散したデータで構成される入力画像信号Daが入力され、この入力画像信号Daの階調数を拡張し且つ階調値(階調レベル)を補正する変換処理によって生成された変換後データで構成される出力画像信号Dbを出力する階調変換手段1を有している。階調変換手段1は、階調変化量検出手段10と、画素領域判定手段20と、平坦・ノイズ領域幅判定手段30と、傾き検出手段40と、エッジ変化検出手段60と、補正ビット生成手段50と、遅延補償手段91と、画素値演算手段92とを有している。
階調変化量検出手段10は、入力画像信号Daから、互いに隣接配置(例えば、水平方向又は垂直方向に隣接配置)された画素の階調値の差分である階調変化量dfを算出して出力する階調変化量算出手段11と、階調変化量dfの値を所定の範囲内に制限した振幅制限階調変化量Xlmを生成して出力する階調変化量制限手段12とを備えている。
画素領域判定手段20は、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfから、各画素を、df=0である「階調平坦領域に属する画素」、ノイズ成分によってdf≠0となる「ノイズ領域に属する画素」、ノイズ成分によらずにdf≠0となる「非ノイズ階調変化位置の画素」のいずれかに分類する判定を行い、判定結果を示す領域信号Arを出力する。このよう各画素を3つの領域に分類(区別)する判定を行うことにより、水平方向(又は垂直方向)に並ぶ画素によって構成される画素領域は、「階調平坦領域」(Ar=0)、「ノイズ領域」(Ar=1)、「非ノイズ階調変化位置」(Ar=2)の3つの領域に区別(分割)される。
平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、画素領域判定手段20からの領域信号Arから、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素が検出されるごとに、この検出された非ノイズ階調変化位置の画素を基準画素とし、この基準画素の直後の平坦・ノイズ領域の平坦・ノイズ領域幅(すなわち、非ノイズ階調変化位置の基準画素と次に現れる非ノイズ階調変化位置の画素との間にある平坦・ノイズ領域幅の予測値)である平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを生成する手段である。平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、基準画素の直前の平坦・ノイズ領域の平坦・ノイズ領域幅と基準画素の直前に検出された直前基準画素において生成された直前平坦・ノイズ領域幅データ予測値とに基づいて、基準画素の直後の平坦・ノイズ領域の平坦・ノイズ領域幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを生成する。
傾き検出手段40は、階調変化量検出手段10からの振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅判定手段30からの平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとに基づいて、非ノイズ階調変化位置の基準画素の直後の平坦・ノイズ領域における変換後データの階調値の傾きを設定する際に用いる傾きデータ値Kslを求める手段である。
エッジ変化検出手段60は、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfに基づいて階調変化位置における階調変化が画像のエッジによる階調変化であるか否かを判定し、該判定結果に応じて出力画像信号Dbの階調値の傾きを制限する補正制限係数rcを設定する手段である。
補正ビット生成手段50は、階調変化量検出手段10からの振幅制限階調変化量Xlmと、傾き検出手段40からの傾きデータ値Kslと、エッジ変化検出手段60からの補正制限係数rcとから、入力画像信号Daの階調値の補正値を求め、該補正値に対応する補正ビットデータCdを生成する手段である。
遅延補償手段91は、入力画像信号Daを遅延させて画像信号Ddとして画素値演算手段92に出力する手段である。画素値演算手段92は、入力画像信号Da(Dd)の階調値に対し補正ビットデータCdに応じた値を減算又は加算して、変換後データで構成される出力画像信号Dbを生成する手段である。
階調変換手段1は、mビットの入力画像信号Da(Dd)に下位ビットとして補正ビットデータCdを付加することによって、mビットの入力画像信号Da(Dd)をnビットの出力画像信号Dbにビット数を拡張して順次出力する。また、階調変換手段1は、補正制限係数rcを用いることによって、階調変化位置における階調変化量dfが大きいとき(階調値の変化が画像のエッジ(輪郭)による変化であると判定したとき)には、補正ビットデータCdを0にし(又は0に近づけ)、階調変化位置における階調変化量dfが小さいときには、補正ビットデータCdを傾きデータ値Kslに基づく値としている。
実施の形態1における画像処理装置及び画像処理方法は、画像が表示された画面の一定方向(例えば、水平方向)に非常に緩やかに階調値が変化する画像領域に対し、回路規模を大幅に増やすことなく、ノイズ領域(Ar=1)における階調変化(df≠0)を、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における階調変化(df≠0)と区別して検出して、階調変化をより適切に検出する。このため、検出結果に基づいて画像信号の階調を十分な階調数へ拡張し、また、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることなく、階調が滑らかに変化する画像を表示させることができる出力画像信号Dbを生成することができる。
また、実施の形態1の画像処理装置及び画像処理方法においては、階調変化位置における階調値の変化が画像のエッジ(輪郭)による変化であると判定された場合には、補正制限係数rcによって、補正ビットデータCdを0にする(又は0に近づける)ことによって、入力画像信号Daの値に忠実な出力画像信号Dbを生成することができる。このため、実施の形態1の画像処理装置によって階調変換された出力画像信号Dbが入力された表示手段(図1には示さず)は、入力画像信号Daの値に忠実に表示すべき画像の輪郭などにおいては、入力画像信号Daの値に忠実に画像を表示でき、且つ、入力画像信号Daの階調値が非常に緩やかに変化する区間(階調平坦領域であるが、ノイズ領域をも含む。)においては、擬似輪郭を低減した高品位な画像の表示を実現することができる。
なお、本出願において、「…手段」として示される構成は、電気回路(ハードウェア)によって実現されるもの、又は、ソフトウェアによって実現されるもののいずれであってもよい。
図1においては、アナログ又はデジタルの画像信号がmビットのデジタル画像信号の形式に変換されて、階調変換手段1に、入力画像信号Daとして入力される。階調変換手段1は、例えば、Qビットの補正ビットデータCdを生成し、Qビットの補正ビットデータCdをmビットの入力画像信号Daの最下位側に付加して階調数を拡張し、nビットの出力画像信号Dbを生成する。入力画像信号Daのビット数mは、例えば、8ビットであり、階調補正値のビット数Qは、例えば、4ビットであり、出力画像信号Dbのビット数nは、例えば、12ビットである。また、実施の形態1においては、入力画像信号Daの階調値の変化を検出する一定方向が、画面の水平方向(画面表示水平走査方向)である場合を説明する。また、実施の形態1においては、階調変換手段1は、階調変化量dfが8ビットの入力画像信号Daの最下位1ビット分の差、すなわち、画素間の階調値の差分が+1又は−1の変化である区間を、非常に緩やかに階調値が変化する区間として、階調変換処理を行い、非常に緩やかに階調値が変化する区間を階調が滑らかに変化する画像として表示できるようにする。
なお、画像信号は、輝度と色度で表す形式、又は、赤(R)、緑(G)、青(B)などの原色信号で表わす形式があるが、階調変換手段1は、画像信号がいずれの形式の信号であっても画像信号処理を行うことができる。また、以下においては、階調変換手段1がいずれか1つの形式の画像信号を処理する場合を説明する。また、以下においては、入力画像信号Daの水平方向に対し画像処理を行い、8ビットの入力画像信号Daの階調数を拡張及び補正する階調変換補正処理を行い、12ビットの出力画像信号Dbとして出力する場合を説明する。
図2(a)〜(c)は、実施の形態1による画像処理装置における信号波形(入力画像信号Daの階調値が非常に緩やかに上昇し、ノイズ成分を含まない場合)を示す図であり、図2(a)は、8ビットの入力画像信号Daの最下位ビット付近の階調値La(x)(階調値1〜6の範囲)を示し、図2(b)は、入力画像信号Daの階調変化量df及び階調変化位置(非ノイズ階調変化位置のみ)を示し、図2(c)は、階調数が拡張された12ビットの出力画像信号Dbの最下位ビット付近の階調値Lb(x)(階調値16〜96の範囲)を示す。なお、図2(a)〜(c)の横軸は、画面の水平方向に並ぶ画素の位置xを示す。また、図2(a)の縦軸は、各画素位置における8ビットの入力画像信号Daの階調値La(x)を示し、図2(b)の縦軸は、階調変化量dfを示し、図2(c)の縦軸は、各画素位置における12ビットの出力画像信号Dbの階調値Lb(x)を示す。図2(a)には、入力画像信号Daの階調値La(x)が、水平方向の画素位置x=8〜40の間で8画素ごとに、階調値の最下位1ビット分の1階調ずつ緩やかに増加している場合が示されている。図2(b)には、階調変換手段1において求められる入力画像信号Daの階調変化量df、階調値の変化がない階調平坦領域幅(「平坦・ノイズ領域幅」でもある。)と画素位置との関係が示されている。図2(c)には、階調変換手段1から出力される12ビットの出力画像信号Dbの階調値Lb(x)の変化が示されている。階調差が大きく、例えば、2階調より大きい場合には、隣接画素間の境界において、信号の階調レベルは滑らかに変化していないと言うことができる。このため、階調差が大きい(例えば、2階調以上)の場合には、この階調の境界に輪郭が見えても問題はない。一方、階調差が1階調である場合は、隣接画素間の境界において信号の階調レベルは滑らかに変化しているものの、上記の境界に量子化ノイズ又は擬似輪郭が発生する場合がある。このような、階調差が1階調で緩やかに(低周波で)階調値が変化する画像信号の画素においては、階調値がより滑らかに変化するように(例えば、図2(c)に示されるように)、画像信号Daの階調数を増やす階調変換を行う。
図3(a)〜(c)は、実施の形態1による画像処理装置における信号波形(入力画像信号Daの階調値が非常に緩やかに上昇し、ノイズ・誤差等のノイズ成分を含む場合)を示す図であり、図3(a)は、8ビットの入力画像信号Daの最下位ビット付近の階調値La(x)(階調値1〜6の範囲)を示し、図3(b)は、入力画像信号Daの階調変化量df及び階調変化位置(この図においては、ノイズ領域及び非ノイズ階調変化位置)を示し、図3(c)は、階調数が拡張された12ビットの出力画像信号Dbの最下位ビット付近の階調値Lb(x)(階調値16〜96の範囲)を示す。なお、図3(a)〜(c)の横軸は、画面の水平方向に並ぶ画素の位置xを示す。また、図3(a)の縦軸は、各画素位置における8ビットの入力画像信号Daの階調値La(x)を示し、図3(b)の縦軸は、階調変化量dfを示し、図3(c)の縦軸は、各画素位置における12ビットの出力画像信号Dbの階調値Lb(x)を示す。
図3(a)には、入力画像信号Daの階調値La(x)が、水平方向の画素位置x=8〜40の間で8画素ごとに、階調値の最下位1ビット分の1階調ずつ緩やかに増加しているが、ノイズ成分を含む場合が示されている。図3(a)は、図2(a)に示した1階調ずつ緩やかに増加している入力画像信号に対し、ノイズ成分が追加された例を示している。図3(a)の例においては、画素位置x=19(=x1)の画素において階調値が1階調だけ増加している。また、図3(a)の例においては、画素位置x=35(=x2)の画素において階調値の変化があり、その前後の画素位置x=34(=x2−1)の画素及び画素位置x=36(=x2+1)の画素において、1階調の範囲内の階調値の増加又は減少となる高周波の変化がある。
図3(b)には、階調変換手段1において求められる入力画像信号Daの階調変化量df、階調値の変化がない階調平坦領域(df=0)と、ノイズ領域(x=x1−1,x1,x2−1,x2,x2+1)と、非ノイズ階調変化位置(画素位置x=8,16,24,32,40)とが示されている。図3(b)においては、水平方向の画素位置x=8〜40の間で8画素ごとに1階調の差で階調値が変化している画素(画素位置x=8,16,24,32,40)における階調変化量は、1階調(df=+1)として得られる。また、図3(b)においては、画素位置x1及びその後における画素位置x1+1、並びに、画素位置x2及びその前後における画素位置x2−1,x2+1においても、階調変化量dfが0ではない値として得られる。この階調変化量dfの値のみにより、階調値の変化を検出するのであれば、高周波の変化がある階調変化に対しても、検出すべき階調変化の画素位置とみなされることになり、(例えば、ノイズ領域の画素を非ノイズ階調変化位置の画素と誤って検出する)誤検出の原因となる。
一般に、人間の目は、高周波成分よりも低周波成分に対する方が感度が高く、量子化ノイズ又は擬似輪郭が発生して認識される場合は、変化の階調差は1階調付近で、ある程度の幅で単調に階調値が増加又は減少する緩やかな(低周波の)階調変化である。一方、ノイズ(誤差)成分は数画素の範囲の領域で階調値の増加、減少が起こる高周波の変化であり、その振幅は画像信号のレベルに比べてある程度小さいと考えられる。よって、図3(b)の画素位置x1及びx2のそれぞれの前後における画素における階調値の変化は、数画素の範囲の領域で増加、減少となる高周波の変化であり、その変化の階調差は比較的小さい振幅となっており、これらの変化は、ノイズ・誤差等のノイズ成分によるものと言える。画像信号の緩やかな階調変化を表示画像において一層滑らかに表示するためには、ノイズ成分による階調変化を除き、緩やかに階調値が変化する画像領域の平坦・ノイズ領域幅を適切に求め、階調値の傾きを適切に求めて、緩やかに(低周波で)階調値が変化する画像信号の画素の階調値がより滑らかに変化するようにする必要がある。
図3(c)には、階調変換手段1から出力される12ビットの出力画像信号Dbの階調値Lb(x)の変化が示されている。図3(c)は、図3(a)の信号を、(ノイズ成分による高周波の変化はあるが)緩やかに階調値が変化する領域である平坦・ノイズ領域の平坦・ノイズ領域幅と、階調値の傾きを求めて、階調数を増やす階調変換を行った場合の階調変換手段1から出力される12ビットの出力画像信号Dbの階調値の一例を示している。図3(c)の例で示されるように、階調変換手段1においては、ノイズ成分による階調値の変化を残したまま、その他の緩やかな階調変化は、階調値がより滑らかに変化するように階調変換が行われる。
《1−2−2》階調変化量検出手段10.
階調変化量検出手段10には、入力画像信号Daが入力される。階調変化量検出手段10は、入力画像信号Daにおける水平方向に隣接する画素間の階調値(画素値又は階調レベル)の差を算出して階調変化量dfとして求め、これを出力すると共に、階調変化量dfの値を所定の範囲内に制限した振幅制限階調変化量Xlmを出力する。
階調変化量検出手段10に、図2(a)又は図3(a)に示されるような入力画像信号Daが入力されると、階調変化量検出手段10は、水平方向の画素位置xの画素とその直前の画素位置x−1の画素との間の階調値の差(階調変化量)を算出し、例えば、図2(b)又は図3(b)に示されるような階調変化量dfを得る。階調変化量検出手段10で得られた階調変化量dfがdf≠0である画素位置にある画素は、階調値が変化する画素位置(すなわち、非ノイズ階調変化位置)の画素、又は、ノイズ成分による階調値の変化がある画素位置(すなわち、ノイズ領域)の画素である。例えば、図2(b)に示される例においては、画素位置x=8から8画素数ごとの画素位置において、階調変化量df=+1となっており、画素位置x=8から8画素数ごとの画素位置の間の画素において、階調変化量df=0となっている。一方、図3(b)に示される例においては、画素位置x=8から8画素数ごとの画素位置で階調変化量df=+1であり、ノイズ成分のある画素位置x1(=19)においては階調変化量df=+1であり、その直後の画素位置x1+1(=20)においては階調変化量df=−1であり、画素位置x2(=35)においては階調変化量df=−2であり、画素位置x2の直前の画素位置x2−1においては階調変化量df=+1であり、画素位置x2の直後の画素位置x2+1においては階調変化量df=+1であり、その他の画素においては階調変化量df=0である。
図1に示されるように、階調変化量検出手段10は、例えば、階調変化量算出手段11と、階調変化量制限手段12とから構成される。階調変化量算出手段11は、入力画像信号Daから、例えば、水平方向に隣接する画素間の階調変化量dfを算出して、算出された階調変化量dfを、階調変化量制限手段12、画素領域判定手段20、及びエッジ変化検出手段60へ出力する。階調変化量制限手段12は、階調変化量dfに基づいて生成された振幅制限階調変化量Xlmを、傾き検出手段40及び補正ビット生成手段50へ出力する。
階調変化量算出手段11に入力画像信号Daが入力されると、階調変化量算出手段11は、入力画像信号Daにおける水平方向に隣接する画素間の階調値の差分を算出して階調変化量dfとして求める。ここで、処理する注目画素の水平方向画素位置をxとし、この画素位置における階調値をLa(x)とすると、階調変化量算出手段11は、画素位置xの注目画素の直前の画素(画素位置x−1の画素)を1画素遅延して得られた階調値をLa(x−1)とするとき、画素位置xにおける階調値La(x)から画素位置x−1における階調値La(x−1)を減算した値を算出することにより、階調変化量dfを求める。すなわち、図2(a)又は図3(a)によれば、画素間の階調値の差分である階調変化量dfは、
df=La(x)−La(x−1)
で計算することができる。画素間の階調値の差分である階調変化量dfが0の場合は、階調値の変化がない階調平坦領域の画素であり、階調値が変化した画素又はノイズ成分による階調値の変化がある画素においては、差分の絶対値が階調値の差として、階調値の変化が増加か減少かの方向が値の符号(極性)(階調が増加の場合は正符号「+」、減少の場合は負符号「−」)として得られる。階調変化量算出手段11で得られた階調変化量dfは、画素領域判定手段20、エッジ変化検出手段60、及び階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12へ送られる。
階調変化量制限手段12に階調変化量算出手段11からの階調変化量dfが入力されると、階調変化量制限手段12は、階調変化量dfが所定の階調値の範囲内、例えば、−1から+1までの範囲内の値(整数)となるように、階調変化量dfの値を制限し、値が制限された階調変化量を振幅制限階調変化量Xlmとして出力する。ここでの制限の範囲である−1から+1までの範囲は、階調変換手段1においては8ビットの入力画像信号Daの最下位1ビット分の差である。よって、階調変化量制限手段12から出力される振幅制限階調変化量Xlmは、値が−1,0,+1の3値で構成される。この振幅制限階調変化量Xlmは、傾き検出手段40及び補正ビット生成手段50へ出力され、水平方向に対する階調値の傾き算出の際に、階調変化の高さとして用いられる。
《1−2−3》画素領域判定手段20.
図1において、画素領域判定手段20には、階調変化量算出手段11からの階調変化量dfが入力される。画素領域判定手段20は、入力された階調変化量dfの値から、ノイズ成分による階調値の変化を判定して、各画素を、階調平坦領域(Ar=0)に属する画素、ノイズ領域(Ar=1)に属する画素、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素ごとに、画素の領域判定結果を示す領域信号Arを生成し出力する。領域信号Arは、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50へ出力される。
図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)で説明したように、階調変化量dfの絶対値が1階調以上である階調変化又はノイズ成分による階調変化があると、階調変化量dfの絶対値の大きさは0より大きな値(|df|>0)となり、階調値が変化せず平坦である画素においては、階調変化量df=0となる。そして、ノイズ成分は、数画素の範囲の領域で階調値が増加又は減少する高周波の変化で、その変化の階調差は比較的小さい振幅、すなわち、比較的小さい所定の閾値Nd(例えば、最小階調差の2倍の値、Nd=2など)以下となるため、階調変化量dfの絶対値|df|>0となる画素のうちノイズ成分による画素における変化は、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfの値とその極性(正負を示す符号)により判定できる。すなわち、階調変化量dfの絶対値|df|>0となる画素のうちノイズ成分による画素における階調変化であるか否か(ノイズ領域に属する画素であるか否か)は、画素位置xの画素の階調変化量df(x)、画素位置x−1の画素の階調変化量df(x−1)、画素位置x+1の画素の階調変化量df(x+1)を得て、注目画素の階調変化量df(x)の大きさ、並びに、階調変化量df(x)の極性と、階調変化量df(x−1)の極性、階調変化量df(x+1)の極性との関係により判定できる。
図4(a)及び(b)は、ノイズ成分と判定される画素の一例を示す図であり、図4(a)は、直前及び直後の画素よりも階調値が1上昇している1個の画素(1個の‘1階調変化画素’)からなるノイズ成分を示し、図4(b)は、直前及び直後の画素よりも階調値が1階調減少している1個の画素(1個の‘1階調変化画素’)からなるノイズ成分を示す。
図4(a)及び(b)は、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波成分の変化)を示し、ノイズ成分となる画素の画素位置と階調値Laの変化の一例を示している。図4(a)及び(b)における横軸は水平方向の画素位置xを示し、縦軸は各画素位置における入力画像信号Daの階調値La(x)を示している。図4(a)は画素位置x1で1階調増加し、画素位置x1+1で1階調減少するノイズ成分であり、図4(b)は画素位置x2で1階調減少し、画素位置x2+1で1階調増加するノイズ成分を示している。
図4(a)の場合、階調変化量算出手段11から出力され画素領域判定手段20に入力される階調変化量dfは、画素位置x1で階調変化量df(x1)=+1、その直後の画素位置x1+1で階調変化量df(x1+1)=−1となる。図4(b)の場合、階調変化量算出手段11から画素領域判定手段20に入力される階調変化量dfは、画素位置x2で階調変化量df(x2)=−1、その直後の画素位置x2+1で階調変化量df(x2+1)=+1となる。このように、ノイズ成分による階調値の高周波の変化があると、階調変化量df(x)の絶対値は比較的小さい値(予め設定された閾値Nd)以下になり、且つ、注目画素の直前の画素に対する注目画素の階調変化量の符号(極性)と、注目画素に対する注目画素の直後に位置する画素の階調変化量の符号(極性)とが、異符号(すなわち、反対極性)になる変化が存在する。
したがって、注目画素の直前の画素に対する注目画素の階調変化量の大きさ及び極性と、注目画素に対する注目画素の直後に位置する画素の階調変化量の大きさ及び極性とから、図4(a)及び(b)に示されるようなノイズ成分となる画素(ノイズ領域(Ar=1)の画素)を判定することができる。また、階調変化量df=0から、階調平坦領域(Ar=0)の画素を判定することができる。また、ノイズ領域の画素及び階調平坦領域の画素のいずれにも属さない画素を、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素と判定することができる。このように、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行うことによって、各画素が属する領域が、階調平坦領域か、ノイズ領域か、非ノイズ階調変化位置かを示す領域信号Arを生成し出力することができる。
画素領域判定手段20は、まず、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfに対し画素遅延するなどして、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfを得て、得られた階調変化量dfの大きさとその極性の関係から、ノイズ成分による変化であるか否かを判定して、画素位置xにおける画素が、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行う。
それぞれの画素位置における階調変化量dfは、階調値の変化がない階調平坦領域の画素においては値0である。また、階調値が変化した画素位置における階調変化量dfは、その絶対値|df|を階調差とし、階調値の変化の方向(増加又は減少)が階調変化量dfにおける極性(すなわち、正負の符号)として得られる。ここで、階調値が増加の場合は階調変化量は正(df>0)となり、その極性は正(+)となり、階調値が減少の場合は階調変化量は負(df<0)となり、その極性は負(−)となる。そして、図4(a)及び(b)に示されるように、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化が存在するノイズ成分の場合は、階調変化量dfの絶対値|df|は比較的小さい予め設定された閾値Nd以下になり、且つ、注目画素の階調変化量の極性(正負の符号)と、注目画素の直前又は直後のいずれかの画素の階調変化量の極性(正負の符号)とが反対極性(異符号)になっている。
したがって、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfである、階調変化量df(x),df(x−1),df(x+1)を得た後、以下に示す3つの判定(すなわち、判定A1,A2,A3)によって、画素位置xの注目画素における画素領域が、階調平坦領域、又は、ノイズ領域、又は、非ノイズ階調変化位置のいずれの領域であるか判定を行う。
(判定A1)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、df(x)=0である場合には、注目画素は、階調平坦領域に属する画素であり、領域信号Arは、Ar=0になる。
(判定A2)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x−1)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x+1)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)には、
注目画素は、ノイズ領域に属する画素であり、領域信号Arは、Ar=1になる。
(判定A3)
判定A1において、注目画素が階調平坦領域に属する画素ではないと判定され、且つ、判定A2において、注目画素がノイズ領域に属する画素ではないと判定された画素位置xの注目画素は、非ノイズ階調変化位置の画素であり、領域信号Arは、Ar=2になる。
図5は、図1に示される画素領域判定手段20の構成の一例を概略的に示すブロック図である。画素領域判定手段20は、上記判定A1〜A3を行うことができる。また、図6(a)〜(g)は、図1及び図5に示される画素領域判定手段20の動作の一例を説明するための図であり、ノイズ成分を含む入力画像信号Da(図3(a)の波形と同じ)に対する上記判定A1〜A3を説明するための図である。
図5に示されるように、画素領域判定手段20は、例えば、画素領域の判定に使用する各画素(すなわち、注目画素及びその隣接画素)の階調変化量を抽出する画素変化量抽出手段21と、階調変化量dfの絶対値|df|の大きさ(レベル)を所定の閾値と比較する絶対値レベル比較手段22と、隣接位置極性判定手段23及び24と、合成手段25と、領域信号生成手段26とから構成される。隣接位置極性判定手段23及び24は、入力が異なるが、両方を同じ構成とすることができる。
図5において、画素領域判定手段20に入力された階調変化量dfは、画素変化量抽出手段21に入力される。画素変化量抽出手段21は、例えば、2つの画素遅延手段(図5に「D」で示す。)211,212により構成される。画素変化量抽出手段21は、階調変化量dfを画素遅延して、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)と、画素位置xの注目画素の前後に位置する隣接画素位置x−1及びx+1における階調変化量df(x−1)及びdf(x+1)を抽出する。階調変化量df(x)、df(x−1)、及びdf(x+1)により、画素位置xにおける画素、階調値の変化に基づいて3つの画素領域に分類する判定A1〜A3を行う。
絶対値レベル比較手段22には、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が入力される。絶対値レベル比較手段22は、階調変化量dfの絶対値のレベルを所定の閾値と比較する。所定の閾値は、例えば、値0と、ノイズ成分における階調差に相当する比較的小さい値Nd(例えば、最小階調差の2倍の値、Nd=2)とする。階調変化量df(x)の値が0の場合(上記判定A1において、注目画素が、階調平坦領域(df(x)=0)の画素であると判定する場合)と、階調変化量絶対値|df(x)|≦Ndの場合(上記判定A2における条件の1つを満たす場合)とを判定することで、階調変化量df(x)の絶対値のレベルを判定し、判定結果を比較結果nlfとして出力する。
絶対値レベル比較手段22で求められた比較結果nlfの値は、例えば、階調変化量df(x)=0の場合は、比較結果nlf=1とし、階調変化量df(x)≠0且つ階調変化量絶対値|df(x)|≦Ndの場合は、比較結果nlf=2、それ以外の場合(Nd<|df(x)|)は、比較結果nlf=0とする。なお、比較結果nlfの値は、上記値に限るものではなく、階調変化量dfの絶対値のレベルの比較結果が示さる値であれば、他の値であってもよい。また、所定の閾値Ndについては、Nd=2として説明するが、所定の閾値Ndは、画像信号より十分に小さく、入力される画像信号に含まれるノイズ・誤差などのノイズ成分の振幅の大きさを考慮した値(ノイズ成分と判定したい階調変化量よりも大きい値)であれば、他の値に設定してもよい。
隣接位置極性判定手段23には、画素変化量抽出手段21により得られた階調変化量df(x)と、階調変化量df(x−1)とが入力される。また、隣接位置極性判定手段24には、画素変化量抽出手段21により得られた階調変化量df(x)と、階調変化量df(x+1)とが入力される。隣接位置極性判定手段23及び24は、前者には階調変化量df(x−1)が入力され、後者には階調変化量df(x+1)が入力される点が異なるが、構成は同様である。隣接位置極性判定手段23及び24は、画素位置xの注目画素が、上記判定A2における条件の1つ(ノイズ領域における隣接画素に高周波成分の変化を持つという条件)を満たすか否かを判定する。
隣接位置極性判定手段23は、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−1)の極性をもとに、画素位置xと隣接する画素位置x−1で反対方向の変化となる高周波成分の変化を持つか、すなわち、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−1)の極性が反対(符号が不一致)か否かを判定し、画素位置xにおける判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf1を求める。判定結果pf1の値は、例えば、階調変化量の極性が逆となる場合は、値‘1’(pf1=1)とし、同一の場合は値‘0’(pf1=0)とする。なお、判定結果pf1の値は、上記値に限るものではなく、符号が不一致か一致かが示される値であれば、他の値であってもよい。
同様に、隣接位置極性判定手段24は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x+1)の極性をもとに、画素位置xと隣接する画素位置x+1で反対方向の変化となる高周波成分の変化を持つか、すなわち、階調変化量df(x)と階調変化量df(x+1)の極性が反対(符号が不一致)か否かを判定し、画素位置xにおける判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf2を求める。判定結果pf2の値は、例えば、階調変化量の極性が逆となる場合は、値‘1’(pf2=1)とし、同一の場合は値‘0’(pf2=0)とする。なお、判定結果pf2の値は、上記値に限るものではなく、符号が不一致か一致かが示される値であれば、他の値であってもよい。
合成手段25には、隣接位置極性判定手段23,24からの判定結果pf1,pf2が入力される。合成手段25は、判定結果pf1,pf2を合成し、画素位置xにおける階調変化量df(x)に対し、隣接画素のいずれかの階調変化量の極性が反対となる場合の極性判定結果pofを求める。合成手段25は、例えば、ORゲートで構成することで、判定結果pf1=1又は判定結果pf2=1となる場合に、極性判定結果pof=1として出力する。これにより、画素位置xの階調変化量df(x)が、画素位置xの直前又は直後に隣接するいずれかの画素における階調変化量と極性が反対となる場合を判定した結果が得られる。
領域信号生成手段26には、絶対値レベル比較手段22からの比較結果nlfと、合成手段25からの極性判定結果pofが入力される。領域信号生成手段26は、上記判定A1〜A3で示した判定によって画素領域を分類し、各領域判定結果を示す領域信号Arを生成し出力する。すなわち、領域信号生成手段26は、判定A1〜A3で示した判定を行い、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、判定結果に応じた値の領域信号Arを生成する。これにより、各画素における階調値の変化を3領域に分類する領域信号Arが得られ、各画素が階調平坦領域、又は、ノイズ領域、又は、非ノイズ階調変化位置のいずれの領域に属するかが示される。
図6(a)は、入力画像信号Daの水平方向の画素位置xを示し、図6(b)は、入力画像信号Daの階調値La(x)を示し、図6(c)は、階調変化量検出手段10において求められる隣接する画素間の階調値の差分による階調変化量dfを示し、図6(d)〜(f)は、図5の画素領域判定手段20において求められる階調変化量df(x)のレベルの比較結果nlf、隣接画素との極性判定の判定結果pf1,pf2を示し、図6(g)は、領域信号生成手段26から出力される領域信号Arを示す。
例えば、図6(a)〜(g)において、ノイズ成分を含む入力画像信号Da(図6(b))に対して得られる隣接する画素間の階調値の差分による階調変化量df(図6(c))は、画素位置x=16,24,32,40における階調変化量df=+1として得られるが、画素位置x1及びその後における画素位置x1+1、並びに、画素位置x2及びその前後における画素位置x2−1,x2+1における画素のノイズ成分においても、階調変化量dfが0ではない値として得られる。この階調変化量が画素領域判定手段20に入力されると、画素位置x1における階調変化量df(x1)=+1≦Ndであり、その隣接する画素位置x1+1における階調変化量df(x1+1)=−1<0であるので、図5における絶対値レベル比較手段22からの比較結果nlf=2で、隣接位置極性判定手段24からの判定結果pf2=1、すなわち、合成手段25からの極性判定結果pof=1となる。したがって、領域信号生成手段26から出力される領域信号Arはノイズ領域を示す値‘1’となる。
画素領域判定手段20において、上記判定A1〜A2を、他の画素について実行すると、画素位置x1+1の画素、画素位置x2の画素、画素位置x2−1の画素、画素位置x2+1の画素で、領域信号Ar=1となる。したがって、図6(a)〜(g)に示される例においては、画素位置x1の画素及び画素位置x1+1の画素は、ノイズ領域の画素であると判定される。また、画素位置x2−1の画素、画素位置x2の画素、及び画素位置x1+1の画素は、ノイズ領域の画素であると判定される。
以上により、画素領域判定手段20は、階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x+1)から、階調変化量df(x)の値、並びに、階調変化量df(x)の極性、階調変化量df(x−1)の極性、階調変化量df(x+1)の極性を求め、これらを用いた上記判定A1〜A3により、画素位置xの注目画素の画素が階調平坦領域、ノイズ領域、非ノイズ階調変化位置のいずれの領域に属する画素であるかの判定を行い、画素の領域判定結果を示す領域信号Arを得ることができる。この判定方法は、同じ階調値の連続や一定値以内の階調差の検出で画素領域を判定するのではなく、ノイズ成分による階調変化を、階調変化量dfの値の大きさ、極性で判定するので、ノイズの影響は少なく、隣接画素における階調変化量のみによって、より一層正確に階調平坦領域、ノイズ領域、非ノイズ階調変化位置のいずれの領域に属する画素であるかの判定を行うことができる。
なお、図5の画素領域判定手段20は、画素変化量抽出手段21において階調変化量df(x)、df(x−1)、及びdf(x+1)を抽出するよう構成したが、階調変化量検出手段10において階調変化量dfを求める際に、画素位置xとその隣接画素における階調変化量を求めることで得てもよく、この場合には、画素変化量抽出手段21における画素遅延を省略することができる。また、隣接位置極性判定手段23及び24のぞれぞれは、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−1)の極性に基づく判定、及び、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x+1)の極性に基づく判定を行うので、画素変化量抽出手段21又は階調変化量検出手段10で求める画素位置xの隣接画素位置x−1とx+1における階調変化については、その極性のみ得る構成としてもよい。
《1−2−4》平坦・ノイズ領域幅判定手段30.
平坦・ノイズ領域幅判定手段30には、画素領域判定手段20からの領域信号Arと、図示しない同期信号(例えば、水平方向走査期間に同期する信号)が入力される。平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、水平方向走査期間ごとに、画素領域判定手段20からの領域信号Arに基づき、階調変化がなく平坦な期間(ノイズ成分を含む場合がある。)の幅である平坦・ノイズ領域幅(ノイズ成分を含まない場合には、階調平坦領域の幅である。)を求める。実施の形態1においては、平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、例えば、領域信号Ar=2で示される非ノイズ階調変化位置を基準画素として、非ノイズ階調変化位置の直前画素までの平坦・ノイズ領域幅を求め、この平坦・ノイズ領域幅から非ノイズ階調変化位置以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した値となる平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求める。実施の形態1においては、検出する平坦・ノイズ領域幅分の画素数の画素データを記憶するメモリを必要としない。
具体的には、平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、水平方向走査期間ごとに初期化(dst=0を出力)しながら、領域信号Arに基づき、領域信号Ar=2で示される非ノイズ階調変化位置を基準画素として、基準画素の直前画素までの平坦・ノイズ領域の画素数を求め、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとに、それ以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した値となる平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求める。この得られた平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstは、傾き検出手段40へと出力され、水平方向における階調値の変化の傾き算出の際に、階調値の変化の傾きの幅(距離)として用いられる。領域信号Ar=2で示される非ノイズ階調変化位置を基準に画素数をカウントするので、領域信号Ar=0となる階調平坦領域の画素と領域信号Ar=1で示されるノイズ領域の画素の両方の画素が、平坦・ノイズ領域の画素としてカウントされる。よって、平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の画素数を、ノイズ領域を含めて(すなわち、ノイズ成分による誤検出なく)得ることができる。
図7は、図1に示される平坦・ノイズ領域幅判定手段30の構成の一例を概略的に示すブロック図である。平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、水平方向における階調値の変化がなく平坦な期間の画素数(すなわち、階調平坦領域の画素数とノイズ領域の画素数の合計であり、平坦・ノイズ領域の画素数である。)を求め、非ノイズ階調変化位置ごとに、その非ノイズ階調変化位置以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求める。図7に示されるように、平坦・ノイズ領域幅判定手段30は、例えば、平坦・ノイズ領域幅カウント手段31と、巡回型フィルタ処理手段32とを備える。巡回型フィルタ処理手段32は、例えば、係数1乗算手段33と、演算手段34と、係数2乗算手段35と、切換え手段36と、フィルタ出力遅延手段37とから構成される。
平坦・ノイズ領域幅カウント手段31には、画素領域判定手段20からの領域信号Arが入力される。平坦・ノイズ領域幅カウント手段31は、カウント値を水平方向走査期間ごとに初期化しながら(カウント値を0とする)、領域信号Ar=2で示される非ノイズ階調変化位置を基準とし、その直前画素までの水平方向における平坦・ノイズ領域幅を求め、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntとして出力する。すなわち、平坦・ノイズ領域幅カウント手段31は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)で画素のカウント値を0に初期化し、領域信号Ar=0,1となる階調平坦領域及びノイズ領域の画素数をカウントし、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においてその直前画素までにカウントされた上記画素数のカウント値を、平坦・ノイズ領域幅を示す平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntとして出力する。
例えば、平坦・ノイズ領域幅カウント手段31に、図6(g)に示される領域信号Arが入力されている場合には、領域信号Ar=2となる画素位置が非ノイズ階調変化位置(画素位置x=16,24,32,40)であり、領域信号Ar=2となる画素の間の画素数がカウントされて、非ノイズ階調変化位置の直前画素までの画素数が平坦・ノイズ領域幅を示す平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntで得られる。図6(g)の例においては、画素位置x1(=19)と、画素位置x1+1(=20)と、画素位置x2(=35)と、画素位置x2−1(=34)と、画素位置x2+1(=36)とはノイズ領域として判定され、平坦・ノイズ領域幅のカウントに含まれ、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)として誤検出されることはない。
平坦・ノイズ領域幅カウント手段31からは、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)において直前画素までの水平方向の平坦・ノイズ領域幅が、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntとして得られ、この平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntは巡回型フィルタ処理手段32へと出力される。
巡回型フィルタ処理手段32には、画素領域判定手段20からの領域信号Arが入力され、さらに、巡回型のフィルタ処理手段32には、平坦・ノイズ領域幅カウント手段31からの平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntが入力される。巡回型フィルタ処理手段32においては、水平方向走査期間ごとで出力結果を初期化し、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対して、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとで巡回型のフィルタ処理を施し、このフィルタ処理の結果を階調値が変化する画素位置以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した値である平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとして出力する。この巡回型フィルタ処理手段32は、低域通過フィルタ(LPF)とし、入力信号と巡回型フィルタ処理手段32内のフィルタ出力遅延手段37により遅延したフィルタ出力pdstによる巡回型フィルタ(Infinite Impulse Response(IIR)フィルタ)で構成する。IIRフィルタによる構成は、入力信号の隣接する数画素の信号による非巡回型のフィルタ(Finite Impulse Response(FIR)フィルタ)における構成と比較し、用いる遅延手段(メモリ)の数を少なくし、フィルタ処理する画素範囲にかかわらず一定とすることができる。
図7において、係数1乗算手段33と係数2乗算手段35は、所定のフィルタ係数が設定されており、それぞれの入力信号に対しフィルタ係数を乗算する演算を行う。ここで、係数1乗算手段33におけるフィルタ係数をk1、係数2乗算手段35のフィルタ係数をk2とする場合、k1=1−k2,0≦k1≦1、0≦k2≦1で設定され、このフィルタ係数k1,k2の値の割り振りにより、巡回する過去の出力値の大きさ、すなわち、得られる平坦・ノイズ領域幅が影響される領域の範囲が決まる。
係数1乗算手段33は、平坦・ノイズ領域幅カウント手段31からの平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntを受け取り、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntにフィルタ係数k1を乗算し、乗算結果k1×Cntを得る。係数2乗算手段35は、後述するフィルタ出力遅延手段37により1画素分遅延された直前の画素位置におけるフィルタ処理出力である遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdst(すなわち、現時点の画素位置より前の非ノイズ階調変化位置におけるフィルタ処理後の結果)を受け取り、遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstに対しフィルタ係数k2を乗算して、乗算結果k2×pdstを求める。
演算手段34は、係数1乗算手段33から出力される平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対する係数乗算結果k1×Cntと、係数2乗算手段35から出力される遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstに対する係数乗算結果k2×pdstとが入力される。演算手段34は、入力された係数乗算結果を加算し、加算結果をフィルタ処理結果fdstとして出力する。遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstはフィルタ出力遅延手段37により1画素分遅延された直前の画素位置におけるフィルタ処理出力であるので、係数1乗算手段33と係数2乗算手段35と、演算手段35による演算は、巡回型のフィルタ処理に相当し、下記の式(1)による演算となる。
fdst
= k2×pdst + k1×Cnt
= k2×pdst + (1−k2)×Cnt …式(1)
また、上記式(1)による巡回型のフィルタ処理の演算は、低域通過フィルタによる演算を表しており、水平方向に階調値が変化する際の平坦・ノイズ領域幅の低域周波数成分、すなわち、平滑化された連続性が得られ、急激な階調値の変化を平坦・ノイズ領域幅として検出することを避けることができる。
切換え手段36には、領域信号Arと、演算手段35からのフィルタ処理加算結果fdstと、フィルタ出力遅延手段37からの遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstとが入力される。切換え手段36は、領域信号Arで示される画素領域によって、演算手段34からのフィルタ処理結果fdstとフィルタ出力遅延手段37からの遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstとを切り換え、また、初期化の場合は値0に切り換えて出力し、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した値である平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとして出力する。
すなわち、切換え手段36は、水平方向走査期間の区切りにおいて初期化を示す場合は、初期化の値0を選択し、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst=0として出力する。また、切換え手段36は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対して巡回型フィルタ処理を施した結果である演算手段34からのフィルタ処理結果fdstを選択し、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとして出力する。一方、切換え手段36は、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)においては、フィルタ出力遅延手段37からの遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdst(すなわち、現時点の画素位置より前の非ノイズ階調変化位置におけるフィルタ処理結果fdstに相当する)を選択し、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとして出力する。
これにより、巡回型フィルタ処理手段32においては、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとの平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対して巡回型フィルタ処理を施した結果が、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとして得られ、それ以外の階調平坦領域、ノイズ領域の画素においては、その前の非ノイズ階調変化位置における値が保持されて出力される。切換え手段36からの平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstは、巡回型フィルタ処理手段32からの出力として傾き検出手段40へと出力されるとともに、フィルタ出力遅延手段37へと送られる。
フィルタ出力遅延手段37は、切換え手段36からの平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを1画素分遅延して、遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstとして出力する。フィルタ出力遅延手段37は切換え手段36からの出力を遅延するので、遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstは、直前画素における平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstがそのまま出力されたものであり、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとで、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対する巡回型フィルタ処理した結果(平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst)が、次に非ノイズ階調変化位置となる階調値が変化する画素まで保持される。
以上より、巡回型フィルタ処理手段32からは、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対して、階調値が変化する画素位置ごとで巡回型フィルタ処理を施した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstが出力される。この平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstは、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対して、巡回型の低域通過フィルタ処理を行うことで得ており、水平方向に階調値が変化する際の平坦・ノイズ領域幅の低域周波数成分、すなわち、平滑化された連続性を示す平坦・ノイズ領域幅の値として得られる。したがって、水平方向における連続的に緩やかに階調値が変化する画素の領域において、その階調値の変化する際の平坦・ノイズ領域幅(ノイズ成分がない場合には、階調平坦領域の幅)を、急峻な変化を避けて得ることができ、このことにより、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降における階調値の変化の平坦・ノイズ領域幅を予測した値として用いることができる。
《1−2−5》エッジ変化検出手段60.
エッジ変化検出手段60には、階調変化量検出手段10内の階調変化量算出手段11からの階調変化量dfが入力される。エッジ変化検出手段60は、補正ビット生成手段50が階調数の拡張のために補正値(補正ビットデータCd)を生成する際に、その補正値を制限するために用いられる補正制限係数rcを設定し、この補正制限係数rcを補正ビット生成手段50へ出力する。
ここで、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfは、隣接する画素間の階調値の差分から算出されており、画像のエッジ(輪郭)に隣接する画素においては、画像のエッジ成分による階調値の差も含む。実施の形態1においては、階調変換手段1で階調数を拡張する画素の領域は、階調値の差が入力画像信号Daの最下位1ビット分の変化である領域(非常に滑らかに階調値が変化する領域)としている。このため、画像のエッジにおいては階調値に対し補正値が付加されないようにする必要がある。よって、エッジ変化検出手段60は、階調変化量dfの大きさから、画像のエッジに隣接する画素で階調値の変化(すなわち、階調値の差分)が画像のエッジによるものか否かを判定し、その結果から、画像のエッジにおいては階調の補正値が付加されないように補正値を制限することができる値として補正制限係数rcを設定する。
図8は、エッジ変化検出手段60の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図8には、エッジ変化検出手段60が、例えば、階調変化量dfの絶対値の大きさと、階調変化量dfの低域周波数成分(低域成分)の大きさとから、補正制限係数rcを設定する場合の構成を示している。エッジ変化検出手段60は、階調変化量dfのみによらず、階調変化量dfの低域成分を用いることで、階調値が変化する画素位置の近傍の画素における画像のエッジによる階調値の変化も考慮することができ、より精度よく画像のエッジが存在する画素か否かを判定できる。図8に示されるように、エッジ変化検出手段60は、例えば、絶対値演算手段61と、差分低域成分抽出手段62と、絶対値演算手段63と、倍率変換手段64と、最大値選択手段65と、係数変換手段66とから構成される。
エッジ変化検出手段60内の絶対値演算手段61に階調変化量dfが入力されると、絶対値演算手段61は、階調変化量dfの絶対値を演算し、演算結果として階調変化量絶対値dxcを出力する。
差分低域成分抽出手段62に階調変化量算出手段11からの階調変化量dfが入力されると、差分低域成分抽出手段62は、階調変化量dfに対し水平方向のLPF(水平LPF)処理を施し、階調変化量dfを平滑化することによって、階調変化量dfの低域成分(「差分低域成分」と記す。)dflpを抽出し出力する。メモリ容量を考慮する場合、差分低域成分抽出手段62は、フィルタ出力を巡回させることでフィルタ処理するIIRフィルタにより構成すれば、回路規模を小さくできる。また、差分低域成分抽出手段62は、隣接する画素間の階調変化量dfの加算による値を用いてもよい。
絶対値演算手段63に差分低域成分抽出手段62からの差分低域成分dflpが入力されると、絶対値演算手段63は、差分低域成分dflpの絶対値を演算し、演算結果として差分低域成分絶対値abslpを出力する。
倍率変換手段64に絶対値演算手段63からの差分低域成分絶対値abslpが入力されると、倍率変換手段64は、絶対値演算手段63からの差分低域成分絶対値abslpに所定の倍率を乗算してゲイン調整(すなわち、差分低域成分絶対値abslpの変換処理)を行い、変換処理によって得られた倍率変換差分低域成分dxlpfを最大値選択手段65へ出力する。差分低域成分絶対値abslpは、差分低域成分抽出手段62において階調変化量dfの低域成分を抽出した結果(すなわち、差分低域成分dflp)の絶対値として得られた値であるので、差分低域成分抽出手段62による低域成分抽出処理を受けていない絶対値演算手段61からの階調変化量絶対値dxcとは階調値が異なっている。倍率変換手段64は、絶対値演算手段63からの差分低域成分絶対値abslpをゲイン調整して倍率変換差分低域成分dxlpfに変換することによって、倍率変換差分低域成分dxlpfの階調値を、絶対値演算手段61からの階調変化量絶対値dxcの階調値に対応した階調値に調整する。なお、倍率変換手段64におけるゲイン調整の倍率を変更することによって、階調の差が画像のエッジによる階調の差であるか否かの判定における、画像のエッジの検出感度を調整することができる。
最大値選択手段65に絶対値演算手段61からの階調変化量絶対値dxcと倍率変換手段64からの倍率変換差分低域成分dxlpfとが入力されると、最大値選択手段65は、入力された階調変化量絶対値dxcと倍率変換差分低域成分dxlpfとを比較し、これらの値の内の最大値を選択し、この選択された最大値を最大差分絶対値|df|として出力する。すなわち、最大差分絶対値|df|は、注目画素の近傍における水平方向の画像のエッジ又は階調値の差分を示すので、この階調値の差分の値の大きさから、画像のエッジの存在の有無を判定できる。最大値選択手段65からの最大差分絶対値|df|は、係数変換手段66へ出力される。
係数変換手段66に最大値選択手段65からの最大差分絶対値|df|が入力されると、係数変換手段66は、最大値選択手段65からの最大差分絶対値|df|の値から、階調値の変化が画像のエッジによるものか否かを判定し、その結果から、画像のエッジにおいては入力画像信号Daに階調の補正値が付加されないように、生成される補正値を制限することができる信号として補正制限係数rcを設定し、この設定された補正制限係数rcを補正ビット生成手段50へ出力する。
ここで、エッジ変化検出手段60が設定する補正制限係数rcは、階調の補正値に対する乗算値であり、0から1までの範囲内の値として設定される。補正制限係数rcは、階調の補正値に対する乗算値であるので、補正制限係数rcが0であれば補正値も0となる。また、滑らかに階調値が変化し、階調数を拡張する画素の領域においては、エッジ変化検出手段60は、画像信号の値に補正値による補正ビットデータを付加するようにするために、補正制限係数rcを1にする。
係数変換手段66は、最大値選択手段65からの最大差分絶対値|df|の値に応じて補正制限係数rcの値を算出する。係数変換手段66は、例えば、最大差分絶対値|df|を予め決められた所定の値THと比較し、最大差分絶対値|df|が所定の値TH以下の場合は、補正制限係数rcを1とし、最大差分絶対値|df|が値THから値THの2倍の値(2×TH)の間の場合は、最大差分絶対値|df|が大きくなるほど補正制限係数rcが0に近づくようにrcの値を変化させ、例えば、下記式(2)のような値として算出する。
rc = (2×TH−|df|)/TH …式(2)
そして、最大差分絶対値|df|が2×TH以上の場合は、補正制限係数rcを0に設定し、この場合は、階調値の変化が画像のエッジによるものであると判定する。
なお、上記の比較する所定の値THは、入力画像信号Daの最下位1ビット分の差、すなわち、画素間の階調値の差分である+1及び−1の変化の絶対値である1とすればよい。
以上の構成により、最大差分絶対値|df|の値に応じて0から1までの範囲内で変化する補正制限係数rcが得られ、最大差分絶対値|df|が小さく(TH=1以下)、滑らかに階調値が変化する画素の領域においては補正制限係数rc=1となり、最大差分絶対値|df|が大きく、階調の差が画像のエッジによるものと判定される場合は、補正制限係数rcは0、又は、1より小さな値となり、画像のエッジにおいては階調の補正値が付加されないように、補正値を制限することができる値として補正制限係数rcを得ることができる。
図9は、係数変換手段66において、最大差分絶対値|df|(横軸)に対する補正制限係数rc(縦軸)への変換の特性を示す図である。図9には、係数変換手段66が、補正制限係数rcを0から1までの範囲内の値として出力する場合が示されている。最大差分絶対値|df|が大きくなると、補正制限係数rcの値は0に近づき、階調値の変化が画像のエッジによると判断し、階調数が拡張されないよう補正値を制限する。一方、最大差分絶対値|df|の値が閾値TH=1以下である場合は、補正制限係数rc=1であり、+1と−1の差にある緩やかな階調値の変化であるとし、階調数の拡張を行うよう設定される。これにより、階調値が変化する画素近傍に画像のエッジが存在すると判定された画素においては、補正制限係数rcの値がrc=0になり、その値により、補正の値が制限される。
図10(a)及び(b)は、エッジ変化検出手段60が設定する補正制限係数rcが0となる階調値の変化の例を示す図である。図10(a)及び(b)において、横軸は水平方向の画素位置を、縦軸は各画素位置における入力画像信号Daの階調値La(x)を示している。例えば、図10(a)で示す場合は、階調値が変化する画素位置x0においての階調変化量dfの絶対値、すなわち、最大差分絶対値|df|が、閾値TH=1より大きくなるので、この画素位置x0における補正制限係数rcの値は0で、階調値の変化が画像のエッジによると判断される。また、図10(b)に示す場合は、階調値が変化する画素位置x0に対し隣接する画素位置x0+1において階調変化量df=3となり、図8に示される差分低域成分dflpを左右画素との水平LPFによる値とした場合には、最大差分絶対値|df|が閾値TH=1より大きくなり、補正制限係数rcの値は0に近づき、階調値の変化が画像のエッジによると判断される。そして、図10(a)及び(b)の画素位置x0以降の画素においては補正制限係数rcの値より、補正値が制限される。
なお、係数変換手段66が所定の値THとの比較と式(2)による演算とから、補正制限係数rcを設定する場合を説明したが、最大差分絶対値|df|に基づき、ROM(Read Only Memory)などで構成することで、予め得られた、例えば、図9に示されるような変換により、補正制限係数rcを設定してもよい。また、最大差分絶対値|df|は、値THからTHの2倍の値(2×TH)の間の値についても、0から1までの範囲内の固定の値であってもよい。さらには、補正制限係数rcの値は0と1の2値の信号でもよく、補正制限係数rcにより、階調値が変化する画素近傍に画像のエッジが存在すると判定された画素における補正値の値が制限できる値であればよい。
以上に述べたように、図8のエッジ変化検出手段60は、階調変化量dfの大きさに応じて変化する補正制限係数rcを、0から1までの範囲内の値として得て、補正ビット生成手段50へ出力する。なお、エッジ変化検出手段60の構成は、図示の例に限定されず、他の構成を採用することも可能である。
《1−2−6》傾き検出手段40.
傾き検出手段40には、画素領域判定手段20からの領域信号Arと、階調変化量制限手段12からの振幅制限階調変化量Xlmと、平坦・ノイズ領域幅判定手段30内の巡回型フィルタ処理手段22からの平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとが入力される。傾き検出手段40は、領域信号Arで示される階調値が変化する画素位置において、振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstから、入力画像信号Daの水平方向の階調値の傾きを検出し、傾きデータ値Kslを求め、求められた傾きデータ値Kslを補正ビット生成手段50へ出力する。振幅制限階調変化量Xlmは、階調変化量dfを−1から+1までの範囲内に制限した値で入力されているので、検出される階調値の傾きは−1から+1までの範囲内の値となる。
図11は、傾き検出手段40の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図11に示されるように、傾き検出手段40は、例えば、傾き算出手段40aと、切換え手段40bと、傾き遅延手段40cとから構成される。
図11において、傾き算出手段40aには、階調変化量制限手段12からの振幅制限階調変化量Xlmと、平坦・ノイズ領域幅判定手段30からの平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとが入力される。傾き算出手段40aは、振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstの値から、下記式(3)により、階調値の微細な傾きdivkを算出する。
divk = Xlm/dst …式(3)
振幅制限階調変化量Xlmは、その値が−1から+1までの範囲内に制限されており、例えば、振幅制限階調変化量Xlmが+1で、階調値の変化から平坦・ノイズ領域幅が7画素であるとする平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst=7で入力された場合は、算出される傾きdivkは1/7となる。また、振幅制限階調変化量Xlmが−1の場合には、傾きdivk=−1/7となる。なお、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst=0の場合は、傾きdivk=Xlmとする。よって、この傾きdivkは−1から+1までの範囲内の値として得られる。
切換え手段40bには、画素領域判定手段20からの領域信号Arと、傾き算出手段40aで算出した傾きdivkと、傾き遅延手段40cからの1画素遅延された遅延傾きデータ値pKslが入力される。切換え手段40bは、画素領域判定手段20からの領域信号Arに応じて、傾き算出手段40aで算出した傾きdivkと傾き遅延手段40cからの遅延傾きデータ値pKslとを切り換えて、水平方向の階調値の傾きを検出した結果である傾きデータ値Kslとして出力する。
すなわち、切換え手段40bは、画素領域判定手段20からの領域信号Arにより、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては、傾き算出手段40aで算出した傾きdivkを選択し、傾きデータ値Kslとする。一方、切換え手段40bは、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)においては、傾き遅延手段40cからの遅延傾きデータ値pKsl(すなわち、現時点の画素位置より前の非ノイズ階調変化位置における傾きdivkに相当する)を選択し、傾きデータ値Kslとする。この傾きデータ値Kslは、傾き検出手段40における傾き検出結果として補正ビット生成手段50へ出力されるとともに、傾き遅延手段40cに送られ、1画素分遅延して遅延傾きデータ値pKslとして切換え手段40bへ戻される。
傾き遅延手段40cは、切換え手段40bからの傾きデータ値Kslを1画素分遅延して、遅延傾きデータ値pKslを出力する。傾き遅延手段40cは切換え手段40bからの出力を遅延するので、遅延傾きデータ値pKslは、直前画素における傾きデータ値Kslがそのまま出力され、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとで算出した傾きdivkの値が、次に非ノイズ階調変化位置となる階調値が変化する画素まで保持される。
よって、切換え手段40bと傾き遅延手段40cにより、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素ごとで、傾き算出手段40aで算出した階調値の傾きが傾きデータ値Kslとして得られ、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)においては、現時点の画素より1つ前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素の値が保持されて出力される。
例えば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmが+1で、直前画素までの平坦・ノイズ領域幅を7画素として、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst=7が入力された場合は、算出される傾きデータ値Kslは1/7となる。また、振幅制限階調変化量Xlmが−1の場合には、傾きデータ値Ksl=−1/7となる。なお、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst=0の場合は、傾きデータ値Ksl=Xlmとする。よって、この傾きデータ値Kslは−1から+1までの範囲内にある値として得られる。
一方、傾き遅延手段40cは、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)の画素のデータが入力されたときには、現時点の画素位置より1つ前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素における傾きデータ値Kslを保持して出力とする。傾き遅延手段40cには、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)の画素においては、直前画素における傾きデータ値Kslがそのまま出力されるので、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとで算出した傾きデータ値Kslの値が、次の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)まで保持される。
よって、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)で算出された傾きデータ値Kslを、それ以降の平坦・ノイズ領域の画素(Ar=0,1)で用いる階調値の傾きとするので、階調平坦領域(Ar=0)の画素とともに、ノイズ領域(Ar=1)の画素についても、傾きデータ値Ksl算出の際の平坦期間の画素として扱う。このため、ノイズ成分による誤検出なく、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素における階調値の傾きを得ることができる。
図12(a)及び(b)は、傾き検出手段40で求める階調値の傾きを示す傾きデータ値Kslを説明する図であり、図12(a)は、振幅制限階調変化量Xlmが+1で、階調の階調値が上昇する場合、図12(b)は、振幅制限階調変化量Xlmが−1で、階調値が低下する場合を示す。図12(a)及び(b)において、横軸は水平方向の画素位置を、縦軸は各画素位置における入力画像信号Daの階調値La(x)を示している。図12(a)及び(b)に示されるように、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素位置x0で得られる平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstと振幅制限階調変化量Xlmとから、図12(a)及び(b)に傾斜する破線で示すような傾きとして、画素領域判定手段20からの領域信号Arで示される非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素位置x0以降の傾きデータ値Kslが得られる。
Ksl = Xlm/dst …式(4)
以上より、傾き検出手段40からは、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における階調値の変化の傾きが、傾きデータ値Kslとして出力され、平坦・ノイズ領域となる画素(Ar=0,1)では、その前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)で算出された傾きの値が保持される。振幅制限階調変化量Xlmが−1から+1までの範囲内に制限されているので、検出された傾きデータ値Kslについても、−1から+1までの範囲の値となる。
《1−2−7》補正ビット生成手段50.
補正ビット生成手段50には傾き検出手段40からの傾きデータ値Kslと、画素領域判定手段20からの領域信号Arと、階調変化量検出手段10の階調変化量制限手段12からの振幅制限階調変化量Xlmと、エッジ変化検出手段60からの補正制限係数rcとが入力される。補正ビット生成手段50は、傾きデータ値Kslから入力画素信号Daの階調値に付加する補正値(補正ビットデータ)の隣接する画素ごとの階調変化量dKを求め、水平方向走査期間ごとで初期化する(値0とする)とともに、領域信号Arに従い、階調変化量dKと振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcとから補正値aCdを求め、この補正値aCdによる補正ビットデータCdを生成し、画素値演算手段92へ出力する。ここで、傾きデータ値Kslから求める階調変化量dKは、入力画像信号Daの階調値La(x)(例えば、図2(a)、図3(a)に示す。)に対して小数部を含んだ値であり、よって、補正ビット生成手段50において生成する補正ビットデータCdは、入力画像信号Daの階調値の小数部を含む値による付加ビットEと、付加する値の符号ビットを含むビット列として求められる。
図13は、補正ビット生成手段50の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図13に示されるように、補正ビット生成手段50は、例えば、演算手段51と、減算手段52と、切換え手段53と、補正値遅延手段54と、ビット列変換手段55とから構成される。補正ビット生成手段50は、入力画素信号Daに対し付加すべき補正値(階調値)を求め、その階調値を示すビット列を補正ビットデータCdとして出力する。
図13において、演算手段51には、階調変化量制限手段12からの振幅制限階調変化量Xlmと、エッジ変化検出手段60からの補正制限係数rcとが入力される。演算手段51は、振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcとから補正値mCdを算出する。演算手段51によって得られる補正値mCdのうち、非ノイズ階調変化位置(領域信号Ar=2)となる画素(ノイズ領域でない、階調変化量が0でない画素)における補正値mCdが、後述の切換え手段53で用いられる。エッジ変化検出手段60により設定した補正制限係数rcは、階調の補正値に対する乗算値とし、0から1までの範囲内に設定されるので、補正値mCdは、振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcを乗算し、乗算結果(rc)×(Xlm)として演算される。
振幅制限階調変化量Xlmは入力画像信号Daの1階調の値に相当する−1から+1までの範囲内に制限されており、また、補正制限係数rcは階調変化量dfの大きさに応じて0〜1の値で得ているので、乗算結果(rc)×(Xlm)による補正値mCdは、階調変化量dfが大きく、画像のエッジが近傍に存在する画素(補正制限係数rc=0)においては補正値mCd=0となり、それ以外の画素においては、−1から+1までの範囲内の絶対値が1以下となる小数として表現される。また、振幅制限階調変化量Xlmから求められるので、補正値mCdは傾きにおける高さから得られる値となる。
なお、エッジ変化検出手段60からの補正制限係数rcが補正値に対する乗算値として設定され、演算手段51において、振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcを乗算する場合を例示したが、データ変換テーブルを保持したROMなどを用いることによって、補正制限係数rcの値に応じて、振幅制限階調変化量Xlmから補正値mCdを得てもよく、また、補正制限係数rcの値に応じて、補正値mCdを固定の値に変換してもよく、補正制限係数rcに応じて補正値の値を制限できればよい。
減算手段52には、傾き検出手段40からの傾きデータ値Kslと、補正値遅延手段54からの1画素遅延された遅延補正値pCdとが入力される。減算手段52は、傾きデータ値Kslから補正値の隣接する画素ごとの階調変化量dKを求め、遅延補正値pCdである直前の画素における補正値から階調変化量dKを減算することによって、非ノイズ階調変化位置(領域信号Ar=2)となる階調値が変化する画素以降の平坦・ノイズ領域となる画素における補正値sCdを得て、この得られた補正値sCdを切換え手段53へ出力する。
すなわち、減算手段52は、まず、傾きデータ値Kslの値を、補正値の隣接する画素ごとの階調変化量dKとして求め(dK=Kslとする)、次に、直前画素における補正値(遅延補正値pCd)から階調変化量dKを減算(pCd−dK)する。なお、減算手段52の減算は階調変化量dKの符号(すなわち、傾きデータ値Kslの符号)に応じて、減算又は加算処理し(dK>0は絶対値|dK|を減算、dK<0は、|dK|を加算する)、減算後の値の符号が遅延補正値pCdのものと反転した場合(+が−、又は−が+へ変化)と遅延補正値pCdがゼロでの減算処理の場合は、補正値sCdはゼロ(sCd=0)として出力する。これにより、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降の平坦・ノイズ領域となる画素における補正値sCdは、変化位置から順に階調変化量dKの絶対値の大きさ(すなわち、傾きデータ値Kslの絶対値|Ksl|)で変化した値となる。ここで、傾きデータ値Kslが−1から+1までの範囲内の値であるので、補正値sCdについても−1から+1までの範囲内のその絶対値が1以下となる小数として表現される。
補正ビット生成手段50内の切換え手段53には、領域信号Arと、演算手段51からの補正値mCdと、減算手段52による補正値sCdとが入力される。切換え手段53は、水平方向走査期間ごとで値を初期化(固定補正値0とする)するとともに、領域信号Arに基づき、演算手段51からの補正値mCdと、減算手段52による補正値sCdとを切り換えて、入力画像信号Daに対して付加すべき階調値として補正値aCdを生成し、出力する。
詳細に説明すれば、切換え手段53は、水平方向走査期間の区切りにおいて初期化を示す場合は、初期化の値0を選択して補正値aCd(=0)として出力し、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては、振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcから得られている演算手段51からの補正値mCdを選択し、補正値aCd(=mCd)として出力する。また、切換え手段53は、階調平坦領域又はノイズ領域となる画素(Ar=0,1)においては、減算手段52による補正値sCd(すなわち、直前画素の補正値pCdから階調変化量dK=Kslを減算した値)を選択し、補正値aCdとして出力する。そして、この補正値aCdは、ビット列変換手段55と補正値遅延手段54の両方に送られる。
補正値遅延手段54は、切換え手段53からの補正値aCdを1画素分遅延して、遅延補正値pCdを出力する。補正値遅延手段54は、切換え手段53からの出力を遅延するので、遅延補正値pCdは、直前画素における補正値となる。
以上までの演算手段51、減算手段52、補正値遅延手段54、切換え手段53の構成により、入力画像信号Daに対し付加すべき補正値aCdは、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)で、振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcによる補正値mCdを、
mCd = (rc)×(Xlm)
から得て、階調平坦領域又はノイズ領域となる画素(Ar=0,1)においては、減算手段52による補正値sCd、すなわち、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から順に、直前画素における値から階調変化量dK=Kslを減算され、階調変化量dKのレベル差で順次0まで変化する値として得られる。乗算結果(rc)×(Xlm)による補正値、傾きデータ値Kslによる階調変化量dKはともに、−1から+1までの範囲の絶対値が1以下となる小数として表現されており、したがって、切換え手段53から得られる補正値aCdについても、1以下の小数となる精度を持った階調値となる。また、振幅制限階調変化量Xlmは傾きデータ値Kslを算出する際に用いられる階調変化の高さに相当するので、補正値aCdは、階調値の傾きの値から得られている。
すなわち、上記において、例えば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)を開始点として、それ以降の領域信号Ar=0,1の画素を順にカウントした値をカウント値Nとすると、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)におけるカウント値N=0(補正値mCd)からのそれぞれの画素における補正値aCdの階調変化量は、カウント値Nと傾きデータ値Ksl(階調変化量dK=Ksl)により、N×Kslで表すことができ、補正値は、次式(5)で表すことができる。
aCd = mCd − N×Ksl …(5)
このように、補正値aCdは、補正値mCdの位置から順に、傾きデータ値Kslによる階調変化量dKのレベル差の変化を持つ値となる。
領域信号Arに基づき切換え手段53で選択する補正値aCdを切り換えることによって、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降の階調平坦領域(Ar=0)の画素とノイズ領域(Ar=1)の画素について、カウント値Nを求めて、平坦・ノイズ領域幅とすることができ、傾きデータ値Kslによる階調変化量dKのレベル差の変化を持つ補正値aCdが得られるので、ノイズ成分による影響なく、順次変化する補正値aCdが得られる。
また、領域信号Ar=2における補正値mCdを、(rc)×(Xlm)から得ているので、+1と−1の間にある水平方向における連続的に緩やかに階調値が変化する画素の領域においては、階調値の変化位置から順に、階調変化量dKのレベル差の変化を持つ補正値aCdとなるが、一方で、階調値の変化がエッジによると判断される場合は、補正制限係数rc=0で補正値mCd=0となり、それ以降の画素でも補正値は0となるので、階調値が付加されることはない。よって、画像の鮮鋭度(輪郭情報)を保つような補正値を得ることができる。
補正ビット生成手段50内のビット列変換手段55には、切換え手段53からの補正値aCdが入力される。ビット列変換手段55は、補正値aCdを所定のビット数となるビット列の値へ変換し、付加する値を示す付加ビットEと値の符号ビットを含めて補正ビットデータCdとして求め、補正ビット生成手段50から画素値演算手段92へと出力する。補正値aCdの符号を除く絶対値は1以下の小数を含む値として得ているので、補正ビットデータCdにおける補正の値(付加ビットE)は、入力画像信号Daの階調値のビット列に対し、小数部を示す。
ここで、補正ビットデータCdにおける付加ビットEを4ビットで生成し、入力画像信号Daの最下位側に付加する場合は、例えば、符号を除く補正値aCdの絶対値を4ビットのビット列の値へ変換する。但し、このとき、−1と+1の整数部1となる値については、ビット列で示すと16となるため、この値は4ビットとするよう値を制限し、15としてビット列における値を求め、ビット列変換手段55は、補正値aCdを所定のビット数となるビット列の値へ変換するとともに、値の制限処理も行う。そして、補正値aCdの符号を示す符号ビット(1ビット以上のビット数を持つ)とともに、変換された4ビット付加ビットEを補正ビットデータCdとして生成し、出力する。
なお、図13の補正ビット生成手段50は、ビット列変換手段55を設けて、補正値aCdを符号ビットと4ビットの付加ビットEのビット列による補正ビットデータCdとして求めるよう説明したが、ハードウェアでは補正値aCdなどの値も通常は所定のビット数の値として得ているので、そのまま補正ビットデータCdとすることもでき、また、ソフトウェアの場合のようにビット列として扱う必要がない場合は、このビット列変換手段55を省略することができる。
《1−2−8》遅延補償手段91.
遅延補償手段91に入力画像信号Daが入力されると、遅延補償手段91は、補正ビット生成手段50から出力される補正ビットデータCdが得られるまでの遅延と入力画像信号Daの画素位置を合わせるように入力画像信号Daの遅延補償を行い、遅延補償された画像信号Ddを出力する。
《1−2−9》画素値演算手段92.
画素値演算手段92には、遅延補償手段91からの遅延補償された画像信号Ddと、補正ビット生成手段50からの補正ビットデータCdが入力される。画素値演算手段92は、遅延補償された画像信号Ddに対し、補正ビット生成手段50からの補正ビットデータCdを整数部の位置を合わせて減算することで、新たな出力画像信号Dbを算出し、出力する。出力画像信号Dbの階調値に対して、小数部を含む補正ビットデータCdが演算により付加されるので、出力画像信号Dbのビット数は、画像信号Ddのビット数より大きく、すなわち、拡張され、このビット数を拡張した出力画像信号Dbが、階調変換手段1の出力となる。
なお、画素値演算手段92は、画像信号Ddに対して補正ビットデータCdを減算する演算処理において、補正ビットデータCdの符号に応じて減算又は加算処理する(すなわち、Cd>0の場合は、絶対値|Cd|を減算、Cd<0の場合は、|Cd|を加算する)。また、画素値演算手段92は、演算後の値が負の値となる場合は、出力画像信号Dbを‘0’(Db=0)とし、出力画像信号Dbの設定したビット数(最大値)を超える値となる場合は、値を最大値として、出力画像信号Dbの値を制限する。
上述したように、補正ビットデータCdにおける付加する値を示す付加ビットEは、遅延補償された画像信号Dd(又は入力画像信号Da)の階調値に対して、小数部を含むので、画素値演算手段92において加算又は減算による演算処理された後の出力画像信号Dbは、画像信号Ddに対し小数部を有した精度の画像信号となる。すなわち、出力画像信号Dbのビット数は、画像信号Ddに対して多くなるので、表現できる階調数が増えるだけでなく、小数部を含む補正ビットCdによる小数部のビット数を有するので、階調値の分解能が増加し、より滑らかな階調値の変化を表現できるようになる。また、階調値の変化が画像のエッジによる場合は、補正ビットデータCdは0として得られているため、その結果、画像のエッジ部に隣接する画素においては階調が付加されないので、出力画像信号Dbの鮮鋭度(輪郭情報)を保ちながら、画像のエッジ以外の緩やかに階調値が変化する画素の領域において、画像の滑らかさを増すことができる。
さらに、補正ビットデータCdは、画素領域判定手段20からの領域信号Arを基準として、ノイズ成分による影響なく、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)を開始点として順次傾きデータ値Kslによる階調変化量dKで変化する補正値aCdとして得られており、画素値演算手段92において、画像信号Dd(又は入力画像信号Da)の階調値に対して、補正ビットデータCdによる値が加算又は減算処理される。このため、線形補間処理による階調値の変換処理に比べ、ノイズ等の微少な階調値の変化による画像のディテールや鮮鋭度を残しながら、緩やかに階調値が変化する画素の領域の滑らかさを増すことができ、画像のぼやけを低減することができる。
図14は、入力画像信号Da(又は遅延補償手段91からの遅延補償された画像信号Dd)と、補正ビット生成手段50からの補正ビットデータCd、及び画素値演算手段92から出力される出力画像信号Dbの関係を示す図である。ここでは、入力画像信号Da(又は画像信号Dd)がm=8ビット、補正ビットデータCdが符号ビットと付加ビットE4ビット、出力画像信号Dbがn=12ビットの場合として説明する。
図14において、補正ビットデータCdは、入力画像信号Daに対して小数部を示す付加ビットEとして求めているので、画素値演算手段92は、整数部の位置を合わせ、画像信号Ddの最下位ビットより下位の位置に補正ビットデータCdの付加ビットE(4ビット)を合わせた値を、符号に応じて減算又は加算することで出力画像信号Dbを算出する。すなわち、画素値演算手段92は、画像信号Ddの最下位側に付加ビットEの値を結合するよう付加することに相当する処理を行い、12ビットの出力画像信号Dbが生成する。出力画像信号Dbは、画像信号Ddに対してビット列が下位ビット側に拡張されている、すなわち、元の入力画像信号Daの階調値に対して小数部を含むので、出力画像信号Dbの1階調の分解能は、画像信号Ddより高く(図14においては16倍に)なり、量子化ノイズ又は擬似輪郭がより低減され、精度のよい階調値を表現できるようになる。
《1−3》動作.
次に、実施の形態1による画像処理装置において、入力画像信号Daの画素間の階調値の差から階調変化量dfを求め、この階調変化量に基づき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域判定結果と階調変化量dfから階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て補正ビットデータを生成し、入力画像信号Daに補正ビットデータを付加することで階調数が拡張された出力画像信号Dbを出力する動作をフローチャートを参照して説明する。
図15は、実施の形態1による画像処理装置の動作(その1)を示すフローチャートであり、図16は、実施の形態1による画像処理装置の動作(その2)を示すフローチャートである。実施の形態1の画像処理装置においては、入力画像信号Daに対して補正ビットデータCdを付加することでビット数を拡張して階調変換を行い、元の入力画像信号Daの階調値に対して小数部が追加された出力画像信号Dbとして出力する。また、図17は、図1に示される画素領域判定手段20の動作を示すフローチャートである。なお、階調変換手段1内の処理においては水平方向同期信号ごとで初期化し処理するが、図15〜図17においては水平方向同期信号ごとで初期化される動作の説明は省略し、各走査線(ライン)内の画素ごとの処理として示す。
図18(a)〜(k)は、図3(a)に示されるノイズ成分を含む入力画像信号Daの一部について、階調変換手段1における動作を示しており、図18(a)は入力画像信号Daの水平方向の画素位置x、同図(b)は入力画像信号Da、同図(c)及び(d)は階調変化量検出手段10において求められる隣接する画素間の階調値の差分による階調変化量dfと、階調変化量dfの振幅制限階調変化量Xlm、同図(e)は画素領域判定手段20で得られる領域信号Ar、同図(f)は平坦・ノイズ領域幅判定手段30内の平坦・ノイズ領域幅カウント手段31からの出力である平坦・ノイズ領域幅カウント値Cnt、同図(g)は平坦・ノイズ領域幅判定手段30内の巡回型フィルタ処理手段32から出力される平坦・ノイズ領域幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst、同図(h)は傾き検出手段40から出力される傾きデータ値Ksl、同図(i)は補正ビット生成手段50において求められる補正値aCd、同図(j)は画素値演算手段92において補正ビットデータCdを画像信号Dd(すなわち、入力画像信号Da)に付加した値を、画像信号Ddの最小階調値を1として表した場合の階調値、同図(k)は画素値演算手段92の出力である出力画像信号Dbを示し、補正ビットデータCdにおける付加ビットEを4ビットとした場合で示している。図18(a)〜(k)においては、左から順に画素データが入力され、横軸は水平走査方向の画素位置を示す。図18(a)〜(k)においては、画素位置x=8から順に階調値La=2の画素が8画素、階調値La=3の画素が8画素、階調値La=4の画素が8画素、…と、並んでおり、入力画像信号Daがm=8ビットである場合、この8ビットの入力画像信号Daに対し、左の画素位置x=8から右に1階調ずつ連続的に明るくなる画像であり、階調変化の途中画素位置x=19及びx=34,35でノイズ成分となる高周波の変化を含んでいる。
また、図19(a)〜(k)は、ノイズ成分を含み、入力画像信号Daのレベルが1階調ずつ緩やかに減少している信号の一例を示しており、図19(a)〜(k)における信号はそれぞれ、図18(a)〜(k)における信号と同様の信号を示している。図19(a)〜(k)においては、画素位置x=8においては階調値La=1〜8の変化となっており、それ以降の画素位置xにおいては順に階調値La=8の画素が8画素、階調値La=7の画素が8画素、階調値La=6の画素が8画素、…と、並んでおり、8ビットの入力画像信号Daに対し、画素位置x=8における階調差7の変化は画像の輪郭(エッジ)により、それ以降は1階調ずつ連続的に暗くなる画像であり、階調変化の途中画素位置x=19及びx=35でノイズ成分となる高周波の変化を含んでいる。
以下に、画像処理装置の動作(実施の形態1においては、階調変換手段1の動作でもある。)を図15〜図17、図18(a)〜(k)、及び図19(a)〜(k)を用いて説明する。まず、図15を用いて、階調変化量dfを求め、階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを求めるまでを説明する。
階調変換手段1に図18(b)及び図19(b)に示されるようなmビットの入力画像信号Da(階調値La(x)とする)が入力される(ステップS101)と、この入力画像信号Daは、階調変化量検出手段10に入力される。すると、階調変化量検出手段10内の階調変化量算出手段11は、水平方向に隣接する画素間の階調値の差分(すなわち、直前画素位置x−1の画素の階調値との差分)を算出して、階調変化量
df=La(x)−La(x−1)
を求める(ステップS102)。例えば、図18(c)においては、画素位置x=8における階調変化量df=La(8)−La(7)を算出し、df=+1となる。また、例えば、図19(c)においては、画素位置x=8における階調変化量df=La(8)−La(7)を算出し、df=+7となり、画素位置x=16においては階調変化量df=−1となる。
階調変化量算出手段11で得られた階調変化量dfは、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12において、その値を所定の範囲に制限され、振幅制限階調変化量Xlmを求める(ステップS103)。この振幅制限階調変化量Xlmは、階調変化量dfが所定のレベルの範囲、すなわち、−1から+1まで(図15において−TH〜+THで示す)の範囲内となるように値が制限されており、これは入力画像信号Daの1階調の変化を検出するための制限の範囲となる。すなわち、振幅制限階調変化量Xlmの値は、−1,0,+1の3値で示される。また、この振幅制限階調変化量Xlmは、階調値の傾きを求める際の階調変化の高さとして用いられる。図18(d)及び図19(d)の振幅制限階調変化量Xlmは、階調値が変化する位置又はノイズ成分による変化がある画素において、振幅制限階調変化量Xlmが+1又は−1に値を制限され、変化がない階調平坦領域の画素においては、振幅制限階調変化量Xlm=0となる。
また、階調変化量dfはエッジ変化検出手段60へも出力される。エッジ変化検出手段60は、階調変化量dfの絶対値の大きさから画像のエッジとなる変化を検出し、補正制限係数rcを設定する(ステップS104)。ここで、求める補正制限係数rcは、エッジ部分においては階調値が付加されないように補正値を制限することができる値として求められ、例えば、階調値の補正値に対する乗算値とし、0から1までの範囲内の値で設定される。
階調変化量dfは、隣接する画素間の階調値の差分から得られるので、画像のエッジ近傍の画素においては、エッジ成分による階調値の差も含むが、階調数を拡張する画素の領域は、滑らかに階調値が変化し、1階調の差で変化する領域としているので、エッジ部分においては補正値が付加されないようにする必要がある。よって、階調変化量dfの大きさから、エッジに隣接する画素で階調値の変化の差分がエッジによるものか否かを判定し、その結果から、補正制限係数rcを設定する。一例として、階調変化量dfの絶対値の大きさから、図9に示したような特性で変換することで補正制限係数rcをrc=0〜1として求めると、階調変化量dfがエッジによる変化であると検出された画素においては、補正制限係数rcの値がrc=0になり、その値により、補正の値が制限される。
図18(a)〜(k)においてはいずれの位置でも階調変化量df(同図(a))はその絶対値|df|≦1であるので、補正制限係数rcは常に補正制限係数rc=1となる(図示せず)。図19(a)〜(k)の場合は、画素位置x=8における階調変化量df(同図(a))はdf=+7であるので、この位置における補正制限係数rcはrc=0となるが、それ以外の画素位置においては、補正制限係数rcはrc=1となる。
次に、画素領域判定手段20は、階調変化量算出手段11からの階調変化量dfの値と極性とを用いた判定により、画素位置xの注目画素における階調値の変化から、各画素が、階調平坦領域、ノイズ領域、非ノイズ階調変化位置の3領域のいずれの領域に分類されるかを判定し、画素の領域判定結果を示す領域信号Arを生成する(ステップS105)。この階調変化量dfによる画素領域の判定の詳細な動作は、図17を用いて後述するが、ノイズ成分は数画素の範囲の領域で増加、減少となる高周波の変化で、その変化の階調差は比較的小さい値Nd(例えば、Nd=2など)以下となるため、ノイズ成分による画素における変化は、画素位置xの注目画素における階調変化量dfの値と、注目画素の直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfの極性とにより判定でき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行う(図18(e)、図19(e))。
平坦・ノイズ領域幅判定手段30内の平坦・ノイズ領域幅カウント手段31は、水平方向走査期間ごとで、領域信号Arを基準として、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の直前画素までの平坦・ノイズ領域幅の画素数を求め、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntとする(ステップS106)。すなわち、水平方向走査期間ごとで初期化するとともに、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)となる画素の幅(画素数)をカウントし、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の直前画素までの平坦・ノイズ領域幅を平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntとして得る。
図18(f)において、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素位置x=8,16,24,32で画素のカウントが0にリセットされ、その次の画素位置(x+1)で、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntが0となる。非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素位置xにおいては、直前画素位置x−1までにカウントされた画素数である平坦・ノイズ領域幅、すなわち、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)となる画素の連続数を示す平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntが得られる。図19(f)においても同様である。
次に、平坦・ノイズ領域幅判定手段30と傾き検出手段40において、平坦・ノイズ領域幅を予測した値である平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求め、階調値の傾きを検出する動作は、領域信号Ar=2の非ノイズ階調変化位置において行われる(ステップS107〜S110)。
領域信号Ar=2となる非ノイズ階調変化位置において(ステップS107)、巡回型フィルタ処理手段32は、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対して、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)ごとで巡回型のフィルタ処理を施し、このフィルタ処理の結果を非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した値である平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとする(ステップS108)。巡回型のフィルタ処理の演算は低域通過フィルタを構成し、フィルタ出力である遅延平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstと、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntに対し、図15においては、例えば、(pdst+Cnt)/2(上記式(1)の係数k1=1/2、k2=1/2)による巡回型フィルタ処理を施す。一方、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)においては、その前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における値が保持されて出力される(ステップS109)。
平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstは、水平方向に階調値が変化する際の平坦・ノイズ領域幅の低域周波数成分である。したがって、水平方向における連続的に緩やかに階調値が変化する画素の領域において、その階調値の変化する際の階調平坦領域の幅を、急峻な変化を避けて得ることができる。このことにより、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した値として用いることができる。また、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)を基準に画素をカウントした平坦・ノイズ領域幅カウント値Cntから平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求めるので、領域信号Ar=0となる階調平坦領域の画素とともに、領域信号Ar=1で示されるノイズ領域の画素についても、平坦な期間の画素として扱い、ノイズ領域を含め(すなわち、ノイズ成分による誤検出なく)平坦・ノイズ領域幅を得られる。
図18(g)及び図19(g)においては、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)x=8,16,24,32で1画素前のx−1における平坦・ノイズ領域幅データ予測値pdstと、平坦・ノイズ領域幅カウント値Cnt(図18(f)及び図19(f))に対し、(pdst+Cnt)/2による巡回型フィルタ処理を施す。階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)においては、画素位置x=8,16,24,32における値が保持されている。
傾き検出手段40は、領域信号Arに従い、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)において、振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstから、入力画像信号Daの水平方向の階調値の傾きを検出し、傾きデータ値Ksl=Xlm/dstとして算出する(ステップS107,S110)。階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)においては、その前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における値が保持される(ステップS109)。振幅制限階調変化量Xlmは階調変化量dfを−1から+1までの範囲内に制限した値で入力されている(ステップS103)ので、検出される階調値の傾き、すなわち傾きデータ値Kslについても、−1から+1までの範囲内の値となる。
図18(h)によれば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)x=8においては、傾きデータ値Ksl=+1/4となり、同様に画素位置x=16,24,32で傾きデータ値Kslが求められる。また、図19(h)によれば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)x=8においては、傾きデータ値Ksl=+1/4となり、画素位置x=16においては、傾きデータ値Ksl=−1/6、同様に画素位置x=24,32で傾きデータ値Kslが求められる。図18(h)及び図19(h)のいずれにおいても、階調平坦領域とノイズ領域(Ar=0,1)においては、画素位置x=8,16,24,32における値が保持されている。
図15で示す動作により、領域信号Arを基準にして階調値の傾きにおける平坦・ノイズ領域幅を予測した値である平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstと階調値の傾きを求め、ノイズ成分による誤検出なく、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素における階調値の傾きを得られる。また、エッジ変化検出手段60は、階調変化量dfの大きさから、階調変化の差分がエッジによるものか否かを判定し、その結果から補正制限係数rcを生成する。
ここで、画素領域判定手段20において、階調変化量dfによる画素領域の判定の動作について、図17を用いて説明する。
画素領域判定手段20は、まず、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfに対し画素遅延するなどして、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfを、階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x+1)として得る(ステップS120)。
次に、階調変化量df(x)と、階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x+1)のそれぞれの極性を取得して(ステップS121)、画素位置xの注目画素が、ノイズ領域における隣接画素に高周波成分の変化を持つ(階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−1)の極性とが反対極性、又は、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x+1)の極性とが反対極性)かの判定を行う(ステップS122〜S129)。具体的には、ノイズ領域と判定するための1つ条件である隣接画素に高周波成分を持つか、すなわち、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x−1)の極性又は階調変化量df(x+1)の極性のいずれかと反対極性であるか否かを判定する。
まず、画素位置xと隣接する画素位置x−1で変化の方向が反対になる高周波成分の変化があるかを、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−1)の極性から判定する(ステップS122)。階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−1)の極性が反対極性である場合(ステップS124)は、2値化した値を示す判定結果pf1=1とし(ステップS126)、同一の場合は、判定結果pf1=0とする(ステップS127)。
同様に、画素位置xと隣接する画素位置x+1で変化の方向が反対になる高周波成分の変化があるかを、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x+1)の極性から判定する(ステップS123)。階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x+1)の極性が反対極性である場合(ステップS125)は、2値化した値を示す判定結果pf1=2とし(ステップS128)、同一の場合は、判定結果pf2=0とする(ステップS129)。
そして、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)の絶対値のレベルを所定の閾値と比較し、階調平坦領域の画素か(閾値0)、ノイズ領域における1条件階調差が比較的小さい値Nd以下かを判定するとともに、上記極性の判定結果を用いて、以下に示す動作で、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、各領域判定結果を示す領域信号Arを生成する。
(判定A1)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、df(x)=0である場合には(ステップS130)、注目画素は、階調平坦領域に属する画素であり、領域信号Arは、Ar=0になる(ステップS133)。
(判定A2)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり(ステップS130,S131)、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x−1)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)(ステップS132においてpf1=1)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり(ステップS130,S131)、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x+1)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)(ステップS132においてpf2=1)には、
注目画素は、ノイズ領域に属する画素であり、領域信号Arは、Ar=1になる(ステップS135)。
(判定A3)
判定A1において、注目画素が階調平坦領域に属する画素ではないと判定され、且つ、判定A2において、注目画素が、ノイズ領域に属する画素ではないと判定された画素位置xの注目画素は、非ノイズ階調変化位置の画素であり、領域信号Arは、Ar=2になる(ステップS134)。
なお、所定の閾値Ndについては、画像信号より十分に小さく、入力される画像信号に含まれるノイズ・誤差などのノイズ成分の振幅の大きさを考慮した値を設定し、例えば、最小階調差の2倍の値、Nd=2とする。
図18(e)において、画素位置x=8,16,24,32は、隣接画素の階調変化量df=0であるので、それぞれ非ノイズ階調変化位置で領域信号Ar=2として判定される。ノイズ成分により階調変化量dfが0でない画素位置x=19とその隣接画素位置x=20においては、互いに階調変化量dfの極性が反対であり(df(19)=+1、df(20)=−1)、したがって、ノイズ領域と判定し、領域信号Ar=1となる。同様に、x=34,35,36についてもノイズ領域と判定される。図19(f)においても同様であり、画素位置x=8,16,24,32は、df≠0であるので階調平坦領域ではなく、且つ、隣接画素の階調変化量df=0であるのでノイズ領域でもないので、それぞれ非ノイズ階調変化位置であり、領域信号Ar=2となる。ノイズ成分により階調変化量df≠0である画素位置x=19の画素とその隣接画素(画素位置x=20)、及び、画素位置x=35の画素とその隣接画素(画素位置x=36)においては、互いに階調変化量dfの極性が反対であるから、ノイズ領域と判定され、領域信号Ar=1となる。
以上に説明したように、図17に示される動作により、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域信号Arが得られ、各画素が階調平坦領域、ノイズ領域、非ノイズ階調変化位置のどの階調値の変化を持つかが示される。
次に、補正ビットデータを生成し、入力画像信号Daに対して付加することでビット数を拡張する動作を、図16により説明する。図16において、領域信号Arに従い階調値の傾きである傾きデータ値Kslが得られた後、補正ビット生成手段50は、水平方向走査期間の区切りにおいて補正値aCdを初期化するとともに、画素の領域を示す領域信号Arに応じて、補正値aCdを生成する処理を切り換える(ステップS111)。
非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては(ステップS111)、振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcを乗算し、乗算結果である補正値mCdを、(rc)×(Xlm)から算出する(ステップS112)。そして、得られた補正値mCdを補正値aCdと決定する(ステップS113)。振幅制限階調変化量Xlmは、入力画像信号Daの1階調の値に相当する−1から+1までの範囲内に制限されており、また、補正制限係数rcは階調変化量dfの大きさに応じて0〜1の値で得ているので、補正値mCdは、階調変化量dfが大きく、エッジが近傍に存在する画素(補正制限係数rc=0)においては補正値mCd=0となり、それ以外の画素においては、−1から+1までの範囲内の絶対値が1以下となる小数として表現される。また、振幅制限階調変化量Xlmは、階調値の傾きを算出する際に用いられる階調変化の高さとしているので、得られる補正値は、階調値の傾きから得ている。
一方、階調平坦領域(Ar=0)とノイズ領域(Ar=1)となる画素においては(ステップS111)、傾きデータ値Kslを補正値の隣接する画素ごとの階調変化量dKとして(dK=Kslとする)、直前画素における補正値(遅延補正値pCd)から階調変化量dKを減算(pCd−dK)し、階調平坦領域の画素における補正値sCdを得る(ステップS114)。なお、減算後、補正値sCdの値の符号が遅延補正値pCdから反転した場合(+が−、又は−が+へ変化)と、遅延補正値pCdがゼロにおける減算処理の場合は、補正値sCdはゼロ(sCd=0)として出力する。そして、この補正値sCdを補正値aCdと決定する(ステップS115)。これにより、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)の画素における補正値sCdは、変化位置から順に階調変化量dKの絶対値の大きさ(すなわち、傾きデータ値Kslの絶対値|Ksl|)で変化した値となる。ここで、傾きデータ値Kslが−1から+1までの範囲内の値であるので、補正値sCdについても−1から+1までの範囲内のその絶対値が1以下となる小数として表現される。
上記により得られた補正値aCdは、所定のビット数となるビット列の値へ変換されて、付加する値を示す付加ビットEと値の符号ビットを含めて補正ビットデータCdとして求められる(ステップS116)。また、補正値aCdは、1画素分遅延されて、直前画素における補正値pCdとして次の画素の処理へと送られる(ステップS117)。
以上のステップS111〜S117により、入力画像信号Daに対し付加すべき補正値aCd(すなわち、補正ビットデータCd)は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)で振幅制限階調変化量Xlmと補正制限係数rcによる補正値aCd=(rc)×(Xlm)として得て(すなわち、傾きを算出する際に用いられる階調変化の高さを得て)、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)においては、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における値から順に、傾きデータ値Kslによるレベル差で順次0まで変化する値として得られる。乗算結果(rc)×(Xlm)による補正値、傾きデータ値Kslはともに、−1から+1までの範囲内の絶対値が1以下となる小数として表現されており、したがって、補正値aCdについても、1以下の小数となる精度を持った階調値となる。
領域信号Arに基づき、求める補正値aCdを切り換えるので、階調平坦領域とともに、ノイズ領域(Ar=1)となる画素についても、平坦な期間の画素として傾きデータ値Kslによるレベル差の変化を持つ補正値aCdが得られ、ノイズ成分による影響なく、順次変化する補正値aCdが得られる。
また、補正制限係数rcを用いて補正値mCdを(rc)×(Xlm)から得ているので、緩やかに階調値が変化する画素の領域においては、非ノイズ階調変化位置から順に、階調変化量dKのレベル差の変化を持つ補正値aCdとなるが、一方で、階調値の変化がエッジによると判断される場合は、補正値mCd=0となり、それ以降の画素でも補正値は0となり、画像の輪郭情報を保つような補正値として得ることができる。
図18(i)によれば、画素位置x=16(Ar=2)においては補正値aCd=+1であり、それ以降の階調平坦領域、ノイズ領域となる画素においては、画素位置x=16における補正値aCd=+1から画素の順に、5/6,4/6,…、というように、傾きデータ値Kslによるレベル差−1/6の変化を持った補正値aCd(すなわち、補正ビットデータCd)として得られる。同様に、画素位置x=32においては、補正値aCd=+1であり、それ以降の階調平坦領域、ノイズ領域となる画素においては、画素位置x=32における補正値aCd=+1から順に、6/7,5/7,4/7,…というように、傾きデータ値Kslによるレベル差−1/7の変化を持った補正値aCdとして得られる。
また、図19(i)によれば、画素位置x=16(Ar=2)においては、補正値aCd=−1であり、それ以降の階調平坦領域、ノイズ領域となる画素においては、画素位置x=16における補正値aCd=−1から順に、−5/6,−4/6,−3/6,…というように、傾きデータ値Kslによるレベル差+1/6の変化を持った補正値aCd(すなわち、補正ビットデータCd)として得られる。なお、画素位置x=8においては、階調変化量df=+7で補正制限係数rc=0であるので、補正値aCd=0となる。そのため、それ以降の平坦な画素でも、補正値aCd(すなわち、補正ビットデータCd)は0となる。
画素値演算手段92は、補正ビットデータCdと入力画像信号Daの画素位置を合わせるよう遅延補償された画像信号Dd(又は入力画像信号Da)に対し、補正ビットデータCdを整数部の位置を合わせて減算することで、新たな出力画像信号Dbを算出する(ステップS118)。すなわち、画像信号Ddに対する補正ビットデータCdの演算処理は、画像信号Ddの階調値Laから補正ビットデータCdの値を減算して、画像信号Ddの最下位側に付加ビットEの値を結合するよう付加することに相当する処理を行う(図14参照)。なお、演算後の値が負の値となる場合は、出力画像信号Dbをゼロ(Db=0)とし、出力画像信号Dbの設定したビット数(最大値)を超える値となる場合は、値を最大値として、出力画像信号Dbの値を制限する。
補正ビットデータCdは、画像信号Dd(又は入力画像信号Da)の階調値に対して、小数部を含むので、演算処理された後の出力画像信号Dbは、画像信号Ddに対し小数部を有した精度の画像信号となる。出力画像信号Dbは、小数部を含む補正ビットデータCdによる小数部のビット数を有するので、階調値の分解能が増加し、より滑らかな階調値の変化を表現できるようになる。補正ビットデータCdは、領域信号Arを基準として、ノイズ成分による影響なく、傾きデータ値Kslで変化する補正値aCとして得られており、階調値に対して補正ビットデータCdによる値が加算又は減算処理されるので、ノイズ等の微少な階調値の変化による画像のディテールを残しながら、鮮鋭度を低下させずに、緩やかに階調値が変化する画素の領域の滑らかさを増すことができる。
図18(j)によれば、補正ビットデータCdを付加した後の出力画像信号Dbの階調値Lbは、画像信号Ddの階調値Laから補正ビットデータCdを減算することで、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)x=16においては階調値Lb=12/6となり、それ以降の階調平坦領域とノイズ領域においては、画素位置の順に1/6ごとで増加する変化を持つとともに、ノイズ成分がある画素位置x=19においては、ノイズ成分による振幅(6/6)を残した状態で階調値が変換された値21/6として得られる。同様に、画素位置x=32においては、出力画像信号Dbの階調値Lb=28/7で、それ以降の階調平坦領域とノイズ領域においては、順に1/7ごとで増加する変化を持ち、ノイズ成分がある画素位置x=34においては、ノイズ成分による振幅(7/7)を残した状態で階調値が変換された値37/7として得られる。画素位置x=35に対しても同様である。
また、図19(j)によれば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)x=16における階調値Lb=48/6で、それ以降の階調平坦領域とノイズ領域においては順に1/6ごとで減少する変化持つとともに、ノイズ成分があるx=19においては、ノイズ成分による振幅(6/6)を残した状態で階調値が変換された値51/6として得られる。同様に、画素位置x=32においては、出力画像信号Dbの階調値Lb=42/7で、それ以降の階調平坦領域とノイズ領域においては、順に1/7ごとで減少する変化を持ち、ノイズ成分がある画素位置x=35においては、ノイズ成分による振幅(7/7)を残した状態で階調値が変換された値32/7として得られる。なお、図19(j)の画素位置x=8においては、補正値aCd(すなわち、補正ビットデータCd)は0であるため、画素位置x=8とそれ以降の平坦な画素(x=15までの画素)でも、階調値の変化はない。
図18(k)及び図19(k)は、補正ビットデータCdにおける付加ビットEを4ビットとした場合の出力画像信号Dbを示しており、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から画素位置の順に、傾きデータ値Kslに相当する値の変化を持った階調値として得られ、結果として階調変化がより滑らかに変換された12ビットの出力画像信号Dbが得られている。
なお、図1、図14、図18、図19は、補正ビットデータCdにおける付加ビットEを4ビットで生成する場合を示しているが、付加ビットEは4ビットに限るものではなく、より多くのビット数で補正ビットデータCd(すなわち、補正値aCd)を表現することで、精度の高い、より滑らかな階調値の変化となる画像信号を得ることができる。例えば、図18(a)〜(k)において、画素位置x=8から次の階調値が変化する画素位置までの間は、傾きデータ値Kslが+1/4であるので、補正値aCdの絶対値1/4の変化を示すため、付加ビットEを3ビット分で構成すれば、誤差無く補正ビットデータCdを表現できる。しかし、図18(a)〜(k)の画素位置x=24以降は、傾きデータ値Kslが+1/7であるので、補正値aCdにおける階調変化量を示すため、付加ビットEとしてより多くのビット数を用いることにより、少ない誤差で補正ビットデータCdを表現できる。
言い換えれば、補正値aCdは、振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstから求められた傾きデータ値Kslにより得られるので、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstにおける最大幅(画素数)を大きくし、傾きデータ値Kslを表現するビット数を多く取れば、補正値aCdの変化はより細かくできる。よって、補正ビットデータCdにおける付加ビットEのビット数を多くすると、より階調値の分解能(精度)の高い画像を得ることができる。
《1−4》効果.
以上に説明したように、実施の形態1の画像処理装置又は画像処理方法においては、階調変化量dfを用いて、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、その判定結果を示す領域信号Arを基準として、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求め、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとから階調値の傾き(傾きデータ値Ksl)を得ている。また、実施の形態1の画像処理装置又は画像処理方法においては、階調変化が画像のエッジによると判断される場合に、補正ビット生成手段50における補正を制限する補正制限係数rcを設定し、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmと、傾きデータ値Kslと、補正制限係数rcとから補正ビットデータCdを生成し、入力画像信号Daに整数部の位置を合わせて入力画像信号Daから補正ビットデータCdの値を減算又は加算して、補正ビットデータを付加することで画素値を変換し、階調数(ビット数)が拡張された画像信号を出力している。したがって、実施の形態1の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、画像のエッジの階調変化とその次に現れる画像のエッジの階調変化との間に存在するノイズ成分による階調変化を、ノイズ成分による階調変化であると判定できるので、非ノイズ階調変化位置とその次に現れる非ノイズ階調変化位置との間の幅を示す平坦・ノイズ領域幅を正確に検出でき、ノイズ成分による階調変化と区別できるので、傾きデータ値Kslを、ノイズ成分による影響を受けることなく算出できる。また、実施の形態1の画像処理装置又は画像処理方法によれば、回路規模を大幅に増やすことなく、傾きデータ値Kslによる階調値で順次変化する補正値が得られ、緩やかに階調値が変化する画素領域や非ノイズ階調変化位置における適切な補正ビットデータCdを得て、画像信号の階調変化をより滑らかに変換し、ビット数を拡張できる。また、得られた補正ビットデータCdを入力画像信号Daの階調値に対し付加して階調数を拡張するため、実時間で処理でき、ノイズ成分による微少な変化を残したまま、階調変化がより滑らかに変換できる。
このように、実施の形態1の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、実時間で回路規模を大幅に増やすことなく、緩やかに階調値が変化する画像領域に対し、ノイズ成分による誤検出なく、階調変化をより適切に検出したことによる補正ビットデータCdが得られる。このため、補正ビットデータにより画像信号の階調数を拡張し、階調変換された出力画像信号Dbにおいて、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることはなく、量子化ノイズ又は擬似輪郭が低減され、階調変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号が得られる。
《1−5》変形例.
上記説明においては、画素領域判定手段20は、階調変化量dfの大きさから、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域判定結果として3種の領域信号Ar=0,1,2を生成する場合を説明したが、図1において領域信号Arを用いる平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、補正ビット生成手段50は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)と、階調平坦領域及びノイズ領域(Ar=0,1)の2通りで処理を切り換えている(図7、図13、図15、図16で説明)ので、領域判定結果を2値で示す領域信号Ar1とすることも可能である。例えば、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定の結果から、階調平坦領域とノイズ領域においては領域信号Ar1=0、非ノイズ階調変化位置においては領域信号Ar1=1というように構成し、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50における処理を領域信号Ar1で切り換えるようにしてもよい。この場合にも、図1の場合と同様に構成でき、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、階調変換手段1において、入力画像信号Daの階調変化を検出する際の階調変化量は、最下位1ビット分の差、すなわち、画素間の階調値の差分+1と−1の変化とし、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12において、階調変化量dfの値を−1から+1までの範囲内となるよう制限する場合について説明したが、本発明はこのような場合に限定されず、例えば、画素間の階調値の差分の最大値+2、最小値−2の範囲の変化を求める場合など、予め決められた最大値(正の値)と最小値(負の値)に基づき、階調変化量dfの値を制限して、画像信号の1階調より大きな値の階調差以内で階調値が変化する場合に、階調数を拡張するよう構成することもできる。階調変化量dfの値を制限する範囲は、階調変換で滑らかな変化とする画像領域か、そのまま保持するか、又は、階調ジャンプとなる階調変化として補正するかを決めるための値であり、入力画像信号の特性や、階調ジャンプが起こるレベル等から適切な値を設定すればよい。この場合の構成及び動作は、階調値の変化を求める画素間の階調値の差分の範囲以外の点については、図1による構成及び動作と同じである。ここで、画素間の階調値の差分の最大値+2、最小値−2の範囲の変化を求める場合は、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12における制限の範囲、すなわち、振幅制限階調変化量Xlmの値が+2から−2までの範囲内の値となり、階調値の傾きも−2から+2までの範囲内の値となる。
上記説明においては、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12が階調変化量dfの値を−1から+1まで(入力画像信号Daの階調値の最下位1ビット分の差)の範囲内となるよう制限する画像処理装置及び画像処理方法を説明した。しかし、例えば、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12が階調変化量dfの値を予め決められた最大値(1階調より大きい正の値)から予め決められた最小値(絶対値が1階調より大きい負の値)までの範囲内となるよう制限してもよい。図20は、図1に示される画素値演算手段の動作の他の例を説明するための図であり、入力画像信号Da(又は遅延補償手段91からの遅延補償された画像信号Dd)と、補正ビット生成手段50からの補正ビットデータCd、及び画素値演算手段92から出力される出力画像信号Dbの関係を示している。図20の例においては、図1に示される階調変換手段1において、入力画像信号Daの水平方向の階調値の変化を、階調値の差‘2’まで検出し、画素間の階調値の差分の最大値+2から最小値−2までの範囲内の変化を求める。そして、図20に示されるように、8ビットの入力画像信号Daに対し、整数部1ビットと小数部4ビットによる5ビットで示される値の付加ビットEによる補正値(補正ビットデータ)を生成して入力画像信号Daに付加し、12ビットに階調数を拡張した出力画像信号Dbに変換する。このとき、画素値演算手段92は、補正ビットデータCdにおける付加ビットEの整数部の位置を画像信号Ddの整数部の位置(最下位ビットが整数1に相当)と一致するようにした値を、画像信号Ddに対し符号に応じて減算又は加算し、出力画像信号Dbは、入力画像信号Daに対して小数部を示すビット数分ビット列が付加されている。この場合には、入力画像信号Daの階調値の最小値である1階調の階調変化のみでなく、入力画像信号Daに1階調以上の量子化ノイズ(例えば、階調ジャンプによるもの)が含まれる場合であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
さらにまた、上記説明においては、入力される入力画像信号Daをm=8ビットとし、補正ビットデータCdにおける付加ビットEを4ビットで生成して、n=12ビットの出力画像信号Dbへと階調数を拡張する場合と示しているが、入力画像信号Daの階調数mは、これに限るものではない。例えば、入力画像信号Daの階調数mは10ビットであってもよく、この場合には、n=14ビットの出力画像信号Dbが得られ、より精度の高い画像信号を得ることができる。また、補正ビットデータCd(すなわち、補正値aCd)のビット数を多くするよう構成した場合でも、補正ビットデータCdの生成までの構成におけるビット数、すなわち、平坦・ノイズ領域幅データ予測値dst、傾きデータ値Ksl、補正値aCdにおけるビット数を増やすのみで構成でき、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、エッジ変化検出手段60により、階調変化がエッジによると判断される場合に補正を制限する補正制限係数rcを設定し、エッジが存在する画素(補正制限係数rc=0)においては、階調値が付加されることはなく、画像の輪郭情を保つよう構成しているが、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12において、階調変化量dfの値を−1から+1までの範囲内となるように値が制限された振幅制限階調変化量Xlmを求める際に、階調変化量dfの値が−1から+1までの範囲から外れた場合は、その値を0とするように(すなわち、振幅制限階調変化量Xlm=0とする)構成しても、同様にエッジとなる画素以降における補正値aCdを0とすることができる。すなわち、階調変化量dfの値が−1から+1までの範囲から外れたエッジとなる画素における振幅制限階調変化量Xlm=0とすると、階調変化の高さが0となり、傾きデータ値Ksl=0となる。また、補正値aCd=(rc)×(Xlm)=0とできるので、補正制限係数rc=0とする場合と同じ補正値aCdが得られる。
さらに、上記説明においては、階調変換手段1は入力画像信号Daの水平方向における階調値の変化において、水平方向の階調変化量を検出して階調値に対する補正ビットデータCdを生成し、補正ビットデータCdを画像信号に付加することで階調変換して量子化ノイズを低減する構成として説明したが、入力画像信号Daの垂直方向(画面表示走査線の配列方向)の階調変化量を検出し、補正ビットデータCdを生成して画像信号に付加し、垂直方向の階調値の変化を滑らかなものとしてもよく、同様の効果を奏することができる。この場合は、階調変化量検出手段10においては、注目画素と、該注目画素の隣接画素(垂直方向に1つ上の走査線上の隣接画素)との間の差分により階調変化量dfを求め、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50内における各信号の1画素分の遅延処理を1ライン分(1水平走査期間分)の遅延処理として、垂直方向に隣接して配置された画素における階調値の変化を検出するように構成すればよい。
さらにまた、上記説明においては、画像処理装置における階調変換手段1の各構成がハードウェア構成であるように説明しているが、本発明を、プログラム制御におけるソフトウェアの処理により実現するよう構成してもよい。
《2》実施の形態2.
《2−1》構成.
図21は、本発明の実施の形態2による画像処理装置(すなわち、実施の形態2による画像処理方法を実施することができる装置)の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図21において、図1(実施の形態1)に示される構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。実施の形態2の画像処理装置は、画像処理装置を構成する階調変換手段2内の画素領域判定手段20bの構成及び動作が、実施の形態1における階調変換手段1内の画素領域判定手段20の構成及び動作と相違する。
図22は、図21に示される画素領域判定手段20bの構成の一例を概略的に示すブロック図である。また、図23(a)及び(b)は、実施の形態2の画像処理装置において画素領域判定手段20bがノイズ成分と判定する画素の一例を示す図であり、同図(a)は、直前及び直後の画素よりも階調値が1階調増加している連続2個の‘1階調変化画素’からなるノイズ成分を示し、同図(b)は、直前及び直後の画素よりも階調値が1階調減少している連続2個の‘1階調変化画素’からなるノイズ成分を示している。図23(a)及び(b)における横軸は水平方向の画素位置を、縦軸は各画素位置における入力画像信号Daの階調値La(x)を示している。
上記実施の形態1の画像処理装置においては、階調変換手段1内の画素領域判定手段20は図5に示される構成を有し、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(図4(a)及び(b))をノイズ成分と判定していた。このため、上記実施の形態1の画像処理装置においては、画素位置xの注目画素における階調変化量dfの値と、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfの極性とに基づいて、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行っていた。
しかし、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化だけでなく、連続する複数個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化をもノイズ成分による階調変化と判定することが望ましい場合もある。そこで、実施の形態2の画像処理装置は、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化だけでなく、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化をもノイズ成分による階調変化(高周波変化)と判定するように構成している。
実施の形態2の画像処理装置においては、階調変換手段2内の階調変化量検出手段10は、入力画像信号Daにおける水平方向に隣接する画素間の階調変化量dfを求め、また、この階調変化量dfの値を所定の範囲に制限した振幅制限階調変化量Xlmを求める。
画素領域判定手段20bには、階調変化量検出手段10内の階調変化量算出手段11からの階調変化量dfが入力される。画素領域判定手段20bは、階調変化量dfの値に基づいて、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素の領域判定結果を示す領域信号Ar2を生成し出力する。画素領域判定手段20bは、生成された領域信号Ar2を、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50へと出力する。画素領域判定手段20bは、図4(a)及び(b)に示されるような、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波の変化)をノイズ領域と判定するだけでなく、図23(a)及び(b)に示されるような、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波の変化)をもノイズ領域と判定している。
図23(a)においては、入力画像信号Daの画素位置x1の注目画素おいては階調変化量df=+1であり、注目画素の1画素後の画素位置x1+1の画素においては階調変化量df=0であり、注目画素の2画素後の画素位置x1+2の画素においては階調変化量df=−1であり、注目画素の1画素前の画素位置x1−1の画素においては階調変化量df=0であり、注目画素の2画素前の画素位置x1−2の画素においては階調変化量df=0である。また、他の例を示す図23(b)においては、入力画像信号Daの画素位置x2の注目画素おいては階調変化量df=−1であり、注目画素の1画素後の画素位置x2+1の画素においては階調変化量df=0であり、注目画素の2画素後の画素位置x2+2の画素においては階調変化量df=+1であり、注目画素の1画素前の画素位置x2−1の画素においては階調変化量df=0であり、注目画素の2画素前の画素位置x2−2の画素においては階調変化量df=0である。
図23(a)及び(b)に示されるような、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波の変化)がある場合、階調変化量dfの絶対値は比較的小さい値Nd以下になり、且つ、注目画素の階調変化量の極性と、注目画素の2画素前の画素位置の隣々接画素の階調変化量の極性又は注目画素の2画素後の画素位置の隣々接画素の階調変化量の極性が反対となる変化が存在する。すなわち、図23(a)の場合は、画素位置x1の画素における階調変化量df(x1)=+1であり、画素位置x1の2画素後の画素位置x1+2の画素における階調変化量df(x1+2)=−1であり、極性が反対となる。また、図23(b)の場合は、画素位置x2の画素における階調変化量df(x2)=−1であり、画素位置x2の2画素後の画素位置x2+2の画素における階調変化量df(x2+2)=+1であり、極性が反対となる。
よって、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化がある場合における極性の判定と同様の判定が可能である。実施の形態2においては、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化について、階調変化量dfの絶対値|df|の値とともに、各画素とその前後の隣々接に位置する画素における階調変化量dfの極性により判定できる。
実施の形態2の画素領域判定手段20bは、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、さらにその直前の画素位置x−2の隣々接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素、さらにその直後の画素位置x+2の隣々接画素のそれぞれにおける階調変化量dfから、図4(a)及び(b)並びに図23(a)及び(b)に示されるようなノイズ成分となる画素の領域を判定し、また、階調変化量df=0となる階調平坦領域の画素、階調平坦領域及びノイズ領域以外の非ノイズ階調変化位置となる画素を判定して、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行うことで、この画素の領域判定結果を示す領域信号Ar2を生成し出力する。
詳細に説明すれば、画素領域判定手段20bは、まず、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfに対し画素遅延するなどして、画素位置xの注目画素の階調変化量df(x)、その直前の画素位置x−1の画素(直前隣接画素)の階調変化量df(x−1)、さらにその直前の画素位置x−2の画素(直前隣々接画素)の階調変化量df(x−2)、注目画素の直後の画素位置x+1の画素(直後隣接画素)の階調変化量df(x+1)、さらにその直後の画素位置x+2の画素(直後隣々接画素)の階調変化量df(x+2)の、合計5画素の範囲における階調変化量dfを得て、注目画素の階調変化量df(x)の大きさ、並びに、注目画素の階調変化量df(x)の極性と、隣接画素及び隣々接画素の階調変化量df(x−1)、df(x−2)、df(x+1)、df(x+2)の極性との関係から、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行う。
1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(図4(a)及び(b)参照)となるノイズ成分の場合と、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(図23(a)及び(b)参照)となるノイズ成分の場合においては、ノイズ成分を含む画素において、階調変化量dfの絶対値は比較的小さい値Nd以下となり、且つ、上記画素範囲における階調変化量dfのうち前後いずれかに極性が反対となる変化が存在する。
よって、画素領域判定手段20bは、画素位置xの注目画素、直前隣接画素、直前隣々接画素、直後隣接画素、直後隣々接画素における階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x−2)、df(x+1)、df(x+2)を得た後、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類するための判定を、以下の判定B1〜B3により行い、判定結果を示す領域信号Ar2を出力する。
(判定B1)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、df(x)=0である場合には、注目画素は、階調平坦領域に属する画素であり、領域信号Ar2は、Ar2=0になる。
(判定B2)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x−1)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x+1)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x−2)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、階調変化量df(x)の極性が、階調変化量df(x+2)の極性と反対極性である場合(隣接画素に高周波成分を持つ場合)には、
注目画素は、ノイズ領域に属する画素であり、領域信号Ar2は、Ar2=1になる。
(判定B3)
判定B1において、注目画素が階調平坦領域に属する画素ではないと判定され、且つ、判定B2において、注目画素が、ノイズ領域に属する画素ではないと判定された場合には、画素位置xの注目画素は、非ノイズ階調変化位置の画素であり、領域信号Ar2は、Ar2=2になる。
なお、領域信号Ar2の値は、上記値に限るものではなく、各領域判定結果が示される値であれば、他の値であってもよい。
上記判定B1〜B3を行うことによって、図23(a)に示されるように、画素位置x1の画素と画素位置x1+2の画素とがノイズ領域に属する画素と判定され、図23(b)に示されるように、画素位置x2の画素と画素位置x2+2の画素とがノイズ領域に属する画素と判定される。
図22には、上記判定B1〜B3を行う画素領域判定手段20bの構成の一例が示されている。図22において、図5(実施の形態1)に示される構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。図22に示される画素領域判定手段20bは、画素変化量抽出手段21bの構成、隣接位置極性判定手段27,28を備えている点、及び合成手段29の構成が、図5に示される画素領域判定手段20と相違する。
図22において、画素領域判定手段20b内の画素変化量抽出手段21bは、例えば、4つの画素遅延手段210〜213により構成される。画素変化量抽出手段21bに階調変化量検出手段10からの階調変化量dfが入力されると、画素変化量抽出手段21b内の画素遅延手段210〜213は、階調変化量dfを画素遅延して、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)、画素位置x−2における階調変化量df(x−2)、画素位置x−1における階調変化量df(x−1)、画素位置x+1における階調変化量df(x+1)、画素位置x+2における階調変化量df(x+2)を抽出する。
絶対値レベル比較手段22は、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が入力され、階調変化量の絶対値|df(x)|を所定の閾値(0、及び、ノイズ成分における階調差に相当する比較的小さい値Nd(例えば、最小階調差の2倍の値、すなわち、Nd=2))とを比較して、階調変化量df(x)の絶対値のレベルを判定し、結果を示す比較結果nlfを求める。また、隣接位置極性判定手段23は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−1)とが入力され、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−1)の極性とが反対極性になる変化(高周波成分の変化)を持つかを判定し、判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf1を求める。隣接位置極性判定手段24は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x+1)とが入力され、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x+1)の極性とが反対極性になる変化(高周波成分の変化)を持つかを判定し、判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf2を求める。
また、隣接位置極性判定手段27は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−2)とが入力され、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x−2)の極性とが反対極性になる変化(高周波成分の変化)を持つかを判定し、判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf3を求める。隣接位置極性判定手段28は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x+2)とが入力され、階調変化量df(x)の極性と階調変化量df(x+2)の極性とが反対極性になる変化(高周波成分の変化)を持つかを判定し、判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf4を求める。
隣接位置極性判定手段27は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−2)の極性をもとに、画素位置xと2画素離れた画素位置x−2で、反対方向の変化となる高周波成分の変化を持つか、すなわち、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−2)の極性が反対かを判定し、画素位置xにおける判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf3を求める。判定結果pf3の値は、隣接位置極性判定手段23における判定結果pf1の場合と同様に得られ、例えば、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−2)の極性が反対極性の場合には、値‘1’(pf3=1)とし、同一の場合は値‘0’(pf3=0)とする。なお、この判定結果pf3の値は、これに限るものではなく、符号の不一致か否かが示されれば、他の値であってもよい。
同様に、隣接位置極性判定手段28は、階調変化量df(x)と階調変化量df(x+2)の極性をもとに、画素位置xと2画素離れた画素位置x+2で、反対方向の変化となる高周波成分の変化を持つか、すなわち、階調変化量df(x)と階調変化量df(x+2)の極性が反対かを判定し、画素位置xにおける判定結果として、2値化した値を示す判定結果pf4を求める。判定結果pf3の値は、隣接位置極性判定手段23における判定結果pf1の場合と同様に得られ、例えば、階調変化量df(x)と階調変化量df(x−2)の極性が反対極性の場合には、値‘1’(pf4=1)とし、同一の場合は値‘0’(pf4=0)とする。なお、この判定結果pf4の値は、これに限るものではなく、符号の不一致か否かが示されれば、他の値であってもよい。
合成手段29には、隣接位置極性判定手段23,24からの判定結果pf1,pf2と、隣接位置極性判定手段27,28からの判定結果pf3,pf4とが入力され、判定結果pf1〜pf4を合成し、画素位置xにおける階調変化量df(x)に対し、隣接画素と隣々接画素におけるいずれかの階調変化量と極性が反対となる場合の極性判定結果pofを求める。合成手段29は、例えば、ORゲートで構成することで、判定結果pf1〜pf4のうちのいずれかが‘1’となる場合を、極性判定結果pof=1として得る。これにより、画素位置xの階調変化量df(x)が、画素位置xの前又は後の隣接画素と隣々接画素におけるいずれかの階調変化量と極性が反対となる場合を判定した結果が得られる。
領域信号生成手段26は、絶対値レベル比較手段22からの比較結果nlfと、合成手段29からの極性判定結果pofが入力され、上記判定B1〜B3による画素位置xの注目画素における画素領域を判定して、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、各領域判定結果を示す領域信号Ar2を生成し出力する。
以上により、画素領域判定手段20bは、階調変化量dfから、注目画素の階調変化量dfと、注目画素の極性、隣接画素の極性、隣々接画素の極性に基づく判定により、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素の領域判定結果を示す領域信号Ar2を得ることができる。この画素領域は、ノイズ成分による階調変化を、階調変化量dfの値の大きさ、注目画素の極性、隣接画素の極性、隣々接画素の極性で判定するので、より精度よく画素領域を判定することができる。
なお、図22の画素変化量抽出手段21bにおいては、階調変化量dfを遅延して抽出するよう構成したが、階調変化量検出手段10において階調変化量dfを求める際に、画素位置xとその隣接画素及び隣々接画素における階調変化量を求めることで得てもよく、この場合は画素変化量抽出手段21bにおける画素遅延を省略することができる。また、上記判定B1〜B2においては、階調変化量dfの値と、画素位置x、隣接画素位置x−1,x+1、隣々接画素位置x−2,x+2における階調変化量の極性とから、各画素が属する領域を判定するので、隣接画素位置x−1,x+1及び隣々接画素位置x−2,x+2における階調変化量を求めずに、極性のみを求める構成を採用してもよい。
《2−2》動作.
画素領域判定手段20bにおける画素領域の判定結果である領域信号Ar2は、実施の形態1における領域信号Arと同様に、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50へと出力される。平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50は、領域信号Ar2に基づいて、非ノイズ階調変化位置以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstと、階調値の傾き(傾きデータ値Ksl)と、傾きデータ値Kslから算出される補正ビットデータCdを求める。そして、画素値演算手段92において入力画像信号Daに補正ビットデータCdを付加して画素値を変換し、ビット数が拡張された出力画像信号Dbを生成する。これらの構成及び動作は、上記実施の形態1の場合と同じである。
実施の形態2による画像処理装置において、階調変化量dfを求め、この階調変化量に基づき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域判定結果と階調変化量dfから階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て補正ビットデータを生成し、入力画像信号Daに補正ビットデータを付加することで階調数が拡張された出力画像信号Dbを出力する動作は、上記実施の形態1の説明(図15及び図16を参照した説明)における動作と同様である。
また、画素領域判定手段20bにおける階調変化量に基づき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定についても、上記実施の形態1の説明(図17のフローチャートを参照した説明)と同様である。但し、実施の形態2においては、図17中のステップS120及びS121において求める画素の階調変化量及びその極性は、画素位置xの注目画素とその前後各2画素の範囲の5画素範囲に位置する画素における階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x+1)、df(x−2)、df(x+2)となり、極性の判定を行うステップS122からステップS129の処理を、階調変化量df(x−2)とdf(x+2)に対しても行う点において、上記実施の形態1の場合と相違する。
《2−3》効果.
以上に説明したように、実施の形態2の画像処理装置又は画像処理方法においては、階調変化量dfから、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化だけでなく、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化をもノイズ成分として判定するように、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、その判定結果を示す領域信号Ar2に基づいて平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求め、非ノイズ階調変化位置(Ar2=2)における振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとから傾きデータ値Kslを得ている。したがって、実施の形態2の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、画像のエッジの階調変化とその次に現れる画像のエッジの階調変化との間に存在するノイズ成分による階調変化を、ノイズ成分による階調変化であると一層正確に判定できるので、非ノイズ階調変化位置とその次に現れる非ノイズ階調変化位置との間の幅を示す平坦・ノイズ領域幅を正確に検出でき、ノイズ成分による階調変化と区別できるので、傾きデータ値Kslを、ノイズ成分による影響を受けることなく算出できる。また、実施の形態2の画像処理装置又は画像処理方法によれば、回路規模を大幅に増やすことなく、傾きデータ値Kslによる階調値で順次変化する補正値が得られ、緩やかに階調値が変化する画素領域や非ノイズ階調変化位置における適切な補正ビットデータCdを得て、画像信号の階調変化をより滑らかに変換し、ビット数を拡張できる。また、得られた補正ビットデータCdを入力画像信号Daの階調値に対し付加して階調数を拡張するため、実時間で処理でき、ノイズ成分による微少な変化を残したまま、階調変化がより滑らかに変換できる。
このように、実施の形態2の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、実時間で回路規模を大幅に増やすことなく、緩やかに階調値が変化する画像領域に対し、ノイズ成分による誤検出なく、階調変化をより適切に検出したことによる補正ビットデータCdが得られる。このため、補正ビットデータにより画像信号の階調数を拡張し、階調変換された出力画像信号Dbにおいて、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることはなく、量子化ノイズ又は擬似輪郭が低減され、階調変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号が得られる。
《2−4》変形例.
上記説明においては、画素領域判定手段20bは、階調変化量dfの大きさから、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域判定結果として3種の領域信号Ar2=0,1,2を生成する場合を説明したが、図21において領域信号Ar2を用いる平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50は、非ノイズ階調変化位置(Ar2=2)と、階調平坦領域及びノイズ領域(Ar2=0,1)の2通りで処理を切り換えているので、領域判定結果を2値で示す領域信号Ar1とすることも可能である。例えば、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定の結果から、階調平坦領域とノイズ領域においては領域信号Ar1=0、非ノイズ階調変化位置においては領域信号Ar1=1というように構成し、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50における処理を領域信号Ar1で切り換えるようにしてもよい。この場合にも、同様に構成でき、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、階調変換手段2は入力画像信号Daの水平方向における階調値の変化において、水平方向の階調変化量を検出して階調値に対する補正ビットデータCdを生成し、補正ビットデータCdを画像信号に付加することで階調変換して量子化ノイズを低減する構成として説明したが、入力画像信号Daの垂直方向(画面表示走査線の配列方向)の階調変化量を検出し、補正ビットデータCdを生成して画像信号に付加し、垂直方向の階調値の変化を滑らかなものとしてもよく、同様の効果を奏することができる。この場合は、階調変化量検出手段10においては、注目画素と、該注目画素の隣接画素(垂直方向に1つ上の走査線上の隣接画素)との間の差分により階調変化量dfを求め、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50内における各信号の1画素分の遅延処理を1ライン分(1水平走査期間分)の遅延処理として、垂直方向に隣接して配置された画素における階調値の変化を検出するように構成すればよい。
なお、実施の形態2において、上記以外の点は、上記実施の形態1の場合と同じである。
《3》実施の形態3.
《3−1》構成.
図24は、本発明の実施の形態3による画像処理装置(すなわち、実施の形態3による画像処理方法を実施することができる装置)の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図24において、図1(実施の形態1)に示される構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。実施の形態3の画像処理装置は階調変換手段3を有し、階調変換手段3内の画素領域判定手段70の構成及び動作が、実施の形態1における階調変換手段1内の画素領域判定手段20の構成及び動作と相違する。
既に説明したように、ノイズ成分による階調値の変化は、数画素の範囲の狭い領域で階調値が増減する高周波の変化であり、階調差は比較的小さい振幅となる。上記実施の形態1及び2においては、注目画素の階調変化量dfの値と、注目画素に隣接又は隣々接する画素の範囲内における階調変化量の極性とから、1個の‘1階調変化画素’(図4(a)及び(b))及び連続2個の‘1階調変化画素’(図23(a)及び(b))を階調値が増減する高周波の変化であるノイズ成分と判定していた。ここで、図4(a)及び(b)並びに図23(a)及び(b)に示されるような、数画素の範囲で階調値が増減する高周波の変化は、その数画素の範囲において、階調値の増加と減少の逆方向の変化が存在する。したがって、数画素の範囲の階調変化量を平均化(平滑化)すると階調変化量の低周波成分が得られるので、ノイズ成分が存在する画素においては、平滑化処理の出力は高周波成分が除かれて0に近づく。一方、ある程度の幅を持ち階調値が変化して隣接画素が平坦である場合や、近隣の変化が同一方向の階調値の変化であれば、平滑化処理の出力は0より大きく、階調変化量の絶対値の大きさに相当する値が得られる。また、階調変化量の低周波成分であるので、平滑化処理の結果の極性(正負の符号)は、元の階調変化量の極性と同じになる。
なお、階調変化量dfに対し平滑化処理した結果を、傾き検出手段40等において用いる振幅制限階調変化量Xlmの代わりに用いることも可能であるが、この場合には、階調変化量dfにおけるノイズ成分は除かれるが、平滑化処理後の階調変化量の値は変化する。検出する階調値の緩やかな変化は、量子化ノイズ又は擬似輪郭となるような入力画像信号の最小階調値や階調ジャンプを検出する比較的小さな値であることから、階調変化量の振幅が変化することは、階調値の変化を平坦とみなす場合や、輪郭となる範囲を滑らかにする変化と認識する場合などにおいて、誤検出につながる。よって、実施の形態3においては、階調変化量dfに対し平滑化処理した結果は、ノイズ成分の有無を判定して、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定に用いる。
実施の形態3においては、隣接する画素範囲内における階調変化量dfを平滑化処理(フィルタ処理又は加算処理)した値により、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化となるノイズ成分を判定して、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素の領域判定結果である領域信号により、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、補正ビット生成手段50における処理を行う。
実施の形態3の画像処理装置の階調変換手段3は、実施の形態1の画像処理装置における階調変換手段1(図1参照)の構成において、図5に示す画素領域判定手段20に代えて、図25に示す画素領域判定手段70を用い、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素領域の判定結果として領域信号Ar3を生成し出力するよう構成している。実施の形態3の画像処理装置は、画素領域判定手段70の構成及び動作を除き、実施の形態1の画像処理装置と同じである。
画素領域判定手段70は、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波の変化)(例えば、図4(a)及び(b))をノイズ成分と判定する。画素領域判定手段70は、階調変化量算出手段11からの階調変化量dfの値から、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素の領域判定結果を示す領域信号Ar3を生成し出力する。この領域信号Ar3は、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、補正ビット生成手段50へと出力される。
1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化がある場合において、階調変化の階調差は比較的小さい値Nd(例えば、Nd=2など)以下となるため、階調変化量dfの絶対値|df|>0となる画素のうちノイズ成分による画素における変化は、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の隣接画素、注目画素の直後の画素位置x+1の隣接画素のそれぞれにおける階調変化量dfの値を用いて階調変化量を平滑化した低周波成分の値により判定できる。
すなわち、例えば、図4(a)の場合、階調値の増減が隣接する(高周波の変化がある)画素位置x1の注目画素とその前後の隣接画素との合計3画素における階調変化量dfに対し、階調変化量を加算して平滑化処理した結果は、
df(x1−1)+df(x1)+df(x1+1)=0+(+1)+(−1)=0
となる。また、例えば、図4(b)においては、画素位置x2の注目画素とその前後の隣接画素との合計3画素における階調変化量dfに対し、平滑化処理した結果は、
df(x2−1)+df(x2)+df(x2+1)=0+(−1)+(+1)=0
となる。このように、ノイズ成分による画素における高周波の変化があると、階調変化量dfの絶対値は比較的小さい値Nd以下となるとともに、各画素とその前後の画素の範囲で階調変化量を加算する平滑化処理を行った結果は、高周波成分が除かれて、0又は0に近い値となる。
また、図3(a)〜(c)及び図6(a)〜(g)の画素位置x=35(=x2)とその前後の画素のような高周波の変化の場合には、画素位置x=33,34,35(=x2)における階調変化量df、すなわち、df(33),df(34),df(35)に対し平滑化処理した結果は、
df(33)+df(34)+df(35)=0+(+1)+(−2)=−1
となる。このときは、平滑化処理結果の絶対値は0より大きくなるが、平滑化処理結果の極性(正負の符号)は元の階調変化量df(34)=+1と反対である。このことは、平滑化処理した画素の範囲内に増加と減少の逆方向の変化が存在することを意味する。
したがって、注目画素位置とその隣接する画素位置における階調変化量dfに対し平滑化処理(例えば、加算処理)し、その結果の値及び注目画素位置における階調変化量dfから、図4(a)及び(b)に示されるノイズ成分となる画素の領域と、階調変化量df=0となる階調平坦領域の画素、それ以外の非ノイズ階調変化位置を判定できる。
図25は、図24に示される画素領域判定手段70の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図25において、図5(実施の形態1)に示される構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。図25に示される画素領域判定手段70は、図5における画素変化量抽出手段21と絶対値レベル比較手段22とを備え、さらに、平滑化手段72と、極性判定手段73と、比較手段74と、領域信号生成手段75とを備えている。
図25において、画素領域判定手段70内の画素変化量抽出手段21は、階調変化量検出手段10からの階調変化量dfが入力され、階調変化量dfを画素遅延して、画素位置xの注目画素とその前後に位置する隣接画素位置x−1とx+1による画素位置xを中心とした合計3画素範囲における階調変化量df(x)と、階調変化量df(x−1)と、階調変化量df(x+1)とを抽出する。絶対値レベル比較手段22は、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)を受け取り、所定の閾値0と、ノイズ成分における階調差に相当する比較的小さい値Nd(例えば、最小階調差の2倍の値、Nd=2とする)とを比較して、階調変化量df(x)の絶対値のレベルを判定し、結果を示す比較結果nlfを求める。ここまでの構成は、図5におけるものと同じである。
平滑化手段72には、画素位置xを中心とした3画素範囲における階調変化量dfが入力される。すなわち、平滑化手段72には、画素変化量抽出手段21により得られた階調変化量df(x)、df(x−1)、及びdf(x+1)が入力される。平滑化手段72は、画素位置xにおける階調変化量df(x)と、画素位置x−1における階調変化量df(x−1)と、画素位置x+1における階調変化量df(x+1)とを加算して、階調変化量の平滑化処理を行う。すなわち、平滑化手段72は、画素位置xの注目画素と、画素位置xの直前に隣接する画素位置x−1の隣接画素と、画素位置xの直後に隣接する画素位置x+1の隣接画素からなる、連続する3画素の階調変化量df(x−1)、d(x)、df(x+1)を加算して、階調変化量の平滑化処理を行う。平滑化手段72による平滑化処理は、下記の式(6)により、平滑化結果(加算値)ct0を求める処理である。
ct0=df(x−1)+df(x)+df(x) …式(6)
なお、式(6)には、連続3画素における階調変化量の加算値を平滑化結果ct0とする場合を示したが、加算値(式(6)の右辺)に1/3を掛けて(加算した階調変化量の個数で割って)、階調変化量の平均値を平滑化結果として求めるように構成してもよい。また、ハードウェアの構成及び演算処理の容易さなど考慮して、階調変化量の加算値に他の値、例えば、1/4=1/22を掛けて(加算した階調変化量の個数に近い、2の階乗で割って)、平滑化結果を求めるように構成してもよい。
また、中心位置となる画素位置xに近い画素における階調値の重みが大きくなり、中心位置から離れた位置の画素(隣接画素)における階調値の重みが小さくなるように、重み付け加算した上で、平滑化処理を行って平滑化結果を求めてもよい。例えば、画素位置xにおける階調値の重みを1とし、隣接画素における階調値の重みを1/2として、式(6)に代えて、下記の式(7)に従い平滑化結果ct0を算出することもできる。
ct0=df(x−1)/2+df(x)+df(x+1)/2 …式(7)
上記式(6)又は式(7)などに従い算出される平滑化結果ct0は、3画素の階調変化量dfをそのまま又は重み付けして加算することによって求めた値である。このため、3画素の範囲内に増加と減少の逆方向の階調変化量、すなわち、ノイズ成分と考えられる高周波の変化が存在すれば、平滑化結果ct0の絶対値は0又は0に近い値になる。また、平滑化結果ct0の絶対値が0でない場合、平滑化結果ct0の極性は元の階調変化量の極性と反対極性になる。3画素の範囲内の階調値の変化が一方向の変化であり、ノイズ成分が含まれない場合は、平滑化結果ct0の絶対値は、0より大きくなり、階調変化量の絶対値の大きさに相当する値が得られる。また、この場合には、平滑化結果ct0の極性は、階調変化量df(x)の極性と同じである。これは、平滑化結果ct0は、階調変化量dfを3画素の範囲で加算することによって得られているから、すなわち、階調変化量の低周波成分として得られているからである。
極性判定手段73には、画素変化量抽出手段21により得られた画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)と、平滑化手段72からの階調変化量の平滑化結果ct0が入力される。極性判定手段73は、階調変化量df(x)の極性と平滑化結果ct0の極性とが反対極性かどうかを判定し、極性の判定結果として、2値化した値を示す判定結果pl0を求める。判定結果pl0の値は、例えば、互いの極性が逆となる場合は値‘1’(pl0=1)とし、同一の場合は値‘0’(pl0=0)とする。なお、この判定結果pl0の値は、これに限るものではなく、極性の不一致か否かが示されれば、他の値であってもよい。これにより、上述の平滑化結果ct0と階調変化量df(x)の極性の判定結果が得られる。
比較手段74には、平滑化手段72からの階調変化量の平滑化結果ct0が入力される。比較手段74は、平滑化結果ct0の絶対値のレベルを所定の閾値と比較する。すなわち、比較手段74は、比較を行う所定の閾値cth0=0(0又は0に近い値を設定する)として、平滑化結果の絶対値|ct0|≦cth0(ct0=0)の場合を判定し、結果を示す比較結果cf0を求める。
比較手段74で求める比較結果cf0の値は2値として、例えば、平滑化結果の絶対値|ct0|≦cth0の場合は比較結果cf0=1、それ以外の場合は比較結果cf0=0とする。なお、この比較結果cf0の値は、これに限るものではなく、平滑化結果の大きさを比較した結果が示されれば、他の値であってもよい。
ここで、平滑化結果ct0は階調変化量dfの低周波成分として得られることから、ノイズ成分による画素における高周波の変化があると、その値は、高周波成分が除かれて0又は0に近い値となる。よって、所定の閾値cth0については、階調変化量がノイズ成分によるものか否かを判定するために、0又は0に近い値を設定する。また、図25においては、平滑化手段72における平滑化を式(6)として平滑化結果ct0を得て、所定の閾値cth0=0とするよう説明するが、この閾値cth0は、画像信号における最小階調差や階調変換する際に検出する階調差の設定、また画像信号に含まれるノイズ・誤差成分の振幅の大きさ、平滑化手段72における平滑化処理の際の重み付け(式(7)など)等を考慮した値を設定する。
領域信号生成手段75には、絶対値レベル比較手段22からの比較結果nlfと、極性判定手段73からの判定結果pl0と、比較手段74からの比較結果cf0とが入力される。領域信号生成手段75は、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、各領域判定結果を示す領域信号Ar3を生成し出力する。すなわち、領域信号生成手段75は、以下の3通りの判定C1〜C3を行い、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域信号Ar3を生成する。
(判定C1)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、df(x)=0である場合には、絶対値レベル比較手段22からの比較結果nlfは、nlf=1となり、注目画素は、階調平坦領域に属する画素であり、領域信号Ar3は、Ar3=0になる。
(判定C2)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、極性判定手段73からの判定結果pl0が、pl0=1である場合(平滑化結果ct0の極性と階調変化量df(x)の極性とが反対極性の場合)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり、且つ、比較手段74からの比較結果cf0が、cf0=1である場合(平滑化結果の絶対値|ct0|≦0である場合)は、
注目画素は、ノイズ領域に属する画素であり、領域信号Ar3は、Ar3=1になる。
(判定C3)
判定C1において、注目画素が階調平坦領域に属する画素ではないと判定され、且つ、判定C2において、注目画素が、ノイズ領域に属する画素ではないと判定された場合には、画素位置xの注目画素は、非ノイズ階調変化位置の画素であり、領域信号Ar3は、Ar3=2になる。
上記により、階調変化量dfの絶対値が比較的小さい値Nd以下で、平滑化処理した3画素の範囲内に増加と減少の逆方向の変化が存在するノイズ成分が判定されることになり、よって、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行った結果を示す領域信号Ar3を得て、各画素が階調平坦領域、ノイズ領域、非ノイズ階調変化位置のどの階調値の変化を持つかが示される。
図26(a)〜(e)は、図6(a)〜(g)で示した画像信号ノイズ成分を含む入力画像信号Da(図3参照)に対し、実施の形態3における画素領域判定手段70により画素領域を判定する場合の様子を示した図である。図26(a)は、入力画像信号Daの水平方向の画素位置xを示し、同図(b)は、入力画像信号Daの階調値La(x)を示し、同図(c)は、階調変化量検出手段10において求められる隣接する画素間の階調値の差分による階調変化量dfを示し、同図(d)は、画素領域判定手段70内の平滑化手段72で求められる式(6)による3画素範囲における平滑化結果ct0を示し、同図(e)は領域信号生成手段75から出力される領域信号Ar3を示す。
例えば、図26(a)〜(e)において、ノイズ成分を含む入力画像信号Da(図26(b))に対して得られる階調変化量df(図26(c))は、画素位置x=16,24,32,40における階調変化量df=+1として得られるが、それぞれの階調平坦領域の画素の途中にある画素位置x1,x2とその前後における画素のノイズ成分において、階調変化量dfが0ではない値として得られる。この階調変化量が画素領域判定手段70に入力されると、画素位置x1における階調変化量df(x1)は、
df(x1)=+1≦Nd
であり、df(x1)の隣接画素における階調変化量df(x1−1)、df(x1+1)は、
df(x1−1)=0、
df(x1+1)=−1<0
であるから、平滑化手段72で得られる平滑化結果ct0は、
ct0=0+(+1)+(−1)=0≦cth0(=0)
で、比較結果cf0=1となる。したがって、領域信号生成手段75からの領域信号Ar3=1となり、ノイズ領域となる。同様に、画素位置x1+1で領域信号Ar=1となり、ノイズ領域となる。
また、図26(a)〜(e)の画素位置x2−1における階調変化量df(x2−1)は、
df(x2−1)=+1≦Nd
であり、画素位置x2−1の画素の隣接画素における階調変化量df(x2−2)及びdf(x2)は、
df(x2−2)=0
df(x2)=−2<0
であり、得られる平滑化結果ct0は、
ct0=0+(+1)+(−2)=−1
となる。このとき、|ct0|>cth0(=0)で比較結果cf0=0であるが、平滑化結果ct0=−1と階調変化量df(x2−1)=+1の極性は反対で、判定結果pl0=1となる。したがって、領域信号生成手段75からの領域信号Ar3=1となり、ノイズ領域となる。同様に、画素位置x2とx2+1で領域信号Ar=1となり、ノイズ領域となる。
以上により、画素領域判定手段70は、階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x+1)から、隣接画素を含む3画素範囲で階調変化量dfに対し平滑化処理した結果と階調変化量df(x)の値により、画素位置xの注目画素における各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素の領域判定結果を示す領域信号Ar3を得ることができる。この画素領域は、実施の形態1及び2と同様、同じ階調値の連続や一定値以内の階調差の検出で判定するのではなく、ノイズ成分による階調変化を、階調変化量dfの値と平滑化処理した結果から判定するので、ノイズの影響は少なく、隣接画素における階調変化量のみでより正確に分類が可能である。
なお、図25の画素変化量抽出手段70においては、階調変化量dfを遅延して抽出するよう構成したが、階調変化量検出手段10において階調変化量dfを求める際に、画素位置xとその隣接画素及び隣々接画素における階調変化量を求めることで得てもよく、この場合は画素変化量抽出手段70における画素遅延を省略することができる。
《3−2》動作.
画素領域判定手段70による画素領域の判定結果である領域信号Ar3は、領域信号Ar(実施の形態1の場合)と同様に、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50へと出力される。平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50は、領域信号Ar3に基づいて、非ノイズ階調変化位置以降における平坦・ノイズ領域幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstと、階調値の傾き(傾きデータ値Ksl)と、傾きデータ値Kslから算出される補正ビットデータCdを求める。そして、画素値演算手段92は、入力画像信号Daに補正ビットデータCdを付加して階調値を変換し、画像信号のビット数を拡張する。これらの構成と動作は、上記実施の形態1の場合と同じである。
実施の形態3による画像処理装置において、階調変化量dfを求め、この階調変化量に基づき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域判定結果と階調変化量dfから階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て補正ビットデータを生成し、階調数が拡張された出力画像信号Dbを出力する動作は、上記実施の形態1に関して図15及び図16を参照して説明したのと同様である。但し、画素領域判定手段70における階調変化量に基づき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定処理が、上記実施の形態1の場合と異なる。
図27は、図24に示される画素領域判定手段70の動作を示すフローチャートである。図27において、図17(実施の形態1)に示される工程と同じ又は対応する工程には、同じ符号を付す。図27において、画素領域判定手段70へ階調変化量dfが入力されると、階調変化量dfに対し画素遅延するなどの処理によって、画素位置xの注目画素、その直前の画素位置x−1の画素(隣接画素)、注目画素の直後の画素位置x+1の画素(隣接画素)のそれぞれにおける階調変化量dfを、階調変化量df(x)、df(x−1)、df(x+1)として得る(ステップS120)。
平滑化手段72は、画素位置xを中心とした3画素範囲の階調変化量df(x)、df(x−1)、(x+1)を加算して、上記式(6)により平滑化処理し、平滑化結果ct0を求める(ステップS140)。平滑化結果ct0は階調変化量の低周波成分として得られ、3画素の範囲内に増加と減少の逆方向の階調変化量、すなわち、高周波の変化であるノイズ成分が存在するかが判定できる。
次に、比較手段74は、平滑化結果ct0の絶対値のレベルを所定の閾値cth0=0(0又は0に近い値を設定する)と比較する(ステップS141)。比較手段74は、平滑化結果の絶対値|ct0|≦cth0(ct0=0)の場合(ステップS142)は、比較結果cf0=1を出力し(ステップS143)、それ以外の場合は比較結果cf0=0を出力する(ステップS144)。平滑化結果ct0は階調変化量dfの低周波成分であるので、ノイズ成分による画素における高周波の変化があると、その値は、高周波成分が除かれて0に近い値となり、比較結果cf0=1においてはノイズ成分となる変化があることが分かる。
また、極性判定手段73において、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)とその極性の比較判定を行う(ステップS151)。すなわち、極性判定手段73は、階調変化量df(x)と、平滑化結果ct0の極性が反対かを判定し(ステップS152)、極性の判定結果として、判定結果pl0を求める。極性判定手段73は、互いの極性が反対極性となる場合はpl0=1を出力し(ステップS153)、同一極性の場合はpl0=0を出力する(ステップS154)。
そして、画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)の絶対値のレベルを所定の閾値と比較し、階調平坦領域の画素か(閾値0)、ノイズ領域における1条件階調差が比較的小さい値Nd以下かを判定するとともに、平滑化結果ct0による比較結果cf0と極性の判定結果pl0を用いて、以下のように、ステップS130、S131及びS161〜S164に示される動作で、画素位置xの注目画素における各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、各領域判定結果を示す領域信号Ar3を生成する。なお、ステップS130及びS131は、図17の場合と同じ処理である。
(判定C1)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、df(x)=0である場合(ステップS130)には、絶対値レベル比較手段22からの比較結果nlfは、nlf=1となり、注目画素は、階調平坦領域に属する画素であり、領域信号Ar3は、Ar3=0になる(ステップS161)。
(判定C2)
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり(ステップS131)、且つ、極性判定手段73からの判定結果pl0が、pl0=1である場合(平滑化結果ct0の極性と階調変化量df(x)の極性とが反対極性の場合)(ステップS162)、又は、
画素位置xの注目画素における階調変化量df(x)が、0<|df(x)|≦Ndであり(ステップS131)、且つ、比較手段74からの比較結果cf0が、cf0=1である場合(平滑化結果の絶対値|ct0|≦0である場合)(ステップS162)は、
注目画素は、ノイズ領域に属する画素であり、領域信号Ar3は、Ar3=1になる(ステップS163)。
(判定C3)
判定C1において、注目画素が階調平坦領域に属する画素ではないと判定され、且つ、判定C2において、注目画素が、ノイズ領域に属する画素ではないと判定された場合には(ステップS131,S162)、画素位置xの注目画素は、非ノイズ階調変化位置の画素であり、領域信号Ar3は、Ar3=2になる(ステップS164)。
図27に示される動作により、画素位置xにおける各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、判定結果を示す領域信号Ar3が得られる。
《3−3》効果.
以上に説明したように、実施の形態3の画像処理装置又は画像処理方法においては、隣接画素を含む3画素範囲で階調変化量dfに対し平滑化処理した結果と階調変化量df(x)の値により、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波の階調変化)をノイズ成分として判定するように、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、その判定結果を示す領域信号Ar3を基準として、非ノイズ階調変化位置(Ar3=2)以降における平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求め、非ノイズ階調変化位置(Ar3=2)における振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstとから階調値の傾き(傾きデータ値Ksl)を得ている。したがって、実施の形態3の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、非ノイズ階調変化位置とその次に現れる非ノイズ階調変化位置との間に存在するノイズ成分による階調変化をノイズ成分による階調変化であると正確に判定できるので、平坦・ノイズ領域幅を正確に検出でき、傾きデータ値Kslを、ノイズ成分による影響を受けることなく正確に算出できる。また、実施の形態3の画像処理装置又は画像処理方法によれば、回路規模を大幅に増やすことなく、傾きデータ値Kslによる階調値で順次変化する補正値が得られ、緩やかに階調値が変化する画素領域や非ノイズ階調変化位置における適切な補正ビットデータCdを得て、画像信号の階調変化をより滑らかに変換し、ビット数を拡張できる。また、得られた補正ビットデータCdを入力画像信号Daの階調値に対し付加して階調数を拡張するため、実時間で処理でき、ノイズ成分による微少な変化を残したまま、階調変化がより滑らかに変換できる。
このように、実施の形態3の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、実時間で回路規模を大幅に増やすことなく、緩やかに階調値が変化する画像領域に対し、ノイズ成分による誤検出なく、階調変化をより適切に検出したことによる補正ビットデータCdが得られる。このため、補正ビットデータにより画像信号の階調数を拡張し、階調変換された出力画像信号Dbにおいて、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることはなく、量子化ノイズ又は擬似輪郭が低減され、階調変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号が得られる。
《3−4》変形例.
上記説明においては、画素領域判定手段70は、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(高周波の変化)(例えば、図4(a)及び(b))をノイズ成分と判定するものとして説明したが、1個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化のみでなく、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化(例えば、図23(a)及び(b))をもノイズ成分として検出するように構成することもできる。
図28は、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化までのノイズ成分をノイズ領域として判定する画素領域判定手段70bの一構成例を示すブロック図である。図28において、図25又は図22に示される構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。図28に示される画素領域判定手段70bは、図25における画素変化量抽出手段21を、画素位置xとその前後各2画素による合計5画素範囲における階調変化量dfを抽出する画素変化量抽出手段21bとし、3画素範囲用の平滑化手段72を5画素範囲用の平滑化手段76に置き換えた構成を有する。図28における画素変化量抽出手段21bは、図22のものと同じである。
図28においては、平滑化手段76を、階調変化量df(x)を中心とした5画素範囲で、階調変化量dfを加算することによる平滑化処理とすることにより、平滑化結果ct1を得る。平滑化手段72が階調変化量df(x)を中心とした3画素範囲における階調変化量dfの平滑化処理であるのに対し、より広い5画素の範囲内における増加と減少の逆方向の階調変化量、すなわち、高周波の変化であるノイズ成分が存在するかを、平滑化結果ct0の値として得ることができ、これにより、連続2個の‘1階調変化画素’の階調値が直前の画素の階調値及び直後の画素の階調値に対して1階調だけ増加又は減少する階調変化までを平滑化結果ct1として得ることができる。
また、上記説明においては、画素領域判定手段70は、階調変化量dfの大きさから、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、領域判定結果として3種の領域信号Ar3=0,1,2を生成する場合を説明したが、領域信号Ar3を用いる平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50は、非ノイズ階調変化位置(Ar3=2)と、階調平坦領域及びノイズ領域(Ar3=0,1)の2通りで処理を切り換えているので、領域判定結果を2値で示す領域信号Ar1とすることも可能である。例えば、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定の結果から、階調平坦領域とノイズ領域においては領域信号Ar1=0、非ノイズ階調変化位置においては領域信号Ar1=1というように構成し、平坦・ノイズ領域幅判定手段30、傾き検出手段40、及び補正ビット生成手段50における処理を領域信号Ar1で切り換えるようにしてもよい。この場合にも、図24の場合と同様に構成でき、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、階調変換手段3は入力画像信号Daの水平方向における階調値の変化において、水平方向の階調変化量を検出して階調値に対する補正ビットデータCdを生成し、補正ビットデータCdを画像信号に付加することで階調変換して量子化ノイズを低減する構成として説明したが、入力画像信号Daの垂直方向(画面表示走査線の配列方向)の階調変化量を検出し、補正ビットデータCdを生成して画像信号に付加し、垂直方向の階調値の変化を滑らかなものとしてもよく、同様の効果を奏することができる。
なお、実施の形態3において、上記以外の点は、上記実施の形態1又は2の場合と同じである。
《4》実施の形態4.
《4−1》構成.
上記実施の形態1の画像処理装置の階調変換手段1においては、階調変化量dfに基づいて領域信号Arを判定し、領域信号Arに基づいて非ノイズ階調変化位置(Ar=2)にある基準画素の直後の平坦・ノイズ領域の幅を予測した平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstを求め、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ予測値dstから階調値の傾き(傾きデータ値)Kslを算出している。これに対し、実施の形態4の画像処理装置の階調変換手段4においては、領域信号Arと、メモリを用いて得られる非ノイズ階調変化位置の間の画素数(平坦・ノイズ領域幅データ測定値de)と振幅制限階調変化量Xlmとから、階調値の傾きデータ値Ksを得る構成を採用しており、この場合には、ノイズ成分による誤検出なく階調値の傾きデータ値Ksを得ることができる。
図29は、本発明の実施の形態4による画像処理装置(すなわち、実施の形態4の画像処理方法を実施することができる装置)の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図29において、図1(実施の形態1)に示される構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。
実施の形態4の画像処理装置は、領域信号Arを基準として、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の画素数(平坦・ノイズ領域幅データ測定値de)と、振幅制限階調変化量Xlmとから、階調値の傾きデータ値Ksを得て、得られた傾きデータ値Ksから補正ビットデータCeを生成し、入力画像信号Da(遅延後は符号Ddで示す)の階調値に対し、補正ビットデータCeによる値を加算する演算処理を行うことで、ビット数が拡張された出力画像信号Dbを生成するように構成されている。実施の形態4の画像処理装置は、画像信号の一定方向(例えば、水平方向又は垂直方向)における階調値の変化を検出し、ノイズ成分による影響を受けることなく階調値の傾きデータ値Ksを求めることで、入力画像信号Daのビット数を拡張する階調変換処理を行い、入力画像信号Daよりも多階調の出力画像信号Dbを出力するよう構成されている。
図29に示されるように、実施の形態4の画像処理装置は、mビットのデジタルの入力画像信号Daに対し下位ビットを付加することでビット数を拡張する階調変換処理を行い、nビット(n>m)の出力画像信号Dbとして出力する階調変換手段4を有している。階調変換手段4は、階調変化量検出手段10と、画素領域判定手段20とを備えている。図29に示される階調変化量検出手段10及び画素領域判定手段20は、上記実施の形態1におけるものと同様の構成を有している。また、階調変換手段4は、2つの非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の画素数を平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとして求める平坦・ノイズ領域幅判定手段80と、終点階調変化量検出手段42及び傾き演算手段43を含み、平坦・ノイズ領域幅データ測定値deと階調変化量検出手段10からの振幅制限階調変化量Xlmとから入力画像信号Daの一定方向(例えば、水平方向)の階調値の傾きデータ値Ksを検出する傾き検出手段41と、画素領域判定手段20からの領域信号Arを遅延させ、傾き検出手段41からの出力(傾きデータ値Ks)と位相を合わせるための領域信号遅延補償手段67と、入力された傾きデータ値Ksから補正ビットデータCeを生成する補正ビット生成手段81と、入力画像信号Daを所定時間だけ遅延せる遅延補償手段93と、入力画像信号Daに補正ビット生成手段81からの補正ビットデータCeを付加する画素値演算手段94とを備えている。
実施の形態4においては、上記実施の形態1の場合と同様に、入力画像信号Daの水平方向に対し、画素間の階調変化量dfが+1又は−1となる変化を求め、階調の変化が緩やかな領域において8ビットの入力画像信号Daの階調数を拡張する階調変換処理を行い、12ビットの出力画像信号Dbとして出力する構成について説明する。
図29において、階調変化量検出手段10は、入力画像信号Daの水平方向における階調変化量dfを検出し、水平方向の隣接画素間の階調値の差分である階調変化量dfと、この階調変化量dfの値を所定の範囲内(例えば、−1から+1までの範囲内)に制限した振幅制限階調変化量Xlmとを出力する。振幅制限階調変化量Xlmは、傾き検出手段41において、水平方向における階調値の傾きデータ値Ksを算出する際に、非ノイズ階調変化位置における階調変化の高さとして用いられる。画素領域判定手段20は、階調変化量算出手段11からの階調変化量dfの値から、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、画素の領域判定結果を示す領域信号Arを生成し出力する。
平坦・ノイズ領域幅判定手段80には、画素領域判定手段20からの領域信号Arが入力される。平坦・ノイズ領域幅判定手段80は、水平方向走査期間ごとに、画素領域判定手段20からの領域信号Arに基づき、2つの非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の平坦・ノイズ領域の画素数をカウントし、カウント値に1を加えた値を平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとして求める。すなわち、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素(基準画素)を基準(開始点)として非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から、それ以降の次に非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素(終点画素位置)までの間の平坦・ノイズ領域の画素数をカウントし、この画素数に1を加えた値を平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとする。この場合は、開始点の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から次の終点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)までの画素の階調値を検出するので、平坦・ノイズ領域幅分の数のデータを保持できるメモリが必要となる。しかし、実施の形態4においては、平坦・ノイズ領域幅の予測値ではなく、平坦・ノイズ領域幅(階調値の変化の傾きを算出する際の幅)の測定値を得ることが可能である。
具体的には、平坦・ノイズ領域幅判定手段80は、水平方向走査期間ごとに平坦・ノイズ領域幅データ測定値deを初期化しながら、領域信号Arに基づき、開始点画素位置となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から終点画素位置となる次の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)までの画素数をカウントする。そして、平坦・ノイズ領域幅判定手段80は、得られたカウント値に1を加えた値を平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとし、開始点となる非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置直前位置までの間、平坦・ノイズ領域幅データ測定値deを保持して出力する。この平坦・ノイズ領域幅データ測定値deは、傾き検出手段41内の傾き演算手段43へと出力され、水平方向における階調値の変化の傾き算出の際に、階調値の傾きの幅(距離)とする。平坦・ノイズ領域幅判定手段80は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の画素数をカウントするので、階調平坦領域(Ar=0)の画素だけでなく、ノイズ領域(Ar=1)の画素についても、平坦な期間の画素として画素数をカウントする。よって、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の画素数を、ノイズ領域を含めて(すなわち、ノイズ成分による影響を受けることなく)、得ることができる。
傾き検出手段41には、画素領域判定手段20からの領域信号Arと、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12からの振幅制限階調変化量Xlmと、平坦・ノイズ領域幅判定手段80からの平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとが入力される。傾き検出手段41は、画素領域判定手段20からの領域信号Arに基づき、開始点の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)に対する次の終点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の振幅制限階調変化量Xlmを階調変化の高さ(「終点振幅制限階調変化量Xe」と言う。)として求め、この終点振幅制限階調変化量Xeと平坦・ノイズ領域幅データ測定値deから、開始点の非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置までの階調値の傾きを示す傾きデータ値Ksを算出し、補正ビット生成手段81へと出力する。終点振幅制限階調変化量Xeは、階調値の傾きの計算において用いられる階調変化の高さであり、階調変化量dfを−1から+1までの範囲内に制限した値である。
具体的には、まず、傾き検出手段41内の終点階調変化量検出手段42は、画素領域判定手段20からの領域信号Arと、階調変化量検出手段10からの振幅制限階調変化量Xlmとから、開始点の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)に対する次の終点非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmを検出し、終点振幅制限階調変化量Xeとして求める。この終点非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmである終点振幅制限階調変化量Xeは、水平方向における階調値の傾き算出の際に、階調変化の高さとして用いられ、開始点の非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置の直前位置までの間、保持して出力される。
次に、傾き検出手段41内の傾き演算手段43には、終点階調変化量検出手段42からの終点振幅制限階調変化量Xeと、平坦・ノイズ領域幅判定手段80からの平坦・ノイズ領域幅データ測定値deが入力される。平坦・ノイズ領域幅データ測定値deは、開始点における非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から次の終点非ノイズ階調変化位置までの画素数であるので、傾き演算手段43は、終点振幅制限階調変化量Xeと平坦・ノイズ領域幅データ測定値deの値から階調値の傾きである傾きデータ値Ksを、以下の式(8)により算出する。
Ks = Xe/de …式(8)
終点振幅制限階調変化量Xe及び平坦・ノイズ領域幅データ測定値deはともに、開始点となる非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置の直前までの間で、その期間の階調値の傾きを算出する際の階調変化の高さと幅の値を示すよう保持されて入力されているので、上記式(8)から得られる傾きデータ値Ksについても、開始点となる非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置の直前までの期間の階調値の傾きとして得られる。
終点振幅制限階調変化量Xe(すなわち、振幅制限階調変化量Xlm)は、その値が−1から+1までの範囲内に制限されており、例えば、終点振幅制限階調変化量Xeが+1で、開始点から終点位置までの非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の画素数が7画素で、平坦・ノイズ領域幅データ測定値de=8が入力された場合は、算出される傾きデータ値Ksは1/8となる。また、終点振幅制限階調変化量Xeが−1の場合には、傾きデータ値Ks=−1/8となる。なお、平坦・ノイズ領域幅データ測定値de=0の場合は、傾きデータ値Ks=Xeとする。よって、この傾きデータ値Ksは−1から+1までの範囲内にある値として得られる。
なお、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)の画素においては、直前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における傾きデータ値Ks(すなわち、開始点となる非ノイズ階調変化位置で得られる傾きデータ値Ksに相当する)が保持されている。領域信号Ar=0又は1の場合は、直前の非ノイズ階調変化位置における傾きデータ値Ksが、そのまま次の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)まで保持される。
よって、開始点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から終点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)までの間の傾きデータ値Ksを、終点振幅制限階調変化量Xeと平坦・ノイズ領域幅データ測定値deから算出して、平坦・ノイズ領域となる画素(Ar=0又は1)で用いる階調値の傾きとするので、階調平坦領域(Ar=0)の画素とともに、ノイズ領域(Ar=1)の画素についても、平坦・ノイズ領域(ノイズ成分がない場合には平坦な区間)の画素として扱うことになり、ノイズ成分による変化から傾きは算出されず、よって、ノイズ成分による誤検出なく、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素における階調値の傾きを得られる。
図30(a)及び(b)は、図29に示される傾き検出手段41によって算出される傾きデータ値Ksを説明するための概念図である。図30(a)は、終点振幅制限階調変化量Xe(高さ)が+1で、階調値が増加する場合、図30(b)は、終点振幅制限階調変化量Xeが−1で、階調値が減少する場合を示している。図30(a)及び(b)において、横軸は水平方向の画素位置を、縦軸は各画素位置における入力画像信号Daの階調値La(x)を示している。図30(a)及び(b)に示されるように、開始点(画素位置x)の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)と終点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)との間の画素数から得られる平坦・ノイズ領域幅をdeとすると、終点位置における画素位置はx+deとなり、平坦・ノイズ領域幅データ測定値deと振幅制限階調変化量Xlmから、図30(a)及び(b)に示されるような傾きKsが、開始点(画素位置x)の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から終点の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の直前画素までの傾きデータ値Ksとして得られる。
以上より、傾き検出手段41からは、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における階調値の変化に基づく値の傾きデータ値Ksが得られ、平坦・ノイズ領域となる画素(Ar=0又は1)においては、その前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)で算出された傾きデータ値が保持される。振幅制限階調変化量Xlmが−1から+1までの範囲内に制限されているので、検出された傾きデータ値Ksは、−1/deから+1/deまでの範囲内の値、したがって、−1から+1までの範囲内の値となる。
図29において、領域信号遅延補償手段67には、画素領域判定手段20からの領域信号Arが入力される。領域信号遅延補償手段67は、領域信号Arに対し、平坦・ノイズ領域幅判定手段80で開始点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から終点画素となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)までの間の平坦・ノイズ領域幅データ測定値deを求め、傾き検出手段41で傾きデータ値Ksを得るまでの時間、領域信号Arを遅延し、傾き検出手段41からの出力(傾きデータ値Ks)と開始点の非ノイズ階調変化位置との位相を合わせて、遅延補償された領域信号Ardを出力する。平坦・ノイズ領域幅判定手段80及び傾き検出手段41は、非ノイズ階調変化位置から次の非ノイズ階調変化位置までの間の傾きを求めており、その間の平坦・ノイズ領域幅、終点における階調変化の高さを求めるための遅延が必要となる。よって、ここでの遅延補償する時間は、平坦・ノイズ領域幅と階調変化の高さ及び階調変化の傾きを得るまでの遅延時間に相当する分の時間となる。
次に、図29において、補正ビット生成手段81には、傾き検出手段41からの傾きデータ値Ksと、領域信号遅延補償手段67からの遅延補償された領域信号Ardとが入力される。補正ビット生成手段81は、傾きデータ値Ksから入力画素信号Daの画素値に付加する補正値(階調値)の隣接する画素ごとの階調変化量dK2を求め、水平方向走査期間ごとで、領域信号Ard(又は領域信号Ar)に従い、傾きデータ値Ksによる階調変化量dK2を画素ごとで順次加算して補正値を求め、この補正値から補正ビットデータCeを生成し、画素値演算手段94へと出力する。
ここで、傾きデータ値Ks、すなわち、画素ごとの階調変化量dK2は、入力画像信号Daの階調値La(例えば、図2(a)〜(c)又は図3(a)〜(c)などを参照)に対して小数の値を含んだ値であり、よって、補正ビット生成手段81において生成する補正ビットデータCeは、入力画像信号Daの階調値の小数部を含む値による付加ビットEと、付加する値の符号ビットを含むビット列として求められる。なお、補正ビットデータCeは、例えば、図14(実施の形態1)で説明した補正ビットデータCdと同様に、付加ビットEとその符号ビットから構成される。
図31は、図29に示される補正ビット生成手段81の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図31に示されるように、補正ビット生成手段81は、例えば、加算手段82と、切換え手段83と、補正値遅延手段84と、ビット列変換手段85とを有する。補正ビット生成手段81は、入力画素信号Daに対し付加すべき補正値を求め、その階調値を示すビット列を補正ビットデータCeとして出力する。
図31に示される補正ビット生成手段81においては、加算手段82には、傾き検出手段41からの傾きデータ値Ksが入力され、また、後述する補正値遅延手段84からの1画素遅延された遅延補正値pCdが入力される。加算手段82は、傾きデータ値Ksから補正値の隣接する画素ごとの階調変化量dK2を求め、遅延補正値pCdである直前の画素における補正値に対し、階調変化量dK2を加算することで、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)以降の階調平坦領域又はノイズ領域となる画素における補正値sCeを得て、切換え手段83へと出力する。すなわち、加算手段82は、まず、傾きデータ値Ksを、補正値の隣接する画素ごとの階調変化量dK2として求め(dK2=Ksとする)、次に、直前画素における補正値(遅延補正値pCe)に対し階調変化量dK2を加算(pCe+dK2)する。なお、加算手段82の演算は階調変化量dK2の符号(すなわち、傾きデータ値Ksの符号)に応じて、加算又は減算処理する(dK2>0のときは絶対値|dK2|を加算し、dK2<0のときは|dK2|を減算する。)。
切換え手段83には、領域信号Ard(又は領域信号Ar)と、加算手段82による補正値sCeが入力される。切換え手段83は、水平方向走査期間ごとで値を初期化する(固定の開始点補正値0にする)とともに、領域信号Arに基づき、開始点補正値0と、加算手段82による補正値sCeとを切り換えて、入力画像信号Daに対して付加すべき階調値として補正値aCeを生成し、出力する。詳細に言えば、切換え手段83は、水平方向走査期間の区切りにおいての初期化時は、開始点補正値0を選択して補正値aCe=0とするとともに、領域信号Ardに従い、非ノイズ階調変化位置(Ard=2)においては、開始点補正値0とする(補正値aCe=0)。一方、切換え手段83は、階調平坦領域又はノイズ領域となる画素(Ard=0又は1)においては、加算手段82による補正値sCe(すなわち、直前画素の補正値pCeに対し階調変化量dK2=Ksを加算した値)を選択し、補正値aCeとする(aCe=pCe+Ks)。そして、この補正値aCeは、ビット列変換手段85へと出力されるとともに、補正値遅延手段84に送られ、1画素分遅延して遅延補正値pCeとして加算手段82に戻される。
補正値遅延手段84は、切換え手段83からの補正値aCeを1画素分遅延して、遅延補正値pCeを出力する。切換え手段83からの出力を遅延するので、遅延補正値pCeは、直前画素における補正値が出力される。
以上に説明した加算手段82、切換え手段83、及び補正値遅延手段84における構成により、入力画像信号Daに対し付加すべき補正値aCeは、非ノイズ階調変化位置(Ard=2)においては開始点補正値0で、階調平坦領域又はノイズ領域となる画素(Ard=0,1)においては、加算手段82による補正値sCe、すなわち、非ノイズ階調変化位置(Ard=2)から順に直前画素における値に対し階調変化量dK2=Ksが加算されて、階調変化量dK2の絶対値(すなわち、傾きデータ値Ksの絶対値|Ks|)の大きさで順次変化する値として得られる。傾きデータ値Ksによる階調変化量dK2は、−1から+1までの範囲内の絶対値が1以下となる小数として表現されており、したがって、切換え手段83から得られる補正値aCeについても、1以下の小数となる精度を持った階調値となる。
すなわち、開始点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から順に領域信号Ar=0又は1の画素をカウントした値Nに対し、それぞれの画素における補正値aCeは、カウント値Nと傾きデータ値Ks(階調変化量dK2=Ks)により、補正値aCe=N×Ksで表すことができ、開始点の補正値aCe=0から順に、傾きデータ値Ksによる階調変化量dK2のレベル差の変化を持つ補正値aCeが得られる。
領域信号Ard(又はAr)に基づき切換え手段83で選択する補正値aCeを切り換えるので、階調平坦領域(Ar=0)とともに、ノイズ領域(Ar=1)となる画素についても、平坦な期間の画素として傾きデータ値Ksによる階調変化量dK2のレベル差の変化を持つ補正値aCeが得られ、よって、ノイズ成分による影響なく、順次変化する補正値aCeが得られる。
なお、傾きデータ値Ksは−1から+1までの範囲内で制限されており、エッジ(輪郭)部分のような階調変化が−1から+1までの範囲内を超えた階調変化量を持つ画素でも、付加される補正値は−1から+1までの範囲内で、その差分は保持されるため、輪郭情報を保つような補正値として得ることができる。
補正ビット生成手段81内のビット列変換手段85には、切換え手段83からの補正値aCeが入力される。ビット列変換手段85は、補正値aCeを所定のビット数となるビット列の値へ変換し、付加する値を示す付加ビットEと値の符号ビットを含めて補正ビットデータCeとして求め、補正ビット生成手段81から画素値演算手段63へと出力する。ビット列変換手段85は、入力が異なるのみで、図13(実施の形態1)におけるビット列変換手段55と同様に構成できるが、補正値aCeの符号を除く絶対値は1以下の小数を含む値として得ているので、補正ビットデータCeにおける補正の値(付加ビットE)は、入力画像信号Daの階調値のビット列に対し、小数部を示す。ビット列変換手段85は、図13の場合と同様に、ハードウェアでは補正値aCeなどの値も通常は所定のビット数の値として得ているので、省略することができ、また、ソフトウェアの場合のようにビット列として扱う必要がない場合も省略することができる。
図32は、図29に示される補正ビット生成手段81bの構成の他の例を概略的に示すブロック図である。図32に示されるように、補正ビット生成手段81bは、領域信号Ard(又はAr)を基準として、開始点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から順に画素をカウントするカウント手段86と、カウント値Nと傾きデータ値Ksを乗算し補正値aCe=N×Ksを求める乗算手段87と、ビット列変換手段85とから構成される。補正ビット生成手段81bは、開始点の補正値aCe=0から順に、傾きデータ値Ksによるレベル差の変化を持つ補正値aCeを得る。
次に、図29に示す階調変換手段4における遅延補償手段93では、補正ビット生成手段81から出力される補正ビットデータCeが得られるまでの遅延と入力画像信号Daの画素位置を合わせるように入力画像信号Daの遅延補償を行い、遅延補償された画像信号Ddを出力する。
階調変換手段4における画素値演算手段94には、遅延補償手段93からの遅延補償された画像信号Ddと、補正ビット生成手段81からの補正ビットデータCeが入力される。画素値演算手段94は、遅延補償された画像信号Ddに対し、補正ビット生成手段81からの補正ビットデータCeを整数部の位置を合わせて加算することで、新たな出力画像信号Dbを算出し、出力する。出力画像信号Dbの階調値に対して、小数部を含む補正ビットデータCeが演算により付加されるので、出力画像信号Dbのビット数は画像信号Ddのビット数より大きく、すなわち、拡張され、このビット数を拡張した出力画像信号Dbが、階調変換手段4の出力となる。
なお、画素値演算手段94における演算においては、補正ビットデータCeの正又は負の符号に応じて加算又は減算処理される(すなわち、Ce>0のときには絶対値|Ce|を加算し、Ce<0のときには|Ce|を減算する)。また、演算後の値が負の値となる場合は、出力画像信号Dbを値0(Db=0)とし、出力画像信号Dbの設定したビット数(最大値)を超える値となる場合は、出力画像信号Dbの値を所定の最大値として、出力画像信号Dbの値を制限する。
画素値演算手段94において加算又は減算によって演算処理された後の出力画像信号Dbは、画像信号Ddに対し小数部を有した精度の画像信号となり、出力画像信号Dbのビット数は、入力画像信号Daよりも多くなるので、表現できる階調数が増えるだけでなく、小数部を含む補正ビットデータCeによる小数部のビット数を有し、階調値の分解能が増加し、より滑らかな階調値の変化を表現できるようになる。また、階調値の変化が画像のエッジ(輪郭)による場合も、エッジ部における差分は保持されるので、輪郭情報を保ちながら、画像の滑らかさを増すことができる。
さらに、補正ビットデータCeは、画素領域判定手段20からの領域信号Arを基準として、ノイズ成分による影響なく、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から順に傾きデータ値Ksによる階調変化量dK2で変化する補正値aCeとして得られており、画素値演算手段94において、画像信号Dd(又は入力画像信号Da)の階調値に対して、補正ビットデータCeによる値が加算又は減算処理されるので、線形補間処理による階調値の変換処理に比べ、ノイズ等の微少な階調値の変化による画像のディテールを残し、鮮鋭度を維持しながら、緩やかに階調値が変化する画素の領域の滑らかさを増すことができ、画像のぼやけを低減することができる。
実施の形態4における入力画像信号Da、補正ビットデータCe、及び出力画像信号Dbの関係は、図14(実施の形態1)の場合と同様である。
《4−2》動作.
図33は、実施の形態4による画像処理装置の動作(その1)を示すフローチャートであり、主に、階調変換手段4による傾きデータ値を算出するための動作を示す。また、図34は、実施の形態4による画像処理装置の動作(その2)を示すフローチャートであり、階調変換手段4による補正ビットデータの生成及び階調変換処理の動作を示す。図33及び図34には、各走査線(ライン)内の画素ごとの処理を示す。なお、画素領域判定手段20における階調変化量dfに基づき、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定の動作は、図17(実施の形態1)の場合と同様である。
図35(a)〜(k)は、実施の形態4による画像処理装置の動作の一例(階調値が非常に緩やかに上昇し、ノイズ成分を含む場合)を説明するための図である。また、図36(a)〜(k)は、実施の形態4による画像処理装置の動作の他の例(階調値が非常に緩やかに低下し、ノイズ成分を含む場合)を説明するための図である。図35(a)〜(k)は、図18(a)〜(k)(実施の形態1)と同様のノイズ成分を含む入力画像信号Daの一部について、階調変換手段4における動作を示しており、図36(a)〜(k)は、図19(a)〜(k)(実施の形態1)と同様の画像信号が入力された場合の階調変換手段4における動作を示している。
以下、階調変換手段4の動作を図33、図34、図35(a)〜(k)、及び図36(a)〜(k)を用いて説明する。まず、図33において、ステップS101〜S103,S105による動作、すなわち、入力画像信号Daが入力され、階調変化量dfを求め、振幅制限階調変化量Xlmを得て、画素の領域判定結果を示す領域信号Arを生成する動作は、図15(実施の形態1)に示される動作と同じである。また、図35(a)〜(e)及び図36(a)〜(e)はそれぞれ、図18(a)〜(e)及び図19(a)〜(e)と同様である。
次に、平坦・ノイズ領域幅判定手段80と傾き検出手段41において、非ノイズ階調変化位置の間の平坦・ノイズ領域幅データ測定値deが求められ、階調値の傾きを検出する動作が、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)において行われる(ステップS200〜S205)。
非ノイズ階調変化位置(Ar=2)において(ステップS200)、平坦・ノイズ領域幅判定手段80は、この画素位置を開始点として(ステップS201)、次に非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる終点画素位置までの画素数をカウントしてカウント値CNを出力する(ステップS202)。そして、得られたカウント値CNに1を加えた値(CN+1)を平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとする(ステップS203)。この平坦・ノイズ領域幅データ測定値deは、開始点の非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置の直前画素までの間保持される。すなわち、階調平坦領域(Ar=0)の画素及びノイズ領域(Ar=1)の画素においては、直前の開始点における非ノイズ階調変化位置における値が保たれ、その間の階調値の傾きにおける幅(距離)となる(ステップS206)。
図35(f)において、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)となる画素位置x=8,16,24,32でカウント値CNが0にリセットされ、その次の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)までの画素数がカウントされて、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)となる画素の連続数が得られる。図35(g)においては、カウント値CNに1を加算した値から求めた平坦・ノイズ領域幅データ測定値deが、開始点となる非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置直前位置までの間保持されている。図36(f)及び(g)は、図35(f)及び(g)の場合と同様である。
傾き検出手段41は、終点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における振幅制限階調変化量Xlmを階調変化の高さを、終点振幅制限階調変化量Xeとして求め(ステップS204)、この終点振幅制限階調変化量Xeと平坦・ノイズ領域幅データ測定値deとから、開始点となる非ノイズ階調変化位置から終点となる非ノイズ階調変化位置までの階調値の傾きを、傾きデータ値Ks=Xe/deとして算出する(ステップS205)。階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)においては、直前の非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における値が保持される(ステップS206)。振幅制限階調変化量Xlm、すなわち、終点における振幅制限階調変化量Xeは、階調変化量dfを−1から+1までの範囲内に制限した値で入力されているので、検出される階調値の傾きデータ値Ksは−1から+1までの範囲内の値となる。
図35(h)によれば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)である画素位置x=8においては、平坦・ノイズ領域幅データ測定値de=8、終点振幅制限階調変化量Xe=+1で、傾きデータ値Ks=+1/8となり、同様に、画素位置x=16,24,32で傾きデータ値Ksが求められる。また、図36(h)によれば、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)である画素位置x=8においては、平坦・ノイズ領域幅データ測定値de=8、終点振幅制限階調変化量Xe=−1で、傾きデータ値Ks=−1/8となり、同様に、画素位置x=16,24,32で傾きデータ値Ksが求められる。図35(h)及び図36(h)のいずれにおいても、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)においては、画素位置x=8,16,24,32における値が保持されている。
図33に示される上記動作により、領域信号Arを基準にして階調値の傾きにおける平坦・ノイズ領域幅データ測定値deと傾きデータ値Ksを求め、ノイズ成分による誤検出なく、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の画素における階調値の傾きを得ることができる。
次に、図34において、領域信号Arに従い階調値の傾きデータ値Ksを得た後、補正ビット生成手段81は、水平方向走査期間の区切りにおいて補正値aCeを初期化するとともに、画素の領域を示す領域信号Arに応じて、補正値aCeを生成する処理を切り換える(ステップS210)。
非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては(ステップS210)、開始点における補正値0とするよう、補正値aCe=0とする(ステップS211)。
一方、階調平坦領域(Ard=0)又はノイズ領域(Ard=1)となる画素においては、傾きデータ値Ksを補正値の隣接する画素ごとの階調変化量dK2として(dK2=Ksとする)、直前画素における補正値(遅延補正値pCe)に対し階調変化量dK2を加算(pCe+dK2)し、階調平坦領域の画素における補正値sCeを得る(ステップS212)。そして、この補正値sCeを補正値aCeと決定する(ステップS213)。これにより、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)の画素における補正値sCeは、変化位置から順に階調変化量dK2の絶対値の大きさ(すなわち、傾きデータ値Ksの絶対値|Ks|)で変化した値となる。傾きデータ値Ksが−1から+1までの範囲内の値であるので、補正値sCeについても−1から+1までの範囲内のその絶対値が1以下となる小数として表現される。
上記により得られた補正値aCeは、所定のビット数となるビット列の値へ変換されて、付加する値を示す付加ビットEと値の符号ビットを含めて補正ビットデータCeとして求められる(ステップS214)。また、補正値aCeは、1画素分遅延されて、直前画素における補正値pCeとして次の画素の処理へと送られる(ステップS215)。
ステップS210〜S214により、入力画像信号Daに対し付加すべき補正値aCe(すなわち、補正ビットデータCe)は、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては補正値aCe=0となり、階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)においては、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)における値0から順に、傾きデータ値Ksによるレベル差で順次変化する値として得られる。
領域信号Arに基づき、求める補正値aCeを切り換えるので、階調平坦領域(Ar=0)とともに、ノイズ領域(Ar=1)となる画素についても、平坦な期間の画素として(階調平坦領域(Ar=0)と同様の処理扱われ)傾きデータ値Ksによるレベル差の変化を持つ補正値aCeが得られ、ノイズ成分による影響なく、順次変化する補正値aCeが得られる。
図35(i)によれば、画素位置x=16(Ar=2)においては補正値aCe=0であり、それ以降の階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)となる画素においては、画素の順に、1/8,2/8,…、というように、傾きデータ値Ksによるレベル差+1/8の変化を持った補正値aCe(すなわち、補正ビットデータCe)として得られる。また、図36(i)によれば、画素位置x=16(Ar=2)においては、補正値aCe=0であり、それ以降の階調平坦領域(Ar=0)及びノイズ領域(Ar=1)となる画素においては、順に−1/8,−2/8,…というように、傾きデータ値Ksによるレベル差−1/8の変化を持った補正値aCe(すなわち、補正ビットデータCe)として得られる。
画素値演算手段94は、補正ビットデータCeと入力画像信号Daの画素位置を合わせるよう遅延補償された画像信号Dd(又はDa)に対し、補正ビットデータCeを整数部の位置を合わせて加算することで、新たな出力画像信号Dbを算出する(ステップS216)。なお、演算後の値が負の値となる場合は、出力画像信号Dbをゼロ(Db=0)とし、出力画像信号Dbの設定したビット数(最大値)を超える値となる場合は、値を最大値として、出力画像信号Dbの値を制限する。
補正ビットデータCeは、画像信号Dd(又は入力画像信号Da)の階調値に対して、小数部を含むので、演算処理された後の出力画像信号Dbは、画像信号Ddに対し小数部を有した精度の画像信号となる。出力画像信号Dbは、小数部を含む補正ビットデータCeによる小数部のビット数を有するので、階調値の分解能が増加し、より滑らかな階調値の変化を表現できるようになる。補正ビットデータCeは、領域信号Arを基準として、ノイズ成分による影響なく、傾きデータ値Ksで変化する補正値aCeとして得られており、階調値に対して補正ビットデータCeによる値が加算又は減算処理されるので、ノイズ等の微少な階調値の変化による画像のディテールや鮮鋭度を残しながら、緩やかに階調値が変化する画素の領域の滑らかさを増すことができる。
図35(j)によれば、補正ビットデータCeを付加した後の出力画像信号Dbの階調値Lbは、画像信号Ddの階調値Laに補正ビットデータCeを加算することで、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)である画素位置x=16においては階調値Lb=24/8となり、それ以降の階調平坦領域とノイズ領域においては、画素位置の順に1/8で増加する変化を持つとともに、ノイズ成分がある画素位置x=19においては、ノイズ成分による振幅を残した状態で階調値が変換された値として得られる。図36(j)についても、図35(j)と同様である。図35(k)及び図36(k)においては、補正ビットデータCeにおける付加ビットEを4ビットとした場合の出力画像信号Dbを示しており、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から画素位置の順に、傾きデータ値Ksに相当する値の変化を持った階調値として得られ、結果として階調変化がより滑らかに変換された12ビットの出力画像信号Dbが得られている。
なお、上記説明においては、補正ビットデータCeにおける付加ビットEの小数部を4ビットとしたが、4ビット以外であってもよく、例えば、小数部のビット数を多くし、より多くのビット数で補正ビットデータCe(すなわち、補正値aCe)を表現することで、精度の高い、より滑らかな階調値の変化となる画像信号を得ることができる。
図37は、実施の形態4による画像処理装置の動作の他の例(図34に代わる例)を示すフローチャートであり、図29に示される階調変換手段4による補正ビットデータの生成及び階調変換処理の動作を示す。補正ビットデータを生成する際には、領域信号Arを基準として、開始点となる非ノイズ階調変化位置(Ar=2)から順に画素をカウントしたカウント値Nと傾きデータ値Ksから、補正値aCe=N×Ksとして求めることもできる。この場合、図34のステップS211〜S213、及びステップS215に代えて、図37のステップS220〜S222を行うと、図34の場合と同様に、補正ビットデータCeを生成でき、補正ビットデータCeを付加した新たな出力画像信号Dbを得ることができる。すなわち、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)においては(ステップS210)、画素のカウント値N=0とし(ステップS220)、階調平坦領域(Ard=0)又はノイズ領域となる画素(Ard=1)においては画素をカウントして、N+1とする(ステップS221)。補正値aCeは、カウント値Nと傾きデータ値Ksを乗算し、補正値aCe=N×Ksとする(ステップS222)。これにより、図34における場合と同様、開始点の補正値aCe=0から順に、傾きデータ値Ksによるレベル差の変化を持つ補正値aCeを得ることができる。
《4−3》効果.
以上に説明したように、実施の形態4の画像処理装置又は画像処理方法においては、階調変化量dfから得られた領域信号Arを基準として、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)の間の平坦・ノイズ領域幅データ測定値deを求め、振幅制限階調変化量Xlmと平坦・ノイズ領域幅データ測定値deから、階調値の傾きデータ値Ksを得ている。そして、補正ビット生成手段81において傾きデータ値Ksから補正ビットデータCeを生成し、画素値演算手段94において入力画像信号Daに整数部の位置を合わせて補正ビットデータの値を加算して、ビット数を拡張した画像信号を得ている。したがって、実施の形態4の画像処理装置又は画像処理方法によれば、非ノイズ階調変化位置とその次に現れる非ノイズ階調変化位置との間の幅を示す平坦・ノイズ領域幅を正確に検出でき、ノイズ成分による階調変化と区別できるので、傾きデータ値を、ノイズ成分による影響を受けることなく算出できる。また、実施の形態4の画像処理装置又は画像処理方法によれば、回路規模を大幅に増やすことなく、傾きデータ値Ksによる階調値で順次変化する補正値が得られ、緩やかに階調値が変化する画素領域や非ノイズ階調変化位置における適切な補正ビットデータCeを得て、画像信号の階調変化をより滑らかに変換し、ビット数を拡張できる。また、得られた補正ビットデータCeを入力画像信号Daの階調値に対し付加して階調数を拡張するため、実時間で処理でき、ノイズ成分による微少な変化を残したまま、階調変化がより滑らかに変換できる。
このように、実施の形態4の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、実時間で回路規模を大幅に増やすことなく、緩やかに階調値が変化する画像領域に対し、ノイズ成分による誤検出なく、階調変化をより適切に検出したことによる補正ビットデータCeを得ることができる。このため、補正ビットデータにより画像信号の階調数を拡張し、階調変換された出力画像信号Dbにおいて、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることはなく、量子化ノイズ又は擬似輪郭が低減され、階調変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号が得られる。
《4−4》変形例.
上記説明においては、実施の形態1における画素領域判定手段20(図5)と同様の画素領域判定手段により領域信号Arを得る場合を説明したが、画素領域判定手段として、実施の形態2における画素領域判定手段20b(図22)や、実施の形態3における画素領域判定手段70及び70b(図25及び図28)を用いてもよく、この場合にも、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、画素領域判定手段20における領域判定結果として3種の領域信号Ar=0,1,2を生成するよう説明したが、図29における平坦・ノイズ領域幅判定手段80、傾き検出手段41、及び補正ビット生成手段81(又は81b)においても、非ノイズ階調変化位置(Ar=2)と、階調平坦領域及びノイズ領域(Ar=0,1)の2通りで処理を切り換えている。このため、領域判定結果を非ノイズ階調変化位置か、階調平坦領域又はノイズ領域かの2値で示す領域信号Ar1として構成してもよく、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、階調変化量検出手段10で水平方向の隣接画素間の階調値の差分による階調変化量dfを所定の範囲−1と+1に制限する場合を説明したが、本発明はこのような形態に限定されず、例えば、画素間の階調値の差分の最大値+2から最小値−2までの範囲の変化を求める場合など、予め決められた最大値(正の値)と最小値(負の値)に基づき、階調変化量dfの値を制限して、画像信号の1階調より大きな値の階調差以内で階調値が変化する場合に、階調数を拡張するよう構成することもできる。階調変化量dfの値を制限する範囲は、階調変換で滑らかな変化とする画像領域か、そのまま保持するか、又は、階調ジャンプとなる階調変化として補正するかを決めるための値であり、入力画像信号の特性や、階調ジャンプが起こるレベル等から適切な値を設定すればよい。この場合の構成及び動作は、階調値の変化を求める画素間の階調値の差分の範囲以外の点については、図29による構成及び動作と同じである。ここで、画素間の階調値の差分の最大値+2から最小値−2までの範囲の変化を求める場合は、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12における制限の範囲、すなわち、振幅制限階調変化量Xlmの値が+2から−2までの範囲内の値となり、階調値の傾きも−2から+2までの範囲内の値となる。画素間の階調値の差分の最大値+2から最小値−2までの範囲の変化を求める場合など、最大値(正の値)と最小値(負の値)により設定された範囲で、階調変化を検出するよう構成する場合においても、階調変換手段4を適用することができ、同様に構成し、同様の効果を奏することができる。
また、入力画像信号Daの階調数mは8ビットに限るものではなく、例えば、10ビットの画像信号であってもよく、画素値演算手段94において、補正ビットデータCdにおける付加ビットEの整数部の位置を、画像信号Ddの整数部の位置と一致するようにした値を演算するように構成すれば、同様の効果を奏することができる。
また、上記説明においては、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12において、階調変化量dfの値を−1から+1までの範囲内となるように値を制限するよう説明したが、階調変化量dfの絶対値が所定の値より大きな場合には(例えば、|df|>1)、階調変化量dfが画像のエッジ(輪郭等)による階調値の変化であると考えられ、このように階調変化がエッジによると判断される変化の場合には、補正値aCe=0として階調値が付加されることはなく、画像の輪郭情を保つよう構成することもできる。すなわち、階調変化量検出手段10内の階調変化量制限手段12において、階調変化量dfの値を−1から+1までの範囲内となるように値が制限された振幅制限階調変化量Xlmを求める際に、階調変化量dfの値が−1から+1までの範囲から外れた場合は、その値を0とするように(すなわち、振幅制限階調変化量Xlm=0とする)構成しても、その輪郭の非ノイズ階調変化位置を終点画素とする領域においては傾きデータ値Ks=0となり、補正値aCeも0となるので、結果、階調値が付加されず、階調変換されないので、画像の鮮鋭度(輪郭情報)を保ちながら、輪郭となる変化以外の緩やかに階調値が変化する画像領域における階調値の変化をより滑らかにすることができる。
また、上記説明においては、階調変換手段4は入力画像信号Daの水平方向における階調値の変化において、水平方向の階調変化量を検出して処理する構成として説明したが、入力画像信号Daの垂直方向(画面表示走査線方向)の階調変化量を検出し、補正ビットデータCeを生成して画像信号に付加し、垂直方向の階調変化を滑らかなものとしてもよく、同様の効果を奏することができる。この場合は、階調変化量検出手段10において、垂直方向上下に位置する上の走査線上の画素との間の差分により階調変化量dfを求め、画素領域判定手段20で画素の領域を判定し、平坦・ノイズ領域幅判定手段80と、傾き検出手段41と補正ビット生成手段81内における処理をライン(1水平走査期間分)方向の処理として、垂直方向上下に位置する画素における階調値の変化を検出するように構成すればよい。
さらに、上記説明においては、画像処理装置における階調変換手段4の各構成がハードウェア構成であるように説明しているが、本発明を、プログラム制御におけるソフトウェアの処理により実現するよう構成してもよい。
なお、実施の形態4において、上記以外の点は、上記実施の形態1〜3のいずれかの場合と同じである。
《5》実施の形態5.
上記実施の形態1〜4の画像処理装置は、画像信号の水平方向又は垂直方向のいずれか一方の方向(一定方向)における階調値の変化を検出して階調値の傾き(例えば、傾きデータ値Ksl)を求め、求められた傾きを用いて入力画像信号Daのビット数を拡張する階調変換処理を行うことによって、入力画像信号Daよりも多階調の出力画像信号Dbを生成するように構成されている。これに対し、本発明の実施の形態5による画像処理装置は、水平方向及び垂直方向のそれぞれにおける階調値の変化を検出して、水平方向及び垂直方向のそれぞれにおける階調値の傾きを求め、求められた傾きを用いて入力画像信号Daのビット数を拡張する階調変換処理を行うことによって、入力画像信号Daよりも多階調の出力画像信号Dcを生成して、2次元方向に、階調値の変化を滑らかにするよう構成されている。
図38は、本発明の実施の形態5による画像処理装置(すなわち、実施の形態5による画像処理方法を実施することができる装置)の構成の一例を概略的に示すブロック図である。実施の形態5による画像処理装置は、画像信号の水平方向と垂直方向のそれぞれで階調変化量を検出し、検出された階調変化量から、水平方向と垂直方向のそれぞれの方向の画素領域の各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、この画素領域の判定結果に基づき階調値の傾きを求め、求められた階調値の傾きを用いて入力画像信号Daのビット数を拡張し、二次元方向に、階調値の変化を滑らかにする階調変換処理を行うよう構成されている。
図38に示されるように、実施の形態5の画像処理装置は、mビットのデジタルの入力画像信号Daに対し、水平方向と垂直方向のそれぞれの階調変化量から、水平方向と垂直方向のそれぞれについて、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、この画素領域の判定結果に基づき階調値の変化を検出し、階調値の傾きに応じた値を付加することでビット数を拡張する階調変換処理を行い、nビットの出力画像信号Dcとして出力し、二次元方向の階調値の変化を滑らかにする階調変換処理を行う階調変換手段5を備えている。そして、階調変換手段5は、水平方向における階調値の変化を検出し、階調値の傾きに応じた補正値を付加することでビット数を拡張する水平方向階調変換手段110と、垂直方向における階調値の変化を検出し、階調値の傾きに応じた補正値により階調変換処理を行う垂直方向階調変換手段111とを備えている。
以下の説明においては、階調変換手段5が、入力画像信号Daの水平方向及び垂直方向に対し、それぞれの方向に隣接する画素間の階調値の差分から、1階調値の差(+1と−1)の階調変化量を検出して階調値の傾きを求め、求められた傾きを用いて階調数を拡張する階調変換処理を行い、8ビットの入力画像信号Daを12ビットの出力画像信号Dcへ階調数を拡張し出力する場合を説明する。
階調変換手段5は、8ビットの入力画像信号Daに対して、水平方向と垂直方向のそれぞれで階調値の変化を検出し、階調値の傾きを求めることで、例えば、4ビット分の補正値の値となる補正ビットデータを得て、画像信号の階調値に対し演算処理して、ビットを付加することでビット数を拡張して階調変換を行い、12ビットの出力画像信号Dcとして出力する。
階調変換手段5をさらに詳細に説明する。まず、階調変換手段5に入力された入力画像信号Daは、階調変換手段5における水平方向階調処理手段110に入力される。水平方向階調処理手段110は、上記実施の形態1〜4の階調変換手段1〜4と同様に構成されており、入力画像信号Daの水平方向の画素間の階調値の差分から階調変化量を求めるとともに、得られた階調変化量の値により、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行う。そして、この画素領域の判定結果に基づき、平坦・ノイズ領域幅を求め、この平坦・ノイズ領域幅と階調変化量から階調値の傾きを求め、求められた階調値の傾きに応じた補正ビットデータを、入力画像信号に付加することでビット数を拡張し、ビット数が拡張された12ビットの出力画像信号Dbを生成する。階調変換手段5は、各画素の水平方向における階調変化に対する画素領域を判定し、その判定結果に基づき階調値の平坦・ノイズ領域幅、傾きを求めることで、ノイズ成分による誤検出なく階調値の変化が検出でき、水平方向における階調値を十分な階調数へ拡張し、階調変化を滑らかにできる。このように、水平方向階調処理手段110は、実施の形態1〜4の階調変換手段1〜4のいずれかと同じである。
階調変換手段5における垂直方向階調処理手段111には、水平方向階調処理手段110から出力された12ビットの画像信号Dbが入力される。垂直方向階調処理手段111は、水平方向階調処理手段110から出力された12ビットの画像信号Dbに対し、入力画像信号Daの小数部に相当する下位4ビット分を除いた上位8ビットの信号から、垂直方向の画素間の階調値の差分による階調変化量を求め、得られた階調変化量の値により、各画素を、階調平坦領域に属する画素、ノイズ領域に属する画素、非ノイズ階調変化位置の画素のいずれかに分類する判定を行い、この画素領域の判定結果に基づき、階調変化における平坦・ノイズ領域幅と、この平坦・ノイズ領域幅と階調変化量から階調値の傾きを得て、傾きに応じた補正値を求める。そして、水平方向階調処理手段110と同様分の補正ビットデータを画像信号Dbに付加することで階調変換を行い、12ビットの画像信号Dcとして出力する。これにより、水平方向のみでなく垂直方向に緩やかに階調値が変化する画像領域においても、階調値の変化を検出して、階調変化が滑らかで、高品位な12ビットの画像信号Dcとして出力される。
垂直方向階調処理手段111の構成は、実施の形態1〜4の階調変換手段1〜4のいずれかの構成において、階調変化量検出手段10において、垂直方向(画面の上下方向)に位置する画素間の階調値の差分(注目画素の階調値と、1走査線だけ垂直上方向の走査線上の隣接画素の階調値との差分)により階調変化量dfを求め、画素領域判定手段20(又は20b、70、70b)で垂直方向における画素領域を判定し、平坦・ノイズ領域幅判定手段30(又は80)、傾き検出手段40(又は41)、及び補正ビット生成手段50(又は81)内における処理をライン(1水平走査期間分)方向の処理として、垂直方向上下に位置する画素における階調値の変化を検出するように構成すればよい。
また、垂直方向における階調値の変化を検出し、垂直方向における画素の領域を判定して階調値の傾きを求める際には、入力画像信号Daの1階調の変化を検出するために、入力された水平方向階調処理手段110からの12ビットの画像信号Dbのうち、小数部に相当する下位4ビット分を除いた上位8ビットで示される値を用いればよい。
このため、垂直方向階調処理手段111の説明についても、実施の形態1〜4のいずれかと同様に、画素の領域を判定し、階調変化における平坦・ノイズ領域幅を求め階調値の傾きを求め、この傾きを用いて補正ビットデータを求める処理を行うように構成すればよい。
以上から、図38に示される階調変換手段5は、水平方向階調処理手段110においては、水平方向の階調変化の階調変化量dfにより、各画素の画素領域を判定し、この判定結果に基づき、水平方向の階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て階調を変換するとともに、垂直方向階調処理手段111においても、同様に、垂直方向の階調変化の階調変化量により、画素領域を判定し、この判定結果に基づき、垂直方向の向の階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て階調値を変換する。このため、ノイズ成分が含まれる場合においても、二次元方向のそれぞれで階調変化の平坦・ノイズ領域幅を求め、傾き求め、ノイズ成分による誤検出なく得ることができ、緩やかに階調値が変化する画素の領域や階調値の変化がエッジによると判断される場合における適切な補正ビットデータを得て、水平方向のみならず垂直方向における階調変化がより滑らかに変換された12ビットの画像信号Dcが得られる。また、得られた補正ビットデータを入力画像信号Daの階調値に対し加算又は減算処理して階調数を拡張するため、実時間で処理でき、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることなく、階調変化がより滑らかに変換された12ビットの画像信号Dcが得られる。
なお、図38の階調変換手段5の説明では、入力画像信号Daの階調変化を検出する際の階調変化量は、最下位1ビット分の差、すなわち、画素間の階調値の差分+1と−1の変化としたが、本発明はこのような形態に限定されず、階調変換手段5内の水平方向階調処理手段110及び垂直方向階調処理手段111のそれぞれにおいて、予め決められた最大値(正の値)と最小値(負の値)に基づき、階調変化量dfの値を制限して、画像信号の1階調より大きな値の階調差以内で階調値が変化する場合に、階調数を拡張するよう構成してもよい。
また、画像信号においては水平方向の解像度が高いことが多い。このため、図38の階調変換手段3においても、水平方向の処理を水平方向階調処理手段110により先に行った後、垂直方向の処理を行う構成であるので、階調変化を検出する際の階調変化量の値(制限する範囲)を、水平方向に対する場合と垂直方向に対する場合で異なる値として、例えば、水平方向に対しては2階調の差(画素間の階調値の差分+2と−2の変化)として、垂直方向に対しては1階調分の差、すなわち、画素間の階調値の差分+1と−1の変化とし、水平方向で検出する階調差の重み付けを垂直方向に対し大きくし、階調数を拡張してもよい。
以上に説明したように、実施の形態5の画像処理装置においては、水平方向階調処理手段110においては、水平方向の階調変化の階調変化量dfにより、各画素の画素領域を判定し、この判定結果に基づき、水平方向の階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て階調値を変換するとともに、垂直方向階調処理手段111においても、同様に、垂直方向の階調変化の階調変化量により、各画素の画素領域を判定し、この判定結果に基づき、垂直方向の階調変化における平坦・ノイズ領域幅と傾きを得て階調値を変換する。このため、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、二次元方向のそれぞれで階調変化の平坦・ノイズ領域幅と、傾きをノイズ成分による誤検出なく得ることができ、回路規模を大幅に増やすことなく、得られた傾きによる階調値で順次変化する補正値が得られ、二次元方向に、緩やかに階調値が変化する画素領域や階調値の変化がエッジによると判断される場合における適切な補正ビットデータを得て、水平方向のみならず垂直方向における階調変化がより滑らかになるよう画像信号の階調数を拡張できる。また、各方向で得られた補正ビットデータを入力画像信号Daの階調値に対し付加して階調数を拡張するため、階調変換処理を実時間で処理することが可能であり、ノイズ等による微少な変化を残したまま、非常に緩やかな階調変化を、より滑らかに表示できる出力画像信号Dcに変換できる。
したがって、実施の形態5の画像処理装置又は画像処理方法によれば、入力画像信号Daにノイズ成分が含まれる場合においても、実時間で回路規模を大幅に増やすことなく、緩やかに階調値が変化する画像領域に対し、ノイズ成分による誤検出なく、階調変化をより適切に検出したことによる補正ビットデータCdが得られる。このため、補正ビットデータにより画像信号の階調数を拡張し、階調変換された出力画像信号Dbにおいて、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることはなく、二次元方向の量子化ノイズ又は擬似輪郭が低減され、階調変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号が得られる。
なお、上記実施の形態5における画像処理装置においても、入力画像信号Daの階調数mは8ビットに限るものではなく、例えば、10ビットの画像信号であってもよく、水平方向階調処理手段110、垂直方向階調処理手段111において、補正ビットデータにおける付加ビットEの整数部の位置を、入力画像信号Daの整数部の位置と一致するようにした値を演算するように構成すれば、同様の効果を奏することができる。
さらに、上記実施の形態5の説明においても、階調変換手段3の構成がハードウェア構成であるように説明しているが、本発明を、プログラム制御におけるソフトウェアの処理により実現するよう構成してもよい。
なお、実施の形態5において、上記以外の点は、上記実施の形態1〜4のいずれかの場合と同じである。
《6》実施の形態6.
上記実施の形態1〜5においては、本発明が適用された画像処理装置及び画像処理方法を説明したが、本発明は画像表示装置にも適用できる。図39は、本発明の実施の形態6による画像表示装置6の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図39に示されるように、実施の形態6の画像表示装置6は、画像信号の入力端子501と、受信処理手段502と、階調変換手段500と、表示手段504とを備えている。階調変換手段500は、例えば、上記実施の形態1〜5の画像処理装置における階調変換手段1〜5によって構成される。階調変換手段500は、入力画像信号のビット数を拡張し、階調変換処理された多階調の画像信号を表示手段504に出力するように構成される。
入力端子501には、TV放送信号、再生装置によるDVDやVTRなどの再生信号、TV放送受信装置からの信号などが入力される。入力端子501に入力された信号は、受信処理手段502へ送られる。
受信処理手段502は、入力端子501を通して入力された信号を、後段の階調変換手段500で処理可能な形式に変換する処理を行う。受信処理手段502は、例えば、アナログ信号が入力される場合は、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理、及び、同期信号を分離する処理などの入力信号処理を行う。また、受信処理手段502は、例えば、MPEGデータを受信した場合には、MPEGデータをデコードするなどの処理を行う。受信処理手段502は、処理された画像信号を階調変換手段500へ出力する。
階調変換手段500は、上記実施の形態1〜5の画像処理装置における階調変換手段1〜5のいずれかと同様の階調変換処理を行い、入力画像信号よりも多階調の画像信号を表示手段504へ出力する。
表示手段504は、階調変換手段500からビット数が拡張された画像信号Dcを受信し、受信した画像信号に基づき、表示可能なビット数で画像を表示する。
以上に説明したように、実施の形態6の画像表示装置6によれば、階調変換手段500に上記実施の形態1〜5のいずれかの画像処理装置又は画像処理方法を適用しているので、入力された画像信号のビット数が表示手段504で表示可能なビット数よりも少ない場合や、表示手段504が備える表示デバイス(例えば、液晶デバイス、プラズマディスプレイなど)が高輝度のデバイスである場合にも、回路規模を大幅に増やすことなく、実時間での処理により、非常に緩やかに階調値が変化する区間においても、ノイズ成分による誤検出なく、階調値の変化をより適切に検出して、画像信号の階調を十分な階調数へ拡張することができる。このため、実施の形態6の画像表示装置6によれば、輝度の高い表示デバイスで画像を表示した際にも、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることなく、量子化ノイズや擬似輪郭が低減され、階調値の変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号を表示することができる。
《7》実施の形態7.
上記実施の形態6による画像表示装置6は、1台の階調変換手段500を備えているが、実施の形態7による画像表示装置7は、複数台の階調変換手段500,510を備えている。図40は、本発明の実施の形態7による画像表示装置7の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図40において、図39の構成と同一又は対応する構成には、同じ符号を付す。図40において、実施の形態7の画像表示装置7は、信号処理手段としての階調補正手段503と階調変換手段510とをさらに備えた点が、上記実施の形態6の画像表示装置6と相違する。階調補正手段503は、画像信号のダイナミックレンジの拡大やコントラストの改善などの階調補正を実施する手段である。階調変換手段510は、上記実施の形態1〜5の階調変換手段1〜5と同様の階調変換処理を行い、入力する画像信号よりも多階調の画像信号を表示手段504へ出力する。階調変換手段510は、階調補正手段503によって画像信号のダイナミックレンジの拡大やコントラストの改善などの階調補正を実施したときに、この階調補正にともなって増加した画像信号の量子化ノイズ(階調ジャンプ)を低減させるために、階調補正後の画像信号に対して、階調変換処理を施す構成である。
入力端子501より入力された画像信号は、受信処理手段502で受信され、所定の形式の画像信号が階調変換手段500に出力される。階調変換手段500は、入力画像信号に対してビット数を拡張する階調変換処理を施して、量子化ノイズを低減する。ここまでの実施の形態7の構成及び動作は、上記実施の形態6におけるものと同じである。
階調補正手段503には、入力画像信号よりも多階調の画像信号となった階調変換手段500からの画像信号が入力される。階調補正手段503は、入力された画像信号のダイナミックレンジの拡大やコントラストの改善などの階調補正を行う。階調補正においては、入力画像信号のある区間の階調を所定の倍率で変換するような処理が施される。これにより、表示される画像のダイナミックレンジが拡張され、明暗のはっきりしたコントラストの高い画像が表示されるが、階調補正手段503が実施した階調特性の変換により、階調ジャンプが起こりやすくなり、それによる量子化ノイズが増大する。すなわち、例えば、階調値が4倍となるような補正がされると、その出力画像の階調は、4階調おきの値しか存在しなくなり、画像が徐々に明るくなるような領域でも、その階調値の変化が4階調ごとになり、この階調ジャンプが量子化ノイズとして目立つようになる。
階調補正手段503から出力された画像信号は、階調変換手段510に入力される。階調変換手段510は、階調変換手段500と同様の処理により、入力画像信号に対し、ビット数を拡張する階調変換処理を行い、画像信号における階調値の変化が滑らかになるよう処理して、得られた画像信号を表示手段504へ出力する。
ここで、階調補正手段503において、例えば、4階調の階調ジャンプが発生するような処理が施される場合は、階調変換手段510を上記実施の形態1〜5で述べたように、4階調分の差、すなわち、+4から−4までの範囲の階調値の変化まで検出できるように設定すればよい。このように階調変換手段510における検出する階調値の変化の値は、階調補正手段503の特性に応じて決定すればよい。この場合の階調変換手段510における構成及び動作は、上記実施の形態1〜5の階調変換手段1〜5のいずれかと同様である。
表示手段504は、階調変換手段510からの階調値の変化が滑らかになるよう処理してビット数が拡張された画像信号を受信し、受信された画像信号に基づき、表示可能なビット数で画像を表示する。
以上に説明したように、実施の形態7の画像表示装置7によれば、階調変換手段500で量子化ノイズを低減した後に階調補正手段503でダイナミックレンジの拡張やコントラスト補正処理を施した場合であっても、階調変換手段510で検出する階調値の変化の値(最大値、最小値)を階調補正手段503の特性に合わせて設定することで、階調ジャンプが発生する階調値を検索することなく階調ジャンプ低減のための階調変換処理が可能になる。このため、実施の形態7の画像表示装置7によれば、表示手段504が備える表示デバイス(例えば、液晶デバイス、プラズマディスプレイなど)が高輝度のデバイスである場合にも、回路規模を大幅に増やすことなく、実時間での処理により、非常に緩やかに階調値が変化する区間においても、ノイズ成分による誤検出なく、階調値の変化をより適切に検出して、画像信号の階調を十分な階調数へ拡張することができ、輝度の高い表示デバイスで画像を表示した際にも、画像のディテールが失われたり、鮮鋭度が損なわれたりすることなく、量子化ノイズや擬似輪郭が低減され、階調値の変化が滑らかで、高品位な階調数を拡張した画像信号を表示することができる。
なお、図40には、階調変換手段500の後段に階調補正を行う階調補正手段503を配置した場合を示したが、階調補正手段503に代えて、階調補正以外の信号処理手段(図示せず)であって、階調ジャンプによる量子化ノイズを増大させてしまう手段を備えた場合にも、階調変換手段510によって量子化ノイズを低減することができる。この場合には、階調変換手段510において検出する階調値の変化の値(最大値、最小値)は、信号処理手段の量子化ノイズの特性に応じて決定すれば、画像処理で増大した量子化ノイズを低減するよう構成することができる。