JP2010196017A - 繊維強化複合材料用樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料、繊維強化樹脂成形品、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温での流動性に優れると共に、硬化物の耐熱性に優れる繊維強化複合材料用樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料、耐熱性に優れる繊維強化樹脂成形品、及び生産性良好な繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物を強化繊維に含浸、硬化させる。
【選択図】なし
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物を強化繊維に含浸、硬化させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、優れた流動性を発現し、その硬化物において耐熱性及び機械的強度に優れるために、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材などに適する繊維強化複合材料、その製造方法、及び該繊維強化複合材料のマトリックス樹脂材料に関する。
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、耐湿性、寸法安定性等の諸物性に優れる点から半導体封止材やプリント回路基板、ビルドアップ基板、レジストインキ等の電子部品、導電ペースト等の導電性接着剤やその他接着剤、アンダーフィルなどの液状封止材、液晶シール材、フレキシブル基板用カバーレイ、ビルドアップ用接着フィルム、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料、繊維強化複合材料等で広く用いられている。
これらの中で特に、エポキシ樹脂及び硬化剤をマトリックス成分として強化繊維に含浸、硬化させてなる繊維強化複合材料は、軽量・高強度といった特性に加え、その優れた高耐熱性、低硬化収縮率、耐薬品性、高弾性率等の諸性能を兼備する点から自動車産業、航空宇宙産業など一般産業分野において要求が高い。
しかしながら、一般にエポキシ樹脂は常温で高粘度流動体乃至は固形であるため、強化繊維に樹脂含浸する工程ではエポキシ樹脂の実用レベルの流動性を確保する為に樹脂成分を100℃以上に加熱する必要があるところ、加熱によりエポキシ樹脂の硬化が促進され、却って高粘度化および含浸不良を招くといった問題が生じていた。とりわけ、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)の分野で、近年、圧倒的なサイクルタイムと低設備コストから普及が進んでいるレジン・トランスファー・モールディング(RTM)法においては、熱硬化性樹脂材料の低粘度・高流動性は不可欠な特性であった。
そこで、従来よりCFRP用途におけるRTM法に適するエポキシ樹脂材料として、例えばエポキシ当量200g/eq.以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂を主剤として用い、かつ、硬化剤成分として室温で液状の芳香族ポリアミン、及び、ルイス酸と塩基の錯体を使用することにより、熱硬化性樹脂成分の流動性を改善すると共に、更に低温硬化性を改善し、RTM法におけるCFRPの生産性を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、前記したエポキシ当量200g/eq.以下のビスフェノールF 型エポキシ樹脂、室温で液状の芳香族ポリアミン、及びルイス酸と塩基の錯体を配合した熱硬化性樹脂材料は、エポキシ樹脂自体の低粘度化を図ってはいるものの、組成物全体として未だ粘度が高くRTM成形における樹脂注入時に加熱が避けられず、硬化反応による増粘の虞が残る他、エネルギー的にランニングコスト高となるものであり、加えて、硬化物における耐熱性が十分でなく自動車産業や航空宇宙産業への適用が困難なものであった。
また、エポキシ樹脂にマレイン酸モノアリルオキシエステルを配合した組成物を硬化させて、耐熱性に優れた硬化物を得る技術も知られている(下記特許文献2参照)。しかしながら、斯かる組成物は組成物自体の粘度が高く、繊維強化樹脂成形品用途に適用してもやはり生産性に劣るものであった。
また、エポキシ樹脂にマレイン酸モノアリルオキシエステルを配合した組成物を硬化させて、耐熱性に優れた硬化物を得る技術も知られている(下記特許文献2参照)。しかしながら、斯かる組成物は組成物自体の粘度が高く、繊維強化樹脂成形品用途に適用してもやはり生産性に劣るものであった。
従って、本発明が解決しようとする課題は、流動性に優れると共に、硬化物の耐熱性に優れる繊維強化複合材料用樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料、耐熱性に優れる繊維強化樹脂成形品、及び生産性良好な繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、繊維強化剤に含浸硬化させる熱硬化性樹脂成分として、エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下である組成物を用い、エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂用硬化剤(D)との硬化反応を行うと共に、エポキシ樹脂(A)と酸基含有ラジカル重合性単量体(B)との反応、更に、該単量体(B)に起因するラジカル重合性基の重合を連続的乃至同時に行う、所謂イン・サイチュー反応による硬化を行うこと、即ち、前記単量体(B)中の酸基を前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と反応させると共に、該単量体(B)に起因するラジカル重合性基を重合させることにより、エポキシ硬化システムにおける組成物の流動性を改善できると共に、硬化後の耐熱性を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びアミン系エポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、前記繊維強化複合材料用樹脂組成物をイン・サイチュー反応させることにより得られる硬化物に関する。
本発明は、更に、型内に配置した強化繊維からなる基材に、前記繊維強化複合材料用樹脂組成物を注入し、含浸させた後、イン・サイチュー硬化させることを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法に関する。
本発明によれば、低温での流動性に優れると共に、硬化物の耐熱性に優れる繊維強化複合材料用樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料、耐熱性に優れる繊維強化樹脂成形品、及び生産性良好な繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、その熱硬化性樹脂成分として、エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下となるように調整されているものである。そして、繊維強化材へ該組成物を含浸させた後、これを連続的乃至同時に反応させること、即ち、(A)成分と(D)成分との硬化反応と、(A)成分と(B)成分との反応、更に、(B)成分に起因するラジカル重合を、連続的乃至同時に行うことを特徴としている。このようにイン・サイチュー反応により硬化させることで、硬化前においてはエポキシ樹脂と硬化剤とを必須成分とするエポキシ樹脂組成物の流動性を改善できると共に、硬化物における耐熱性が飛躍的に向上させることができる。この点につき更に敷衍すれば、本発明におけるイン・サイチュー重合反応で得られる硬化物は、該エポキシ樹脂(A)に予め酸基含有ラジカル重合性単量体(B)を反応させておき、ビニルエステル化した樹脂をエポキシ樹脂/硬化剤の組成物に加えた場合に比べ、硬化物の耐熱性を一層高めることができるのであり、その結果、硬化前においては優れた流動性を発現すると共に、硬化後においては従来にない耐熱性を発現するものとなる。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、その熱硬化性樹脂成分として、エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下となるように調整されているものである。そして、繊維強化材へ該組成物を含浸させた後、これを連続的乃至同時に反応させること、即ち、(A)成分と(D)成分との硬化反応と、(A)成分と(B)成分との反応、更に、(B)成分に起因するラジカル重合を、連続的乃至同時に行うことを特徴としている。このようにイン・サイチュー反応により硬化させることで、硬化前においてはエポキシ樹脂と硬化剤とを必須成分とするエポキシ樹脂組成物の流動性を改善できると共に、硬化物における耐熱性が飛躍的に向上させることができる。この点につき更に敷衍すれば、本発明におけるイン・サイチュー重合反応で得られる硬化物は、該エポキシ樹脂(A)に予め酸基含有ラジカル重合性単量体(B)を反応させておき、ビニルエステル化した樹脂をエポキシ樹脂/硬化剤の組成物に加えた場合に比べ、硬化物の耐熱性を一層高めることができるのであり、その結果、硬化前においては優れた流動性を発現すると共に、硬化後においては従来にない耐熱性を発現するものとなる。
ここで用いるエポキシ樹脂(A)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、等のビスフェノール型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂、アルコキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;その他、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(通称ザイロック樹脂のエポキシ化物)、レゾルシンのジグリシジルエーテル、ハイドロキノンのジグリシジルエーテル、カテコールのジグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、硫黄含有エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂、トリグリシジルシソシアヌレート、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、
ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール樹脂のエポキシ化物)、アルコキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、アルコキシ基含有フェノールアラルキル樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、前記エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール樹脂のエポキシ化物)、アルコキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、アルコキシ基含有フェノールアラルキル樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、前記エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも、特にエポキシ樹脂自体が低粘度であって、強化繊維への含浸性に優れる点、及び硬化物の耐熱性、強度の物性バランスが良好である点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又はノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、特に常温での流動性に優れ、強化繊維への含浸性が良好となる点からエポキシ当量500g/eq.以下のものが好ましく、とりわけ硬化物の剛性、耐湿熱性などのバランスに優れる点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。また、該ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、組成物の流動性の点から100〜300g/eq.の範囲であることが特に好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、特に常温での流動性に優れ、強化繊維への含浸性が良好となる点からエポキシ当量500g/eq.以下のものが好ましく、とりわけ硬化物の剛性、耐湿熱性などのバランスに優れる点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。また、該ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、組成物の流動性の点から100〜300g/eq.の範囲であることが特に好ましい。
一方、前記ノボラック型エポキシ樹脂は、特に、150℃における溶融粘度が0.1〜40dPa・sの範囲にあるものが、組成物の流動性が良好なものとなる点から好ましい。ここで、本発明における150℃における溶融粘度は、「ASTM D4287」に準拠して測定されるICI粘度(150℃)の値である。また、前記ノボラック型エポキシ樹脂のなかでも特に流動性の観点からオルソクレゾールノボラック樹脂又はフェノールノボラック樹脂にエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂が好ましい。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、前記した通り、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又はノボラック型エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。本発明では、これらビスフェノール型エポキシ樹脂、又はノボラック型エポキシ樹脂にこれら以外のエポキシ樹脂を目的に応じて併用してもよいが、その場合、ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂の100質量部あたり、それら以外のエポキシ樹脂を5〜80質量部となる割合であることがビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂の前記性能が十分発揮させることができる点から好ましい。
また、前記したビスフェノール型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂のなかでも、本発明ではとりわけ、ビスフェノール型エポキシ樹脂、特にエポキシ当量500g/eq.以下のビスフェノール型エポキシ樹脂が、組成物として優れた流動性を示し、かつ、極めて高い耐熱性・機械的強度を発現する点から特に好ましい。
次に、本発明で用いる酸基含有ラジカル重合性単量体(B)は、エポキシ樹脂(A)と反応すると同時に、ラジカル重合によりアクリロイル基の重合を生じさせるものである。本発明ではこのようなイン・サイチュー重合反応により硬化させることで硬化物の耐熱性を飛躍的に向上させることができる。
かかる酸基含有ラジカル重合性単量体(B)は、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、及びこれらの酸無水物;
ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートと、無水コハク酸、無水マレイン酸等の多価カルボン酸無水物との反応生成物;
或いは、下記構造式(1)
(式中、R1は炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基、Xはエステル結合又はカーボネート結合、R2は炭素原子数2〜10の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を示す。)で表される化合物が挙げられる。
ここで、前記構造式1中、Xとしてエステル結合を有するものとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと炭素原子数2〜10の脂肪族多価カルボン酸とを反応させて得られる化合物;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物とを反応させて得られる化合物;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールと、炭素原子数2〜10の脂肪族多価カルボン酸とを反応させて得られる化合物;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールと、芳香族ジカルボン酸とを反応させて得られる化合物;
が挙げられる。
が挙げられる。
ここでヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、β−ヒドロキシエチルメタアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
また、炭素原子数2〜10の脂肪族多価カルボン酸としては、無水コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等が挙げられる。
更に、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールとしては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどが挙げられる。これらのなかでも炭素原子数が4〜8のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールがエポキシ樹脂(A)との相溶性に優れる点から好ましい。
また、前記構造式(1)中、Xとしてカーボネート結合を有するものとしては、例えば、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールと炭酸ジアルキルをエステル交換反応によりポリカーボネートジオールを得た後(メタ)アクリル酸又はその誘導体と反応させて得られる化合物が挙げあれる。
ここで、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどの炭素原子数3〜10のものが挙げられる。これらのなかでも炭素原子数が4〜8のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールがエポキシ樹脂(A)との相溶性に優れる点から好ましい。
一方、炭酸ジアルキルとしては反応性の点から炭酸ジメチルが挙げられる。
一方、炭酸ジアルキルとしては反応性の点から炭酸ジメチルが挙げられる。
これらのなかでも特に、粘度低減の効果、及び硬化物の耐熱性に優れる点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、及びこれらの酸無水物からなる群から選択されるものであることが好ましく、特に、粘度低減の効果、及び硬化物の耐熱性に優れる点からアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にメタクリル酸が好ましい。
本発明で用いるラジカル重合開始剤(C)は、熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであればよく、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α'−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチ−ルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。前記ラジカル重合開始剤(C)の使用量は、ラジカル重合性成分の総質量及びラジカル重合開始剤(C)の合計質量に対して0.001質量%以上、5質量%以下となる割合で含有されるのが好ましい。
本発明で用いるエポキシ樹脂用硬化剤(D)は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン系硬化剤;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系硬化剤;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物;フェノールベンズアルデヒド樹脂、ナフトールベンズアルデヒド樹脂、フェノールナフトアルデヒド樹脂、ナフトールナフトアルデヒド樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等が挙げられる。これらのなかでも特に硬化性及び、硬化物強度の点からアミン系硬化剤、及びアミド系硬化剤が好ましい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)の配合割合は、前記(A)〜(D)の各成分の配合比率が、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)中の酸基との当量比[エポキシ基/酸基]が1/0.05〜1/0.95となる割合であって、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、前記エポキシ樹脂用硬化剤(D)中の活性水素との当量比[エポキシ基/活性水素]が1/0.05〜1/0.95となる割合であって、かつ、組成物100質量部あたりラジカル重合開始剤(C)が0.1〜3質量部となる割合であることが本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
上記配合割合のなかでも特にエポキシ樹脂用硬化剤(D)によるエポキシ樹脂(A)の硬化が十分に進行し、硬化物の耐熱性が一層良好なものとなる点から前記(A)〜(D)の各成分の配合比率が、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)中の酸基との当量比[エポキシ基/酸基]が1/0.05〜1/0.8となる割合であって、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、前記エポキシ樹脂用硬化剤(D)中の活性水素との当量比[エポキシ基/活性水素]が1/0.2〜1/0.95となる割合であって、かつ、組成物100質量部あたりラジカル重合開始剤(C)が0.1〜3質量部となる割合であることが特に好ましい。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、更に、前記エポキシ樹脂(A)と、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)とを反応させるための反応触媒を適宜併用することもできる。この反応触媒としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリンもしくはジアザビシクロオクタンの如き3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類;2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルスチビン、アニオン交換樹脂等が挙げられる。該触媒の使用量はワニスである繊維強化複合材料用樹脂組成物中、0.01〜5質量%、特に0.05〜5質量%となる範囲であることが、反応性に優れる点から好ましい。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、用途に応じて適度な柔軟性や強度などの機能性を硬化物に付与でき、かつ、ワニスの更なる低粘度化が可能となる点から、前記した(B)成分の他のラジカル重合性単量体(E)を併用することが好ましい。ここで使用し得るラジカル重合性単量体は、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン、以下に代表される(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
本発明に使用できる単官能(メタ)アクリレートとしては例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、3−メトキシブチル、アミル、イソアミル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ステアリル、イソステアリル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明に使用できる単官能(メタ)アクリレートとしては例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、3−メトキシブチル、アミル、イソアミル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ステアリル、イソステアリル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、多官能(メタ)アクリレートとしては例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
以上の(メタ)アクリレートの他に、更に必要に応じてウレタン(メタ)アクリルオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリルオリゴマー等のエチレン性二重結合を含有する機能性オリゴマー類を添加することも出来る。また、これらは各々単独または2種類以上を任意の割合で併用して用いることができる。
ここで、ラジカル重合性単量体(E)の使用量は、エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)の合計質量100質量部に対して、5〜40質量部となる割合であることが好ましい。5重量部以上の範囲では繊維基材等への含浸性が良好となり、他方、40重量部以下の範囲では、硬化物である成形品の寸法安定性や高耐熱性に優れたものとなる。
以上詳述した本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、更に硬化物に難燃性を付与する観点から難燃剤を併用できる。ここで用いる難燃剤としては、ポリ臭素化ジフェニルエーテル、ポリ臭素化ビフェニル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、及び、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等の非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。これらのなかでも特に近年のノンハロゲンの要求が高いことから非ハロゲン系難燃剤が好ましい。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、イオントラップ剤、顔料等、種々の配合剤を添加することができる。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、前記した各成分を、均一に撹拌することにより、液状の組成物として容易に得ることができる。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、前記したとおり、常温液状の組成物であり、有機溶剤無しで、或いは、極少量の使用でワニス化することができる。ここで、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノールなどが挙げられる。この有機溶剤の使用量は、組成物中10質量%以下であることが好ましく、特に実質的に有機溶剤を使用しないことが好ましい。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより、製造することができる。このようにして得られる繊維強化複合材料用樹脂組成物、即ち強化繊維含浸用のワニスは、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下のものであり、優れた流動性を発現する。具体的には、上記した各成分を均一に混合したワニスは、50℃にてE型粘度計(東機産業(株)製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定した粘度が5〜500mPa・S、特に5〜400mPa・Sであることが好ましい。本発明ではワニス粘度がこのように従来のCFRP用ワニスに比べ著しく低粘度であるため、該ワニスの繊維強化材への含浸を比較的低温で行うことができる。他方、このような低粘度ワニスでありながら、繊維強化材に含浸、イン・サイチュー重合反応により硬化させて得られる成形品は優れた耐熱性を発現することは特筆すべき点であり、また、強度的にも従来のCFRP成形品に何等劣ることない。
本発明の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物は、前記した通り、上記した各成分を均一に混合したワニスを強化繊維からなる強化基材に含浸した後、イン・サイチュー反応させることにより得られるものである。ここで、イン・サイチュー反応とは、前記した通り、エポキシ基と酸基との反応と、ラジカル重合性基の重合反応とを特に反応工程として区別することなく両反応を同時乃至連続的に行うものである。
かかるイン・サイチュー反応を行う際の硬化温度は、具体的には、50〜250℃の温度範囲であることが好ましく、特に、50〜100℃で硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120〜200℃の温度条件で処理することが好ましい。
また、本発明の繊維強化複合材料は、上記した繊維強化複合材料用樹脂組成物と、強化繊維とを必須成分とするものであり、具体的には、上記した各成分を均一に混合したワニス、即ち、繊維強化複合材料用樹脂組成物を強化繊維からなる強化基材に含浸して得られるものが挙げられる。
従って、前記した硬化物は、前記繊維強化複合材料用樹脂組成物を強化繊維からなる強化基材に含浸し、次いで、イン・サイチュー重合反応させることにより得られるものである。
ここで、強化繊維は、強化繊維は、有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無撚糸が、繊維強化プラスチック製部材の成形性と機械強度を両立することから、好ましい。さらに、強化繊維の形態は、繊維方向が一方向に引き揃えたものや、織物が使用できる。織物では、平織り、朱子織りなどから、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的には、機械強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られるポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物と強化繊維とを有する成形品であり、具体的には、繊維強化樹脂成形品中の強化繊維の量は、40〜70質量%の範囲であり、特に、強度の点から50〜70質量%の範囲であることが好ましい。
かかる繊維強化樹脂成形品を製造する方法としては、型に繊維骨材を敷き、前記ワニスを多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材にワニスを含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有するワニスをシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維を敷き詰めた合わせ型に前記ワニスを注入するRTM法、強化繊維に前記ワニスを含浸させてプリプレグを製造し、これを大型のオートクレーブで焼き固める方法などが挙げられるが、これらのなかでもとりわけ、ワニスの流動性に優れる点からRTM法が好ましい。
RTM法により繊維強化樹脂成形品を製造する具体的方法としては、以下に詳述する本発明の製造方法が好ましい。
即ち本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、型内に配置した強化繊維からなる基材に、前記ワニスを注入し、含浸させた後、イン・サイチュー硬化させるものである。
即ち本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、型内に配置した強化繊維からなる基材に、前記ワニスを注入し、含浸させた後、イン・サイチュー硬化させるものである。
ここで用いる強化繊維からなる基材としては、強化繊維からなる織物、ニット、マット、ブレイド状のものが挙げられ、これらは、更に、積層、賦形し、結着剤やステッチなどの手段で形態を固定したプリフォームとして使用してもよい。
また、型としては、鉄、スチール、アルミニウム、FRP、木材、石膏等の材質からなるクローズドクローズドモールドが挙げられる。
本発明の製造方法について更に詳述すれば、強化繊維からなる基材を下型の型面に沿わせて賦形し、上型と下型とで型締めを行い、該型内にワニスを注入、次いで前記した硬化温度条下にイン・サイチュー硬化させる方法が挙げられる。この際、強化繊維からなる基材を下型の型面に配設する前に、該型面にゲルコートを塗布することが成形品の外観が良好となる点から好ましい。硬化後、脱型して目的とする繊維強化樹脂成形品を得ることができる。本発明では、脱型後にさらに高温で後硬化を行ってもよい。
また、型内には、強化繊維基材以外にフォームコア、ハニカムコア、金属部品などを設置し、これらと一体化した複合材としてもよい。特にフォームコアの両面に炭素繊維基材を配置して成型して得られるサンドイッチ構造体は、軽量で大きな曲げ剛性を持つので、例えば自動車や航空機などの外板材料として有用である。
このようにして得られた繊維強化樹脂成形品の用途としては、釣竿、ゴルフシャフト、自転車フレームなどのスポーツ用品、自動車、航空機のフレーム又はボディー材、宇宙機部材、風力発電機ブレードなどが挙げられる。とりわけ、自動車部材、航空機部材、宇宙機部材には高度な耐熱性が要求されるため、本発明の繊維強化樹脂成形品はこれらの用途に適する。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。尚、各物性評価は以下の条件にて測定した。
1)ワニス粘度:50℃にてE型粘度計(東機産業(株)製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定した。
2)ガラス転移点(示差走査熱量測定(DSC法)):メトラー・トレド(株)社製「DSC1」を用いて、測定温度範囲:25〜250℃、昇温速度:10℃/分の条件で測定した。
3)樹脂板の曲げ強度、曲げ弾性率:JIS6911に準拠した。
4)炭素繊維強化複合材料の曲げ強度:JISK7074に準拠した。
1)ワニス粘度:50℃にてE型粘度計(東機産業(株)製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定した。
2)ガラス転移点(示差走査熱量測定(DSC法)):メトラー・トレド(株)社製「DSC1」を用いて、測定温度範囲:25〜250℃、昇温速度:10℃/分の条件で測定した。
3)樹脂板の曲げ強度、曲げ弾性率:JIS6911に準拠した。
4)炭素繊維強化複合材料の曲げ強度:JISK7074に準拠した。
実施例1〜6
1.エポキシ樹脂組成物配合
下記の表1に示す配合に従い、エポキシ樹脂とカルボン酸、重合性化合物、ラジカル重合開始剤、硬化促進剤等を、撹拌機を用いて配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度を評価した。
2.エポキシ樹脂の樹脂硬化板の作製
エポキシ樹脂組成物を、厚さ2mmのスペーサー(シリコーンチューブ)をガラス板で挟んだ型の間隙に流し込み、オーブン中で100℃で1時間硬化させ、型から硬化物を取り出し、タックフリー状になっているのを確認した後、更に、170℃で1時間、アフターキュアを行い、厚み2mmの樹脂硬化板を得た。これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
3.炭素繊維強化複合材料の作製
200mm×200mm×3.5mmのポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がコーティングされたSUS板上に150mm×150mmに切り出した炭素繊維織物(炭素繊維:CO6343、目付け198g/cm2、東レ(株)製)を4枚積層し、予め50℃に温めたエポキシ樹脂組成物をキャストしてローラーで樹脂を押し付けるようにして樹脂を含浸させ、もう1枚のポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がコーティングされたSUS板上を載せた。これをオーブン中で100℃で1時間、続いて170℃で1時間アフターキュアを行い、厚さ1.5mmの繊維強化複合材料を得た。目視での確認では得られた繊維強化複合材料には気泡等のボイドは確認されなかった。これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
1.エポキシ樹脂組成物配合
下記の表1に示す配合に従い、エポキシ樹脂とカルボン酸、重合性化合物、ラジカル重合開始剤、硬化促進剤等を、撹拌機を用いて配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度を評価した。
2.エポキシ樹脂の樹脂硬化板の作製
エポキシ樹脂組成物を、厚さ2mmのスペーサー(シリコーンチューブ)をガラス板で挟んだ型の間隙に流し込み、オーブン中で100℃で1時間硬化させ、型から硬化物を取り出し、タックフリー状になっているのを確認した後、更に、170℃で1時間、アフターキュアを行い、厚み2mmの樹脂硬化板を得た。これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
3.炭素繊維強化複合材料の作製
200mm×200mm×3.5mmのポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がコーティングされたSUS板上に150mm×150mmに切り出した炭素繊維織物(炭素繊維:CO6343、目付け198g/cm2、東レ(株)製)を4枚積層し、予め50℃に温めたエポキシ樹脂組成物をキャストしてローラーで樹脂を押し付けるようにして樹脂を含浸させ、もう1枚のポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がコーティングされたSUS板上を載せた。これをオーブン中で100℃で1時間、続いて170℃で1時間アフターキュアを行い、厚さ1.5mmの繊維強化複合材料を得た。目視での確認では得られた繊維強化複合材料には気泡等のボイドは確認されなかった。これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
比較例1及び2
1.エポキシ樹脂組成物配合
下記表2に示す配合に従い、各成分を配合し、撹拌機を用いて配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度を評価した。
2.エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化板の作製
エポキシ樹脂組成物を、実施例で用いた型の間隙に流し込み、オーブン中で100℃で4時間硬化を行い、厚み2mmの樹脂硬化板を得た。これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
3.炭素繊維強化複合材料の作製
実施例と同様の操作で炭素繊維織物を4枚積層し、エポキシ樹脂組成物をキャストしてローラーで樹脂を押し付けるようにして樹脂を含浸させ、もう1枚のポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がコーティングされたSUS板上を載せ、これをオーブン中で100℃で1時間、続いて170℃で1時間アフターキュアを行ったが、ワニスの炭素繊維織物への含浸が不十分で、表面において炭素繊維がむき出し状態となった他、樹脂部分も表面に気泡も多く、評価試験に耐え得る試験片を製造することはできなかった。
1.エポキシ樹脂組成物配合
下記表2に示す配合に従い、各成分を配合し、撹拌機を用いて配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度を評価した。
2.エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化板の作製
エポキシ樹脂組成物を、実施例で用いた型の間隙に流し込み、オーブン中で100℃で4時間硬化を行い、厚み2mmの樹脂硬化板を得た。これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
3.炭素繊維強化複合材料の作製
実施例と同様の操作で炭素繊維織物を4枚積層し、エポキシ樹脂組成物をキャストしてローラーで樹脂を押し付けるようにして樹脂を含浸させ、もう1枚のポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体がコーティングされたSUS板上を載せ、これをオーブン中で100℃で1時間、続いて170℃で1時間アフターキュアを行ったが、ワニスの炭素繊維織物への含浸が不十分で、表面において炭素繊維がむき出し状態となった他、樹脂部分も表面に気泡も多く、評価試験に耐え得る試験片を製造することはできなかった。
「エポキシA」:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、商品名「EPICLON 850S」DIC(株)製、エポキシ当量188g/eq
「エポキシB」:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、商品名「EPICLON 830」DIC(株)製、エポキシ当量171g/eq
「アミンA」:ジアミノジフェニルスルフォン
「アミンB」:ジエチルトルエンジアミン(ピー・ティー・アイ・ジャパン(株)製「エタキュア 100」)
「パーヘキサHC」:1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、商品名「パーヘキサHC」日油(株)製重合開始剤
「2E4MZ」:2−エチル−4−メチルイミダゾール
「ルイス酸触媒A」:三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体
「ルイス酸触媒B」:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体
「エポキシB」:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、商品名「EPICLON 830」DIC(株)製、エポキシ当量171g/eq
「アミンA」:ジアミノジフェニルスルフォン
「アミンB」:ジエチルトルエンジアミン(ピー・ティー・アイ・ジャパン(株)製「エタキュア 100」)
「パーヘキサHC」:1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、商品名「パーヘキサHC」日油(株)製重合開始剤
「2E4MZ」:2−エチル−4−メチルイミダゾール
「ルイス酸触媒A」:三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体
「ルイス酸触媒B」:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体
Claims (16)
- エポキシ樹脂(A)、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)、ラジカル重合開始剤(C)、及びエポキシ樹脂用硬化剤(D)を必須成分としており、かつ、E型粘度計により測定した50℃における粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 酸基含有ラジカル重合性単量体(B)が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、及びこれらの酸無水物からなる群から選択されるものである請求項1記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 前記(A)〜(D)の各成分の配合比率が、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、酸基含有ラジカル重合性単量体(B)中の酸基との当量比[エポキシ基/酸基]が1/0.05〜1/0.95となる割合であって、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、前記エポキシ樹脂用硬化剤(D)中の活性水素との当量比[エポキシ基/活性水素]が1/0.05〜1/0.95となる割合であって、かつ、組成物100質量部あたりラジカル重合開始剤(C)が0.1〜3質量部となる割合である請求項1又は2記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1、2、又は3記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 前記ビスフェノール型エポキシ樹脂がエポキシ当量500g/eq.以下のものである請求項4記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 前記(A)〜(D)の各成分に加え、更に、前記(B)成分の他のラジカル重合性単量体(E)を含有する請求項1記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 前記ラジカル重合性単量体(E)の配合割合が、前記(A)〜(E)の総質量を100とした場合、5〜50質量部となる割合である請求項6記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物。
- 請求項1〜7の何れか1つに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物と、強化繊維とを必須成分とする繊維強化複合材料。
- 請求項1〜7の何れか1つに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物をイン・サイチュー重合反応させることにより得られる硬化物。
- 請求項1〜7の何れか1つに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物と、強化繊維とを必須成分とする繊維強化複合材料。
- 強化繊維の体積含有率が40〜85%の範囲内である請求項10記載の繊維強化複合材料。
- 請求項1〜7の何れか1つに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物の硬化物と強化繊維とを必須成分とする繊維強化樹脂成形品。
- 強化繊維の体積含有率が40〜85%の範囲内である請求項11記載の繊維強化樹脂成形品。
- 型内に配置した強化繊維からなる基材に、請求項1〜6の何れか1つに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物を注入し、含浸させた後、イン・サイチュー重合反応させることにより硬化させることを特徴とする繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 強化繊維からなる基材を配置した型のキャビティ内を減圧し、請求項1〜7の何れか1つに記載の繊維強化複合材料用樹脂組成物を、減圧されたキャビティ内圧力と外部圧力との差圧を利用してキャビティ内に注入し、前記基材に含浸する真空RTM成形法を用いる、請求項14記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 自動車用部材である、請求項12又は13記載の繊維強化樹脂成形品。
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