JP2010194870A - 光学記録媒体の記録層形成用色素および該色素を用いた光学記録媒体およびその記録方法 - Google Patents

光学記録媒体の記録層形成用色素および該色素を用いた光学記録媒体およびその記録方法 Download PDF

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健史 中村
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済 佐藤
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Abstract

【課題】青色レーザー光を用いた高倍速記録における耐光性および記録感度に優れた光学記録媒体の記録層形成用色素を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有するヒドラジドキレート錯体化合物を含む光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2010194870

(Rは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基。R〜Rは水素原子、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基。nは0または1。環Aは置換基を有していても良い芳香環。Ar,Arは、置換基を有していても良い芳香環基。Xは周期表第14〜16族原子。)
【選択図】図2

Description

本発明は、耐候性および記録感度が共に優れ、青色レーザー光対応の光学記録媒体の記録層形成用色素として有用な新規色素と、この色素を用いた記録層を有する光学記録媒体と、この光学記録媒体の記録方法に関する。
本発明はまた、光学記録媒体の記録層形成用色素として有用な新規ヒドラジドキレート錯体化合物に関する。
近年、高密度での情報の記録保存/再生が可能なことから、レーザー光を用いた光学記録媒体、特に光ディスクについての開発が取り進められている。光ディスクの中でも最近注目を集めているものに、書き込み型コンパクトディスク(CD−R)がある。CD−Rは、通常、案内溝を有する円形のプラスチック基板上に、色素を主成分とする記録層、金属反射膜および保護膜が順次積層された構造をしている。CD−Rへの情報の記録は、主に、レーザー光を照射し、その照射エネルギーが記録層で吸収されることにより、レーザー光照射部分の記録層、反射層または基板に分解、蒸発、溶解等の熱的変形を生じさせる方法(ヒートモード)により行なわれる。また、記録された情報の再生は、レーザー光照射による熱的変形や色素構造の変化が起きている部分と起きていない部分のレーザー光に対する反射率の差を読み取ることにより行われる。従って、光学記録媒体の記録層はレーザー光のエネルギーを効率良く吸収する必要があり、記録層には一般的にレーザー光吸収色素が用いられている。
レーザー光吸収色素として有機色素を利用した光学記録媒体は、有機色素溶液を塗布するという簡単な方法で記録層を形成し得るため、安価な光学記録媒体として今後益々普及することが期待されている。
また、近年、記録の高密度化のため、記録に用いるレーザー光の波長を従来の半導体レーザーの発光波長である780nmを中心としたものから、405nm前後以下の青色光領域へと短波長化することが検討されつつある。
さらに、近年、記録媒体の高容量化のため、記録媒体に記録層を2層作成することによって記憶容量の倍化を図った2層記録媒体の作成や、記録の高速化が検討されているため、記録層用色素化合物にはより一層の記録レーザーに対する高感度化が求められている。
また、色素を用いて記録層を形成する場合、一般的にスピンコート法を用いて基板へ塗布する方法が、真空蒸着法に比べ、コスト面で有利であるため、光学記録媒体用色素は塗布溶媒に高い溶解性を示すことが必須である。現状では、塗布溶媒として2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)や2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(OFP)などのフッ素系アルコール溶媒を用いて、ポリカーボネート基板に塗布するのが一般的であるため、記録層形成形色素には、これらの塗布溶媒に高い溶解性を示すことが求められる。
また、一般的にデータの記録および読み出しはともにレーザー光によって行われ、読み出しレーザー光には、記録レーザー光よりも強度の弱いものが用いられる。従って、光学記録媒体の記録層を形成する色素が、読み出し光である弱いレーザー光照射によって分解されてしまうほど、該色素の耐光性が低いと、記録データの読み出しを行う際にデータエラーを生じる原因となる。また、光学記録媒体はその性質上記録面に太陽光や照明等が長時間照射される機会が多いため、色素が耐光性に劣ると光学記録媒体の記録データを長期保存することが困難になる。従って記録層形成用色素には高い耐光性が併せて求められる。
現在開発されている青色半導体レーザーを用いた記録方法、例えばHD(High Definition)DVD−RやBD(Blu-ray Disc)−Rなどにおいては、従来のCD−RやDVD−Rと呼ばれる光学記録媒体と同様の記録メカニズム、すなわちHigh to Low記録の実用化は困難であるという課題がある。High to Low記録とは、未記録時の反射率が記録時に比べて高い記録方法であり、未記録部分の戻り光が多い材料が優れた記録材料とされている。
また、本発明者らは、上記を踏まえ、特許文献1において、塗布溶媒への溶解性および耐光性のいずれにも優れ、青色レーザー光を用いた高速光記録にも対応可能な光学記録媒体の記録層形成用のイミン系色素として、特定の構造を有するヒドラジドキレート錯体化合物が有効であることを明らかにした。
また、従来と異なる記録メカニズムであるLow To High記録によって高密度の光情報の記録・再生が可能であることを明らかにした。なお、Low To High記録とは、未記録時よりも記録時の反射率が高い記録方法であるため、未記録時の反射率を低くする必要がある。
特開2008−195915号公報
しかしながら、特許文献1の実施例に開示される色素は、更なる高倍速記録(2倍速以上)を志向した場合、耐光性および記録感度(PRSNR)の面で未だ十分とは言えず、更なる改善が求められていた。
従って、本発明は、光学記録媒体の記録層形成用色素において、青色レーザー光を用いた高倍速記録における耐光性および記録感度の改善を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シッフ塩基と隣接したアミド基(−C=N−NH−C(=O)−骨格)に、2価の芳香環基を介して、1価の芳香環基を有する、以下の一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとからなるヒドラジドキレート錯体化合物が、塗布溶媒への溶解性および薄膜状態での耐光性および記録感度に優れ、これを記録層に用いた光学記録媒体が青色レーザー光で良好に記録できることを見出した。
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 下記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有するヒドラジドキレート錯体化合物を含むことを特徴とする光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2010194870
(一般式(1)中、Rは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、nは0または1を表し、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表し、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表し、Xは周期表第14〜16族原子を表す。なお、Xが周期表第14〜15族原子の場合、該Xは更に1価の置換基を有していても良い。)
[2] 前記ヒドラジドキレート錯体化合物が下記一般式(2)で表されるものであることを特徴とする[1]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2010194870
(一般式(2)中、R、R〜R、環A、Ar〜Ar、X、およびnは、前記一般式(1)におけると同義であり、Mは遷移金属を表し、aは遷移金属カチオンの価数を表し、bはa以下の自然数を表す。なお、上記分子は更にカウンターイオンを有していても良い。)
[3] 前記ヒドラジドリガンドが下記一般式(1−1)で表されるものであることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2010194870
(一般式(1−1)中、R11〜R13は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表し、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
[4] 前記ヒドラジドリガンドが下記一般式(1−2)で表されるものであることを特徴とする[3]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2010194870
(一般式(1−2)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R23は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar21〜Ar23は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
[5] 前記一般式(1−2)において、Ar22およびAr23の少なくともいずれか一方が、置換基として「置換基を有していても良いカルバモイル基」を有する芳香環基であることを特徴とする[4]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
[6] Ar22およびAr23の少なくともいずれか一方が置換基として有する「置換基を有していても良いカルバモイル基」の構造が、以下の一般式(3)で表されることを特徴とする[5]に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
Figure 2010194870
(一般式(3)中、R31は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar31は置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
[7] 遷移金属(遷移金属M)がコバルトであることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
[8] 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が、[1]ないし[7]のいずれかに記載の光学記録媒体の記録層形成用色素を用いて形成されたものであることを特徴とする光学記録媒体。
[9] [8]に記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行なうことを特徴とする光学記録媒体の記録方法。
[10] 記録を行うレーザー光の波長において、記録部の反射率が、記録前、および未記録部の反射率よりも高くなることを特徴とする[9]に記載の光学記録媒体の記録方法
[11] 下記一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有するヒドラジドキレート錯体化合物。
Figure 2010194870
(一般式(4)中、R41およびR42は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R43は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar41〜Ar43は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、溶媒に対する溶解性、耐光性および青色レーザー記録感度に優れ、特に、従来困難とされていた、高倍速記録における耐光性および記録感度の両立の点において、優れた特性を有する。従って、この記録層形成用色素を用いることにより、青色レーザー光による記録特性に優れ、かつ耐光性も良好な高密度光学記録媒体を、良好な膜性のもとに、安価に提供することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成の一例を示す模式的断面図である。 本発明の実施の形態に係る2層型光学記録媒体の製造方法の一例を示す模式的断面図である。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
[I.光学記録媒体の記録層形成用色素]
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、下記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有するヒドラジドキレート錯体化合物を含むことを特徴とする。
Figure 2010194870
(一般式(1)中、Rは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、nは0または1を表し、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表し、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表し、Xは周期表第14〜16族原子を表す。なお、Xが周期表第14〜15族原子の場合、該Xは更に1価の置換基を有していても良い。)
本発明において芳香環とは、芳香族性を有する環、すなわち(4m+2)π電子系(mは自然数)を有する環を意味する。その骨格構造は、通常、5または6員環の、単環または2〜6縮合環からなる芳香環であり、該芳香環には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、アントラセン環、カルバゾール環、アズレン環のような縮合環も含まれる。「芳香環基」等の「・・・・環基」とはこのような芳香環等の環から水素原子を1個取った1価の置換基、または水素原子を2個取った2価の連結基である。
また、「(ヘテロ)アリール」とは「アリール」と「ヘテロアリール」の両方を意味し、「(ヘテロ)アラルキル」とは「アラルキル」と「ヘテロアラルキル」の両方を意味する。
また、本発明において、「置換基を有していても良い」とは置換基を1以上有していても良いことを意味する。
[I−1.ヒドラジドリガンド]
まず、本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素に含まれるヒドラジドキレート錯体化合物を構成する、上記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドについて説明する。
[I−1−1.Ar〜Ar
一般式(1)において、環Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。
その芳香環の骨格構造の具体例としては、5員環単環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環としてベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、縮合環としてナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。
<Ar
Arは、シッフ塩基と隣接したアミド基(−C=N−NH−C(O=)−骨格)とArとを共役系で連結する連結基としての機能を有するものであり、その具体例としては、上記骨格構造を有する2価の芳香環基であるが、これらのうち、Arの骨格構造は、記録特性向上の観点から分子量を大きくしないために、5員環単環、6員環単環、これらの2環縮合環程度が好ましい。更に、合成面の容易さから5員環単環が好ましく、また、吸収量を維持する点から窒素、酸素、硫黄を一つ以上含有する複素環が好ましい。この中でもArは、5員環単環の芳香族複素環由来の基が好ましく、特にピラゾール環由来の基が好ましい。
<Ar
Arは、好ましくは、信号特性を向上させる適度な分解性を有する基であり、その具体例としては、上記骨格構造を有する1価の芳香環基であるが、置換基を有していても良いカルバモイル基を有する芳香族炭化水素基や置換基を有していても良い芳香族複素環基が好ましく、中でも、Arは化合物安定性の面から、置換基を有していても良いカルバモイル基を有する6員環単環由来の基もしくはヘテロアリール縮合環由来の基であることが好ましい。
<置換基>
Ar〜Arの芳香環基が有していても良い置換基としては、分子量1以上、150以下程度の任意の置換基であり、具体的には、炭素数20以下の、鎖状アルキル基、鎖状アルケニル基、鎖状アルキニル基、炭化水素環基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、(ヘテロ)アリールアルキル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アラルキルオキシ基、置換基を有していても良いアミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシカルボニル基、置換基を有していても良いカルバモイル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。なお、ここで、「炭素数20以下」とは、当該置換基が更に置換基を有する場合、その置換基の炭素数も含めた置換基全体の炭素数をさす。
但し、Arの芳香環基が有する置換基は、耐光性の点では、置換基を有していても良いカルバモイル基以外の置換基であることが好ましい。吸光度維持の点ではArは無置換であることが最も好ましい。一方、Arの芳香環基が有する置換基は、Arが芳香族炭化水素環の場合、置換基を有していても良いカルバモイル基であることが特に好ましい。
以下に、Ar〜Arの芳香環基が有していても良い置換基の具体例を挙げる。
鎖状アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜10の直鎖または分岐状のものが挙げられる。
鎖状アルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などの炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10の直鎖または分岐状のものが挙げられる。
鎖状アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル基などの炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10の直鎖または分岐状のものが挙げられる。
炭化水素環基の例としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、テトラデカヒドロアントラニル基などの炭素数が通常3〜20、好ましくは5〜10のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基などの炭素数が通常3〜20、好ましくは5〜10のシクロアルケニル基、フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基などの炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10のアリール基が挙げられる。
複素環基の例としては、5〜6員環の単環または2〜6縮合環からなるヘテロアリール基、5〜6員環の単環または2〜6縮合環からなるヘテロシクロアルキル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。具体的には、チエニル基などの5員環、ピリジル基、2−ピペリジニル基、2−ピペラジニル基などの6員環、ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、オクタヒドロキノリニル基などの5または6員環の2〜6縮合環由来の基が挙げられる。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数が通常1〜9、好ましくは2〜8のものが挙げられる。
アルキルカルボニル基の例としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基などの炭素数が通常2〜18、好ましくは2〜8のものが挙げられる。
(ヘテロ)アリールアルキル基の例としては、ベンジル基等の炭素数が通常4〜20、好ましくは4〜12のアリールアルキル基や、ピリジルメチル基、フリルメチル基、ピラゾリルメチル基、イミダゾリル基等の炭素数が通常3〜15、好ましくは3〜10のヘテロアリールアルキル基などが挙げられる。
(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10のアリールオキシ基や、2−チエニルオキシ基、2−フリルオキシ基、2−キノリルオキシ基等の炭素数が通常5〜18、好ましくは5〜10で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールオキシ基などが挙げられる。
(ヘテロ)アラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメトキシ基等の炭素数が通常7〜18、好ましくは7〜12のアラルキルオキシ基や、2−チエニルメトキシ基、2−フリルメトキシ基、2−キノリルメトキシ基等の炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアラルキルオキシ基などが挙げられる。
置換基を有していても良いアミノ基としては、アミノ基、アルキルアミノ基、(ヘテロ)アリールアミノ基などが挙げられる。
アルキルアミノ基の例としては、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基などの炭素数が2〜20、好ましくは3〜10のものが挙げられる。
(ヘテロ)アリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の炭素数が6〜30、好ましくは6〜15のアリールアミノ基や、ジ(2−チエニル)アミノ基、ジ(2−フリル)アミノ基などの炭素数が5〜30、好ましくは6〜15で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールアミノ基、フェニル(2−チエニル)アミノ基等の炭素数が11〜30、好ましくは12〜16のアリールヘテロアリールアミノ基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などの、炭素数が2〜20、好ましくは2〜10のものが挙げられる。
置換基を有していても良いカルバモイル基としては、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基などが挙げられる。アルキルカルバモイル基としては、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチル−N−シクロヘキシルカルバモイル基などの、炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10のものが挙げられるが、後掲の一般式(3)で表される構造を有するものも、好ましいものとして挙げられる。
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられる。
なお、Ar〜Arが2つ以上の置換基を有する場合、これらは同一であっても異なるものであっても良く、また、該置換基同士が結合して環状構造をなしていても良い。例えば、Arがベンゼン環由来の基である場合、該ベンゼン環が有する置換基同士が結合してヘテロ原子を含んでいても良い環状構造を形成している例として以下に示す構造が挙げられる(以下において、※がArとの結合手である。)。
Figure 2010194870
また、上述の例示置換基のうち、炭化水素環基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、(ヘテロ)アリールアルキル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アラルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシカルボニル基は更に置換基を有していても良い。即ち、例えば、ベンジル基は置換基としてハロゲン原子や置換基を有していても良いカルバモイル基を有するものであっても良い。
なお、Ar〜Arは、これらの置換基を有している方が記録層を形成する際に用いる溶媒に対する色素の溶解性が向上するので好ましい。一方、これらの置換基を有していない方が合成コスト面で好ましい。
[I−1−2.環A]
一般式(1)において、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表す。環Aの芳香環、および環Aが有していても良い置換基の具体例は、Ar〜Arの芳香環の骨格構造およびAr〜Arが有していても良い置換基の具体例として挙げられたものが挙げられる。環Aは、記録特性向上および合成上の観点からベンゼン環であることが好ましい。
[I−1−3.R
一般式(1)において、Rは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表す。
の置換基を有していても良い芳香環基の具体例はとしては、Ar〜Arの具体例として記載されたものが挙げられ、炭素数20以下の1価の非芳香環置換基の具体例としては、Ar〜Arが有していても良い置換基として記載されたもののうち、芳香環基を除くものが挙げられる。
は、合成上および記録特性の観点から、アルキル基であることが好ましく、特に炭素数1〜10、中でも炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
[I−1−4.R〜R
一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表す。
置換基を有していても良い芳香環基の具体例はとしてはAr〜Arの具体例として記載されたものが挙げられ、炭素数20以下の1価の非芳香環置換基の具体例としてはAr〜Arが有していても良い置換基として記載されたもののうち、芳香環基を除くものが挙げられる。
〜Rは、合成上、水素原子であることが好ましい。
[I−1−5.X]
Xは周期表第14〜16族原子を表す。その具体例としては、C,N,O,Si,P,Sなどが挙げられるが、化合物の安定性の面で第2周期の原子であることが好ましく、Cが特に好ましい。
なお、Xが周期表第14〜15族原子の場合、該Xはさらに1価の置換基を有していても良い。その具体例としてはAr〜Arが有していても良い置換基として記載されたものが挙げられる。Xが周期表第14〜15族原子の場合、該Xはさらに置換基を有することが化合物の安定性の面で好ましい。
[I−1−6.n]
nは0もしくは1を表す。nは0であることが錯体化合物の特性向上の面で好ましい。
[I−1−7.好適な構造]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を構成する、前記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドのうち好ましいものは、下記一般式(1−1)で表される。
Figure 2010194870
(一般式(1−1)中、R11〜R13は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表し、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
一般式(1−1)において、R11〜R13の具体例としては、一般式(1)におけるRの具体例が挙げられ、Ar11〜Ar12の具体例および好適例としては一般式(1)におけるAr〜Arの具体例および好適例が挙げられ、環Aの具体例および好適例としては一般式(1)における環Aの具体例および好適例が挙げられる。
中でも、R12としては、感度部位機能を有する基、つまり、「置換基を有していても良いフェニル基か5員環の複素環基」を含む構造、中でも−CH−を介してこれらの基が結合する構造であることが、感度の点で好ましい。具体的にはp−フルオロベンジル基、m−フルオロベンジル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、置換基を有していても良いカルバモイル基を有するベンジル基、フリルメチル基、アルコキシカルボニル基を有するフリルメチル基、ピラゾイルメチル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基を有するピラゾイルメチル基などの炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15、中でも炭素数4〜10の置換基を有していても良い(ヘテロ)アリールアルキル基が好ましい。
また、R13としては、感度部位機能を有する基であることが高感度記録の点で好ましい。具体的にはR12と同様のものが好ましい。また、R12が感度部位を有する基である場合は、R13としては、アルキル基も好ましく、合成面からR13は炭素数1〜10、中でも1〜5のアルキル基であることが特に好ましい。
また、R11としては、Rと同様に置換基を有していても良いアルキル基であることが好ましい。特に炭素数1〜10、中でも炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
[I−1−8.より好適な構造]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を構成する、前記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドのうち、さらに好ましいものは、下記一般式(1−2)で表される。
Figure 2010194870
(一般式(1−2)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R23は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar21〜Ar23は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
21〜R22の具体例としては、一般式(1)におけるRの具体例が挙げられ、R23の具体例としては一般式(1)におけるR〜Rの具体例が挙げられる。Ar21、Ar22の具体例および好適例としては、それぞれ一般式(1)におけるAr、Arの具体例および好適例が挙げられ、Ar23が有する環構造及びAr23が有していてもよい置換基の具体例および好適例としては一般式(1)におけるAr及びArの具体例および好適例が挙げられる。
ここで、R23は、塗布溶媒への溶解性向上の理由から、水素原子もしくは電子供与性置換基であることが好ましく、水素原子もしくは炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルコキシ基であることが特に好ましい。
21としては、R11と同様にアルキル基であることが好ましい。特に炭素数1〜10、中でも炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
22としては、炭素数1〜10、中でも炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
また、Ar23は安定性向上の面で置換基を有していても良いフェニル基であることが好ましい。
さらに、一般式(1−2)で表されるヒドラジドリガンドのうち特に好ましいものは、Ar22もしくはAr23の少なくともいずれか一方に、置換基として、置換されていても良いカルバモイル基を有する。置換されていても良いカルバモイル基を有することにより、塗布性が向上し信号特性の面で優れる。
この置換されていても良いカルバモイル基の具体例としては、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基などが挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチル−N−シクロヘキシルカルバモイル基などの炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10のものが挙げられるが、耐候性向上の観点から以下の一般式(3)で表される構造であることが特に好ましい。
Figure 2010194870
(一般式(3)中、R31は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar31は置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
上記R31の具体例としては、一般式(1)におけるR〜Rの具体例が挙げられ、Ar31の具体例としては一般式(1)におけるAr〜Arの具体例が挙げられる。
これらのうち、記録特性向上の点から、R31は、アルキル基、特に、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、Ar31は置換されていても良いフェニル基であることが好ましい。Ar31のフェニル基が置換基を有する場合、その置換基としては、炭素数1〜5程度のアルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。中でも塗布溶媒への溶解性の点でメトキシ基が好ましい。
[I−2.ヒドラジドキレート錯体化合物]
前記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有する本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、より具体的には以下の一般式(2)で表される。
Figure 2010194870
(一般式(2)中、R、R〜R、環A、Ar〜Ar、X、およびnは、前記一般式(1)におけると同義であり、Mは遷移金属を表し、aは遷移金属カチオンの価数を表し、bはa以下の自然数を表す。なお、上記分子は更にカウンターイオンを有していても良い。)
[I−2−1.Ar〜Ar、R〜R、X、n]
一般式(2)においてR、R〜R、環A、Ar〜Ar、X、およびnは、前記一般式(1)におけると同義である。
[I−2−2.M]
一般式(2)において、Mは遷移金属を表す。その具体例としては、一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと金属錯体を形成し得るものであれば何でも良いが、具体例としてはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Pt,Au等が挙げられる。中でも、経済面から周期表第4周期金属であることが好ましく、耐光性向上の面からCo、Ni、Cuが好ましく、特に、Coであることが特に好ましい。
なお、遷移金属カチオンは一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドの他に溶媒や他のキレートと追加的に配位しても良い。
配位し得る溶媒としては、アルコール性溶媒、ケトン系溶媒あるいはアミノ系溶媒など金属のアキシアル位あるいは別の位置から配位可能なものが挙げられる。
また、他のキレートとしては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジンあるいはピラジンなどの配位性原子を有する配位子が挙げられる。
[I−2−3.a]
aは遷移金属カチオンの価数を表す。aは1もしくは3以上でも良いが、2であることが好ましい。
[I−2−4.b]
bはa以下の自然数を表す。bはaと同一であることが好ましい。
[I−2−5.カウンターイオン]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、該化合物が分子全体として電気的に中性となるように、カウンターイオンを適宜有していても良い。この場合、有していても良いカウンターアニオンとしては、具体的には、BF 、ClO 、PF 、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、酢酸イオンなどが挙げられ、カウンターカチオンとしては、周期表第1A族カチオンなど、特に1価のカチオンが挙げられる。
[I−2−6.分子量]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物の分子量(カウンターイオンを含まない分子量)は、遷移金属カチオンとヒドラジドリガンド(アニオン)を合計して通常2,000以下、中でも1,500以下であることが好ましい。
[I−2−7.水溶性]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、記録媒体の保存安定性を向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。
ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であることを言う。
[I−2−8.具体例]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を構成する、前記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドの具体例を以下に例示するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、以下において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Fcはフェロセニル基を表す。
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
また、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を構成するヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンの組み合わせの具体例について、以下に示すが、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、これらに限定されるものではない。なお、以下の表1a〜1fおよび後掲の表2a〜2bにおいて、「リガンド」は、ヒドラジドリガンドの前記例示式の番号を示し、「金属」は遷移金属カチオンを示す。また、表1a〜1fにおける「構成比」はヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンの比(ヒドラジドリガンド:遷移金属カチオン)を示し、構成比の欄における左側の数字は一般式(2)におけるbの値に相当する。
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
Figure 2010194870
[I−2−9.合成法]
前記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドは、以下に示す反応などによって容易に合成することができる。
Figure 2010194870
(上記反応式中、R〜R、環A、Ar〜Ar、X、nは一般式(1)におけるそれらと同義である。)
反応に際しては、反応系に溶媒が存在しても、しなくても良い。
反応溶媒を用いる場合、該溶媒としてはメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの極性溶媒やトルエン、キシレンなどの非極性溶媒を用いることができ、さらに触媒として塩酸、酢酸、硫酸などの無機酸、p−TsOH(パラトルエンスルホン酸)、PPTS(パラトルエンスルホン酸ピリジン塩)などの有機酸を添加しても良い。
この場合の触媒の添加量は反応が進行すれば特に規定されないが、基質に対して1/100〜10モル倍程度、酸が基質のヘテロ原子に配位してしまう場合には、その基質分のモル分さらに加えることが好ましい。
反応温度は室温から溶媒が還流する程度であることが好ましく、反応時間は1分〜48時間程度、一般には、3時間程度〜10時間程度であることが製造面で好ましい。反応の終点はTLC(薄層クロマトグラフィー)やHPLC(高速液体クロマトグラフィー)などにより確認することができる。
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、上述の手法で合成されたヒドラジドリガンドを塩基で処理した後、遷移金属塩と溶媒の存在下もしくは非存在下、室温から溶媒が還流する程度の温度で加熱反応させることにより得ることができる。反応は1分〜5時間程度、一般には、30分程度〜1時間程度で終結する。反応溶媒を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの極性溶媒や、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒を用いることができる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウムなどの無機塩基や、トリエチルアミン、ピペリジン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)などの有機塩基を用いることができる。
[I−2−10.耐光性および塗布溶媒への溶解性]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物のうち好ましいものは、耐光性および塗布溶媒への溶解性に優れ、さらに光学記録媒体の記録層形成に用いたときの膜性および記録感度に優れるという特徴がある。
この場合の耐光性に優れるとは、約50nmの膜厚になるように形成したヒドラジドキレート錯体化合物薄膜に対し、温度58℃、湿度50%、キセノンランプ(強度0.55W/m)照射条件の耐光性試験を40時間行っても、当該薄膜中のヒドラジドキレート錯体化合物の通常70%以上、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上が劣化せずに残存することを言う。ここで、劣化の度合いは波長300〜500nmにおける吸収極大の吸収減少率によって判定する。
この耐光性の試験は、具体的には、次のようにして行われる。
まず、乾燥後の膜厚が約50nmとなるように、ヒドラジドキレート錯体化合物を含む溶液を基板上に塗布した後、乾燥し、ヒドラジドキレート錯体化合物を含む層を得る。得られた色素を含む層に対して、温度58℃、湿度50%の条件下、キセノンランプ(強度0.55W/m)の照射を所定時間行い、照射前後の吸収極大波長における吸光度を比較し、色素残存率を求めることにより実施される。
また、塗布溶媒への溶解性に優れるとは、20℃、常圧条件において、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)に0.7重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは1.5重量%以上溶解することを指す。溶解の判定は特定の濃度で当該化合物とTFPを混合したときに、溶媒中に化合物の結晶残渣が残存するか否かで行う。
なお、本発明の用途においては、溶解度の上限は特に制限されるものではないが、通常20重量%以下、中でも10重量%以下程度である。
このように、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物が耐光性および塗布溶媒への溶解性に優れる理由は、金属キレート化によりヒドラジドキレート錯体化合物が安定化したこと、前記一般式(1)中の下記(1A)の縮合環部分が、立体的に嵩高く、分子同士の重なりを最小限に押さえ溶解性を向上させたこと等が挙げられる。
Figure 2010194870
また、本発明のヒドラジドキレート錯体化合物が特に耐光性に優れる理由としては、シッフ塩基と隣接したアミド基(−C=N−NH−C(=O)−骨格)に、2価の芳香環基(リンカー)Arを介して、1価の芳香環基Arを配することにより、錯体骨格部位との相互作用が弱められたこと等が考えられる。
また、該リンカーArを挿入することで、記録特性向上に有用でありながら、耐光性の面で不利であった、アミド基、あるいは、ヘテロ環基等の置換基を安定に保持できるようになり、耐光性と記録感度の両立が達成されたこと等が考えられる。
また、1つのリガンドに対して配位点が2つであること、上記縮合環部分(1A)が比較的反応性に富むことから、通常条件下では安定ながら記録レーザー照射条件では不安定、即ち高感度であることが期待される。
[I−2−11.膜性]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、膜性に優れている。すなわち、スピンコート法により記録層を形成後、ディスク表面に化合物の結晶化に由来する白化現象が認められない点においても、工業的に有利である。
[I−2−12.用途]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物のうち好ましいものは、多層媒体に好適に用いられる。すなわち、多層媒体においては各層に情報を記録する際に、記録する目的以外の層にも光が吸収、透過する現象が必ず生じるため、単層媒体よりも記録感度が良い色素を用いる必要がある。本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は従来と比較して良好な記録感度を持つことから、より好ましいと考えられる。
[I−3.光学記録媒体の記録層形成用色素]
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素は、上述の本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を含むものである。
本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素中には、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を1種類のみ用いても良く、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を2種類以上、任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。また、1種または2種以上の本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物に加えて、他の色素の1種または2種以上を併用しても良い。
但し、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物以外の色素を併用する場合には、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物の優れた特性を十分に発揮させる観点から、全色素の合計に対する本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物が占める比率を、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上とすることが好ましい。
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物と併用可能な他系統の色素としては、記録用のレーザー光波長域に吸収を有し、照射されたレーザー光のエネルギーを吸収して、照射部分の記録層、反射層または基板に、分解、蒸発、溶解等の熱的変形を伴うピットを形成させるものが好ましい。また、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。また、上記CD−R用或いはDVD−R用の色素の中で耐光性が良好なものを選び、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物と併用することにより、耐光性を更に向上させることが可能となる。
併用し得る他系統の色素としては、具体的には、含金属アゾ系色素、ベンゾフェノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、含金属インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
なお、これら他系統の色素のうち、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を併用して、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。
[II.光学記録媒体]
[II−1.記録層]
本発明の光学記録媒体が有する記録層は、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物の少なくとも1種を含有する本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素(単に「本発明の色素」と称す場合がある。)を用いて形成されたものである。
即ち、本発明の光学記録媒体の記録層は、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物の1種または2種以上を含有するものである。
記録層に占める本発明の色素の割合は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
色素の割合が少なすぎると、記録感度が著しく低下するので好ましくない。本発明の色素として2種類以上の色素を併用する場合には、その合計が上記範囲を満たすようにする。また、後述のバインダーや各種の添加剤を用いる場合には、形成された記録層に占める本発明の色素の割合が上記の範囲内となるように、バインダーや添加剤の使用量を調整することが好ましい。なお、本発明の色素の優れた特性を十分に発揮させる観点から、本発明に係る記録層には、バインダーや添加剤が使用されないことが特に好ましい。
記録層は成膜性を向上させるためにバインダーを含有していても良い。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン系樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等既知のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いられる。
記録層に占めるバインダーの割合が高すぎると記録感度が著しく低下するので、バインダー、更には後述の各種添加剤を用いる場合、形成された記録層に占める本発明の色素の割合が、上記の範囲となるような量を用いる。
また、記録層は、安定性や耐光性向上のための一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤などを含有していても良い。
一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
記録感度向上剤としては、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれる金属系化合物等が挙げられ、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体のような有機金属化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。金属原子の種類は特に限定されないが、遷移金属が好ましい。
更に必要に応じてレベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。
なお、一重項酸素クエンチャーは色素に対して通常5〜30重量%程度、記録感度向上剤は色素に対して通常10〜30重量%程度用いられる。
2種以上の一重項酸素クエンチャーを併用する場合や、2種以上の記録感度向上剤を併用する場合には、各々、その合計が上記範囲を満たすようにする。
前述の本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を含む本発明の色素を用いて光学記録媒体の記録層を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の一般に行われている薄膜形成法を用いることができる。
これらのうち、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましい。
スピンコート法により記録層を成膜する場合、回転数は500〜5000rpmが好ましく、スピンコート後、必要に応じて、加熱または溶媒蒸気にさらす等の処理を行ってもよい。
また、均一な厚みの記録層が得られるという観点からは、塗布法よりも真空蒸着法等の方が好ましい。
スピンコート法により記録層を成膜する場合、回転数は500〜5000rpmが好ましく、スピンコート後、必要に応じて、加熱または溶媒蒸気にさらす等の処理を行っても良い。
記録層の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、通常少なくとも1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。記録層の膜厚がこの下限値より大きい場合は、記録に必要な光吸収量を確保することができ、良好な感度で記録がしやすい。また、記録信号に歪みが発生しにくいため、所望の大きさの品質良好なマークを形成しやすい。記録層の膜厚が前記の上限値より小さい場合は、再生に必要な反射光量を確保することが容易となり、その結果として良好な再生信号を得ることができる。
記録層をドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により形成する場合には、まず、本発明の色素、バインダー、一重項酸素クエンチャー、記録感度向上剤および他の色素等を溶媒に溶解させ、塗布液を作成する。
溶媒としては、TFPを用いることが工業面で特に好ましいが、基板を侵さない溶媒であればTFPに限定されるものではなく、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソル
ブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(OFP)、ヘキサフルオロブタノール等のフッ素系アルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル系溶媒等を用いることもできる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良いが、工業面からは1種を単独で用いることが好ましい。
塗布液中の本発明の色素の濃度は、その溶媒溶解性に応じて適宜決定されるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上で、通常10重量%以下、好ましくは3.0重量%以下とされる。塗布液中の色素濃度が過度に低いと、記録層の形成効率が悪くなる。塗布液中の色素濃度が過度に高いと成膜工程において、色素の結晶化等の問題が発生する可能性が高くなる。
真空蒸着法を用いる場合には、例えば、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物と、必要に応じて他の色素や各種添加剤等の記録層成分とを、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、この真空容器内を適当な真空ポンプで10−2〜10−5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることによって、記録層を形成する。
[II−2.光学記録媒体の層構成]
本発明の光学記録媒体は、基板上に、本発明の記録層形成用色素を用いて上述のようにして形成された記録層を有するものである。
以下、本発明の光学記録媒体について、実施形態を挙げて具体的に説明するが、以下の実施形態はあくまでも説明のために挙げるものであって、本発明は以下の実施形態に制限されず、本発明の趣旨に反しない限り自由に変形して実施することが可能である。
なお、本発明の光学記録媒体は、基板上に、本発明の記録層形成用色素を用いて上述のようにして形成された記録層を有するものである。
図1(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の層構成の一例を示す模式的断面図である。
まず、本発明の第1実施形態について図1(a)を参照して説明する。
図1に示される光学記録媒体10は、光透過性材料からなる基板1と、基板1上に設けられた記録層2と、記録層2上に積層された反射層3および保護層4とが順番に積層された構造を有している。この光学記録媒体10は、基板1側から照射されるレーザー光Lにより、情報の記録・再生が行われる。
基板1の材料としては、基本的に記録光および再生光の波長において透明な材料であれば、様々な材料を使用することができる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの非晶質ポリオレフィン)、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリイミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂;ガラス等が挙げられる。また、ガラス上に光硬化性樹脂等の放射線硬化性樹脂からなる樹脂層を設けた構造の基板を用いることもできる。中でも、高生産性、コスト、耐吸湿性等の観点からは、射出成型法にて使用されるポリカーボネート樹脂が、耐薬品性および耐吸湿性等の観点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。更に、高速応答等の観点からは、ガラスが好ましい。
通常、基板上には、必要に応じて更に、反射層、保護層、下引き層などの記録層以外の層が設けられ、光学記録媒体として使用される。
樹脂製の基板1を使用した場合、または、記録層と接する側(上側)に樹脂層を設けた基板1を使用した場合には、上面に、記録再生光の案内溝やピットを形成しても良い。案内溝の形状としては、光学記録媒体10の中心を基準とした同心円状の形状やスパイラル状の形状が挙げられる。基板上に同心円状あるいはスパイラル状の案内溝(溝部)を形成する場合には、溝ピッチが0.2〜1.2μm程度であることが好ましい。
また、溝幅Wが、100nm<W<400nm、かつ、溝深dが、20nm<d<200nmであることが好ましい。
この溝部の溝幅が0.2μm(200nm)未満では、記録に必要な量の色素を溝内に溜めることができず記録特性が低下したり、あるいは狭い溝幅のため、サーボを掛けるために必要な大きさの溝信号を検出できなかったりするため、好ましくない。一方0.4μm(400nm)を超えると、溝幅は集光スポットと同等あるいはそれ以上となり、原理上も実験上も溝信号を検出することができなくなるため好ましくない。
さらに溝幅を必要以上に広くすることは、記録密度の観点からも不利になるため好ましくない。
また、溝深さdが、20nm未満では、溝幅が狭い場合と同様に記録に必要な量の色素を溝内に溜めることができず、記録特性が低下したり、あるいは狭い溝幅のため、サーボを掛けるために必要な大きさの溝信号を検出できなかったりするため、好ましくない。dが200nmを超えると、溝形状のアスペクト比が高くなるため、溝を形成すること自体が困難であったり、溝内の色素量が必要以上に多くなり、その結果、反射光量が小さくなりすぎて、サーボを掛けることが難しくなるため好ましくない。
好ましくは、溝幅Wは225nm〜375nm、溝深dは、25nm〜150nmである。
反射層3は、記録層2の上に形成されている。反射層3の膜厚は、好ましくは50nm〜300nmである。反射層3の材料としては、再生光の波長において十分高い反射率を有する材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を、単独或いは合金にして用いることができる。これらの中でもAu、Al、Agは反射率が高く、反射層3の材料として適している。また、これらの金属を主成分とした上で、加えて他の材料を含有させても良い。ここで「主成分」とは、含有率が50重量%以上のものをいう。主成分以外の他の材料としては、例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ta、Ti、Pt、Pd、Nd等の金属および半金属を挙げることができる。中でもAgを主成分とするものは、コストが安い点、高反射率が出やすい点、後述する印刷受容層を設けた場合に地色が白く美しいものが得られる点等から、特に好ましい。例えば、AgにAu、Pd、Pt、Cu、およびNdから選ばれる1種以上を0.1原子%〜5原子%程度含有させた合金は、高反射率、高耐久性、高感度且つ低コストであり好ましい。具体的には、AgPdCu合金、AgCuAu合金、AgCuAuNd合金、AgCuNd合金等である。金属以外の材料としては、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、これを反射層3として用いることも可能である。
反射層3を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、基板1の上や反射層3の下に、反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために、公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
反射層3の上に形成する保護層4の材料は、反射層3を外力から保護するものであれば特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV(紫外線)硬化性樹脂等の有機物質、SiO、SiN、MgF、SnO等の無機物質などが挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等は適当な溶媒に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
UV硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶媒に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いても良いし、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
保護層4の形成の方法としては、記録層2と同様に、スピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。保護層4の膜厚は、その保護機能を果たすためにはある程度の厚みが必要とされるため、通常0.1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。但し、あまり厚すぎると、効果が変わらないだけでなく保護層4の形成に時間がかかったりコストが高くなる恐れがあるので、通常100μm以下であり、好ましくは30μm以下の範囲である。
なお、各層間の接着力を高めるために、各層間に下引き層を用いても良い。下引き層の種類としては、各層の接着力を高め、かつ各層の性質に影響を与えないものであれば特に限定されないが、取扱いの容易さから有機層であることが好ましい。
また、上記構成の光学記録媒体10を接着層を介して2枚貼りあわせても良い。例えば、上例の層構造における保護層4の上面に、または上例の層構造から保護層4を省略して反射層3の上面に、更に別の基板1を貼り合わせても良い。この際の基板1は、何ら層を設けていない基板そのものであっても良く、貼り合わせ面またはその反対面に反射層3等任意の層を有するものでも良い。また、同じく上例の層構造を有する光学記録媒体10や、上例の層構造から保護層4を省略した光学記録媒体を、それぞれの保護層4および/または反射層3の上面を相互に対向させて2枚貼り合わせても良い。このようなものとして、後述の2層型光学記録媒体がある。
或いは、基板の片面だけでなく両面に反射層、記録層、保護層等を設けることにより、両面記録型光学記録媒体としても良い。
更には、基板上に反射層および記録層の組を、中間層を介して二組以上形成し、その上に保護層を設けることにより、多層型光記録媒体としても良い。
次に、図1(b)を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図1(b)中、図1(a)と共通する要素については同じ符号を付し、説明を省略する。図1(b)に示される光学記録媒体20は、光透過性材料からなる基板1と、基板1上に設けられた反射層3と、反射層3上に積層された記録層2および保護被膜5とが順番に積層された構造を有している。記録層2と保護皮膜5の間には、金属あるいはセラミック等による記録層と保護層の混濁を避けるバリヤー層を保有しても良い。光学記録媒体20は、保護被膜5側から照射されるレーザー光Lにより、情報の記録・再生が行われる。
保護被膜5は、フィルムまたはシート状のものを接着剤によって貼り合わせても良く、また、前述の保護層4と同様の材料を用い、成膜用の塗液を塗布し硬化または乾燥することにより形成しても良い。保護被膜5の厚さは、その保護機能を果たすためにはある程度の厚さが必要とされるため、一般に0.1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。但し、あまり厚すぎると、効果が変わらないだけでなく、保護被膜5の形成に時間がかかったり、コストが高くなるおそれがあるので、通常300μm以下であり、好ましくは
200μm以下である。
尚、記録層2および反射層3等の各層は、通常は図1(a)に示す第1実施形態の光学記録媒体10と同様のものが用い得る。但し、第2実施形態においては、基板1は透明である必要はなく、従って、前述の材料以外にも、不透明な樹脂、セラミック、金属(合金を含む)等が用いられる。このような層構成においても、上記各層間には、本発明の特性を損なわない限り、必要に応じて任意の層を有して良い。
ところで、光学記録媒体10,20の記録密度を上げるための一つの手段として、対物レンズの開口数を上げることがある。これにより情報記録面に集光される光スポットを微小化できる。しかしながら、対物レンズの開口数を上げると、記録・再生を行うためにレーザー光を照射した際に、光学記録媒体10,20の反り等に起因する光スポットの収差が大きくなりやすいため、良好な記録再生信号が安定して得られない場合がある。
このような収差は、レーザー光が透過する透明基板や保護被膜の膜厚が厚いほど大きくなりやすいので、収差を小さくするためには基板や保護被膜をできるだけ薄くするのが好ましい。ただし、通常、基板1は光学記録媒体10,20の強度を確保するためにある程度の厚みを要するので、この場合、第2実施形態の光学記録媒体20の構造(基板1、反射層3、記録層2、保護被膜5なる基本的層構成の光学記録媒体20)を採用するのが好ましい。第1実施形態の光学記録媒体10の基板1を薄くするのに比べると、第2実施形態の光学記録媒体20の保護被膜5は薄くしやすいため、好ましくは第2実施形態の光学記録媒体20を用いる。
但し、第1実施形態の光学記録媒体10の構造(基板1、記録層2、反射層3、保護層4からなる基本的層構成の光学記録媒体10)であっても、記録・再生用レーザー光が通過する透明な基板1の厚さを50〜300μm程度にまで薄くすることにより、収差を小さくして使用できるようになる。
また、他の各層の形成後に、記録・再生レーザー光の入射面(通常は、基板1の下面)に、表面の保護やゴミ等の付着防止の目的で、紫外線硬化樹脂層や無機系薄膜等を成膜形成しても良く、記録・再生レーザー光の入射面ではない面(通常は、反射層3や保護層4の上面)に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、或いは各種筆記具を用いて記入や印刷が可能な印刷受容層を設けても良い。
[II−3.多層記録媒体について]
次に、本発明の第3実施形態として、複数の記録層を有する光記録媒体およびその製造方法について図2(a)〜(f)を参照して説明する。
図2(a)〜(f)は、本発明の第3実施形態に係る2層型光記録媒体の製造方法を説明する模式的断面図である。
先ず、図2(a)に示すように、表面に溝およびランド、プリピットが形成された第1の基板201を、スタンパを用いた射出成形法等により作製する。次に、少なくとも有機色素を溶媒に溶解させた塗布液を第1の基板201の凹凸を有する側の表面にスピンコート等により塗布し、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱(アニール)して第1の記録層202を成膜する。第1の記録層202を成膜した後、Ag合金等をスパッタまたは蒸着することにより、第1の記録層202上に、スパッタ法等により半透明な第1の反射層203を成膜する。
続いて、図2(b)に示すように、第1の反射層203の表面全体に紫外線硬化性樹脂層204aをスピンコート等により塗布して形成し、さらに、図2(c)に示すように、
紫外線硬化性樹脂層204aをスピンコート等により塗布した後、樹脂スタンパ210を載置し、紫外線硬化性樹脂層204aに凹凸を転写する。このとき、紫外線硬化性樹脂層204aの膜厚が所定範囲になるように調節しつつ行なう。そして、この状態で樹脂スタンパ210側から紫外線を照射する等して紫外線硬化性樹脂層204aを硬化させ、十分硬化したところで樹脂スタンパ210を剥離し、表面に凹凸を有する中間層204を形成する。
尚、樹脂スタンパ210は、中間層204となるべき樹脂に対して十分な剥離性を有していれば良く、成形性が良く、形状安定性が良いことが望ましい。生産性およびコストの観点から、望ましくは、樹脂スタンパ210は複数回の転写に使用可能であるのが望ましい。また、使用後のリサイクルが可能であることが望ましい。また、樹脂スタンパ210の材料としては、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点から非晶質ポリオレフィンが好ましい。
続いて、図2(d)に示すように、有機色素を溶媒に溶解させた塗布液をスピンコート等により中間層204表面に塗布し、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱(アニール)して第2の記録層205を成膜する。
そして、図2(e)に示すように、Ag合金等をスパッタ、蒸着することにより第2の記録層205上に第2の反射層206を成膜する。その後、図2(f)に示すように、ポリカーボネートを射出成形して得られた第2の基板208としての鏡面基板を、接着層207を介して第2の反射層206に貼り合わせて光記録媒体の製造が完了する。
以上、本発明の第3実施形態に係る光記録媒体100およびその製造方法について説明したが、本実施の形態は上記の態様に限定されるものではなく、種々変形することができる。
例えば、光記録媒体が3つ以上の複数の記録層を有していても良い。また、各層間や最外層として必要に応じて他の層を設けても良い。基板入射型光ディスクに限られず、少なくとも基板/反射層/第2の記録層/バッファー層/中間層/半透明反射膜/第1の記録層/保護層からなる積層構造を有し、保護層側(即ち、膜面側)からレーザ光を照射して情報の記録・再生を行なう膜面入射型光ディスクにおいても適用できる。
多層媒体に用いられる色素として好適な要件としては、単層媒体に用いられる色素よりも記録感度が良いことが挙げられる。なぜならば各層に情報を記録する際に、記録する目的以外の層にも光が吸収、透過する現象が必ず生じるためである。この意味でも、本願のヒドラジドキレート錯体色素は従来と比較して良好な記録感度を持つことから、より好ましいと考えられる。
[III.光学記録媒体の記録方法]
[III−1.レーザー光]
上述のようにして得られた光学記録媒体への情報の記録は、通常、記録層に0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行う。記録層がレーザー光のエネルギーを吸収すると、レーザー光照射部分では、分解、発熱、溶融等の熱的変形が起こり、光学的特性が変化することで、情報が記録される。
一方、記録層に記録された情報の再生を行なう際には、同じく記録層に対して(通常は、記録時と同じ方向から)、よりエネルギーの低いレーザー光を照射する。記録層において、光学的特性の変化が起きた部分(すなわち、情報が記録された部分)の反射率と、変化が起きていない部分の反射率との差を読み取ることにより、情報の再生が行なわれる。
高密度記録のためには、記録時に使用するレーザー光の波長は短いほど好ましく、特に、本発明の光学記録媒体は、その記録層に上述した本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を含有する利点を十分に発揮させる観点から、波長350nm〜530nm、好ましくは380nm〜500nm、中でも400nm〜500nmのレーザー光が好ましい(以下、このようなレーザー光を用いる記録方法を適宜「本発明の光学記録媒体の記録方法」或いは単に「本発明の記録方法」という。)。
かかるレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nmなどの青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光が挙げられる。これら以外にも(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー光、または(b)半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザー光のいずれかを、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光なども挙げられる。
上記のSHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでも良いが、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、BNN(BaNaNb15)、KN(KNbO)、LBO(LiB)、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合は、その倍波の波長430nm、また半導体レーザー励起の固体レーザーの場合は、CrドープしたLiSrAlF6結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の波長430nmなどが挙げられる。
これらのうち、中心波長405nmの青色レーザー光を使用することが特に好ましい。
光学記録媒体が有する吸収波長および吸光度のうち、本発明のヒドラジドキレート錯体化合物のアセトニトリル中での吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が380〜500nmであり、該λmaxにおけるOD係数が通常30以上、好ましくは35以上、特に好ましくは40以上であることが、膜厚の制御およびレーザーへの高感度化の面で好ましい。
[III−2.記録感度]
本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物は、記録レーザー感度に優れる。
具体的には、本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物を用いて、図1(a)または(b)に記載の光学記録媒体を作成した後にレーザー波長405nm、NA=0.65のテスター(パルステック社製ODU−1000)を用い、線速度13.22m/s(2X記録速度。従来の低速記録速度である1Xは6.61m/s)、最短マーク長204nmでランダムパターンを記録後、同テスターで再生時にDVDフォーラムにより定められたHD DVD−R規格Ver1.0におけるPRSNR(Partial Response SNR)およびSbER(ビットエラー率)の値が規格値である15以上および5.0×10−5以内を満たし、かつ記録最適パワーが通常14mW以下、好ましくは12mW以下、特に好ましくは10.0mW以下である。
特に、本発明の光学記録媒体は、PRSNRに優れ、通常35以上、好ましくは40以上、特に好ましくは45以上を達成することができる。また、同時に耐光性も保つことができる。
本光学記録媒体の具体的な作成方法やテスターによる具体的な評価方法については後述する。
[III−3.記録部の反射率]
本発明の光学記録媒体の記録方法においては、記録を行うレーザーの光波長において、記録部の反射率が、記録前、および未記録部分の反射率よりも高くなることを特徴とする。記録部の反射率が、未記録部の反射率よりも高くするためには、塗布色素が記録レーザー波長において一定量以上の吸収を持つことが必要条件であり、さらに色素の吸収ピークが最大になる波長よりも短波長側に記録レーザー波長があることが好ましい。
また、実施例等に別途記載されている溝形状を持つことが好ましい。このような形態であれば、従来と異なる記録メカニズムであるLow to High記録によって高密度の光情報の記録、再生が可能となる。
[IV.ヒドラジドキレート錯体化合物]
本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、下記一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有することを特徴とする。
Figure 2010194870
(一般式(4)中、R41およびR42は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R43は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar41〜Ar43は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
[IV−1.ヒドラジドリガンド]
まず、本発明のヒドラジドキレート錯体化合物を構成する、上記一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドについて説明する。
[IV−1−1.Ar41〜Ar42
一般式(4)において、環Ar41〜Ar42はそれぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。
その芳香環の骨格構造の具体例としては、5員環単環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環としてベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、縮合環としてナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。
<Ar41
Ar41は、シッフ塩基と隣接したアミド基(−C=N−NH−C(O=)−骨格)とAr42とを共役系で連結する連結基としての機能を有するものであり、その具体例としては、上記骨格構造を有する2価の芳香環基であるが、これらのうち、Ar42の骨格構造は、記録特性向上の観点から分子量を大きくしないために、5員環単環、6員環単環、これらの2環縮合環程度が好ましい。更に、合成面の容易さから5員環単環が好ましく、また、吸収量を維持する点から窒素、酸素、硫黄を一つ以上含有する複素環が好ましい。中でも、Ar41は、5員環単環の芳香族複素環由来の基が好ましく、特にピラゾール環由来の基が好ましい。
<Ar42
Ar42は、好ましくは、信号特性を向上させる適度な分解性を有する基であり、その具体例としては、上記骨格構造を有する1価の芳香環基であるが、例えば、アミド基を有する芳香族炭化水素基や置換基を有していても良い芳香族複素環基が好ましく、中でも、Ar42は化合物安定性の面から、置換基として置換基を有していても良いカルバモイル基を有する6員環単環由来の基もしくはヘテロアリール縮合環由来の基であることが好ましい。
<置換基>
Ar41〜Ar42の芳香環基が有していても良い置換基としては、前述の一般式(1)におけるAr〜Arの芳香環基が有していても良い置換基として例示したものが挙げられる。
なお、Ar41〜Ar42が2つ以上の置換基を有する場合、これらは同一であっても異なるものであっても良く、また、該置換基同士が結合して環状構造をなしていても良い。例えば、Ar42がベンゼン環由来の基である場合、該ベンゼン環が有する置換基同士が結合してヘテロ原子を含んでいても良い環状構造を形成している例として以下に示す構造が挙げられる(以下において、※がAr41との結合手である。)。
Figure 2010194870
なお、Ar41〜Ar42は、これらの置換基を有している方が記録層を形成する際に用いる溶媒に対する色素の溶解性が向上するので好ましい。一方、これらの置換基を有していない方が合成コスト面で好ましい。
[IV−1−2.R41〜R42
一般式(4)において、R41〜R42はそれぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表す。
置換基を有していても良い芳香環基の具体例はとしてはAr41〜Ar42の具体例として記載されたものが挙げられ、炭素数20以下の1価の非芳香環置換基の具体例としてはAr41〜Ar42が有していても良い置換基として記載されたもの、即ち、前述の一般式(1)におけるAr〜Arが有していても良い置換基として記載されたもの、のうち、芳香環基を除くものが挙げられる。
41は合成上および記録特性の観点からアルキル基であることが好ましく、特に炭素数1〜10、中でも炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。また、R42としては、炭素数1〜10、中でも炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
[IV−1−3.R43
一般式(4)において、R43は、水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基である。R43の置換基を有していても良い芳香環基の具体例はとしてはAr41〜Ar42の具体例として記載されたものが挙げられ、炭素数20以下の1価の非芳香環置換基の具体例としてはAr41〜Ar42が有していても良い置換基として記載されたものの、即ち、前述の一般式(1)におけるAr〜Arが有していても良い置換基として記載されたもの、即ち、前述の一般式(1)におけるAr〜Arが有していても良い置換基として記載されたもの、のうち、芳香環基を除くものが挙げられる。
23は、塗布溶媒への溶解性向上の理由から、水素原子もしくは電子供与性置換基であることが好ましく、水素原子もしくは置換されていても良い炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルコキシ基であることが特に好ましい。
[IV−1−4.Ar43
一般式(4)において、Ar43は、置換基を有していても良い芳香環基であり、その具体例としては、Ar41〜Ar42の具体例として記載されたものが挙げられる。
Ar43は安定性向上の面で置換基を有していても良いフェニル基であることが好ましい。
一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドのうち特に好ましいものは、Ar42もしくはAr43の少なくともいずれか一方に、置換基として置換されていても良いカルバモイル基を有する。置換されていても良いカルバモイル基を有することにより、塗布性が向上し信号特性の面で優れる。
この置換されていても良いカルバモイル基の具体例としては、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基などが挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチル−N−シクロヘキシルカルバモイル基などの炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10のものが挙げられるが、耐候性向上の観点から以下の一般式(5)で表される構造であることが特に好ましい。
Figure 2010194870
(一般式(5)中、R51はそれぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar51はそれぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
上記R51の具体例としては、一般式(4)におけるR41の具体例が挙げられ、Ar51の具体例としては一般式(4)におけるAr41〜Ar42の具体例が挙げられる。
これらのうち、記録特性向上の点からR51はアルキル基、特に、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、Ar51は置換されていても良いフェニル基であることが好ましい。Ar51のフェニル基が置換基を有する場合、その置換基としては、炭素数1〜5程度のアルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。中でも塗布溶媒への溶解性の点でメトキシ基が好ましい。
[IV−2.キレート錯体化合物]
前記一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有する本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、より具体的には以下の一般式(6)で表される。
Figure 2010194870
(一般式(6)中、R41〜R43およびAr41〜Ar43は、前記一般式(4)におけると同義であり、Mは遷移金属を表し、aは遷移金属カチオンの価数を表し、bはa以下の自然数を表す。なお、上記分子は更にカウンターイオンを有していても良い。)
[IV−2−1.R41〜R43、Ar41〜Ar43
一般式(6)において、R41〜R43、Ar41〜Ar43は、前記一般式(4)におけると同義である。
[IV−2−2.M]
一般式(6)において、Mは遷移金属を表す。その具体例としては、一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドと金属錯体を形成し得るものであれば何でも良いが、具体例としてはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Pt,Au等が挙げられる。中でも、経済面から周期表第4周期金属であることが好ましく、耐光性向上の面からCo、Ni、Cuが好ましく、特に、Coであることが特に好ましい。
なお、遷移金属カチオンは一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドの他に溶媒や他のキレートと追加的に配位しても良い。
配位し得る溶媒としては、アルコール性溶媒、ケトン系溶媒あるいはアミノ系溶媒など金属のアキシアル位あるいは別の位置から配位可能なものが挙げられる。
また、他のキレートとしては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジンあるいはピラジンなどの配位性原子を有する配位子が挙げられる。
[IV−2−3.a]
aは遷移金属カチオンの価数を表す。aは1もしくは3以上でも良いが、2であることが好ましい。
[IV−2−4.b]
bはa以下の自然数を表す。bはaと同一であることが好ましい。
[IV−2−5.カウンターイオン]
本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、該化合物が分子全体として電気的に中性となるように、カウンターイオンを適宜有していても良い。この場合、有していても良いカウンターアニオンとしては、具体的には、BF 、ClO 、PF 、ハロゲンイオン、水酸化物イオン、酢酸イオンなどが挙げられ、カウンターカチオンとしては、周期表第1A族カチオンなど、特に1価のカチオンが挙げられる。
[IV−2−6.分子量、その他]
本発明のヒドラジドキレート錯体化合物の分子量は、遷移金属カチオンとヒドラジドリガンド(アニオン)を合計して通常2,000以下、中でも1,500以下であることが好ましい。
本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、記録媒体の保存安定性を向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。
ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であることを言う。
本発明のヒドラジドキレート錯体化合物の具体例は、前述の本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物の具体例として例示したもののうち、ヒドラジドリガンドが前記一般式(4)で表されるものが該当する。また、その光吸収特性、合成法、耐光性、塗布溶媒への溶解性、膜性、用途等においても、前述の本発明に係るヒドラジドキレート錯体化合物と同様であり、本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、特に光学記録媒体の記録層形成用色素として工業的に有用である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜84、比較例1〜3]
例示化合物C−1Co〜C−84Co(実施例1〜84)について、アセトニトリル中の吸収極大(λmax)と、アセトニトリル中に1g/Lの濃度で当該化合物を溶解させたときのλmaxにおける吸光度(OD係数)を測定し、結果を表2a、表2bに示した。
また、例示化合物C−1Co〜C−84Co(実施例1〜84)および以下の化合物B−1〜B−3(比較例1〜3)について、以下の方法で溶解性試験および耐光性試験を行い、結果を表2a,表2bに示した。
なお、表2a〜2b中の化合物No.は、前記表1a〜1bに記載のヒドラジドキレート錯体化合物の具体例の化合物No.に対応する。
これらの例示化合物のうち、C−1Co,C−58Co,C−34Co,C−38Coの合成方法については後述するが、その他の化合物についても同様に合成を行った。
<比較例1>
特表2005−515914号公報に記載の下記化合物(B−1)
Figure 2010194870
<比較例2>
国際公開2004−102551号公報に記載の下記化合物(B−2)
Figure 2010194870
<比較例3>
国際公開2006−03554号公報に記載の下記サレン錯体化合物(B−3)
Figure 2010194870
<溶解性試験>
塗布溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールを用い、試料化合物の濃度を1.0重量%として、20℃、常圧にて30分間超音波処理した後、濾紙(東洋濾紙社製定量濾紙「No.5C」)上に滴下し、室温で24時間乾燥させ、未溶解成分の結晶残渣が濾紙上に存在するか否かを目視観察した。
判断基準は以下の通りである。
○:未溶解残渣が観察されない
×:未溶解残渣が多い
<耐光性試験>
試料化合物を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに濃度1.0重量%で溶解させ、濾過によって微細なゴミを取り除いた後、得られた溶液を、直径120mm、厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に滴下し、スピンコート法(4900rpm)により塗布し、80℃で30分間乾燥させることにより、膜厚約50nmの塗布膜を作製した。この塗布膜に対して、温度58℃、湿度50%の条件下で、0.55W/mの照射強度でキセノンランプを40時間照射した後、吸収極大波長における照射前後の吸光度に基づいて色素残存率を求めた。
表2a〜2bより、本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、いずれもλmaxが350nm〜530nm、中でも好ましいものは380nm〜500nm、特に好ましいものは400nm〜500nmの範囲にあり、高密度記録のために望ましい、波長350nm〜530nmの青色レーザー光での記録に用いることが可能であることが分かる。
また、表2a,表2bに示されるように、化合物(B−2),(B−1)は、塗布溶媒に対する溶解性が悪く、不溶分が多いため、成膜することができなかった。化合物(B−1)は、塗布溶媒には溶解したが、耐光性が悪く、色素残存率は10%未満であった。これに対して、本発明のヒドラジドキレート錯体化合物は、塗布溶媒に極めて高い溶解性を有し、また、耐光性にも優れるものであった。
Figure 2010194870
Figure 2010194870
[実施例58]
<リガンド(L−58)の合成>
Figure 2010194870
アルデヒド誘導体(I)(1.0g)とヒドラジド誘導体(II)(0.60g)を、酢酸(0.3ml)およびメタノール(30ml)中で8時間加熱撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧条件下で留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成することで目的化合物(L−58)(0.83g、収率57%)を得た。
<例示化合物C−58Coの合成>
化合物(L−58)(0.83g)のメタノール(25ml)溶液に、トリエチルアミン(0.24ml)および酢酸コバルト四水和物(0.22g)を加え、50℃で1時間加熱撹拌した。得られた混合物から溶媒を留去し、メタノールで精製することで、下記の目的化合物(C−58Co)の暗黄色固体(0.70g、収率80%)を得た。
λmax(CHCN):421nm
λmaxでのOD:57
Figure 2010194870
得られた化合物(C−58Co)について、塗布溶媒に対する溶解性を、<溶解性試験>に示した方法で試験した結果、完全に溶解していることが確認された(実施例58として表2bに記載)。
<記録媒体の作製>
厚さ0.6mm、トラックピッチ0.4μm、溝幅260nm、溝深さ60nmのポリカーボネート製の基板上に、上述の化合物C−58CoをTFP(2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール)に対し1.0重量%の濃度となるように混合した溶液をスピンコート法で塗布し、70℃で25分乾燥させることにより、記録層を設けた。なお、空気をリファレンスとして測定した、この記録層の波長470nmでの吸光度は0.28であった。その後、この記録層の上に、スパッタリングにより厚さ120nmのAgBi0.2Nd0.5反射膜を設けた。更に、この反射層の上に、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル社製SK7100)を用いて、0.6mm厚のポリカーボネート製の裏板を接着して、光学記録媒体を作製した(実施例58の光学記録媒体)。
得られた実施例58の光学記録媒体に対し、以下に示す方法で光学記録媒体の特性評価を行ったところ、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは9.0mWであった。この時の光学記録媒体のPRSNRは41.5と、規格の15を大幅に上回る結果であった。また、SbER(ビットエラー率)は、1.1×10−11と規格の5.0×10−5以内で良好な結果であった。
<光学記録媒体としての特性評価>
レーザー波長405nm、NA(開口数)0.65のテスター(パルステック社製ODU−1000)を用い、線速度13.22m/s、最短マーク長204nmでランダムパターン記録を行なった。記録および再生は、DVDフォーラムにより定められたHD DVD−R規格Ver1.0に準拠した方式で、同規格にあるPRSNR(Partial Response SNR)の評価を行なった。
[実施例1]
<リガンド(L−1)の合成>
Figure 2010194870
アルデヒド誘導体(III)(0.85g)とヒドラジド誘導体(IV)(0.47g)を用いた以外は実施例58のヒドラジドリガンド(L−58)の合成と同様にして目的化合物(L−1)(0.92g、収率73%)を得た。
<例示化合物(C−1Co)の合成>
化合物(L−1)(0.90g)のメタノール(25ml)溶液、トリエチルアミン(0.23ml)および酢酸コバルト四水和物(0.20g)を用い、実施例58の例示化合物(C−58Co)の合成と同様にして下記の目的化合物(C−1Co)の暗黄色固体(0.90g、収率96%)を得た。
λmax(CHCN):428nm
λmaxでのOD:60
Figure 2010194870
得られた化合物(C−1Co)について、塗布溶媒に対する溶解性を、<溶解性試験>に示した方法で試験した結果、完全に溶解していることが確認された(実施例1として表2aに記載)。
次いで、色素として上述の例示化合物C−1Coを使用した以外は、実施例58と同様の条件で光学記録媒体を作製し(実施例1の光学記録媒体)、同様の条件で評価を行なった。
この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは8.5mWであった。この時の光学記録媒体のPRSNRは45.0と、規格の15を大幅に上回る結果であった。またSbERは、1.3×10−12と規格の5.0×10−5以内で良好な結果であった。
[実施例34]
<リガンド(L−34)の合成>
Figure 2010194870
アルデヒド誘導体(V)(1.1g)とヒドラジド誘導体(VI)(0.69g)を用いた以外は実施例58のヒドラジドリガンド(L−58)の合成と同様にして目的化合物(L−34)(1.4g、収率82%)を得た。
<例示化合物(C−34Co)の合成>
化合物(L−34)(1.4g)のメタノール(25ml)溶液、トリエチルアミン(0.34ml)および酢酸コバルト四水和物(0.30g)を用い、実施例58の例示化合物(C−58Co)の合成と同様にして下記の目的化合物(C−34Co)の暗黄色固体(1.29g、収率88%)を得た。
λmax(CHCN):428nm
λmaxでのOD:61
Figure 2010194870
得られた化合物(C−34Co)について、塗布溶媒に対する溶解性を、<溶解性試験>に示した方法で試験した結果、完全に溶解していることが確認された(実施例34として表2aに記載)。
次いで、色素として上述の例示化合物C−34Coを使用した以外は、実施例58と同様の条件で光学記録媒体を作製し(実施例34の光学記録媒体)、同様の条件で評価を行なった。
この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは9.5mWであった。この時の光学記録媒体のPRSNRは49.8と、規格の15を大幅に上回る結果であった。またSbERは、5.8×10−14と規格の5.0×10−5以内で良好な結果であった。
[実施例38]
<リガンド(L−38)の合成>
Figure 2010194870
アルデヒド誘導体(VII)(0.62g)とヒドラジド誘導体(VIII)(0.58g)を用いた以外は実施例58のヒドラジドリガンド(L−58)の合成と同様にして目的化合物(L−38)(0.72g、収率73%)を得た。
<例示化合物(C−38Co)の合成>
化合物(L−38)(0.72g)のメタノール(25ml)溶液、トリエチルアミン(0.18ml)および酢酸コバルト四水和物(0.16g)を用い、実施例58の例示化合物(C−58Co)の合成と同様にして下記の目的化合物(C−38Co)の暗黄色固体(0.53g、収率73%)を得た。
λmax(CHCN):426nm
λmaxでのOD:67
Figure 2010194870
得られた化合物(C−38Co)について、塗布溶媒に対する溶解性を、実施例58に示した方法で試験した結果、完全に溶解していることが確認された(実施例38として表2aに記載)。
次いで、色素として上述の例示化合物C−38Coを使用した以外は、実施例58と同様の条件で光学記録媒体を作製し(実施例38の光学記録媒体)、同様の条件で評価を行なった。
この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは9.0mWであった。この時の光学記録媒体のPRSNRは50.0と、規格の15を大幅に上回る結果であった。またSbERは、1.7×10−13と規格の5.0×10−5以内で良好な結果であった。
[比較例4]
<リガンド(L−X)の合成>
Figure 2010194870
アルデヒド誘導体(I)(1.7g)とヒドラジド誘導体(X)(1.0g)を用いた以外は実施例58のヒドラジドリガンド(L−58)の合成と同様にして目的化合物(L−X)(2.1g、収率81%)を得た。
<例示化合物(C−XCo)の合成>
化合物(L−X)(1.0g)のメタノール(25ml)溶液、トリエチルアミン(0.32ml)および酢酸コバルト四水和物(0.27g)を用い、実施例58の例示化合物(C−58Co)の合成と同様にして下記の目的化合物(C−XCo)の暗黄色固体(0.88g、収率83%)を得た。
λmax(CHCN):446nm
λmaxでのOD:64
Figure 2010194870
得られた化合物(C−XCo)について、塗布溶媒に対する溶解性を、<溶解性試験>に示した方法で試験した結果、完全に溶解していることが確認された
次いで、色素として上述の例示化合物C−XCoを使用した以外は、実施例58と同様の条件で光学記録媒体を作製し(比較例4の光学記録媒体)、同様の条件で評価を行なった。
この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは8.5mWであった。この時の光学記録媒体のPRSNRは34.0と、規格の15を上回るものの実施例と比較すると見劣りする結果となった。またSbERは、5.4×10−10と規格の5.0×10−5を超えているものの、実施例と比較すると十分な特性を得られなかった。
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 保護層
5 保護被膜
19,20,100 光学記録媒体
201 第1の基板
202 第1の記録層
203 第1の反射層
204 中間層
204a 紫外線硬化性樹脂層
205 第2の記録層
206 第2の反射層
207 接着層
208 第2の基板

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有するヒドラジドキレート錯体化合物を含むことを特徴とする光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2010194870
    (一般式(1)中、Rは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、nは0または1を表し、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表し、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表し、Xは周期表第14〜16族原子を表す。なお、Xが周期表第14〜15族原子の場合、該Xは更に1価の置換基を有していても良い。)
  2. 前記ヒドラジドキレート錯体化合物が下記一般式(2)で表されるものであることを特徴とする請求項1に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2010194870
    (一般式(2)中、R、R〜R、環A、Ar〜Ar、X、およびnは、前記一般式(1)におけると同義であり、Mは遷移金属を表し、aは遷移金属カチオンの価数を表し、bはa以下の自然数を表す。なお、上記分子は更にカウンターイオンを有していても良い。)
  3. 前記ヒドラジドリガンドが下記一般式(1−1)で表されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2010194870
    (一般式(1−1)中、R11〜R13は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、環Aは置換基を有していても良い芳香環を表し、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
  4. 前記ヒドラジドリガンドが下記一般式(1−2)で表されるものであることを特徴とする請求項3に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2010194870
    (一般式(1−2)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R23は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar21〜Ar23は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
  5. 前記一般式(1−2)において、Ar22およびAr23の少なくともいずれか一方が、置換基として「置換基を有していても良いカルバモイル基」を有する芳香環基であることを特徴とする請求項4に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
  6. Ar22およびAr23の少なくともいずれか一方が置換基として有する「置換基を有していても良いカルバモイル基」の構造が、以下の一般式(3)で表されることを特徴とする請求項5に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
    Figure 2010194870
    (一般式(3)中、R31は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar31は置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
  7. 遷移金属(遷移金属M)がコバルトであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素。
  8. 基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学記録媒体の記録層形成用色素を用いて形成されたものであることを特徴とする光学記録媒体。
  9. 請求項8に記載の光学記録媒体に対し、波長350〜530nmのレーザー光を用いて記録を行なうことを特徴とする光学記録媒体の記録方法。
  10. 記録を行うレーザー光の波長において、記録部の反射率が、記録前、および未記録部の反射率よりも高くなることを特徴とする請求項9に記載の光学記録媒体の記録方法
  11. 下記一般式(4)で表されるヒドラジドリガンドと遷移金属カチオンとを有するヒドラジドキレート錯体化合物。
    Figure 2010194870
    (一般式(4)中、R41およびR42は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、R43は水素原子もしくは置換基を有していても良い芳香環基もしくは炭素数20以下の1価の非芳香環置換基を表し、Ar41〜Ar43は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香環基を表す。)
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