JP2010188378A - フラックス入り溶接ワイヤの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フラックス入り溶接ワイヤの真円度が確保され、前記細径となっても、溶接施工時に巻き戻して繰り出されるワイヤの溶接機への供給性に悪影響を及ぼさず、供給性が良くなる、フラックス入り溶接ワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】帯鋼1、1の長手方向の端部同士を順次突き合せて溶接により接続し、長尺の帯鋼とした素材を用いて細径フラックス入り溶接ワイヤを連続して製造するに際して、鋼板の剪断により発生し、帯鋼1、1の幅方向端部でこの帯鋼1、1の長手方向に亙って延在するかえり2、2の向きを、接続する各帯鋼1、1の上方に向けた上で、互いの帯鋼1、1の長手方向の端部同士を突き合せて溶接により接続し、かえり2、2が、細径フラックス入り溶接ワイヤの外側に向かって存在しないこととする。
【選択図】図1

Description

本発明は、フラックス入り溶接ワイヤの製造方法に関するものである。
全自動若しくは半自動溶接用のアーク溶接ワイヤには、管状の外皮帯鋼内にフラックスを充填したフラックス入り溶接ワイヤ(フラックスコアードワイヤ、FCWとも言う)が汎用されている。このFCWには、本発明が対象とするフープに合わせ目(以下シームとも言う)を有するタイプと、この合わせ目のないシームレスタイプのものがある。後者のシームレスタイプのものは製造コストが高くなるため、シームを有するFCWの方が汎用されている。このシームを有するFCWは、後述する図2や図9(b)で示す通り、合わせ目を溶接等で接合せずに閉じている状態の溶接ワイヤを言う。以下、このシームを有するフラックス入り溶接ワイヤを、単に、フラックス入り溶接ワイヤ、あるいはFCWとも言う。
フラックス入り溶接ワイヤの一般的な製造方法としては、詳細は後述する図9(a)、(b)に示すように、コイル状のフープ(帯鋼)100を巻き戻してU字状の帯鋼(管)100aに成型する工程、この走行するU字状のフープ100aに前記成型途中でフラックス106を充填する工程、このフラックス106を充填した管状成型ワイヤ100bを更に伸線してコイル状の製品フラックス入り溶接ワイヤに巻き取る工程、の各工程を同一のラインにて記載順に連続して行なうものである。これらの工程は、例えば特許文献1、2などに詳細に開示されている。
このようなフラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインでは、前工程である突き合せ継ぎ手形成ラインにおいて、素材となるフープ(帯鋼)同士を長手方向端部で突き合せて溶接して接続し、素材フープのコイルを長尺化することが行われている。この素材フープコイルの長尺化によって、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインにおける、コイルの掛け替え作業時間を短縮させ、ライン効率を向上させるためである。
ここで、通常、比較的狭幅の前記素材フープは、その製造効率からして、比較的広幅の鋼板(冷延鋼板)を、幅方向に複数本剪断(スリット)することにより製作される。
ただ、前記鋼板(冷延鋼板)の剪断により製作されたフープには、必然的に、各フープの幅方向両端部に、剪断の際に生じるかえり(カエリ、ばりとも言う)が発生する。通常のフープでは、長手方向の剪断ラインが、フープ幅方向両端部側(2箇所)となるため、前記かえりは、各フープの幅方向両端部(剪断ライン)に、かつフープの長手方向に亙って延在して発生する。なお、前記鋼板の幅方向の両端部側から採取されるフープは、長手方向の剪断ラインがフープ幅方向のいずれかの端部側(1箇所)となるため、前記かえりは各フープの幅方向のいずれかの端部(剪断ライン)に発生する。
前記かえりは、フープが管状のワイヤに、成形、伸線された後も、微小にはなるが存在(残存)する。そして、前記した前工程の突き合せ継ぎ手形成ラインにおいて接続される素材フープの上下の向きによって、前記かえりの向く方向(向き)が変わる。したがって、前記接続される素材フープの上下の向き、あるいは前記かえりの向きによっては、後述する通り、フラックス入り溶接ワイヤの、前記かえりが存在するフープの幅方向端部となる、シーム部から外方に向けて張り出すこととなる。
前記かえりのフープ表面からの高さ(ばり高さあるいは突起高さ)は、伸線された最終的なフラックス入り溶接ワイヤの段階では、数百μm以下程度の微小なものである。このため、フラックス入り溶接ワイヤの径が2.0mmφを超えて大きければ、ワイヤの径の大きさに対して、前記かえりの高さが微小となって、ワイヤの真円度を低下させるなどの問題は、殆ど起こらない。
しかし、汎用される2.0mmφ以下の細径のフラックス入り溶接ワイヤでは、例え、前記微小なかえりであっても、ワイヤの真円度への影響が大きくなる。即ち、このかえりがフラックス入り溶接ワイヤの外方に向けて張り出していると、ワイヤの真円度を長手方向に亙って、著しく低下させることとなる。
このため、ワイヤが細径となるほど、溶接施工時に巻き戻して繰り出されるワイヤの溶接機への供給性に悪影響を及ぼす。炭酸ガスシールドアーク溶接、MIG溶接等の高効率な溶接施工ほど、繰り出されるワイヤの溶接機への供給は、長尺に亙って、あるいは長時間に亙って、高速走行や精密さが必要となるために、この影響は大きくなる。
これは、フラックス入り溶接ワイヤの製造工程でも同様であって、通常は、フープ(帯鋼)の上下両面を、各々上下として、工程(ライン)上を搬送される。しかし、前記かえりが、走行するフープ(帯鋼)の下面側に発生して、下側に向いていると、フープやワイヤの前記かえりが搬送ローラと接触し、場合によっては、フープやワイヤの円滑な走行を妨げることとなる。このような影響は、前記細径のフラックス入り溶接ワイヤで、しかも高効率な製造ラインで、フープやフラックス入り溶接ワイヤの走行速度が速いほど大きくなる。
このような鋼板(冷延鋼板)の剪断によりフープに生じるかえりの問題は、フラックス入り溶接ワイヤの分野ではなく、鋼板を剪断して帯鋼(帯鋼板)を製造する、素材帯鋼の製造側では、認識されている。例えば、特許文献3、4のように、鋼板を剪断した際に発生する、帯鋼端部のかえりを除去する装置が、従来からも提案されている。
更に、鋼板同士をレーザ溶接により接合する際に必要な、溶接部のギャップ管理のために、このギャップ管理を困難とする前記かえりを平坦にすることも、特許文献5などで提案されている。この特許文献5では、鋼板などの薄板の、かえりが発生した端部同士を突き合わせてレーザ溶接により接合する際に、予め前記かえりをローラなどの押圧部材により平坦にして、解決している。
特開平10−109190号公報 特許3959380号公報 特開平10−315108号公報 特開2007−229836号公報 特開平1−118389号公報
ただ、前記した、フラックス入り溶接ワイヤにおけるかえりの問題は、フラックス入り溶接ワイヤの分野では、これまであまり公表されていないし、対策も提案されていない。これは、前記したかえりの高さが数mm程度の微小なもの(伸線された最終的なフラックス入り溶接ワイヤの段階では数百μm以下程度の微小なもの)であることによると考えられる。即ち、前記した通り、フラックス入り溶接ワイヤの製造径が比較的太く、製造工程のライン走行速度が比較的遅い、あるいはフラックス入り溶接ワイヤの溶接施工条件によって、微小なかえりでは、これまであまり、公表する程度の問題が生じなかったからではないかと推考される。
しかし、より細径なフラックス入り溶接ワイヤを用いた高効率な溶接施工や、より細径なフラックス入り溶接ワイヤを製造する高効率な製造工程では、このようなかえりの問題は、前記した通り、溶接品質上も製造効率上も、解決されなければならない課題となってきた。
本発明は、この様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、前記鋼板(冷延鋼板)の剪断の際に、フープ(帯鋼)に必然的に発生するかえりの問題を、溶接品質上も製造効率上も無くした、フラックス入り溶接ワイヤの製造方法を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明フラックス入り溶接ワイヤの製造方法の要旨は、鋼板の剪断により製作された帯鋼の長手方向の端部同士を順次突き合せて溶接により接続して長尺の帯鋼とした素材を用いて、2.0mmφ以下の細径であるシームを有するフラックス入り溶接ワイヤを連続して製造する方法であって、前記帯鋼同士の接続に際して、前記鋼板の剪断により発生し、前記帯鋼の幅方向端部でこの帯鋼の長手方向に亙って延在するかえりの向きを、前記突き合せる各帯鋼の上方に向けた上で、互いの帯鋼の長手方向の端部同士を突き合せて溶接により接続し、前記フラックス入り溶接ワイヤの外皮とされた帯鋼の前記シーム部分において、鋼板の剪断によりこの帯鋼を製作した際に発生したかえりが、前記溶接ワイヤの外側に向かって存在しないか、存在するかえりの向きが前記フラックス入り溶接ワイヤの内側に向いているようにしたことである。
前記フラックス入り溶接ワイヤの製造方法において、前記溶接がアーク溶接であって、前記帯鋼の長手方向の端縁部同士の突き合せ部の両側からタブ板をこの突き合せ部の側面にあてがって配置して溶接施工することが好ましい。
本発明によれば、前記鋼板(冷延鋼板)の剪断の際に、フープ(帯鋼)に必然的に発生する、前記かえりの問題を、フラックス入り溶接ワイヤの溶接品質上も、また製造効率上も無くすことができる。
前記した通り、前工程の突き合せ継ぎ手形成ラインにおいて接続される素材フープの上下の向きによって、前記かえりの向く方向(向き)が変わる。ただ、この突き合せ継ぎ手形成ライン同様、フラックス入り溶接ワイヤの製造工程においても、通常は、フープ(帯鋼)の上下両面を、各々上下として、工程(ライン)上を搬送される。このため、前記かえりの向きは、走行するフープ(帯鋼)の下面側に発生していて下側に向いているか、走行するフープ(帯鋼)の上面側に発生していて上側に向いているかの、いずれかの場合しか無い。
したがって、前記鋼板の剪断により発生した帯鋼の幅方向端部に延在するかえりは、従来でも、意図せずに、帯鋼の上側に向けた上で帯鋼の長手方向の端部同士を突き合せて接続し、この帯鋼を前記長尺帯鋼素材として、前記かえりを前記フラックス入り溶接ワイヤの内側に向くようにしていたかもしれない。
しかし、フラックス入り溶接ワイヤの製造において、このような素材帯鋼の幅方向端部に延在するかえりを問題とする公知技術はあまり無い。これは、シームを有するフラックス入り溶接ワイヤのシーム部分において残存する前記かえりは、前記した通り、製造された溶接ワイヤが細径になるほど微小となるため、断面の目視だけでは観察できない場合もあって、特にかえりを問題視して、注意して観察乃至調査しない限り、分かりにくいということも影響している。
本発明方法にて帯鋼同士を突き合せて接合する態様を示す斜視図である。 図1の方法にて接合した帯鋼を用いて製造した、本発明フラックス入り溶接ワイヤを示す断面模式図である。 従来方法にて帯鋼同士を突き合せて接合する態様を示す斜視図である。 図3の方法にて接合した帯鋼を用いて製造した、従来フラックス入り溶接ワイヤを示す断面図である。 帯鋼の突き合せ溶接継ぎ手形成ラインを示す模式図である。 帯鋼突き合せ継ぎ手形成ラインにおけるタブ板を用いた突き合せ溶接施工を示す斜視説明図である。 帯鋼の突き合せ溶接部にタブ板が溶着した状態を示す平面説明図である。 帯鋼の突き合せ溶接部に溶着したタブ板を帯鋼から切り離す様子を示す斜視説明図である。 図9(a) はシーム有りフラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程を示す説明図、図9(b)は図9(a) の各成型工程におけるフープの断面形状を示す説明図である。 図1の方法にて接合した帯鋼を用い、図9の製造工程にて製造した、本発明フラックス入り溶接ワイヤを示す断面図である。
図面を用いて、本発明を実施するための形態を以下に説明する。図1はフープ(帯鋼)同士を突き合せる態様を示しており、その後、突き合せ部を溶接されて継がれ、長尺化されたフープは、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインの素材フープとされる。図2は、図1の本発明の継ぎ方によって、素材フープとされて製造されたフラックス入り溶接ワイヤの断面を示している。
図1において、1、1は、後述する突き合せ継ぎ手形成ラインにおける溶接工程20のテーブル上で、互いに長手方向の端部同士を突き合わされているフープである。これらの左右のフープ1、1は、鋼板の剪断により発生し、フープ1、1の幅方向両端部に、その長手方向に亙って延在し、同じ方向を向く(図1では上側に向く)かえり2、2を有する。
この図1の本発明態様では、かえり2、2を有する側のフープ面1aを上向きとして、このかえり2、2をフープ1、1の上方に互いに向けた上で、フープ1、1同士を突き合せている。なお、鋼板の通常の剪断では、フープ1、1の幅方向両端部に発生するかえり2、2は、共に上下いずれかの同じ方向を向いている。
このように、突き合せ継ぎ手形成ライン(テーブル)20上で、互いのかえり2、2を上向きとして(フープ1、1の上方に向けた、図の上側に向けた)、フープ1、1同士を突き合せ、突き合せ部を溶接して継いだ素材フープ1、1は、そのまま、かえり2、2を上向きとして巻き取られる。そして、これを、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインにおいて、そのまま巻き戻して流して、素材フープとして用いた場合、複数の工程からなっていて、途中での巻き取りや巻き戻しが入った場合でも、やはり、連続製造ライン上を、かえり2、2を上向きとして(フープ1、1の上方を向いて)製造される。
このため、図2に横断面(幅方向断面)を模式的に示す通り、製造されたフラックス入り溶接ワイヤ3aの断面では、かえり2、2を有する側のフープ面1aがワイヤの内側となり、かえり2、2が無い平滑なフープ面1bがワイヤの外側となる。
この結果、フープの長手方向に延在するかえり2、2は、このかえり2、2が存在する帯鋼1の幅方向端部に相当する、シーム部5において、全てフラックス入り溶接ワイヤ3aの内側(フラックス4)側に向く。なお、全てとは、帯鋼1の幅方向端部で、かつ帯鋼1(溶接ワイヤ)の長手方向に亙って存在するかえり2、2が全てという意味である。
したがって、フラックス入り溶接ワイヤ3aの外皮とされた帯鋼1の前記シーム部5において、鋼板の剪断によりこの帯鋼を製作した際に発生したかえり2、2が、溶接ワイヤの外側に向かっては存在しない。この結果、かえり2、2が例え微小となっても、ワイヤのフープ(外皮)1の外側に向かって、突出することが無い。また、微小なかえり2、2が存在したとしても、かえり2、2の向きがフラックス入り溶接ワイヤ3aの内側に全て向いている。
このため、フラックス入り溶接ワイヤ3aワイヤの真円度が確保され、前記細径となっても、溶接施工時に巻き戻して繰り出されるワイヤの溶接機への供給性に悪影響を及ぼさず、供給性が良くなる。
一方、図3、4は前記図1、2と同じ態様を示しているが、前記図1、2とは、かえり2、2の向きのみが違っている。図3において、突き合せ継ぎ手形成ライン(テーブル)20上で、突き合わされている左右のフープ1、1の、幅方向両端部に、その長手方向に亙って有する、かえり2、2の向きは、互いに同じ下側方向を向いている。即ち、図3の態様では、このかえり2、2を、かえり2、2を有する側のフープ面1aを下向きとして、フープ1、1の互いに下側に向けた上で、フープ1、1同士を突き合せている。
このように、突き合せ継ぎ手形成ライン(テーブル)20上で、互いのかえり2、2を下向きとして、フープ1、1同士を突き合せ、突き合せ部を溶接して継いだ素材フープ1、1は、そのまま、かえり2、2を下向きとして巻き取られる。そして、これを、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインにおいて、そのまま巻き戻して流して、素材フープとして用いた場合、複数の工程からなっていて、途中での巻き取りや巻き戻しが入った場合でも、やはり、連続製造ライン上をかえり2、2を下向きとして製造される。
このため、図2に横断面(幅方向断面)を示す通り、製造されたフラックス入り溶接ワイヤ3aの断面では、かえり2、2を有する側のフープ面1aがワイヤの外側となる。この結果、フープの長手方向に延在するかえり2、2はフラックス入り溶接ワイヤの内側(フラックス4)側に向く。したがって、かえり2、2が例え微小となっても、ワイヤのフープ(外皮)1の外側に向かって突出する。
ここで、かえり2、2が微小となるとは、目視観察では判別できない程度に微小となることを含む。かえり2、2が、実際のフラックス入り溶接ワイヤ3aの断面の目視観察では判別できない程度に微小となることは、十分にあり得る。実際のフラックス入り溶接ワイヤの製造では、剪断の改善や、ワイヤの細径化、伸線加工の高加工率化などによって、当然、かえり2、2の微小化が進むからである。
したがって、本発明では、前記した製造方法によって、このような実際のフラックス入り溶接ワイヤ3aの断面の目視観察では判別できない程度に微小となる場合でも、本発明を満足するか否かを判別できる。即ち、前工程の突き合せ継ぎ手形成ラインにおいて接続される素材フープの上下の向き(かえり2、2の上下の向き)によって、実際のフラックス入り溶接ワイヤ3aの断面を観察せずとも、シーム部5において、かえり2、2が溶接ワイヤ3aの外側に向かっては存在しないか、全て溶接ワイヤ3aの内側(フラックス4)側に向いて存在していることを判別、類推できるようにした。
前記した通り、素材フープ1、1の段階で、かえり2、2の高さは数mm程度の微小なものであり、これがフラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインにおいて伸線されると、数百μmm以下程度の、実際のフラックス入り溶接ワイヤ3aの断面の目視観察では中々判別できない程度にまで、微小なものとなる。しかし、例え、このような微小なかえりであっても、かえり2、2がフラックス入り溶接ワイヤの外側(外方側)に向いた場合、ワイヤの真円度が低下し、前記細径となった場合、溶接施工時に巻き戻して繰り出されるワイヤの溶接機への供給性に悪影響を及ぼし、供給性が低下する。また、フラックス入り溶接ワイヤの製造工程でも、フープやワイヤの円滑な走行が妨げられ、製造ラインの高速化(フープやワイヤの走行速度の高速化)が難しくなる。
突き合せ継ぎ手形成ライン:
本発明を実施するための、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造ライン用の素材フープを作製する、連続突き合せ継ぎ手形成ラインにつき、図5〜8を用いて説明する。なお、このような突き合せ継ぎ手形成ラインは、例えば特開2004−50281号公報や特開2005−95963号公報で公知であり、本発明でもこれら公知の突き合せ継ぎ手形成方法が使用できる。
図5において、この突き合せ継ぎ手形成ラインは、図の右から工程順に、前工程10、前記した図1の溶接工程20、そのあとの加熱処理工程30、後工程部40等により構成されている。溶接工程30の上流側の前工程10は、図示はしないが、例えばフープコイルの先端及び尾端のテイルを切断除去して突き合せ開先を形成するシャー等が配置されている。
溶接工程20は、TIG溶接機、YAGレーザービーム溶接機等のイナートガスアーク溶接機が設置されている。加熱処理工程30は、電極及び導電性台盤を備えた抵抗加熱装置を有して、フープ(帯鋼)を電極と導電性台盤の間にクランプして、抵抗加熱により帯鋼の焼鈍を行なうように構成されている。
加熱処理工程30の下流側の後工程40には、例えば、フープの耳摺り装置(バリのグラインダー研削除去等)、レベラー(フープの曲がり矯正)等の形状の矯正装置、突き合せ溶接部位置を表示する色付け装置等が配置され、それぞれ所定の処理が施される。
図5において、フープ1はライン始端側(図の右側)のコイルC1から巻き出され(巻き戻され)、前工程10を経由して、溶接工程20に導入される。そして、図6に示すように、この溶接工程20において、フープ1、1の端縁部同士(先行コイル帯鋼1の尾端部と後行コイル帯鋼1の先端部)の突き合せ溶接が行われる。
ここで、この帯鋼突き合せ継ぎ手形成ラインにおいては、前記図1で記載した通り、かえり2、2を有する側のフープ面1aを上向きとして、フープ1のかえり2、2を、互いに上側に向けた上で、コイルC1から巻き出されて、このラインに入れられ、かつ、フープ1、1同士を突き合せている。
フープ1、1の端縁部同士の突き合せと溶接接合は、図6に示すように、タブ板22を使用して行うことが好ましい。TIGアークあるいはYAGレーザービームなど、アルゴン、ヘリウム等のイナートガス(シールドガス)を用いたアーク溶接により突き合せ継ぎ手を形成する場合、溶接施工開始(アーク点弧)時のアークは不安定である。このため、フープ1、1が薄肉であるほど、過電流、過入力により、突き合せ部が溶損(焼き切れ)し、健全な溶接継手を形成することが難しくなる。また、溶接施工終了時のアーク消弧(アーク電流停止)時においても、継手品質の異常が生じ易い。
この対策として、フープ1、1の端縁部同士の突き合せ部の両側から、突き合せ部のタブ板22を、突き合せ部の側面にあてがって配置して、溶接施工するのが有効である。図6に示すように、このフープ1、1の端縁部同士の突き合せと、フープ1、1の両側からのタブ板22の組付け等の操作は、適宜、クランプ(固定用)治具23を使用して行う。即ち、フープ1、1及びタブ板22、22を、治具23によってクランプした上で、フープ1、1と同種成分系のフィラー(溶加材)を使用して、TIGアークあるいはYAGレーザービーム等のイナートガスアーク溶接により突き合せ継ぎ手を形成する。TIGアークを用いる場合にはタングステン電極を用いることが好ましい。
このように、一方のタブ板22(左側)に、溶接トーチ21を臨ませてアーク電流の通電を開始(アーク点弧)する。そして、溶接トーチ21を矢印のように、図の左から右へ移動させることにより、突き合せ部Lに沿ってアークを走査する。その後、他方のタブ板22(右側)の上で、通電を停止(アーク消弧)する。このようにタブ板22の一方をアーク点弧面、他方をアーク消弧面とすれば、突き合せ部Lの領域を、安定したアーク状態で溶接することができ、溶損等の欠陥のない突き合せ継手を形成することができる。
次いで、この突き合せ溶接の後、図7に示す通り、突き合せ溶接部Wを、タブ板2が両側に溶着したままの状態で加熱処理工程30に移行させ、突き合せ溶接部Wを熱処理(仮焼鈍処理)する。この熱処理は、突き合せ溶接部(焼き入れ組織)の軟質化を目的とするものであり、オーステナイト温度域に適当時間加熱保持した後、空冷することにより行われる。
また、この突き合せ溶接部Wを所定温度に加熱保持した後、空冷し、突き合せ溶接部Wが軟質状態を保持している熱間ないし温間の状態において、図8に示す通り、タブ板22を切り離す。タブ板22分離のハンドリングは、図8のように、タブ板2をフープ1に対して、下方あるいは上方に折り曲げればよい。タブ板22が分離されたフープ1の突き合せ溶接部Wは、欠損や割れ等のない健全な形状を有する。
タブ板22を切り離した後、突き合せ溶接部に本焼鈍処理を施すことが好ましい。タブ板の分離後に再び焼鈍処理を行うのは、突き合せ溶接部Wに幅方向の全体に亘る均質な焼鈍組織を形成するためである。この本焼鈍は、抵抗加熱により、フープ1の突き合せ溶接部Wを、オーステナイト温度域に加熱保持し、ついで制御された緩徐の冷却を行うことにより実施できる。この本焼鈍処理の後、後工程40に移行させ、所定の処理(形状矯正、表面検査等)を施した上で、図5のように、巻取り機C2に巻き取る。
フラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程:
次ぎに、図9を用いて、本発明のフラックス入り溶接ワイヤの連続製造方法を以下に説明する。図9(a)はフラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程の概略を示す、一部を平面図とした説明図である。また、図9(b)は、この図9(a)の各成型工程におけるフープの断面形状を示す説明図である。なお、このようなフラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程も公知であり、公知のフラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程が使用できる。
図9(a)において、コイル状のフープ100は、前記図5の突き合せ継ぎ手形成ラインにおいて、接続長尺化されたフープ1であって、巻取り機C2に巻き取られて、この連続製造工程まで搬送され、図示しない巻き戻し機により巻き戻されたものである。
(洗浄脱脂工程)
フープ100は、先ず、洗浄脱脂工程102によって予め洗浄脱脂される。広幅の素材鋼板などを、2.0mmφ以下の細径フラックス入り溶接ワイヤ用の狭幅のフープ100に、前記剪断する際には、フープ100の表面に加工油や汚れが付着するので、溶接ワイヤの品質上、予めこの洗浄脱脂工程102において除去しておく必要がある。
(潤滑剤)
図9(a)において、洗浄脱脂後のフープ100は、潤滑剤塗布工程103aにおいて、潤滑剤または防錆油を微量塗布される。この後、フープの成型工程、U字状フープから管状ワイヤへの成型工程、伸線工程、の各工程においては、硫黄系の極圧剤を含む伸線潤滑剤を用いる。この伸線潤滑剤としては、公知の、非水素系の潤滑剤としての硫黄系の極圧剤を含む潤滑剤、硫黄系の極圧性固体を成分として水を溶媒とする湿式潤滑剤、硫黄系の極圧性固体が主成分で少量の油分を含有する油式潤滑剤、などを適宜選択して用いる。
(成型)
このように潤滑剤が塗布されたフープ100は、図9(b)のAに示す平板状の断面形状から、Bに示すU字状断面のフープ100aへと、成型ローラ列 (群) 104 aにて成型される。図9(a)の成型ローラ列 (群) 104aは、2個の成型ローラが直列配置された例を示している。この成型工程に配置される成型ローラの個数は、フープ100の幅や厚み、あるいは硬度などの成型条件に応じて適宜選択される。
(フラックス充填)
U字状断面に成型されたフープ100aは、フラックス供給装置105からフラックス106の供給を受け、図9(b)のCに示すように、フープ100aのU字状空間内に、一定の内部充填率 (空隙率) を有した上でフラックス106が充填 (内包) される。
このようにフラックス106 が充填されたU字状成型フープ100aは、次いで図9(b)のDに示す管状のワイヤ100b へと、更に成型ローラ列104bにて成型される。この成型ローラ列104bの条件は、前記した成型ローラ列104aと同様である。管状のワイヤ100b は、フープの幅方向の両端が近接し合う空隙部分=シーム114 をワイヤ100b の長手方向に渡って有している。このシーム114 は、後続する伸線工程によって、ワイヤ100b がワイヤ100c、100dと縮径されても、空隙部分としてなお存在する。
具体的には、図9(b)のワイヤ100c(あるいはE)からの引き出し線で拡大して示すバット (突き合わせ) タイプの断面114aであって、フープの幅方向の両端が突き合わされていたとしても、シーム114は存在する。また、他の態様として、同じく図9(b)のワイヤ100c(あるいはE)からの引き出し線で拡大して示す、ラップ (重ね) タイプの断面114bであって、フープの幅方向の両端が重なり合っていったとしても、シーム114 は存在する。これは製品FCWでも同様である。
(伸線潤滑)
成型された管状ワイヤ100bは、次いで潤滑剤塗布工程103bにおいて、ワイヤ100b表面に、前記潤滑剤を塗布された後に伸線される。この潤滑剤は前記塗布工程103 aの潤滑剤と、同じであっても、違っていても良い。ここで、潤滑剤塗布工程は伸線前の103bだけではなく、伸線条件に応じて、伸線工程中に適宜配置して良い。
(ローラダイス伸線)
図9(a)のローラダイス伸線工程では、大別して、一次伸線工程と二次伸線工程とに分けられる。この伸線工程によって、ワイヤは、製品径または製品径に近い線径にまで縮径される。ここで、図9(b)のEからFに示す通り、一次伸線によってワイヤはワイヤ100cからワイヤ100dへと縮径される。また、図9(b)のFからGに示す通り、二次伸線によってワイヤはワイヤ100dから製品径のワイヤ100eへと縮径される。
この図9(a)の伸線工程は、一次伸線工程と二次伸線工程とを別の工程に分けて行なっている態様を示している。このように、伸線工程を分割するか、一次伸線工程と二次伸線工程とを同じ工程で連続的に製品径まで伸線するかは、フープの設計条件と製品FCWの設計条件、あるいは生産性などによって適宜選択される。また、一本の一次伸線工程(B)に対して、二次伸線工程(C)を複数本設ける、あるいは、複数本の一次伸線工程(B)に対して、一本の二次伸線工程(C)を設けるなども、一次伸線と二次伸線との生産性バランスによって適宜選択される。
一次伸線工程は、超硬材料製ローラダイス列(群)201〜206までが多段に(図9の例では6段または6群)配置されている。二次伸線工程は、超硬材料製ローラダイス列(群)401〜405までが多段に(図9の例では5段または5群)配置されている。このローラダイス列多段配置個数も、伸線条件に応じて適宜選択される。
図9(a) の一次伸線工程は前記した成型工程とインラインで連続している。そして、一次伸線後のワイヤは、一旦コイル106に巻回される。更に、図9(a) のように、このコイル106を巻き戻して、二次伸線工程が行なわれる。
二次伸線工程は、これに続く、前記潤滑剤の物理的な除去手段 (工程)108、塗油手段109とインラインで連続している。あるいは、伸線用潤滑剤塗油工程の前に、孔ダイス501によるスキンパス仕上げ伸線工程を挿入する場合もある。ローラダイスによる伸線以降の、仕上げ伸線工程501、潤滑除去工程108、塗油工程109などの工程は、インラインにて( 同一のラインにて連続的に) 行なう。これらの工程を別工程によるオフライン処理とした場合、製品FCW製造工程全体の生産性や生産効率が著しく低下し、ローラダイス群による高速伸線化の利点が大きく損なわれる。
二次伸線工程において、塗油された製品FCWは110として巻き取り機に巻き取られる。その上で、更に、図示しない工程で、ワイヤスプールに巻替あるいはペールパックに装填される。図9(a) の伸線工程において、111はキャプスタンであって、各々ローラダイス列の後段に配置されて、伸線されるワイヤを円滑にガイドして、連続的で高速の伸線を保障する。
ローラダイス (線引き装置) は、単一の小径孔中にワイヤを通す孔ダイスを用いた伸線に比して、ダイス面における潤滑層に負荷される剪断力は比較的小さく、潤滑被膜切れの問題が発生しにくい。また、孔ダイスのような、この潤滑剤の固化、目詰まりの問題が発生しない。このため連続的で高速の伸線を保障できる。
ローラダイスや孔ダイスは、高強度で、硬度や剛性が高く、高速の溶接用ワイヤ伸線に適した、WC基硬合金製、TiC基超硬合金製、TiCN基サーメット製などの公知の超硬製(超硬材料製)からなることが好ましい。
ここで、図9(b)のGに示す製品径のワイヤ100eの形状精度は、ワイヤ送給性に影響するとともに、別途、FCW110をワイヤスプール100に巻替あるいはペールパックに装填する際の作業性にも大きく影響する。
このため、ローラダイス列によって伸線されたワイヤを、最終的に孔ダイス501によって仕上げ伸線することが好ましい。孔ダイスの伸線速度はローラダイスに比して低速であるものの、このような二次伸線ライン構成であれば、最終的に孔ダイスによって仕上げ伸線しても、伸線工程やFCW製造工程全体の高速性や連続性に対して影響を与えることは無い。孔ダイスによって仕上げ伸線した場合、ローラダイス列によって伸線されたワイヤは製品径に近い線径となり、孔ダイス仕上げ伸線後のワイヤが、最終的な製品径となる。
(潤滑剤除去手段)
伸線されたワイヤ100eは、次いで、ワイヤ表面より前記潤滑剤を物理的な除去手段108によって除去される。図9(a) における潤滑剤除去手段108は、前段におけるワイヤを表面研磨および打撃する潤滑剤除去手段(図示せず)と、後段における拭い取りロールによる潤滑剤除去手段108(内部にロールを記載した箱型で図示)とによる、2段階でのインラインでの潤滑剤除去を想定している。前段におけるワイヤを表面研磨および打撃する潤滑剤除去手段は、走行中のワイヤを表面研磨後に、例えば、軽量な小片を走行中のワイヤ上に落下させて、ワイヤを打撃して、潤滑剤をワイヤ表面から除去する手段である。また、後段の拭い取りロールによる潤滑剤除去手段108は、潤滑剤を拭き取るフェルトなどを表面に設けた拭い取り(ワイパー)ロールにより、潤滑剤をワイヤ表面から除去する手段である。この他、インラインでの潤滑剤除去は、洗浄により除去する手段、ワイヤを加振するなどの他の物理的な除去手段、あるいは、これら除去手段の適宜の組み合わせにより行って良い。潤滑剤が除去されず、ワイヤ乃至FCW表面に残留した場合には、溶接の際のアーク安定性を低下させ、溶接欠陥の要因となる。
(塗油手段)
表面より潤滑剤が除去されたワイヤ100eは、その後、塗油手段109 によって、ワイヤ送給性を向上させる公知の潤滑剤をワイヤ表面に塗油され、図9(b)のWに示すFCW製品とされる。ここで塗油手段109は、高速で搬送 (移動) 中のワイヤ表面に、図9(b)に示すように、少量の潤滑剤113を均一に、かつ短時間で塗油する必要がある。このために、静電塗油などの強制塗油手段を用いることがワイヤのトータル水素管理の観点から好ましいが、潤滑剤を含浸したフェルトなどをワイヤに接触させて塗布する方法が一般的である。
以上説明した図9(a)の態様は、フープのU字状成型工程、U字状成型フープへのフラックス充填工程、U字状フープから管状ワイヤへの成型工程、管状成型ワイヤの一次伸線工程までと、二次伸線工程からワイヤ送給用潤滑剤をワイヤ表面に塗油する工程までを、各々全て同一の連続したライン (インライン) にて行なう態様を示した。ただ、FCW製造ラインの生産効率や生産条件に応じて、一次伸線工程と二次伸線工程とを繋げ、これらを全て連続した同じインラインで行なっても良い。あるいは、一次伸線工程までの工程を更に別々に分けて行なってもよい。例えば、図9(a)の、管状ワイヤへの成型工程104bまでと、管状成型ワイヤの一次伸線工程とを別のラインで行なっても良い。なお、本発明において、上記各工程を順にインラインにて行なうとは、ワイヤを搬送しつつ、この搬送ワイヤに対し、連続的に上記各工程を順に行なうことを言う。
(仕上げ伸線後のワイヤ表面硬度)
この際、通常の軟鋼板製のフープであれば、仕上げ伸線後のワイヤ(鋼フープ)の表面を、ビッカース硬度で150〜260Hvの範囲の硬度を有するようにすれば、伸線後のFCW表面の仕上がり性が確保され、摩擦係数が低くなるため、FCWのワイヤ供給性が向上する。本発明で使用するWC基超硬合金からなるローラダイスであれば、このようなビッカース硬度範囲が得やすい。ビッカース硬度で150Hv未満では、FCWの腰が弱くなり、ワイヤ供給性が低下する。逆に、ビッカース硬度で260Hvを越えた場合、FCWが折れやすくなり、スプール巻きの始端( 巻き始め側) で折れるとFCWの巻き替えトラブルとなる。
本実施態様では、仕上げ伸線を除く、伸線工程の各工程において、一貫して超硬材料製からなるローラダイスで行なっている。しかし、これら高速および連続しての伸線あるいは成型に大きく影響しない部分や工程での、超硬材料製からなるローラダイス以外の、ダイスやロール材料の使用を妨げない。
以下に、本発明の実施例を説明する。前記図5〜8にて示した突き合せ継ぎ手形成工程と条件、図9(a) にて示したフラックス入り溶接ワイヤ製造工程と条件とを用い、1.2mmφの製品径のフラックス入り溶接ワイヤを製造した。
この際、市販の軟鋼板製のフープを用い、Fe−Crとジルコンサンドを主成分として含有する成分のフラックス、硫黄系極圧剤として二流化モリブデンを含む前記潤滑剤を各々用いて、フープの幅W:12 mm、厚みt:0.96mm、として製造した。
ここで、突き合せ継ぎ手形成工程では、前記図5〜8にて示した、好ましい工程条件とし、突き合せ継ぎ手形成ライン(テーブル)20上で、互いのかえり2、2を上向きとしてフープ1、1同士を突き合せ、突き合せ部を溶接して継いだ素材フープ1、1は、そのまま、かえり2、2を上向きとしてコイルに巻き取った。なお、突き合せ継ぎ手の溶接には、前記図6の態様のようにタブ板22およびアルゴンイナートガス、タングステン電極を各々用いた、TIGアーク溶接機を用いた。
このように、互いの突き合せ部を溶接して継いだ長尺素材フープのコイルを、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造ラインに搬送して、そのまま巻き戻して素材フープとして用い、やはり、連続製造ライン上を、かえり2、2を上向きとして(フープ1、1の上方を向いて)順次走行させながら、フラックス入り溶接ワイヤを製造した。
この製造した1.2mmφの製品径のフラックス入り溶接ワイヤの断面を図10に、100倍の断面写真にて示す。この図10から分かる通り、本発明フラックス入り溶接ワイヤは、上記製造方法によって製造されたシームを有するフラックス入り溶接ワイヤであって、外皮とされた帯鋼のシーム部分において、前記かえりが溶接ワイヤの外側に向かって存在しない。このため、かえりが無い平滑なフープ面がワイヤの外側となっている。
即ち、図10では、前記図2に比して、かえりが目視観察では判別できない程度に微小となっている。ただ、前記突き合せ継ぎ手形成工程や図9(a) にて示したFCW製造工程の伸線加工前までは確実に、フープ1、1の上方を向いて存在している。このため、図10のフラックス入り溶接ワイヤのシーム部において、微小に存在するとすれば、必然的に、全てフラックス入り溶接ワイヤ3aの内側(フラックス4)側に向いて存在している。したがって、図10の細径フラックス入り溶接ワイヤは、かえりが目視観察では判別できないとしても、本発明の要旨を満足することが確実に裏づけられる。
また、安定して伸線可能な最高の一次伸線速度は300m/min、二次伸線速度は1000m/minが得られた。そして、巻き取り後のFCWの形状精度 (真円度) は、東京精密社製のRONDCOM30B 真円度計にて順次測定した結果、真円度が±5 μm未満のばらつきであった。
また、これらFCWのワイヤ供給性を評価した結果、ワイヤ供給が途切れずに円滑に行なえて良好であり、軟鋼板(1mmt)同士の突き合わせ溶接時の溶接性について評価した結果も、一貫してアークが安定しており、溶接部に溶接欠陥も生じておらず、継手部の靱性も良好であった。
このワイヤ供給性については、汎用ワイヤ供給機を用い、汎用炭酸ガスシールド溶接機へのワイヤ供給性を評価した。また、溶接性評価については、炭酸ガスシールド溶接し、溶接条件は、溶接電流: 3 00A、溶接電圧:32V、溶接速度:30cm/min. 、炭酸ガスシールドガス25L/min. とした。
以上の結果から、フラックス入り溶接ワイヤの真円度が確保され、前記細径となっても、溶接施工時に巻き戻して繰り出されるワイヤの溶接機への供給性に悪影響を及ぼさず、供給性が良くなる、本発明の意義が分かる。また、フラックス入り溶接ワイヤの製造工程でも、フープやワイヤの円滑な走行を妨げることが無く、製造ラインの高速化(フープやワイヤの走行速度の高速化)が可能となる。
本発明によれば、フラックス入り溶接ワイヤの真円度が確保され、前記細径となっても、溶接施工時に巻き戻して繰り出されるワイヤの溶接機への供給性に悪影響を及ぼさず、供給性が良くなる、フラックス入り溶接ワイヤの製造方法とフラックス入り溶接ワイヤとを提供できる。このため、高い生産効率と品質保証とが求められる、フラックス入り溶接ワイヤの連続製造工程に適用されて好適である。
1:帯鋼(フープ)、2:かえり、3:フラックス入り溶接ワイヤ、4:フラックス、5:外皮(フープ)、10:前処理工程、20:溶接工程、21:溶接トーチ、22:タブ板、23:組付け治具、30:加熱工程、40:後工程、C1:帯鋼コイル、C2:帯鋼巻取りコイル、L:溶接線(突き合せ部)、W:突き合せ溶接部

Claims (2)

  1. 鋼板の剪断により製作された帯鋼の長手方向の端部同士を順次突き合せて溶接により接続して長尺の帯鋼とした素材を用いて、2.0mmφ以下の細径であるシームを有するフラックス入り溶接ワイヤを連続して製造する方法であって、前記帯鋼同士の接続に際して、前記鋼板の剪断により発生し、前記帯鋼の幅方向端部でこの帯鋼の長手方向に亙って延在するかえりの向きを、前記突き合せる各帯鋼の上方に向けた上で、互いの帯鋼の長手方向の端部同士を突き合せて溶接により接続し、前記フラックス入り溶接ワイヤの外皮とされた帯鋼の前記シーム部分において、鋼板の剪断によりこの帯鋼を製作した際に発生したかえりが、前記溶接ワイヤの外側に向かって存在しないか、存在するかえりの向きが前記フラックス入り溶接ワイヤの内側に向いているようにしたことを特徴とするフラックス入り溶接ワイヤの製造方法。
  2. 前記溶接がアーク溶接であって、前記帯鋼の長手方向の端縁部同士の突き合せ部の両側からタブ板をこの突き合せ部の側面にあてがって配置して溶接施工する請求項1に記載のフラックス入り溶接ワイヤの製造方法。
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