JP2010185868A - 連続欠陥判定方法、連続欠陥判定装置及びプログラム - Google Patents

連続欠陥判定方法、連続欠陥判定装置及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥を迅速且つ確実に検出することができる連続欠陥判定方法、連続欠陥判定装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】薄鋼板Fに発生する表面欠陥に関する情報を基に分布形態を解析して連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定方法を提供する。この方法は、複数の表面欠陥の座標データを取得する取得ステップS01と、薄鋼板を短手方向で複数の帯状領域に分割する分割ステップS03,S05と、帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の表面欠陥を含むクラスタを、複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定ステップS07と、特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の座標データの関連性を表す分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が連続欠陥に該当するか否かを判定する判定ステップS09と、を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、連続欠陥判定方法、連続欠陥判定装置及びプログラムに関する。
鉄鋼業では薄鋼板の製造が行われており、その薄鋼板の品質管理の重要度が増しているが、製造された薄鋼板に発生した疵等の表面欠陥は、その薄鋼板の品質を左右することとなる。よって、このような表面欠陥を発生させないことが望ましい。
しかし、製造ラインの不具合など様々な要因により、介在物や凹凸などの表面疵(以下「表面欠陥」とも言う。)は発生しうる。そこで、表面欠陥の発生有無を検出して製品品質を維持させるだけでなく、表面欠陥の発生要因等を突き止めて、以後の操業に影響が及ばないように不具合等を解消する必要がある。そして、発生要因等を突き止めるために、表面欠陥の発生位置の検出、表面欠陥の種類の特定、表面欠陥の有害度(グレード)の判定などの処理が行われる。
一方、表面欠陥に対して行われる上記処理の効率や作業員の負担を軽減すべく、例えば光学式の表面欠陥検出装置が開発されている。このような表面欠陥検出装置は、例えば、薄鋼板に照明光を照射し、その反射光から表面欠陥を特定し、その位置情報を自動的に出力することができる。従って、作業員が見落とした表面欠陥を正確に特定できるばかりか、作業員の表面欠陥検出作業よりも効率が飛躍的に高いため、製造ラインを流れる薄鋼板の通板速度を向上させて、製造ライン自体の製造効率を向上させることも可能である。
しかしながら、このような自動的な表面欠陥検出装置であっても、その表面欠陥に関する情報を分析し、原因を推定するのを作業員が行ったのでは、製造ラインの効率向上、及び、疵の検出精度の向上には限界がある。
そこで、下記特許文献1に記載のような、表面欠陥の分布形態の解析装置が開発されている。特許文献1に記載の分布形態解析装置では、自動表面欠陥検出装置などにより収集・蓄積された表面欠陥についての位置情報(「座標データ」とも言う。)から、複数の表面欠陥の分布形態に関する情報を、定量的な指標として自動的に抽出し、提示することができる。より具体的には、この分布形態解析装置は、表面欠陥の座標データに基づいて、その表面欠陥同士を自動的にグループ(表面欠陥のかたまり、「クラスタ」とも言う。)化し、そのグループ内に含まれる表面欠陥の分布形態を統計的な関数として表して、その関数と関数の特徴量とを抽出する。これにより、作業者は、この特徴量や関数等に基づいて、表面欠陥の分析及び原因の推定を行うことが可能となり、作業性は飛躍的に向上する。
特開2005−257660号公報
C.Bohm,C.Faloutsos,J.Pan,and C.Plant. Robust Informationtheoretic Clustering. In KDD Conference,pages 65−75,2006.
しかしながら、上記のようなグループ化、つまり、クラスタリングを行う場合、そのクラスタリング処理には複雑な計算や反復計算が多数使用される。その結果、クラスタリング処理に時間がかかり、結果として作業効率を向上させるには限界がある。例え、高速な処理装置を使用したとしても、その処理に必要とされる負荷は変らないので、処理速度の高速化に限界があるばかりか、高速な処理装置は高価であるため、製造コストが増加してしまう。
一方、薄鋼板の製造ラインで発生する表面欠陥のうち、特に、早期発見・早期対応が必要な表面欠陥として、連続欠陥が挙げられる。連続欠陥は、例えば、薄鋼板の長手方向、つまり、通板方向に連なって略直線状に位置する複数の表面欠陥が挙げられる。このような連続欠陥は、例えば、薄鋼板を搬送又は圧延するロールに混入又は発生した異物や表面疵が薄鋼板表面に損傷を与えることにより発生したり、鋼片のホットスカーフ設備の調整不良から生じる鋼片の深ぼれや未溶削部分の残りにより発生する。つまり、このような連続欠陥は、製造ラインを構成する製造装置に何らかの異常が発生していることを意味することが多い。このような異常は、その時点で製造されている薄鋼板だけでなく、その後製造される薄鋼板でも表面欠陥を発生させる恐れがあり、製品品質に重大な影響を及ぼしかねない。そこで、このような連続欠陥を確実且つ早期に発見し、その発生原因を突き止めて、その原因を取り除く作業を迅速に行うことが、製品品質の維持だけでなく、製造効率、製造コスト的にも望まれる。しかし、複数の表面欠陥の中から、このような連続欠陥を迅速に発見することは、上述の通り難しく、更に、連続欠陥を確実に発見することは更に容易ではない。例えば、上記特許文献1に記載の分布形態解析装置などのようにクラスタリングを行う場合、1の連続欠陥を複数のクラスタとして認識してしまい正確な連続欠陥の有無の判定ができないことが多く、判定精度の向上が望まれている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、薄鋼板に発生した複数の表面欠陥に対して、薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無の判定を、迅速且つ確実に行うことにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の製造工程における処理を経て製造される薄鋼板に発生し、表面欠陥検出装置により検出された複数の表面欠陥に関する情報を基に、該複数の表面欠陥の分布形態を解析して、該薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定方法であって、
上記薄鋼板に発生した複数の表面欠陥それぞれの発生位置について長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データを、上記表面欠陥検出装置から取得する取得ステップと、
上記薄鋼板の少なくとも一面を上記薄鋼板の短手方向で、予め設定された間隔を有する複数の帯状領域に分割する分割ステップと、
上記分割ステップで分割された複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の上記表面欠陥を含むクラスタを、上記複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定ステップと、
上記帯状領域に含まれる複数の表面欠陥のうちの、上記クラスタ特定ステップで特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当するか否かを判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする、連続欠陥判定方法が提供される。
また、上記分割ステップでは、上記薄鋼板の少なくとも一面を上記複数の帯状領域へと、分割位置を上記短手方向でずらしつつ複数回分割し、
上記クラスタ特定ステップ及び上記判定ステップでは、複数の上記分割位置それぞれの上記複数の帯状領域に対して、上記クラスタの特定及び上記連続欠陥に該当するか否かの判定を行ってもよい。
また、上記判定ステップでは、上記クラスタ特定ステップで特定されたクラスタに含まれた複数の表面欠陥の分布形態を表す上記長手方向の確率密度関数の種類と上記短手方向の確率密度関数の種類との組み合わせ、及び、該確率密度関数における特徴量の少なくとも一方に基づいて、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当するか否かを判定してもよい。
また、上記判定ステップでは、上記クラスタの長手方向の確率密度関数が一様分布であり、上記短手方向の確率密度関数がラプラス分布である場合に、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当すると判定してもよい。
また、上記クラスタ特定ステップでは、上記複数の帯状領域それぞれに対して、
該帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれに対して、予め与えられた複数の分布形態候補のうちから選択された分布形態が1ずつ設定された1のクラスタを仮定するクラスタ仮定ステップと、
上記クラスタ仮定ステップで仮定されたクラスタについて、該帯状領域に含まれるそれぞれの表面欠陥に対する、該クラスタに設定された分布形態の一致の程度を表す評価指標を算出する評価指標算出ステップと、
上記評価指標算出ステップで算出される評価指数が最小になるように、該帯状領域に含まれる表面欠陥から上記クラスタに含むべき表面欠陥を選択するクラスタ調整ステップと、
が行われ、
上記クラスタ仮定ステップでは、上記帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれの分布形態として、上記分布形態候補の全ての組み合わせが順次選択されて上記クラスタに設定され、
上記評価指標算出ステップ及び上記クラスタ調整ステップは、当該分布形態候補の組み合わせが設定された全てのクラスタについて行われ、
上記評価指標が最小となる長手方向及び短手方向の分布形態が設定された1のクラスタが、該帯状領域に対して特定されてもよい。
上記クラスタ特定ステップで特定された上記各クラスタに対して、該クラスタに含まれる表面欠陥の数を、該クラスタが特定された帯状領域と該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで連続欠陥判定指標を算出し、算出された上記連続欠陥判定指標に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当しないことを判定するクラスタ事前判定ステップを更に有してもよい。
上記分割ステップで分割された各帯状領域に対して、該帯状領域に含まれる表面欠陥の数を、該帯状領域と該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで簡易連続欠陥判定指標を算出し、算出された上記簡易連続欠陥判定指標に基づいて、該帯状領域に含まれる表面欠陥が上記連続欠陥に該当しないことを判定する帯状領域事前判定ステップを更に有してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の製造工程における処理を経て製造される薄鋼板に発生し、表面欠陥検出装置により検出された複数の表面欠陥に関する情報を基に、該複数の表面欠陥の分布形態を解析して、該薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定装置であって、
上記薄鋼板に発生した複数の表面欠陥それぞれの発生位置について長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データを、上記表面欠陥検出装置から取得する取得部と、
上記薄鋼板の少なくとも一面を上記薄鋼板の短手方向で、予め設定された間隔を有する複数の帯状領域に分割する分割部と、
上記分割部により分割された複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の上記表面欠陥を含むクラスタを、上記複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定部と、
上記帯状領域に含まれる複数の表面欠陥のうちの、上記クラスタ特定部により特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当するか否かを判定する判定部と、
を有することを特徴とする、連続欠陥判定装置が提供される。
また、上記分割部は、上記薄鋼板の少なくとも一面を上記複数の帯状領域へと、分割位置を上記短手方向でずらしつつ複数回分割し、
上記クラスタ特定部及び上記判定部は、複数の上記分割位置それぞれの上記複数の帯状領域に対して、上記クラスタの特定及び上記連続欠陥に該当するか否かの判定を行ってもよい。
また、上記判定部は、上記クラスタ特定部により特定されたクラスタに含まれた複数の表面欠陥の分布形態を表す上記長手方向の確率密度関数の種類と上記短手方向の確率密度関数の種類との組み合わせ、及び、該確率密度関数における特徴量の少なくとも一方に基づいて、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当するか否かを判定してもよい。
また、上記判定部は、上記クラスタの長手方向の確率密度関数が一様分布であり、上記短手方向の確率密度関数がラプラス分布である場合に、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当すると判定してもよい。
また、上記クラスタ特定部は、
上記複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれに対して、予め与えられた複数の分布形態候補のうちから選択された分布形態が1ずつ設定された1のクラスタを仮定するクラスタ仮定部と、
上記複数の帯状領域それぞれに対して、上記クラスタ仮定部により仮定されたクラスタについて、該帯状領域に含まれるそれぞれの表面欠陥に対する、該クラスタに設定された分布形態の一致の程度を表す評価指標を算出する評価指標算出部と、
上記複数の帯状領域それぞれに対して、上記評価指標算出部により算出される評価指数が最小になるように、該帯状領域に含まれる表面欠陥から上記クラスタに含むべき表面欠陥を選択するクラスタ調整部と、
を有し、
上記クラスタ仮定部は、上記帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれの分布形態として、上記分布形態候補の全ての組み合わせを順次選択して上記クラスタに設定し、
上記評価指標算出部及び上記クラスタ調整部は、当該分布形態候補の組み合わせが設定された全てのクラスタについて、上記評価指標の算出及び上記クラスタの調整を行い、
上記クラスタ特定部は、上記評価指標が最小となる長手方向及び短手方向の分布形態が設定された1のクラスタを、該帯状領域に対して特定してもよい。
上記クラスタ特定部により特定された上記各クラスタに対して、該クラスタに含まれる表面欠陥の数を、該クラスタが特定された帯状領域と該該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで連続欠陥判定指標を算出し、算出された上記連続欠陥判定指標に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当しないことを判定するクラスタ事前判定部を更に有してもよい。
上記分割部により分割された各帯状領域に対して、該帯状領域に含まれる表面欠陥の数を、該帯状領域と該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで簡易連続欠陥判定指標を算出し、算出された上記簡易連続欠陥判定指標に基づいて、該帯状領域に含まれる表面欠陥が上記連続欠陥に該当しないことを判定する帯状領域事前判定部を更に有してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、複数の製造工程における処理を経て製造される薄鋼板に発生し、表面欠陥検出装置により検出された複数の表面欠陥に関する情報を基に、該複数の表面欠陥の分布形態を解析して、該薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定機能を実現させるためのプログラムであって、
コンピュータに、
上記薄鋼板に発生した複数の表面欠陥それぞれの発生位置について長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データを、上記表面欠陥検出装置から取得する取得機能と、
上記薄鋼板の少なくとも一面を上記薄鋼板の短手方向で、予め設定された間隔を有する複数の帯状領域に分割する分割機能と、
上記分割機能により分割された複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の上記表面欠陥を含むクラスタを、上記複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定機能と、
上記帯状領域に含まれる複数の表面欠陥のうちの、上記クラスタ特定機能により特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が上記連続欠陥に該当するか否かを判定する判定機能と、
を実現させるためのプログラムが提供される。
以上説明したように本発明によれば、薄鋼板を複数の帯状領域に短手方向で分割し、その帯状領域毎に1ずつクラスタを特定し、そのクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、その表面欠陥が連続欠陥か否かの判定を行うことができる。そして、このような判定を各帯状領域に対して行うことができる。従って、薄鋼板に発生した複数の表面欠陥に対して、薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無の判定を、迅速且つ確実に行うことができる。
本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法が検出する連続欠陥の概要について説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法について説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法で分割された帯状領域について説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法におけるクラスタリングについて説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法で特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態について説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法において異なる分割位置で複数回分割が行われることについて説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法において異なる分割位置で複数回分割が行われることについて説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップの一例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップにおける各処理を概念的に説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップにおける各処理を概念的に説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップにおける各処理を概念的に説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップにおける各処理を概念的に説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップにおける各処理を概念的に説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定装置について説明するための説明図である。 同実施形態に係る連続欠陥判定方法の変更例について説明するための説明図である。 本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法について説明するための説明図である。 本実施形態に係る連続欠陥判定における指標について説明するための説明図である。 第2実施形態に係る連続欠陥判定装置について説明するための説明図である。 プログラムを実行することにより一連の処理を実現するコンピュータの構成例を説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法等は、上述の通り、薄鋼板の長手方向に連続して発生した複数の表面欠陥である「連続欠陥」の有無を、迅速且つ確実に判定することが可能である。なお、本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法等は、この連続欠陥の有無の判定を、連続欠陥だけでなくそれ以外の複数の表面欠陥を含む複数の表面欠陥の中から行う。この連続欠陥判定方法等は、連続欠陥の有無を判定するだけなく、連続欠陥がある場合、その連続欠陥を構成する複数の表面欠陥をクラスタという形で抽出し、そのクラスタ内の複数の表面欠陥の分布形態をも抽出することができる。従って、結果として、本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法等は、複数の表面欠陥から連続欠陥を検出又は抽出することになる。そこで、ここでは、連続欠陥の有無の「判定」を、連続欠陥の「検出」又は「抽出」などとも言う。
鉄鋼業における薄鋼板は、上述の通り、長手方向及び短手方向を有するような長方形の板状に形成され、長手方向に搬送されつつ、例えば連続鋳造工程、加熱工程及び熱間圧延工程などのような複数の製造工程における処理を経て製造される。ただし、この薄鋼板は正確な長方形の板状である必要はないことは言うまでもない。また、長手方向は、この場合、搬送方向又は通板方向とも言え、短手方向は、幅方向とも言える。
また、以下で説明する本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法等では、複数の表面欠陥の集まりをグループとして扱う。但し、上記特許文献1に記載のグループ化とは異なり、処理を高速化し、かつ、確実に連続欠陥の有無を判定することが可能な様々な処理が、この各実施形態には含まれる。このグループを、ここでは「クラスタ」と呼び、このクラスタを特定することを、「クラスタリング」と言う。しかしながら、クラスタと言うが、本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法等は、連続欠陥を抽出するため、クラスタには特定の位置に集中して発生した表面欠陥だけでなく、連続的に発生した表面欠陥も含まれる。
更に、本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法等では、クラスタから、連続欠陥でない表面欠陥を取り除くために、上記非特許文献1に記載の「ロバスト化」されたクラスタリング手法を応用・改善して使用する。また、非特許文献1に記載のクラスタリング手法を用いる本発明の各実施形態であっても、単に、その手法を用いるのではなく、連続欠陥の有無判定をより迅速かつ正確に行うために、その他様々な処理が行われることとなる。なお、ロバスト化とは、定性的には、例えば、クラスタに含まれるべきでない表面欠陥(ノイズとも言う)がそのクラスタに与える影響を低減することとも言える。また、この定性的な説明は、ロバスト化の意味内容を限定するものではない。ただし、クラスタリング手法は、この非特許文献1に記載のクラスタリング手法に限定されるものではなく、その他のクラスタリング手法をも使用することが可能である。しかしながら、ここでは、このクラスタリング手法における様々な処理が容易に理解できるように、このクラスタリング手法については、後述することにする。
つまり、以下の本発明の各実施形態では、まず、連続欠陥の概要について説明した後、応用されたクラスタリング手法を用いた本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法について説明し、その後、この連続欠陥判定方法で使用される応用クラスタリング手法について説明する。このような処理について説明した後、この処理を実現するための構成、つまり、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定装置について説明し、本実施形態による実施例を交えつつ効果の例について説明する。そして、この本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法の変更例について説明する。要するに、以下では、次の順序で説明することとする。
1.連続欠陥の概要
2.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法
3.連続欠陥判定方法で使用される応用されたクラスタリング手法
4.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定装置
5.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法等による実施例及び効果例
6.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法の変更例
7.本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法および連続欠陥判定装置
8.本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法等による実施例及び効果例
<1.連続欠陥の概要>
図1は、本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法が検出する連続欠陥の概要について説明するための説明図である。
図1に示すように、薄鋼板Fの表面(片面でも両面でもよい)には、1又は2以上の表面欠陥が発生しうる。表面欠陥は、単に「表面疵」とも言い、例えば、介在物が現れでた欠陥や凹凸状の欠陥などが含まれる。しかし、表面欠陥の種類はこれに限定されるものではなく、直線状の疵などの様々な形状的な欠陥、その他特定の部位が変質したような組成的な欠陥も含まれうる。このような表面欠陥の種類は、表面欠陥を検出する表面欠陥検出装置の検出性能に依存するため、様々な表面欠陥検出装置が抽出する表面欠陥に対して検出を行える本実施形態に係る連続欠陥判定方法では、特に限定されるものではない。図1では、それらの表面欠陥の発生位置のそれぞれを黒丸(●)で表している。
この表面欠陥は、薄鋼板Fの長手方向と短手方向とに分布しており、各表面欠陥の発生位置は、その長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データにより表すことができる。つまり、後述する自動連続欠陥判定装置などからは、この座標データが取得されることとなる。ここでは、説明の便宜上、短手方向座標を「x」座標とし、長手方向座標を「x」座標とする。つまり、各表面欠陥の位置は、所定の基準位置からの(xn1,xn2)の2次元の座標データとして表される。ここで、添え字n(n=1〜N;Nは整数)は各表面欠陥を表す。
なお、長手方向座標及び短手方向座標の基準位置は、任意に設定可能である。また、添え字i(i=1,2)を長手方向座標又は短手方向座標を表すことに使用し、各表面欠陥の座標データをベクトルxで表すこととする。つまり、下記式1−1は、n番目の表面欠陥の座標データを表すベクトルxであり、そのベクトルxは、各要素(xn1,xn2)で表されることとする。この際、Nは、薄鋼板Fの表面に発生した表面欠陥の合計数(整数)を表す。
Figure 2010185868
また、図1では、薄鋼板Fの一面に発生した表面欠陥のみを示しているが、薄鋼板Fの両面の表面欠陥が検出された場合も、以下で説明する本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法を各面に適用することにより、薄鋼板Fの両面の連続欠陥の有無の判定が可能である。しかし、ここでは、一面のみに対して連続欠陥判定方法を適用する場合について説明する。
図1に示すように、複数の表面欠陥は、ランダムに発生するだけでなく、例えば特定のかたまりや規則性を持って発生するなど、相互の座標データ間に何らかの関連性を有するものもある。その例として、図1では、薄鋼板Fには長手方向に連続して発生したいわゆる「連続欠陥(直線欠陥)」が形成されている。この連続欠陥は、例えば、短手方向座標xにおいて集中的な値を取り、かつ、長手方向座標xにおいて短手方向に比べて広範囲に位置したり周期的な規則性を有するなどのように、座標データに関連性を有する複数の表面欠陥の集まりであるとも言える。また、それとは異なり、連続欠陥に対して紙面右方(x軸正の方向)側には、特定の位置に集中してかたまりを形成する表面欠陥も形成されている。そして、それ以外にも、偶発的又は何らかの原因によりランダム(散発的に)に発生した複数の連続欠陥が形成されている。ここで、連続欠陥と区別するために、かたまりを形成する複数の表面欠陥を「集中欠陥」と呼び、散発的に発生する複数の表面欠陥を「散発欠陥」と呼ぶこととする。なお、複数の表面欠陥の座標データ間の関連性としては、集中欠陥は、例えば、短手方向座標x及び長手方向座標xにおいて任意の値に集中するというような関連性を有するとも言える。一方、散発欠陥は、短手方向座標x及び長手方向座標xにおいて特定の偏り無くランダム又は偶発的な値を取りうるため、このような座標データ間の関連性がないか少ないとも言えるが、敢えて言えば、座標データがランダム又は偶発的な値を取るという関連性を有するとも言える。このような例えば連続欠陥及び集中欠陥等における表面欠陥間の座標データの関連性は、複数の表面欠陥の分布形態として表される。
そこで、以下で説明する本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法は、これらの表面欠陥間の座標データの関連性を表した分布形態から連続欠陥特有の関連性を抽出することにより、図1に示すように連続欠陥だけでなく集中欠陥や散発欠陥が存在する薄鋼板Fから、連続欠陥(図1におけるクラスタC)の有無を迅速且つ確実に判定することを可能にしている。以下、この本発明の各実施形態に係る連続欠陥判定方法について詳しく説明する。
<2.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法>
図2は、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法について説明するための説明図である。まず、図2を参照しつつ、この連続欠陥判定方法の概要について説明した後、図3〜図7を適宜参照しつつ、各処理について詳しく説明する。
(2−1.概要)
本実施形態に係る連続欠陥判定方法では、図2に示すように、薄鋼板Fに発生した複数の表面欠陥それぞれの座標データ(つまりベクトルx)を、表面欠陥検出装置から取得するステップS01(取得ステップの一例)と、予め設定された間隔で短手方向の分割位置を決定するステップS03とが処理された後、薄鋼板Fの全領域をその分割位置で複数の帯状領域に分割するステップS05が処理される。このステップS03とステップS05は、分割ステップの一例である。
このステップS05の処理後、本実施形態に係る連続欠陥判定方法では、各帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データにより規定される分布形態に基づいて、各帯状領域それぞれにクラスタを1ずつ特定するステップS07が処理される(クラスタ特定ステップの一例)。このステップS07で行われる応用クラスタリング手法については詳しく後述するが、ステップS07からは、各帯状領域それぞれにクラスタが1ずつ特定される。このクラスタは、その帯状領域に含まれる複数の表面欠陥の少なくとも1部(全てであってもよい)を含むように特定され、結果として、そのクラスタに含まれる表面欠陥の分布形態が特定されることになる。従って、ステップS07では、各帯状領域それぞれに1のクラスタ内の表面欠陥の分布形態を得ることができる。
なお、ここで言う「分布形態」、つまりクラスタに含まれた複数の表面欠陥の分布形態は、例えば、複数の表面欠陥の「確率密度関数」で表される。なお、ここでは、分布形態の一例として、確率密度関数を使用する場合について説明するが、この分布形態は、累積密度関数、度数密度関数又は累積度数密度関数等であってもよい。ただし、説明の便宜上、ここでは、分布形態として確率密度関数を例に挙げて説明し、分布形態が複数の表面欠陥の座標データの関連性を意味するという広義の意味において、この確率密度関数には他の累積密度関数、度数密度関数又は累積度数密度関数等も含まれるものとして説明する。なお、分布形態が確率密度関数でない場合については、後ほど補足説明することにする。
そして、分布形態を表す確率密度分布には、その「確率密度関数の種類」やその関数の形状を規定する様々な「パラメータ(確率密度関数の特徴量の一例)」が含まれることとなる。
ステップS07の処理後は、ステップS07で得られた各帯状領域に対するクラスタに含まれる複数の表面欠陥の座標データの関連性を表す分布形態、つまり例えば確率密度関数等に基づいて、そのクラスタに含まれる複数の表面欠陥が連続欠陥か否かを判定し、その判定結果を記録するステップS09(判定ステップの一例)が処理される。そして、ステップS11で全ての帯状領域に対して連続欠陥の有無の判定が行われたか否かが確認され、全ての帯状領域に判定が行われるまで、ステップS09が繰り返し処理される。一方、全ての帯状領域に判定が行われた場合、ステップS13に進む。
このステップS03〜ステップS11では、上述のように、薄鋼板Fの全域に対して1又は2以上のクラスタを特定するのではなく、まず、薄鋼板Fを複数の帯状領域に分割し、その分割後の各帯状領域に対してただ1つのクラスタを特定することなる。従って、例えば、クラスタの個数を変更したり、表面欠陥が複数のクラスタのいずれに含まれるのか判定したり、複数のクラスタを結合して連続欠陥を含む1のクラスタを生成したり、と言った複雑な処理を行わずに済むため、連続欠陥判定処理を非常に高速化することが可能である。また、帯状領域として、短手方向で分割されて長手方向に長い短冊状の領域を使用するため、長手方向に連続した連続欠陥の検出精度を、飛躍的に向上させることが可能である。
一方、ステップS13では、ステップS03及びステップS05による分割ステップが、その分割位置が毎回異なるように、所定回数(2以上)行われたか否かが確認される。この分割処理が所定回数未満(例えば1回)しか行われてない場合、ステップS03以降の処理が繰り返される。なお、繰り返されたステップS03では、それ以前に処理された位置と異なる位置を分割位置と定める。つまり、短冊状に分割されるその位置が、各ステップS03及びステップS05における処理毎に異なることとなる。
上記のように短冊状に分割した場合、丁度分割位置に連続欠陥が存在したり、分割位置により連続欠陥が分断されて、ステップS09において1の連続欠陥を表すクラスタが特定できない場合が存在する。そこで、このステップS13からステップS03及びステップS05へと、分割位置をずらしつつ反復することにより、確実に連続欠陥を表すクラスタを特定することが可能となる。従って、連続欠陥の検出精度を、更に大幅に向上させることが可能である。
そして、ステップS13の処理後、つまり所定の複数回の分割等が行われた場合には、ステップS15が処理され、他の薄鋼板Fに対して連続欠陥の有無判定を行うか否かが判断される。他の薄鋼板Fがない場合、連続欠陥判定方法における処理は終了する一方、他の薄鋼板Fがある場合、ステップS01以降の処理が、その鋼板Fに対して行われる。
以上、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法の概要について説明した。
次に、図2と共に図3〜図6を適宜参照しつつ、各処理の具体的な内容について説明する。
(2−2.各処理の内容)
[ステップS01(取得ステップの一例)]
ステップS01では、一の薄鋼板Fに発生した複数の表面欠陥それぞれの座標データ(ベクトルx,但しn=1〜N)が、製造ラインに設置された表面欠陥検出装置(表面欠陥検出装置10)から取得される。表面欠陥検出装置と、本連続欠陥判定方法を実現する連続欠陥判定装置(連続欠陥判定装置100)とは、工場内情報ネットワークで接続され、情報の授受がこのネットワーク経由で行われる。ただし、この際、表面欠陥検出装置が検出した上記座標データは、一旦、他の記憶部(表面欠陥記憶部20)に記録され、この記録された座標データを、連続欠陥判定装置が取得してもよい。このように取得された座標データには、少なくとも短手方向座標xn1と長手方向座標xn2とが含まれる。また、ここでは説明の便宜上、一の薄鋼板Fに対する表面欠陥の座標データが取得されるが、複数の薄鋼板Fに対する座標データを同時に取得してもよい。しかしながら、一の薄鋼板Fに対する複数の座標データは一纏めとして取り扱うため、ここでは一の薄鋼板Fに対してのみ座標データを取得する場合を例示している。この一の薄鋼板Fに対する複数の表面欠陥の座標データを、ここでは座標データの「全集合G」として扱うこととする。
[ステップS03及びステップS05(分割ステップの一例)]
ステップS03では、この薄鋼板Fの短手方向における分割位置を特定し、ステップS05では、ステップS03で特定された分割位置を用いて、薄鋼板Fの全領域を短手方向で複数の帯状領域Tに分割する。
この帯状領域Tの概念的な様子を図3に示す。図3は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法で分割された帯状領域について説明するための説明図である。
図3に示すように、薄鋼板Fの全域は、短手方向で複数の帯状領域Tに分割される。換言すれば、各座標データは、どの帯状領域Tに属するのかという意味で、短手方向座標xn1を基に、その短手方向座標xn1がいずれの帯状領域Tに含まれるのかが判定されて、分類されることとなる。その結果、複数の座標データの集合である全集合Gは、短手方向座標xn1で分類された複数の「部分集合G(q=1,2,3…Q)」に分けられる。なお、各部分集合Gを区画している各帯状領域Tを、同じ添え字qを使用して、ここでは帯状領域Tとも言う。また、添え字qの上限値Qは、分割された帯状領域Tの個数を表す整数である。
この際、各帯状領域Tの幅ΔTは、予め設定された間隔の一例であって、複数の連続欠陥が1の帯状領域Tに含まれないように、適宜調整されて予め設定されることが望ましい。幅ΔTの決定方法の具体的な例としては、予め連続欠陥であることが判っている複数の表面欠陥(教師データ)に対して、本実施形態に係る連続欠陥判定方法を使用した場合に、その判定結果が適切となるように幅ΔTを決定する方法が挙げられる。この方法以外にも、実験的に判定結果が適切となるように幅ΔTを決定したり、経験則的に連続欠陥が発生しうる短手方向の間隔などから導かれてもよい。ただし、この幅ΔTは、連続欠陥判定方法が適用される測定対象の特定や、その測定対象の製造装置の特定等に応じて異なる。この際、幅ΔTは、各帯状領域T毎に異なる幅に設定されてもよいが、ここでは全ての帯状領域Tの幅ΔTが等しい場合を例示して説明する。幅ΔTが各帯状領域T毎に異なる場合、例えば、経験則や実験等から連続欠陥が発生しやすい個所の幅ΔTを、発生しにくい個所の幅ΔTよりも細くするなど、薄鋼板Fの短手方向における分解能を局所的に高めることも可能である。
幅ΔTを用いて、帯状領域Tへ分割後の各座標データが、いずれの帯状領域に含まれるのかを判別する方法の具体的な例としては、例えば、下記式2−1により判別する方法などが挙げられる。つまり、この例の場合、短手方向座標xn1が式2−1を満たす座標データは、q番目の部分集合G(その帯状領域)に含まれることとなる。なお、ここで挙げた分類の仕方は一例の概要であり、細かい設定や基準位置の取り方、端部の調整等は適宜設定・変更可能である。
Figure 2010185868
[ステップS07(クラスタ特定ステップの一例)]
ステップS07では、ステップS01で取得された座標データ、特にこの座標データで規定される帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、ステップS03及びステップS05で分割された一の帯状領域Tに含まれた複数の表面欠陥のうち、座標データが相互に関連した少なくとも一部の表面欠陥を含むクラスタが、複数の帯状領域T毎に1ずつ特定される。そして、特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の座標データの関連性を表す分布形態が抽出される。この際、使用される応用クラスタリング手法については、詳しく後述するが、クラスタを表す表面欠陥の分布形態として、上述の通り、各帯状領域T毎に確率密度関数等が得られることになる。
このクラスタリングの概念的な様子を図4に示す。図4は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法におけるクラスタリングについて説明するための説明図である。
図4に示すように、このステップS07では、各帯状領域T毎に1のクラスタCが特定される。各帯状領域Tに対するクラスタを、同じ添え字qを用いて、ここではクラスタCとも言う。このクラスタCは、その帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥のうち少なくとも一部の表面欠陥を含む。そして、1のクラスタCに含まれる少なくとも一部の表面欠陥は、座標データが相互に関連している。ただし、この際、散発欠陥に関連性がないとするならば問題ないが、仮に散発欠陥に上記のようなランダム又は偶発的な値を取るという関連性があるとするならば、クラスタCに含まれる表面欠陥の座標データの関連性は、その散発欠陥における座標データ間の関連性とは異なる関連性となる。換言すれば、このステップS07では、短手方向座標x及び長手方向座標xの少なくとも一方がランダム又は偶発的な分布(例えば一様分布)とならない複数の表面欠陥が含まれるように、クラスタCが特定される。つまり、全ての表面欠陥がステップS07の処理後に特定されるクラスタCのいずれかに含まれる必要は必ずしもなく、例えば散発欠陥などのようなランダムな表面欠陥がこのクラスタCからは除かれることとなる(一部の散発欠陥が除かれない場合もある。)。つまり、このクラスタCには、好ましくは、連続欠陥か、集中欠陥が含まれることとなる。換言すれば、クラスタCが連続欠陥であるか否かの情報は、このクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に含まれることとなる。
なお、このようにクラスタCを特定する際、そのクラスタCに含めるべき表面欠陥同士の座標データ間の関連性は、帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥の座標データにより規定される分布形態、つまり、帯状領域Tに散らばった表面欠陥全ての散らばり具合(分布形態)に含まれている。従って、このステップS07では、この帯状領域T内の複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、上記のように座標データ間に関連性のある表面欠陥が含まれるように、クラスタCを特定する。
一方、上述の通り、ステップS07で特定されるクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態は、表面欠陥の発生位置を表す確率密度関数で表される。より具体的には、分布形態は、例えば確率密度関数の種類と、その確率密度関数の特徴量を表すパラメータ(例えば、確率密度関数の平均値・標準偏差σ・分散σ・分布の幅、分布内に含めた表面欠陥の個数など)とにより表される。つまり、座標データから、各座標データが関連した複数の表面欠陥を含むクラスタCが特定され、その特定されたクラスタCからは、そのクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態が、短手方向(x座標)対する確率密度関数の種類及びそのパラメータと、長手方向(x座標)に対する確率密度関数の種類及びそのパラメータと、により抽出される。その結果、図4に示すように、短手方向及び長手方向それぞれに対する確率密度関数のセットを抽出することができるクラスタCが、各帯状領域T毎に1ずつ特定される。換言すれば、このステップS07からは、各帯状領域Tに含まれた少なくとも一部の表面欠陥の座標データの関連性が、各帯状領域T毎に1ずつ、分布状態のセット(つまり確率密度関数のセット)として特定されることになる。
このステップS07で特定されるクラスタCの確率密度関数のセットについてより具体的に説明する。クラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態の一例を図5に示す。図5は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法で特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態について説明するための説明図である。
図5では、分布形態の一例として、一様分布pdfと、正規分布pdfと、ラプラス分布pdfとを示している。ただし、クラスタCを表す確率密度関数の種類は、これらの分布に限定されるものではなく、例えば、ガンマ分布・コーシー分布など様々な分布であってもよい。しかし、ここでは3の分布から、短手方向(xn1座標)及び長手方向(xn2座標)それぞれに対する確率密度関数が選択される場合について説明する。
例えば、図4に示す連続欠陥のクラスタC(図4における帯状領域TのクラスタC)に対して、ステップS07で、短手方向(xn1座標)についてはラプラス分布pdfとそのパラメータτ,λが特定され、長手方向(xn2座標)については一様分布pdfとそのパラメータa,bが特定されることとなる。一方、例えば、図4に示す集中欠陥のクラスタC(図4における帯状領域TのクラスタC)に対して、ステップS07で、短手方向については一様分布pdfとそのパラメータτ,λが特定され、長手方向については正規分布pdfとそのパラメータμ,σが特定されることとなる。なお、このような短手方向及び長手方向それぞれに対する確率密度関数の組み合わせは、この例に限定されるものではなく、クラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態の特徴等により特定されるもので、このクラスタCの特定方法(つまり応用クラスタリング手法)については詳しく後述する。
[ステップS09(判定ステップの一例)]
ステップS09では、ステップS07で特定されたクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、そのクラスタCに含まれる表面欠陥が連続欠陥に該当するか否かが判定される。
上述の通り、ステップS07で特定されたクラスタCから抽出される分布形態、つまり、短手方向(x座標)及び長手方向(x座標)それぞれに対する確率密度関数は、そのクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態の特徴(つまり関連性)を反映している。従って、このステップS09では、ステップS07で抽出された分布形態に基づいて、そのクラスタCが連続欠陥であるか否かを判定する。
より具体的には、上述の通り、特定された分布形態には、短手方向及び長手方向それぞれに対する確率密度関数が含まれる。そこで、このステップS09では、これらの確率密度関数の種類の組み合わせ、及び、その確率密度関数のパラメータ(特徴量の一例)の少なくとも一方に基づいて、連続欠陥を検出する。つまり、確率密度関数の種類やそのパラメータは、連続欠陥であれば、その連続欠陥であることの特徴(座標データの関連性)が含まれる。従って、その特徴が表された分布形態で特定されたクラスタCは、連続欠陥を表していることとなる。
連続欠陥に対するこの確率密度関数の種類の組み合わせの例としては、短手方向(x座標)がラプラス分布pdfであり、長手方向(x座標)が一様分布pdfである場合が挙げられる。この場合、表面欠陥の分布は、ほぼ長手方向に延びた直線状の分布となる。従って、このような組み合わせの場合に、ステップS09において、クラスタCに含まれた複数の表面欠陥が連続欠陥であると判定することも可能である。
この場合、更に、パラメータ等により、連続欠陥を絞り込むことも可能である。例えば、短手方向座標xのラプラス分布pdfに対して、その標準偏差が閾値以下(例えば0.8mm)である場合に連続欠陥に該当すると判定すると言うような制限を設けることも可能である。この場合、ラプラス分布を取るものの、連続欠陥と判定するには分布幅が太すぎるような複数の表面欠陥の集合を、誤って連続欠陥と判定することを防止できる。
更に、そのクラスタCに含まれる表面欠陥の個数に閾値(例えば6個)を設定し、その閾値未満である場合には、クラスタCは連続欠陥ではないと判定することも可能である。このように個数に制限を設けることにより、連続欠陥と言えるほどの頻度で発生していない複数の表面欠陥の集合を、誤って連続欠陥と判定することを防止できる。
なお、ここで挙げた確率密度関数の種類の組み合わせは、あくまで一例であり、様々な組み合わせが考え得る。例えば、長手方向が一様分布で短手方向も一様分布である組み合わせや、長手方向が正規分布で短手方向が正規分布である組み合わせ、長手方向及び短手方向の一方が一様分布で他方が正規分布である組み合わせ、長手方向が正規分布で短手方向がラプラス分布である組み合わせ、などが挙げられる。これらの組み合わせでも、例えば、長手方向の分布幅(標準偏差でもよい)が短手方向の分布幅よりも長い場合に、連続欠陥を検出することが可能である。更に言えば、例えば、長手方向の分布幅が短手方向の分布幅よりも長いという意味では、単にパラメータのみを使用して、クラスタCに含まれた複数の表面欠陥が連続欠陥であると判定することも可能である。
ただし、上記のように長手方向に一様分布をとり、短手方向にラプラス分布を取るようなクラスタCを、連続欠陥であると判定する場合、実際に連続欠陥を検出する精度を向上させて、誤った集合欠陥などを連続欠陥と判定するなどの誤判定をより高精度に防止することが可能である。
[ステップS11]
ステップS11では、全ての帯状領域TについてステップS09の判定処理が行われたか否かが確認される。そして、全ての帯状領域TについてステップS09の判定処理が行われていない場合には、ステップS09の処理が繰り返されて、全ての帯状領域TのクラスタCについて、連続欠陥が含まれるか否かが判定されることとなる。一方、全ての帯状領域TについてステップS09の判定処理が行われた場合には、ステップS13に進む。このステップS03〜ステップS11の一連の処理により、薄鋼板Fの全域について少なくとも1度以上、連続欠陥の検出が行われる。
[ステップS13]
ステップS13では、分割位置が異なるように、所定の複数回、分割が行われたか否かが判定される。つまり、薄鋼板Fの全域について連続欠陥の検出が所定の複数回数行われ、かつ、各検出時の帯状領域Tが薄鋼板Fの異なる位置で分割されているか否かが確認される。そして、複数回分割が行われていない場合、ステップS03以降の処理が繰り返される。
この繰り返しの処理において、ステップS03では、それ以前に同一の薄鋼板Fに対して分割を行った位置と異なる位置が境目となるように、分割位置が決定され、ステップS05では、その分割位置における複数の帯状領域Tへの分割が行われる。換言すれば、このステップS03及びステップS05(分割ステップの一例)では、薄鋼板Fが複数の帯状領域Tへと、分割位置を短手方向でずらしつつ複数回分割されることとなる。そして、その分割位置が異なる複数の帯状領域Tに対して、上記のステップS07〜ステップS11(クラスタ特定ステップ及び判定ステップの一例)が再度処理されて、各帯状領域Tから連続欠陥が検出される。このように分割位置が異なる連続欠陥の検出が複数回行われることにより、更に確実に連続欠陥を検出することが可能となる。このことについて、図6及び図7を参照しつつより詳細に説明する。
図6及び図7は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法において異なる分割位置で複数回分割が行われることについて説明するための説明図である。
図6に示すように、ステップS03で決定される分割位置によっては、連続欠陥が2の帯状領域にまたがり、その結果、実際には1の連続欠陥を表すべきクラスタとして、2の帯状領域T,TのそれぞれのクラスタC,Cとして特定されることがあり得る。この場合、ステップS09による判定条件の設定次第では、それぞれが連続欠陥であると判定される場合もありうる。しかし、少なくとも一方が連続欠陥ではないと判定されたり、一方又は両方の帯状領域Tで連続欠陥が散発欠陥であるとしてクラスタCから除外されることも考え得る。
そこで、ステップS13からステップS03以降が反復されて分割位置の異なる複数回の検出が行われることにより、図7に示すように、1の帯状領域T内に1の連続欠陥が分割されずに含まれる確率を高めることができる。その結果、上記ステップS09〜ステップS11の処理により、図7に示すような連続欠陥が表されたクラスタCが特定される確率を高めて、連続欠陥の検出精度を飛躍的に向上させることが可能である。なお、図7では、分割位置が毎回異なるように、分割位置をΔOFFだけオフセット(ずらし)された場合を示している。ただし、各帯状領域Tの幅ΔTが等幅でない場合、毎回の各帯状領域Tの幅ΔTを変更することにより分割位置を異ならせるなどのように、分割位置を異ならせる方法は特に限定されるものではない。
なお、分割位置のずれ量ΔOFFと、その分割が行われる回数とは、適宜適切な値に設定することが可能である。但し、ずれ量ΔOFFは、帯状領域Tの幅ΔT/2以下であることが望ましく、その範囲内でずれ量ΔOFFを小さく設定する場合、分割回数は、2以上の回数で、より大きく設定されることが望ましい。このようにずれ量ΔOFFと分割回数が設定される場合、分割位置が連続欠陥と重なって連続欠陥が検出できなくなる可能性を更に低減することが可能である。なお、処理量等を低減させたい場合には、ずれ量ΔOFFを帯状領域Tの幅ΔT/2と等しく設定し、分割回数を2回に設定することが望ましい。更に言えば、分割位置が連続欠陥と重ならない条件下や、そのような重なりを許容する条件下では、このステップS13は必ずしも処理される必要はない。
[ステップS15]
ステップS15では、他の薄鋼板Fに対しても検出を行う必要があるか否かを確認し、他の薄鋼板Fが存在しない場合には、連続欠陥判定方法における処理を終了する。一方、他の薄鋼板Fが存在する場合には、ステップS01以降の処理が繰り返されることとなる。
以上、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法の各処理について具体的に説明した。次に、図8等を参照しつつ、上記ステップS07(クラスタ特定ステップの一例)で使用される応用クラスタリング手法について説明する。
<3.連続欠陥判定方法で使用される応用されたクラスタリング手法>
図8は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定処理について説明するための説明図である。
このクラスタリング手法では、上述の通り、非特許文献1に記載のロバスト化されたクラスタリング手法を、更に、連続欠陥の検出の迅速化及び精度向上のための応用を加えて使用する(この応用前の詳しいクラスタリング手法については非特許文献1を参照。)。この応用されたクラスタリング手法の概要は、以下の通りである。
(3−1.概要)
このクラスタリング手法は、上述のように、ステップS03及びステップS05で分割された各帯状領域T毎に行われ、各帯状領域Tに含まれた複数の表面欠陥の座標データにより規定される分布形態に基づいて、各帯状領域Tそれぞれに対して1のクラスタCを特定する。この特定されるクラスタCからは、そのクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態を抽出することができるため、このクラスタリング手法の処理後は、そのクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態(つまり短手方向及び長手方向それぞれの確率密度関数)が得られることとなる。
このクラスタリング手法では、クラスタCの短手方向及び長手方向のそれぞれに、1ずつ確率密度関数の種類が仮定される。なお、これは、確率密度関数の種類を仮定することにより、クラスタCに含まれうる複数の表面欠陥の座標データの関連性が仮定される、と言い換えることもできる。一方、それとは異なる散発欠陥の分布形態として、帯状領域T全域の短手方向及び長手方向のそれぞれに一様分布が仮定される。ここでは散発欠陥の集合を「散発集合GRA」とし、クラスタCの集合を「クラスタ集合G」とする。そして、まず、その帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥が、一様分布が仮定された散発欠陥であると仮定される。換言すれば、帯状領域Tに含まれる部分集合Gは、一旦散発集合GRAであると仮定される。その後、帯状領域Tに含まれる表面欠陥を1つずつ、散発集合GRAからクラスタ集合Gへと変更していく。
この際、このクラスタリング手法では、このクラスタ集合Gと、散発集合GRAとへの分類が、実際の表面欠陥の分布形態に対してどの程度一致しているかを数値として表した評価指標を算出する。この評価指標については詳しく後述するが、この評価指標は、1の表面欠陥が散発集合GRAからクラスタ集合Gへと変更される度に、算出される。そして、この評価指標が最も良い数値(つまり、その分類が実際の表面欠陥の分布形態に対してもっとも一致していることを表す数値)となった状態における分類が採用される。この分類後にクラスタ集合Gに含まれる複数の表面欠陥から、そのクラスタCに仮定された確率密度関数のパラメータが得られる。
一方、このようなパラメータの導出を、クラスタCの短手方向及び長手方向のそれぞれに仮定する確率密度関数の種類を変更しつつ、繰り返し行う。その結果、短手方向及び長手方向への確率密度関数の種類の組み合わせ毎に、最適なパラメータと評価指標とが得られる。そして、最も評価指標が良くなる確率密度関数の種類の組み合わせと、そのパラメータとにより、クラスタCが特定されることとなる。
なお、この際、クラスタCとして連続欠陥が特定される精度を向上させるために、長手方向が短手方向よりも長いクラスタCが特に特定されるような処理が行われる。この処理の例として応用クラスタリング手法では、散発集合GRAからクラスタ集合Gへと1ずつ表面欠陥を変更する際に、その表面欠陥の選択が、長手方向が短手方向よりも長いクラスタCとなるように行われる。この選択は、帯状領域Tにおける複数の表面欠陥の中心位置(重心位置)からの距離が近いものから順に行われる。ただし、この距離として、長手方向に引き伸ばされたり短手方向に縮められたような「重み付き距離(例えばマハラノビス距離)」を使用することにより、長手方向が短手方向よりも長いクラスタCが特に特定されることになる。このような選択を行うことにより、連続欠陥の検出精度を更に向上させることが可能である。
以上、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法で使用される応用クラスタリング手法の概要について説明した。次に、図8〜図13を参照しつつ、各処理の具体的な内容について説明する。図8は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップの一例について説明するための説明図である。図9〜図13は、本実施形態に係る連続欠陥判定方法のクラスタ特定ステップにおける各処理を概念的に説明するための説明図である。
(3−2.各処理の内容)
図8に示すように、図2に記載のステップS07(クラスタ特定ステップの一例)では、ステップS101〜ステップS141が処理される。この各処理について具体的に説明する。
[ステップS101]
まず、ステップS101が処理される。このステップS101では、図2のステップS03及びステップS05で分割された複数の帯状領域Tから1の帯状領域Tが選択される。この選択された1の帯状領域Tの例を図9に示す。このステップS101の処理後はステップS103に進む。
[ステップS103]
ステップS103では、ステップS101で選択された帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥における中心位置(ベクトルx=(x01,x02)、平均値とも言う。)が算出される。説明の便宜上、この帯状領域Tに含まれる部分集合G(q=1〜Q;G=G+G+…+G)をここでは単に「部分集合G」とする。ここでは、帯状領域Tに含まれる散発欠陥が極力除かれた連続欠陥の中心位置を求めることが望ましい。従って、この中心位置を算出する際に、中心位置に対する散発欠陥の影響を低減するために、部分集合Gの中心を求めるのではなく、その部分集合Gの端に位置する表面欠陥が除かれた部分集合g(p=1,2)に対して中心を求めることが望ましい。つまり、ここでは「調整平均」が取られることが望ましい。調整平均により中心位置を求める場合、その中心位置から、帯状領域Tの端部T’に位置する表面欠陥が除かれるため、より正確な中心位置を算出することが可能となる。なお、部分集合Gの端に位置する表面欠陥が除かれた部分集合g(p=1,2)は、ここでは部分集合Gに含まれる複数の表面欠陥(ベクトルx=(xn1,xn2))をx座標及びx座標それぞれについて独立して扱い、各複数の表面欠陥のx座標又はx座標の帯状領域Tにおける端部を取り除いたx座標又はx座標の部分的な集合を意味する。この調整平均が計算される場合を例に挙げてステップS103についてより具体的に説明する。
部分集合G、つまり帯状領域Tに含まれる全ての表面欠陥(座標データ)から、短手方向(x座標)における端部に位置するα%の表面欠陥が除かれ、部分集合gが形成される。そして、この部分集合gについて、短手方向(x座標)の中心位置が計算される。一方、長手方向(x座標)についても同様に、端部に位置するα%の表面欠陥が除かれ、部分集合gが形成される。そして、この部分集合gについて長手方向(x座標)の中心位置が計算される。この際、この中心位置(ベクトルx)は、例えば以下の式3−1のように計算することができる。ただし、N(g)は、部分集合gに含まれる表面欠陥の個数である。
Figure 2010185868
なお、ここで行った調整平均において除かれる表面欠陥は、各座標(x座標又はx座標)における大きい方と小さい方とから均等に、α%の個数(個数=N(G)×α/100)だけ選択される。ただし、例えば部分集合G、つまり帯状領域Tに含まれる表面欠陥の個数N(G)が9個で、αが20%の場合、除かれる個数は1.8となり、片側0.9個となる。このような場合には、端数を切り上げて片側から1個ずつ表面欠陥が除かれることが望ましい。
このステップS103の処理後は、ステップS105に進む。
[ステップS105]
ステップS105では、図9に示すように、上記ステップS103で抽出した短手方向の部分集合gと、長手方向の部分集合gとのそれぞれについて、各要素を構成する表面欠陥の標準偏差σ,σが算出される。標準偏差σ,σは、例えば以下の式3−2で算出することができる。なお、このステップS105又は上記のステップS103では、中心位置と標準偏差σ,σだけでなく、例えば、幅(最小値及び最大値)等の他の必要なパラメータも算出・抽出されることが望ましい。
Figure 2010185868
このステップS105の処理後は、ステップS107に進む。
[ステップS107]
ステップS107では、ステップS105で求められた中心位置から各表面欠陥の座標データまでの距離dが計算される。この際、この距離dは、部分集合g,gに含まれた表面欠陥に対してだけでなく、部分集合G、つまり帯状領域Tに含まれる全ての表面欠陥に対して算出されることが望ましい。また、距離dとしては、長手方向と短手方向が長さにおいて等価なユークリッド距離ではなく、長手方向に引き伸ばされ、短手方向に縮められたような「重み付き距離」を使用する。より具体的に式を用いて説明し、かつ、図10を参照して概念的にも説明する。
重み付き距離dは、例えば、短手方向及び長手方向の重みをそれぞれw,wとすると、下記式3−3により算出される。ただし、短手方向の重みwは、長手方向の重みwよりも大きく設定されることが望ましい。このような重みとしては、例えば、それぞれ標準偏差σ,σの逆数のs乗を使用することができる(式3−4参照。)。なお、sは、2以上であることが望ましく、この指数が大きければ大きいほど、よりクラスタCに含まれる連続欠陥が直線状となる確率を向上させることができる。しかし、余り大きすぎると連続欠陥の直線性が高くなり過ぎて、逆にバラツキのある連続欠陥を検出することが難しくなるため、このsは、適宜調整されて設定されることが望ましい。なお、経験的には、s=3である場合、適度な直線性を有する連続欠陥をクラスタC内に含めることができる可能性を向上させることが可能となる。図10に、重みw,wそれぞれを標準偏差σ,σの逆数の3乗とした場合における等距離の位置を、長手方向を長径とする略楕円状に概念的に図示した。
Figure 2010185868
このように長手方向にバイアスのかかった距離dを使用することにより、後述のクラスタCに含める表面欠陥を選択する際(ステップS127)に、連続欠陥に含まれる表面欠陥が選択される可能性を向上させて、連続欠陥の検出精度を向上させることができる。
このステップS107の処理後は、ステップS111に進む。
[ステップS111(クラスタ仮定ステップの一例)]
ステップS111では、ステップS101で選択された1の帯状領域Tに1のクラスタCが仮定される。つまり、予め与えられた複数の分布形態候補(確率密度関数の種類の候補)から、帯状領域Tの短手方向(x座標)に、1種類の確率密度関数が選択されて設定(仮定)され、長手方向(x座標)にも、1種類の確率密度関数が選択されて設定(仮定)され、その結果、その帯状領域に、2の確率密度関数の種類の組み合わせが設定されたクラスタCが仮定される。この際、仮定される確率密度関数のパラメータの初期値として、ステップS103及びステップS105で算出された中心位置及び標準偏差が使用されてもよい。また、クラスタCに設定される短手方向の確率密度関数の種類と長手方向の確率密度関数の種類とは同じであってもよく、異なっていてもよい。但し、ここで使用される確率密度関数の種類の候補は、予め選択されておくことが望ましい。なお、ここでは、この確率密度関数の候補として、図5に例示した一様分布pdfと正規分布pdfとラプラス分布pdfとが使用される場合を例に挙げて説明する。図11には、短手方向にラプラス分布pdfが仮定され、長手方向に一様分布pdfが仮定された場合を例示している。
一方、クラスタCとは異なり、帯状領域Tの全域を対象に、散発分布GRAに対応する確率密度関数(つまり分布形態)が、予め設定される。この際、設定される確率密度関数は、短手方向及び長手方向共に一様分布pdfとし、その幅(パラメータの一例)は、短手方向又は長手方向の全域に設定される(図12参照。)。
また、このステップS111は、後述するステップS131以降に繰り返し処理される。この場合、ステップS111は、繰り返される度に、長手方向に仮定する確率密度関数の種類と、短手方向に仮定する確率密度関数の種類との組み合わせが異なるように、クラスタCを仮定して、評価指標の計算を実行する。そして、用意している確率密度関数の候補による組み合わせの全てのクラスタCについて評価指標計算が行われるまで、ステップS111〜ステップS125は繰り返される。例えば、一様分布pdfと正規分布pdfとラプラス分布pdfとの3つの確率密度関数が使用される場合、このクラスタCを表す確率密度関数の組み合わせとしては、短手方向に3種類と長手方向に3種類の合計9通りの組み合わせとなる。つまり、ステップS111〜ステップS125は、この場合、合計9回繰り返し処理されることとなる。
このステップS111の処理後は、ステップS121に進む。
なお、後続の各処理の内容を説明した後に、ステップS121〜ステップS133における処理の概念的な内容についても説明することとする。
[ステップS121]
ステップS121では、帯状領域Tに含まれる全ての表面欠陥が、散発欠陥であると仮定される。つまり、帯状領域Tに含まれる表面欠陥の部分集合Gが、散発欠陥の散発集合GRAと等しいと仮定される。
このステップS121の処理後は、ステップS123に進む。
[ステップS123(評価指標算出ステップの一例)]
ステップS123では、ステップS111で仮定されたクラスタCについて、そのクラスタCに含まれた少なくとも一部の表面欠陥の実際の分布形態と、そのクラスタCに設定された分布形態(つまり仮定された確率密度関数の組み合わせとそのパラメータ)との一致の程度を表す評価指標が算出される。なお、評価指標は、定量的な値として算出され、その値の大小により、仮定されたクラスタCの、実際の分布形態に対する一致度合を表すことができる。また、仮定されたクラスタCの一致度合(確からしさともいう。)には、そのクラスタCに含めた表面欠陥の分布がクラスタCに仮定された分布と一致しているか否かだけでなく、クラスタCに含まれなかった表面欠陥の分布が、クラスタC(つまりクラスタ集合G)ではなく散発集合GRAに含まれるとして、その散発集合GRAの一様分布pdfと一致しているか否かの度合も含まれることになる。従って、ステップS121の後に処理されるステップS123では、評価指標は、散発集合GRAに含まれた全ての表面欠陥(部分集合Gの全ての表面欠陥)の実際の分布形態の、帯状領域Tの全域に設定された一様分布pdfに対する一致度合をも表すことになる。しかしながら、言い換えれば、この場合の評価指標は、仮定されたクラスタCに表面欠陥が含まれないことの確からしさを表すこととなり、裏を返せば、その仮定されたクラスタCの確からしさを表していると言える。つまり、この評価指標は、帯状領域T内の全ての表面欠陥の分布形態と、クラスタC及び非クラスタCへ分類された全ての表面欠陥の分布形態との一致の度合を表すことになる。なお、このステップS123は、ステップS127等の処理後にも行われ、このステップS127では、表面欠陥が1ずつクラスタCのクラスタ集合Gへと移される。よって、ステップS127等の処理後のステップS123は、正に、クラスタCの確からしさ(一致の程度)を表すこととなる。
この評価指標の一例として、ここでは「VAC(Volume After Compression)」を使用する。ただし、評価指標は、このVACに限定されるものではなく、ステップS111で仮定されたクラスタCと実際の表面欠陥の分布との一致度合を定量的に表しうる指標であれば、様々な指標を使用することが可能である。しかし、このVACは、このような一致度合を適格に表しうる評価指標であるため、VACを使用する場合、このクラスタ特定処理におけるクラスタ特定精度を向上させることができる。そこで、ここでは評価指標としてVACを例に挙げて説明する。
VACを使用する場合、散発分布の散発集合GRAと、クラスタCのクラスタ集合Gとのそれぞれに対して、評価指標が計算され、その評価指標の合計がVACとなる。散発集合GRA及びクラスタ集合Gそれぞれに対する評価指標を、ここではそれぞれ「VACRA」,「VAC」と言うことにする。つまり、VACは、下記の式3−5で表される。
また、VAC又はVACRAは、それぞれその集合に含まれる表面欠陥1つずつの評価指標の和として表される。この表面欠陥1つずつの評価指標を、ここでは「VAC(x)」とする(ただし、カッコ内のxはベクトルを表すものとする。)。すると、VAC及びVACRAのぞれぞれは、下記式3−5で表される。なお、以下では、添え字C,RAを「U」で代表するものとする。つまり、U=C,RAとする。
Figure 2010185868
このように表されるVACは、クラスタCの確からしさを、値が正の範囲で低くなることにより示す。つまり、VACが高ければクラスタCは実際の表面欠陥の分布と一致しておらず、VACが低ければクラスタCは実際の表面欠陥の分布と一致していることになる。クラスタ集合Gと散発集合GRAについて見れば、VACは、そのクラスタCに仮定された確率密度関数と、そのクラスタCに含まれた表面欠陥の実際の分布との一致度合を、その値の低さにより示す。また、VACRAは、帯状領域T全域に設定された一様分布と、そのクラスタCに含まれなかった表面欠陥の実際の分布との一致度合を、その値の低さにより示すことになる。
更に、1の表面欠陥に対する評価指標であるVAC(x)は、短手方向(x座標)及び長手方向(x座標)毎に算出される評価指標の和として表される。各座標x,xの評価指標を、各座標xを表す添え字iを使用して、VACni(xni)で表すと、VAC(x)は、以下の式3−7で表される。
Figure 2010185868
ここでVACni(xni)について説明する。
1の表面欠陥(ベクトルx)に対する座標xにおける確率密度関数をpdfni(xni)とすると、上記VACni(xni)は、以下の式3−8で表される。
Figure 2010185868
なお、例えば、図11に示すように、一様分布pdfとラプラス分布pdfとのセットが仮定されたクラスタCにベクトルxが含まれている場合、そのベクトルxに対するpdfni(xni)は、短手方向についてはラプラス分布pdfとなり、長手方向については一様分布pdfとなる(pdfn1(xn1)=pdf(xn1),pdfn2(xn2)=pdf(xn2))。
この式3−8中、γは、図11に例示するように、座標xにおける分解能の幅を意味する。この分解能γは、適宜設定・調整されてもよいが、例えば、表面欠陥を取得してきた表面欠陥検出装置のx座標における分解能と等しく設定されてもよい。ただし、本実施形態では、長手方向に延びた連続欠陥を検出するため、長手方向の分解能の幅は、例えば1mなどのように、短手方向の分解能の幅(例えば0.5mm)よりも大きく設定されてもよい。
なお、上記VACni(xni)を実際に計算する際、pdfni(xni)としては、その表面欠陥が属する集合(つまりクラスタ集合G又は散発集合GRA)に設定又は仮定された各座標の確率分布関数が使用されるが、その各確率分布関数のパラメータとしては、ステップS103及びステップS105で算出されたパラメータ、又は、ステップS129で変更されたパラメータが使用される。なお、ステップS121の後にこのステップS123が処理される場合には、ステップS103及びステップS105で算出されたパラメータを使用し、ステップS129等の後にこのステップS123が処理される場合には、ステップS129で変更されたパラメータが使用されることが望ましい。
このように、ステップS123では、上記式3−5〜式3−8で算出されるVACが計算されるが、上述の通り、このVACは、仮定されたクラスタCに設定された確率分布関数の確からしさ(実際の分布への一致度合)が表されることになる。
このステップS123の処理後は、ステップS125が処理される。
[ステップS125]
ステップS125では、ステップS123で算出されたVACが、最小値に達しているか否かが確認される。そして、最小値に達していない場合には、ステップS127に進み、最小値に達している場合には、ステップS131に進む。
なお、ステップS127へ進んだ場合、再度ステップS123が処理され、ステップS123で算出されるVACは、その都度変化する。一方、このVACの変化は、徐々に減少し、その後逆に増加に転じる(図13参照。)。従って、このステップS123では、最小値に達したか否かを確認するために、例えば、それまでのVACと、そのVACが算出された際のパラメータとを、記憶装置(図示せず)に記録しておく。そして、新たに算出されたVACと、記録していたVACとを比較して、新たに算出されたVACが、記録されていたVACよりも大きければ、記録されていたVACが最小値であると決定してもよい。また、このステップS123でVACが最小値に達したか否かを確認する他の方法としては、例えば、可能な繰り返し回数だけステップS127へと進み、全VACを算出した後に、最小のVACを決定することも可能である。しかし、前者の方法の方が計算量を低減できることは言うまでもない。
また、ここでVACが最小となった状態について説明すると以下の通りである。
つまり、VACが最小となった状態は、仮定されたクラスタCの確率密度関数の組み合わせについて、その最適なパラメータが得られた状態を意味する。従って、VACが最小となった際のパラメータは、記憶装置(図示せず)に記録される。
[ステップS127(クラスタ調整ステップの一例)]
ステップS127では、散発集合GRAに分類されている表面欠陥のうち、ステップS107で算出された重み付き距離dが最も短い1の表面欠陥(ベクトルx)を、散発集合GRAからクラスタ集合Gへと変更する。つまり、図12に示すように、ステップS121では、全ての表面欠陥が散発集合GRAに含まれると仮定しているが、このステップS127が処理されるたびに、中心位置からの重み付き距離dが短い表面欠陥から順に1つずつクラスタ集合Gへと移されていくことになる。この際、重み付き距離dが使用されるため、図12の破線で示したような、長手方向が短手方向よりも長い略楕円に含まれる表面欠陥が、クラスタ集合Gへと移されていく。その結果、連続欠陥である可能性が高い表面欠陥がクラスタ集合Gへと移されるので、連続欠陥がクラスタCに含まれる可能性を向上させることができる。
このステップS127の処理後は、ステップS129に進む。
[ステップS129(クラスタ調整ステップの一例)]
ステップS129では、クラスタCのパラメータが変更される。つまり、ステップS121で仮定された確率密度関数に対するパラメータは、ステップS121の処理後のステップS123では、ステップS103及びステップS105で算出されたパラメータが使用される。その一方、ステップS127では、クラスタC(つまりクラスタ集合G)に含まれる表面欠陥が追加されるため、このステップS129では、そのクラスタCにおける中心位置・標準偏差・幅などのパラメータを新たに算出し、変更することとなる。その結果、その後に処理されるステップS121では、ステップS129で変更されたパラメータが使用される。
なお、このステップS129は、クラスタCに含まれる表面欠陥の個数N(G)が、所定の閾値以上となる場合に処理されてもよい。このように表面欠陥の個数を制限することにより、データ点数が少ないため、ステップS103及びステップS105で算出されたパラメータよりも有効性の低いパラメータがステップS129で算出されることを防ぐことができる。
このステップS129の処理後は、ステップS123以降の処理が繰り返される。
これに対して、上述の通り、ステップS125でVACが最小となった場合には、ステップS131に進む。
[ステップS131]
ステップS131では、ステップS111において仮定されるクラスタCとして、予め用意された確率密度関数の種類の候補の全ての組み合わせが仮定されたか否かが確認される。そして、全ての組み合わせが仮定されていない場合には、ステップS111以降の処理が繰り返される。一方、全ての組み合わせが仮定されている場合には、ステップS133に進む。
[ステップS133(クラスタ調整ステップの一例)]
ステップS133では、VACが最小となる分布形態、つまり確率密度関数の種類の組み合わせとそのパラメータにより、ステップS101で選択された帯状領域TのクラスタCを特定する。つまり、このステップS133により、帯状領域TのクラスタCが特定され、そのクラスタCに設定されていた確率密度関数の種類の組み合わせと、そのパラメータが、そのクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態として抽出されることになる。より具体的には、ステップS111〜ステップS131の繰り返し処理により、短手方向及び長手方向それぞれの確率密度関数の全組み合わせのそれぞれについて、VACが最小となるパラメータが決定される。このパラメータが決定した確率密度関数の組み合わせの中で、VACが最小となる組み合わせを選択することにより、これらの組み合わせで最もクラスタCが実際の表面欠陥の分布と一致した組み合わせを選択することができる。そして、この選択された確率密度関数の組み合わせと、そのパラメータとにより、帯状領域TのクラスタCが特定される。結果、この選択された確率密度関数の組み合わせと、そのパラメータが抽出・特定されることになる。つまり、VACは、どの確率密度関数の組み合わせが適しているのかの判断にも使用されることなる。
このステップS133の処理後は、ステップS141に進む。
[ステップS141]
ステップS141では、全ての帯状領域TについてクラスタCが1ずつ特定されたか否かが確認される。全ての帯状領域TにクラスタCが1ずつ特定されていない場合には、ステップS101以降の処理が繰り返されて他の帯状領域Tが選択される一方、全ての帯状領域TにクラスタCが1ずつ特定されている場合には、このクラスタ特定ステップを終了し、図2に示すステップS09に進むこととなる。
(3−2.ステップS121〜ステップS133における処理の概念的な説明)
ここで上述の通り、ステップS121〜ステップS133における処理の概念的な内容について図12及び図13を参照しつつ説明する。
上述の通り、ステップS111ではクラスタC(つまり確率密度関数の組み合わせ)が仮定され、ステップS123でVACが算出されるが、ステップS125及びステップS127等により、図12に示すように、VACが最小となるまで、表面欠陥が1ずつ散発集合GRAからクラスタ集合Gに移されていく。すると、図13に示すように、本来散発欠陥でない表面欠陥が散発集合GRAからクラスタ集合Gに移されるため、散発集合GRAに設定された一様分布pdfと実際の分布との一致度合を表すVACRAは減少する(一致度合いが増す。)。一方、クラスタ集合Gに対して仮定されたVACの値は、表面欠陥が移されてくるため、徐々に増加するが、その増加量は、移されてくる表面欠陥がクラスタ集合Gに仮定されている確率密度関数が表す分布と一致しているため、比較的少ない値となる。このような処理が重み付き距離dを使用して繰り返される結果、連続欠陥に含まれる表面欠陥は、次から次に散発集合GRAからクラスタ集合Gに移される。しかし、連続欠陥に含まれる表面欠陥の全てや大半がクラスタ集合Gに移され、散発集合GRAに含まれるべき表面欠陥までもがクラスタ集合Gに移され出すと、その表面欠陥は、クラスタ集合Gに設定されている確率密度関数が表す分布と一致しないため、VACの値が急激に増加することになる。その結果、VACとVACRAとの合計であるVACは、一旦減少していくものの、最小値を取った後、増加に転じることとなる。この最小値を取ったVACにおけるクラスタ集合Gと散発集合GRAとの分類状態と、その分類状態で反映されるクラスタCのパラメータとが、最も表面欠陥の実際の分布を反映したこととなる。
一方、このようなVACに基づいたパラメータの特定が、ステップS131及びステップS111により、クラスタCにおける全ての確率密度関数の候補の組み合わせに対して行われる。そして、ステップS133により、最もVACを小さくすることができる確率密度関数の組み合わせと、そのパラメータとが特定される。換言すれば、ステップS133において、これらの分布形態により表されるクラスタCが特定される。
つまり、このステップS121〜ステップS133では、VACに基づいて、クラスタCに設定された分布形態(確率密度関数の組み合わせとそのパラメータ)が、散発的な分布を取る表面欠陥がそのクラスタCに含まれないように、調整されることとなる。特に、この調整は、ステップS111において確率密度関数の組み合わせが変更されること、ステップS129においてパラメータが変更されること、及び、ステップS133においてVACが最小となるようにクラスタCが特定されること、により行われ、これらの処理はいずれもVACを最小とすることを基準に行われることとなる。
以上、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法について説明した。
次に、図14を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定装置について説明する。図14は、本実施形態に係る連続欠陥判定装置について説明するための説明図である。
<4.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定装置>
図14に示すように、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定装置100は、取得部110と、分割部120と、クラスタ特定部130と、判定部140とを有する。
取得部110は、ステップS01(取得ステップの一例)を処理し、外部の表面欠陥記憶部20から一の薄鋼板Fに対する複数の表面欠陥それぞれの座標データを取得する。なお、表面欠陥記憶部20に記録される座標データは、表面欠陥検出装置10が検出する。表面欠陥検出装置10は、例えば、光を利用して自動的に表面欠陥を検出し、その表面欠陥の座標データを特定することができる自動表面欠陥検出装置などを使用することができる。ただし、この表面欠陥を検出する構成については特に限定されるものではなく、表面欠陥の座標データを抽出・生成することができる様々な表面欠陥検出装置が使用可能である。また、表面欠陥検出装置10が検出した座標データは、ここでは一旦表面欠陥記憶部20に蓄えられ、その蓄えられた座標データを取得部110が取得するとしているが、取得部110は、座標データを、表面欠陥記憶部20を介さずに表面欠陥検出装置10から直接取得してもよい。
分割部120は、ステップS03及びステップS05(分割ステップの一例)を処理し、取得部110が取得した複数の表面欠陥の座標データに対して、分割位置を特定し、その分割位置を用いて、薄鋼板Fの全領域を短手方向で複数の帯状領域Tに分割する(図3等参照。)。また、この分割部120は、ステップS13の処理後にステップS03が繰り返された場合、毎回異なるように分割位置を決定する(図7等参照。)。
クラスタ特定部130は、ステップS07(クラスタ特定ステップの一例)を処理し、取得部110が取得した座標データに基づいて、分割部120が分割した一の帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥のうち、座標データが相互に関連した少なくとも一部の表面欠陥を含むクラスタCを、複数の帯状領域T毎に特定する(図4等参照。)。なお、クラスタ特定部130は、特定されたクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の座標データの関連性を表す分布形態を、例えば、そのクラスタCに設定された確率密度関数の種類の組み合わせと、そのパラメータ(特徴量の一例)とにより抽出・特定する。このクラスタ特定部130の詳しい構成については後述する。
判定部140は、ステップS09(判定ステップの一例)を処理し、クラスタ特定部130が特定したクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の座標データの関連性を表す分布形態に基づいて、そのクラスタCに含まれる表面欠陥が連続欠陥に該当するか否かを判定する。そして、判定部140は、この判定結果、つまり、連続欠陥の判定結果を外部の判定結果記憶部30に記録する。
一方、連続欠陥判定装置100は、ステップS11を処理し、全ての帯状領域Tについて判定部140による判定処理が行われたか否かを確認する。そして、連続欠陥判定装置100は、全ての帯状領域Tについて判定部140による判定処理が行われていない場合には、判定部140に判定処理を繰り返させ、全ての帯状領域TのクラスタCについて、連続欠陥が含まれるか否かを判定させる。
また、連続欠陥判定装置100は、ステップS13を処理し、分割部120により、分割位置が異なるように、所定の複数回、分割が行われたか否かを確認する。つまり、連続欠陥判定装置100は、薄鋼板Fの全域について連続欠陥の検出が所定の複数回数行われ、かつ、各検出時の帯状領域Tが薄鋼板Fの異なる位置で分割されているか否かを確認する。そして、複数回分割が行われていない場合、分割部120に再度薄鋼板Fを分割させて、その新たな分割位置により分割された帯状領域Tに対して、クラスタ特定部130及び判定部140に各処理を行わせる。
更に、連続欠陥判定装置100は、ステップS15を処理し、他の薄鋼板Fに対しても判定を行う必要があるか否かを確認し、他の薄鋼板Fが存在しない場合には、処理を終了する。一方、連続欠陥判定装置100は、他の薄鋼板Fが存在する場合には、取得部110に新たな薄鋼板Fに対する表面欠陥を取得させて、分割部120等に新たな薄鋼板Fに対して同様の処理を行わせる。
ここで、クラスタ特定部130の詳しい構成について説明する。
クラスタ特定部130は、上述の動作をするために、初期状態抽出部131と、重み付き距離算出部132と、クラスタ仮定部133と、VAC算出部134と、クラスタ調整部135とを有する。
まず、クラスタ特定部130は、ステップS101を処理し、分割部120により分割された複数の帯状領域Tから1の帯状領域Tを選択する。
初期状態抽出部131は、ステップS103及びステップS105を処理し、帯状領域Tに含まれる複数の表面欠陥のおける中心位置、標準偏差及びその他の必要なパラメータを抽出・算出する(図9等参照。)。
重み付き距離算出部132は、ステップS107を処理し、初期状態抽出部131が抽出した中心位置から各表面欠陥の座標データ(ベクトルx)までの重み付き距離dを算出数する(図10等参照。)。
クラスタ仮定部133は、ステップS111(クラスタ仮定ステップの一例)を処理し、ステップS101で選択された1の帯状領域Tに1のクラスタCを仮定する。なお、このクラスタ仮定部133は、予め用意された確率密度関数の候補から、短手方向と長手方向の確率密度関数の種類の組み合わせを選択してクラスタCに設定することにより、1のクラスタCを仮定する。そして、ステップS131の処理後にクラスタCを仮定する場合、既に選択された組み合わせ以外の確率密度関数の種類の候補の組み合わせを選択する。
VAC算出部134(評価指標算出部の一例)は、ステップS121及びステップS123(評価指標算出ステップの一例)を処理し、帯状領域Tに含まれる全ての表面欠陥が、散発欠陥であると仮定し、VACを算出する。ただし、このVAC算出部134は、クラスタ調整部135がステップS127等を処理してクラスタCに表面欠陥が変更された後も、ステップS123を繰り返し、VACを算出する(図11等参照。)。
クラスタ調整部135は、ステップS125,ステップS127(クラスタ調整ステップの一例),ステップS129(クラスタ調整ステップの一例),ステップS131を処理する。つまり、クラスタ調整部135は、VAC算出部134が算出したVACが最小値に達しているか否かを確認する(図13等参照。)。
そして、クラスタ調整部135は、最小値に達していない場合には、散発欠陥である散発集合GRAに分類されている表面欠陥のうち、重み付け距離算出部132が算出した重み付き距離dが最も短い1の表面欠陥(ベクトルx)を、散発集合GRAからクラスタ集合Gへと変更する(図12等参照。)。この変更の後、クラスタ調整部135は、クラスタCの新たなパラメータを算出し、そのパラメータをクラスタCに設定する。そして、クラスタ調整部135は、再度VAC算出部134にVACを算出させる(図11等参照。)。
一方、クラスタ調整部135は、VACが最小値に達している場合には、ステップS131を処理して、クラスタ仮定部133により仮定されたクラスタCとして、予め用意された確率密度関数の種類の候補の全ての組み合わせを仮定したか否かを確認する。そして、クラスタ調整部135は、全ての組み合わせが仮定されていない場合には、クラスタ仮定部133に、クラスタCに対して新たな確率密度関数の種類の候補の組み合わせを設定して、VAC算出部134及びクラスタ調整部135による上記の処理を繰り返させる。
一方、クラスタ特定部130は、確率密度関数の全ての組み合わせが仮定されたと仮定クラスタ調整部135が確認した場合、ステップS133(クラスタ調整ステップの一例)及びステップS141を処理する。つまり、クラスタ特定部130は、VACが最小となる分布形態、つまり確率密度関数の組み合わせとそのパラメータが設定された、選択された1の帯状領域Tの1のクラスタCを特定する。そして、クラスタ特定部130は、全ての帯状領域TについてクラスタCが1ずつ特定されたか否かを確認し、全ての帯状領域TにクラスタCが1ずつ特定されていない場合には、帯状領域Tの選択以降の処理を繰り返して他の帯状領域Tを選択する一方、全ての帯状領域TにクラスタCが1ずつ特定されている場合には、このクラスタ特定ステップを終了する。その結果、クラスタ特定部130は、複数の帯状領域Tのそれぞれに1ずつクラスタCを特定し、その特定結果を判定部140に出力することになる。
<5.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法等による実施例及び効果例>
以上、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法等について説明した。
この連続欠陥判定方法等によれば、薄鋼板Fを短手方向で複数の帯状領域Tに分割した後、各帯状領域T毎に、座標データが相互に関連した少なくとも一部の表面欠陥が含まれるクラスタCを1ずつ特定する。そして、その特定されたクラスタCに含まれた複数の表面欠陥の分布形態を抽出する。従って、長手方向に連続的に連なって発生する連続欠陥は、短手方向で分割された各帯状領域Tの1のクラスタCに含まれる一方、連続欠陥以外の散発欠陥や集中欠陥は、帯状領域Tの分割位置により分割されクラスタCに含まれる可能性が低減される。そして、このように連続欠陥が含まれる可能性が高まったクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、そのクラスタCが連続欠陥であるか否かを判定する。よって、この連続欠陥判定方法等は、確実かつ高精度に連続欠陥の有無を判定することが可能である。
一方、この連続欠陥判定方法等によれば、帯状領域T毎に1ずつのクラスタCを特定することで、確実な連続欠陥の検出を可能としている。例えば、非特許文献1に記載のような通常のクラスタリングでは、不特定多数のクラスタCを特定するが、このように不特定多数のクラスタCを特定するには非常に膨大な計算が必要となる。これに対して、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法等では、帯状領域Tには1のクラスタCを特定するのみで済み、計算量が大幅に減少する。また、上記非特許文献1では、連続欠陥を検出する場合には、連続欠陥が1のクラスタCに含まれる可能性は低く、その結果、複数のクラスタCを連結する処理が必要となり、この処理にも非常に膨大な計算が必要となる。これに対しても、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法等では、帯状領域Tに分割することにより、確実かつ容易な連続欠陥の有無の判定を可能としている。
更に、この連続欠陥判定方法等では、分割位置と連続欠陥とが重なってしまい、連続欠陥の有無の判定に失敗するような不具合をなくすべく、分割位置を違えた複数回の分割を行う。従って、上記のような不具合の発生は防止させ、連続欠陥の有無判定の精度を更に向上させることが可能である。
連続欠陥の有無が既に判明している薄鋼板Fについて、その薄鋼板Fの複数の表面欠陥の座標データ(約5000点ほど)を教師データとして用意して、上記連続欠陥判定方法等による連続欠陥判定結果を、下記表1に示す。
Figure 2010185868
教師データとして、裏表の両面に表面欠陥が約5000程度形成され、長手方向の長さが約1200mで短手方向の長さが約1.75mの薄鋼板を用意した(第1薄鋼板及び第2薄鋼板)。それぞれの薄鋼板の表又は裏面に形成されている連続欠陥の個数は、上記表1に示す通りである。
一方、判定時の条件としては以下の通りである。
ステップS03及びステップS05における帯状領域Tの幅ΔTは、12mmに設定した。なお、この12mmは、6mm幅の直線欠陥を測定対象としたために設定された値である。一方、分割回数は2回とし、各分割では分割位置をΔOFF=ΔT/2=6mmだけずらした。また、ステップS09における判定では、(条件1)長手方向の確率密度関数が一様分布pdfとなり短手方向の確率密度分布がラプラス分布pdfとなり、(条件2)クラスタにおけるパラメータのうち短手方向の標準偏差が0.8以下であり、(条件3)クラスタCに含まれる表面欠陥の個数が6点以上という条件を設定した。
一方、ステップS07等のクラスタ特定ステップでは、まず、確率密度関数として、図5に示した一様分布pdf、正規分布pdf、ラプラス分布pdfを用意した。そして、重み付き距離として、s=3(つまり標準偏差σ,σの3乗)とした上記式3−3,3−4を使用した。また、VACを計算する際の分解能として、短手方向分解能γは0.3mmを使用し、長手方向分解能γは1mを使用した。なお、短手方向分解能γは表面欠陥検出装置により検出された表面欠陥の検出精度と同程度に設定した。
このように設定した連続欠陥判定方法等により、連続欠陥の有無を判定したところ、判定結果として、表1に示すように、全ての連続欠陥を、連続欠陥であると判定することに成功し、かつ、連続欠陥以外の欠陥を、連続欠陥であると判定する誤判定を防ぐことに成功した。これは、非常に高い精度で連続欠陥の有無を判定することが可能であることを意味する。一方、このような連続欠陥の有無判定に要する時間は、座標データの個数や処理速度にも依存するが、上記非特許文献1のクラスタリングによる処理時間に比べて、クラスタ数を特定する処理・結合するクラスタの組み合わせを探索する処理等の複雑な処理を行わずに済み計算量のオーダを0(n)から0(n)に大幅に削減してるため、100分の1程度の時間しかかからずに済んだ。つまり、この実施例から、この連続欠陥判定装置が、非常に高速で迅速に、且つ、高精度で連続欠陥の有無を判定することが可能であることが判る。
<6.本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法の変更例>
ここで本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定方法の変更例を幾つか説明する。なお、ここで説明する変更例は、あくまで一例であり、その他様々な変更が可能であることは言うまでもない。
(6−1.累積確率密度関数を使用する場合)
上記実施形態では、クラスタCに設定される分布形態や、クラスタCに含まれる複数の表面欠陥の座標データの関連性を表す分布形態として、確率密度関数を使用する場合について説明した。しかしながら、上述の通り、分布形態を表す確率密度関数には、一般的な確率密度関数だけでなく、広義の意味で累積確率密度関数・度数密度関数・累積度数密度関数が含まれる。例えば累積確率密度関数を使用する場合、図5に示した各分布の確率密度関数の変りに、累積確率密度関数cdfを使用することになる。この場合、VACni(xni)を算出する上記式3−8の変りに、下記式6−1を使用することが可能である。
Figure 2010185868
なお、ここでcdfniは、xniに設定又は仮定された累積確率密度関数を表し、x(xni)は、図11に示す分解能γで区画された区間の始まりの位置のx座標の大きさを表す。この式6−1では、減算によりVACni(xni)を算出することが可能であるため、乗算を使用する式3−8に比べて処理速度を速めることができる。
(6−2.無相関化)
上記実施形態では、連続欠陥の有無を確実かつ迅速に判定するために、薄鋼板Fを複数の帯状領域Tへと短手方向で分割した。この際、帯状領域Tの幅ΔTを適切な値に設定することにより、長手方向から薄鋼板Fの面内である程度傾いた連続欠陥の有無をも判定することが可能である。これに対して、連続欠陥が大きく傾いた場合にも、連続欠陥の検出精度を落とさないために、複数の座標データについて、無相関化処理を行うことも可能である。
つまり、例えば、連続欠陥が傾いている場合、表面欠陥の短手方向の分布と、長手方向の分布とは、相互に依存しあう。この場合、薄鋼板Fに含まれる複数の表面欠陥について、無相関化行列を算出し、当該無相関化行列により座標データを、無相関化された座標軸(y座標及びy座標)で表された座標データ(ベクトルy)へと変換する。このような無相関化は、図15に概念的に示すように、傾いた連続欠陥(図15中のクラスタC)が長手方向と一致するように、座標軸を回転させることになる。そして、変換後の座標データ(ベクトルy)に対して、上記の連続欠陥判定方法等の各処理を実行することが可能である。このような無相関化を行うことにより、傾いた連続欠陥の抽出精度を更に向上させることが可能である。
なお、この無相関化を行うタイミングとしては、例えば、図2に示すステップS01とステップS03との間や、ステップS07(クラスタ特定ステップ)中の図8に示すステップS101とステップS103との間などが挙げられる。ステップS01とステップS03との間に無相関化が行われる場合、ステップS03及びステップS05による帯状領域Tへの分割処理は、無相関化後の短手方向座標(y座標)に沿って行われ、それ以後の処理も同様に無相関化後の座標軸(y座標及びy座標)に基づいて実行される。一方、ステップS101とステップS103との間に無相関化が行われる場合、この無相関化は、各帯状領域T毎に行われることになる。
また、連続欠陥判定精度を更に向上させるために、本実施形態に係る連続欠陥判定方法等では、無相関化を行う前に、ステップS01〜ステップS07を処理し、無相関化後にも、ステップS01〜ステップS07を処理することが望ましい。この場合、同一クラスタCとなることもあるが、ステップS07では、帯状領域T毎に無相関化前後について2種類のクラスタCが特定されることがある。このように2種類のクラスタCが特定された場合、ステップS09の判定処理では、どちらかVACが低くなった方のクラスタCに基づいて、連続欠陥の有無が判定されることが望ましい。なお、ステップS101とステップS111との間に無相関化が行われる場合、無相関化前後でステップS103〜ステップS131が処理されて、ステップS133で、同じように、どちらかVACが低くなった方のクラスタCが特定されることが望ましい。
なお、無相関化行列は、例えば、表面欠陥の全集合G又は帯状領域Tの部分集合G(以下無相関化前の集合という意味で「集合G」という。)に対する主成分分析(PCA(Principal Component Analysis))により算出される主成分(2行2列の分散共分散行列Σ)から生成される行列、又は、その分散共分散行列Σの固有行列、として算出することが可能である。つまり、無相関化行列Vは、例えば、集合Gに対する主成分分析により算出される2行2列の分散共分散行列Σに基づいて、Σ=VΛVから算出されるか、分散共分散行列Σの固有値と固有行列による対角化(Σ=VΛV)から算出される。この場合、無相関化された集合を「集合G」とすると、無相関化による座標変換は、下記式6−2で行うことが可能である。
Figure 2010185868
そして、上記連続欠陥判定方法等で使用する確率密度関数等は、この変換後の座標軸(y座標及びy座標)に対する確率密度関数となり、以後の処理は全てこの変換後の座標軸(y座標及びy座標)について行われることになる。なお、この無相関化処理及び無相関化行列Vの導出過程等について、一般的な主成分分析等を使用することが可能であるため、ここでの詳しい説明は省略する(上記非特許文献1参照。)。
(6−3.クラスタ結合)
上記実施形態では、連続欠陥の位置が帯状領域Tへの分割位置と重なる場合等を考慮して、分割位置を違えた複数回の分割が行われる。このような複数回の分割を行うことと、その分割間隔(幅ΔT)を適切な値に設定することにより、連続欠陥の検出精度を飛躍的に向上させることが可能である。これに対して、更に連続欠陥の検出精度を高め、かつ、検出過程で抽出される連続欠陥のパラメータ(特徴量)の特定精度を高めるために、2以上の相隣接する帯状領域Tに連続欠陥が含まれた場合、その連続欠陥が1の連続欠陥であるか否かを判定し、1の連続欠陥である場合、両者を結合して1の連続欠陥の分布形態を抽出することも可能である。
より具体的に説明する。
例えば、図6に示すように、1の連続欠陥が2以上の帯状領域Tにまたがり、別々の連続欠陥であると検出されることがある。この場合、上記実施形態では、図7に示すように、分割位置がずらされた複数回の分割が行われることにより、1の連続欠陥を1のクラスタに含めることが可能である。これに対して、例えば、複数回の分割によっても尚、連続欠陥の位置がその複数回の分割位置と重なり、常に連続欠陥が分断されることが考えられる。この例のような場合、連続欠陥として正確なパラメータや分布関数が特定可能なように、例えば、以下のように2以上の連続欠陥を連結してもよい。
つまり、図6に示すように1の連続欠陥が2以上の帯状領域Tにまたがり、その結果、ステップS09で図6に示すクラスタC,C共に別々の連続欠陥であると判定されたと仮定する。一方、分割位置がずらされた次の分割後の帯状領域Tでも、その1の連続欠陥が、図7とは異なり、分割位置で分断され、他のクラスタC(例えばクラスタC)としてステップS09で連続欠陥であると判定されたと仮定する。つまり、1回目の分割におけるクラスタC,C共に別々の連続欠陥と判定され、2回目の分割におけるクラスタCも連続欠陥であると判定されたと仮定する。この場合、例えば、クラスタC,Cそれぞれに含まれた1又は2以上の表面欠陥が、2回目の分割における連続欠陥である同一のクラスタCに含まれる場合、クラスタC及びクラスタCを結合し、その結合後のクラスタCの分布形態を、図8に示したクラスタ特定ステップと同様の処理により再度特定してもよい。このようにクラスタCを結合して1の連続欠陥を検出することにより、1の連続欠陥についてより正確な分布形態(確率密度関数の種類及びパラメータ)を特定することが可能である。
なお、このような処理は、例えば、図2に示すステップS13と、ステップS15との間で処理されることが望ましい。
<7.本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法および連続欠陥判定装置>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、欠陥の発生数が多くはない場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、欠陥の発生数が多く、連続欠陥とそれ以外の欠陥を区別するのが難しい場合を例に挙げて説明する。区別するのが難しい場合として、集中欠陥や散発欠陥の一部を切り取った状態(単独の帯状領域に限定して解析する場合)で、発生量や密度の僅かな濃淡が連続欠陥に類似していることで誤って連続欠陥として抽出する場合がある。このように本実施形態と前述した第1の実施形態では、各帯状領域の連続欠陥の有無を事前判定する処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図2及び図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
<7−1.本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法>
図16は、本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法について説明するための説明図である。まず、図16を参照しつつ、この連続欠陥判定方法の概要について説明した後、各処理について詳しく説明する。ここで、第1実施形態に対して新たに追加されたのは、ステップS06とステップS08であり、他のステップの処理は、第1実施形態と同じである。
(7―1−1.概要)
ステップS05の処理後、本実施形態に係る連続欠陥判定方法では、各帯状領域及びその近傍の帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の数に基づいて、各帯状領域に連続欠陥(直線欠陥)が無いことを事前判定するステップS06が処理される(帯状領域事前判定ステップの一例)。
このステップS06で行われる判定に用いる指標(以降、簡易連続欠陥判定指標と呼ぶ)については詳しく後述するが、ステップS07のクラスタ特定ステップで詳細に行われる、各帯状領域に対する連続欠陥の候補となるクラスタの特定に先立ち、各帯状領域及びその近傍の複数の帯状領域に存在する表面欠陥の数により、連続欠陥の無いことを事前判定するものである。
この事前判定によって連続欠陥無しと判定された場合は、ステップS11に進む。
このステップS06の処理に於いて連続欠陥無しと判定されなかった場合は、ステップS07が処理される(クラスタ特定ステップの一例)。
ステップS07の処理後は、特定したクラスタが連続欠陥で無いことを事前判定するステップS08が処理される(クラスタ事前判定ステップの一例)。判定に用いる指標(以降、連続欠陥判定指標と呼ぶ)は、ステップS06で用いられる簡易連続欠陥判定指標と基本的に同じである。簡易連続欠陥判定指標は、特定されたクラスタが帯状領域内の全ての表面欠陥からなる場合の連続欠陥判定指標に一致する。すなわち、連続欠陥判定指標の上限値に相当する。連続欠陥判定指標が予め定められた閾値を下回った場合に連続欠陥無しと判定される。この事前判定によって連続欠陥無しと判定された場合は、ステップS11に進み、連続欠陥無しと判定されなかった場合は、ステップS09に進む。
(7−1−2.各処理の内容)
[ステップS06(帯状領域事前判定ステップの一例)]
ステップS06では、ステップS01で取得された座標データ、特にこの座標データで規定される帯状領域Tqとその近傍の帯状領域Tq+i(i=±1,±2,…)に含まれる複数の表面欠陥の数に基づいて、ステップS03及びステップS05で分割された一の帯状領域Tに含まれた複数の表面欠陥のうち、座標データが相互に関連した少なくとも一部の表面欠陥を含むクラスタが帯状領域T毎に1ずつ連続欠陥として特定できる可能性が有るかの判定を簡易連続欠陥判定指標を用いて行う。
この指標の考え方を図17に示す。図17は、本実施形態に係る連続欠陥判定における指標について説明するための説明図であって、帯状領域Tとその近傍の帯状領域Tq+i(i=±1,±2,…)の欠陥の数Nq+i(i=0,±1,±2,…)を示す度数分布を示し、図17a)は帯状領域Tに連続欠陥がある場合の一例、図17b)は帯状領域Tに連続欠陥が無い場合の一例を示している。
連続欠陥(直線欠陥)を抽出する際に利用可能な特徴のひとつに、短手方向の特定の位置に欠陥が集中していることが挙げられる。別な見方をすると短手方向で連続欠陥が存在する部位に比べ、連続欠陥が存在しない近傍の帯状領域Tq+iには欠陥が少ないことが想定される。
その為、帯状領域Tの欠陥の数に比べ、その近傍の帯状領域Tq+iの欠陥がどの程度存在するかを指標化して、連続欠陥有無の判定に用いる。
具体的には、各帯状領域T毎の欠陥数をNとして、その近傍の帯状領域Tq+iの欠陥数Nq+i、近傍範囲iを−n〜+nとした場合、次の数式で指標を定義する。
Figure 2010185868
この簡易連続欠陥判定指標の意味するところは、取り得る値の範囲は0≦指標≦1であり、図17a)に例示する様に、連続欠陥がTに存在する場合には、Nの値がNq+iの値に比較して相対的に大きくなる可能性が高く、従って、簡易連続欠陥判定指標の値が大きくなる。一方、図17b)に例示する様に、連続欠陥がTに存在しない場合には、Nの値がNq+iの値に比較して相対的に等しいか小さくなる可能性が高く、従って、簡易連続欠陥判定指標の値が小さくなる。図17a)にあるように指標が1に近いほど近傍に欠陥が無く連続欠陥である可能性が高いことを示し、図17b)にあるように指標が0に近いほど近傍に欠陥が多く連続欠陥ではないことを示している。
各帯状領域T毎に算出された簡易連続欠陥判定指標を用いて、帯状領域Tで連続欠陥の有無を判定する際には、予め指定する閾値以下であれば連続欠陥が存在しないとして事前判定をする。連続欠陥が存在しないと判定しなかった領域は、ステップS07でクラスタの特定を行う。
連続欠陥が存在しないと判定した領域の処理は、ステップS11に進む。
連続欠陥の有無を判定する閾値の定め方は、近傍の帯状領域の欠陥の数の短手方向の平均に比べ、帯状領域Tの欠陥の数が少なくとも2倍を目安とする。この目安となる閾値は、近傍の範囲を示すnを用いて表すとおおよそ1/(n+1)となる。この閾値は、連続欠陥と同時に発生する集中欠陥や散発欠陥の発生数が多い場合には目安よりも小さな値に、発生数が少ない場合は目安よりも大きな値に見直す必要がある。
近傍の範囲を示すnは、nで指定された連続する帯状領域に連続欠陥のクラスタが複数存在しないことを前提としており、その範囲でnは大きいほど良い。連続欠陥が密集して発生する場合、nは小さな値となる。薄鋼板の連続欠陥判定に用いる場合には、一般に1ないし3の範囲の値にするのが良い。
ここで、本実施の形態についてのこれまでの説明では、近傍の範囲を示すnを帯状領域の数を表す整数として扱ってきたが、nを正の実数に拡張して近傍の範囲を規定することも可能である。その場合は、簡易連続欠陥判定指標の分母の帯状領域Tを中心とした領域の幅が、帯状領域の幅×(2n+1)となる範囲の欠陥数(これをNrangeと呼ぶことにする)を用いればよい。
簡易連続欠陥判定指標=Nq/Nrange …(式8)
ステップS06を実施することで、詳細はステップS08にて説明するが、明らかに連続欠陥のない帯状領域を特定することができる。そのため、ステップS07の処理を省略可能となり処理量等を低減させることができる。
[ステップS08(クラスタ事前判定ステップの一例)]
ステップS08では、ステップS07で特定されたクラスタについて、クラスタの属する帯状領域Tに加え、その近傍の帯状領域Tq+iの表面欠陥の存在個数に基づいて、特定されたクラスタが連続欠陥で無いことを事前判定する。
基本的な考え方は、ステップS06と同じであるが、式7で示される簡易連続欠陥判定指標の分子を領域Tの全欠陥数Nに代えて、クラスタに属する欠陥の数Nqcoreとする連続欠陥判定指標を用いる。連続欠陥判定指標指標は、帯状領域Tのクラスタをなす欠陥の数が近傍の領域に存在する欠陥の数に比較し、どの程度の割合を占めているかを示す指標である。連続欠陥が存在する場合は、その周辺の欠陥数が少ないために連続欠陥判定指標指標が1に近づくことなる。
ここで簡易連続欠陥判定指標との関係を述べる。簡易連続欠陥判定指標は、帯状領域T内の欠陥が全てクラスタに属するとした場合の連続欠陥判定指標に等しい値である。即ち、連続欠陥判定指標の上限値と見ることができる。クラスタ特定処理を行わなくても連続欠陥判定指標の閾値を下回る場合には、連続欠陥がないことを判定することが可能となる。
連続欠陥判定指標の具体的な算出式は、各帯状領域T毎に特定されたクラスタに属する欠陥の数をNqcoreとして、帯状領域Tの欠陥の数をN、その近傍の帯状領域Tq+iの欠陥の数Nq+i、近傍範囲iを−n〜+nとした場合、次の数式で連続欠陥判定指標を定義する。
Figure 2010185868
この連続欠陥判定指標の値に対して、閾値(例えばn=2のときは1/3。詳細な決め方については、ステップS06の閾値に同じ。)を予め設定し、その閾値未満である場合には、クラスタCは連続欠陥ではないと判定し、ステップS11に進む。連続欠陥無しと判定されなかった場合はステップS009に進む。
<7−2.本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定装置>
図18は、第2実施形態に係る連続欠陥判定装置200について説明するための説明図である。図18に示すように、本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定装置200は、取得部110と、分割部120と、帯状領域事前判定部125と、クラスタ特定部130と、クラスタ事前判定部138と、判定部140とを有する。帯状領域事前判定部125とクラスタ事前判定部138以外は、本発明の第1実施形態に係る連続欠陥判定装置と同じである。
帯状領域事前判定部125は、ステップS06(帯状領域事前判定ステップの一例)を処理し、分割部120で生成した帯状領域毎とその近傍の帯状領域にある複数の表面欠陥の数を元に簡易連続欠陥判定指標を算出し、予め指定された閾値を基準に値の大小で連続欠陥が存在しない(存在する可能性がある)ことを判定する。
クラスタ事前判定部138は、ステップS07で特定されたクラスタが連続欠陥で無いことを事前判定するステップS08(クラスタ事前判定ステップの一例)を処理する。
本第2実施形態によれば、薄鋼板Fを短手方向で複数の帯状領域Tに分割した後、各帯状領域T毎に特定されるクラスタに対して、帯状領域Tとその近傍の帯状領域Tq+iの表面欠陥の発生状況を反映させた連続欠陥判定指標を算出することで、集中欠陥や散発欠陥の一部を単独の帯状領域内に限定して解析するために、発生量や密度が連続欠陥に類似していることで誤ってクラスとして抽出する場合であっても近傍の表面欠陥の発生形態に基づいてそのクラスタCが連続欠陥であるか否かを判定する。よって、この連続欠陥判定方法等は、確実かつ高精度に連続欠陥の有無を判定することが可能である。
以上、本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法等について説明した。
この連続欠陥判定方法等によれば、薄鋼板Fを短手方向で複数の帯状領域Tに分割した後、各帯状領域T毎のクラスタの特定に先立ち領域Tと近傍の帯状領域の表面欠陥数から連続欠陥有無の事前判定を簡易連続欠陥判定指標により行い、連続欠陥が有る可能性ありと判定した帯状領域は以降の処理を継続する。各帯状領域T毎に、座標データが相互に関連した少なくとも一部の表面欠陥が含まれるクラスタCを1ずつ特定する。そして、その特定されたクラスタCに含まれた複数の表面欠陥の分布形態を抽出する。従って、長手方向に連続的に連なって発生する連続欠陥は、短手方向で分割された各帯状領域Tの1のクラスタCに含まれる一方、連続欠陥以外の散発欠陥や集中欠陥は、帯状領域Tの分割位置により分割されクラスタCに含まれる可能性が低減される。ここで、クラスタCとその近傍の表面欠陥の数から連続欠陥判定指標にてクラスタCが連続欠陥でないことを事前判定する。そして、このように連続欠陥が含まれる可能性が高まったクラスタCに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、そのクラスタCが連続欠陥であるか否かを判定する。よって、この連続欠陥判定方法等は、確実かつ高精度に連続欠陥の有無を判定することが可能である。
一方、この連続欠陥判定方法等によれば、集中欠陥などの一部を連続欠陥として誤って判定することなく帯状領域T毎に1ずつのクラスタCを特定することで、確実な連続欠陥の検出を可能としている。例えば、非特許文献1に記載のような通常のクラスタリングでは、不特定多数のクラスタCを特定するが、このように不特定多数のクラスタCを特定するには非常に膨大な計算が必要となる。これに対して、本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法等では、事前に連続欠陥が無いことを判定することが可能で有り、一部の帯状領域Tでは連続欠陥の候補であるクラスタCの特定を省略することが可能となり、計算量が減少する。
更に、この連続欠陥判定方法等では、クラスタCの特定後に近傍の表面欠陥の発生状態(発生数)を用いて連続欠陥であることを判定することで、集中欠陥の一部を誤って抽出すること防ぎ、確実かつ容易な連続欠陥の有無の判定を可能としている。
<8.本発明の第2実施形態に係る連続欠陥判定方法等による実施例及び効果例>
連続欠陥の有無が既に判明している薄鋼板Fについて、その薄鋼板Fの複数の表面欠陥の座標データ(約1万点ほど)を教師データとして用意して、上記連続欠陥判定方法等による連続欠陥判定結果を、下記表2に示す。
Figure 2010185868
教師データとして、裏表の両面に表面欠陥が約1万点程度形成され、長手方向の長さが約1200mで短手方向の長さが約1.75mの薄鋼板を用意した(第3薄鋼板及び第4薄鋼板)。それぞれの薄鋼板の表又は裏面に形成されている連続欠陥の個数は、上記表2に示す通りである。
一方、判定時の条件としては以下の通りである。
ステップS03及びステップS05における帯状領域Tの幅ΔTは、12mmに設定した。なお、この12mmは、6mm幅の直線欠陥を測定対象としたために設定された値である。一方、分割回数は2回とし、各分割では分割位置をΔOFF=ΔT/2=6mmだけずらした。ステップS06、ステップS08における判定では、簡易連続欠陥判定指標と連続欠陥判定指標の閾値に0.33を予め設定した。また、ステップS09における判定では、(条件1)長手方向の確率密度関数が一様分布pdfとなり短手方向の確率密度分布がラプラス分布pdfとなり、(条件2)クラスタにおけるパラメータのうち短手方向の標準偏差が0.8以下であり、(条件3)クラスタCに含まれる表面欠陥の個数が6点以上という条件を設定した。
一方、ステップS07等のクラスタ特定ステップでは、まず、確率密度関数として、図5に示した一様分布pdf、正規分布pdf、ラプラス分布pdfを用意した。そして、重み付き距離として、s=3(つまり標準偏差σ,σの3乗)とした上記式3−3,3−4を使用した。また、VACを計算する際の分解能として、短手方向分解能γは0.3mmを使用し、長手方向分解能γは1mを使用した。なお、短手方向分解能γは表面欠陥検出装置により検出された表面欠陥の検出精度と同程度に設定した。
このように設定した連続欠陥判定方法等により、連続欠陥の有無を判定したところ、欠陥の発生数が多く、集中欠陥や散発欠陥の一部を切り取った状態(単独の帯状領域)に限定された状況で、発生量や密度の僅かな濃淡が連続欠陥に類似していることで、連続欠陥とそれ以外の欠陥を区別するのが難しい場合であっても、判定結果として、表2に示すように、全ての連続欠陥を、連続欠陥であると判定することに成功し、かつ、連続欠陥以外の欠陥を、連続欠陥であると判定する誤判定を防ぐことに成功した。これは、非常に高い精度で連続欠陥の有無を判定することが可能であることを意味する。一方、このような連続欠陥の有無判定に要する時間は、座標データの個数や処理速度にも依存するが、簡易連続欠陥判定指標によって、以降の処理の対象となる帯状領域数が、両面で584から30にまで減少したことで、クラスタ特定処理を行う表面欠陥数が約1万から1284に減少し、更に上記非特許文献1のクラスタリングによる処理時間に比べて、計算量のオーダを0(n)から0(n)に大幅に削減しているため、10万分の1以下の時間しかかからずに済んだ。つまり、この実施例から、この連続欠陥判定装置が、非常に高速で迅速に、且つ、集中欠陥の一部を誤って抽出すること防ぎ高精度で連続欠陥の有無を判定することが可能であることが判る。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な2つの実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記2つの実施形態では、図2及び図16に示すように、連続欠陥判定処理は、ステップS01及びステップS15に示すように、1の薄鋼板F毎に順番に行われる場合について説明した。しかしながら、この連続欠陥判定処理を複数の薄鋼板Fに対して同時並行で実行することももちろん可能である。また、このことは図8に示すクラスタ特定処理においても同様のことが言え、図8に示すようにクラスタ特定処理を1の帯状領域T毎に順番に実行するのではなく、複数の帯状領域Tについて同時並行で実行することももちろん可能である。
また、上記実施形態では、クラスタC、つまり確率密度関数の種類とそのパラメータを特定するために使用する評価指標として、VACを使用する場合について説明した。しかしながら、上述の通り、評価指標としては、仮定されたクラスタCに設定された分布と実際の表面欠陥の分布との一致度合を定量的に表しうる指標であれば、様々な指標を使用することが可能である。このような評価指標の他の例としては、例えば、最小記述長原理(MDL:Minimum Description Language)や赤池情報量基準(AIC:Akaike Infomation Criterion)などが挙げられる。なお、上記VACは、MDLの一例であり、その他のMDLによる評価指標を、上記実施形態と同様に使用することが可能である。また、AICによる評価指標の例としては、カルバック・ライブラー(Kullback−Leiber)情報量(相互エントロピーとも言う。)などが挙げられる。この相互エントロピーも、仮定された確率密度分布(一のモデル)と実際の表面欠陥の分布(他のモデル)との一致度合を数値化した定量的な値として表すことができる。従って、やはり上記実施形態と同様にこの相互エントロピーを使用することも可能である。ただし、もちろんAICによる他の評価指標を用いる場合も同様である。
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
また、上記各実施形態で説明した一連の処理は、専用のハードウエアにより実行させてもよいが、ソフトウエアにより実行させてもよい。一連の処理をソフトウエアにより行う場合、図19に示すような汎用又は専用のコンピュータにプログラムを実行させることにより、上記の一連の処理を実現することができる。
図19は、プログラムを実行することにより一連の処理を実現するコンピュータの構成例を説明するための説明図である。一連の処理を行うプログラムのコンピュータによる実行について説明すれば、以下のようになる。
図19に示すように、コンピュータは、例えば、バス901と、CPU(Central Processing Unit)902と、記録装置と、入出力インターフェイス906と、通信装置907と、入力装置909と、ドライブ910と、出力装置となどを有する。これらの各構成は、バス901や入出力インターフェイス906等を介して相互に情報を伝達可能に接続されている。
プログラムは、例えば、記録装置の一例である、HDD(Hard Disk Drive)903・ROM(Read Only Memory)904・RAM(Random Access Memory)905等に記録しておくことがきる。
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD(Compact Disc)・MO(Magneto Optical)ディスク・DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体911に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このようなリムーバブル記憶媒体911は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらのリムーバブル記憶媒体911に記録されたプログラムは、ドライブ910により読み出されて、入出力インターフェイス906・バス901等を介して上記の記録装置に記録されてもよい。
更に、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LAN(Local Area Network)・インターネット等のネットワーク908を介して転送され、通信装置907がこのプログラムを受信する。そして、通信装置907が受信したプログラムは、入出力インターフェイス906・バス901等を介して上記の記録装置に記録されてもよい。
そして、CPU902が、上記の記録装置に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の一連の処理が、実現される。この際、CPU902は、例えば、上記の記録装置からプログラムを、直接読み出して実行してもよく、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU902は、例えば、プログラムを通信装置907やドライブ910を介して受信する場合、受信したプログラムを記録装置に記録せずに直接実行してもよい。
更に、CPU902は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置909から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
そして、CPU902は、上記の一連の処理を実行した結果を、例えばモニタなどの表示装置912・スピーカやヘッドホンなどの音声出力装置913等の出力装置から出力してもよく、更にCPU902は、必要に応じてこの処理結果を通信装置907から送信してもよく、上記の記録装置やリムーバブル記憶媒体911に記録させてもよい。
F 薄鋼板
C クラスタ
全集合
ΔT 幅
T 帯状領域
10 表面欠陥検出装置
20 表面欠陥記憶部
30 判定結果記憶部
100 連続欠陥判定装置
110 取得部
120 分割部
125 帯状領域事前判定部
130 クラスタ特定部
131 初期状態抽出部
132 重み付き距離算出部
133 クラスタ仮定部
134 VAC算出部
135 クラスタ調整部
138 クラスタ事前判定部
140 判定部
200 連続欠陥判定装置

Claims (15)

  1. 複数の製造工程における処理を経て製造される薄鋼板に発生し、表面欠陥検出装置により検出された複数の表面欠陥に関する情報を基に、該複数の表面欠陥の分布形態を解析して、該薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定方法であって、
    前記薄鋼板に発生した複数の表面欠陥それぞれの発生位置について長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データを、前記表面欠陥検出装置から取得する取得ステップと、
    前記薄鋼板の少なくとも一面を前記薄鋼板の短手方向で、予め設定された間隔を有する複数の帯状領域に分割する分割ステップと、
    前記分割ステップで分割された複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の前記表面欠陥を含むクラスタを、前記複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定ステップと、
    前記帯状領域に含まれる複数の表面欠陥のうちの、前記クラスタ特定ステップで特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当するか否かを判定する判定ステップと、
    を有することを特徴とする、連続欠陥判定方法。
  2. 前記分割ステップでは、前記薄鋼板の少なくとも一面を前記複数の帯状領域へと、分割位置を前記短手方向でずらしつつ複数回分割し、
    前記クラスタ特定ステップ及び前記判定ステップでは、複数の前記分割位置それぞれの前記複数の帯状領域に対して、前記クラスタの特定及び前記連続欠陥に該当するか否かの判定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の連続欠陥判定方法。
  3. 前記判定ステップでは、前記クラスタ特定ステップで特定されたクラスタに含まれた複数の表面欠陥の分布形態を表す前記長手方向の確率密度関数の種類と前記短手方向の確率密度関数の種類との組み合わせ、及び、該確率密度関数における特徴量の少なくとも一方に基づいて、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当するか否かを判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の連続欠陥判定方法。
  4. 前記判定ステップでは、前記クラスタの長手方向の確率密度関数が一様分布であり、前記短手方向の確率密度関数がラプラス分布である場合に、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当すると判定することを特徴とする、請求項3に記載の連続欠陥判定方法。
  5. 前記クラスタ特定ステップでは、前記複数の帯状領域それぞれに対して、
    該帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれに対して、予め与えられた複数の分布形態候補のうちから選択された分布形態が1ずつ設定された1のクラスタを仮定するクラスタ仮定ステップと、
    前記クラスタ仮定ステップで仮定されたクラスタについて、該帯状領域に含まれるそれぞれの表面欠陥に対する、該クラスタに設定された分布形態の一致の程度を表す評価指標を算出する評価指標算出ステップと、
    前記評価指標算出ステップで算出される評価指数が最小になるように、該帯状領域に含まれる表面欠陥から前記クラスタに含むべき表面欠陥を選択するクラスタ調整ステップと、
    が行われ、
    前記クラスタ仮定ステップでは、前記帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれの分布形態として、前記分布形態候補の全ての組み合わせが順次選択されて前記クラスタに設定され、
    前記評価指標算出ステップ及び前記クラスタ調整ステップは、当該分布形態候補の組み合わせが設定された全てのクラスタについて行われ、
    前記評価指標が最小となる長手方向及び短手方向の分布形態が設定された1のクラスタが、該帯状領域に対して特定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続欠陥判定方法。
  6. 前記クラスタ特定ステップで特定された前記各クラスタに対して、該クラスタに含まれる表面欠陥の数を、該クラスタが特定された帯状領域と該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで算出される連続欠陥判定指標に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当しないことを判定するクラスタ事前判定ステップを更に有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続欠陥判定方法。
  7. 前記分割ステップで分割された各帯状領域に対して、該帯状領域に含まれる表面欠陥の数を、該帯状領域と該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで算出される簡易連続欠陥判定指標に基づいて、該帯状領域に含まれる表面欠陥が前記連続欠陥に該当しないことを判定する帯状領域事前判定ステップを更に有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の連続欠陥判定方法。
  8. 複数の製造工程における処理を経て製造される薄鋼板に発生し、表面欠陥検出装置により検出された複数の表面欠陥に関する情報を基に、該複数の表面欠陥の分布形態を解析して、該薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定装置であって、
    前記薄鋼板に発生した複数の表面欠陥それぞれの発生位置について長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データを、前記表面欠陥検出装置から取得する取得部と、
    前記薄鋼板の少なくとも一面を前記薄鋼板の短手方向で、予め設定された間隔を有する複数の帯状領域に分割する分割部と、
    前記分割部により分割された複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の前記表面欠陥を含むクラスタを、前記複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定部と、
    前記帯状領域に含まれる複数の表面欠陥のうちの、前記クラスタ特定部により特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当するか否かを判定する判定部と、
    を有することを特徴とする、連続欠陥判定装置。
  9. 前記分割部は、前記薄鋼板の少なくとも一面を前記複数の帯状領域へと、分割位置を前記短手方向でずらしつつ複数回分割し、
    前記クラスタ特定部及び前記判定部は、複数の前記分割位置それぞれの前記複数の帯状領域に対して、前記クラスタの特定及び前記連続欠陥に該当するか否かの判定を行うことを特徴とする、請求項8に記載の連続欠陥判定装置。
  10. 前記判定部は、前記クラスタ特定部により特定されたクラスタに含まれた複数の表面欠陥の分布形態を表す前記長手方向の確率密度関数の種類と前記短手方向の確率密度関数の種類との組み合わせ、及び、該確率密度関数における特徴量の少なくとも一方に基づいて、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当するか否かを判定することを特徴とする、請求項8又は9に記載の連続欠陥判定装置。
  11. 前記判定部は、前記クラスタの長手方向の確率密度関数が一様分布であり、前記短手方向の確率密度関数がラプラス分布である場合に、当該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当すると判定することを特徴とする、請求項10に記載の連続欠陥判定装置。
  12. 前記クラスタ特定部は、
    前記複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれに対して、予め与えられた複数の分布形態候補のうちから選択された分布形態が1ずつ設定された1のクラスタを仮定するクラスタ仮定部と、
    前記複数の帯状領域それぞれに対して、前記クラスタ仮定部により仮定されたクラスタについて、該帯状領域に含まれるそれぞれの表面欠陥に対する、該クラスタに設定された分布形態の一致の程度を表す評価指標を算出する評価指標算出部と、
    前記複数の帯状領域それぞれに対して、前記評価指標算出部により算出される評価指数が最小になるように、該帯状領域に含まれる表面欠陥から前記クラスタに含むべき表面欠陥を選択するクラスタ調整部と、
    を有し、
    前記クラスタ仮定部は、前記帯状領域の長手方向及び短手方向それぞれの分布形態として、前記分布形態候補の全ての組み合わせを順次選択して前記クラスタに設定し、
    前記評価指標算出部及び前記クラスタ調整部は、当該分布形態候補の組み合わせが設定された全てのクラスタについて、前記評価指標の算出及び前記クラスタの調整を行い、
    前記クラスタ特定部は、前記評価指標が最小となる長手方向及び短手方向の分布形態が設定された1のクラスタを、該帯状領域に対して特定することを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の連続欠陥判定装置。
  13. 前記クラスタ特定部により特定された前記各クラスタに対して、該クラスタに含まれる表面欠陥の数を、該クラスタが特定された帯状領域と該該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで算出される連続欠陥判定指標に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当しないことを判定するクラスタ事前判定部を更に有することを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の連続欠陥判定装置。
  14. 前記分割部により分割された各帯状領域に対して、該帯状領域に含まれる表面欠陥の数を、該帯状領域と該帯状領域の予め設定された範囲の近傍に存在する帯状領域とに含まれる表面欠陥の数の和で除算することで算出される簡易連続欠陥判定指標に基づいて、該帯状領域に含まれる表面欠陥が前記連続欠陥に該当しないことを判定する帯状領域事前判定部を更に有することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載の連続欠陥判定装置。
  15. コンピュータに、複数の製造工程における処理を経て製造される薄鋼板に発生し、表面欠陥検出装置により検出された複数の表面欠陥に関する情報を基に、該複数の表面欠陥の分布形態を解析して、該薄鋼板の長手方向に連続して発生した連続欠陥の有無を判定する連続欠陥判定機能を実現させるためのプログラムであって、
    コンピュータに、
    前記薄鋼板に発生した複数の表面欠陥それぞれの発生位置について長手方向座標及び短手方向座標を含む座標データを、前記表面欠陥検出装置から取得する取得機能、
    前記薄鋼板の少なくとも一面を前記薄鋼板の短手方向で、予め設定された間隔を有する複数の帯状領域に分割する分割機能、
    前記分割機能により分割された複数の帯状領域それぞれに対して、該帯状領域に含まれた複数の表面欠陥の座標データによって規定される分布形態に基づいて、少なくとも一部の前記表面欠陥を含むクラスタを、前記複数の帯状領域毎に1ずつ特定するクラスタ特定機能、
    前記帯状領域に含まれる複数の表面欠陥のうちの、前記クラスタ特定機能により特定されたクラスタに含まれる複数の表面欠陥の分布形態に基づいて、該クラスタに含まれる複数の表面欠陥が前記連続欠陥に該当するか否かを判定する判定機能、
    を実現させるためのプログラム。
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