JP2010185035A - 蓄熱体粉末の製造方法、並びに、化学蓄熱装置及びその製造方法 - Google Patents

蓄熱体粉末の製造方法、並びに、化学蓄熱装置及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱の注入及び抽出を繰り返しても反応率の低下が少ない蓄熱体粉末の製造方法、並びに、化学蓄熱装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】化学蓄熱材となる水酸化物源を水に溶解又は分散させた原料液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記原料液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程を備えた蓄熱体粉末の製造方法。脱水・水和反応により吸熱・発熱を生ずる化学蓄熱材を含む蓄熱体と、前記蓄熱体との間で熱の授受を行うための伝熱壁との間に、水を含む成長液を介在させ、前記成長液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記成長液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程を備えた化学蓄熱装置の製造方法、及びこの方法により得られる化学蓄熱装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、蓄熱体粉末の製造方法、並びに、化学蓄熱装置及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、脱水・水和反応により吸熱・発熱を生じる化学蓄熱材を含み、かつ耐久性に優れた蓄熱体粉末の製造方法、並びに、このような蓄熱体粉末を用いた化学蓄熱装置及びその製造方法に関する。
化学蓄熱とは、化学反応を利用した熱の貯蔵をいう。例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)に熱を加えると脱水反応を起こし、酸化カルシウム(CaO)と水(H2O)が生成する。一方、生成したCaOにH2Oを加えると、Ca(OH)2が生成し、その際に反応熱を放出する。そのため、吸熱反応の際に分離したCaOとH2Oとを別々に保管すれば、水和反応させるまでの間、CaOの形で熱を貯蔵することが可能となる。
化学蓄熱材は、
(1)体積当たりの蓄熱量が大きい、
(2)蓄熱材を保温する必要がない、
(3)蓄熱材の貯蔵中に生じる蓄熱損失が少ないため、長期間の蓄熱が可能である、
等の利点がある。そのため、化学蓄熱材を用いた蓄熱方法は、工場やエンジンなどから排出される排熱や太陽熱を有効利用する方法として期待されている。
化学蓄熱材、又はこれを用いた化学蓄熱装置については、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、結晶質の石灰石を850〜1100℃で2〜7時間加熱し、次いで500℃〜600℃で1時間以上加熱することにより得られる化学蓄熱材が開示されている。
同文献には、
(1)結晶質の石灰石を所定の温度で加熱すると、表面から内部に向かう多数の気孔を有する生石灰が得られる点、及び、
(2)石灰石の内部に多数の気孔を形成すると、水蒸気との反応速度が速くなり、しかも水和に伴う体積膨張も吸収することができる点、
が記載されている。
また、特許文献2、3には、内部の空間に対して10〜60容量%の割合で粉体化学蓄熱材が収容された蓄熱カプセル、及びこれを用いた蓄熱装置が開示されている。
同文献には、粉体化学蓄熱材の充填割合を蓄熱カプセルの内部空間の60容量%以下にすると、粉体化学蓄熱材の自重による固化、並びに、発熱効率及び再生効率の低下を抑制することができる点が記載されている。
化学蓄熱材を用いて熱の注入・抽出を行うためには、化学蓄熱材と熱交換媒体との間で熱の授受を行う必要がある。しかしながら、化学蓄熱材は、一般に熱の注入・抽出時に膨張・収縮を繰り返すため、使用中に化学蓄熱材が粉体化したり、あるいは、化学蓄熱材の表面が熱交換器の表面から剥離する場合がある。その結果、化学蓄熱材の反応率が低下するという問題がある。
この問題を解決するために、特許文献2、3に開示されているように、粉体の化学蓄熱材を多孔質の蓄熱カプセルに封入することも考えられる。
しかしながら、この方法は、
(1)カプセル封入による熱伝導抵抗の増加、
(2)粒子間距離に依存した接触経路の複雑化、
などの熱律速が発生する。そのため、この方法では、化学蓄熱システムとして十分な能力を発揮できないという問題がある。
特開平1−225686号公報 特公平6−80395号公報 特公平6−80394号公報
本発明が解決しようとする課題は、熱の注入及び抽出を繰り返しても反応率の低下が少ない蓄熱体粉末の製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、熱の注入及び抽出を繰り返しても反応率の低下が少ない化学蓄熱装置及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る蓄熱体粉末の製造方法は、
化学蓄熱材となる水酸化物源を水に溶解又は分散させた原料液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記原料液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程
を備えていることを要旨とする。
本発明に係る蓄熱体粉末の製造方法は、
前記高温部又は前記高温期にある前記原料液から成長した前記水酸化物の結晶を回収し、残液を前記原料液に戻す循環工程
をさらに備えていても良い。
また、前記原料液は、粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第1の補強材を含むものが好ましい。
本発明に係る化学蓄熱装置の製造方法は、
脱水・水和反応により吸熱・発熱を生ずる化学蓄熱材を含む蓄熱体と、前記蓄熱体との間で熱の授受を行うための伝熱壁との間に、水を含む成長液を介在させ、前記成長液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記成長液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程
を備えていることを要旨とする。
前記成長液は、
(1)前記化学蓄熱材となる水酸化物源、並びに/又は、
(2)粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第1の補強材、
を含むものが好ましい。
本発明に係る化学蓄熱装置は、本発明に係る方法により得られるものからなる。
水酸化物は、一般に温度が高くなるほど、溶解度が低下する。そのため、水酸化物源を含む原料液に温度勾配又は温度サイクルを与えると、高温部又は高温期において六角板状の水酸化物結晶が析出し、析出した結晶が大きく成長する。大きく成長した水酸化物結晶は、脱水後も母結晶の形骸構造を保存しやすい。そのため、このような六角板状の水酸化物結晶を化学蓄熱材として用いると、微粉化に起因する反応率の低下を抑制することができる。
また、化学蓄熱材を含む蓄熱体と伝熱壁との間に、水を含む成長液を介在させ、成長液に温度勾配又は温度サイクルを与えると、高温部又は高温期において六角板状の水酸化物結晶を析出・成長させることができる。そのため、蓄熱体と伝熱壁との熱的・機械的接触が増加し、反応率の低下を抑制することができる。
さらに、このような水酸化物結晶を析出・成長させる場合において、粘土鉱物等の補強材を介在させると、水酸化物の一次粒子が補強材で補強された複合体が得られる。そのため、このような複合体を蓄熱体として用いると、蓄熱体の微粉化や蓄熱体と伝熱壁の剥離に起因する反応率の低下を抑制することができる。
昇温析出法を用いた蓄熱体粉末製造装置の概略構成図である。 化学蓄熱装置の概略構成図である。 伝熱壁を備えた蓄熱体貯蔵容器の断面模式図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 蓄熱体粉末の製造方法]
本発明に係る蓄熱体粉末の製造方法は、成長工程と、循環工程と、補充工程とを備えている。
[1.1 成長工程]
成長工程は、化学蓄熱材となる水酸化物源を水に溶解又は分散させた原料液に温度勾配又は温度サイクルを与え、原料液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる工程である。
[1.1.1 化学蓄熱材]
本発明において、化学蓄熱材とは、脱水・水和反応により吸熱・発熱を生ずるものをいう。化学蓄熱材としては、具体的には、
(1)CaO(Ca(OH)2)、BaO(Ba(OH)2)、MgO(Mg(OH)2)などのアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、
(2)NiO(Ni(OH)2)、CoO(Co(OH)2)、Co23(Co(OH)3)、CuO(Cu(OH)2)などの遷移金属の酸化物又は水酸化物、
(3)Al23(Al(OH)3)などの典型金属の酸化物又は水酸化物、
などがある。これらは、いずれか1種を用いても良く、あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、カルシウム化合物は、蓄熱・放熱の繰り返しを安定して行うことができるので、化学蓄熱材として好適である。また、マグネシウム化合物は、より低温域での蓄熱・放熱が可能であるので、化学蓄熱材として好適である。
次の(1)式に、化学蓄熱材の一種であるCaOの脱水・水和反応を示す。
CaO+H2O ⇔ Ca(OH)2 ・・・(1)
CaOの水和反応は発熱反応であり、Ca(OH)2の脱水反応は吸熱反応である。しかも、水和反応及び脱水反応は可逆的であるので、熱の注入及び抽出を繰り返し行うことができる。
[1.1.2 蓄熱体粉末]
本発明に係る方法により得られる蓄熱体粉末は、上述した化学蓄熱材のみからなるものでも良く、あるいは、これらの化学蓄熱材と補強材との複合体であっても良い。
補強材としては、具体的には、
(1)セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイトなどの粘土鉱物、
(2)ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイトなどの層状複水酸化物、
(3)良熱伝導体である金属材料(例えば、ステンレス鋼、Cu又はその合金など)の粒子や繊維、
(4)粘土、炭素、Cu等からなり、その内部に化学蓄熱材を保持することが可能な空隙を持つ籠構造物質(例えば、(1)〜(3)に記載した物質など)
(5)(1)〜(4)の組み合わせ、
などがある。
また、化学蓄熱装置に充填される蓄熱体は、
(a)化学蓄熱材を含む蓄熱体粉末、
(b)化学蓄熱材を含む蓄熱体粉末をプレス成形することにより得られる成形体、
(c)成形体を加熱し、粒子を部分的に焼結させた多孔質の焼結体、
のいずれであっても良い。
化学蓄熱材の脱水及び水和が繰り返されると、化学蓄熱材が膨張及び収縮を繰り返す。その結果、化学蓄熱材が微粉化し、微粉化した化学蓄熱材が凝集する場合がある。化学蓄熱材と水蒸気との反応は固気反応であるため、凝集は化学蓄熱材と水蒸気との接触を妨げ、化学蓄熱材の反応率を低下させる原因となる。
これに対し、化学蓄熱材と粘土鉱物とを複合化させると、脱水及び水和を繰り返し行っても化学蓄熱材の反応率の低下を抑制することができる。これは、化学蓄熱材の一次粒子の間に粘土鉱物を分散させることによって化学蓄熱材が補強され、化学蓄熱材の微粉化が抑制されるためと考えられる。
同様に、粘土鉱物に代えて又はこれに加えて、化学蓄熱材と層状複水酸化物とを複合化させると、脱水及び水和を繰り返し行っても化学蓄熱材の反応率の低下を抑制することができる。これは、その両面に水酸基を有する層状複水酸化物と化学蓄熱材とを複合化させると、化学蓄熱材と層状複水酸化物とが水酸基を介して結合し、化学蓄熱材の微粉化が抑制されるためと考えられる。
また、化学蓄熱材と金属材料の粒子、繊維等とを複合化させると、化学蓄熱材が補強されるだけでなく、良熱伝導体である金属材料によって熱の注入及び抽出が促進される。
さらに、籠構造物質の空隙内に化学蓄熱材を充填すると、化学蓄熱材が微粉化しても、化学蓄熱材の流出を抑制することができる。また、化学蓄熱材が粒成長し、反応性が低下することを抑制できる。
[1.1.3 水酸化物源]
原料液に添加する水酸化物源としては、
(1)上述した化学蓄熱材の粉末、
(2)上述した化学蓄熱材の粉末と、上述した粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の補強材(第3の補強材)とを含む複合体、
などがある。
成長工程において、Ca(OH)2結晶を成長させる場合、水酸化物源には、
(1)CaO又はCa(OH)2
(2)Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶、
(3)第3の補強材が共存する条件下において、Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶と第3の補強材との複合体、
を用いるのが好ましい。
Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶は、いろいろな化学プロセスから発生するCa塩、水酸化物を利用することができるので、水酸化物源として好適である。
また、Ca(OH)2微結晶と補強材との複合体は、補強材が絡み合った状態でCa(OH)2結晶を成長させることができるので、水酸化物源として好適である。
[1.1.4 添加物]
水酸化物の結晶を成長させるための原料液は、水酸化物源を水に溶解又は分散させたものからなる。原料液は、水酸化物源のみを含むものでも良く、あるいは、水酸化物源以外の添加物を含んでいても良い。
添加物としては、具体的には、
(1)メタノール、エタノール等の1価のアルコール、ジエチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコール、
(2)粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の補強材(第1の補強材)、
などがある。
例えば、原料液中に1価〜3価のアルコールを添加すると、反応速度が抑制され、より大きな結晶を作製することができる。特に、メタノールは、反応速度を抑制する効果が大きいので、大きな結晶を作製するための添加物として好適である。
また、水酸化物源として化学蓄熱材と補強材(第3の補強材)との複合体を用いることに代えて、又は、これに加えて、原料液中に補強材(第1の補強材)を添加すると、粘土鉱物等で補強された水酸化物の結晶を成長させることができる。
なお、水酸化物源に第3の補強材が含まれる場合において、原料液にさらに第1の補強材を添加するときには、第1の補強材は、第3の補強材と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
[1.1.4 原料液の組成]
原料液の組成は、特に限定されるものではなく、水酸化物源や添加物の種類に応じて最適なものを選択する。
一般に、原料液中の水酸化物源の濃度が高くなり過ぎると、いろいろな形状の粒子が析出し、結晶形状の制御が困難となる。結晶形状を制御するためには、原料液中の水酸化物源の濃度は、水酸化物に換算して5wt%以下が好ましい。
原料液にアルコールが含まれる場合、原料液中のアルコール濃度が高くなるほど、反応速度が抑制されるので、より大きな結晶を成長させることができる。これは、アルコールの−OH基が水酸化物の特定の結晶面に選択的に吸着し、六角板状の結晶成長を促すためである。一方、原料液中のアルコール濃度が高くなりすぎると、反応速度が著しく低下するので好ましくない。従って、原料液の組成、水酸化物源の種類等に応じて、最適なアルコール濃度を選択するのが好ましい。
原料液に第1の補強材が含まれる場合、原料液中の第1の補強材の濃度が高くなるほど、第1の補強材の含有量が多い結晶が得られる。一方、原料液中の第1の補強材の濃度が高くなりすぎると、流動性が著しく低下するので好ましくない。従って、原料液の組成、水酸化物源の種類等に応じて、最適な第1の補強材濃度を選択するのが好ましい。
[1.1.5 温度勾配又は温度サイクル]
水酸化物源を水に加えると、水酸化物源の少なくとも一部が水に溶解する。水酸化物は、一般に温度が高くなるほど、水への溶解度が低下する。そのため、水酸化物源を含む原料液に温度勾配又は温度サイクルを与えると、低温部又は低温期において溶解させた水酸化物を高温部又は高温期において析出させることができる(昇温析出法)。
また、原料液に第1の補強材が含まれる場合、及び/又は、水酸化物源に第3の補強材が含まれる場合には、高温部又は高温期において、補強材が絡み合った状態で、水酸化物の結晶を成長させることができる。
原料液中に温度勾配又は温度サイクルを与える方法には、具体的には、
(1)原料液を細長い容器に充填し、一端を加熱し、他端を冷却する方法(原料液に温度勾配を与える方法)、
(2)原料液全体を高温にする工程と、原料液全体を低温にする工程とを繰り返す方法(原料液に温度サイクルを与える方法)、
などがある。
細長い容器の一端を高温部とし、他端を低温部とすると、低温部では水酸化物源が溶解し、高温部では水酸化物が析出する。高温部で水酸化物が析出すると、原料液中に水酸化物の濃度勾配が生じる。そのため、低温部で溶解した水酸化物が高温部へ拡散し、既にある結晶の上に水酸化物が析出し、結晶が成長する。
また、原料液全体を低温にすると、相対的に多量の水酸化物源が水に溶解する。このような原料液全体を高温にすると、水酸化物の溶解度が低下し、原料液中に種々の大きさを有する結晶が析出する。さらに、原料液全体を低温にすると、粒子径の小さい結晶が先に溶解する。そのため、このような加熱冷却サイクルを繰り返すと、小さい結晶が優先的に溶解して大きい結晶の上に再析出し、大きい結晶をより大きく成長させることができる。
高温部又は高温期と低温部又は低温期の温度差は、十分な溶解度差が得られるものであればよい。高温部又は高温期の温度は、具体的には、60〜99℃が好ましい。また、低温部又は低温期の温度は、具体的には、1〜20℃が好ましい。
[1.1.6 成長時間]
成長時間は、目的とする大きさの結晶が得られるように、原料液の組成、温度差等に応じて最適な時間を選択する。耐久性を向上させるためには、水酸化物の結晶の大きさは、サブミクロン〜10μmが好ましい。従って、このような大きさの結晶が得られるように、成長時間を選択するのが好ましい。
[1.2 循環工程]
循環工程は、高温部又は高温期にある原料液から成長した水酸化物の結晶を回収し、残液を原料液に戻す工程である。循環工程は、必ずしも必要ではないが、原料液を循環させると、化学蓄熱材に適した大きさの結晶を効率よく製造することができる。
成長した結晶と残液の分離方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。例えば、高温部又は高温期にある原料液を適当なフィルターに通すと、結晶と残液とを分離することができる。得られた残液は、その全量を原料液に戻しても良く、あるいは、一部を原料液に戻しても良い。
残液は、低温部又は低温期にある原料液に戻すのが好ましい。残液を低温部又は低温期にある原料液に戻すと、残液に含まれる微細な水酸化物の結晶が原料液に再溶解し、原料液中の水酸化物濃度を上げることができる。従って、高温部又は高温期にある原料液から回収した残液は、冷却した後、低温部又は低温期にある原料液に戻すのが好ましい。
残液を冷却する方法としては、例えば、
(1)独立した熱交換器を用いて、残液を冷却する第1の方法、
(2)原料液に温度勾配を形成する場合において、残液と、高温部以外の部位にある原料液との間で熱交換を行う第2の方法、
などがある。
特に、第2の方法は、熱を有効利用できるので、残液の冷却方法として好適である。
[1.3 補充工程]
補充工程は、原料液に、
(1)前記水酸化物源、並びに/又は、
(2)粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第2の補強材、
含む補充液を補充する工程である。
補充工程は、必ずしも必要ではないが、原料液に補充液を補充しながら成長させると、より大きな結晶、補強材を含む結晶、あるいは補強材含有量の多い結晶が得られる。また、補充工程と循環工程とを組み合わせて用いると、より大きな結晶、補強材を含む結晶、あるいは補強材含有量の多い結晶を連続的に製造することができる。
補充液は、水酸化物源又は第2の補強材のいずれか一方のみを含むものでも良く、あるいは、双方を含むものでも良い。補充液に第2の補強材が含まれる場合、第2の補強材は、原料液に含まれる第1の補強材又は水酸化物源に含まれる第3の補強材と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
補充液の濃度は、原料液と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。また、補充液の補充速度は、目的に応じて最適な速度を選択する。所定の条件を満たす結晶を連続的に製造する場合、原料液の組成が一定の範囲に維持されるように、補充液の濃度及び補充速度を選択するのが好ましい。
補充液は、低温部又は低温期にある原料液に補充するのが好ましい。水酸化物源を含む補充液を低温部又は低温期にある原料液に補充すると、補充液に含まれる水酸化物源が原料液に溶解し、原料液中の水酸化物濃度を上げることができる。
[2. 蓄熱体粉末製造装置]
本発明に係る蓄熱体粉末の製造方法は、種々の装置を用いて実施することができる。図1に、昇温析出法を用いた蓄熱体粉末製造装置の一例を示す。図1において、蓄熱体粉末製造装置1は、原料容器2と、ヒーター3と、クーラー4と、循環装置5と、熱交換器6とを備えている。
原料容器2は、化学蓄熱材を製造するための原料液を保持するためのものである。本発明において、原料液には、上述したように水酸化物源を水に溶解又は分散させたものが用いられる。
原料容器2の右端には、原料液を加熱するためのヒーター3が設けられ、左端には、原料液を冷却するためのクーラー4が設けられている。ヒーター3及びクーラー4は、原料容器2内の原料液に所定の温度勾配を形成するためのものである。
原料容器2の低温部側には、必要に応じて原料(補充液)を補充するための原料補充口(図示せず)が設けられている。原料補充口は、必ずしも必要ではないが、原料補充口から原料を補充しながら結晶成長させると、より大きな結晶、補強材を含む結晶、あるいは補強材含有量の多い結晶を得ることができる。
循環装置5は、原料容器2の高温部にある原料液を原料容器2の低温部に戻すためのものである。循環装置5には、原料容器2の高温部で成長した結晶7を原料液から分離し、残液のみを低温部に戻すためのフィルター5aが設けられている。
熱交換器6は、高温部から取り出された残液を、低温部に戻す前に冷却するためのものである。図1に示す例において、熱交換器6は、高温部から取り出された残液と、原料容器2内の高温部以外の部位にある原料液との間で熱交換するようになっている。
なお、循環装置5及び熱交換器6は、必ずしも必要ではないが、原料補充口から原料(補充液)を適宜補充しながら、原料液を循環させると、大きく成長した蓄熱体粉末を連続的に取り出すことができるという利点がある。
[3. 蓄熱体粉末の製造方法の作用]
図1に示す蓄熱体粉末製造装置1を用いた場合、蓄熱体粉末は、以下のようにして製造することができる。
まず、原料容器2に原料液を充填し、ヒーター3及びクーラー4を用いて原料液に温度勾配を付けると、低温部において原料液に含まれる水酸化物源の一部が溶解する。一方、水酸化物は、温度が高くなるほど水への溶解度が減少するため、高温部では、水酸化物が結晶となって析出する。
高温部で水酸化物が析出すると、原料液中に濃度勾配ができるので、低温部で溶解した水酸化物が高温部へ拡散する。高温部に拡散した水酸化物は、水に溶解した状態でいることができず、既に形成されている水酸化物の結晶の上に析出する。その結果、高温部において水酸化物の結晶が成長する。
この時、原料液にメタノールなどのアルコールを加えると、反応速度が抑制され、より大きな結晶を作製することができる。
高温部において成長した大きな結晶7をフィルター5aにより回収した後、残液を低温部に戻すと、残液に含まれる細かい粒子が原料液中に再溶解する。そのため、適宜、原料を補充しながら、昇温析出及び原料液の循環を繰り返すと、大きく成長した結晶7を連続的に取り出すことができる。
このようにして得られた水酸化物は、六角板状の形態を取る。大きく成長した六角板状の水酸化物結晶は、脱水後も母結晶の形骸構造を保存しやすい。そのため、このような六角板状の水酸化物結晶を化学蓄熱材として用いると、微粉化に起因する反応率の低下を抑制することができる。
さらに、昇温析出法を用いて水酸化物の結晶を成長させる場合において、原料液に第1の補強材を分散させ、水酸化物源として第3の補強材を含むものを用い、あるいは、原料補充口から第2の補強材を補充すると、高温部において、補強材と水酸化物との複合体からなる蓄熱体粉末が得られる。得られた蓄熱体粉末は、補強材によって微粉化が抑制されるので、耐久性が高い。
[4. 化学蓄熱装置]
図2に、化学蓄熱材を用いた化学蓄熱装置の一例を示す。化学蓄熱装置10は、一般に蓄熱体貯蔵容器20と、熱注入装置32と、熱抽出装置34と、水貯蔵容器40と、水蒸気供給・排出装置50とを備えている。
蓄熱体貯蔵容器20は、化学蓄熱材を含む蓄熱体22を貯蔵するための容器である。蓄熱体貯蔵容器20は、水蒸気供給・排出装置50を介して、水貯蔵容器40に接続されている。また、蓄熱体貯蔵容器20は、密閉可能になっている。
熱注入装置32は、蓄熱体貯蔵容器20に収容された蓄熱体22に熱を注入するためのものである。熱抽出装置34は、蓄熱体貯蔵容器20に収容された蓄熱体22から放出される熱を抽出し、負荷(図示せず)に供給するためのものである。熱注入装置32及び熱抽出装置34は、いずれも蓄熱体貯蔵容器20に取り付けられる。
熱注入装置32及び熱抽出装置34は、特に限定されるものではなく、蓄熱体22への熱の注入及び蓄熱体22からの熱の抽出が可能なものであればよい。通常、蓄熱体貯蔵容器20に熱交換器を設け、熱交換媒体(空気、水蒸気など)を介して熱の注入及び抽出を行う。
水貯蔵容器40は、蓄熱体22から放出され、又は蓄熱体22に供給するための水42を貯蔵するための容器である。水貯蔵容器40は、水蒸気供給・排出装置50を介して、蓄熱体貯蔵容器20に接続されている。また、水貯蔵容器40は、密閉可能になっている。
水貯蔵容器40及び蓄熱体貯蔵容器20の内部圧力が常圧近傍となる条件下で化学蓄熱装置10を使用する場合、水貯蔵容器40は、水42を加熱し、水蒸気の発生を補助する加熱装置を備えているのが好ましい。
一方、水貯蔵容器40及び蓄熱体貯蔵容器20の内部圧力が大気圧より低い条件下で化学蓄熱装置10を使用する場合、水の沸点が低下し、常温でも所定量の水蒸気が発生する。そのため、このような場合には水42を加熱するための加熱装置は必ずしも必要ではない。
水蒸気供給・排出装置50は、蓄熱体貯蔵容器20と水貯蔵容器40との間で水蒸気の授受を行うための装置である。
図1に示す例において、水蒸気供給・排出装置50は、蓄熱体貯蔵容器20と水貯蔵容器40を連結する配管52と、配管52を開閉するための開閉バルブ54とを備えている。蓄熱体貯蔵容器20及び水貯蔵容器40は、いずれも密閉可能になっている。そのため、所定のタイミングで開閉バルブ54を開閉するだけで、蓄熱体22からの水蒸気の放出及び停止、並びに、水貯蔵容器20から蓄熱体22への水蒸気の供給及び停止を行うことができる。
本発明において、化学蓄熱材は、上述したように脱水・水和反応により吸熱・発熱を生ずるものからなる。蓄熱体貯蔵容器20と水貯蔵容器40を水蒸気供給・排出装置50で連結し、熱注入装置32を介して蓄熱体22に熱を注入すると、脱水反応が起こる。脱水反応により生じた水蒸気は、水蒸気供給・排出装置50を介して水貯蔵容器40に運ばれ、そこで凝縮して水42となる。
また、脱水反応後の蓄熱体22に水蒸気供給・排出装置50を介して水蒸気を供給すると、水和反応が起こり、蓄熱体22が発熱する。蓄熱体22から放出された熱は、熱抽出装置34により抽出され、負荷(図示せず)に供給される。
熱注入装置32を介して注入される熱としては、例えば、
(1)工場や自動車のエンジンなどから排出される排熱、
(2)太陽熱、
などがある。
また、熱抽出装置34を介して抽出される熱の供給先(負荷)としては、例えば、
(1)自動車のエンジン、燃料電池、バッテリーなどを加熱し、寒冷地におけるこれらの始動を補助するための補助装置、
(2)給湯装置、暖房装置、
などがある。
[5. 化学蓄熱装置の製造方法]
本発明に係る化学蓄熱装置の製造方法は、
脱水・水和反応により吸熱・発熱を生ずる化学蓄熱材を含む蓄熱体と、前記蓄熱体との間で熱の授受を行うための伝熱壁との間に、水を含む成長液を介在させ、前記成長液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記成長液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程
を備えている。
本発明に係る化学蓄熱装置は、上述した構成に加えて、本発明に係る方法により得られたものからなる。
[5.1 蓄熱体]
本発明に係る化学蓄熱装置において、蓄熱体は、粉末でも良い。しかしながら、伝熱壁との間で熱の授受を効率よく行うためには、蓄熱体は、
(1)化学蓄熱材を含む粉末をプレス成形することにより得られる成形体、あるいは
(2)成形体を加熱し、粒子を部分的に焼結させた多孔質の焼結体、
が好ましい。
蓄熱体は、化学蓄熱材のみからなるものでも良く、あるいは、化学蓄熱材と補強材との複合体であっても良い。化学蓄熱材及び補強材の詳細は、上述した通りであるので、説明を省略する。
[5.2 伝熱壁]
伝熱壁は、蓄熱体貯蔵容器内に設けられる。伝熱壁の構造は、特に限定されるものではなく、蓄熱体の形状、大きさ等に応じて最適なものを選択する。
図3に、伝熱壁を備えた蓄熱体貯蔵容器の一例を示す。図3において、蓄熱体22aは、化学蓄熱材を含む粉末の成形体又は焼結体からなる。蓄熱体貯蔵容器20の内部は、伝熱壁20a、20a…で仕切られ、伝熱壁20aの表面と接触するように矩形の蓄熱体22aが挿入されている。
この場合、伝熱壁20aで仕切られたセルのすべてに蓄熱体22aを挿入するのではなく、1つおきに挿入するのが好ましい。蓄熱体22aが挿入されていないセル20bは、蓄熱体22aから熱を注入又は抽出するための熱媒体の通路となる。また、蓄熱体22aが挿入されたセル20cの空隙部分は、蓄熱体22aから放出され又は蓄熱体22aに吸収される水蒸気の通路となる。
[5.3 成長液]
成長液は、水のみを含むものでも良く、あるいは、水以外の第3成分が含まれていても良い。
第3成分としては、具体的には、
(1)化学蓄熱材となる水酸化物源、
(2)粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第1の補強材、
などがある。成長液には、これらのいずれか1種が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
成長液に添加する水酸化物源としては、
(1)上述した化学蓄熱材の粉末、
(2)上述した化学蓄熱材の粉末と、上述した粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の補強材(第3の補強材)とを含む複合体、
などがある。
成長工程において、Ca(OH)2結晶を成長させる場合、水酸化物源には、
(1)CaO又はCa(OH)2
(2)Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶、
(3)第3の補強材が共存する条件下において、Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶と第3の補強材との複合体、
を用いるのが好ましい。
成長液を蓄熱体と伝熱壁の間に介在させる方法は、特に限定されるものではなく、蓄熱体や伝熱壁の構造に応じて、最適なものを選択する。
図3に示すように、蓄熱体が成形体又は焼結体である場合、成長液を蓄熱体と伝熱壁の間に介在させる方法としては、例えば、
(1)水蒸気供給・排出装置を介して水貯蔵容器から蓄熱体に水蒸気を供給する方法、
(2)蓄熱体及び/又は伝熱壁の表面に、成長液を塗布し、両者を重ね合わせる方法、
(3)蓄熱体を伝熱壁で仕切られた蓄熱体貯蔵容器に挿入し、蓄熱体と伝熱壁の隙間に成長液を充填する方法、
などがある。
[5.4 温度勾配又は温度サイクル]
蓄熱体と伝熱壁の間に介在させた成長液に温度勾配又は温度サイクルを与える方法には、
(1)蓄熱体又は伝熱壁の一方を加熱し、他方を冷却する方法(成長液に温度勾配を形成する方法)、
(2)蓄熱体、伝熱壁、及びこれらの間に介在させた成長液の全体を高温にする工程と、全体を低温にする工程とを繰り返す方法(成長液に温度サイクルを与える方法)、
などがある。
また、蓄熱体又は伝熱壁を加熱・冷却する方法としては、
(1)独立した外部ヒーター及び/又は外部クーラーを使って蓄熱体又は伝熱壁を加熱・冷却する方法、
(2)蓄熱体貯蔵容器に接続された熱注入装置及び熱抽出装置に熱媒体を供給することによって、蓄熱体又は伝熱壁を加熱・冷却する方法、
などがある。
蓄熱体と伝熱壁の間に成長液を介在させ、蓄熱体又は伝熱壁の一端を高温部とし、他端を低温部とすると、低温部では、蓄熱体又は成長液に含まれる水酸化物源が水に溶解し、高温部では成長液から水酸化物が析出する。高温部で水酸化物が析出すると、成長液中に水酸化物の濃度勾配が生じる。そのため、低温部で溶解した水酸化物が高温部へ拡散し、既にある結晶の上に水酸化物が析出し、結晶が成長する。
また、成長液全体を低温にすると、相対的に多量の水酸化物源が水に溶解する。このような成長液全体を高温にすると、水酸化物の溶解度が低下し、成長液中に種々の大きさを有する結晶が析出する。さらに、成長液全体を低温にすると、粒子径の小さい結晶が先に溶解する。そのため、このような加熱冷却サイクルを繰り返すと、小さい結晶が優先的に溶解して大きい結晶の上に再析出し、大きい結晶をより大きく成長させることができる。
最適な温度差及び成長時間については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[5.5 蓄熱体の再生]
化学蓄熱装置を繰り返し使用すると、やがて蓄熱体の一部が微粉化する。その結果、蓄熱体と伝熱壁が剥離する場合がある。蓄熱体と伝熱壁が剥離すると、両者の間の熱的・機械的接触が低下し、化学蓄熱材の反応効率が低下する。
そこでこのような場合には、剥離した蓄熱体と伝熱壁の間に上述した成長液を介在させ、成長液に温度勾配又は温度サイクルを与える再生処理を行うのが好ましい。
すなわち、本発明に係る化学蓄熱装置の製造方法は、化学蓄熱装置の再生方法としても用いることができる。本発明において、「化学蓄熱装置の製造方法」というときは、化学蓄熱装置の再生方法も含まれる。
[6. 化学蓄熱装置の製造方法の作用]
化学蓄熱材を含む蓄熱体と伝熱壁との間に、水を含む成長液を介在させ、成長液に温度勾配又は温度サイクルを与えると、高温部又は高温期において六角板状の水酸化物結晶を析出・成長させることができる。その結果、蓄熱体と伝熱壁の隙間を水酸化物の結晶で埋めることができる。しかも、大きく成長した水酸化物結晶は、脱水後も母結晶の形骸構造を保存しやすい。そのため、蓄熱体と伝熱壁との熱的・機械的接触が増加し、反応率の低下を抑制することができる。
さらに、このような水酸化物結晶を析出・成長させる場合において、補強材を介在させると、水酸化物の一次粒子が補強材で補強された複合体が得られる。そのため、このような複合体を蓄熱体と伝熱壁の間に介在させると、蓄熱体の微粉化や蓄熱体と伝熱壁の剥離に起因する反応率の低下を抑制することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る蓄熱体粉末の製造方法は、化学蓄熱装置に用いるための蓄熱体粉末の製造方法として用いることができる。
本発明に係る化学蓄熱装置及びその製造方法は、
(1)自動車のエンジン、燃料電池、バッテリーなどを加熱し、寒冷地におけるこれらの始動を補助するための補助装置、
(2)給湯装置、暖房装置、
(3)これらの製造方法、
として利用することができる。
1 蓄熱体粉末製造装置
2 原料容器
3 ヒーター
4 クーラー
5 循環装置
6 熱交換器

Claims (14)

  1. 化学蓄熱材となる水酸化物源を水に溶解又は分散させた原料液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記原料液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程を備えた蓄熱体粉末の製造方法。
  2. 前記原料液は、粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第1の補強材を含む請求項1に記載の蓄熱体粉末の製造方法。
  3. 前記高温部又は前記高温期にある前記原料液から成長した前記水酸化物の結晶を回収し、残液を前記原料液に戻す循環工程をさらに備えた請求項1又は2に記載の蓄熱体粉末の製造方法。
  4. 前記原料液に、
    (1)前記水酸化物源、並びに/又は、
    (2)粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第2の補強材、
    を含む補充液を補充する補充工程をさらに備えた請求項1から3までのいずれかに記載の蓄熱体粉末の製造方法。
  5. 前記水酸化物源は、CaO又はCa(OH)2である請求項1から4までのいずれかに記載の蓄熱体粉末の製造方法。
  6. 前記水酸化物源は、Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶である請求項1から4までのいずれかに記載の蓄熱体粉末の製造方法。
  7. 前記水酸化物源は、粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第3の補強材が共存する条件下において、Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶と前記第3の補強材との複合体である請求項1から4までのいずれかに記載の蓄熱体粉末の製造方法。
  8. 脱水・水和反応により吸熱・発熱を生ずる化学蓄熱材を含む蓄熱体と、前記蓄熱体との間で熱の授受を行うための伝熱壁との間に、水を含む成長液を介在させ、前記成長液に温度勾配又は温度サイクルを与え、前記成長液の高温部又は高温期において水酸化物の結晶を成長させる成長工程を備えた化学蓄熱装置の製造方法。
  9. 前記成長液は、前記化学蓄熱材となる水酸化物源を含む請求項8に記載の化学蓄熱材の製造方法。
  10. 前記成長液は、粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第1の補強材を含む請求項8又は9に記載の化学蓄熱材の製造方法。
  11. 前記水酸化物源は、CaO又はCa(OH)2である請求項9又は10に記載の化学蓄熱装置の製造方法。
  12. 前記水酸化物源は、Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶である請求項9又は10に記載の化学蓄熱装置の製造方法。
  13. 前記水酸化物源は、粘土鉱物、層状複水酸化物、金属材料、及び籠構造物質から選ばれる少なくとも1以上の第3の補強材が共存する条件下において、Ca塩とアルカリ金属水酸化物とを反応させることにより得られるCa(OH)2微結晶と前記第3の補強材との複合体である請求項9又は10に記載の化学蓄熱装置の製造方法。
  14. 請求項8から13までのいずれかに記載の方法により得られる化学蓄熱装置。
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