JP2003322409A - 蓄熱槽、熱利用装置及びその熱利用方法 - Google Patents

蓄熱槽、熱利用装置及びその熱利用方法

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来では利用価値のなかった低温の廃熱
を有効に利用することができる熱利用装置及びその熱利
用方法を提供する。 【構成】 熱媒体を貯蔵するための蓄熱槽と、その
中を熱媒体が通過し、蓄熱槽に熱媒体を供給するための
第1の経路と、熱利用槽から熱媒体を排出するための第
2の経路と、第1の経路及び第2の経路の途中に設けら
れた蓄熱槽と、この蓄熱槽中に設けられ、過冷却可能な
蓄熱材の充填された蓄熱体と、熱媒体に熱を供給するた
めの熱供給手段とを備え、物質の過冷却現象を利用して
廃熱を長期間効率よく貯蔵する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱を一定時間貯蔵
する蓄熱槽を有する熱利用装置及びその装置利用管理方
法に関し、特に、浴槽の廃熱を有効に利用する蓄熱槽、
熱利用装置及びこの装置を使用した熱利用方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、廃熱を有効に利用する方法とし
て、例えば、特開2000−130885公報に記載の
排熱回収システム、風呂用排熱利用方法及び蓄熱槽が提
案されている。図14は従来の排熱回収システムを示す
回路構成図である。
【0003】図14において、31は流体を循環させる
流体循環路で、ここでは浴槽水を循環させる水循環路、
32は水循環路31に設けたポンプ、33は内部に温熱
を有する流体を貯溜して利用する温熱利用槽で、ここで
は浴槽である。浴槽33の内部に例えば40℃程度の浴
槽水を貯溜して入浴に利用する。34は温熱利用槽の流
体(この場合には浴槽33の浴槽水)を排出する流体排
出手段で、例えば浴槽水の排水部であり、排熱回収後の
浴槽水は排水部34から排水される。35はバルブなど
の開閉手段であり、浴槽33へ導入する温水の開閉を行
う。36は浴槽33内に貯溜している水を補助的に加熱
する加熱手段で、例えばヒータである。バルブ35を開
いて浴槽3内に温水が貯溜され排水部34から排水する
ことにより、浴槽33内の流体である水は交換される。
33a、33bは浴槽33から水循環路31への浴槽水
の流出口、流入口である。
【0004】バルブ35を開いて浴槽33へ導入され貯
溜された温水は、入浴で利用された後に夜間などの入浴
を行わない時間帯に、ポンプ32により流出口33aと
流入口33bを通って水循環路31内を流動し、その温
熱が後に記述する熱交換器39で蓄熱ユニット44側に
熱回収される。
【0005】また、37は水循環路、38は水循環路3
7に設けたポンプ、39は第1熱交換部で、例えば水−
水熱交換器、40は水道管と直結している市水流入口、
41は内部に温熱を蓄熱する蓄熱材42を有する蓄熱槽
で例えば蓄熱タンク、42は蓄熱槽41内に充填した蓄
熱材で例えば潜熱蓄熱材、43は給湯口(温熱供給路)
であり、例えばバルブ35などの開閉手段を介し、蓄熱
槽41で加温された温水を浴槽33に導入する流体導入
手段を構成している。水循環路37には熱媒体として例
えば水を循環させる。
【0006】第1熱交換部である熱交換器39の内部で
は水循環路31を循環する浴槽水と水循環路37を循環
する熱媒体である水とが別々の流路で流通し、互いに熱
交換可能である。ポンプ38によって水循環路37を循
環する水が、熱交換器39で浴槽水の温熱を吸熱し、蓄
熱槽41内を流通する際に蓄熱材用容器内に充填されて
いる潜熱蓄熱材42に熱を伝える。この場合、蓄熱槽4
1内で水循環路37を循環する熱媒体である水と潜熱蓄
熱材42との熱交換が行われており、第2熱交換部とし
て動作している。即ち、水循環路37によって、浴槽3
3の流体である浴槽水からの排熱を蓄熱槽41の潜熱蓄
熱材42に伝える温熱輸送手段を構成している。この構
成では第2熱交換部と潜熱蓄熱材42との間には、別の
熱交換部を有する循環路が介在しておらず直接的に水と
潜熱蓄熱材42との間で熱交換される。
【0007】蓄熱槽41内には複数の蓄熱材用容器が充
填され、蓄熱材用容器の中には例えば酢酸ナトリウムや
アルミニウムミョウバンなどの潜熱蓄熱材42が封入さ
れている。この蓄熱材用容器の周囲を水や温水が流通で
きる構造になっている。なお、蓄熱材用容器は、例え
ば、ポリプロピレンやポリエチレンなどある程度耐熱性
を有する材料で形成されている。潜熱蓄熱材42は液体
と固体の相変化を行うことにより熱を蓄熱・放熱する材
料でその凝固温度によって蓄熱槽41内に蓄えている熱
の温度、即ち温熱供給路43に供給する温熱の温度が異
なる。
【0008】例えば、ネオペンチルグリコールでは40
℃程度、酢酸ナトリウムでは50℃程度、ポリエチレン
グリコールでは60℃程度、アルミニウムミョウバンで
は90℃程度の温度で蓄熱できる。ただし、本実施例の
形態の構成では水ー水熱交換器39で熱交換した後の水
循環路37内の水の温度も40℃以上にはならない。従
って、潜熱蓄熱材としてはネオペンチルグリコールが適
していることになる。
【0009】上述のように構成された排熱回収システム
においては、温熱利用槽33の排熱を熱交換器39を用
いて、蓄熱槽41に蓄熱し、再度、温熱利用槽33を使
用する際に、市水流入口40から冷水を蓄熱槽41に流
入して蓄熱槽41内の温熱が冷水に伝達される。その冷
水から変化した温水が温熱供給路43に供給され、直接
の市水流よりも高温の水を得ることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来の排熱回収システ
ムは上述のように構成されており、潜熱蓄熱材に排熱を
蓄熱させているが、蓄熱槽の温度が潜熱蓄熱材の融点を
下回ると、蓄熱材は勝手に凝固を開始し、せっかく貯蔵
した高温の潜熱を放出してしまう。このため、熱の利用
間隔が開くと、蓄熱された高温の潜熱が勝手に放出され
やすい状態となり、排熱の利用効率を悪化させる原因と
なっていた。また、排熱の利用方法においても、何ら工
夫が見られない。
【0011】本発明は上述のような問題点を解決するた
めになされたもので、排熱の利用効率が高く、長時間の
蓄熱も可能な熱利用装置及びその熱の利用方法を提供す
ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による熱利用装置
においては、熱媒体を利用するための熱利用槽と、その
中を熱媒体が通過し、前記熱利用槽に熱媒体を供給する
ための第1の経路と、その中を熱媒体が通過し、前記熱
利用槽から熱媒体を排出するための第2の経路と、前記
第1の経路及び前記第2の経路の途中に設けられた蓄熱
槽と、前記蓄熱槽の中に設けられ、過冷却可能な蓄熱材
の充填された蓄熱体と、前記熱媒体に熱を供給するため
の熱供給手段とを備えたことを特徴とする。また、本発
明による熱利用装置においては、熱媒体の熱を利用する
ための熱利用槽と、外部から熱媒体が注入され、過冷却
可能な蓄熱体を備えた蓄熱槽と、その中を熱媒体が通過
し、前記熱利用槽と前記蓄熱槽との間で熱媒体を授受す
るための第1の経路と、前記蓄熱槽から前記熱利用槽に
熱媒体を循環させるための第2の経路と、前記熱媒体に
熱を供給するための熱供給手段とを備え、前記第1の経
路は前記熱利用槽と蓄熱槽の上部で連通し、前記第2の
経路は前記熱利用槽と蓄熱槽の下部で連通することを特
徴とする。また、前記第1の経路と前記第2の経路を通
過する熱媒体は、前記蓄熱槽内で隔離されていることを
特徴とする。また、前記第1の経路と前記第2の経路を
通過する熱媒体を前記蓄熱槽内で隔離する手段は、前記
蓄熱体を取り巻く管であることを特徴とする。また、前
記熱供給手段は、前記蓄熱槽から前記熱利用槽へと延び
る前記第1の経路の途中に設けられ、前記第1の経路を
通過する熱媒体に熱を供給することを特徴とする。ま
た、前記熱供給手段を通過する熱媒体を前記蓄熱槽に循
環させるための第3の経路が前記熱供給手段と蓄熱槽と
の間に設けられていることを特徴とする。また、前記蓄
熱槽は、前記熱媒体に熱を供給するための熱供給手段の
燃焼排気経路中に置かれていることを特徴とする。
【0013】また、前記過冷却可能な蓄熱材には、相分
離防止材が添加されていることを特徴とする。また、前
記蓄熱体は、過冷却可能な蓄熱材の充填された複数の小
容器からなることを特徴とする。また、前記蓄熱体は、
細長い形状であることを特徴とする。また、前記蓄熱槽
は、前記蓄熱体を加熱するヒーターが設けられているこ
とを特徴とする。また、前記蓄熱槽は、断熱材で覆われ
ていることを特徴とする。また、前記過冷却可能な蓄熱
材は、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物であること
を特徴とする。また、前記過冷却可能な蓄熱材は、酢酸
ナトリウム・三水和物であることを特徴とする。また、
前記過冷却可能な蓄熱材は、硫酸ナトリウム・十水和物
であることを特徴とする。また、前記過冷却可能な蓄熱
材は、チオ硫酸ナトリウム・五水和物であることを特徴
とする。また、前記過冷却可能な蓄熱材は、塩化カルシ
ウム・六水和物であることを特徴とする。
【0014】また、上述の熱利用装置における熱利用方
法は、熱媒体の貯蔵された熱利用槽に熱が供給されたの
ちに、熱利用槽の利用が終了すると、前記第2の経路を
用いて熱利用槽の廃熱を前記蓄熱槽に輸送して蓄熱体中
の蓄熱材を融解させたのちに、蓄熱材を過冷却現象を利
用して液体のままで保持し、次の熱利用槽の利用時に
は、前記第1の経路を通過する熱媒体を廃熱の蓄熱され
た蓄熱体と接触させて蓄熱体中の蓄熱材の過冷却を解消
させ、該熱媒体はその時に発生する該蓄熱材の凝固熱を
吸収しながら熱利用槽に注入されることを特徴とする。
【0015】また、上述の熱利用装置における熱利用方
法は、熱利用槽の利用が終了すると、熱利用槽中の熱媒
体は保持された状態で、熱利用槽→第1の経路→蓄熱槽
→第2の経路→熱利用槽という順で熱媒体を循環させ、
熱利用槽中の熱媒体の温度成層を保持しながら、上部の
高温の廃熱を蓄熱槽中の蓄熱体に注入し、蓄熱体中の蓄
熱材を融解させたのちに、蓄熱材を過冷却現象を利用し
て液体のままで保持し、次の熱利用槽の利用時には、前
記第1の経路を通過する熱媒体を廃熱の蓄熱された蓄熱
体と接触させて蓄熱体中の蓄熱材の過冷却を解消させ、
該熱媒体はその時に発生する該蓄熱材の凝固熱を吸収し
ながら熱利用槽に注入されることを特徴とする。
【0016】また、上述の熱利用装置における熱利用方
法は、熱利用槽の利用が終了し、その廃熱が蓄熱材を融
解させるのに十分な場合は、前記第2の経路を用いて前
記熱利用槽の廃熱を前記蓄熱槽に輸送して蓄熱体中の蓄
熱材を融解させ、熱利用槽の廃熱が蓄熱材を融解させる
のに不十分な場合は、蓄熱槽→第1の経路→熱供給手段
→第3の経路→蓄熱槽という循環によって蓄熱槽中の熱
媒体に熱を補いながら蓄熱体中の蓄熱材を融解させたの
ちに、蓄熱材を過冷却現象を利用して液体のままで保持
し、次の熱利用槽の利用時には、前記第1の経路を通過
する熱媒体を廃熱の蓄熱された蓄熱体と接触させて蓄熱
体中の蓄熱材の過冷却を解消させ、該熱媒体はその時に
発生する該蓄熱材の凝固熱を吸収しながら熱利用槽に注
入されることを特徴とする。
【0017】また、上述の熱利用装置における熱利用方
法は、熱媒体の貯蔵された熱利用槽に熱が供給されたの
ちに、熱利用槽の保温のために動作する熱供給手段の排
熱で蓄熱槽を予熱し、熱利用槽の利用が終了すると、前
記第2の経路を用いて熱利用槽の廃熱を前記蓄熱槽に輸
送して蓄熱体中の蓄熱材を融解させたのちに、蓄熱材を
過冷却現象を利用して液体のままで保持し、次の熱利用
槽の利用時には、前記第1の経路を通過する熱媒体を廃
熱の蓄熱された蓄熱体と接触させて蓄熱体中の蓄熱材の
過冷却を解消させ、該熱媒体はその時に発生する該蓄熱
材の凝固熱を吸収しながら熱利用槽に注入されることを
特徴とする熱利用装置の熱利用方法。
【0018】さらに、本発明による蓄熱槽においては、
該蓄熱槽の内部に設置され、過冷却可能な蓄熱材の充填
された複数の蓄熱体と、前記蓄熱体の下部に蓄熱槽を横
断するように設けられた複数の熱媒体通路を持つ拡散体
と、前記拡散体を挟んで蓄熱槽に設けられた熱媒体の通
過する流入口と流出口とを備えたことを特徴とする。ま
た、前記拡散体は、網であることを特徴とする。また、
前記拡散体は、多孔質体であることを特徴とする。ま
た、前記過冷却可能な蓄熱材には、相分離防止材が添加
されていることを特徴とする。また、前記蓄熱体は、細
長い形状であることを特徴とする。また、前記蓄熱槽
は、前記蓄熱体を加熱するヒーターが設けられているこ
とを特徴とする。また、前記蓄熱槽は、断熱材で覆われ
ていることを特徴とする。
【0019】また、本発明の蓄熱槽における熱利用方法
は、熱の注入過程においては、蓄熱槽の下部に設けられ
た前記流入口より熱媒体を注入し、該熱媒体を前記拡散
体を通過させて、前記蓄熱体に熱を注入した後に、蓄熱
槽の上部に設けられた前記流出口より熱媒体を流出さ
せ、熱の抽出過程では、前記流入口より前記蓄熱材の過
冷却の解消温度よりも低い温度の熱媒体を注入し、該熱
媒体を前記拡散体を通過させて、前記蓄熱体の下部に熱
媒体を接触させ、蓄熱材の過冷却を解消させ、該熱媒体
はその時に発生する該蓄熱材の凝固熱を吸収しながら前
記流出口より流出されることを特徴とする蓄熱槽の熱利
用方法。
【0020】また、本発明による熱利用装置の蓄熱槽
は、n個(nは2以上の自然数)の蓄熱槽J(1≦i
≦n−1、i:整数)からなり、蓄熱槽Ji+1の蓄熱
材の融点は、蓄熱槽Jの蓄熱材の融点よりも低く、蓄
熱槽Jから蓄熱槽Ji+1へ順に熱媒体が通過して熱
利用槽の廃熱が貯蔵されたのちに、蓄熱槽Ji+1から
蓄熱槽Jへ順に熱媒体が通過して廃熱が抽出されるこ
とを特徴とする。
【0021】
【作用】本発明による熱利用装置では、第1の経路を通
じて外部から蓄熱槽に導入される熱媒体の温度をT1、
第1の経路を通じて蓄熱槽から熱利用槽に導入される熱
媒体の温度をT2、熱利用槽の熱利用温度をT3、第2
の経路を通じて熱利用槽から蓄熱槽へ排出される熱媒体
の温度をT4、第2の経路を通じて蓄熱槽から外部へ排
出される熱媒体の温度をT5、蓄熱体に充填された過冷
却可能な蓄熱材の融点(凝固点)をTm、蓄熱材の過冷
却度(融点と発核温度との差)をΔT、発核温度をTc
とすれば、 T1≦Tc<Tm<T4≦T3 (1) T1<T2≦Tm (2) Tm≦T5<T4 (3) Tc=Tm−ΔT (4) の関係を持つようなTmやTcを示す蓄熱材を適用す
る。
【0022】熱利用槽での熱利用が終了すると、第2の
経路を通じて熱利用槽から蓄熱槽へ温度T4の熱媒体が
排出される。式(1)のように第2の経路を通じて熱利
用槽から蓄熱槽へ排出される熱媒体の温度T4は、蓄熱
材の融点Tmよりも高いので、蓄熱材は熱媒体からの熱
を受けて融解する。第2の経路を通じて蓄熱槽から外部
へ排出される熱媒体の温度T5は、蓄熱材を融解させた
反作用として式(3)のようにT4よりも低くなる。熱
利用槽の排水が無くなると蓄熱槽への熱供給が停止する
ので、蓄熱槽周囲の環境への熱損失によって蓄熱材の温
度は低下する。蓄熱材の温度はやがて融点Tmを下回る
ことになるが、蓄熱材は過冷却できるので、Tcに達し
ない限りは融解熱を貯蔵した過冷却状態で液体のまま存
在する。
【0023】熱利用槽での熱利用を再度行う際には、第
1の経路を通じて外部から蓄熱槽へ温度T1の熱媒体を
導入する。導入される熱媒体の温度T1は、式(1)に
示すように蓄熱材の発核温度Tcよりも低いので、蓄熱
材は発核し、凝固を開始する。凝固中の蓄熱材の温度は
融点Tmになるので、第1の経路を通じて外部から蓄熱
槽へ導入された熱媒体は蓄熱材の凝固熱で加熱され、T
2となる。第1の経路を通じて蓄熱槽から熱利用槽へ導
入される熱媒体の温度T2は、式(2)に示すように第
1の経路を通じて外部から蓄熱槽へ導入される熱媒体の
温度T1よりも高い。
【0024】熱利用槽の熱容量をMとし、熱媒体を第1
の経路の蓄熱槽を経由せずに熱利用槽へ導入すると仮定
した場合に熱利用槽の昇温に必要な熱量をQ1、本発明
の方式により熱媒体を第1の経路の蓄熱槽を経由して熱
利用槽へ導入する場合に熱利用槽の昇温に必要な熱量を
Q2とすれば、 Q1=M(T3−T1) (5) Q2=M(T3−T2) (6) になる。そこで、式(5)と式(6)を式(2)に代入
して整理すれば、 Q2<Q1 (7) となる。すなわち、従来熱利用槽から利用されないまま
で廃棄されていた熱の一部が蓄熱材の蓄熱機能によって
保存され、次回の熱利用槽の昇温の補助熱源となること
で、熱利用槽の運転に必要な熱量が削減される。
【0025】過冷却現象を利用した蓄熱式加熱体や蓄熱
器の蓄熱体には、水和物が適している。しかし、水和物
は風解性あるいは潮解性と相分離が激しいので、長期間
にわたって蓄熱材を密閉する手段と相分離を防止する手
段を欠いて、蓄熱式加熱体や蓄熱器を実現することはで
きない。蓄熱材の体積が大きくなればなるほど、長期間
にわたって蓄熱材を密閉する容器を製作することは強度
上困難になり、また相分離の原因となる重力方向の寸法
も大きくならざるをえないので、風解と相分離の防止が
困難になる。
【0026】さらに、発明者の実験によれば、本蓄熱方
式の鍵となる過冷却度は蓄熱材の体積に依存し、蓄熱材
の体積が大きくなるほど過冷却度は小さくなり、過冷却
度を利用した蓄熱の利点が減少してしまうことがわかっ
た。このため、本発明による熱利用装置の蓄熱体は、内
部に過冷却可能な蓄熱材を相分離防止剤とともに複数の
小容器に収容する。これにより、本発明の熱利用装置で
は蓄熱材の風解あるいは潮解と相分離が容易に長期間防
止されるとともに、蓄熱材は過冷却度が大きい状態で保
持されるので、従来の提案では実現できなかった大きな
過冷却現象を長期的に安定的に発現させることが可能に
なる。
【0027】また、給湯式の熱利用装置の場合、熱供給
手段を通過する熱媒体を蓄熱槽に循環させるための第3
の経路が熱供給手段と蓄熱槽の間に設けられているの
で、もしも熱利用槽の利用後の廃熱の温度が低く、蓄熱
材を融解させるのに不十分な場合は、熱利用槽内の熱媒
体を蓄熱槽に輸送後、第3の経路を用いることによっ
て、蓄熱槽内の残液を熱供給手段と蓄熱槽との間で循環
させ、不足分の熱を蓄熱材に供給する。あるいは、蓄熱
槽内に設置したヒーターを用いることによって、不足分
の熱を蓄熱材に供給する。
【0028】また、本発明による熱利用装置において
は、熱利用槽と蓄熱槽との間で熱媒体を授受するための
第1の経路と、蓄熱槽から熱利用槽に熱媒体を循環させ
るための第2の経路とを備えているので、熱利用槽の利
用が終了したときに、熱利用槽中の熱媒体は保持された
状態で、熱利用槽→第1の経路→蓄熱槽→第2の経路→
熱利用槽という順で熱媒体を循環させることができ、熱
利用槽中の熱媒体の温度成層を保持しながら、上部の高
温の廃熱から蓄熱槽中の蓄熱体に注入し、蓄熱体中の蓄
熱材を融解させる。この場合は、熱利用槽から蓄熱槽へ
廃熱のみを回収するので、温度の低下した熱媒体を熱利
用槽に貯蔵しておくことができ、必要に応じて再利用す
ることができる。
【0029】また、本発明による蓄熱槽においては、熱
媒体を拡散させるための拡散体を備えているので、注入
された熱媒体は拡散体を通過し、複数の蓄熱体に均等に
接触するので、蓄熱体へ均等に熱が供給される。これに
より、複数の蓄熱体内の蓄熱材は、それぞれ均一に融解
させられる。
【0030】また、本発明による熱利用装置において
は、融点の異なる過冷却可能な蓄熱材の充填された蓄熱
槽を複数設置し、蓄熱材を融解させて熱を貯蔵する場合
には融点の高い蓄熱槽から融点の低い蓄熱槽へ順に熱媒
体を通過させ、蓄熱材を凝固させて熱を抽出する場合に
は融点の高い蓄熱槽から融点の低い蓄熱槽へ順に熱媒体
を通過させる。
【0031】たとえば、二つの蓄熱槽を設け、第1の蓄
熱槽の蓄熱材の融点をS2、第2の蓄熱槽の蓄熱材の融
点をS4とし、第1の経路を通じて外部から第1の蓄熱
槽に導入される熱媒体の温度をX1、第1の経路を通じ
て第1の蓄熱槽から第2の蓄熱槽に導入される熱媒体の
温度をX2、第1の経路を通じて第2の蓄熱槽から熱利
用槽に導入される熱媒体の温度をX3、熱利用槽の熱利
用温度をX4、第2の経路を通じて熱利用槽から第2の
蓄熱槽へ排出される熱媒体の温度をX5、第2の経路を
通じて第2の蓄熱槽から第1の蓄熱槽へ排出される熱媒
体の温度をX6、第2の経路を通じて第1の蓄熱槽から
外部へ排出される熱媒体の温度をX7、第1の蓄熱槽の
蓄熱材の発核温度をS1、第2の蓄熱槽の蓄熱材の発核
温度をS3とすれば、 X1≦S1<S2 (8) X1<X2≦S3<S4 (9) X2<X3≦X4 (10) S2<S4<X5≦X4 (11) S2<X6<X5 (12) X7<X6 (13) の関係を持つようなS1、S2、S3、S4を示す蓄熱
材を適用する。
【0032】熱利用槽での熱利用が終了すると、第2の
経路を通じて熱利用槽から第2の蓄熱槽へ温度X5の熱
媒体が排出される。式(11)のように第2の経路を通
じて熱利用槽から第2の蓄熱槽へ排出される熱媒体の温
度X5は、第2の蓄熱槽の蓄熱材の融点S4よりも高い
ので、蓄熱材は熱媒体からの熱を受けて融解する。第2
の経路を通じて第2の蓄熱槽から第1の蓄熱槽へ排出さ
れる熱媒体の温度X6は、蓄熱材を融解させた反作用と
して式(12)のようにX5よりも低くなる。式(1
2)のように第2の経路を通じて第2の蓄熱槽から第1
の蓄熱槽へ排出される熱媒体の温度X6は、第1の蓄熱
槽の蓄熱材の融点S2よりも高いので、蓄熱材は熱媒体
からの熱を受けて融解する。
【0033】第2の経路を通じて第1の蓄熱槽から外部
へ排出される熱媒体の温度X7は、蓄熱材を融解させた
反作用として式(13)のようにX6よりも低くなる。
熱利用槽の排水が無くなると各蓄熱槽への熱供給が停止
するので、蓄熱槽周囲の環境への熱損失によって各蓄熱
材の温度は低下する。各蓄熱材の温度はやがて融点S
2、S4を下回ることになるが、各蓄熱材は過冷却でき
るので、S1とS3にそれぞれ達しない限りは融解熱を
貯蔵した過冷却状態で液体のまま存在する。
【0034】熱利用槽での熱利用を再度行う際には、第
1の経路を通じて外部から第1の蓄熱槽へ温度X1の熱
媒体が導入される。導入される熱媒体の温度X1は、式
(8)に示すように第1の蓄熱槽の蓄熱材の発核温度S
1よりも低いので、蓄熱材は発核し、凝固を開始する。
凝固中の蓄熱材の温度は融点S2になるので、第1の経
路を通じて外部から第1の蓄熱槽へ導入された熱媒体は
蓄熱材の凝固熱で加熱され、X2となる。第1の経路を
通じて第1の蓄熱槽から第2の蓄熱槽へ温度X2の熱媒
体が導入される。導入される熱媒体の温度X2は、式
(9)に示すように第2の蓄熱槽の蓄熱材の発核温度S
3よりも低いので、蓄熱材は発核し、凝固を開始する。
【0035】凝固中の蓄熱材の温度は融点S4になるの
で、第1の経路を通じて第1の蓄熱槽から第2の蓄熱槽
へ導入された熱媒体は蓄熱材の凝固熱で加熱され、X3
となる。第1の経路を通じて第2の蓄熱槽から熱利用槽
へ導入される熱媒体の温度X3は、式(10)に示すよ
うに第1の経路を通じて第1の蓄熱槽から第2の蓄熱槽
へ導入される熱媒体の温度X2よりも高い。第1の蓄熱
槽が無い場合に外部から第2の蓄熱槽に導入される熱媒
体の温度はX1であるのに対して、第1の蓄熱槽がある
場合に第1の蓄熱槽から第2の蓄熱槽に導入される熱媒
体の温度はX2であり、X1よりも高温である。
【0036】したがって、第1の蓄熱槽が無い場合より
も第1の蓄熱槽がある場合の方が、第2の蓄熱槽によっ
て加熱され、熱利用槽に導入される熱媒体の温度は高温
になり、その結果として熱利用槽の昇温に必要な熱量は
削減されることになる。すなわち、蓄熱槽を複数用意
し、蓄熱材の融点に関して直列に接続することによっ
て、従来は使われずに廃棄されていた熱利用槽からの廃
熱が、蓄熱槽が単独の場合よりもより有効に回収利用さ
れる。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明に係る実施の形態を実施例
に基づいて図面を参照して以下説明する。 (実施例1)図1は、本発明による熱利用装置の構造図
を示す。図において、1は浴槽、2は浴槽1に熱媒体と
なる水を供給するための給水経路、3は蓄熱槽10の中
に設けられ、浴槽1から廃熱を蓄熱するための蓄熱体
で、内部には過冷却可能な蓄熱材が充填されている。4
は蓄熱槽10を覆うように設けられた断熱材である。5
は浴槽1からの廃湯を蓄熱体3に輸送するための排水経
路、6は給水経路2に設けられたバルブ、7、8は排水
経路5に設けられたバルブである。9は浴槽1の中の水
に熱を供給するための熱源となる湯沸かし器である。蓄
熱槽10は浴槽1よりも低い位置に配置する。
【0038】これによって、浴槽1の排水は自由落下に
より、外部動力を必要とせずに行われる。給水側はバル
ブ6に至る前に一定の給水圧が掛けられているので、給
水においても本実施例のための特別な外部動力を与える
必要はない。給水経路2においては、蓄熱槽10の下部
に入水口aを設け、蓄熱槽10の上部に出水口bを設け
ており、排水経路5においては蓄熱槽10の下部に入水
口cを設け、蓄熱槽10の上部に出水口dを設けてい
る。このような位置関係にすることにより、熱媒体が流
れながら蓄熱体3に接触する面積を最大限にすることが
できる。
【0039】また、上述の過冷却可能な蓄熱材は、過冷
却現象が顕著な物質の中から必要とする温度や過冷却度
に応じて種々の物質を選択して用いることができる。過
冷却の程度は、例えば、リン酸水素二ナトリウム・十二
水和物(NaHPO・12HO)ではその凝固点
が約36℃で、結晶核が生成される温度は0℃〜36℃
程度になり、酢酸ナトリウム・三水和物(CHCOO
Na・3HO)ではその凝固点が約58℃で、結晶核
が生成される温度は−20℃〜58℃程度になることが
知られている(蓄熱材の核生成温度は主に蓄熱材の体積
に依存して変わる)。
【0040】また、チオ硫酸ナトリウム・五水和物(N
・5HO、凝固点約48℃)、炭酸ナト
リウム・十水和物(NaCO・10HO、凝固点
約33℃)、硫酸ナトリウム・十水和物(NaSO
・10HO、凝固点約32℃)、塩化カルシウム・六
水和物(CaCl・6HO、凝固点約29℃)など
も、体積によるが10℃以上の大きな過冷却度を示す。
【0041】他に過冷却現象が顕著な物質としては、塩
化マグネシウム・六水和物(MgCl・6HO、凝
固点117℃)、塩化ストロンチウム・六水和物(Sr
Cl ・6HO、同115℃)、硫酸アルミニウム・
十水和物(Al(SO ・10HO、同112
℃)、硫酸アルミニウム・アンモニウム・十二水和物
(NHAl(SO・12HO、同94℃)、
硫酸カリウム・アルミニウム・十二水和物(KAl(S
・12HO、同93℃)、硝酸マグネシウム
・六水和物(Mg(NO・6HO、同93
℃)、硝酸ニッケル(II)・六水和物(Ni(NO
・6HO、同57℃)、炭酸カルシウム・六水和物
(CaCO・6HO、同29℃)、およびふっ化カ
リウム四水和物(KF・4HO、同19℃)などの水
和物、マンニトール(HOCH(CHOH)CH
OH、同167℃)やエリスリトール(HOCH(C
HOH) CHOH、同122℃)などの多価アルコ
ールを比較的人体に安全な物質として挙げることができ
るが、これらに限定されるものではない。
【0042】上述のように構成された熱利用装置の動作
について説明する。図2は熱利用装置における蓄熱材と
水の温度の時間的な変化を示す。第1回目のサイクルで
は、まず浴槽1に蓄熱槽10を経る給水経路2から熱媒
体である水を供給する。この場合、バルブ6は開けてお
き、バルブ7、8は閉じておく。この時点(時刻A1)
では蓄熱体3は固体で水温と同一温度である。次に、湯
沸かし器9から浴槽に熱を与え、湯沸かしを行うと、水
温は入浴可能な温度まで上昇し(時刻A2)、入浴が行
われる。入浴後はバルブ7、8を開け、バルブ6を閉
じ、排水経路5から蓄熱槽10へ浴槽1の温水を移動さ
せると、温水は蓄熱体3と接触した後に排水されること
になり、蓄熱体3中の過冷却可能な蓄熱材は、固相のま
ま徐々にその温度が上昇する(時刻A3〜A4)。時刻
A4で蓄熱材の融点に達すると、蓄熱材は融解し始め
る。融解中の蓄熱材は一定の温度になる。時刻A5で融
解が完了する。
【0043】時刻A5以降は、蓄熱材は液相のままで徐
々に温度が上昇し、排水の温度へ近づいて行く。時刻A
6で排水が終了すると、蓄熱槽10への熱供給が無くな
るので、蓄熱材の温度は蓄熱槽10の周囲の環境への熱
損失によって低下して行く。蓄熱材の温度はやがて蓄熱
材の融点に達するが、蓄熱材は過冷却することが可能な
のですぐには凝固を開始せず、顕熱を放出しながら液相
のままで融点よりも低い温度に低下して行く。次のサイ
クルすなわち次の給水まで、この過冷却状態が保持でき
るような過冷却可能な蓄熱材を選択するか、断熱を行
う。すなわち、過冷却中の蓄熱材の温度が発核温度を下
回らないような断熱を行う。上述の操作において、もし
も浴槽利用後の温水の温度が蓄熱材の融点を下回るとき
には、すぐに湯沸かし器9を用いて温水の温度が融点を
上回るようにし、すべての蓄熱材が融解されるようにす
る。
【0044】次のサイクルの給水で、給水経路2から蓄
熱槽10に供給される水が、蓄熱体3を通過して浴槽1
に供給されると、供給された低温の水によって蓄熱体3
が冷却され、過冷却中の蓄熱材の発核が促される。つま
り、蓄熱材の一部の分子同士が配向し、結晶核が生成さ
れて蓄熱材内に結晶が成長し、凝固が開始される。この
場合、凝固の開始条件として、給水温を上回る発核温度
を持つ蓄熱材を選択することである。水道水の温度は季
節に応じて5℃〜25℃程度の範囲内で変化するが、た
とえばリン酸水素二ナトリウム・十二水和物の発核温度
は通常20〜30℃程度となるので、本発明の蓄熱材と
して適用することができる。
【0045】凝固が開始されると、過冷却状態の液体と
して持っていた位置エネルギーが放出されるので、蓄熱
材原子あるいは分子の運動エネルギーが増加し、蓄熱材
の温度は凝固点に回復する(時刻B0)。凝固過程で
は、蓄熱材は一定の温度、すなわち融点(凝固点)で潜
熱を放出しながら液相から固相へと相変化して行く。こ
のとき、注入され続ける水は、蓄熱材で放出される潜熱
を吸収しながら浴槽1に移動するため、水温が上昇す
る。時刻B1で蓄熱材の凝固が完了すると、固体顕熱を
放出しながら蓄熱材の温度は低下して給水温度に近づ
く。時刻B2で浴槽1への給水が完了すると、第1のサ
イクルと同じように湯沸かし以降が行われる。この繰り
返しによって、温水の廃熱が有効利用される。
【0046】蓄熱材には、相分離防止材として粘土や多
糖類・糊料、動植物繊維、吸液性樹脂などを添加する。
多糖類・糊料には、アーモンドガム、アエロモナスガ
ム、アカシアガム、アゾトバクター・ビネランジーガ
ム、アマシードガム、アラビアガム、アラビノガラクタ
ン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アロエベラ抽
出物、ウェランガム、エルウィニア・ミツエンシスガ
ム、エレミ樹脂、エンテロバクター・シマナスガム、エ
ンテロバクターガム、オクラ抽出物、カードラン、海藻
セルロース、カシアガム、カゼイン、カゼインナトリウ
ム、褐藻抽出物、ガティガム、カラギーナン、カラヤガ
ム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキ
シメチルセルロースナトリウム、カロブビーンガム、キ
サンタンガム、キダチアロエ抽出物、キチン、キトサ
ン、グァーガム、グアヤク樹脂、クエン酸ステアリル、
グルコサミン、グルテン、グルテン分解物、ケルプ抽出
物、酵母細胞膜、昆布類粘質物、サイリウムシードガ
ム、サイリウムハスク、酸カゼイン、ザンサンガム、ジ
ェランガム、スクレロガム、ステアリル乳酸ナトリウ
ム、セスバニアガム、セドウガム、繊維素グリコール酸
カルシウム、繊維素グリコール酸ナトリウム、タマリン
ドガム、タラガム、ダンマル樹脂、デキストラン、デン
プングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステル
ナトリウム、トラガントガム、トリアカンソスガム、ト
ロロアオイ、納豆菌粘質物、納豆菌ガム、乳酸ナトリウ
ム、微小繊維状セルロース、ヒドロキシプロピルメチル
繊維素、ヒドロキシプロピル繊維素、ピロリン酸ナトリ
ウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素ナト
リウム、ファーセレラン、ブドウ糖多糖、フラクタン、
プルラン、ペクチン、紅藻抽出物、ホスファチジン酸ア
ンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエ
チレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキ
シエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキ
シエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリ
オキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレー
ト、ポリオキシエチレン(40)ステアレート、ポリオ
キシエチレン(8)ステアレート、ポリソルベート(2
0)、ポリソルベート40、ポリソルベート65、ポリ
ソルベート80、ポリビニルピロリドン、マクロホモプ
シスガム、マンナン、メチルセルロース、ラムザンガ
ム、レバン、レンネットカゼイン、ローカストビーンガ
ム、CMCなど、種々の物を利用することができる。
【0047】動植物繊維には羽毛や羊毛、綿花、および
合成繊維などが利用できる。吸液性樹脂にはデンプン−
アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン
−アクリル酸塩架橋物、カルボキシメチルセルロース架
橋体、アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体ケン化
物、アクリル酸重合体塩架橋物などを利用することがで
きる。これにより、蓄熱材をより安定的に繰り返し使用
することが可能になる。
【0048】蓄熱体3の容器は可能な限り小さい方が、
蓄熱材の風解あるいは潮解と相分離の影響を長期的に防
止し、大きな過冷却度を安定的に維持することができる
ので適している。たとえば、リン酸水素二ナトリウム・
十二水和物で容器の容積が10mL程度の場合の過冷却
度は15℃程度になるが、1L程度の場合の過冷却度は
10℃程度になるので、容器の実用的な容積は数リット
ル程度以下となる。
【0049】蓄熱体3の容器の形状は任意であるが、図
1のように細長い形状とすれば、給水経路2から蓄熱槽
10に流入する冷水と全ての蓄熱体3とを冷水の流入温
度で接触させることができる。すなわち、蓄熱体3を細
長い形状にすることは、各蓄熱体3の均一な発核を促す
際に好都合である。また、図1では蓄熱体3を直立させ
て設置しているが、蓄熱槽10が回転して蓄熱体3が横
あるいは斜めに寝る姿勢で設置しても、図1と同様に熱
媒体が蓄熱槽10内を満たしながら蓄熱体3の長手方向
に移動するような入出水口の配置を採れば、本実施例と
同様の機能を実現することができる。
【0050】本発明による熱利用装置においては、過冷
却可能な蓄熱材の充填された蓄熱体3が設置され、発核
の手段を熱媒体としているので、簡単な構造でしかも動
力を用いずに廃熱の有効利用が可能となる。また、過冷
却状態を保持することによって確実に蓄熱することがで
きるので、長時間の蓄熱も可能になり、低温の廃熱の有
効利用ができる。また、蓄熱体3の形状を細長く、複数
個設けることにより、均一な発核を促すことができる。
【0051】(実施例2)図3は本発明による他の熱利
用装置の構造図である。図において、1〜10は図1と
同一あるいは相当するものを示す。11は給水経路2に
設けられたバルブ、12は排水経路5に設けられたポン
プである。本実施例においては、熱移動の原理は実施例
1と同様である。実施例1では浴槽1からの排水に自由
落下を利用し、排水のための外部動力を不要としている
が、本実施例はポンプ12を設けることで、ポンプ動力
は必要となるが浴槽1と蓄熱槽10の位置関係を任意に
設定することが可能となる。たとえば、蓄熱槽10を浴
室の高所の空いている空間に設置したり、浴室とは別室
の空いている空間に設置したり自由に設定することが可
能である。
【0052】(実施例3)図4は本発明による他の熱利
用装置の構造図である。図において、1〜10は図1と
同一あるいは相当するものを示す。13は蓄熱槽10の
内部に設置したヒーターである。ヒーターのエネルギー
源は熱や電気、光など、自由に選択することができる。
【0053】本実施例は、給湯式の熱利用装置を示す。
すなわち、浴槽1に熱媒体である水を加熱してから供給
するシステムであり、給水経路2が湯沸かし器9を通過
するように設置されているので、給水経路2から浴槽1
に温水が供給される。発明の原理は実施例1と変わらな
いので、その説明を省略する。浴槽1の廃熱の温度が融
点より十分に高くないか温度が高くとも排水量が少ない
場合には、廃熱が不足して蓄熱材を完全に融解させるこ
とができないので、排水直後にヒーター13で蓄熱材を
加熱することによって、蓄熱材を完全に融解させること
が可能になる。さらに、予期しない気温の低下によって
発核予定の時刻までに蓄熱材が発核温度を下回る恐れが
ある場合には、ヒーター13で蓄熱体3を加熱すること
によって、無用な発核を避けることができる。
【0054】(実施例4)図5は本発明による他の熱利
用装置の構造図である。図において、1〜10は図1と
同一あるいは相当するものを示す。14は蓄熱槽10と
湯沸かし器9との間で熱媒体が循環できるように設けら
れた循環経路、15は経路を切り替えるための三方弁、
16は熱媒体を循環させるためのポンプである。17は
循環経路14に設けられた自動空気抜き弁である。本発
明は、給湯式の熱利用装置において、浴槽1の廃熱の温
度が蓄熱材の融点を上回らない場合に、湯沸かし器9を
用いて不足する熱を補う方法を実現するものである。廃
熱が十分な場合は、実施例1と変わらないので、その説
明を省略する。ただし、給水時、給水経路2を通過する
熱媒体が循環経路14を通過しないように、三方弁の向
きは循環経路14を閉鎖するようにする。
【0055】さて、浴槽1の廃熱の温度が融点より十分
に高くないか温度が高くとも排水量が少ない場合には、
廃熱が不足して蓄熱材を完全に融解させることができな
いので、湯沸かし器9と循環経路14とを用いて蓄熱材
が完全に融解するような操作をする。すなわち、温水の
排水後にまず排水経路5のバルブ7とバルブ8を閉じ、
三方弁15を三方の流れが通じるように設定する。次
に、給水経路2のバルブ6を開き、給水経路2と循環経
路14に水を満たしたのちに、バルブ6を閉じる。次
に、三方弁15を給水経路2において蓄熱槽10から三
方弁15に至る経路と循環経路14とが接続され、給水
経路2のうち三方弁から給水経路2の浴槽側出口までの
経路は閉鎖されるように設定する。
【0056】ここで、湯沸かし器9とポンプ16を作動
させれば、蓄熱材に熱が追加される。蓄熱材が完全に融
解すれば、湯沸かし器9とポンプ16を停止し、バルブ
8を開いて排水を行う。以上の操作により、万一の廃熱
の不足が補償される。本実施例では、新たに給水するこ
とで給水経路2及び循環経路14に水を満たしたが、類
似の操作によって浴槽1からの高温の排水で給水経路2
及び循環経路14に水を満たし、より省エネルギー性を
高めることも可能である。
【0057】(実施例5)図6は本発明による他の熱利
用装置の構造図である。図において、1〜6、8〜10
は図1と同一あるいは相当するものを示す。18は浴槽
1と蓄熱槽10との間で熱媒体が循環できるように設け
られた循環経路、19は循環経路18中に設けられたバ
ルブ、20は循環経路18中に設けられたポンプであ
る。
【0058】上述のように構成された熱利用装置におい
ては、排水を行う前に蓄熱槽10に廃熱を輸送するシス
テムになっているので、排水の洗濯や散水等への有効利
用が可能となる。つまり、浴槽1の利用後にバルブ19
を開け、ポンプ20を用いて温水を入水口cから蓄熱槽
10に移動させ、出水口dを通過して浴槽1に戻らせ
る。このように排水が循環経路18を循環しているうち
に蓄熱体3へ熱が移動し、蓄熱が完了する。蓄熱が完了
して温度の低下した排水は、洗濯や散水などに用いら
れ、残りは排水経路5から排出される。浴槽1の上部の
温水から取水し、浴槽1の下部へ戻すように水を循環さ
せるので、浴槽1内に自然に形成される温度成層を崩す
ことなく、浴槽1の上部の高温層の熱を蓄熱材の融解に
有効に利用することができる。
【0059】(実施例6)上述の実施例1〜5におい
て、図7に示すように蓄熱槽10の内部で蓄熱体3を取
り巻くような管を排水系路5とすれば、給水と排水とが
蓄熱槽10の中で同一の空間を通過することがなく、給
水路2及び蓄熱槽10内が排水で汚染されることを防止
することができる。また、これに代わる機能は、図1〜
図6に示す蓄熱槽10において、給水時に蓄熱槽10に
導入された初めの数リットルの水で蓄熱槽内を洗浄させ
たのちに、廃棄することで実現することも可能である。
また、これに代わる機能は、給水経路2の流出口bある
いは排水経路5の流入口cにフィルターを付けることに
よっても実現することが可能である。
【0060】(実施例7)図8および図9は、それぞれ
本発明による蓄熱槽10の断面構造図を示す。図におい
て、2〜5、10は図1に示すものと同一あるいは相当
するものを示す。21は、蓄熱槽10の内部を横断する
ように設けられた拡散体で、多数の孔を持つ面からな
り、経路5から流入した熱媒体を蓄熱槽1の断面全体に
均一化する。この拡散体21は、金網、プラスチック
網、パンチングメタル等の網状板や、スポンジ等の多孔
質体など種々の材質、構造を採ることができる。図8に
示す蓄熱槽は縦方向に細長い蓄熱体3を備えた場合で、
図9に示す蓄熱槽は横方向に細長い蓄熱体3を備えた場
合を示す。
【0061】次に上述のように構成された蓄熱槽の動作
について、図8の配置を例として説明する。説明の都合
上、拡散体21で分離される蓄熱槽10の上部領域を領
域A、下部領域を領域Bと呼ぶ。図9においても、基本
的な動作は同様である。まず、熱の注入過程、つまり風
呂の排水を蓄熱槽10に誘導する過程において、潜熱蓄
熱材の融点以上の温度にある熱媒体は流入口c→領域B
→領域A→流出口dの順に通過し、蓄熱材を融解させ
る。このとき、領域Bに流入した熱媒体は、拡散体21
を通過することによってその流れが蓄熱槽横断面全体に
均一化され、熱媒体が蓄熱体3と全体的に接触すること
になり、効率よく蓄熱することが可能となる。
【0062】熱の保存過程では、外部環境の影響を受け
て蓄熱材の温度は徐々に低下し、やがて凝固点に到達す
るが、過冷却現象のために凝固は開始されない。蓄熱材
の温度はさらに低下し、凝固点よりも低い温度になる
が、液体のまま存在することができる。蓄熱槽10の形
状や蓄熱槽10を構成する断熱材は、貯蔵期間内に蓄熱
材が再結晶化温度を下回らないように設計されているた
め、蓄熱材の温度は凝固点を切り、再結晶化温度に近づ
いて行くが、貯蔵期間内に再結晶化することはない。
【0063】熱の抽出過程、つまり風呂に給水する過程
においては、流入口a→領域B→領域A→流出口bの順
序で冷水を通過させ、蓄熱材の一部の温度を再結晶化温
度まで低下させて凝固を誘発させる。この時、領域Bに
注入された冷水は拡散体21を通過して領域Aに到達す
るため、流入する冷水は蓄熱槽10の下部から蓄熱槽1
0の断面全体に均一に拡散する。つまり、蓄熱体3の下
部に均一に冷水が接触し、過冷却中の蓄熱材の発核を時
間的に均一に促す。
【0064】図8に示す蓄熱槽においては、熱媒体の温
度の成層化を利用でき、蓄熱体3の下側から発核させや
すいという利点がある。図9に示す蓄熱槽においては、
重力方向の寸法が小さいので、蓄熱材の相分離防止の点
では図8よりも有利となる。本実施例では、本発明の蓄
熱槽を風呂廃熱で利用する場合について説明したが、図
10に示すように、蓄熱槽を直接熱源につないで様々な
用途で利用できることは、言うまでもない。
【0065】また、実施例1でも説明したように、発核
を促すために蓄熱体の形状は細長い形状が望ましい。本
発明の蓄熱装置においては、蓄熱のために流入される温
水や過冷却中の蓄熱材の発核を促すための冷熱が均一に
拡散するため、温水、冷水それぞれが蓄熱体3に対して
持つ作用を効果的に利用することができ、効率よく熱エ
ネルギーを回収利用することができる。
【0066】(実施例8)図11、図12は蓄熱槽10
を湯沸かし器9の内部に納めた例を示している。これに
より、湯沸かし器9と一体化したコンパクトな蓄熱式給
湯機を提供することができる。特に図12の場合には、
蓄熱槽を湯沸かし器9の燃焼排気経路に暴露させること
ができるので、追い焚き時の廃熱で蓄熱槽を予熱し、図
11の場合よりも大量の蓄熱材を安定的に過冷却貯蔵さ
せ、より多くの熱を回収利用させることができる。図1
2の場合には、断熱材4は湯沸かし器9と蓄熱槽3を収
納する筐体に設けるのが効果的である。
【0067】(実施例9)上述の実施例は、一種類の蓄
熱材を用いた熱利用装置であったが、図13に示すよう
に複数の過冷却可能な蓄熱材の充填された蓄熱槽を用意
し、融点の高い蓄熱材の充填された蓄熱槽から融点の低
い蓄熱材の充填された蓄熱槽へ順に組み合わせて熱カス
ケードを形成させることができる。図13では、浴槽1
からの約40℃の廃水を融点の高い蓄熱材の順に、すな
わちリン酸水素二ナトリウム・十二水和物(凝固点36
℃)、硫酸ナトリウム・十水和物(凝固点32℃)、塩
化カルシウム・六水和物(凝固点29℃)の順に通過さ
せることによって、それぞれの蓄熱材に廃熱を蓄熱させ
ることができる。
【0068】また、発核を促す際には、融点の低い蓄熱
材の充填された蓄熱槽から融点の高い蓄熱材の充填され
た蓄熱槽へ順に、すなわち塩化カルシウム・六水和物、
硫酸ナトリウム・十水和物、リン酸水素二ナトリウム・
十二水和物の順に冷水を通過させることによって、それ
ぞれの蓄熱材の発核を促し、蓄熱材からの潜熱を有効に
利用することができる。
【0069】上述のように、複数の過冷却可能な蓄熱材
を組み合わせることによって、さらに廃熱の有効利用度
を高めることが可能になる。本実施例では、廃熱とし
て、風呂の湯を用い、過冷却可能な蓄熱材として、リン
酸水素二ナトリウム・十二水和物、硫酸ナトリウム・十
水和物、塩化カルシウム・六水和物を用いたが、上述の
原理を利用するのにこれらのものに限定されるものでは
ない。
【0070】たとえば、熱利用槽の熱利用温度が200
℃であり、熱媒体の供給温度が10℃となる熱利用装置
に対しては、マンニトール(凝固点167℃)→塩化マ
グネシウム・六水和物(同117℃)→硫酸アルミニウ
ム・アンモニウム・十二水和物(同94℃)→酢酸ナト
リウム・三水和物(同58℃)→チオ硫酸ナトリウム・
五水和物(凝固点48℃)→リン酸水素二ナトリウム・
十二水和物(同36℃)→塩化カルシウム・六水和物
(同29℃)の順に廃熱から熱を回収して過冷却現象を
利用して蓄熱し、熱利用時には上記とは逆の順で熱媒体
を通過させて加温させることで、蓄熱材が単一の場合よ
りも多くの熱を回収・利用することができる。
【0071】
【発明の効果】以上の構成から成る本発明によると、次
のような効果が生じる。 (1)本発明による熱利用装置においては、熱利用槽に
熱媒体を供給するための第1の経路の中に過冷却可能な
蓄熱材が充填された蓄熱体と、熱利用槽中の温水を蓄熱
体に輸送するための第2の経路とを備えているので、熱
利用槽の廃熱を蓄熱体中の蓄熱材に過冷却状態で貯蔵す
ることができ、また熱媒体を用いて望ましい時間に容易
に発核を促すことができるので、長時間の蓄熱も可能に
なり、廃熱の効果的な貯蔵と利用を実現することができ
る。 (2)また、蓄熱体の形状を変化させることによって、
過冷却度を制御することができるので、外部環境・水温
等の種々の条件に対応することも可能になる。また、断
熱材の材質や厚さを制御することによっても外部環境の
条件に対応することができる。 (3)さらに、過冷却可能な蓄熱材に相分離防止材を添
加すると、蓄熱材の相分離を長期的に防止することがで
き、蓄熱材を安定的に繰り返し利用することが可能にな
る。
【0072】(4)また、本発明による給湯式の熱利用
装置においては、廃熱が蓄熱材を完全に融解させるのに
不十分な場合に、第3の経路を用いて熱媒体を熱供給手
段と蓄熱槽との間で循環させ、不足分の熱を蓄熱材に供
給することによって蓄熱材を完全に融解させ、過冷却現
象を有効に利用することが可能になる。 (5)また、本発明による給湯式の熱利用装置において
は、廃熱が蓄熱材を完全に融解させるのに不十分な場合
に、ヒーターを用いて不足分の熱を蓄熱材に供給するこ
とによって蓄熱材を完全に融解させ、過冷却現象を有効
に利用することが可能になる。 (6)また、本発明による給湯式の熱利用装置において
は、給湯や追い焚きの際の燃焼廃熱で蓄熱槽を予熱させ
ることによって大量の蓄熱材を融解させ、過冷却現象を
有効に利用することが可能になる。
【0073】(7)また、本発明による熱利用装置にお
いては、熱利用槽と蓄熱槽との間で熱媒体を授受するた
めの第1の経路と、蓄熱槽から熱利用槽に熱媒体を循環
させるための第2の経路とを備えているので、熱利用槽
と蓄熱槽との間で熱媒体を循環させることができ、利用
済みの熱媒体を熱利用槽に保持した状態で、熱利用槽中
の廃熱を蓄熱槽中の蓄熱材に移動させることが可能とな
る。これにより、廃熱回収後の熱媒体を熱利用槽から抽
出し、別な用途に利用することができる。 (8)また、前記第1の経路は前記熱利用槽と蓄熱槽の
上部で連通し、前記第2の経路は前記熱利用槽と蓄熱槽
の下部で連通しているので、熱媒体を循環させるとき
に、蓄熱槽内の熱媒体の温度成層を保持した状態で、高
温の熱を効率的に蓄熱槽に移動させることができる。
【0074】(9)また、本発明による蓄熱槽において
は、拡散体を備えているので、熱媒体を均一に蓄熱体に
接触させることができ、冷水による発核操作を効果的に
促進させることができる。 (10)また、本発明による熱利用装置においては、融
点の異なる過冷却可能な蓄熱材の充填された蓄熱槽を複
数用意し、融解時には蓄熱材の融点の高い順に熱媒体を
通過させ、熱回収時には蓄熱材の融点の低い順に熱媒体
を通過させることによって、熱カスケードを構成し、廃
熱の有効利用度を一段と高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における熱利用装置の構造図である。
【図2】本発明における熱利用装置の熱媒体あるいは蓄
熱材の温度の時間的な変化を示す図である。
【図3】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図4】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図5】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図6】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図7】本発明による蓄熱槽の構造図である。
【図8】本発明による蓄熱槽の構造図である。
【図9】本発明による蓄熱槽の構造図である。
【図10】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図11】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図12】本発明による熱利用装置の構造図である。
【図13】本発明による熱利用装置の熱利用方法を示す
図である。
【図14】従来の潜熱蓄熱利用装置の基本構成を示す図
である。
【符号の説明】
1 浴槽 2 給水経路 3 蓄熱体 4 断熱材 5 排水経路 6、7、8、11、19 バルブ 9 湯沸かし器 10 蓄熱槽 12、16、20 ポンプ 13 ヒーター 14、18 循環経路 15 三方弁 17 自動空気抜き弁 21 拡散体

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱媒体の熱を利用するための熱利用槽
    と、前記熱利用槽に熱媒体を供給するための第1の経路
    と、前記熱利用槽から熱媒体を排出するための第2の経
    路と、前記第1の経路及び前記第2の経路の途中に設け
    られた蓄熱槽と、前記蓄熱槽の中に設けられ、過冷却可
    能な蓄熱材の充填された蓄熱体と、前記熱媒体に熱を供
    給するための熱供給手段とを備えたことを特徴とする熱
    利用装置。
  2. 【請求項2】 熱媒体の熱を利用するための熱利用槽
    と、外部から熱媒体が注入され、過冷却可能な蓄熱体を
    備えた蓄熱槽と、前記熱利用槽と前記蓄熱槽との間で熱
    媒体を授受するための第1の経路と、前記蓄熱槽から前
    記熱利用槽に熱媒体を循環させるための第2の経路と、
    前記熱媒体に熱を供給するための熱供給手段とを備え、
    前記第1の経路は前記熱利用槽と蓄熱槽の上部で連通
    し、前記第2の経路は前記熱利用槽と蓄熱槽の下部で連
    通することを特徴とする熱利用装置。
  3. 【請求項3】 前記第1の経路と前記第2の経路を通過
    する熱媒体は、前記蓄熱槽内で隔離されていることを特
    徴とする請求項1または請求項2に記載の熱利用装置。
  4. 【請求項4】 前記第1の経路と前記第2の経路を通過
    する熱媒体を前記蓄熱槽内で隔離する手段は、前記蓄熱
    体を取り巻く管であることを特徴とする請求項3に記載
    の熱利用装置。
  5. 【請求項5】 前記熱供給手段は、前記蓄熱槽から前記
    熱利用槽へと延びる前記第1の経路の途中に設けられ、
    前記第1の経路を通過する熱媒体に熱を供給することを
    特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載
    の熱利用装置。
  6. 【請求項6】 前記熱供給手段を通過する熱媒体を前記
    蓄熱槽に循環させるための第3の経路が前記熱供給手段
    と蓄熱槽との間に設けられていることを特徴とする請求
    項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  7. 【請求項7】 前記蓄熱槽は、前記熱媒体に熱を供給す
    るための熱供給手段の燃焼排気経路中に置かれているこ
    とを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の
    熱利用装置。
  8. 【請求項8】 前記過冷却可能な蓄熱材には、相分離防
    止材が添加されていることを特徴とする請求項1乃至請
    求項7のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  9. 【請求項9】 前記蓄熱体は、過冷却可能な蓄熱材の充
    填された複数の小容器からなることを特徴とする請求項
    1乃至請求項8のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  10. 【請求項10】 前記蓄熱体は、細長い形状であること
    を特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記
    載の熱利用装置。
  11. 【請求項11】 前記蓄熱槽は、前記蓄熱体を加熱する
    ヒーターが設けられていることを特徴とする請求項1乃
    至請求項10のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  12. 【請求項12】 前記蓄熱槽は、断熱材で覆われている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1
    項に記載の熱利用装置。
  13. 【請求項13】 前記過冷却可能な蓄熱材は、リン酸水
    素二ナトリウム・十二水和物であることを特徴とする請
    求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の熱利用装
    置。
  14. 【請求項14】 前記過冷却可能な蓄熱材は、酢酸ナト
    リウム・三水和物であることを特徴とする請求項1乃至
    請求項12のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  15. 【請求項15】 前記過冷却可能な蓄熱材は、硫酸ナト
    リウム・十水和物であることを特徴とする請求項1乃至
    請求項12のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  16. 【請求項16】 前記過冷却可能な蓄熱材は、チオ硫酸
    ナトリウム・五水和物であることを特徴とする請求項1
    乃至請求項12のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  17. 【請求項17】 前記過冷却可能な蓄熱材は、塩化カル
    シウム・六水和物であることを特徴とする請求項1乃至
    請求項12のいずれか1項に記載の熱利用装置。
  18. 【請求項18】 熱媒体の貯蔵された熱利用槽に熱が供
    給されたのちに、熱利用槽の利用が終了すると、前記第
    2の経路を用いて熱利用槽の廃熱を前記蓄熱槽に輸送し
    て蓄熱体中の蓄熱材を融解させたのちに、蓄熱材を過冷
    却現象を利用して液体のままで保持し、次の熱利用槽の
    利用時には、前記第1の経路を通過する熱媒体を廃熱の
    蓄熱された蓄熱体と接触させて蓄熱体中の蓄熱材の過冷
    却を解消させ、該熱媒体はその時に発生する該蓄熱材の
    凝固熱を吸収しながら熱利用槽に注入されることを特徴
    とする請求項1に記載の熱利用装置を使用した熱利用方
    法。
  19. 【請求項19】 熱利用槽の利用が終了すると、熱利用
    槽中の熱媒体は保持された状態で、熱利用槽、第1の経
    路、蓄熱槽、第2の経路、熱利用槽という順で熱媒体を
    循環させ、熱利用槽中の熱媒体の温度成層を保持しなが
    ら、上部の高温の廃熱から蓄熱槽中の蓄熱体に注入し、
    蓄熱体中の蓄熱材を融解させたのちに、蓄熱材を過冷却
    現象を利用して液体のままで保持し、次の熱利用槽の利
    用時には、前記第1の経路を通過する熱媒体を廃熱の蓄
    熱された蓄熱体と接触させて蓄熱体中の蓄熱材の過冷却
    を解消させ、該熱媒体はその時に発生する該蓄熱材の凝
    固熱を吸収しながら熱利用槽に注入されることを特徴と
    する請求項2に記載の熱利用装置を使用した熱利用方
    法。
  20. 【請求項20】 熱利用槽の利用が終了し、その廃熱が
    蓄熱材を融解させるのに十分な場合は、前記第2の経路
    を用いて前記熱利用槽の廃熱を前記蓄熱槽に輸送して蓄
    熱体中の蓄熱材を融解させ、熱利用槽の廃熱が蓄熱材を
    融解させるのに不十分な場合は、蓄熱槽、第1の経路、
    熱供給手段、第3の経路、蓄熱槽という循環によって蓄
    熱槽中の熱媒体に熱を補いながら蓄熱体中の蓄熱材を融
    解させたのちに、蓄熱材を過冷却現象を利用して液体の
    ままで保持し、次の熱利用槽の利用時には、前記第1の
    経路を通過する熱媒体を廃熱の蓄熱された蓄熱体と接触
    させて蓄熱体中の蓄熱材の過冷却を解消させ、該熱媒体
    はその時に発生する該蓄熱材の凝固熱を吸収しながら熱
    利用槽に注入されることを特徴とする請求項6に記載の
    熱利用装置を使用した熱利用方法。
  21. 【請求項21】 熱媒体の貯蔵された熱利用槽に熱が供
    給されたのちに、熱利用槽の保温のために動作する熱供
    給手段の排熱で蓄熱槽を予熱し、熱利用槽の利用が終了
    すると、前記第2の経路を用いて熱利用槽の廃熱を前記
    蓄熱槽に輸送して蓄熱体中の蓄熱材を融解させたのち
    に、蓄熱材を過冷却現象を利用して液体のままで保持
    し、次の熱利用槽の利用時には、前記第1の経路を通過
    する熱媒体を廃熱の蓄熱された蓄熱体と接触させて蓄熱
    体中の蓄熱材の過冷却を解消させ、該熱媒体はその時に
    発生する該蓄熱材の凝固熱を吸収しながら熱利用槽に注
    入されることを特徴とする請求項7に記載の熱利用装置
    を使用した熱利用装置の熱利用方法。
  22. 【請求項22】 熱媒体を蓄熱するための蓄熱槽におい
    て、蓄熱槽の内部に設置され、過冷却可能な蓄熱材の充
    填された複数の蓄熱体と、前記蓄熱体の下部に蓄熱槽を
    横断するように設けられた複数の熱媒体通路を持つ拡散
    体と、前記拡散体を挟んで蓄熱槽に設けられた熱媒体の
    通過する流入口と流出口とを備えたことを特徴とする蓄
    熱槽。
  23. 【請求項23】 前記拡散体は、網であることを特徴と
    する請求項22に記載の蓄熱槽。
  24. 【請求項24】 前記拡散体は、多孔質体であることを
    特徴とする請求項22に記載の蓄熱槽。
  25. 【請求項25】 前記過冷却可能な蓄熱材には、相分離
    防止材が添加されていることを特徴とする請求項22乃
    至請求項24のいずれか1項に記載の蓄熱槽。
  26. 【請求項26】 前記蓄熱体は、細長い形状であること
    を特徴とする請求項22乃至請求項25のいずれか1項
    に記載の蓄熱槽。
  27. 【請求項27】 前記蓄熱槽は、前記蓄熱体を加熱する
    ヒーターが設けられていることを特徴とする請求項22
    乃至請求項26の1ずれか1項に記載の蓄熱槽。
  28. 【請求項28】 前記蓄熱槽は、断熱材で覆われている
    ことを特徴とする請求項22乃至請求項27のいずれか
    1項に記載の蓄熱槽。
  29. 【請求項29】 熱の注入過程においては、蓄熱槽の下
    部に設けられた前記流入口より熱媒体を注入し、該熱媒
    体を前記拡散体を通過させて、前記蓄熱体に熱を注入し
    た後に、蓄熱槽の上部に設けられた前記流出口より熱媒
    体を流出させ、熱の抽出過程では、前記流入口より前記
    蓄熱材の過冷却の解消温度よりも低い温度の熱媒体を注
    入し、該熱媒体を前記拡散体を通過させて、前記蓄熱体
    の下部に熱媒体を接触させ、蓄熱材の過冷却を解消さ
    せ、該熱媒体はその時に発生する該蓄熱材の凝固熱を吸
    収しながら前記流出口より流出されることを特徴とする
    請求項22に記載の蓄熱槽を使用した蓄熱槽の熱利用方
    法。
  30. 【請求項30】 前記蓄熱槽はn個(nは2以上の自然
    数)の蓄熱槽J(1≦i≦n−1、i:整数)からな
    り、蓄熱槽Ji+1の蓄熱材の融点は、蓄熱槽Jの蓄
    熱材の融点よりも低く、蓄熱槽Jから蓄熱槽Ji+1
    へ順に熱媒体が通過して熱利用槽の廃熱が貯蔵されたの
    ちに、蓄熱槽Ji+1から蓄熱槽Jへ順に熱媒体が通
    過して廃熱が抽出されることを特徴とする請求項1に記
    載の熱利用装置。
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