JP2010180550A - シールド掘進機の地盤改良装置及び地盤改良方法 - Google Patents

シールド掘進機の地盤改良装置及び地盤改良方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スライドフード内外の土砂に地盤改良剤を的確に注入でき、スライドフードの外周近傍の土砂の止水性を高めた地盤改良装置及び方法を提供する。
【解決手段】カッタ支持部4を前方に移動させてスライドフード3を前方に押し出しながらカッタ支持部4に設けたカッタ10を回転させて切羽を切削し、その際、カッタ支持部4に設けた係合部がスライドフード3に設けた被係合部に係合することで、スライドフード3の連れ廻りを防止して、カッタ支持部4に設けた薬液注入管20の開口19とスライドフード3に設けた注入孔21との位置関係を保持し、薬液注入管20及び注入孔21を通して地盤改良剤をスライドフード3の径方向外方に注入する。その後、カッタ支持部4の隔壁7の前方に地盤改良剤を注入してカッタ支持部4を後退させる。以て、スライドフード3の径方向外方と内方に地盤改良ゾーンをそれぞれ形成する。
【選択図】図5

Description

本発明は、地中のシールド掘進機からその前部近傍の地山に地盤改良剤を注入するシールド掘進機の地盤改良装置及び地盤改良方法に関する。
地中のシールド掘進機の前部近傍の地山に地盤改良剤を注入する場合、通常、地上から注入するが、地上の交通確保の制約や大深度施工等の場合には、地上からの注入が困難である。そこで、地上からではなく、地中のシールド掘進機から注入するようにした工法が知られている。
かかる工法として、筒状のシールドフレームの外周にスライド可能に装着されたスライドフードと、スライドフードの内方に軸方向に移動可能に配置されたカッタ支持部とを備えたシールド掘進機を用い、カッタ支持部を前方に移動させるときにスライドフードを引っ掛けて前方に押し出した後、カッタ支持部に設けられた隔壁から前方に地盤改良剤を噴出して切羽と隔壁との間に充満させ、その圧力によってスライドフードを取り残した状態でカッタ支持部のみを後退させ、スライドフードの内方に地盤改良ゾーンを形成する工法が知られている(特許文献1参照)。
特開2002−155696号公報
上記工法では、地盤改良剤をスライドフードの内方における隔壁と切羽との間に充満させることができるものの、スライドフードの外方に注入することはできない。このため、スライドフードの外周近傍の土砂の止水性を完全なものとすることが困難である。
よって、例えば、上記シールドフレームを親機(親シールド掘進機)のシールドフレームとし、その内部から前方の地盤改良ゾーンを掘り抜くように子機(子シールド掘進機)を発進させる際、止水性に不安があるスライドフード底部から子機を発進(管底発進)させることは避け、子機をスライドフードの略中心位置から発進させていた。
しかし乍ら、下水トンネル等の分野では、親機による大径トンネルの底部に子機による小径トンネルを接続することが求められている。このため、スライドフードの内方のみならず外方の土砂にも地盤改良剤を注入でき、スライドフードの外周近傍の土砂の止水性を高めることができる工法が要望されていた。
本発明の目的は、スライドフードの内外の土砂に地盤改良剤を的確に注入でき、スライドフードの外周近傍の土砂の止水性を高めることができるシールド掘進機の地盤改良装置及び地盤改良方法を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1に係るシールド掘進機の地盤改良装置は、シールドフレームの外周に軸方向に移動可能に装着されたスライドフードと、該スライドフードの内方に配置され、上記シールドフレームに対して軸方向に移動可能なカッタ支持部と、該カッタ支持部の外周に形成された係合部と、上記スライドフードの内周に形成され、後方から上記係合部が係合することで、上記スライドフードを回り止めしつつ前方に押し出すための被係合部と、上記カッタ支持部に取り付けられ、上記カッタ支持部の外周に開口を有する地盤改良剤用の薬液注入管と、上記スライドフードに、上記係合部が上記被係合部に係合したときの上記薬液注入管の開口の位置に合わせ、貫通形成された注入孔とを備えたものである。
請求項2に係る地盤改良装置は、上記係合部が、上記カッタ支持部の外周に形成された凸部から成り、上記被係合部が、上記スライドフードの内周に軸方向に沿って形成された溝と、該溝の軸方向前部に形成された突当面と、上記溝の軸方向後部に形成された開放部とから成り、上記カッタ支持部が前方に移動したとき、上記凸部が上記開放部を通って上記溝に進入し上記突当面に当接することで、上記スライドフードが回り止めされつつ前方に押し出されるものである。
請求項3に係る地盤改良装置は、上記カッタ支持部の外周に、その外周と上記スライドフードの内周との間を止水するシールを設け、該シールよりも前方の上記カッタ支持部の外周に、上記薬液注入管の開口を配設したものである。
請求項4に係る地盤改良装置は、上記カッタ支持部が、シールドジャッキの伸縮によって軸方向に移動されるものである。
請求項5に係る地盤改良方法は、請求項1〜4のいずれかに記載のシールド掘進機の地盤改良装置を用いた地盤改良方法であって、上記カッタ支持部を前方に移動させて上記スライドフードを前方に押し出しながら上記カッタ支持部に設けられたカッタを回転させて切羽を切削し、その際、上記係合部が上記被係合部に係合することで、上記スライドフードの連れ廻りを防止して、上記薬液注入管の開口と上記注入孔との位置関係を保持し、上記薬液注入管及び注入孔を通して地盤改良剤を上記スライドフードの径方向外方に注入し、その後、上記カッタ支持部に切羽側と坑内側とを仕切って設けられた隔壁の前方に地盤改良剤を注入して上記カッタ支持部を後退させることで、上記スライドフードの径方向外方の土砂と、径方向内方且つ上記カッタ支持部の前方の土砂とを地盤改良剤で改良するようにしたものである。
本発明によれば、スライドフードの内外の土砂に地盤改良剤を的確に注入でき、スライドフードの外周近傍の土砂の止水性を高めることができる
本発明の一実施形態に係る地盤改良装置を備えたシールド掘進機の側断面図である。 図2(a)は図1のIIa−IIa線断面図、図2(b)は図2(a)のb−b線断面図、図2(c)は図2(b)のc−c線断面図である。 上記地盤改良装置を用いた地盤改良方法の最初の工程を示す側断面図である。 図3のIV−IV線断面図である。 上記地盤改良方法の次の工程を示す側断面図である。 その次の工程を示す側断面図である。 その次の工程を示す側断面図である。 子機を管底発進させる際の側断面図である。 図9(a)は子機の発進筒を示す側断面図、図9(b)は図9(a)のB−B線断面図である。 図8に続く子機を管底発進させる際の側断面図である。
本発明の好適実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態にかかる地盤改良装置が備えられたシールド掘進機の側断面図、図2(a)は図1のIIa−IIa線断面図、図2(b)は図2(a)のb−b線断面図、図2(c)は図2(b)のc−c線断面図である。
図1に示すように、シールド掘進機1は、筒状のシールドフレーム2と、シールドフレーム2の前部外周に軸方向に移動可能に装着された筒状のスライドフード3と、スライドフード3の内方に配置されシールドフレーム2に対して軸方向に移動可能なカッタ支持部4とを備えている。
シールドフレーム2は、前部の小径部2aと、それよりも外径が大きい後部の大径部2bとを有する。スライドフード3は、前部の厚肉部3aと、それと外径が等しく内径が大きい後部の薄肉部3bとを有し、薄肉部3bがシールドフレーム2の小径部2aの外周にスライド可能に装着されている。シールドフレーム2の小径部2aの前端には、スライドフード3の薄肉部3bとの間を止水するシール5が周方向に沿ってリング状に設けられている。
カッタ支持部4は、スライドフード3及びシールドフレーム2に対向する筒部6と、筒部6内を切羽側と坑内側とを仕切る隔壁7とを有する。筒部6の外周には、筒状のシール支持体8が装着固定され、シール支持体8の外周には、その外周とスライドフード3の薄肉部3bの内周との間を止水するシール9が、周方向に沿ってリング状に設けられている。
隔壁7には、切羽を切削するカッタ10が回転可能に支持されている。カッタ10は、隔壁7に設けられた駆動機構11によって回転駆動され、スライドフード3の厚肉部3aの内径よりも小径のベースカッタ10aと、ベースカッタ10aの端部から径方向に移動することで掘削径を変更する伸縮カッタ10bとを有する。ベースカッタ10a及び伸縮カッタ10bには、切羽を切削するビット12が設けられている。
ベースカッタ10aの反切羽側面には、回転翼13が径方向に間隔を隔てて複数取り付けられ、隔壁7には、固定翼14が回転翼13とは径方向の位置を異ならせて複数取り付けられている。カッタ10と隔壁7との間のカッタ室15内の土砂は、カッタ10の回転により回転する回転翼13と、隔壁7に固定された固定翼14とによって、撹拌される。
隔壁7には、カッタ室15内の土砂を坑内に移送するための排土装置(スクリューコンベヤ等)16が設けられている。なお、排土装置16は、泥水式シールドの場合、送泥管及び排泥管となる。
図2(a)〜図2(c)に示すように、シールド掘進機1は、カッタ支持部4の外周に形成された係合部17と、スライドフード3の内周に形成された被係合部18とを備えている。
係合部17は、カッタ支持部4のシール支持体8の外周に軸方向に沿って形成された凸部17aから成る。被係合部18は、そこに凸部17aが後方(図2(b)、(c)の右方)から係合することで、スライドフード3を回り止めしつつ前方(図2(b)、(c)の左方)に押し出すためのものであり、スライドフード3の厚肉部3aの内周に軸方向に沿って形成された溝18aと、溝18aの軸方向前部に形成された突当面18bと、溝18aの軸方向後部に形成された開放部18cとから成る。開放部18cは、厚肉部3aと薄肉部3bとを接続する段差面に形成される。そして、カッタ支持部4が前方に移動したとき、凸部17aが開放部18cを通って溝18aに進入し突当面18bに当接することで、スライドフード3が回り止めされると共に前方に押し出されるようになっている。
係合部17は、カッタ支持部4の外周に周方向に間隔を隔てて複数設けられ、これに合わせて、被係合部18も、スライドフード3の内周に周方向に間隔を隔てて複数設けられている。
図1に示すように、シールド掘進機1は、カッタ支持部4の外周に開口19を有する地盤改良剤用の薬液注入管20と、スライドフード3にその内外周面を貫通して形成された注入孔21とを備えている。
薬液注入管20は、カッタ支持部4の筒部6の内部に斜め前方に傾斜して取り付けられ、シール支持体8の外周に開口19を有している。開口19の位置は、シール9よりも前方となっている。仮に、後方であると、開口19に対向して形成される注入孔21がシール9の後方に配置されることになり、これでは地山の地下水が注入孔21を通って坑内に浸入してしまうからである。薬液注入管20には、開閉弁22が設けられている。
他方、注入孔21は、図2に示す凸部17aが溝18aの突当面18bに当接したときの薬液注入管20の開口19の位置及び薬液注入管20の軸線に合致するようにして、スライドフード3の厚肉部3aにこれを斜めに貫通して形成されている。
薬液注入管20は、カッタ支持部4に周方向に間隔を隔てて複数取り付けられ、これに合わせて、注入孔21も、スライドフード3に周方向に間隔を隔てて複数形成されている。
図1に示すように、シールドフレーム2の小径部2aには、地盤改良剤用の側部注入管23が、薬液注入管20と同角度斜め前方に傾けて取り付けられている。側部注入管23は、シールドフレーム2の小径部2aの外周に開口24を有している。この開口24は、図1に示す通常時にはスライドフード3によって覆われていて土砂から防護されており、後に図5を用いて説明するようにスライドフード3が前方に移動されると側部地山に臨むことになる。この側部注入管23は、シールドフレーム2に周方向に間隔を隔てて複数取り付けられており、夫々、開閉弁25が設けられている。
図1に示すように、カッタ支持部4とシールドフレーム2とは、係脱機構26によって連結切離可能となっている。係脱機構26は、シールドフレーム2の小径部2aの内周に設けられたフランジ状の金具26aと、金具26aをカッタ支持部4の背面部に固定するボルトナット等の締結具26bとから成る。締結具26bを締め込むことでカッタ支持部4がシールドフレーム2に固定され、締結具26bを緩めることでカッタ支持部4がシールドフレーム2から切り離される。なお、金具26aをカッタ支持部4の背面部に溶接固定し、その溶接部を切除して切り離すようにしてもよい。
シールドフレーム2の内周には、シールドジャッキ27が周方向に間隔を隔てて複数取り付けられている。シールドジャッキ27は、図示しないエレクタ(セグメント組立装置)でリング状に組み立てたセグメント(既設セグメント)28に反力を取って、シールドフレーム2を前進させるものである。シールドジャッキ27は、シリンダ29とロッド30とシュー31とを有し、シリンダ29がシールドフレーム2の内周面に設けられたリング状の取付金具32に取り付けられ、シュー31が既設セグメント28に押し付けられる。
シールドフレーム2の内周の後部には、シールドフレーム2の内周と既設セグメント28の外周との間を止水するテールシール33が設けられている。
以上の構成から成るシールド掘進機1の地盤改良装置を用いた地盤改良方法について説明する。
先ず、既述した図1の形態のシールド掘進機1を用い、改良すべき地盤の地点まで通常通り掘進してトンネルを構築する。このとき、伸縮カッタ10bは、その先端がスライドフード3の外径に一致するように、伸縮位置が定められて固定されている。地盤改良地点まで掘進したならば掘進を停止する。
次に、図3に示すように、スライドフード3の押出前準備を行う。
具体的には、シールドフレーム2と既設セグメント28とを固定金具34で固定してシールドフレーム2の後退を防止し、固定金具34にスペーサ35を取り付けてシールドジャッキ27のシュー31で挟む。そして、シールドジャッキ27のシリンダ29とカッタ支持部4の背面部との間に間座(スペーサ)36を挟み込み、係脱機構26の締結具26bを緩めてカッタ支持部4をシールドフレーム2から切り離し、シールドジャッキ27のシリンダ29とシールドフレーム2の取付金具32との連結を切り離す。また、カッタ支持部4とシールドフレーム2との間に回り止め機構37を取り付ける。
回り止め機構37は、図3及びそのIV−IV線断面図である図4に示すように、カッタ支持部4の筒部6の後端から後方に延出された角柱状の回り止めロッド37aと、シールドフレーム2の内周に回り止めロッド37aを周方向から挟むようにして取り付けられた押さえ金具37bとから成り、カッタ支持部4がシールドフレーム2に対して相対的に回転しないように押さえるものである。この回り止め機構37は、シールドフレーム2の周方向に間隔を隔てて複数設置してもよい。
図3に示すように、薬液注入管20及び注入孔21を通して側部地山に地盤改良剤(モルタル等の固化剤)を注入する。具体的には、薬液注入管20の開閉弁22を開き、その内部に坑内から薬注管(図示せず)を挿入し、注入孔21を通して側部地山に所定の深さまで差し込み、薬注管を引き抜きながら、薬注管の先端から側部地山に地盤改良剤を注入し、所定範囲で地盤改良を行う。
次に、図5に示すように、スライドフード3を前方に押し出す。
具体的には、カッタ10を回転させながらシールドジャッキ27を伸長させ、排土装置16によりカッタ室15内の土砂を坑内に排土しつつ、カッタ支持部4を前方に押し出す。
これにより、図2(a)〜図2(c)に示すように、カッタ支持部4の係合部17がスライドフード3の被係合部18に係合した状態、即ちスライドフード3が回り止めされた状態で、前方に押し出される。よって、図5に示すように、スライドフード3が回転するカッタ10により連れ廻されることはなく、カッタ支持部4に設けられた薬液注入管20の開口19と、スライドフード3に設けられた注入孔21との位置関係が保持される。
シールドジャッキ27の伸長によりスライドフード3が所定量前進したならば、シールドジャッキ27の伸長を停止して、位置関係が保たれている薬液注入管20及び注入孔21を通して、上述した手順で側部地山に地盤改良剤を注入する。ここで、スライドフード3を前進させる量(上記所定量)は、前回の地盤改良範囲と今回の地盤改良範囲とが一部重合するように設定する。
その後、シールドジャッキ27のシリンダ29とカッタ支持部4の背面部との間の間座36の数を増やすことで、シールドジャッキ27によりカッタ支持部4を介してスライドフード3を更に前進させ、薬液注入管20及び注入孔21を通して同様に側部地山に地盤改良剤を注入する。このとき、スライドフード3とシールドフレーム2との間の止水は、シールドフレーム2に設けたシール5により成され、スライドフード3とカッタ支持部4との間の止水は、カッタ支持部4に設けたシール9によって成される。
シールドジャッキ27によりカッタ支持部4を前進させ、そのカッタ支持部4によってスライドフード3を前方に押し出している間、切羽を切削すべくカッタ10が回転されている。このため、切羽からの反トルクを受けるカッタ支持部4が回転しようとするところ、回り止め機構37によって抑えられる。この回り止め機構37の回り止めロッド37aは、スライドフード3の前進に伴って適宜継ぎ足される。
スライドフード3の後端が側部注入管23の開口24よりも前方まで前進したならば、側部注入管23から側部地山に地盤改良剤を注入する。具体的には、側部注入管23の開閉弁25を開き、その内部に坑内から薬注管(図示せず)を挿入し、側部地山に所定の深さまで差し込み、薬注管を引き抜きながら、薬注管の先端から側部地山に地盤改良剤を注入し、所定範囲で地盤改良を行う。これにより、スライドフード3とシールドフレーム2との接続部近傍の地山が固められ、スライドフード3とシールドフレーム2との接続部から坑内への浸水が防止される。
この側部注入管23による地盤改良範囲は、最初に行った地盤改良範囲と一部重合する。よって、これまで行った全ての地盤改良範囲同士が一部重合することになり、スライドフード3の外周にその全てを覆うようにして一体的な地盤改良ゾーンAが形成される。
次に、図6に示すように、隔壁7の前方に地盤改良剤を注入する。
具体的には、シールドフレーム2の前端とスライドフード3の後部とを溶接して固定し(溶接部38)、スライドフード3が後退しないようにし、伸縮カッタ10bを径方向内方に引き込む。その状態で、カッタ10を回転させ、隔壁7から前方に地盤改良剤を注入しながら、排土装置(スクリューコンベヤ)16によってカッタ室15内の土砂を坑内に排出し、カッタ室内15の土砂を地盤改良剤に置換する。置換の完了を、排土装置16から坑内に地盤改良剤が排出されることで確認する。なお、隔壁7には、図示しない地盤改良剤注入管が設けられていることは勿論である。
次に、図7に示すように、カッタ10の前方に地盤改良剤を注入し、スライドフード3の位置を動かすことなくカッタ支持部4のみを後退させる。
具体的には、カッタ10から前方に地盤改良剤を注入し、地盤改良剤を切羽とカッタ10との間に充満させ、その圧力によってカッタ10を後退させる。このとき、図2(a)〜図2(c)に示すように、カッタ支持部4に設けた係合部17の凸部17aがスライドフード3に設けた被係合部18の溝18aの開放部18cを通って溝18a内から後方(図2(b)、図2(c)の右方)に離脱するので、スライドフード3が取り残され、カッタ支持部4のみが後退する。
詳しくは、切羽とカッタ10との間に充満する地盤改良剤の圧力、即ち地盤改良剤の注入圧とシールドジャッキ27の推力とを同調させ、カッタ支持部4を安定した速度で後退させる。そして、間座36を順次取り外すことで、カッタ支持部4を所定の位置(例えば最初の図3の位置)まで後退させる。これにより、スライドフード3の内方における隔壁7と切羽との間に地盤改良ゾーンBが形成される。
後退するカッタ支持部4と取り残されるスライドフード3との間の止水は、カッタ支持部4に設けたシール9によって成される。なお、地盤改良剤の充填圧によりカッタ支持部4を後退させる際、カッタ10を回転させてもよく、させなくてもよい。また、カッタ10には、図示しない地盤改良剤注入管が設けられていることは勿論である。
以上の手順により、スライドフード3を前方に押し出す工程において、スライドフード3の外周に地盤改良ゾーンAを形成でき、そのスライドフード3の位置を動かすことなくカッタ支持部4のみを後方に引き込む工程において、スライドフード3の内部に地盤改良ゾーンBを形成できる。このように、スライドフード3の内外に地盤改良ゾーンA、Bを形成できるので、スライドフード3内のカッタ支持部4の前方の土砂の止水性を高められるのみならず、スライドフード3の外周近傍の土砂の止水性をも高めることができる。
次に、図8に示すように、上記シールドフレーム2を親機(親シールド掘進機)のシールドフレームとし、その内部から子機(子シールド掘進機)40を管底発進させる手順を説明する。
先ず、カッタ支持部4とシールドフレーム2とを溶接或いは係脱機構26により固定してカッタ支持部4の後退を防止した後、シールドジャッキ27、排土装置16、カッタの駆動機構11を取り外してトンネル入口側に運ぶ(図7参照)。その後、隔壁7の底部を円形に切り取り、その穴の形状に合わせて前方のカッタ10の一部も切り取り、そこに発進筒41を設置する。
発進筒41の内部の前部に、掘削可能壁42を設置する。掘削可能壁42の材質は、例えば、熱硬化性樹脂発泡体(硬質ウレタン樹脂)をガラス繊維で強化したもの(FFU:fiber Reinforced Foamed Urethane)が用いられる。地盤改良ゾーンBから発進筒41の開口に加わる荷重(土水圧)は、この掘削可能壁42のみで支持できるが、念のためにその背後に仮土留43を設置している。
仮土留43は、掘削可能壁42を後方から支持するものであり、図9(a)、図9(b)に示すように、上下方向に間隔を隔てて複数配置された横材(H鋼)43aと、左右方向に間隔を隔てて複数配置された縦材(H鋼)43bと、一端が横材43a又は縦材43bに接続され他端が発進筒41に接続された斜材43cとを有する。横材43aは、その前面が掘削可能壁42の背面に接して発進筒41内に左右に架け渡され、縦材43bは、その前面が横材43aの背面に接して発進筒41内に上下に架け渡されている。横材43aと縦材43bとは前後入れ替えてもよい。
その後、図8に示すように、発進筒41の後部に、リング状のエントランスシール44を取り付け、固定金具34に、子機40の推進力を受けるための反力受け部材45を取り付ける。そして、親機となるシールドフレーム2の底部に発進台46を設置し、その上で子機40を組み立てる。子機40は、筒状のシールドフレーム47、隔壁48、カッタ49、カッタ駆動機構50、排土装置51、シールドジャッキ52、テールシール53及びエレクタ(図示せず)等から構成される。
子機40の組立が完了したなら、仮土留43を解体して撤去する。仮土留43は、子機40を組立ているあいだ掘削可能壁42を支持し、その破損を防止する。すなわち、子機40の組立中、組立に伴う振動等で仮に掘削可能壁42の強度が一時的に低下したとしても、掘削可能壁42の背後にそれを支持する仮土留43が存在するため、掘削可能壁42が土水圧で押されて破損することはない。なお、仮土留43は、子機40を親機のシールドフレーム2内にて組み立てる作業が長期化する場合に設置することが好ましく、省略することも可能である。
その後、図10に示すように、子機40を親機のシールドフレーム2の内部から管底発進させ、子機40のカッタ49で掘削可能壁42を掘り抜き、大径のトンネルの底部に小径のトンネルを繋げて構築していく。このように子機40を親機の内部から管底発進させても、本実施形態においては、親機のスライドフード3の内方及び外方に地盤改良ゾーンA、Bが形成されていて、スライドフード3の外周近傍の土砂の止水性が高められているので、坑内への浸水が問題となることはない。
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、図7のようにスライドフード3の内外に地盤改良ゾーンA、Bを形成した後、子機40を管底発進させるのではなく、親機のカッタ10のビット12を交換してもよい。
1 シールド掘進機
2 シールドフレーム
3 スライドフード
4 カッタ支持部
7 隔壁
9 シール
10 カッタ
17 係合部
17a 凸部
18 被係合部
18a 溝
18b 突当面
18c 開放部
19 開口
20 薬液注入管
21 注入孔
27 シールドジャッキ
A スライドフードの径方向外方の地盤改良ゾーン
B スライドフードの径方向内方且つカッタ支持部の前方の地盤改良ゾーン

Claims (5)

  1. シールドフレームの外周に軸方向に移動可能に装着されたスライドフードと、
    該スライドフードの内方に配置され、上記シールドフレームに対して軸方向に移動可能なカッタ支持部と、
    該カッタ支持部の外周に形成された係合部と、
    上記スライドフードの内周に形成され、後方から上記係合部が係合することで、上記スライドフードを回り止めしつつ前方に押し出すための被係合部と、
    上記カッタ支持部に取り付けられ、上記カッタ支持部の外周に開口を有する地盤改良剤用の薬液注入管と、
    上記スライドフードに、上記係合部が上記被係合部に係合したときの上記薬液注入管の開口の位置に合わせ、貫通形成された注入孔と
    を備えたシールド掘進機の地盤改良装置。
  2. 上記係合部が、上記カッタ支持部の外周に形成された凸部から成り、
    上記被係合部が、上記スライドフードの内周に軸方向に沿って形成された溝と、該溝の軸方向前部に形成された突当面と、上記溝の軸方向後部に形成された開放部とから成り、 上記カッタ支持部が前方に移動したとき、上記凸部が上記開放部を通って上記溝に進入し上記突当面に当接することで、上記スライドフードが回り止めされつつ前方に押し出される請求項1に記載のシールド掘進機の地盤改良装置。
  3. 上記カッタ支持部の外周に、その外周と上記スライドフードの内周との間を止水するシールを設け、
    該シールよりも前方の上記カッタ支持部の外周に、上記薬液注入管の開口を配設した請求項1又は2に記載のシールド掘進機の地盤改良装置。
  4. 上記カッタ支持部が、シールドジャッキの伸縮によって軸方向に移動される請求項1〜3のいずれかに記載のシールド掘進機の地盤改良装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のシールド掘進機の地盤改良装置を用いた地盤改良方法であって、
    上記カッタ支持部を前方に移動させて上記スライドフードを前方に押し出しながら上記カッタ支持部に設けられたカッタを回転させて切羽を切削し、
    その際、上記係合部が上記被係合部に係合することで、上記スライドフードの連れ廻りを防止して、上記薬液注入管の開口と上記注入孔との位置関係を保持し、
    上記薬液注入管及び注入孔を通して地盤改良剤を上記スライドフードの径方向外方に注入し、
    その後、上記カッタ支持部に切羽側と坑内側とを仕切って設けられた隔壁の前方に地盤改良剤を注入して上記カッタ支持部を後退させることで、
    上記スライドフードの径方向外方の土砂と、径方向内方且つ上記カッタ支持部の前方の土砂とを地盤改良剤で改良するようにした
    ことを特徴とする地盤改良方法。
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