JP2010178681A - 焼菓子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バウムクーヘンを利用した菓子をラスクとするに際し、独特の食味と歯ざわり感を付与し得るとともに、保存性に優れた焼き菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】卵、砂糖、油脂などを主要構成要素とする菓子生地を生成する工程と、前記菓子生地を焼成装置の回転軸240に対し同芯状に多層に積層しながら焼成し、年輪形の断面を有する棒状焼き菓子母体20を形成する焼成工程と、前記棒状焼き菓子母体をスライスして所定の厚さを有する焼き菓子母体26とする切断工程と、スライスされた前記焼き菓子母体を加熱することによって、該焼き菓子母体中の含有する水分を飛ばす乾燥工程とを具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄い生地層の多数を同心に巻いて形成した年輪形の焼き菓子(バウムクーヘン)につき更に加工を施すことによって、保存性や食感の向上に寄与し得る焼き菓子の製造方法に関する。
一般に、バウムクーヘンのように、小麦粉に鶏卵やバターを加えて作った生地を、焼成装置の心棒の回りに粘着させ、各層を形成する度に、焼く工程を繰り返して、薄く焼かれた生地を同芯状に形成させた焼き菓子を作る技術が知られている。その際、生地を作る澱粉質材料として、たとえば小麦粉が用いられ、これにベーキングパウダーなどの粉末を加えた上で、鶏卵やバター、砂糖などを加えて発泡させ、ソフトな食感を出しつつ、油脂成分を多く配合することでしっとりとした特性を備えた焼き菓子が作られている。
例えば、特許文献1には、バウムクーヘンのケーキ生地層の間に、フルーツジャムなどのケーキ生地層とは異なる味覚の層を挟んで焼成することにより、新たな味覚と外観上の変化に富んだバウムクーヘンの焼成方法が示されている。この特許文献1に開示の方法によると、食味がバラエティに富むという効果を有するとされている。
従来、ラスクの製造方法として、特開2007-151531号記載の発明が公知である。同発明は、パン生地として、低タンパク米粉又は低タンパク米粉と小麦澱粉を主成分とした粉生地に、所定量の増粘多糖類を加え、又、硬化抑制剤として適宜量のα化澱粉と、βアミラーゼを添加して製パンし、該パンをトーストすることにより乾燥させて製造することを特徴としている。
特開2000−354453号公報 特開2007−151531号公報
しかしながら、 前述した特許文献1に記載されているバウムクーヘンの製造方法の場合は、食味の改善などを目的に相応の添加物を利用しているが、昨今の消費者の添加物を敬遠する嗜好に対し、商品性の低下が免れないという欠点がある。当社としては、できる限り添加物は用いず、自然のままの食材を使うことを企業ポリシーとしており、その食材もできる限り道内産のものを用いるというこだわりを持っており、添加物に頼ることは企業理念にもそぐわない。
また、特許文献1に類するものとして、りんごを心材として用い、その外側に複数層の焼き生地を重ねてバウムクーヘンを焼成する方法(特開2000-224951号公報など)や、パイナップルを心材として用い、その外側に生地を重ねてバウムクーヘンを焼成する方法(特公平07-028648号公報など)、あるいは、バウムクーヘンの表面にチョコレートを塗布しチョコレート皮膜を形成する方法(特開2000-004789号公報など)が提案され、食味に変化を持たせるという点で一定の効果を奏していたが、素のままのバウムクーヘンを志向する消費者が依然として多いのも事実であった。つまり、バウムクーヘン本来のシンプルな味わいを生かしつつ、新たな食感を備えた焼き菓子の登場が待ち望まれている。
前述の特許文献2記載の発明は、あくまで、小麦粉を使用しないパンを利用して、低タンパクのラスクの提供を目的とするものであるが、通常のパン類は多くの気泡を内部に含んでおり、バウムクーヘンのような生地を層状に重ねた菓子を、ラスクにするには異なった視点が要求される。つまり、バウムクーヘンを再焼成(乾燥工程)してラスクとして流通させ、商品価値を持たせるには乾燥工程の加熱時間、加熱温度の細かなコントロールなど様々な工夫が必要である。
本発明は、このような事情に鑑みて提案されたものであり、バウムクーヘンについて生地の配合や焼き方などについて鋭意研究を重ねる一方、その目的はバウムクーヘンを利用した菓子をラスクとするに際し、独特の食味と歯ざわり感を付与し得るとともに、保存性に優れた焼き菓子の製造方法を提供するところにある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、卵、砂糖、油脂などを主要構成要素とする菓子生地を生成する工程と、前記菓子生地を焼成装置の回転軸に対し同芯状に多層に積層しながら焼成し、年輪形の断面を有する棒状焼き菓子母体を形成する焼成工程と、前記棒状焼き菓子母体をスライスして所定の厚さを有する焼き菓子母体とする切断工程と、スライスされた前記焼き菓子母体を加熱することによって、該焼き菓子母体中の含有する水分を飛ばす乾燥工程とを具備することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、上記1項において、前記乾燥工程における加熱温度は80°C〜130°Cの範囲内にて行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、上記1項又は2項において、前記乾燥工程における加熱時間は30分〜90分の範囲内にて行うことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、上記1項〜3項のいずれかにおいて、前記乾燥工程における加熱温度は80°C〜130°Cの範囲内にて、段階的に変化させることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、上記1項〜4項のいずれかにおいて、前記乾燥工程における加熱装置として、スライスされた前記焼き菓子母体が載置され、且つ移動可能なベルトコンベアを有し、トンネル状の窯を備えたオーブン内に該ベルトコンベアに載置された焼き菓子を通過させることによって、乾燥工程を行うことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、上記1項〜5項のいずれかにおいて、前記乾燥工程の最終段階にて、加熱温度を上昇させることによって、前記焼き菓子母体に焼き色を付けることを特徴とする。
請求項1〜3、5に記載の発明によれば、年輪形の断面を有する棒状焼き菓子母体を形成する焼成工程に加えて、焼き菓子母体をスライスして所定の厚さを有する焼き菓子母体(バウムクーヘン)とするとともに、スライスされた焼き菓子母体を加熱することによって焼き菓子母体中の含有する水分を飛ばす乾燥工程を行い、バウムクーヘンをラスク菓子としている。これによって、既存のバウムクーヘンに対し、独特の食味と歯ざわり感を付与し得るとともに、保存性に優れた焼き菓子を提供することが可能である。
特に、請求項4記載の発明によれば、乾燥工程における加熱温度を80°C〜130°Cの範囲内にて段階的に変化させるようにしている。このため、焼成された焼き菓子母体(バウムクーヘン)の大きさ、比重、内部に形成されている気泡の大小などに応じ、最適な乾燥工程を行うことができる。
特に、請求項6記載の発明によれば、乾燥工程の最終段階にて、加熱温度を上昇させることによって焼き菓子母体に焼き色を付与するようにしているので、菓子表面の微妙な色合いを調整することが可能である。
本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態におけるバウムクーヘンの焼成工程の概略を示した説明図である。 同じく、本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態に使用されるバウムクーヘンの焼成装置全体の外観を示した正面図である。 同じく、本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態に使用されるバウムクーヘンの焼成装置の側面断面図である。 同じく、本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態に使用されるバウムクーヘンの焼成装置の心棒にバウムクーヘンの生地を絡み付ける際の概略を示す概略斜視図である。 同じく、本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態に使用されるバウムクーヘンの焼成装置における心棒を回転させる機構の一部を示す説明図である。 同じく、本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態に使用されるバウムクーヘンの焼成装置の心棒に生地が絡み付いていく際の様子を示す説明図である。 同じく、本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態に使用され、バウムクーヘンの乾燥工程にて使用される加熱装置の概略構成を示した概略斜視図である。 本発明の焼き菓子の製造方法の一つの実施形態において、図7の加熱装置を使用して焼き菓子母体に対し乾燥工程を行う場合の概略を示した説明図である。
以下、本発明に係る焼き菓子の製造方法について添付図面を参照しながら説明する。本実施形態における焼き菓子の製造方法は、いわゆるバウムクーヘンの菓子生地を製造する工程、菓子生地を年輪状の多層構造にして棒状のバウムクーヘンを焼成する焼成工程、焼成された棒状焼き菓子母体を所定の厚さにスライスして焼き菓子母体とする切断工程、焼き菓子母体を加熱することによって焼き菓子母体中の含有する水分を飛ばす乾燥工程とを具備している。
1.生地の製造
バウムクーヘンの製造工程においては、まず、生地が必要となるが、一般的には全卵、砂糖、小麦(または薄力粉等の穀粉)、油脂などが主成分として用いられる。
たとえば、その成分比率は以下のように構成されている。
−配合比率の例(A)−
組成物
重量比率(%)
全卵
32.0
砂糖
24.0
小麦粉
11.0
油脂
15.0
コーンスターチ(澱粉)
7.0
その他
11.0
(なお、ショートニング、バター、牛乳、みりん、洋酒、膨張剤、香料などを適宜配合する。ただし、製造の際の湿度、温度等によって増減する。)
かかる配合比率の場合、卵黄に含まれるレシチンといった乳化促進作用を備えた物質が存在するため、卵など生地材料に含まれる水分を油脂が包み込んで乳化するのを助けるため、全体として生地が安定し、ふんわりとした食感を達成することが容易となる。
2.バウムクーヘンの焼成
以下、図1から図6を用いて、バウムクーヘンを製造する装置および工程を説明する。
図1は、 本実施形態の製造方法のバウムクーヘンの焼成工程の概略を示した説明図である。
図2は、本実施形態における焼き菓子の製造方法に使用されるバウムクーヘンの焼成装置全体の外観を示した正面図である。
図3は、バウムクーヘンの焼成装置の側面断面図である。
図4は、バウムクーヘンの焼成装置の心棒にバウムクーヘンの生地を絡み付ける際の概略を示す概略斜視図である。
図5は、バウムクーヘンの焼成装置における心棒を回転させる機構の一部を示す説明図である。
図6は、バウムクーヘンの焼成装置の心棒に生地が絡み付いていく際の様子を示す説明図である。
図7は、バウムクーヘンの乾燥工程にて使用される加熱装置の概略構成を示した概略斜視図である。
図8は、図7の加熱装置を使用して焼き菓子母体に対し乾燥工程を行う場合の概略を示した説明図である。
まず、図1から図5を用いて、バウムクーヘンを製造する焼成装置100の各機構を簡単に説明する。
図4に示されるように、焼成装置100の心棒240は、その両側の端部242において、左右一対の回転ドラム200,200の受部250,250により支持され、回転ドラム200とともに回転することができるようになっている。
また、生地用容器140にはバウムクーヘン用の生地10が収容されており、 生地用容器140の下部にはローラー142が備え付けられ、別途設けられた制御部(図示せず)と駆動部(図示せず)により、所定のタイミングで、ガイド144を滑るように斜め上下方向に移動できるようになっている。
そして、図5に示されるように、心棒240の端部242の延長上には、心棒用スプロケット220が備え付けられていることが示されており、図3を併せ参照すると、各心棒には心棒用スプロケット220〜226がそれぞれ備えられており、テンション用スプロケット230〜233を経由する形で、チェーンないしベルト(図示せず)を介して、それぞれ連動して回転できるように構成されていることが分かる。当該チェーン(ないしベルト)は、別途、駆動用の電動機(図示せず)に接続され、制御部(図示せず)により、所定の回転速度で制御可能に構成されている。
また、図3に示されるように、回転ドラム200は、軸受部210によって、製造装置100の内部のフレーム若しくはケーシングに支持されており、別途設けられたスプロケット(図示せず)と、スプロケットの外周に懸けられたチェーンないしベルト(図示せず)によって回転できるように構成されている。そして、当該チェーン(ないしベルト)は、別途設けられた駆動用の電動機(図示せず)に接続され、制御部(図示せず)により、所定の回転速度で制御可能に構成されている。
ここで、チェーン(ないしベルト)は、これに限定されるものではなく、心棒240、回転ドラム200を回転させる機構であれば足り、別途、ギヤ等も、適宜選択することができる。
次に、以上のような構成を備えた、製造装置において、バウムクーヘン用の生地を、心棒に絡み付けて、一層ずつ焼成し、バウムクーヘンを製造する様子について説明する。
図4及び図6に示されるように、心棒240は、回転しながら生地10を心棒240の表面(何層か焼成済みの場合にはその表面)に絡みつけていく、絡み付いた生地は、水分含有量が多いため、余分なものは重力の作用によって、生地用容器140に落下しつつ戻される。
心棒240の表面(何層か焼成済みの場合にはその表面)に絡み付く生地の量は、生地の水分含有量および心棒の回転速度、生地10に含浸させている時間で調整される。ここで、生地用容器140の下部にはローラー142が備え付けられ、別途設けられた制御部(図示せず)と駆動部(図示せず)により、ガイド144を滑るように斜め上下方向に移動できるようになっており、心棒240を生地10に含浸させるタイミングおよび含浸時間を調整することができる。
心棒240の表面(何層か焼成済みの場合にはその表面)に絡み付けられた生地は、前述のような回転機構によって回転させられつつ、回転ドラム200の回転に従って(図3でみると右回転)、焼成バーナー130の近傍付近を移動し、焼成バーナー130によって積層された生地を焼成していく。
そして、焼成された生地は、焼成バーナー130から離れたあと、回転ドラム200の回転に従って製造装置内の焼成ゾーン120から移動し、再び開口部122付近に戻されて生地用容器140内の生地10に含浸させられ、所定の層数(現状では20層前後)になるまで、同様の動作を繰り返すことによって、棒状焼き菓子母体20を得る。
心棒240の回転速度を速めると、心棒240に生地を絡み付けていく際に、(回転速度が早いと、回転する心棒240の表面の近傍において、生地の内部に、空気の層30を捲き込んでいく作用が生じるので、生地が空気を抱き込みながら心棒240に絡み付くため)、空気を多く抱き込ませることができることとなり、その結果、菓子生地の比重を軽くすることができる。このため、生地を練りこむ工程とは別に、生地に含ませる空気の比率を、調整する工程を備えたこととなるので、生地が立ち過ぎない範囲で回転速度を調整することにより、1層当りの厚みを調節しつつ、ふんわり感、柔らかい食感とのバランスを図ることができる(図6参照)。
3.棒状焼き菓子母体を所定の厚さにスライスする切断工程
図1に示されるように、焼成工程が完了すると、棒状焼き菓子母体20(バウムクーヘン)は心棒240から抜き取られて取り外された状態となる。次いで、焼成された棒状焼き菓子母体20につき、例えば一昼夜放置することによって、焼きあがった直後の菓子内部から蒸発する蒸気を取りさって熟成させた後、カッターまたはナイフ、スライサー(例えば、ハクラ精機株式会社製)によって1cm前後の厚みにスライスし、小片化された複数の焼き菓子母体26とする。
4.焼き菓子母体中の含有する水分を飛ばす乾燥工程
次いで、焼き菓子母体26の内部に含まれている水分を飛ばす乾燥工程では、加熱装置として、図7に示されるトンネルオーブン30を使用する。トンネルオーブン30には、トンネル状に形成された焼き窯32の内部に、ニクロム線やIH(電磁誘導加熱)、ガスなどを熱源とする加熱手段(不図示)が設けられている。また、焼き窯32の内部にはスチール製のベルトコンベア34が水平方向に移動可能に取り付けられ、図示しない電動モータによって焼き窯32内を移動することができるとともに、焼き窯32の内側の上部及び下部に設けられている加熱手段によってベルトコンベア34上の被加熱物を加熱できるようになっている。つまり、トンネルオーブン30は、焼き窯32内を設定した加熱温度に保持することができ、又、ベルトコンベア34を設定した移動速度に、それぞれ制御可能であり、図8に示されるように、ベルトコンベア34上に載置された焼き菓子母体(本実施形態ではバウムクーヘン)26を上下から加熱することができようになっている。また、焼き窯32内は、入口、中央、出口と例えば3つの区画において、それぞれ加熱温度の設定が可能である。
乾燥工程における焼き窯32内の加熱温度は入口付近で110(°C)、中央付近で110(°C)、出口付近で120(°C)、焼成時間は50分となるように、ベルトコンベア34の移動速度を設定することが好ましい。なお、加熱温度は80°C〜130°Cの範囲内、加熱時間は30分〜90分の範囲内にて適宜設定・変更することができ、焼き菓子母体26の大きさ、比重、内部に形成されている気泡の大小などを勘案し、最適な数値を選択して乾燥工程を行う。加熱温度を80°C〜120°Cの範囲という比較的低温としたのは、焼き菓子母体(バウムクーヘン)26自体が既に一度焼成されており、それを再焼成(基本的には乾燥のための加熱)するために、余り温度を上げすぎると焦げ色が強すぎるため、低温で時間をかけてじっくりと加熱・焼成することで、菓子表面の微妙な色合いを調整したものである。
焼き窯32内では、主に、焼き菓子母体26内部に含まれている水分を飛ばして乾燥させることに加え、出口付近で加熱温度を10(°C)ほど上昇させることによって、菓子母体26の表面に、さっと焼き色をつける。このようにして、乾燥工程を経て最終的に製造された焼き菓子内部の水分含有量は、製造から約4ヵ月経過後のもので平均1.18(重量パーセント)、約1ヶ月経過後のもので平均1.21(重量パーセント)という結果が得られた。この水分含有量約1パーセント程度というのは、極めて低い値であり、焼き菓子の約99パーセントは水分以外の固形分や、脂肪分等ということとなる。これらの測定を行った各焼き菓子は、乾燥工程を経た後、荒熱をとってから包装機によって菓子単独の状態で密封包装されているので、時間の経過により水分含有量が増加することはまず考えられない。このような本実施形態の製造方法によって出来る菓子の特性は、出荷時における乾燥剤、脱酸素剤などを不要とし、包装に要するコストを削減することができ、又、菓子として日持ちがし、カビの発生もなく、長期の賞味期間を設定することができる。
このように、本実施形態の製造方法による焼き菓子は、菓子母体26をトンネルオーブン30で再焼成することによって製造されるいわゆる2度焼きした菓子であるため、固めの独特の食感を備え、水分含有量が少ないために保存食にも適する特性がある。加えて、その製造に際しては、使用後のオーブンの余熱を利用することが可能な食品であり、乾燥に要するエネルギーの節約に資するという環境面からの利点もある。
さらに、本実施形態によって製造された焼き菓子は、乾燥工程を経ることによって水分比率が前述のように大幅に減少したにも関わらず、バウムクーヘン独特の多層構造(年輪のような焼き模様)によって生まれ得た気泡の構造は、咀嚼(そしゃく)時の食感につき、水分比率の減少ほど硬度が増しているということもなく、かえって新しい独特な食感を生み出すものとなった。つまり、バウムクーヘンにおいては、菓子自体が持っている水分比率の高さから食感が柔らかく感じられるのは誰もが知るところであるが、敢えてそのバウムクーヘンの水分比率を降下させる乾燥工程を追加することによって、その多層構造(年輪のような焼き模様)が持っている気泡構造を生かした独特かつ斬新な食感を得ることが出来た。
要するに、本実施形態の製造方法は、従来のバウムクーヘンの焼成工程後に、乾燥工程という更にもう一工程を加えたものであるが、従来のバウムクーヘン自体が元々焼成されたものであり、そのように一度焼成されたものを更に加熱(焼成)するに当たり一番苦慮したことは、その加熱温度帯と加熱時間である。食品ましては嗜好品である菓子の見た目(外見・デザイン)は、とても重要な要素であり、菓子本来が持つ美味しさ等と同等若しくはそれ以上に商品価値に影響を及ぼす場合がある。つまり、加熱温度が高すぎる、加熱時間が長すぎるといった要因が追加されると、菓子表面に必要以上の焦げ付きが生じたりして焼き色の悪化を招来する。そのようなことを防止する点から加熱(再焼成)をする際には、加熱時間と加熱温度帯を工夫する必要があり、水分比率が高い従来品を全く新しい製品にするため、乾燥工程の加熱時には前述したように、時間帯別に温度調整をも行い、食欲をそそる焼き色となるように工夫しており、この点からも、従来のバウムクーヘンとは一味もふた味も異なった商品性を付加することが可能となった。
本発明に係る焼き菓子の製造方法によれば、バウムクーヘンを利用した菓子を乾燥させてラスクとすることにより、独特の食味と歯ざわり感を付与し得るとともに、保存性に優れた焼き菓子を提供することが可能になった。
10 バウムクーヘン用生地
20 棒状焼き菓子母体(焼成段階のバウムクーヘン)
26 焼き菓子母体(カット後のバウムクーヘン)
30 トンネルオーブン(加熱装置)
32 焼き窯
34 ベルトコンベア
40 透明な容器
100 バウムクーヘンの製造装置
120 製造装置内の焼成ゾーン
122 開口部
130 焼成バーナー
140 生地用容器
142 ローラー

144 ガイド

200 回転ドラム

220〜226 心棒用スプロケット

230〜233 テンション用スプロケット

240 心棒

242 心棒の端部
250
回転ドラム200の軸受部

Claims (6)

  1. 卵、砂糖、油脂などを主要構成要素とする菓子生地を生成する工程と、
    前記菓子生地を焼成装置の回転軸に対し同芯状に多層に積層しながら焼成し、年輪形の断面を有する棒状焼き菓子母体を形成する焼成工程と、
    前記棒状焼き菓子母体をスライスして所定の厚さを有する焼き菓子母体とする切断工程と、
    スライスされた前記焼き菓子母体を加熱することによって、該焼き菓子母体中の含有する水分を飛ばす乾燥工程とを具備することを特徴とする焼き菓子の製造方法。
  2. 前記乾燥工程における加熱温度は80°C〜130°Cの範囲内にて行うことを特徴とする請求項1に記載の焼き菓子の製造方法。
  3. 前記乾燥工程における加熱時間は30分〜90分の範囲内にて行うことを特徴とする請求項1〜2のうち、いずれか1項に記載の焼き菓子の製造方法。
  4. 前記乾燥工程における加熱温度は80°C〜130°Cの範囲内にて、段階的に変化させることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1抗に記載の焼き菓子の製造方法。
  5. 前記乾燥工程における加熱装置として、スライスされた前記焼き菓子母体が載置され、且つ移動可能なベルトコンベアを有し、トンネル状の窯を備えたオーブン内に該ベルトコンベアに載置された焼き菓子を通過させることによって、乾燥工程を行うことを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の焼き菓子の製造方法。
  6. 前記乾燥工程の最終段階にて、加熱温度を上昇させることによって、前記焼き菓子母体に焼き色を付けることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか1項に記載の焼き菓子の製造方法。
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