JP2010174063A - ゲルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより形成された第一の網目構造(A)と、該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合し架橋することにより前記第一の網目構造(A)中に形成された第二の網目構造(B)とからなる相互侵入網目構造を有するゲルにおいて、前記第一の網目構造(A)が、特定の多官能不飽和モノマー(a2)により形成された架橋を有することを特徴とするゲル。
【選択図】なし
Description
しかしながら、ゲル材料は一般的に強度がなく、微小な応力で構造が破壊されてしまうため、強度が必要とされる用途には不向きであった。近年、従来のゲル材料から強度を大幅に向上させた、様々な新規ゲル材料が提唱されている。
架橋点が主鎖に沿って動くトポロジカルゲル(例えば特許文献1)や、架橋点として親水性クレイを用いたナノコンポジットゲル(例えば特許文献2)、2種類の網目構造が相互に侵入したダブルネットワークゲル(例えば特許文献3)は三大高強度ゲルと称され、注目を浴びている。
これらに比べ、特許文献3のようなダブルネットワークゲルは伸び・強度のバランスがよく、透明度の高いゲルが得られる。また、架橋剤の添加量を増やすことで、より高弾性、高強度のゲルが得られることが知られている。しかし、一度の変形で網目が不可逆的に破壊され、二度目以降の変形では弾性率や応力が低下することがあったため、さらに高強度なゲルが望まれている。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。
ゲルとは、ポリマーで構成された網目構造中に水もしくは有機溶媒を溶媒として取り込んでいるものを意味する。
本発明のゲルに含まれる溶媒の量や種類、混合の有無、混合比率等は、特に限定されず、用いるモノマーや使用環境に合わせて適宜選択することができる。溶媒は、1種の単独溶媒であってもよく、2種以上の混合溶媒であってもよく、水と有機溶媒を同時に用いてもよい。
有機溶媒は、常温で液体状態の有機物であればよく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミン類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、その他、ジメチルスルホキシドやテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチル、無水酢酸等が挙げられる。これらの中でも、大気圧において沸点と融点の温度差が大きい溶媒が好ましく、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールが好ましい。
(i)第一の網目構造(A)と、該第一の網目構造(A)中に形成された第二の網目構造(B)とからなる相互侵入網目構造を有するゲル。
(ii)第一の網目構造(A)と、該第一の網目構造(A)中に形成されたポリマー(B’)とからなるセミ相互侵入網目構造を有するゲル。
不飽和モノマーとは、芳香環上の炭素−炭素不飽和二重結合を除き、1分子中に1個以上の炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーを意味する。
セミ相互侵入網目構造とは、第一の網目構造(A)と、架橋点を有さない直鎖状のポリマー(B’)とが別々に存在するのではなく、相互に絡み合っている構造を意味する。
第一の網目構造(A)は、第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより形成された網目構造である。
第一のモノマー(a1)は、単官能不飽和モノマーである。単官能不飽和モノマーとは、1分子中に1個の炭素−炭素不飽和二重結合を有するモノマーを意味する。
アニオン性不飽和モノマーとは、単官能不飽和モノマーのうち、水中において負に帯電するモノマーを意味する。第一の網目構造(A)を第二のモノマー(b1)の溶液(以下、「第二のモノマー溶液」という。)に浸漬した際、第一の網目構造(A)においてアニオン性不飽和モノマー(a1−1)に由来する単位の酸性基が解離することで、アニオン同士が反発して第一の網目構造(A)が膨潤挙動を発現し、第二のモノマー(b1)を第一の網目構造(A)内に導入することが容易になる。
ノニオン性不飽和モノマーとは、単官能不飽和モノマーのうち、水中において正負いずれにも帯電しない、また帯電しても極めて微弱であるモノマーを意味する。また、カチオン性不飽和モノマーとは、単官能不飽和モノマーのうち、水中において正に帯電するモノマーを意味する。
ノニオン性不飽和モノマー(a1−2)としては、公知のモノマーが挙げられ、例えば、アクリルアミド誘導体(アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等)、メタクリルアミド誘導体(メタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン等)、アクリレート(ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート等)、メタクリレート(ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート等)、アクリロニトリル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル等の水溶性のものや、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)等の水溶性に乏しいノニオン性不飽和モノマーが挙げられる。これらノニオン性不飽和モノマー(a1−2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン性不飽和モノマー(a1−3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能不飽和モノマーとは、重合性官能基を2個以上有する不飽和モノマーを意味する。重合性官能基とは、ポリマーに架橋点を形成する官能基であり、(メタ)アクリロイル基やビニル基等が挙げられる。ポリアルキレングリコール構造とは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド等のアルキレンオキシドに由来する構成単位(以下、「アルキレンオキシド単位」という。)が繰り返し存在する構造を意味する。
nが5以上の2官能不飽和モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
nが7以上の3官能不飽和モノマーとしては、例えば、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
nが9以上の4官能不飽和モノマーとしては、例えば、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、n>2mの条件を満たすものであれば、mが5以上(5官能以上)の多官能不飽和モノマーを用いることもできる。多官能不飽和モノマー(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明では、ポリアルキレングリコール構造を有し、全繰り返し数nが全重合性官能基数mの2倍より大きい多官能不飽和モノマー(a2)を用いるため、1つの重合性官能基が重合した後も、残りの重合性官能基の運動が束縛されずに重合反応に寄与しやすくなる。これにより、網目構造の形成に寄与しないポリマー鎖が減り、最終的に得られる(セミ)相互進入網目構造を有するゲルが高強度なものとなる。
ポリアルキレングリコール構造を持たない多官能不飽和モノマーとして、例えば、N,N−メチレンビスアクリルアミド、モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、モノプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明の相互浸入網目構造を有するゲル(i)は、第二の網目構造(B)を有する。
第二の網目構造(B)は、第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合し架橋することにより前記第一の網目構造(A)中に形成された網目構造である。
第二のモノマー(b1)は、ノニオン性不飽和モノマー(b1−1)を含むモノマーであり、必要に応じて他の不飽和モノマー(b1−2)との混合物を用いることもできる。
本発明のセミ相互浸入網目構造を有するゲル(ii)は、ポリマー(B’)を有する。
ポリマー(B’)は、第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合することにより前記第一の網目構造(A)中に形成された架橋点を有さない直鎖状のポリマーである。
第二のモノマー(b1)は、ノニオン性不飽和モノマー(b1−1)を含むモノマーであり、必要に応じて他の不飽和モノマー(b1−2)との混合物を用いることもできる。
ノニオン性不飽和モノマー(b1)、他の不飽和モノマー(b1−2)の種類、含有量は、第二の網目構造(B)と同様である。
本発明の(セミ)相互浸入網目構造を有するゲルにおいては、第一のモノマー(a1)に由来する単位と第二のモノマー(b1)に由来する単位とのモル比((a1)/(b1))は、引張時に良好な伸びと強度を発現する点から、1/2〜1/100であることが好ましく、1/5〜1/80がより好ましく、1/5〜1/50がさらに好ましく、1/6〜1/30が特に好ましい。第二のモノマー(b1)に由来する単位が前記モル比(1/2)より少なくなると、引張時に充分な伸びを発現できない場合がある。第二のモノマー(b1)に由来する単位が前記モル比(1/100)より多くなると、引張時に充分な強度を発現できない場合がある。
第一の網目構造(A)における架橋度とは、第一のモノマー(a1)100モル%に対する多官能不飽和モノマー(a2)の添加量を意味する。また、第二の網目構造(B)における架橋度とは、架橋を後述の方法(α)で行う場合、第二のモノマー(b1)100モル%に対する多官能不飽和モノマー(b2)の添加量を意味する。第二の網目構造(B)の架橋をその他の方法で行う場合は、第二のモノマー(b1)に由来するモノマー単位のうち、架橋に寄与しているモノマー単位の割合を、架橋点が結び付けているポリマー鎖の数で割った値で表せる。架橋点が結び付けているポリマー鎖の数とは、例えば2種のモノマーを反応させて架橋点とする場合には2である。3価に帯電したホウ酸でイオン結合させる場合には3である。
50%までの引張伸張とは、試験片を、該試験片の初期の長さ(100%)に対して150%の長さとなるまで引っ張って伸ばすことを意味する。
ヒステリシスとは、引張試験において応力をかけていくときと応力を解放していくときとで、応力−歪曲線がどれだけ一致するかを示すものであり、ヒステリシスが小さいほど前記曲線が一致する傾向が高く、ヒステリシスがない場合は前記曲線が完全に一致する。
ゲルの引張試験は、一定形状にしたゲルの両末端を掴み、一軸方向へ引っ張り、ゲルが切断されたときの応力、すなわち引張破断応力を測定する試験である。評価方法については後述する。
本発明のゲルの製造方法としては、下記の2種類の製造方法(I)、(II)が挙げられる。
(I)(x)第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより第一の網目構造(A)を形成する工程と、(y)該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合し架橋することにより前記第一の網目構造(A)中に第二の網目構造(B)を形成する工程とを有する、相互侵入網目構造を有するゲルの製造方法。
(II)(x)第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより第一の網目構造(A)を形成する工程と、(y’)該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合することにより前記第一の網目構造(A)中にポリマー(B’)を形成する工程とを有する、セミ相互侵入網目構造を有するゲルの製造方法。
本発明のゲルの製造方法は、工程(x)において、第一の網目構造(A)の架橋を形成する架橋剤として前述の多官能不飽和モノマー(a2)を用いることを特徴とする。
まず、第一のモノマー(a1)、多官能不飽和モノマー(a2)、重合開始剤等を、溶媒に溶かして第一のモノマー溶液を調製する。ついで、第一のモノマー溶液を容器や枠へ流し込み、該溶液に熱または光を当てることにより、第一のモノマー(a1)が重合、架橋されて三次元架橋ポリマーである第一の網目構造(A)が形成される。
熱重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物、アゾ系開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤等の一般的な光重合開始剤が挙げられる。
本発明の相互浸入網目構造を有するゲル(i)の製造方法(I)は、工程(y)を有する。
第一の網目構造(A)中に、第二のモノマー(b1)、重合開始剤等を導入することによって、第一の網目構造(A)中に含まれる溶媒に第二のモノマー(b1)、重合開始剤等を均一に拡散させる。
ついで、第二のモノマー(b1)が導入された第一の網目構造(A)に熱または光を当てることにより、第二のモノマー(b1)を重合させ、ポリマーとする。
該ポリマーの架橋は、第二のモノマー(b1)の重合と同時に行ってもよく、ポリマーを得た後に行ってもよい。
以上のようにして、第一の網目構造(A)中に第二の網目構造(B)を形成することにより、相互侵入網目構造を有する、任意の形状のゲルが得られる。
なお、第一の網目構造(A)が不透明で充分に光を透過しない場合には、熱重合開始剤によるラジカル重合法が好ましい。また、温度によって挙動の変わる不飽和モノマーを用いる場合には、光重合開始剤による光重合法が好ましい場合もある。
第一のモノマー(a1)の重合方法と、第二のモノマー(b1)の重合方法は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
(α)1分子中に2個以上の炭素−炭素不飽和二重結合を有する多官能不飽和モノマー(b2)を第二のモノマー(b1)とともに用いて、重合と同時に架橋する方法。
(β)放射線照射によって、第二のモノマー(b1)により形成されたポリマー中にラジカルを発生させて架橋する方法。
(γ)ポリマーを構成する第二のモノマー(b1)に由来する単位の側鎖の官能基同士を直接反応させる方法。
(δ)ポリマーを構成する第二のモノマー(b1)に由来する単位の側鎖の官能基同士を橋架け剤で架橋する方法。
(ε)多価金属イオン(銅イオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン等)を用いて、イオン結合または配位結合によって架橋する方法。
本発明のセミ相互浸入網目構造を有するゲル(ii)の製造方法(II)では、工程(y’)を有する。
第一の網目構造(A)中に、第二のモノマー(b1)、重合開始剤等を導入することによって、第一の網目構造(A)中に含まれる溶媒に第二のモノマー(b1)、重合開始剤等を均一に拡散させる。
ついで、第二のモノマー(b1)が導入された第一の網目構造(A)に熱または光を当てることにより、第二のモノマー(b1)を重合させ、ポリマー(B’)とする。
以上のようにして、第一の網目構造(A)中にポリマー(B’)を形成することにより、セミ相互侵入網目構造を有する、任意の形状のゲルが得られる。
第二のモノマー(b1)の導入方法および重合方法は、工程(y)における導入方法および重合方法と同様である。
また、本発明のゲルの用途によっては、第二のモノマー(b1)からなるポリマーを架橋する必要がないこともある。本発明ではゲルに求められる物性に応じて、相互侵入網目構造と、セミ相互侵入網目構造とを自由に選択できる。
(実施例1)
工程(x):
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の100%からなる第一のモノマー(a1)と、第一のモノマー(a1)の100%に対して4%のポリエチレングリコール#400ジアクリレート(A−400、新中村化学工業社製、n=9、m=2)からなる多官能不飽和モノマー(a2)と、第一のモノマー(a1)の100%に対して0.1%の光重合開始剤(チバガイギー社製、DAROCURE1173、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)とを、第一のモノマー(a1)の100部に対して300部の蒸留水に溶かし、第一のモノマー溶液を調製した。
ついで、得られた第一のモノマー溶液を、シリコーンゴムで周囲をシールしたガラス板間に流し込み、該第一のモノマー溶液に、ケミカルランプ(東芝社製、捕虫器用蛍光灯FL20S・BL−A)を用いて、1分間の照射エネルギー120mJ/cm2にて90分間紫外線を照射し、重合を完結させ、第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体を得た。
アクリルアミドの100%からなる第二のモノマー(b1)と、第二のモノマー(b1)の100%に対して0.1%のN,N−メチレンビスアクリルアミドと、第二のモノマー(b1)の100%に対して0.001%の光重合開始剤(同上)とを、第二のモノマー(b1)の100部に対して200部の蒸留水に溶かし、第二のモノマー溶液を調製した。
窒素バブリングによって第二のモノマー溶液から溶存酸素を除去した後、第二のモノマー溶液に、第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体を浸漬し、この状態で2時間以上放置することで、第二のモノマー溶液を第一の網目構造(A)に充分に吸収させた。
第二のモノマー溶液で充分に膨潤した第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体をガラス板にて挟みこみ、該ゲル前駆体に、ケミカルランプ(同上)を用いて、1分間の照射エネルギー120mJ/cm2にて90分間紫外線を照射し、重合を完結させ、第一の網目構造(A)中に第二の網目構造(B)が形成された相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)を、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(A−600、新中村化学工業社製、n=14、m=2)(実施例2)、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート(A−1000、新中村化学工業社製、n=23、m=2)(実施例3)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(A−BPE−30、新中村化学工業社製、n=30、m=2)(実施例4)、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステル ATM−35E、新中村化学工業社製、n=35、m=4)(実施例5)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
工程(x):
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の100%からなる第一のモノマー(a1)と、第一のモノマー(a1)の100%に対して4%のA−600からなる多官能不飽和モノマー(a2)と、第一のモノマー(a1)の100%に対して1%のVA057(2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物)とを、第一のモノマー(a1)の100部に対して300部の蒸留水に溶かし、第一のモノマー溶液を調製した。
得られた第一のモノマー溶液を、シリコーンゴムで周囲をシールしたガラス板間に流し込み、60℃の湯浴に60分間浸し、重合を完結させ、第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体を得た。
アクリルアミドの100%からなる第二のモノマー(b1)と、第二のモノマー(b1)の100%に対して0.1%のN,N−メチレンビスアクリルアミドと、第二のモノマー(b1)の100%に対して0.01%のVA057とを、第二のモノマー(b1)の100部に対して200部の蒸留水に溶かし、第二のモノマー溶液を調製した。
窒素バブリングによって第二のモノマー溶液から溶存酸素を除去した後、第二のモノマー溶液に、第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体を浸漬し、この状態で一晩放置することで、第二のモノマー水溶液を第一の網目構造(A)に充分に吸収させた。
第二のモノマー溶液で充分に膨潤した第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体をガラス板にて挟みこみ、周囲をシールした上で、60℃の湯浴に60分間浸し、重合を完結させ、相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
工程(x):
多官能不飽和モノマー(a2)をA−400に変更し、第一のモノマー(a1)の100部に対して300部のジメチルスルホキシドに溶かした以外は、実施例1と同様の方法により、第一の網目構造(A)を有するゲル前駆体を得た。
工程(y):
第二のモノマー溶液の調製において蒸留水の代わりに、第二のモノマー(b1)の100部に対して300部のジメチルスルホキシドを用いた以外は、実施例1と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)を、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(APG−400、新中村化学社製、n=7、m=2)(実施例8)、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート(APG−700、新中村化学社製)(実施例9)に変更した以外は、実施例7と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)を、第一のモノマー(a1)の100%に対して6%のA−600に変更し、第一のモノマー(a1)の100部に対して400部の蒸留水に溶かした以外は、実施例1と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)を、第一のモノマー(a1)の100%に対して8%のA−600に変更した以外は、実施例10と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)を、第一のモノマー(a1)の100%に対して3%のA−600に変更し、架橋剤としてさらに、第一のモノマー(a1)の100%に対して3%のN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いた以外は、実施例10と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
第一のモノマー(a1)を、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の30%およびN−メチロールアクリルアミドの70%からなる混合物に、多官能不飽和モノマー(a2)を、第一のモノマー(a1)の100%に対して2%のA−600に変更した以外は、実施例10と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
第二のモノマー溶液の調製にN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いなかった以外は、実施例13と同様の方法によりセミ相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)の代わりに、第一のモノマー(a1)の100%に対して、4%のN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いた以外は、実施例6と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)の代わりに、第一のモノマー(a1)の100%に対して4%のN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いた以外は、実施例7と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)の代わりに、第一のモノマー(a1)の100%に対して6%のN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いた以外は、実施例10と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
多官能不飽和モノマー(a2)の代わりに、第一のモノマー(a1)の100%に対して2%のN,N−メチレンビスアクリルアミドを用いた以外は、実施例13と同様の方法により相互侵入網目構造を有するゲルを得た。
実施例1〜14、比較例1〜5において、工程(x)で用いた原料の配合および工程(y)で用いた原料の配合を表1に示す。溶媒以外の原料は「モル%」であり、溶媒は「質量部」である。また、表1中の(i)は相互浸入網目構造を有するゲル、(ii)はセミ相互浸入網目構造を有するゲルを示す。
AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
AAm:アクリルアミド
NMAAm:N−メチロールアクリルアミド
MBAAm:N,N−メチレンビスアクリルアミド
A−200:ポリエチレングリコール#200ジアクリレート
A−400:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート
A−600:ポリエチレングリコール#600ジアクリレート
A−1000:ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート
A−BPE−30:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
ATM−35E:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
APG−400:ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート
APG−700:ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート
DAR1173:DAROCURE1173
VA057:2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物
DMSO:ジメチルスルホキシド
実施例1〜14、比較例1〜5で製造したゲルについて、下記の(1)〜(4)の評価を行った。
(1)第一のモノマー(a1)に由来する単位と第二のモノマー(b1)に由来する単位とのモル比((a1)/(b1)):
得られたゲルを乾燥させ、元素分析によって第一のモノマー(a1)に由来する単位の量と第二のモノマー(b1)に由来する単位の量との比を算出した。
得られたゲルの乾燥前後での質量比から膨潤度を算出した。計算式は、下記の通りである。
(膨潤度)=(乾燥前質量)/(乾燥後質量)×100(%)
得られたゲルを3号ダンベル試験片に打抜き、引張試験に供した。引張試験はJIS−K6251に準拠して、試験片の引張破断強度を測定した。チャック間距離は50mm、引張速度は50mm/minとした。
得られたゲルを3号ダンベル試験片に打抜き、引張試験機に固定した。引張速度50mm/minで引張試験前のチャック間距離の半分に相当する距離まで(元の距離を100%として150%となるまで)引っ張ったところで停止させ、その後引っ張り前の位置(原点)に戻した。原点から再度引張試験を行い、得られる応力−歪曲線が初めの応力−歪曲線と一致したものを「○」、ほぼ一致したものを「△」、一致しなかったものを「×」として評価した。
実施例1〜14および比較例1〜5における(1)〜(4)の評価結果を表2に示す。
また、比較例4で得られたゲルは、多官能不飽和モノマー(a2)を用いなかったため、同等の条件の実施例10、11のゲルに比べて充分な強度が得られず、50%伸長後は同一の応力挙動を示さなかった。また、多官能不飽和モノマー(a2)を用いなかったため、同等の濃度の架橋剤を用いた実施例12と比べても、充分な強度が得られず、50%伸長繰り返し試験の評価に劣っていた。
また、比較例5で得られたゲルは、多官能不飽和モノマー(a2)を用いなかったため、同等の条件の実施例13、14のゲルに比べて充分な強度が得られなかった。
Claims (4)
- 第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより形成された第一の網目構造(A)と、該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合し架橋することにより前記第一の網目構造(A)中に形成された第二の網目構造(B)とからなる相互侵入網目構造を有するゲルにおいて、
前記第一の網目構造(A)が、下記多官能不飽和モノマー(a2)により形成された架橋を有することを特徴とするゲル。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。 - 第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより形成された第一の網目構造(A)と、該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合することにより前記第一の網目構造(A)中に形成されたポリマー(B’)とからなるセミ相互侵入網目構造を有するゲルにおいて、
前記第一の網目構造(A)が、下記多官能不飽和モノマー(a2)により形成された架橋を有することを特徴とするゲル。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。 - (x)第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより第一の網目構造(A)を形成する工程と、
(y)該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合し架橋することにより前記第一の網目構造(A)中に第二の網目構造(B)を形成する工程と、
を含む相互侵入網目構造を有するゲルの製造方法において、
前記工程(x)における前記第一の網目構造(A)の架橋を形成する架橋剤として、下記多官能不飽和モノマー(a2)を用いることを特徴とするゲルの製造方法。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。 - (x)第一のモノマー(a1)を重合し架橋することにより第一の網目構造(A)を形成する工程と、
(y’)該第一の網目構造(A)中に第二のモノマー(b1)を導入し、該第二のモノマー(b1)を重合することにより前記第一の網目構造(A)中にポリマー(B’)を形成する工程と、
を含むセミ相互侵入網目構造を有するゲルの製造方法において、
前記工程(x)における前記第一の網目構造(A)の架橋を形成する架橋剤として、下記多官能不飽和モノマー(a2)を用いることを特徴とするゲルの製造方法。
多官能不飽和モノマー(a2):重合性官能基およびポリアルキレングリコール構造を有し、モノマー1分子中の全重合性官能基数mと、ポリアルキレングリコール構造におけるアルキレンオキシド単位の全繰り返し数nとが、n>2mの条件を満たす多官能不飽和モノマー。
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