JP2010173984A - 物質吸着特性を有する食物繊維素材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 優れた物質吸着性を有する食物繊維素材を作成する。
【解決手段】 本発明では、複数の乳酸菌を用いて、植物由来原料を発酵させるステップと、発酵産物を乾燥させるステップとを含む、物質吸着性を有する食物繊維素材を製造する方法を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明では、複数の乳酸菌を用いて、植物由来原料を発酵させるステップと、発酵産物を乾燥させるステップとを含む、物質吸着性を有する食物繊維素材を製造する方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、優れた物質吸着特性を有する大豆食物繊維素材の製造方法に関する。特に、本発明は、複数種の乳酸菌を用いて大豆を発酵させ、その発酵産物を乾燥させることによって、優れた物質吸着特性を有する大豆食物繊維素材を製造する方法に関する。
古くから我が国では、みそ、醤油、酒、漬け物など発酵技術を応用した食品があり、食されている。乳酸菌は、さまざまな発酵食品の製造に用いられてきた。主なものとしては、例えば、ヨーグルトや乳酸飲料などの発酵乳製品、キムチ、浅漬けやピクルスなどの発酵植物製品、鮒寿司などのなれ寿司が挙げられる。乳酸菌による発酵は、これらの食品に酸味を主体とした味や香りの変化を与えるとともに、乳酸によって食品のpHが酸性側に偏ることで、腐敗や食中毒の原因になる他の微生物の繁殖を抑えて食品の長期保存を可能にしている。
一方、主に植物が含有する食物繊維は、胃や腸などではほとんど消化・吸収されず、その生理機能は消化管内の挙動を介して発揮される。従来食物繊維は、体内に吸収されず、また明確な欠乏症が見いだされていないため、疾病とは無関係とされてきた。しかし、近年では、食物繊維の生体への影響について多くの実験的、疫学的、臨床的な研究が行われており、その結果、便通改善をはじめとして多くの生理機能があることが明らかになってきている。
食物繊維の最も顕著な生理作用は、便通の改善である。難消化性成分であるから、当然糞便量を増大させ、消化管通過時間を短縮する。しかし、食物繊維には種々の難消化性成分があり、その生理作用は一様でない。
非特許文献1には、個々の食物繊維成分の物理化学的な特性が、生理機能の発現に大きく関与していることが記載されている。
非特許文献1には、個々の食物繊維成分の物理化学的な特性が、生理機能の発現に大きく関与していることが記載されている。
また、このような食物繊維をはじめとした難消化性機能性成分などを、より扱いやすく、より効率よく摂取するための研究もなされている。
特許文献1には、植物由来原料を、酵素的に処理することによって、よりよい食品原料とすることが記載されている。
特許文献1には、植物由来原料を、酵素的に処理することによって、よりよい食品原料とすることが記載されている。
大豆は、良質の蛋白質や食物繊維を多量に含有する食品として広く食されており、そのまま調理されて食されるほか、納豆や豆腐などの加工食品、醤油や味噌などの調味料としても利用されている。また、大豆の絞り汁である豆乳についても牛乳の代替飲料として従来から食用されている。豆乳を主原料とした加工食品の研究開発、商品化が進められており、加工食品としては、豆乳を乳酸菌によって発酵させ、ヨーグルト様食品やチーズ様食品といった豆乳発酵食品を製造する方法が提案されている。
このような豆乳発酵食品は、豆乳が本来有する各種機能性に加え、乳酸菌によって分解されることによって、さらになる機能性を有する。特許文献2から4及び非特許文献2には、大豆に多く含まれる蛋白質が、乳酸菌によって分解されることにより、各種ペプチドやアミノ酸などが生成されるため、これらのペプチドやアミノ酸などによってさらに機能性を高めることが記載されている。
しかしながら、大豆の乳酸菌発酵において豆乳に関する知見は上記のように数多くあるが、おから成分(食物繊維を含む)を含む大豆まるごとの発酵に関する知見はほとんどみられない。特に、食物繊維と発酵に焦点を当てた研究報告はない。大豆全成分下での乳酸菌の増殖・発酵に関する最適な方法がないばかりでなく、発酵により食物繊維がどのように特性が変化するかについても不明である。食品分野において、発酵食物繊維がどのような効果を有するかについての知見がないのが現状である。
上記に鑑みて、本出願人は、大豆全成分下での効率的な乳酸菌の増殖及び発酵方法の研究を重ねた結果、加水・浸積し粉砕した大豆をさらに加熱殺菌し、乳酸菌を複数種同時に培養することで、乳酸菌の安定した増殖及び発酵に成功した。すなわち、本出願人は、単種の乳酸菌による培養よりも、複数種の乳酸菌の共棲培養により乳酸菌による発酵効率が上昇することを見いだした。また、用いる菌種により発酵効率も異なり、その産物である発酵性食物繊維の機能にも差があることも同時に見いだした。
大豆成分中で高効率に乳酸菌発酵させてできた産物は、不溶性食物繊維の含有量に変化は認められないが、可溶性食物繊維の分解が進んでおり含有量が低下していた。その結果、乳酸菌発酵大豆の物理的構造は変化し、多くの微細なポア構造ができ、未発酵大豆に比べ、表面積を大きく広げられていた。また、発酵産物を凍結乾燥あるいは、噴霧乾燥法で乾燥させた標品は、様々な物質吸着性を有することも明らかとなった。この現象は、発酵の度合いにより吸着力が増減し、本発明の培養方法により、その吸着特性は増加することも明らかとなった。
本発明は、大豆おから成分を含む大豆全成分を、最適な乳酸菌により発酵し、作用効果の優れた新規な機能性素材を製造する方法を提供する。さらに、発酵産物中に含まれる発酵性難消化性食物繊維の機能を追求し、優れた機能性素材を提供することを課題とする。
本発明は、複数の乳酸菌を用いて植物由来原料を発酵させるステップと、発酵産物を乾燥させるステップとを含む、物質吸着性を有する食物繊維素材を製造する方法を提供する。発酵産物を乾燥させるステップは、発酵産物を凍結乾燥又は噴霧乾燥させることが好適である。ここで、発酵産物は、繊維成分及び液体成分を有する。液体成分は、大豆由来タンパク質、ペプチド、ポリフェノール(イソフラボンを含む)、及び乳酸菌が分泌するタンパク質、ペプチド、菌体成分(細胞壁成分であるペプチドグリカン、リポテイコ酸、CpGモチーフDNAなどの核酸成分)を含む。植物由来原料を発酵させるステップは、35℃から45℃で48時間から168時間行うことが好適である。
さらに、本発明に係る製造方法は、発酵産物の繊維成分及び液体成分を分離させるステップと、分散機を用いて発酵産物を粉砕するステップとを含むことを好適とする。なお、食物繊維素材は、繊維成分のみであっても同様の物質吸着性を有する。
乳酸菌は、Lactobacillus属に属する菌株であることが好適である。また、Lactobacillus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus brevis、Lactobacillus rhamnosusの少なくとも一以上であることが好適である。
Lactobacillus curvatusとしては、例えば、JCM1091という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
また、Lactobacillus caseiとしては、例えば、JCM1171という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus acidophilusとしては、例えば、JCM1132という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus plantarumとしては、例えば、JCM11125という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus fermentumとしては、例えば、JCM1137という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus salivariusとしては、例えば、JCM1231という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus brevisとしては、例えば、JCM1059という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus rhamnosusとしては、例えば、JCM1136という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
また、Lactobacillus caseiとしては、例えば、JCM1171という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus acidophilusとしては、例えば、JCM1132という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus plantarumとしては、例えば、JCM11125という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus fermentumとしては、例えば、JCM1137という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus salivariusとしては、例えば、JCM1231という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus brevisとしては、例えば、JCM1059という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
Lactobacillus rhamnosusとしては、例えば、JCM1136という番号で理化学研究所BRCに寄託されている菌株を用いることができる。
植物由来原料は、豆類では、大豆、あずき、えごま、いんげん豆、ごま、アーモンド、テンペ、ピスタチオ、グリーンピース及びおくらのいずれかに由来する原料、野菜では、しいたけ、ごぼう、ぶなしめじ、えのきたけ、西洋かぼちゃ、ブロッコリー、舞茸、ほうれん草、こんにゃく及びかんぴょうのいずれかに由来する原料、穀物では、小麦胚芽、ライ麦、押麦、アマランサス及び玄米のいずれかに由来する原料、果物では、柿、プルーン、バナナ、アボカド、オリーブ、バナナ、キウイ及びリンゴのいずれかに由来する原料であることが好適である。
本発明の効果として、優れた物質吸着特性を有する食物繊維素材を取得することができる。特に、油成分に対して優れた物質吸着特性を有する食物繊維素材を取得することができる。
また、本発明の別の効果として、極性を有する物質に対して優れた物質吸着特性を有する食物繊維素材を取得することができる。極性を有する物質とは、例えば、赤色102号(New Coccine、Ponceau 4R)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、ビスフェノールA(4,4'−(プロパン−2,2−ジイル)ジフェノール)又は除草剤成分などの有害物質である。
一方で、本発明に係る方法によって作成された食物繊維素材は、栄養成分などの有効成分、例えば、核酸成分、タンパク質成分、ペプチド成分、アミノ酸、ビタミンなどに対して吸着特性を有しない。
したがって、本発明に係る方法は、油や有害物質などに対して優れた吸着特性を有し、栄養成分に対して吸着特性を有しない食物繊維素材を取得することが可能である。
したがって、本発明に係る方法は、油や有害物質などに対して優れた吸着特性を有し、栄養成分に対して吸着特性を有しない食物繊維素材を取得することが可能である。
さらに、食物繊維素材は、大豆由来タンパク質、ペプチド、ポリフェノール(イソフラボンを含む)、及び乳酸菌が分泌するタンパク質、ペプチド、菌体成分(細胞壁成分であるペプチドグリカン、リポテイコ酸、CpGモチーフDNAなどの核酸成分)を含む。
したがって、食物繊維素材は、上記物質吸着特性に加え、例えば、腸内細菌叢(腸内フローラ)を改善する特性、腸上皮細胞を修復する特性、及び腸管免疫系を調整する特性を有する。
したがって、食物繊維素材は、上記物質吸着特性に加え、例えば、腸内細菌叢(腸内フローラ)を改善する特性、腸上皮細胞を修復する特性、及び腸管免疫系を調整する特性を有する。
一方で、本発明に係る方法では、発酵産物の繊維成分及び液体成分を分離させるステップを含む場合、大豆由来タンパク質、ペプチド、ポリフェノール(イソフラボンを含む)、及び乳酸菌が分泌するタンパク質、ペプチド、菌体成分(細胞壁成分であるペプチドグリカン、リポテイコ酸、CpGモチーフDNAなどの核酸成分)を抽出することも可能である。
本発明は、複数種の乳酸菌を混合培養することで、大豆全成分中において、他の添加物を一切使用することなく、単独培養よりも高効率に増殖及び発酵することができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る食物繊維素材の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る製造方法の一実施形態のフローチャートである。本発明に係る製造方法の一実施形態では、植物由来原料として大豆を用いる。しかしながら、本発明に係る製造方法では、大豆に限られることなく、その他、豆類では、例えば、あずき、えごま、いんげん豆、ごま、アーモンド、テンペ、ピスタチオ、グリーンピース及びおくらのいずれかに由来する原料、野菜では、例えば、しいたけ、ごぼう、ぶなしめじ、えのきたけ、西洋かぼちゃ、ブロッコリー、舞茸、ほうれん草、こんにゃく及びかんぴょうのいずれかに由来する原料、穀物では、小麦胚芽、ライ麦、押麦、アマランサス及び玄米のいずれかに由来する原料、果物では、例えば、柿、プルーン、バナナ、アボカド、オリーブ、バナナ、キウイ及びリンゴのいずれかに由来する原料を用いることもできる。
本発明に係る製造方法の一実施形態は、浸積ステップ(ステップ101)と、粉砕ステップ(ステップ102)と、加熱殺菌ステップ(ステップ103)と、発酵ステップ(ステップ104)と、加熱殺菌ステップ(ステップ105)と、粉砕ステップ(ステップ106)と、乾燥ステップ(ステップ107)とを含む。以下、各ステップを説明する。
浸積ステップ
浸積ステップでは、水を用いて大豆を1昼夜浸積する(ステップ101)。ここで、大豆の量に対して、所定量の水を加水する。例えば、大豆1.5kgに対して、水12から13Lを加水して1昼夜浸積する。
浸積ステップでは、水を用いて大豆を1昼夜浸積する(ステップ101)。ここで、大豆の量に対して、所定量の水を加水する。例えば、大豆1.5kgに対して、水12から13Lを加水して1昼夜浸積する。
粉砕ステップ
粉砕ステップでは、大豆を粉砕する(ステップ102)。特に、粉砕ステップでは、グラインダー、ビーズミル等の分散機を用いて大豆を粉砕する。
ビーズミルとは、高粘度ペースト材料を粉砕するものであって、粉砕容器内においてアジテータを高速回転させることによってビーズに運動エネルギーを与え、対象物質がこのビーズと衝突することによって、対象物質を微粒子化する分散機である。ビーズミルには、空気中で行う乾式ビーズミルと、水中で行う湿式ビーズミルとがあるが、本実施形態では、湿式ビーズミル、特に、ダイノミルを用いることが好ましい。
また、粉砕ステップでは、分散機として、例えば、ジェットミル、ミキサー、ホモゲナイザー等を用いてもよい。
粉砕ステップでは、大豆を粉砕する(ステップ102)。特に、粉砕ステップでは、グラインダー、ビーズミル等の分散機を用いて大豆を粉砕する。
ビーズミルとは、高粘度ペースト材料を粉砕するものであって、粉砕容器内においてアジテータを高速回転させることによってビーズに運動エネルギーを与え、対象物質がこのビーズと衝突することによって、対象物質を微粒子化する分散機である。ビーズミルには、空気中で行う乾式ビーズミルと、水中で行う湿式ビーズミルとがあるが、本実施形態では、湿式ビーズミル、特に、ダイノミルを用いることが好ましい。
また、粉砕ステップでは、分散機として、例えば、ジェットミル、ミキサー、ホモゲナイザー等を用いてもよい。
加熱殺菌ステップ
加熱殺菌ステップでは、加熱用鍋又はインキュベータ内において、粉砕した大豆を加熱殺菌する(ステップ103)。温度は90℃から120℃、処理時間は30分間から2時間で行うことが好ましい。
加熱殺菌ステップでは、加熱用鍋又はインキュベータ内において、粉砕した大豆を加熱殺菌する(ステップ103)。温度は90℃から120℃、処理時間は30分間から2時間で行うことが好ましい。
発酵ステップ
発酵ステップでは、複数種の乳酸菌を用いて大豆を発酵させる(ステップ104)。発酵は、35℃から45℃で、48時間から168時間行うことが好適である。発酵ステップでは、具体的には、固形分約11%の大豆培地10Lを用いるがこれに限定されない。
また、発酵ステップでは、乳酸菌は、例えば、Lactobacillus属に属する菌株を用いることが好適である。特に、Lactobacillus属に属する菌株として、例えば、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus brevis、Lactobacillus rhamnosusを用いることが好適である。
発酵ステップでは、複数種の乳酸菌を用いて大豆を発酵させる(ステップ104)。発酵は、35℃から45℃で、48時間から168時間行うことが好適である。発酵ステップでは、具体的には、固形分約11%の大豆培地10Lを用いるがこれに限定されない。
また、発酵ステップでは、乳酸菌は、例えば、Lactobacillus属に属する菌株を用いることが好適である。特に、Lactobacillus属に属する菌株として、例えば、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus brevis、Lactobacillus rhamnosusを用いることが好適である。
上記菌株は、各国の菌株保存機関で入手可能であり、理化学研究所BRC、ATCC、NBRC、各大学より入手可能である。
なお、乳酸菌は、種培養、前培養を経たものである。例えば、豆乳培地などにおいてあらかじめ培養されたものであることが好適である。
例えば、調製した大豆粉砕液を加熱釜で30分から2時間加熱し、大豆成分を抽出したのち、圧搾機でおから成分と、豆乳成分とに分離する。豆乳成分は、糖度を6から9程度に調節し、さらに加熱殺菌(温度は、90から120℃、処理時間30分から120分)、又はオートクレーブ滅菌処理(121℃、20から30分)する。冷却後、滅菌済みの三角フラスコあるいは、試薬びん等に、20から200mLずつ分注し、各種乳酸菌を単菌または、複数種を一白金耳植菌し、35℃から45℃で48時間程度、静止培養する。
例えば、調製した大豆粉砕液を加熱釜で30分から2時間加熱し、大豆成分を抽出したのち、圧搾機でおから成分と、豆乳成分とに分離する。豆乳成分は、糖度を6から9程度に調節し、さらに加熱殺菌(温度は、90から120℃、処理時間30分から120分)、又はオートクレーブ滅菌処理(121℃、20から30分)する。冷却後、滅菌済みの三角フラスコあるいは、試薬びん等に、20から200mLずつ分注し、各種乳酸菌を単菌または、複数種を一白金耳植菌し、35℃から45℃で48時間程度、静止培養する。
加熱殺菌ステップ
加熱殺菌ステップでは、加熱用鍋又はインキュベータ内において、発酵させた大豆を加熱殺菌する(ステップ105)。温度は90℃から120℃、処理時間は15分間から30分間で行うことが好ましい。
加熱殺菌ステップでは、加熱用鍋又はインキュベータ内において、発酵させた大豆を加熱殺菌する(ステップ105)。温度は90℃から120℃、処理時間は15分間から30分間で行うことが好ましい。
粉砕ステップ
ステップ102と同様に、ビーズミル等の分散機を用いて大豆を粉砕する(ステップ106)。ここで、発酵産物は、できる限り細かく粉砕されることが好ましく、1から100μm程度にまで粉砕する。より細かく粉砕された発酵産物は、優れた物質吸着特性を有している。
ステップ102と同様に、ビーズミル等の分散機を用いて大豆を粉砕する(ステップ106)。ここで、発酵産物は、できる限り細かく粉砕されることが好ましく、1から100μm程度にまで粉砕する。より細かく粉砕された発酵産物は、優れた物質吸着特性を有している。
乾燥ステップ
最後に、乾燥ステップでは、発酵した大豆を噴霧乾燥する(ステップ107)。乾燥ステップでは、スプレードライヤー等の粉末化装置を用いて発酵した大豆を噴霧乾燥する。なお、スプレードライヤーを用いた場合、乾燥時において発酵産物が分散する。発酵産物はできる限り分散させた状態で乾燥されることが好ましい。これにより、より物質吸着特性に優れた食物繊維素材を取得することができる。製品粒子系は、5から100μm程度になる。
最後に、乾燥ステップでは、発酵した大豆を噴霧乾燥する(ステップ107)。乾燥ステップでは、スプレードライヤー等の粉末化装置を用いて発酵した大豆を噴霧乾燥する。なお、スプレードライヤーを用いた場合、乾燥時において発酵産物が分散する。発酵産物はできる限り分散させた状態で乾燥されることが好ましい。これにより、より物質吸着特性に優れた食物繊維素材を取得することができる。製品粒子系は、5から100μm程度になる。
乾燥ステップでは、発酵した大豆を凍結乾燥することもできる。凍結乾燥した場合、ミキサーや乳鉢などを使ってさらに粉砕加工する。この場合、製品粒子系は、50から500μm程度になる。
食物繊維素材のpH及び酸度
次に、上記一実施形態において製造した、物質吸着性を有する食物繊維素材について説明する。食物繊維素材の特性を調べるため、噴霧乾燥した食物繊維素材を水に再懸濁し、pHを測定した。図2(a)は、食物繊維素材のpHを示すグラフである。
次に、上記一実施形態において製造した、物質吸着性を有する食物繊維素材について説明する。食物繊維素材の特性を調べるため、噴霧乾燥した食物繊維素材を水に再懸濁し、pHを測定した。図2(a)は、食物繊維素材のpHを示すグラフである。
サンプルは、未発酵の場合、Lactobacillus plantarum1種のみの場合(図2(a)のサンプルA)、Lactobacillus curvatus及びLactobacillus caseiの場合(サンプルB)、Lactobacillus acidophilus及びLactobacillus plantarumの場合(サンプルC)、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、及びLactobacillus salivariusの場合(サンプルD)、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus brevis、Lactobacillus rhamnosusの場合(サンプルE)である。なお、発酵時間は48時間に設定した。(サンプルE)の場合では、発酵時間168時間も設定した(サンプルF)。
図2(a)に示すように、単種の菌を用いた発酵(サンプルA)では、pHの低下はわずかであった。これに対して、複数の乳酸菌を用いた、サンプルBからFそれぞれでは、pHが著しく低下していた。つまり、複数の乳酸機を用いた場合、著しく大豆の発酵が進んでいるとものと考えられる。
以上のように、大豆全成分を培地に用い乳酸菌で発酵させる場合、単種の乳酸菌を用いる場合よりも、複数の乳酸菌を用いる場合の方が、大豆を著しく発酵させることができる。
以上のように、大豆全成分を培地に用い乳酸菌で発酵させる場合、単種の乳酸菌を用いる場合よりも、複数の乳酸菌を用いる場合の方が、大豆を著しく発酵させることができる。
さらに、食物繊維素材の特性を調べるため、噴霧乾燥した発酵産物を水に再懸濁して酸度を測定した。図2(b)は、発酵産物の酸度を示すグラフである。なお、測定方法には、水酸化ナトリウム滴定法を使用した。
図2(b)に示すように、単種の菌を用いた発酵では、酸度の上昇はわずかであった。しかしながら、複数の乳酸菌を用いた場合、酸度が著しく上昇した。よって、複数の乳酸菌を用いることによって、発酵が著しく進むものと考えられる。また、発酵時間を7日間に延長した場合、さらに酸度が上昇した。
つまり、単種の乳酸菌を用いる場合よりも、複数の乳酸菌を用いる場合の方が、酸度が上昇し、これによって、複数の乳酸菌を用いた場合、大豆を著しく発酵させることが判明した。
つまり、単種の乳酸菌を用いる場合よりも、複数の乳酸菌を用いる場合の方が、酸度が上昇し、これによって、複数の乳酸菌を用いた場合、大豆を著しく発酵させることが判明した。
図2(a)及び図2(b)に示すように、本発明に係る製造方法では、単種の菌での発酵よりも、複数の乳酸菌を用いることが好適あることが判明した。
食物繊維素材の組成及び物理化学的性状
次に、上記一実施形態において製造した食物繊維素材の組成及び物理化学的性状について説明する。
上記一実施形態において製造した食物繊維素材の組成を調べるため、未発酵の大豆と、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた大豆とを比較した。なお、食物繊維の定量は、酵素重量測定法を用いて行った。
次に、上記一実施形態において製造した食物繊維素材の組成及び物理化学的性状について説明する。
上記一実施形態において製造した食物繊維素材の組成を調べるため、未発酵の大豆と、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた大豆とを比較した。なお、食物繊維の定量は、酵素重量測定法を用いて行った。
図3は、未発酵の大豆及び発酵させた大豆の食物繊維量を示すグラフである。図3に示すように、発酵させることにより、食物繊維総量がわずかに減少した。さらに、不溶性及び可溶性食物繊維に分画して調べたところ、不溶性食物繊維の量は、発酵により変化は受けていないことが判明した。一方、可溶性食物繊維画分の量は、発酵により半分以下にまで減少していることが判明した。これは、乳酸菌が発酵する際に、可溶性食物繊維を分解し、利用していることに起因していると考えられる。
次に、発酵による大豆食物繊維の物理化学的変化を観察するため、未発酵の大豆及び発酵大豆を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。図4(a)は、走査型電子顕微鏡を用いて、未発酵の大豆の表面を観察した顕微鏡写真である。また、図4(b)は、同じく走査型電子顕微鏡を用いて、発酵させた大豆の表面を観察した顕微鏡写真である。なお、顕微鏡写真は、倍率1000倍で撮影を行った。
図4(a)に示すように、未発酵の大豆は表面が滑らかであった。これに対して、図4(b)に示すように、発酵させた大豆の表面では、直径約30μmのポア構造が多数観察された。これは、主に可溶性食物繊維画分が、乳酸菌により分解されたため、不溶性食物繊維がむきだしの状態になっているものと考えられる。ここで、大豆の表面において多数のポア構造が形成されることによって、外界に接する食物繊維の表面積が、著しく広がるものと考えられる。
また、分解された可溶性食物繊維は、本発明の固液分離を行わず、そのまま乾燥させる製法では、乾燥粉体中に含まれていることになる。可溶性食物繊維は、分解されると短鎖脂肪酸になることが知られている。これらの短鎖脂肪酸は、腸管内pHの酸性化、腸上皮細胞へのエネルギー供給、抗菌作用などの効果が報告されているため、腸内環境改善効果も期待できる。また、食物繊維は、腸内細菌の住みかにもなり、その表面積が広がっていることからも有用な素材になると考えられる。
また、分解された可溶性食物繊維は、本発明の固液分離を行わず、そのまま乾燥させる製法では、乾燥粉体中に含まれていることになる。可溶性食物繊維は、分解されると短鎖脂肪酸になることが知られている。これらの短鎖脂肪酸は、腸管内pHの酸性化、腸上皮細胞へのエネルギー供給、抗菌作用などの効果が報告されているため、腸内環境改善効果も期待できる。また、食物繊維は、腸内細菌の住みかにもなり、その表面積が広がっていることからも有用な素材になると考えられる。
食物繊維素材の水分及び油分吸収特性
次に、上記一実施形態において製造した食物繊維素材について、その水分及び油分吸収特性を調べた。
吸収特性を調べるため、未発酵の大豆と、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた大豆とを比較した。なお、計測には、それぞれの乾燥粉末をカラムに充填して水又は食用油を流し、飽和状態になったときの重量を計測することによって行った。
次に、上記一実施形態において製造した食物繊維素材について、その水分及び油分吸収特性を調べた。
吸収特性を調べるため、未発酵の大豆と、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた大豆とを比較した。なお、計測には、それぞれの乾燥粉末をカラムに充填して水又は食用油を流し、飽和状態になったときの重量を計測することによって行った。
図5(a)は、未発酵の大豆及び発酵させた大豆の水分吸収量を示すグラフである。水分吸収量は、未発酵の大豆の場合、乾燥重量あたり約3.5gであるのに対して発酵させた大豆の場合、約2.5gと少なくなっていた。これは。発酵させた大豆中の水溶性食物繊維量の減少の結果と推察される。
これに対して、油分の吸収については、逆の結果が示された。図5(b)は、未発酵の大豆及び発酵させた大豆の油分吸収量を示すグラフである。すなわち、未発酵の大豆では、乾燥重量あたり約0.6gの油分吸収量であるのに対して、発酵させた大豆では、約1.5gという未発酵の大豆と比較して3倍量を吸収する結果となった。これは、発酵により多孔質構造をとったこと、発酵により脂溶性物質に対する親和性が変化したものと推察される。
以上より、本発明では、乳酸菌による発酵が十分に行われたことにより、植物性食物繊維の本来持つ性質が変化すると考えられる。
以上より、本発明では、乳酸菌による発酵が十分に行われたことにより、植物性食物繊維の本来持つ性質が変化すると考えられる。
乳酸菌発酵食物繊維の赤色色素吸着特性
上記のように本発明により大豆培地中で乳酸菌の発酵を適切に行うことによって、大豆食物繊維の性質が物理的及び化学的に変化することが推察された。そこで、さらに様々な物質の吸着特性について解析を試みた。
上記のように本発明により大豆培地中で乳酸菌の発酵を適切に行うことによって、大豆食物繊維の性質が物理的及び化学的に変化することが推察された。そこで、さらに様々な物質の吸着特性について解析を試みた。
まず、赤色合成着色料の吸着について解析を行った。赤色合成着色料には、赤色102号を用いた。図6(a)は、赤色102号(New Coccine, Ponceau4R)の分子構造を示す図である。なお、赤色102号は、分子量631.51である。
赤色合成着色料の吸収特性を調べるため、未発酵の大豆と、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた大豆とを比較した。なお、計測には、それぞれの乾燥粉末を1gカラムに充填し、0.1%食紅(0.015%赤色102号)溶液を10mL流してその様子を観察することによって行った。
図6(b)は、未発酵の大豆及び発酵させた大豆の赤色合成着色料の吸着特性を示すグラフである。未発酵の大豆を充填したカラムでは、赤色色素が抜け出た。これに対して、発酵させた大豆を充填したカラムでは、色素は上部にとどまり、水分のみが溶出された。また、カラム充填時に充填保持材と使用した脱脂綿についても同様の試験を行ったが、未発酵の大豆と同様にほとんどが抜け出てしまうことも確認した。ここで、溶出された溶液の506nmの吸収を確認したところ、発酵させた大豆を充填したカラムの溶出液では、506nmの吸収は皆無であった。
次にカラム中に残った色素を過剰量の水で溶出する試験を行った。図7は、未発酵の大豆が充填されたカラム及び発酵させた大豆が充填されたカラムの洗浄により溶出する色素量を示すグラフである。未発酵の大豆が充填されたカラムでは、残っていた赤色色素はほぼすべて溶出された。これに対して、発酵させた大豆が充填されたカラムでは、まったく溶出されず、赤色色素はカラムに保持されたままであった。同様に脱脂綿でもすべての色素は、抜け出ることを確認した。溶出液の506nmの吸収を確認したところ、発酵させた大豆を充填したカラムでの溶出液では、506nmの吸収は皆無であった。
このように本発明に係る製造方法を用いて、効率よく大豆を発酵させることにより、大豆食物繊維は、合成着色料の強固な吸着性を持つように性質が変化することが判明した。
本実験で使用した赤色102号は、主に工業製品の着色用途や食品添加物として使用される。旧厚生省は天然に存在しない添加物に分類している。食品用途には、洋菓子やソーセージ、漬け物への使用が多い。また、アレルギー性などがある。カナダ、ベルギー、アメリカなどでは食品への使用が禁止されている。 また、2007年、英国食品基準庁は、食品添加物の広域スクリーニングの結果、ニューコクシンを含む数種類の合成着色料と合成保存料の安息香酸ナトリウムを同時に摂取した場合に活動亢進との関係を示唆する結果が得られた為、注意欠陥・多動性障害の兆候がみられる子どもはこの合成着色料を避けたほうがいいと勧告している。 このような観点から、本発明方法で効率よく発酵させることにより、大豆食物繊維が、合成着色料の強固な吸着性を持つようになることは、食品として摂取したさい、胃や腸内でこれら合成着色料を吸着し、難溶性食物繊維としてそのまま排泄物とともに排泄される可能性があり、有用な素材になると考えられる。
乳酸菌発酵食物繊維の青色色素吸着特性
次いで青色色素の吸着特性について解析を行った。青色色素には、ブリリアントブルーFCF、青色1号を用いた。図8(a)は、青色1号(Brilliant Blue FCF)の分子構造を示す図である。なお、青色1号は、分子量792.86である。
次いで青色色素の吸着特性について解析を行った。青色色素には、ブリリアントブルーFCF、青色1号を用いた。図8(a)は、青色1号(Brilliant Blue FCF)の分子構造を示す図である。なお、青色1号は、分子量792.86である。
青色色素(もしくは青色色素着色料)の吸着特性を調べるため、未発酵の大豆と、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた大豆とを計測するとともに、発酵条件を様々に変えたサンプルについても吸着量を計測した。まず、各試験乾燥粉末を0.5g秤取り、それらに5mM 青色1号溶液を10mL添加し、攪拌及び振とうした。24時間反応後、遠心分離で液体画分を得た。上澄み溶液の630nmでの吸収より青色色素濃度を算出し、減少色素量を吸着量として計算した。
図8(b)は、発酵させた大豆の青色色素吸着特性を示すグラフである。バッチ吸着法でも色素の吸着は、認められ、複数の乳酸菌を用いて2日間発酵させた食物繊維素材(図8のサンプルAからE)では、色素が吸着され、溶液の青色が薄くなることが確認された。
実施例1と同様に調製した試料について、各試料の吸着量を算出した結果、未発酵の大豆ではほとんど吸着が認められないのに対して、乳酸菌で発酵させた大豆では、いずれの試料でも吸着量が増加することが明らかとなった。その吸着量は、単種の菌で発酵させたものが、約20μmoles/g乾燥重量であるのに対して、複数の乳酸菌で発酵させた食物繊維素材(図8のサンプルAからG)では、70から100μmoles/g乾燥重量と大幅に吸着量が増加することも明らかとなった。この結果は、実施例1に示した発酵の度合いと非常に相関性があると考えられた。すなわち発酵が良ければ良いほど、発酵産物の物質吸着性は増すことが考えられた。
特に、発酵及び吸着量の高かった試料は、複数の混合培養で7日間発酵させた試料(サンプルF)であった。また、乾燥方法では、若干であるが凍結乾燥試料に比べ噴霧乾燥試料で吸着量が増す傾向も観察された。図8のサンプルGは、2日間発酵させ、凍結乾燥させた食物繊維素材である。さらに、タブレット状の活性炭と比較しても、発酵試料の吸着性は優れていることも明らかである。
実施例1と同様に調製した試料について、各試料の吸着量を算出した結果、未発酵の大豆ではほとんど吸着が認められないのに対して、乳酸菌で発酵させた大豆では、いずれの試料でも吸着量が増加することが明らかとなった。その吸着量は、単種の菌で発酵させたものが、約20μmoles/g乾燥重量であるのに対して、複数の乳酸菌で発酵させた食物繊維素材(図8のサンプルAからG)では、70から100μmoles/g乾燥重量と大幅に吸着量が増加することも明らかとなった。この結果は、実施例1に示した発酵の度合いと非常に相関性があると考えられた。すなわち発酵が良ければ良いほど、発酵産物の物質吸着性は増すことが考えられた。
特に、発酵及び吸着量の高かった試料は、複数の混合培養で7日間発酵させた試料(サンプルF)であった。また、乾燥方法では、若干であるが凍結乾燥試料に比べ噴霧乾燥試料で吸着量が増す傾向も観察された。図8のサンプルGは、2日間発酵させ、凍結乾燥させた食物繊維素材である。さらに、タブレット状の活性炭と比較しても、発酵試料の吸着性は優れていることも明らかである。
以上のように、本発明方法で効率よく発酵させることにより、大豆食物繊維は、合成着色料の強固な吸着性を持つように性質が変化すること、また発酵度合いに応じた吸着量が増加することが明らかとなった。
なお、本実施例で用いた青色1号は、主に食品添加物や工業製品の着色用途として使用される。旧厚生省は天然に存在しない添加物に分類している。菓子などの食品やジュースを青色に着色する場合に使用されることがある。食品の着色の際には約0.01%の比率で混合するが、発癌性・アレルギー性があるとされているため、ヨーロッパ諸国の一部では食品への使用が禁止されている。ただし、国際がん研究期間(IARC)の発がん性リスクではグループ3(発がん性が分類できない)に分類されており、グループ2Bに分類されるコーヒーよりもリスクは低い。そのため、日本や米国を始め、多くの国で使用が認められている。というものである。
乳酸菌発酵食物繊維のビスフェノール A吸着特性
ビスフェノールAの吸着特性について解析を行った。図9(a)は、ビスフェノールA(4、4’−(プロパン−2、2−ジイル)ジフェノール)の分子構造を示す図である。なお、ビスフェノールAは、分子量228.29である。
ビスフェノールAの吸着特性について解析を行った。図9(a)は、ビスフェノールA(4、4’−(プロパン−2、2−ジイル)ジフェノール)の分子構造を示す図である。なお、ビスフェノールAは、分子量228.29である。
ビスフェノールA は、ポリカーボネート製のプラスチックを製造する際のモノマーや、エポキシ樹脂の原料として利用されている。ビスフェノールAを原料とする種類の合成樹脂では、強力な洗剤で洗浄した場合や酸及び高温の液体に接触させた場合にビスフェノールA成分が溶け出すことが知られている。ビスフェノールAを摂取するとエストロゲン受容体が活性化されて、エストロゲン自体に類似した生理作用を表す。動物やヒトのがん細胞での実験により、内分泌攪乱化学物質として作用するための最少量は 2−5ppb とされている。 そこで合成色素より、さらに分子量の小さいビスフェノールAに対する発酵性食物繊維の吸着特性について実験を行った。
本実施例では、乾燥粉末を1gカラムに充填し、水溶性成分が溶出されなくなるまで過剰量の水で洗浄した。洗浄済みカラムに50μg/mLビスフェノールA溶液を連続的に流し、溶出されてくる溶液中のビスフェノールA濃度をHPLC法にて測定した。
HPLCの条件は以下の通りに行った。
カラム: CAPCELL PAK C18(MGII、5μm)
4.6mmI.D.×250mm
溶媒: アセトニトリル、0.1%酢酸(1:1)、流速 1ml/min
カラム温度: 40℃
検出: UV 280nm
カラム: CAPCELL PAK C18(MGII、5μm)
4.6mmI.D.×250mm
溶媒: アセトニトリル、0.1%酢酸(1:1)、流速 1ml/min
カラム温度: 40℃
検出: UV 280nm
図9(b)は、発酵させた大豆に吸着したビスフェノールAを示す、分光器によるグラフである。図9(b)に示すように、カラム通過後の溶出液には、ビスフェノールAは検出されず、洗浄した発酵させた大豆に吸着していることが明らかとなった。
さらに連続的に試料を添加し続けると徐々にビスフェノールAが溶出されてきた。図9(c)は、発酵させた大豆に吸着したビスフェノールAを示す、分光器によるグラフである。吸着されたビスフェノールA量をプロットすると最大結合量は、約25μmoles /gと算出された。
このように本発明方法で効率よく大豆を発酵させることにより、大豆食物繊維は、ビスフェノールAの強固な吸着性を持つこと、また水溶性画分を洗い流した、食物繊維画分のみでもその吸着性が損なわれないことが明らかとなった。洗浄画分での吸着特性が維持されていることは、食品以外にも化学・工業など様々な分野への応用が期待できる。
乳酸菌発酵食物繊維の農薬吸着特性
同様に洗浄済み発酵食物繊維の農薬類に対する吸着試験を実施した。
まず、乾燥粉末を1gカラムに充填し、水溶性成分が溶出されなくなるまで過剰量の水で洗浄した。洗浄済みカラムに1%ネコソギA(イソウロン、DBN、DCMUを主成分とする除草剤、レインボー薬品株式会社)溶液を10mL流し、溶出液を用いてカイワレ大根の発芽試験を行った。
同様に洗浄済み発酵食物繊維の農薬類に対する吸着試験を実施した。
まず、乾燥粉末を1gカラムに充填し、水溶性成分が溶出されなくなるまで過剰量の水で洗浄した。洗浄済みカラムに1%ネコソギA(イソウロン、DBN、DCMUを主成分とする除草剤、レインボー薬品株式会社)溶液を10mL流し、溶出液を用いてカイワレ大根の発芽試験を行った。
図10は、カイワレ大根の発芽を示す図である。図10において、左側は1%ネコソギAを与えたカイワレ大根であり、右側は、発酵させた大豆を充填したカラムを通過した、1%ネコソギAを与えたカイワレ大根である。図10からわかるように、1%ネコソギA溶液を与えたカイワレ大根は、発芽が抑制されているが、発酵させた大豆を充填したカラムを通過した溶液では、通常通り発芽し、生育する様子が観察された。
つまり、本発明に係る製造方法は、優れた物質吸収性を有する食物繊維素材を作成することが可能であり、農薬などの成分も吸着することができる。
本発明に係る食物繊維素材を製造する方法は、食品、化学、工業など様々な分野への応用のみならず、土壌改良資材等など農業分野への応用も可能である。
つまり、本発明に係る製造方法は、優れた物質吸収性を有する食物繊維素材を作成することが可能であり、農薬などの成分も吸着することができる。
本発明に係る食物繊維素材を製造する方法は、食品、化学、工業など様々な分野への応用のみならず、土壌改良資材等など農業分野への応用も可能である。
乳酸菌発酵食物繊維のペプトン及びビタミンC非吸着特性
各種栄養成分に対する発酵性食物繊維の吸着特性について解析を行った。
ここでは、栄養成分として、ペプトン及びアスコルビン酸ナトリウムに対する吸着特性について解析を行った。また、対照として、ブリリアントブルーFCF溶液も用いた。
図11(a)は、ブリリアントブルーFCFの分子構造を示す図である。また、図11(b)は、アスコルビン酸ナトリウムの分子構造を示す図である。
各種栄養成分に対する発酵性食物繊維の吸着特性について解析を行った。
ここでは、栄養成分として、ペプトン及びアスコルビン酸ナトリウムに対する吸着特性について解析を行った。また、対照として、ブリリアントブルーFCF溶液も用いた。
図11(a)は、ブリリアントブルーFCFの分子構造を示す図である。また、図11(b)は、アスコルビン酸ナトリウムの分子構造を示す図である。
まず、乾燥粉末を0.5gカラムに充填し、水溶性成分が溶出されなくなるまで過剰量の水でカラムを洗浄した。次に、洗浄済みカラムに5mg/mlペプトン溶液及び1mg/mlアスコルビン酸ナトリウム溶液をそれぞれ5mL流し、溶出されてくる溶液中のペプトン濃度をBradford法を用いて、アスコルビン酸ナトリウム濃度をHPLCにてそれぞれ測定した。なお、対照として、5mMのブリリアントブルーFCF溶液も同様に流し、比色法にて濃度を算出した。さらに、活性炭との吸着性を比較するために、0.5gの粉末活性炭を同様にカラムに充填し、上記3種の溶液を供試した。
HPLCの条件は以下の通りに行った。
カラム: CAPCELL PAK C18(MGII、5μm)
4.6mmI.D.×250mm
溶媒: 15%アセトニトリル(0.1%酢酸)
流速: 1ml/min
カラム温度: 40℃
検出: UV 240nm
カラム: CAPCELL PAK C18(MGII、5μm)
4.6mmI.D.×250mm
溶媒: 15%アセトニトリル(0.1%酢酸)
流速: 1ml/min
カラム温度: 40℃
検出: UV 240nm
図11(c)は、活性炭及び発酵食物繊維の、ブリリアントブルーFCF、ペプトン、アスコルビン酸ナトリウムの吸着特性を示すグラフである。を示す図である。ブリリアントブルーFCFの場合、カラム通過後の溶出液には、活性炭および発酵食物繊維の両者において、ほとんど検出されず、活性炭及び発酵食物繊維に吸着していることが明らかとなった。吸着除去率は、ほぼ100%であった。一方、カゼインのパンクレアチン分解物であるペプトンあるいは、アスコルビン酸ナトリウムでは、活性炭では、100%の除去率であるのに対して、発酵食物繊維では、ほとんど吸着されず、除去率は3から5%程度であった。
このように本発明方法で効率よく大豆を発酵させることにより、大豆食物繊維は、ブリリアントブルーFCFなどの有害物質の強固な吸着性を持つが、ペプトンのようなタンパク質分解物やアスコルビン酸ナトリウムなどのビタミン類のような栄養有効成分の吸着は認められない性質を持つことが明らかとなった。したがって、本発明に係る方法により作成された食物繊維素材は、人体に有害な物質を吸着し、有用な栄養成分を吸着しない特性を有するものと推察される。
101 浸積ステップ
102 粉砕ステップ
103 加熱殺菌ステップ
104 発酵ステップ
105 加熱殺菌ステップ
106 粉砕ステップ
107 乾燥ステップ
102 粉砕ステップ
103 加熱殺菌ステップ
104 発酵ステップ
105 加熱殺菌ステップ
106 粉砕ステップ
107 乾燥ステップ
Claims (12)
- 複数の乳酸菌を用いて、植物由来原料を発酵させるステップと、
発酵産物を乾燥させるステップと
を含む、物質吸着性を有する食物繊維素材を製造する方法。 - 前記乳酸菌は、Lactobacillus属に属する菌株であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記Lactobacillus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus brevis、Lactobacillus rhamnosusの少なくとも一以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記植物由来原料は、豆類では、大豆、あずき、えごま、いんげん豆、ごま、アーモンド、テンペ、ピスタチオ、グリーンピース及びおくらのいずれかに由来する原料、野菜では、しいたけ、ごぼう、ぶなしめじ、えのきたけ、西洋かぼちゃ、ブロッコリー、舞茸、ほうれん草、こんにゃく及びかんぴょうのいずれかに由来する原料、穀物では、小麦胚芽、ライ麦、押麦、アマランサス及び玄米のいずれかに由来する原料、果物では、柿、プルーン、バナナ、アボカド、オリーブ、バナナ、キウイ及びリンゴのいずれかに由来する原料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記発酵産物の繊維成分及び液体成分を分離させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 分散機を用いて、前記発酵産物を粉砕するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記発酵産物を乾燥させるステップは、前記発酵産物を凍結乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記発酵産物を乾燥させるステップは、前記発酵産物を噴霧乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記植物由来原料を発酵させるステップは、35℃から45℃で48時間から168時間行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法で得られる食物繊維素材を含むことを特徴とする、飲食物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法で得られる食物繊維素材を含むことを特徴とする、サプリメント。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の方法で得られる食物繊維素材を含むことを特徴とする、治療薬。
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