JP2010168468A - 重合開始基付き無機酸化物粒子並びにその製造方法、および該無機酸化物粒子を用いて得られる高分子修飾無機酸化物粒子並びにその製造方法 - Google Patents

重合開始基付き無機酸化物粒子並びにその製造方法、および該無機酸化物粒子を用いて得られる高分子修飾無機酸化物粒子並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】重合開始基付き無機酸化物粒子並びにその製造方法、および該無機酸化物粒子を用いて得られる高分子修飾無機酸化物粒子並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】無機酸化物粒子と重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより、該無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与してなる重合開始基付き無機酸化物粒子並びにその製造方法、および該無機酸化物粒子の表面を、重合性モノマーのリビングラジカル重合反応から得られる高分子化合物で修飾してなる高分子修飾無機酸化物粒子並びにその製造方法。なお、前記高分子修飾無機酸化物粒子は、疎水性に優れ、しかも有機溶媒への分散性が高いものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合開始基付き無機酸化物粒子および該粒子の製造方法に関するものである。さらに、本発明では、前記無機酸化物粒子を用いて得られる高分子修飾無機酸化物粒子および該粒子の製造方法を提供する。
金属酸化物粒子は、従来より顔料、紫外線吸収剤、充填剤などとして塗料、インク、樹脂組成物、化粧料などに配合して使用されている。しかし、このような無機酸化物粒子は、水との相溶性に乏しい有機溶媒中での分散性が低いため、粒子の凝集などが起こりやすいといった問題があった。
このような問題を解決する手段として、例えば特許文献1に記載されるように、金属酸化物粒子の表面をオルガノポリシロキサンで処理する方法やその他の有機ケイ素系化合物で処理する方法などが数多く提案されている。
一方、固体の表面特性を変化させる方法として、固体表面へのグラフト重合が試みられている。特許文献2には、固体表面に付与された重合開始基を介して高分子鎖をグラフト重合させたグラフト表面修飾固体が記載されている。
また特許文献3には、酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化セリウムの表面に導入された重合開始基を介して、重合性不飽和基を有する単量体を重合させてなる金属酸化物複合粉体およびこの粉体を含有した化粧料が記載されている。
さらに、非特許文献1には、有用な重合開始剤としてトリクロロメタンスルホニルクロリドを含むスルホニルクロリド化合物が開示されている。
特開2002−220540号公報 特開1999−263819号公報 特開2005−290036号公報
Chemical Reviews, 2001, Vol.101, No. 9, Page 2934
特許文献1に記載の表面処理方法は、無機酸化物粒子の疎水化技術として有用なものであるが、さらにその効果を高めることのできる新しい技術の開発が求められていた。また、特許文献2に記載のグラフト表面修飾固体は、固体表面で有機化合物のグラフト重合を行ったものであるが、これをさらに無機酸化物粒子表面へのグラフト重合へと発展させる必要があった。さらに、特許文献3に記載の化粧料は、酸化亜鉛、酸化チタンなどの表面に特定の重合開始剤を用いて重合開始基を導入しているが、これらの重合開始剤の種類や重合開始基の導入方法などについてさらに改良を加えて、その効果を高めることが求められていた。
また、特許文献2や特許文献3で用いられる重合性開始剤は、疎水基と親水基とを有するものである。一方、非特許文献1に重合性開始剤として記載されているスルホニルクロリド化合物などの重合開始剤は、親水基をもたないものであるが、その応用方法については特に記載されていない。
そこで、本発明者らは、鋭意研究を繰り返したところ、前記無機酸化物粒子と重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより、該無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与してなる重合開始基付き無機酸化物粒子を得ることができ、さらに該重合開始基付き無機酸化物粒子の表面を、重合性モノマーのリビングラジカル重合反応から得られる高分子化合物で修飾すれば、疎水性などに優れた高分子修飾無機酸化物粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子は、8m2/g以上の比表面積を有する無機酸化物粒子と、重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより、該無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与してなることを特徴としている。
前記無機酸化物粒子は、表面に水酸基を有するものであることが好ましい。
また、前記無機酸化物粒子の比表面積は、9〜300m2/gであることが好ましい。
前記無機酸化物粒子は、鉄、チタン、亜鉛、セリウム、ケイ素から選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子であることが好ましい。
また、前記無機酸化物粒子は、鉄、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子の表面をシリカで被覆したものであることが好ましい。
さらに、前記無機酸化物粒子は、鉄、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子の表面をアルミナで被覆したのち、さらにシリカで被覆したものであることが好ましい。
前記重合開始剤は、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基を末端に有するスルホニルクロリド化合物であることが好ましい。
また、前記スルホニルクロリド化合物は、トリクロロメタンスルホニルクロリド、トリブロモメタンスルホニルクロリド、トリクロロメチルフェニルスルホニルクロリド、トリブロモメチルフェニルスルホニルクロリドから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
前記分散液の分散媒は、非プロトン系有機溶媒であることが好ましい。
また、前記超音波の照射量は、100000〜2000000Jの範囲にあることが好ましい。
さらに、前記重合開始基は、−SO2Clで表されるクロロスルホニル基であることが好ましい。
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法は、無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与して、重合開始基付き無機酸化物粒子を製造する方法であって、
(1)非プロトン系有機溶媒に前記無機酸化物粒子および重合開始剤を分散させる工程、
(2)前記工程(1)で得られた分散液に超音波を照射する工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散液を濾過して固形分を分離する工程、
(4)前記工程(3)で得られた固形分を乾燥する工程
を含むことを特徴としている。
前記無機酸化物粒子は、粒子表面に水酸基を有し、かつその比表面積が8m2/g以上のものであることが好ましい。
また、前記工程(1)で使用される重合開始剤は、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基を末端に有するスルホニルクロリド化合物であることが好ましい。
さらに、前記工程(2)での超音波照射は、周波数が16〜200kHz、出力が50〜600Wの超音波を用いて10〜90分かけて行うことが好ましい。
本発明に係る高分子修飾無機酸化物粒子は、上記のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子の表面を、重合性モノマーのリビングラジカル重合反応から得られる高分子化合物で修飾してなることを特徴としている。
前記重合性モノマーは、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法は、
(1)減圧乾燥させた撹拌機付き反応器内を不活性ガスで置換する工程、
(2)前記重合開始基付き無機酸化物粒子と、ビピリジルおよび/またはビピリジル誘導体とを前記反応器内に導入する工程、
(3)前記反応器内に不活性ガスを導入して、該反応器内を不活性ガスの雰囲気下に保持する工程、
(4)前記反応器内に非プロトン系有機溶媒を導入する工程、
(5)前記反応器内に重合性モノマーを撹拌しながら導入する工程、
(6)前記反応器内の混合液を室温にて0.5〜2時間、撹拌する工程、
(7)前記反応器内に塩化銅を導入する工程、
(8)前記反応器内の混合液を60〜80℃の温度に加熱して1〜48時間撹拌することにより、前記重合性モノマーのリビングラジカル重合反応を行って得られる高分子化合物で前記無機酸化物粒子の表面を修飾する工程、
(9)前記反応器内に水を撹拌しながら導入し、さらに0.5〜1時間撹拌して、前記リビングラジカル重合反応を停止させる工程、
(10)前記反応器内にアンモニア水と必要に応じて水を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する工程、
(11)前記反応器内に陽イオン交換樹脂を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する工程、および
(12)前記陽イオン交換樹脂を分離・除去した後、固形分を乾燥させる工程
を含むことを特徴としている。
前記不活性ガスは、窒素ガスであることが好ましい。
また、前記非プロトン系有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、キシレン、トルエン、ベンゼンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、前記重合性モノマーは、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子は、無機酸化物粒子と重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより、該無機酸化物粒子の表面に重合開始基が付与されているので、該重合開始基に高分子化合物を修飾させて得られた高分子修飾無機酸化物粒子は、水との相溶性に乏しい有機溶媒中での分散性が高く、粒子の凝集が起こりにくいという特性を備えている。
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法では、超音波の照射により疎水性基のみからなる重合開始剤、特にハロゲン化メチル基を有する重合開始剤に含まれる重合開始基を粒子表面に直接付与することができる。さらに、超音波の照射条件などによっても異なるが、重合開始剤自体の分解を低く抑えることができる。これにより、従来技術と比べて重合開始剤と無機酸化物粒子との反応で生じる副生成物が少なくてすむので、高分子修飾無機酸化物粒子を調製する際の重合反応を阻害する要因が少なくなり、結果として製品収率を高めることができる。さらに、前記無機酸化物粒子の表面を修飾する高分子化合物の重合度の制御が容易となるので、所望の特性をもつ製品の収率を高めることができる。従って、所望する高分子修飾無機酸化物粒子を効率よく調製することができる。
実施例5で調製された重合開始基付き黄酸化鉄粒子を、フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて測定して得られたFT−IRスペクトルの結果を示すチャートである。 参考として、重合開始基を付与する前の黄酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルも併せて示した。 実施例4で調製されたシリカ被覆黄酸化鉄粒子を、走査型電子顕微鏡で撮った倍率300000倍の写真(SEM写真)である。 実施例4で調製された高分子修飾黄酸化鉄粒子を、走査型電子顕微鏡で撮った倍率300000倍の写真(SEM写真)である。
以下、本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子並びにその製造方法、および該無機酸化物粒子を用いて得られた高分子化合物修飾無機化合物粒子並びにその製造方法について具体的に説明する。
[重合開始基付き無機酸化物粒子]
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子は、無機酸化物粒子と重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより、該無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与してなるものである。
無機酸化物粒子
前記無機酸化物粒子としては、特に制限されるものではないが、粒子表面に水酸基を有するものであることが好ましい。これは、後述する超音波処理によって重合開始基付き無機酸化物粒子を調製する際に、粒子表面に存在する水酸基と重合開始剤とが反応して、該粒子の表面に重合開始基が付与されるものと考えられるからである。よって、前記無機酸化物粒子の表面に存在する水酸基の量は、多ければ多いほどよいと考えられる。しかし、現時点では、粒子表面に存在する水酸基の量を正確に定量することが難しいので、ここでは、上記の反応を起こすに足りる水酸基の下限値を規定することはできない。
さらに、前記無機酸化物粒子について具体的に述べれば、鉄、チタン、亜鉛、セリウム、シリカから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子であることが好ましい。このような金属酸化物粒子としては、市販されているものをそのまま用いてもよく、また公知の方法で製造したものを用いてもよい。例えば、鉄としては市販の赤酸化鉄(Fe23、ベンガラ)、黄酸化鉄(FeO(OH))、黒酸化鉄(Fe34)などを挙げることができる。この中でも、赤酸化鉄や黄酸化鉄は、その表面に水酸基が多いため、上記の反応(すなわち、水酸基と重合開始剤との反応)が起こりやすい。
前記無機酸化物粒子、例えば鉄、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子の表面は、シリカで被覆されていることが好ましい。これは、粒子表面に被覆されたシリカの表面には、上記の水酸基が数多く存在しているからである。さらに、このシリカ被覆により、後述する方法で調製された高分子修飾無機酸化物粒子を水との相溶性に乏しい有機溶媒中に分散させた場合、分散液の透明感を高めることができる。
また、前記無機酸化物粒子の表面をシリカで被覆する方法としては、無機酸化物粒子の表面に均一にシリカを被覆できるものであれば特に制限されるものではないが、例えば該無機酸化物粒子を含む水分散液にケイ酸水溶液とアンモニア水を同時に添加したのち、ケイ酸の脱水・縮重合反応を起こさせる方法などがある。さらに、アンモニアの存在下で有機ケイ素化合物を加水分解させてもよい。
このようなシリカ被覆無機酸化物粒子としては、市販のものをそのまま使用してもよく、例えば日揮触媒化成(株)製のシンフォライトRW、シンフォライトWW、コンチェライト(共に、登録商標)などが挙げられる。
前記無機酸化物粒子の平均粒子径は、10nm〜10μm、好ましくは100nm〜5μmの範囲にあることが好ましい。ここで、前記平均粒子径が10nm未満であると、粒子の飛散力が高まって取扱いが難しくなるので、好ましくない。また、前記平均粒子径が10μmを超えると、自然沈降力が高まって溶媒中に均一に分散させることが難しくなるので、好ましくない。なお、これらの無機酸化物粒子は、サンプルミル、サンドミル、ジェットミル、ジューサーミキサー、ヤリヤ粉砕機などを用いて粉砕して適当な大きさの粒子に調節したものであってもよい。
前記無機酸化物粒子の形状は、特に制限されずに用途や効果に応じて針状、球状、棒状、板状などの形状のものから選択して用いることができる。なお、前記平均粒子径については、その形状によって個別の測定条件(例えば、(長手方向の長さ+短手方向の長さ)/2など)が示される場合があるが、本発明においては、後述する「測定方法および評価方法」のところに記載されたレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置または遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて測定された値を意味する。
前記無機酸化物粒子の比表面積は、8m2/g以上、好ましくは9〜300m2/g、さらに好ましくは10〜40m2/gであることが望ましい。ここで、前記比表面積が8m2/g未満であると、無機酸化物粒子の表面に水酸基が少ない場合には、該粒子表面に重合開始基を充分に付与できないことがあるので、好ましくない。また、前記無機酸化物粒子の比表面積が300m2/gを超えると、該無機酸化物粒子の機械的強度が低下するため、以下で述べる重合開始基付き無機酸化物粒子の解砕時などに崩壊してしまうことがあるので、好ましくない。しかし、このような問題が回避できる場合には、比表面積が300m2/gを超えるものを使用してもよい。
また、前記無機酸化物粒子の比表面積が8m2/g未満で、粒子表面に重合性開始基を所望量導入できない場合には、該無機酸化物粒子、例えば鉄、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子の表面にアルミナ被覆処理を施して比表面積を増加させ、さらにその上からシリカ被覆処理を行って粒子表面に存在する水酸基の量を多くしてやることが好ましい。
前記のアルミナ被覆処理は、例えば硫酸アルミニウムをアルカリ性のpH条件下で前記無機酸化物粒子を含む水分散液に加えるか、またはアルミン酸アンモニウムを中性のpH条件下で前記無機酸化物粒子を含む水分散液に加えるなどの方法により行うことができる。また、前記のシリカ被覆処理は、上記と同様な方法を採用することができる。
重合開始剤
前記重合開始剤は、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基を末端に有し、もう一方の末端に重合開始基を有する構造のものであれば特に制限なく使用することができる。しかし、このような重合開始剤としては、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基を末端に有するスルホニルクロリド化合物を使用することが好ましい。ここで、スルホニルクロリド化合物とは、−SO2Clで表されるクロロスルホニル基を末端に有する有機化合物を意味する。
前記アルキル基に置換される塩素または臭素の数は、1個以上であればよい。また、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基とクロロスルホニル基との間には、芳香族炭化水素や脂環式炭化水素などの環式有機化合物またはアルキル基やアミノ基などの任意の有機基が存在していてもよい。このような化合物の構造を模式的に示せば、一般式X−CYZ−(A)−(B)−SO2Clで表わされる。ここで、Xはハロゲン、具体的にはClまたはBrである。また、Cは炭素であり、YおよびZは塩素、臭素または水素である。さらに、AおよびBは任意の有機基であって、例えばアルキル基やベンゼン環などの不飽和炭化水素基である。ただし、AおよびBは、必ずしも含まれていなくともよい。−SO2Clであらわされるクロロスルホニル基は、本発明でいう重合開始基の一つである。
前記重合開始剤としてのスルホニルクロリド化合物のうち、現在、市場から入手可能なものは、トリクロロメタンスルホニルクロリド、トリブロモメタンスルホニルクロリド、トリクロロメチルフェニルスルホニルクロリドなどがある。この中でも、トリクロロメタンスルホニルクロリドを使用することが好ましい。なお、このトリクロロメタンスルホニルクロリドは、Sigma−Aldrich社、MP Biomedicals社、ICN Biomedicals社、ABCR GmbH&Co社、東京化成工業(株)などから入手可能である。
分散液
前記分散液の分散媒は、非プロトン系有機溶媒であることが好ましい。その理由としては、分散媒液に超音波を照射したときに副生されるラジカル種を失活させる機能を有しているからである。また、本発明で使用される前記非プロトン性有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。この中でも、テトラヒドロフランを使用することが好ましい。
重合開始基付き無機酸化物粒子
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子は、前記無機酸化物粒子と前記重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより調製される。
前記重合開始剤は、通常、無機酸化物粒子とは反応しないものである。しかし、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、前記分散液中に超音波を照射すると、前記重合開始剤と無機酸化物粒子(特に、その表面に存在する水酸基)とが反応して、前記無機酸化物粒子の表面に重合開始基が付与されることを見出した。
このように重合開始基を粒子表面に付与できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、スルホニルクロリド化合物などの前記重合開始剤に含まれるX−C結合が超音波の照射により切断され、残された−CYZ−(A)−(B)−SO2Clの左端の−CYZ基が無機酸化物粒子の表面に存在するOH基と反応して化学結合することにより、重合開始基であるクロロスルホニル基が無機酸化物粒子の表面に導入されるものと考えられる。
前記超音波の照射量は、100000〜2000000J、好ましくは150000〜1500000Jの範囲にあることが望ましい。ここで、前記照射量が100000J未満であると、重合開始剤と無機酸化物粒子との反応性が低下して該無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与できないか、或いは充分な量を付与できないことがあるので、好ましくない。また、前記照射量が2000000Jを超えると、重合開始剤の分解が起こって無機酸化物粒子に充分な量の重合開始基を付与できないことがあるので、好ましくない。なお、ここで超音波の照射量(J)とは、超音波の出力(W)と照射時間(S)との積(J=WxS)で表される。また、前記照射時間(S)の単位は秒である。
このようにして得られる無機酸化物粒子は、その表面に重合開始基を有しており、これをフーリエ変換型赤外分光光度計を用いてKBr錠剤法(ここでは、KBr:サンプル=100:1の比で混合して作成したペレットを使用)により測定して得られたスペクトルを示せば、図1の通りである。ここで、横軸に示す波数1000〜1300cm-1の付近に現れているピークが前記無機酸化物粒子の表面に導入(付与)された重合開始基、すなわちクロロスルホニル基を示している。
[重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法]
本発明に係る重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法は、前記無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与して、重合開始基付き無機酸化物粒子を製造する方法であって、
(1)非プロトン系有機溶媒に前記無機酸化物粒子および重合開始剤を分散させる工程、(2)前記工程(1)で得られた分散液に超音波を照射する工程、
(3)前記工程(2)で得られた分散液を濾過して固形分を分離する工程、
(4)前記工程(3)で得られた固形分を乾燥する工程
を含むものである。
次に、この製造方法の各工程について具体的に説明すれば、以下の通りである。
工程(1)
この工程では、非プロトン系有機溶媒に無機酸化物粒子および重合開始剤を混合して分散させる。ここで、前記重合開始剤は、混合液を十分に撹拌して前記有機溶媒に溶解させることが望ましい。このように、前記重合開始剤が有機溶媒に溶解するのであれば、前記無機酸化物粒子と前記重合開始剤とを混合させる順序はどちらが先でもよく、また同時でもよい。
前記重合開始剤は、前記無機酸化物粒子の全重量に対して50〜250重量%、好ましくは80〜220重量%の範囲となるように混合することが好ましい。ここで、前記重合開始剤の混合量が50重量%未満であると、無機酸化物粒子の表面に所望量の重合開始基を導入することが難しくなるので、好ましくない。また、前記重合開始剤の混合量が250重量%を超えると、重合開始剤の分解反応が進むことになるので、好ましくない。
工程(2)
この工程では、前記工程(1)で調製された分散液に超音波を照射する。
前記超音波の照射は、先にも述べたように、100000〜2000000J、好ましくは150000〜1500000Jとなるように行うことが望ましい。
さらに具体的に述べれば、前記超音波の周波数は、16〜200kHzの範囲にあることが好ましい。なお、ここでいう超音波の周波数とは、超音波照射に用いる装置において設定することのできる周波数を意味する。すなわち、一般に市販の超音波発振機では、出力に比例して複数の周波数の超音波が発振されているが、発振される超音波の全ての周波数のうち最も多く発振される周波数の値を意味する。
本発明において、前記重合開始剤のC−Cl結合を開裂させることのできる超音波の周波数は、C−Cl結合の振動、例えば伸縮振動などと共振する周波数であると推察されるが、通常の超音波発振機は複数の周波数の超音波を同時に発振するため、超音波照射に用いる装置においては上記のような幅を持った周波数が設定される。
また、前記超音波の照射出力は、50〜600W、好ましくは100〜600Wの範囲にあることが望ましい。ここで、前記照射出力が50W未満であると、前記無機酸化物粒子表面と重合開始剤との反応性が低下し、所望量の重合開始基を付与できない場合があるので、好ましくない。また、前記照射出力が600Wを超えると、重合開始剤分解等の副反応進行が加速されるため、好ましくない。
さらに、前記超音波の照射時間は、10〜90分間、好ましくは10〜70分間の範囲にあることが望ましい。ここで、前記照射時間が10分間未満であると、前記無機酸化物粒子の表面に所望量の重合開始基を付与することができない場合があるので、好ましくない。また、前記照射時間が90分間を超えると、前記重合性開始剤が分解して前記無機酸化物粒子の表面に所望量の重合開始基を付与できなくなることがあるので、好ましくない。
本発明においては、超音波を均一に前記分散液中に含まれる無機酸化物粒子と重合開始剤に照射することができるように、前記無機酸化物粒子の含有量を該分散液の全重量に対して1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲に調整したのち超音波を照射することが望ましい。ここで、前記含有量が1重量%未満であると、単位操作時間あたりの製品収率が低下することになるので、好ましくない。また、前記含有量が10重量%を超えると、前記分散液中に含まれる無機酸化物粒子と重合開始剤との反応性が低下して、所望量の重合開始基を前記無機酸化物粒子の表面に付与することができないことがあるので、好ましくない。
また、前記超音波を照射する際には、前記分散液を10〜30℃、好ましくは15〜25℃の温度に調整し、この温度に保持しておくことが好ましい。ここで、前記温度が10℃未満であると、前記無機酸化物粒子の表面に存在する水酸基と前記重合開始剤との間で起こる反応の速度が著しく低下したり、作業効率や生産効率を低下させることがあるので、好ましくない。また、前記温度が30℃を超えると、重合開始剤の分解反応が促進されることになるので、好ましくない。
前記超音波照射装置としては、市販の超音波発信装置、超音波発信器、循環式超音波照射機、超音波振動子、超音波洗浄器などがあり、これらのものから適宜選択して用いることができる。また、前記分散液に超音波を照射する方法は、前記分散液に均一に超音波を照射できるものであれば特に制限なく、従来公知の方法を採用することができる。
工程(3)
この工程では、前記工程(2)で得られた重合開始基付き無機酸化物粒子を含む分散液を濾過して固形分を分離する。
前記重合開始基付き無機酸化物粒子からなる固形分の分離は、ブフナー漏斗、フィルタープレス、水平ベルトフィルター、シンクロフィルター、プリコートフィルター、ドラムフィルター、ベルトフィルター、トレイフィルターなどの市販の濾過装置を用いて行うことができる。また、その分離方法も、従来公知の方法を採用することができるが、減圧濾過方式で行うことが好ましい。
また、このようにして得られる前記重合開始基付き無機酸化物粒子のケーキ状物質は、テトラヒドロフランなどの有機溶媒を用いて、十分に洗浄しておくことが好ましい。
工程(4)
次いで、前記ケーキ状物質は、常圧または減圧にて、室温〜60℃、好ましくは室温〜40℃の温度で0.5〜3時間、好ましくは0.5〜1時間かけて乾燥することが好ましい。ここで、前記乾燥温度が室温未満であると、前記ケーキ状物質を短時間で十分に乾燥することができず、また前記乾燥温度が60℃を超えると、粒子表面に付与された重合開始基が分解することがあるので、好ましくない。なお、前記重合開始基付き無機酸化物粒子のケーキ状物質の乾燥を比較的低い温度で、しかも短時間で行うためには、減圧乾燥方式で行うことが好ましい。
また、このようにして得られる重合開始基付き無機酸化物粒子の乾燥粉体(粒子群)は、必要に応じてサンプルミル、ジェットミル、ジューサーミキサー、ヤリヤ粉砕機などの粉砕装置や解砕装置にかけて凝集物や塊状になったものなどを予め解砕しておくことが望ましい。
[高分子修飾無機酸化物粒子]
本発明に係る高分子修飾無機酸化物粒子は、上記の重合開始基付き無機酸化物粒子の表面を、重合性モノマーのリビングラジカル重合反応から得られる高分子化合物で修飾してなるものである。
前記重合性モノマーとしては、リビングラジカル重合反応を起こすことのできる従来公知のモノマーを使用することができる。しかし、本発明においては、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
前記リビングラジカル重合反応とは、連鎖移動反応や停止反応などポリマーの末端を失活させる副反応を伴わない反応である。このため、長さのそろったポリマーが得られ、またそのポリマーの末端に再度ポリマーを修飾することが可能であり、重合度が制御しやすい、シャープな分子量分布が得られるといった点で高機能性や高制御性の面で期待されている重合反応である。
これにより、本発明では、重合開始基付き無機酸化物粒子の表面に長さの揃った高分子鎖を有するポリマー(高分子化合物)を反応させてなる、高い疎水性を有し、しかも有機溶媒への分散性に優れた高分子修飾無機酸化物粒子が得られる。
[高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法]
本発明に係る高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法は、
(1)減圧乾燥させた撹拌機付き反応器内を不活性ガスで置換する工程、
(2)前記重合開始基付き無機酸化物粒子と、ビピリジルおよび/またはビピリジル誘導体とを前記反応器内に導入する工程、
(3)前記反応器内に不活性ガスを導入して、該反応器内を不活性ガスの雰囲気下に保持する工程、
(4)前記反応器内に非プロトン系有機溶媒を導入する工程、
(5)前記反応器内に重合性モノマーを撹拌しながら導入する工程、
(6)前記反応器内の混合液を室温にて0.5〜2時間、撹拌する工程、
(7)前記反応器内に塩化銅を導入する工程、
(8)前記反応器内の混合液を60〜80℃の温度に加熱して1〜48時間撹拌することにより、前記重合性モノマーのリビングラジカル重合反応を行って得られる高分子化合物で前記無機酸化物粒子の表面を修飾する工程、
(9)前記反応器内に水を撹拌しながら導入し、さらに0.5〜1時間撹拌して、前記リビングラジカル重合反応を停止させる工程、
(10)前記反応器内にアンモニア水と必要に応じて水を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する工程、
(11)前記反応器内に陽イオン交換樹脂を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する工程、および
(12)前記陽イオン交換樹脂を分離・除去した後、固形分を乾燥させる工程
を含むものである。
前記不活性ガスとしては、窒素ガス、へリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、この中でも窒素ガスを使用することが好ましい。
また、前記非プロトン系有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、キシレン、トルエン、ベンゼンから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。
さらに、前記重合性モノマーは、先にも述べたように、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。
ただし、前記の製造方法は、本発明に係る高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法の一態様を示すものであるので、本発明はここに示す製造方法に限定されるものではない。
次に、前記の製造方法の各工程について具体的に説明すれば、以下の通りである。
工程(1)
この工程では、減圧乾燥させた撹拌機付き反応器内を不活性ガスで置換する。
これにより、後段のリビングラジカル重合反応に影響を及ぼす水分、酸素、二酸化炭素などを反応器外に排出させることができる。
前記撹拌機としては、撹拌子、撹拌バー、撹拌羽根などを使用することができ、均一な撹拌を行うには撹拌羽根を用いることが好ましい。
また、前記不活性ガスは、ラジカルを安定化する性質を持たないガスであり、かつ重合開始剤や無機酸化物粒子と反応しないガスであることが好ましい。具体的には、先にも述べたように、酸素および二酸化炭素を含まない不活性ガスであって、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられる。この中でも、窒素ガスを用いることが好ましい。
工程(2)
この工程では、前記重合開始基付き無機酸化物粒子と、ビピリジルおよび/またはビピリジル誘導体とを前記反応器内に導入する。
前記ビピリジルおよび/またはビピリジル誘導体は、後段で反応器内に触媒として導入される銅成分の配位子として働くものであり、反応系で発生するラジカル分子と銅成分から形成される錯体を安定化させるために必要となる。
また、前記ビピリジルおよび/またはビピリジル誘導体(A)は、後述する塩化銅(B)に対するモル比(A/B)が5/10〜25/10となるように導入することが好ましい。ここで、前記モル比が5/10未満であると、前記錯体を安定化させることが難しくなり、また前記モル比が25/10を超えると、過剰に存在するビピリジルまたはその誘導体がリビングラジカル反応を阻害する原因となることがあるので、好ましくない。
工程(3)
この工程では、前記反応器内に不活性ガスを導入して、該反応器内を不活性ガスの雰囲気下に保持する。
これにより、前記工程(2)の操作中に、反応器内に混入した水分、酸素、二酸化炭素などを反応器外に排出して、系内を不活性ガスの雰囲気とする。
前記不活性ガスとしては、上記のものを使用することができ、前記工程(1)で使用した不活性ガスと同じ種類のものを使用することが好ましい。
工程(4)
この工程では、前記反応器内に非プロトン系有機溶媒を導入する。
前記非プロトン系有機溶媒としては、溶解力が高く、しかも発生したラジカル分子の失活を抑制する性質を持つものを使用することが好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。この中でも、テトラヒドロフランを用いることが好ましい。
また、前記非プロトン系有機溶媒の導入量は、前記重合開始基付き無機酸化物粒子と後述する重合性モノマーとを該有機溶媒中によく分散させることができれば特に制限されるものではないが、前記有機溶媒に対して前記重合開始基付き無機酸化物粒子が1〜10重量%の範囲となるような量を反応器内に導入することが好ましい。
工程(5)
この工程では、前記反応器内に重合性モノマーを撹拌しながら導入する。
前記重合性モノマーとしては、リビングラジカル重合反応を行うことのできる重合性モノマーであれば特に制限なく使用することができるが、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
ここで、(メタ)アクリル系モノマーとは、分子内に(共)重合性二重結合を1つだけもつアクリル系モノマー又はメタアクリル系モノマーをいう。なお、この(メタ)アクリル系モノマーには、水酸基、カルボキシル基等の官能基を持つものと、これらの官能基を持たないものがあるが、本発明においては特に制限なく使用することができる。
前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコールエステル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸メチルフェニル等の(メタ)アクリル酸のアリールエステル類;イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどを用いることが好ましい。
また、スチレン系モノマーとは、分子内にスチレン骨格を1つモノマーをいう。なお、このスチレン系モノマーには、水酸基、カルボキシル基等の官能基を持つものと、これらの官能基を持たないものがあるが、本発明においては特に制限なく使用することができる。
前記スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロスチレン系モノマー;メチルスチレン、エチルスチレンなどのアルキルスチレン系モノマー;水酸基、カルボキシル基、エステル基やアミノ基を代表する官能基含有スチレン系モノマーなどのスチレン系単量体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン、4―メチルスチレン、4−クロロスチレンなどを用いることが好ましい。
さらに、γ―グリシドオキシ系モノマーとは、分子内にγ―グリシドオキシ(一般にはエポキシ基と呼ばれている)骨格を1つもつモノマーをいう。さらに、このγ―グリシドオキシ系モノマーにも官能基をもつものともたないものがあるが、本発明においては特に制限なく使用することができる。
前記γ―グリシドオキシ系モノマーとしては、例えばγ―グリシドオキシメチル、γ―グリシドオキシエチル、γ―グリシドオキシプロピル、γ―グリシドオキシブチル、γ―グリシドオキシペンチル、γ―グリシドオキシヘキシル、γ―グリシドオキシシクロヘキシル、γ―グリシドオキシヘプチル、γ―グリシドオキシオクチル、γ―グリシドオキシノニル、γ―グリシドオキシドデシル等のγ―グリシドオキシのアルキル類;γ―グリシドオキシフェニル、γ―グリシドオキシメチルフェニル、γ―グリシドオキシベンジル、γ―グリシドオキシフェニルエチル、γ―グリシドオキシフェノキシエチル等のγ―グリシドオキシのアリールおよびアリールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、1−メトキシ―2―メチルプロピレンオキシド、スチレンオキシドなどを用いることが好ましい。
また、前記重合性モノマーは、その種類や所望する高分子修飾量(前記無機酸化物粒子の表面に付与された重合開始基の量などに依存)などによっても異なるが、前記重合開始基付き無機酸化物粒子に対して50〜200重量%となるように反応器内に導入することが好ましい。ここで、前記重合性モノマーの導入量が50重量%未満であると、前記無機酸化物粒子の表面への高分子修飾が不十分となり、また前記導入量が200重量%を超えると、未反応の重合性モノマーが残存しそれを除去する工程が必要となる等、生産効率の低下や生産コストの増加を招くことになるので、好ましくない。
工程(6)
この工程では、前記反応器内の混合液を室温にて0.5〜2時間、撹拌する。
これにより、前記重合性モノマーおよび前記重合開始基付き無機酸化物粒子を前記非プロトン系有機溶媒中によく分散させることができる。
また、前記撹拌は、前記重合性モノマーと前記重合開始基付き無機酸化物粒子とを前記非プロトン系有機溶媒中によく分散させることができれば特に制限されるものではないが、0.5〜2時間かけて行うことが好ましい。さらに、この撹拌時間は、前記重合性モノマーや前記重合開始基付き無機酸化物粒子の仕込量などによって適時調整することが望ましい。
なお、この工程では、前記不活性ガスを反応器内に流しながら混合液の撹拌を行うことが好ましい。
工程(7)
この工程では、前記反応器内に塩化銅を導入する。
この工程で導入される塩化銅は、リビングラジカル重合反応の触媒として機能するものある。
また、前記塩化銅は、前記重合性モノマーの仕込量や所望する高分子修飾量(前記無機酸化物粒子の表面に付与された重合開始基の量などに依存)などによっても異なるが、前記重合開始基付き無機酸化物粒子に対して1〜15重量%となるように反応器内に導入することが好ましい。ここで、前記塩化銅の導入量が1重量%未満であると、前記無機酸化物粒子の表面での重合反応を均一に行うことが難しくなり、また前記導入量が15重量%を超えると、過剰に存在する塩化銅がリビングラジカル反応を阻害させたり、場合によっては停止させたりすることあるので、好ましくない。
なお、前記塩化銅を反応器内に導入すると、その時から前記重合性モノマーのリビングラジカル重合反応が開始され、混合液の色が変化する。
工程(8)
この工程では、前記反応器内の混合液を60〜80℃の温度に加熱して1〜48時間撹拌することにより、前記重合性モノマーのリビングラジカル重合反応を行って得られる高分子化合物で前記無機酸化物粒子の表面を修飾する。
前記混合液の加熱は、前記重合性モノマーのリビングラジカル重合反応を起こさせることができ、しかも使用する非プロトン系有機溶媒の沸点より低い温度であれば特に制限されるものではないが、60〜80℃の温度で行うことが好ましい。ここで、前記温度が60℃未満であると、前記リビングラジカル重合反応を効率よく起こさせることが難しくなり、また前記温度が80℃を超えると、前記非プロトン系有機溶媒が蒸発し易くなるばかりでなく、前記重合反応が過剰に進んで反応を制御することが困難となる場合があるので、好ましくない。また、前記撹拌は、前記重合性モノマーの仕込量や所望する高分子修飾量(前記無機酸化物粒子の表面に付与された重合開始基の量などに依存)などによっても異なるが、1〜48時間かけて行うことが好ましい。
工程(9)
この工程では、前記反応器内に水を撹拌しながら導入し、さらに0.5〜1時間撹拌して、前記リビングラジカル重合反応を停止させる。
前記水としては、イオン交換処理して得られる純水を用いることが好ましい。さらに、前記水を導入する前に、前記反応器内の温度を室温近くまで冷ましておくことが好ましい。
また、前記水は、前記のリビングラジカル重合反応を完全に停止させることができる量であれば特に制限されるものではないが、反応器内に導入された非プロトン系有機溶媒に対して50〜100重量%となるように反応器内に導入することが好ましい。
さらに、本発明においては、前記水を導入した混合液を、室温で0.5〜1時間撹拌したのち静置してその上澄み液を系外に排出する作業(所謂、デカンテーション作業)を行っておくことが好ましい。これにより、混合液中に含まれる銅イオンの一部を予め除去することができる。
工程(10)
この工程では、前記反応器内にアンモニア水と必要に応じて水を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する。
これにより、前記混合液中に含まれる銅成分をアンモニア錯体として溶媒中に溶解させて除去することができる。
また、前記アンモニア水は、その濃度や混合液中に含まれる銅成分の量によっても異なるが、アンモニア濃度が15重量%のアンモニア水を使用する場合には、混合液中に導入された塩化銅に対してモル比(NH4/CuCl)が1/1〜40/1の範囲となるように反応器内に導入することが好ましい。また、必要に応じて加えられる前記水は、使用されるアンモニア水の濃度などによっても異なるが、前記銅成分をイオン化させることのできる量があればよい。
さらに、本発明においては、前記アンモニア水を導入した混合液を、室温で0.5〜1時間撹拌したのち静置してその上澄み液を系外に排出する作業(所謂、デカンテーション作業)を行うことが好ましい。これにより、混合液中に含まれる銅イオンの殆どを除去することができる。なお、この工程における操作は、複数回、繰り返して行ってもよい。
工程(11)
この工程では、前記反応器内に陽イオン交換樹脂を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する。
これにより、前記工程(10)で除去しきれなかった銅イオンを陽イオン交換樹脂に吸着させて除去することができる。
また、前記陽イオン交換樹脂は、混合液中に残存している銅イオンを十分に吸着できる量であれば特に制限されるものではないが、混合液中の導電率を測定してそれから算出される量より少し多い量を反応器内に導入することが好ましい。
さらに、本発明においては、前記陽イオン交換樹脂を加えた混合液を、室温で0.5〜1時間撹拌したのち静置してその上澄み液を系外に排出する作業(所謂、デカンテーション作業)を行うことが好ましい。これにより、混合液中に残存する銅イオンを完全またはほぼ完全に除去することができる。
工程(12)
この工程では、前記陽イオン交換樹脂を分離・除去した後、固形分を乾燥させる。
さらに具体的に述べれば、以下の通りである。
先ず、前記工程(11)で得られた混合液を、目開き20μmのステンレス篩にかけて前記前記陽イオン交換樹脂を分離・除去する。次いで、ブフナー漏斗などを用いた公知の方法で減圧濾過したのち、テトラヒドロフランなどの有機溶媒を用いて洗浄する。
次に、得られたケーキ状物質を公知の方法で減圧乾燥させて、高分子修飾無機酸化物粒子の乾燥粉体とする。さらに、必要に応じて乾燥時に生じた粒子同士の凝集を解すため、サンプルミルなどの粉砕装置を用いた公知の方法で前記乾燥粉体の凝集物を解砕する。
これにより、本発明に係る高分子修飾無機酸化物粒子が得られる。
[測定方法および評価方法]
本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価方法を以下に示す。
(1)平均粒子径の測定方法
(a)平均粒子径の測定法A(水分散系で測定する方法)
前記無機酸化物粒子を純水中に分散させたスラリー液(固形分濃度1.0重量%)を調製し、これに超音波発生装置(iuchi社製、US−2型)を用いて5分間、超音波を照射して前記粒子をよく分散させる。次いで、得られた分散液を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA―300)にかけて前記粒子の粒子径分布を測定して、体積基準の積算分布が50%となる粒子径の値を平均粒子径(所謂、メディアン径)とする。
(b)平均粒子径の測定法B(有機溶媒分散系で測定する方法)
前記無機酸化物粒子、前記重合開始基付き無機酸化物粒子または前記高分子修飾無機酸化物粒子を水添ポリイソブテン(日油(株)製パールリーム4(登録商標))中に分散させたスラリー液(固形分濃度1.0重量%)を調製し、これに超音波粉砕機装置((株)カイジョー製TA-5287型超音波破壊装置)を用いて5分間、超音波を照射して、前記粒子をよく分散させる。次いで、得られた分散液を、遠心沈降式粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA-700)にかけて前記粒子の粒子径分布を測定して、体積基準の積算分布が50%となる粒子径の値を平均粒子径(所謂、メディアン径)とする。
(2)比表面積の測定方法
前記無機酸化物粒子の粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、105℃の温度で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス製、マルチソーブ12型)を用いて窒素吸着法(ここでは、BET1点法を採用)により、サンプルの比表面積を算出する。
(3)フーリエ変換型赤外分光スペクトル(FT−IRスペクトル)の測定方法
JIS規格に示されるKBr錠剤法に基づき、KBr0.7gと室温で3時間減圧乾燥させた重合開始基付き無機酸化物粒子の試料0.007gとを混合した粉体(KBr:試料=100:1の混合比)をメノウの乳鉢で10分間粉砕したのち、これを圧縮してペレットを作成する。次いで、得られたペレットを、測定系内を窒素ガスで置換したフーリエ変換型赤外分光装置(日本電子製、JIR−5500)にかけてFT−IRスペクトルを測定する。
(4)分散性の評価方法
前記高分子修飾無機酸化物粒子の分散性評価は、水との相溶性に乏しい有機溶媒である水添ポリイソブテン中に分散させた高分子修飾無機酸化物粒子の平均粒子径(所謂、メディアン径)で評価する。なお、この平均粒子径は、上記(1)−(b)に示す測定方法に基づき測定する。ここで、高分子修飾前の重合開始基付き無機酸化物粒子の平均粒子径(所謂、メディアン径)より、高分子修飾後の高分子修飾無機酸化物粒子の平均粒子径(所謂、メディアン径)が小さくなっていればいるほど、前記高分子修飾無機酸化物粒子の有機溶媒中における分散性が高まっていることを意味する。また、前記無機酸化物粒子の表面に重合開始基が高密度に付与されているほど、前記粒子表面上への高分子化合物の修飾が高密度で均一に行われるため、個々の粒子が凝集することなく最初に使用した無機酸化物粒子の粒子径に近い値で疎水化され有機溶媒中での分散性が向上するものと考えられる。このように高い疎水性を有する高分子修飾無機酸化物粒子は、水との相溶性に乏しい有機溶媒に対しても容易に分散させることができ、また該有機溶媒中で粒子の凝集を引き起こすこともない。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
[実施例1]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
(1) 3リットルのチタン製タンクに赤酸化鉄粒子(チタン工業(株)製TAROX R-516P(登録商標)、比表面積15m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径1.71μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径3.53μm)を130g入れ、固形分濃度が10%となるように純水1170gを加えた。次に、前記チタン製タンクにpHメーターおよび温度センサーを設置し、チタン製平羽根を用いて回転速度330rpmで2時間撹拌して前記赤酸化鉄粒子のスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを70℃の温度まで加熱したのち、このスラリーを撹拌しながら15%濃度のアンモニア水溶液を添加してスラリーのpHを9.35に調整した。さらに、前記スラリーのpHを9.35に維持しながら、SiO2換算基準で4重量%濃度のケイ酸水溶液276gを、16時間かけて添加した。その後、撹拌しながらスラリーの温度を70℃に保って3時間放置した。これにより、赤酸化鉄粒子の表面をシリカ成分で被覆した。
次いで、前記スラリーの温度を室温まで冷却したのち、ブフナ−漏斗を用いて減圧濾過を行った。さらに、赤酸化鉄の重量に対して20倍量の純水で洗浄した。
次に、得られたケーキ状物質を110℃の温度で18時間乾燥した。さらに、乾燥時に生じた粒子同士の凝集を解すためジェットミルで解砕して、シリカで被覆された赤酸化鉄粒子(以下、「シリカ被覆赤酸化鉄粒子」という。)の乾燥粉体140gを得た。このようにして得られたシリカ被覆赤酸化鉄粒子の比表面積は14m2/gであり、前記測定法Bで測定した平均粒子径は2.67μmであった。
(2) 300mlのガラスビーカーにテトラヒドロフラン(和光純薬(株)製、脱水品)100mlを入れ、重合開始剤としてのトリクロロメタンスルホニルクロリド(東京化成(株)製)2gを加えて撹拌して、該有機溶媒中に重合開始剤をよく溶解させた。さらに、前記(1)で得られたシリカ被覆赤酸化鉄粒子2gを加えてよく撹拌した。
次に、周波数16〜200kHzの超音波を発振できる超音波粉砕機装置((株)カイジョー製TA−5287型超音波破壊装置)を用いて、水浴に設置した前記ビーカー内のスラリーに、出力150Wの超音波を30分間照射した。この時超音波照射前の前記ビーカー内の溶液の温度は20℃であり、超音波照射後の温度は21℃であった。このとき、超音波の照射量は、270000Jであった。
次いで、前記スラリーに含まれる固形分を、ブフナ−漏斗を用いて減圧濾過を行った。さらに、テトラヒドロフラン(和光純薬(株)製、脱水品)200mlで前記固形分を洗浄した。
次に、得られたケーキ状物質を室温で、圧力-0.1MPaの条件下で1時間かけて減圧乾燥させた。さらに、乾燥時に生じた粒子同士の凝集を解すためサンプルミルで解砕して、その表面に重合開始基が付与された赤酸化鉄粒子(以下、「重合開始基付き赤酸化鉄粒子」という。)の乾燥粉体2gを得た。
このようにして得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
滴下管および冷却管を有し、しかもマグネティック撹拌子を入れた500mlの3つ口反応器に、重合開始基付き赤酸化鉄粒子4gおよび2、2‘−ビピリジル(和光純薬)1.26gを加えたのち、反応器内の脱気と窒素置換を3回繰り返して行った。
次いで、窒素気流下に保たれた反応器内に、テトラヒドロフラン(和光純薬(株)製、脱水品)350mlおよびメタクリル酸nブチル4gを加えて、1時間撹拌した。その後、塩化銅(l)(和光純薬)0.4gを加えて、反応器内を75℃の温度に加熱し、24時間撹拌してメタクリル酸nブチルのリビングラジカル重合反応から得られる高分子化合物で前記重合開始基付き赤酸化鉄粒子の表面を修飾した。
次に、反応器内の温度を室温まで冷却したのち、撹拌しながら純水100mlを加えてさらに45分間撹拌した。これにより、前記リビングラジカル重合反応を停止させた。次いで、撹拌を停止して静置したのち、その上澄み液を捨てる作業(所謂、デカンテーション作業)を行った。その後、反応器内に15%濃度のアンモニア水溶液15gおよび純水15gを加えて45分間撹拌したのち、静置してその上澄み液を捨てる作業(所謂、デカンテーション作業)を行った。さらに、反応器内に陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)10gを加えて45分間撹拌したのち、静置してその上澄み液を捨てる作業(所謂、デカンテーション作業)を行った。これにより、添加された銅成分を除去した。
次に、得られたスラリー中に含まれる前記陽イオン交換樹脂を、目開き20μmのステンレス篩を用いて除去した。次いで、前記スラリー中に含まれる固形分を、ブフナ−漏斗を用いて減圧濾過を行った。さらに、テトラヒドロフラン(和光純薬(株)製、脱水品)200mlで前記固形分を洗浄した。
次いで、得られたケーキ状物質を室温で、圧力-0.1MPaの条件下で減圧乾燥させた。さらに、乾燥時に生じた粒子同士の凝集を解すためサンプルミルで解砕して、メタクリル酸nブチルのリビングラジカル重合反応から得られた高分子化合物でその表面を修飾した赤酸化鉄粒子(以下、「高分子修飾赤酸化鉄粒子」という。)の乾燥粉体3.9gを得た。このようにして得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、2.06μmであった。
次いで、前記高分子修飾赤酸化鉄粒子を、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー、S-5500)で撮った倍率300000倍の写真(SEM写真)を観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面が膜状の高分子化合物(以下、「ポリマー」という場合もある。)に覆われていることが確認された。
前記高分子修飾赤酸化鉄粒子の表面を覆っているポリマーの平均分子量は、正確には求めにくいものの、次の方法により求めた。すなわち、前記3つ口反応器内に、あらかじめ過剰のトリクロロスルホニルクロリド5mgを加えたのち上記の重合反応を行い、反応終了後、スラリー液を減圧濾過して得られた濾液中に含まれるフリーポリマーをゲル浸透クロマトグラフィー(昭和電工(株)製高性能SEC専用システムShodexGPC−101(登録商標)、カラム:KF802およびKF803の2本直列、溶離液:テトラヒドロフラン)により測定して求めたところ、その平均数分子量(Mn)は、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例2]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、出力150Wの超音波を30分照射するかわりに、出力300Wの超音波を30分照射した以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、2.16μmであった。また、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例3]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、赤酸化鉄粒子(チタン工業(株)製TAROXR-516P(登録商標)、比表面積15m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径1.71μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径3.53μm)を用いるかわりに、赤酸化鉄粒子(SunChemical社製SunPURO-Red(登録商標)、比表面積11m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径0.98μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径1.08μm)を用いて、アンモニア水溶液を添加するときのpH条件を9.35から10に変更した以外は実施例1と同様にして、シリカ被覆赤酸化鉄粒子を得た。このようにして得られたシリカ被覆赤酸化鉄粒子の比表面積は12m2/gであり、前記測定法Bで測定した平均粒子径は3.26μmであった。
前記シリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間30分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、1.13μmであった。また、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例4]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、赤酸化鉄粒子(チタン工業(株)製TAROX R-516P(登録商標)、比表面積15m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径1.71μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径3.53μm)を用いるかわりに、黄酸化鉄粒子(SunChemical社製SunPURO-Yellow(登録商標)、比表面積16m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径2.56μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径1.49μm)を用いて、アンモニア水溶液を添加するときのpH条件を9.35から10に変更した以外は実施例1と同様にして、シリカ被覆黄酸化鉄粒子を得た。このようにして得られたシリカ被覆黄酸化鉄粒子の比表面積は17m2/gであり、前記測定法Bで測定した平均粒子径は1.83μmであった。
前記シリカ被覆黄酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間30分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き黄酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き黄酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆黄酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き黄酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾黄酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾黄酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、1.42μmであった。また、この高分子修飾黄酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆黄酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。その結果を図2(高分子修飾前のシリカ被覆黄酸化鉄粒子のSEM写真)および図3(高分子修飾後のシリカ被覆黄酸化鉄粒子のSEM写真)に示す。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例5]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例4で調製したシリカ被覆黄酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、重合開始剤としてのトリクロロメタンスルホニルクロリド(東京化成(株)製)の添加量を2gから4gに増やし、さらに超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間60分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き黄酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。この時、超音波の照射量は1080000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き黄酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆黄酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。得られたFT−IRスペクトルを図1に示す。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き黄酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾黄酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾黄酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、1.52μmであった。また、この高分子修飾黄酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆黄酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例6]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
3リットルのチタン製タンクに黒酸化鉄粒子(SunChemical社製SunPURO-Black(登録商標)、比表面積6.7m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径3.74μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径4.65μm)130gを入れ、固形分濃度が10%となるように純水1170gを加えた。次に、チタン製タンクにpHメーターおよび温度センサーを設置し、チタン製平羽根を用いて回転速度290rpmで2時間撹拌して前記黒酸化鉄粒子のスラリーを得た。
次に、得られたスラリーを85℃の温度まで加熱したのち、このスラリーを撹拌しながら15%濃度のアンモニア水溶液を添加してスラリーのpHを7に調整した。さらに、前記スラリーのpHを7に維持しながら、Al23換算基準で3重量%のアルミン酸アンモニウム55.7gを2時間かけて添加した。その後、撹拌しながらスラリーの温度を85℃に保って40分間放置した。これにより、黒酸化鉄粒子の表面をアルミナ成分で被覆した。
次いで、前記スラリーの温度を室温まで冷却したのち、ブフナ−漏斗を用いて減圧濾過を行った。さらに、5%濃度アンモニア水溶液500mlおよび純水1000mlで洗浄した。
次に、得られたケーキ状物質を110℃の温度で18時間乾燥した。さらに、乾燥時に生じた粒子同士の凝集を解すためサンプルミルで解砕して、アルミナで被覆された黒酸化鉄粒子(以下、「アルミナ被覆黒酸化鉄粒子」という。)の乾燥粉体129gを得た。このようにして得られたアルミナ被覆黒酸化鉄粒子のアルミナ被覆量は、黒酸化鉄粒子の全量に対して2.93重量%であった。
次に、得られたアルミナ被覆黒酸化鉄粒子を、実施例1の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところに記載の条件と同様な条件下で、アルミナ被覆黒酸化鉄粒子の表面をシリカで被覆した。
次いで、実施例1に記載の条件下で、減圧濾過と洗浄を行ったのち、得られたケーキ状物質を乾燥した。さらに、乾燥時に生じた粒子同士の凝集を解すためサンプルミルで解砕して、シリカで被覆されたアルミナ被覆黒酸化鉄粒子(以下、単に「シリカ被覆黒酸化鉄粒子」という。)の乾燥粉体133gを得た。このようにして得られたシリカ被覆黒酸化鉄粒子の比表面積は12m2/gであり、前記測定法Bで測定した平均粒子径は4.65μmであった。
次に、得られたシリカ被覆黒酸化鉄粒子を用いて、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間30分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付きシリカ被覆黒酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き黒酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆黒酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に上記で得られた重合開始基付きシリカ被覆黒酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾黒酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾黒酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、4.06μmであった。また、この高分子修飾黒酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆黒酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例7]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、黒酸化鉄粒子のかわりに酸化チタン粒子(石原産業(株)製CR−50、比表面積4.5m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径0.62μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径2.93μm)を用いた以外は実施例6と同様の方法で、酸化チタン粒子の表面をアルミナで被覆したのちシリカで被覆した。このようにしてシリカで被覆されたアルミナ被覆酸化チタン粒子(以下、単に「シリカ被覆酸化チタン粒子」という。)の比表面積は13m2/gであり、前記測定法Bで測定した平均粒子径は2.97μmであった。
次に、得られたシリカ被覆酸化チタン粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間30分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き酸化チタン粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き酸化チタン粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆酸化チタン粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き酸化チタン粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾酸化チタン粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾酸化チタン粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法B方法で測定したところ、1.58μmであった。また、この高分子修飾酸化チタン粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆酸化チタン粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例8]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で調製したシリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力300W、時間30分から出力300W、時間15分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、270000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法B方法で測定したところ、1.22μmであった。また、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例9]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で調製したシリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力300W、時間30分から出力300W、時間60分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、1080000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、2.18μmであった。また、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例10]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で調製したシリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間90分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、1620000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に弱い状態で認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が一部付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、2.98μmであった。この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面の一部にポリマーが付着していることが認められた。
[実施例11]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で用いた赤酸化鉄粒子(SunChemical社製SunPURO-Red(登録商標)、比表面積11m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径0.98μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径1.08μm)の表面をシリカで被覆していない赤酸化鉄粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、1.05μmであった。また、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、赤酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[実施例12]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例4で用いた黄酸化鉄粒子(SunChemica社製SunPURO-Yellow(登録商標)、比表面積16m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径2.56μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径1.49μm)の表面をシリカで被覆していない黄酸化鉄粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き黄酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。
次いで、得られた重合開始基付き黄酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められた。これにより、黄酸化鉄粒子の表面に重合開始基が付与されていることが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き黄酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾黄酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾黄酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、1.00μmであった。また、この高分子修飾黄酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、黄酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われているのが確認された。
さらに、このポリマーの平均数分子量を実施例1に記載の方法で求めたところ、ポリスチレン換算基準で6000〜7000であった。
[比較例1]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で調製したシリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間5分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、90000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近にかなり弱い状態で認められた。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が殆ど付与されていないことが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、6.19μmであった。ただし、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面にはポリマーの形成が殆ど認められなかった。
[比較例2]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で調製したシリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力300W、時間120分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、2160000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められなかった。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が殆ど付与されていないことが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、4.38μmであった。また、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面がポリマーで覆われていることが認められなかった。
[比較例3]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例3で調製したシリカ被覆赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「重合開始基付き無機酸化物粒子の調製」のところで、超音波照射条件を出力150W、時間30分から出力75W、時間30分とした以外は実施例1と同様にして、重合開始基付き赤酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、135000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められなかった。これにより、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面に重合開始基が殆ど付与されていないことが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き赤酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾赤酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、3.17μmであった。ただし、この高分子修飾赤酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、シリカ被覆赤酸化鉄粒子の表面にはポリマーの形成が殆ど認められなかった。
[比較例4]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例7で用いた酸化チタン粒子(石原産業(株)製CR−50、比表面積4.5m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径0.62μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径2.93μm)の表面をアルミナおよびシリカシリカで被覆していない酸化チタン粒子を用いた以外は実施例7と同様にして、重合開始基付き酸化チタン粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き酸化チタン粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められなかった。これにより、酸化チタン粒子の表面に重合開始基が殆ど付与されていないことが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き酸化チタン粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾酸化チタン粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾酸化チタン粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、4.50μmであった。ただし、この高分子修飾酸化チタン粒子のSEM写真から観察したところ、酸化チタン粒子の表面にはポリマーの形成が殆ど認められなかった。
[比較例5]
重合開始基付き無機酸化物粒子の調製
実施例6で用いた黒酸化鉄粒子(SunChemical社製SunPURO-Black(登録商標)、比表面積6.7m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径3.74μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径4.65μm)の表面をアルミナおよびシリカで被覆していない黒酸化鉄粒子を用いた以外は実施例6と同様にして、重合開始基付き黒酸化鉄粒子の乾燥粉体2gを得た。このとき、超音波の照射量は、540000Jであった。
次いで、得られた重合開始基付き黒酸化鉄粒子のFT−IRスペクトルを上記の方法で測定したところ、重合開始基としてのクロロスルホニル基(−SO2Cl)中のSO2に由来するピークが波数1000〜1300cm-1付近に認められなかった。これにより、黒酸化鉄粒子の表面に重合開始基が殆ど付与されていないことが確認された。
高分子修飾無機酸化物粒子の調製
次に、上記で得られた重合開始基付き黒酸化鉄粒子を用いて、実施例1に記載の「高分子修飾無機酸化物粒子の調製」と同様な方法で、高分子修飾黒酸化鉄粒子の乾燥粉体3.9gを得た。
次いで、得られた高分子修飾黒酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、6.70μmであった。ただし、この高分子修飾黒酸化鉄粒子のSEM写真から観察したところ、黒酸化鉄粒子の表面にはポリマーの形成が殆ど認められなかった。
[比較例6]
シリコン処理赤酸化鉄粒子の調製
実施例1に用いた赤酸化鉄粒子(チタン工業(株)製TAROX R-516P(登録商標)、比表面積15m2/g、前記測定法Aで測定した平均粒子径1.71μm、前記測定法Bで測定した平均粒子径3.53μm)20gをサンプルミルに入れ、これにシリコーンオイル(信越化学(株)製KF−99−6cs)0.2gを添加して、3分間撹拌した。次いで、得られたシリコン処理赤酸化鉄粒子を150℃の温度で15時間焼成した後、焼成時に生じた粒子同士の凝集を解すため再度サンプルミルにて解砕してシリコン処理赤酸化鉄粒子を得た。
このようにして得られたシリコン処理赤酸化鉄粒子を水添ポリイソブテン中に分散させたときの平均粒子径を上記の測定法Bで測定したところ、6.50μmであった。
比較を容易にするため、上記の実施例1〜12および比較例1〜6に記載された内容の主要部分をとりまとめた結果を、以下の表1に示す。
この結果からも明らかなように、実施例1〜12に示す高分子修飾無機酸化物粒子の場合は、高分子化合物で修飾する前の無機酸化物粒子より水添ポリイソブテン中での粒子の平均粒子径が小さくなっていることが分かった。これにより、粒子の疎水性が高まり、有機溶媒(すなわち、水添ポリイソブテン)中への分散性が向上したことが確認された。
一方、比較例1〜5に示す高分子修飾無機酸化物粒子(ただし、多くの粒子はその表面が高分子化合物で殆ど修飾されていない。)の場合は、高分子化合物で修飾する前の無機酸化物粒子より粒子の平均粒子径が大きくなっているか、あるいは殆ど変わらないことが分かった。これは、重合開始基付き無機酸化物粒子の表面を修飾するとき溶液が酸性条件下となり、固体表面のSi−O−Si結合が切断されSi -OH結合を形成したため、表面が親水化されたことに由来するとものと考えられる。さらに、比較例6に示すシリコン処理赤酸化鉄粒子の場合も、シリコーンオイル処理前の赤酸化鉄粒子より粒子の平均粒子径が大きくなっていることが分かった。
これは樹脂コート法による手法を採用しているため、コーティング時に複数の粒子をまとめて被覆する可能性が高くなり、本発明のように個々の粒子を被覆するのではないことに由来するものと考えられる。これにより、有機溶媒(すなわち、水添ポリイソブテン)中への分散性がよくないことが確認された。

Claims (21)

  1. 8m2/g以上の比表面積を有する無機酸化物粒子と、重合開始剤とを含む分散液に超音波を照射することにより、該無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与してなることを特徴とする重合開始基付き無機酸化物粒子。
  2. 前記無機酸化物粒子が、表面に水酸基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  3. 前記無機酸化物粒子の比表面積が9〜300m2/gであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  4. 前記無機酸化物粒子が、鉄、チタン、亜鉛、セリウム、ケイ素から選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  5. 前記無機酸化物粒子が、鉄、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子の表面をシリカで被覆したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  6. 前記無機酸化物粒子が、鉄、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれた少なくとも1種の金属元素の酸化物粒子または複合酸化物粒子の表面をアルミナで被覆したのち、さらにシリカで被覆したものであることを特徴とする請求項1〜3に記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  7. 前記重合開始剤が、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基を末端に有するスルホニルクロリド化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  8. 前記スルホニルクロリド化合物が、トリクロロメタンスルホニルクロリド、トリブロモメタンスルホニルクロリド、トリクロロメチルフェニルスルホニルクロリド、トリブロモメチルフェニルスルホニルクロリドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  9. 前記分散液の分散媒が、非プロトン系有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  10. 前記超音波の照射量が、100000〜2000000Jの範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  11. 前記重合開始基が、−SO2Clで表されるクロロスルホニル基であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子。
  12. 無機酸化物粒子の表面に重合開始基を付与して、重合開始基付き無機酸化物粒子を製造する方法であって、
    (1)非プロトン系有機溶媒に前記無機酸化物粒子および重合開始剤を分散させる工程、
    (2)前記工程(1)で得られた分散液に超音波を照射する工程、
    (3)前記工程(2)で得られた分散液を濾過して固形分を分離する工程、
    (4)前記工程(3)で得られた固形分を乾燥する工程
    を含む重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法。
  13. 前記無機酸化物粒子が、粒子表面に水酸基を有し、かつその比表面積が8m2/g以上のものであることを特徴とする請求項12に記載の重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法。
  14. 前記工程(1)で使用される重合開始剤が、塩素置換アルキル基または臭素置換アルキル基を末端に有するスルホニルクロリド化合物であることを特徴とする請求項12または13に記載の重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法。
  15. 前記工程(2)での超音波照射を、周波数が16〜200kHz、出力が50〜600Wの超音波を用いて10〜90分かけて行うことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子の製造方法。
  16. 請求項1〜11のいずれかに記載の重合開始基付き無機酸化物粒子の表面を、重合性モノマーのリビングラジカル重合反応から得られる高分子化合物で修飾してなることを特徴とする高分子修飾無機酸化物粒子。
  17. 前記重合性モノマーが、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項16に記載の高分子修飾無機酸化物粒子。
  18. 請求項16または請求項17に記載の高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法であって、
    (1)減圧乾燥させた撹拌機付き反応器内を不活性ガスで置換する工程、
    (2)前記重合開始基付き無機酸化物粒子と、ビピリジルおよび/またはビピリジル誘導体とを前記反応器内に導入する工程、
    (3)前記反応器内に不活性ガスを導入して、該反応器内を不活性ガスの雰囲気下に保持する工程、
    (4)前記反応器内に非プロトン系有機溶媒を導入する工程、
    (5)前記反応器内に重合性モノマーを撹拌しながら導入する工程、
    (6)前記反応器内の混合液を室温にて0.5〜2時間、撹拌する工程、
    (7)前記反応器内に塩化銅を導入する工程、
    (8)前記反応器内の混合液を60〜80℃の温度に加熱して1〜48時間撹拌することにより、前記重合性モノマーのリビングラジカル重合反応を行って得られる高分子化合物で前記無機酸化物粒子の表面を修飾する工程、
    (9)前記反応器内に水を撹拌しながら導入し、さらに0.5〜1時間撹拌して、前記リビングラジカル重合反応を停止させる工程、
    (10)前記反応器内にアンモニア水と必要に応じて水を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する工程、
    (11)前記反応器内に陽イオン交換樹脂を加えて、0.5〜1時間撹拌したのち静置して上澄み液を系外に排出することにより、混合液中に含まれる銅イオンを除去する工程、および
    (12)前記陽イオン交換樹脂を分離・除去した後、固形分を乾燥させる工程
    を含むことを特徴とする高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法。
  19. 前記不活性ガスが、窒素ガスであることを特徴とする請求項18に記載の高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法。
  20. 前記非プロトン系有機溶媒が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、キシレン、トルエン、ベンゼンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法。
  21. 前記重合性モノマーが、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、γ―グリシドオキシ系モノマーから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項18〜20のいずれかに記載の高分子修飾無機酸化物粒子の製造方法。
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