JP2010163676A - アルミニウム合金線材 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧縮加工を受けた状態での耐熱性に優れた、移動体の電気配線体の導体として好適なアルミニウム合金線材を提供する。
【解決手段】Feを0.1〜0.4mass%、Cuを0.1〜0.3mass%、Mgを0.02〜0.2mass%、Siを0.02〜0.2mass%含有し、さらにTiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜25μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電気配線体の導体として用いられるアルミニウム合金線材に関する。
従来、車両、電車、航空機等の移動体の電気配線体として、銅及び銅合金の導体を含む電線に銅又は銅合金(例えば、黄銅)製の端子(コネクタ)を装着した部材(いわゆるワイヤーハーネス)が用いられていたが、近年の移動体の軽量化の中で、電気配線体の導体についても軽量化が求められており、銅や銅合金より軽量なアルミニウムやアルミニウム合金を導体として使用する検討が進められている。
アルミニウムの比重は銅の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、純アルミニウムの導体線材に純銅の導体線材と同じ電流を通すためには、純アルミニウムの導体線材の断面積を純銅の導体線材の約1.5倍にする必要があるが、それでも重量では純銅の導体線材に比べて約半分と有利な点がある。
なお、上記の%IACSとは、万国標準軟銅(International Anneld Cupper Standard)の抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%IACSとした場合の導電率を表したものである。
ところで、移動体の電気配線体の導体としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いるためには、銅または銅合金を用いる場合と比較して、解決すべき幾つかの課題があり、その一つは耐熱性の改善である。アルミニウムは銅と比較して融点が約500℃低く、耐熱性が銅と比較して低いことは周知の事実である。移動体の熱環境は、移動体として自動車を例に挙げた場合、人や荷物が乗るキャビン部分で真夏の灼熱下の暑さでは約80℃、エンジンルームや駆動用モータの部分ではそれらの発熱を考慮すると局所的には約150℃となり、アルミニウムにとっては軟化しやすい環境温度になっている。
また、移動体の電気配線体の設置環境は、架空送電線や電力ケーブルなどの設置環境とは異なり、冷却手段を設けることが想定されていないことが多く、移動体用の電気配線体自身の耐熱性が架空送電線や電力ケーブルなどと比較して強く要求されることもある。
また、移動体の電気配線体に使用されるアルミニウム導体に耐熱性が要求されるのは、耐熱性が低いと、アルミニウム導体と端子(一般には銅製の端子)との接続部においてアルミニウム導体にクリープや応力緩和現象が発生しやすく、接続(嵌合)されている端子からアルミニウム導体が抜ける問題があるためである。一般的に金属材料において、耐熱性が高い材料ほどクリープや応力緩和現象が起きにくいといわれており、移動体の電気配線体に使用されるアルミニウム導体には接続信頼性の面からも耐熱性の高い材料の開発が求められている。
このような用途に対して、例えば送電線用アルミニウム線材の材料である純アルミニウム系(1000系:具体的には1060や1070)材料は、耐熱性が低いといわれている。1000系材料の高温引張試験結果については、鈍材(O材)では常温に対して150℃試験では約40%、加工材(H材)では同じく約25%の引張強度の低下が見られることが知られている(非特許文献1参照)。
このため、種々の添加元素を加えた合金化の検討が行われている。しかしながら、合金化は導電率の低下を招くことも周知の事実である。例えば、一般に耐熱性が優れているとされる3000系材料、5000系材料は純アルミニウム系(1000系)材料と比較して導電性が芳しくない(ともに50%IACS以下である)ことは周知である。
上述のとおり、移動体の電気配線体に使用されるアルミニウム導体は、恒久的に、かつ確実に端子と接続されていることが必要であり、その信頼性を図る目安として耐熱性が要求される特性値を満足していることが望まれる。一方、アルミニウム導電線やこれを用いた移動体用の電気配線体(ワイヤーハーネス)については、様々な例が知られている(特許文献1〜15参照)。
特開2004−311102号公報 特開2006−012468号公報 特開2005−336549号公報 特開2004−134212号公報 特開2005−174554号公報 特開2006−019164号公報 特開2006−004752号公報 特開2006−079885号公報 特開2006−019165号公報 特開2006−019163号公報 特開2006−004760号公報 特開2006−253109号公報 特開2006−004757号公報 特開2006−079886号公報 特開2000−357420号公報
「アルミニウムハンドブック 第6版」 社団法人 日本アルミニウム協会 発行 p.37 表5.3.1
しかし、これらの特許文献には、いずれも積極的にアルミニウム導電線の耐熱性を改善することは記載されていない。また、送電線や電力ケーブルに用いられている純アルミニウム系の材料や各特許文献に記載された合金材料では、移動体用途に適する特性を得にくいことがわかってきた。特に、特許文献1、3、15などのようにジルコニウム(Zr)が添加された合金では、そのZr添加方法が困難であり、また、長時間の熱処理を行うことで特性を制御するAlZr金属間化合物を形成する工程が必要であることから、コスト高になることが予想される。また、特許文献2のように複合材とすると、同様にコスト高になることが予想される。
さらに、上記したようにアルミニウム導体は銅端子と接続(圧接、圧着など)されることで圧縮応力を受け、クリープや応力緩和現象を起こしやすい。この圧縮量は端子種類や導体の線径によって異なるが、約5〜50%である。よって、この圧縮加工を受けた状態で、クリープや応力緩和現象の代替特性となる耐熱性劣化が起きにくいことが望まれている。ところで、アルミニウム導体の熱処理前後の強度劣化の評価結果をそのままアルミニウム導体が圧縮加工を受けた状態での耐熱性の評価結果として適用できないことがわかってきた。したがって、自動車や電車などの移動体用途の電気・電子機器に使用されるアルミニウム導体の信頼性を具現する耐熱性の評価には、銅端子と導体のかしめ部を模擬した加工歪を付与した状態で耐熱性を評価する必要があることがわかった。
このような状況に鑑み、本発明者らは望ましい耐熱性を評価する方法を提案すると共に、その試験方法において要求される耐熱性を満足するものとして、アルミニウム導体に含まれる成分ならびに伸線方向の垂直断面における結晶粒径や分散する金属間化合物粒子の粒径(化合物粒子の直径)およびその分散密度、さらには引張強度、導電率及び耐熱試験前の加工歪量などの特性との関係について検討し、前記化合物粒子の粒径および分散密度を適正に規定することにより耐熱性などの諸特性を改善し得ることを知見し、この知見を基にさらに検討を進めて本発明を完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の解決手段によって前記課題を解決する。
(1)Feを0.1〜0.4mass%、Cuを0.1〜0.3mass%、Mgを0.02〜0.2mass%、Siを0.02〜0.2mass%含有し、さらにTiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜25μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下であるアルミニウム合金線材。
(2)Feを0.3〜0.8mass%含有し、さらに、Cu、MgおよびSiの群から選ばれる1元素以上を合計で0.02〜1.0mass%含有し、かつ、TiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜30μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下のアルミニウム合金線材。
(3)前記線材に加工率が5〜50%の冷間加工を施した後の、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下である、前記(1)または前記(2)記載のアルミニウム合金線材。
(4)前記線材の引張強度が80MPa以上、かつ導電率が55%IACS以上であり、前記線材内に分散する第二相粒子の寸法が粒径換算で50〜500nm、その分布密度が1〜10個/μmである、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
(5)前記線材が移動体中で、バッテリーケーブルやハーネス用途、各種モータ用導線として使用される、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
本発明に係るアルミニウム合金線材は、含有する成分や伸線方向の垂直断面における結晶粒径ならびに線材内に分散する第二相粒子の寸法とその分散密度を規定することで、特に150℃で100時間経過後の引張強度の低下量が10%以下に改善した、移動体に搭載されるバッテリーケーブル、ハーネスあるいはモータ用導体として有用なものである。
さらに、冷間加工量を5〜50%付与させてもその引張強度の低下量が10%以下という特徴を持つ。本発明のアルミニウム合金線材は、溶解、熱間または冷間加工(溝ロール加工など)、伸線加工と熱処理(焼鈍)を経て実用的に製造される。
(第1の実施態様)
本発明の第1の実施態様は、Feを0.1〜0.4mass%、Cuを0.1〜0.3mass%、Mgを0.02〜0.2mass%、Siを0.02〜0.2mass%含有し、さらにTiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜25μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下である。以下、各要素について説明する。
鉄(Fe)の添加量に関して:
本実施形態において、Feの添加量を0.1〜0.4mass%とするのは、Feはアルミニウム中には融点付近の温度(655℃)において、0.05mass%しか固溶せず、残りは、Al−Fe,Al−Fe−Si、Al−Si−Mg、Al−Fe−Cu−Siなどの金属間化合物として晶出するためである。この晶出物は強度を向上したり、結晶粒径の制御を行ったりするため、Feの添加量は0.1mass%未満では十分でない。また、0.4mass%を超えると、その効果が飽和し工業的に望ましくない。Feの添加量は、好ましくは0.15〜0.3mass%、さらに好ましくは0.18〜0.25mass%である。
銅(Cu)の添加量に関して:
本実施形態において、Cuの添加量を0.1〜0.3mass%とするのは、Cuはアルミニウム母材中に固溶して強化する。Cuの添加量は0.1mass%未満ではその効果が発揮できず、0.3mass%を超えると導電率の低下を招くためである。また、Cuの添加量が多いと他の元素と金属間化合物を形成して溶解時のノロの発生などの不具合を生じる。Cuの含有量は好ましくは0.15〜0.25mass%、さらに好ましくは0.18〜0.22mass%である。
マグネシウム(Mg)の添加量に関して:
本実施形態において、Mgの添加量を0.02〜0.2mass%とするのは、Mgはアルミニウム母材中に固溶して強化する共に、その一部はSiと析出物を形成して強度を向上させることができる。Mgの添加量は0.02mass%未満では効果がなく、0.2mass%を超えると導電率を低下させ、また、その効果も飽和する。また、Mgの添加量が多いと他の元素と金属間化合物を形成して溶解時のノロの発生などの不具合を生じる。Mgの含有量は好ましくは0.05〜0.15mass%、さらに好ましくは0.08〜0.12mass%である。
ケイ素(Si)の添加量に関して:
本実施形態において、Siの添加量を0.02〜0.2mass%とするのは、上記したようにSiはMgと化合物を形成して強度を向上させる働きを示す。Siの添加量は0.02mass%未満では効果がなく、0.2mass%を超えると導電率を低下させ、また、その効果も飽和する。また、Siの添加量が多いと他の元素と金属間化合物を形成して溶解時のノロの発生などの不具合を生じる。Siの含有量は好ましくは0.05〜0.15mass%、さらに好ましくは0.08〜0.12mass%である。
チタン(Ti)およびバナジウム(V)の添加量に関して:
TiとVは溶解鋳造時の鋳塊の微細化材として用いる。鋳塊の組織が粗大であれば、次工程の加工工程で割れが発生して工業的に望ましくない。そこで、TiおよびVを鋳塊の組織を微細化するために添加する。その添加量は、TiとVの合計が0.001mass%未満では微細化の効果が見られず、0.01mass%を超えると導電率を大きく低下させ、その効果も飽和する。TiとVの合計の添加量は好ましくは0.05〜0.08mass%、さらに好ましくは0.06〜0.08mass%である。また、TiとVを共に用いる場合は、その比率はTi:V(質量比)で好ましくは10:1〜10:3である。
(第2の実施態様)
本発明の第2の実施態様は、Feを0.3〜0.8mass%含有し、さらに、Cu、MgおよびSiの群から選ばれる1元素以上を合計で0.02〜1.0mass%含有し、かつ、TiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜30μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下である。
本実施態様は、Feと同時に添加するCu、Mg、Siの添加量を合計で0.02〜1.0mass%に制御し、安価なFeの添加量を0.3〜0.8mass%に増やすこともできる。この場合、Feの添加量が0.3mass%未満ではFeを添加する効果が無く、0.8mass%を超えると効果が飽和するだけでなく晶出物が多くなるため好ましくない。また、Feの添加量が多いと他の元素と金属間化合物を形成して溶解時のノロの発生などの不具合を生じる。
本実施態様においては、Feの添加量は、好ましくは0.4〜0.8mass%、さらに好ましくは0.5〜0.7mass%である。また、Cu、Mg、Siの中で1元素以上から選択された元素の合計は、好ましくは0.4〜0.8mass%、さらに好ましくは0.5〜0.7mass%である。
なお、TiおよびVの添加量に関しては、第1の実施態様と同様である。
以上、本発明の各実施態様のアルミニウム合金線材の成分について説明したが、移動体の電気配線体として好適に使用されるアルミニウム合金線材には、上記の成分以外の結晶粒径、耐熱性、加工率ならびに第二相のサイズ(径)と密度を厳密に制御して製造される。これらの好ましい範囲とその理由を下記に示す。
結晶粒径に関して:
アルミニウム合金線材の伸線方向の垂直断面における結晶粒径を5〜25μmと制御するのは、5μm未満では部分再結晶組織が残存して伸びが著しく低下するためであり、20μmを上限とするのは、これより粗大な組織を形成すると変形挙動が不均一となり、同様に伸びが低下するため、銅端子との接合(嵌合)の際、不具合を生じるためである。
耐熱性に関して:
耐熱性の基準として150℃を選択した理由は、前記したように移動体の中でエンジンを搭載した車体、つまり、車のエンジンルームの最高温度を評価基準とした。この温度はJIS規格などには無いが、例えば、日本伸銅協会の伸銅技術データベースには応力緩和特性の評価方法の最高温度として150℃の評価が掲載されている。
また、100時間後の評価を基準とした理由は、数時間ではデータのバラツキが多く、100時間を超える長時間の評価をしても、100時間後の評価と結果がほぼ変わらなくなるためである。さらに、熱処理温度との兼ね合いからも100時間の評価については、以下の見解がある。
種々の温度と時間をパラメータにした評価方法の一つにラールソンパラメータ(LM:式1参照)による評価方法がある。これは温度と時間を変えた実験において、受けた熱エネルギーを等価に評価する考え方である。
本実施形態では、移動体に用いるアルミニウム導体が用いられる最高温度は上記のように車のエンジンルームにおける温度(例えば、150℃)であるが、その最高温度が長時間維持されることはなく、キャビンなどの室内環境ではそれ以下の温度(例えば、80℃)で長時間保持されると予想される。
今回の評価(温度150℃で100時間)では、ラールソンパラメータは約9300であり、これと等価なエネルギーは、80℃では200年以上である。よって、150℃×100時間の評価を行っていれば、十分であると判断した。
次に、引張強度の劣化を10%以内とした理由は、引張強度の劣化が10%を超えると、アルミニウム導体と端子との接続部において、接続(嵌合)されている端子からアルミニウム導体が抜ける現象が発生しやすくなるためである。
(LM)=(温度+273)×(20+Log(時間)) (式1)
単位は、温度は℃、時間はhである。
加工率に関して:
アルミニウム合金線材に冷間加工率を5〜50%付与した理由は、前記したようにアルミニウム合金線材と銅製端子(コネクタ)とを接合する場合、従来の銅製導体の圧縮率を見ると、5%未満では少なく接合強度を満たせず、50%を超えると、接続部に付与された歪みが飽和するだけでなく、アルミニウム合金線材が破断されるおそれがあり、必要以上の高加工が不要であるためである。
引張強度と導電率に関して:
引張強度と導電率は相反するものであり、引張強度が高いほど導電率が高く、逆に引張強度が低いほど導電率が高い。アルミニウム合金線材の引張強度が80MPa未満では強度が低すぎて取扱が難しく、工業用導体として使用することが難しい。また、導電率については、例えば動力線などのように数十A(アンペア)の高電流が流れることを考慮し、最低55%IACSは必要であるとした。
望ましくは、引張強度が80〜150MPaで導電率が55〜65%IACS、さらに望ましくは、引張強度が100〜120MPa、導電率が58〜62%IACSである。
第二相粒子の寸法と分布密度に関して:
第二相粒子とは、結晶粒内に存在する、晶出物、析出物などの粒子であり、主として、晶出物は溶解鋳造時に形成され、析出物は中間熱処理で形成される、例えば、Al−Fe、Al−Fe−Si、Si−Mg等の粒子である。これらは、数nm〜数μmの寸法で分布しているが、本発明では第二相粒子の寸法は、好ましくは粒径換算で50〜500nm、より好ましくは100〜300nmである。なお、本発明において、上記第二相粒子の寸法は平均の寸法を意味する。また、粒径換算における粒径は等体積球相当径である。第二相粒子が微細であれば、強度が高くなるものの導電率が低下する懸念がある。晶出物の粒子の寸法が粒径換算で50nm未満では強度が高くなり、伸線加工が困難となる。一方、500nmを超えると断線原因となり伸線加工が困難となる。
さらに、その分散密度が1個/μm以下では、所望の耐熱性を得ることはできず、10個/μm以上では線引き加工が困難となる。
この第二相粒子のサイズと密度は、添加元素の成分(添加量)と凝固時の冷却速度によって制御することができる。本願の添加成分範囲であれば、溶解鋳造時の冷却速度は10〜300℃/秒、さらに望ましくは50〜150℃/秒であれば、所望の第二相の分布状態を得ることができる。なお、この冷却速度は、凝固開始から200℃までの平均の冷却速度である。この冷却速度を変える方法として、<1>鉄製鋳型のサイズ(肉厚)を変える、<2>鋳型下面に水冷モールドを設けて強制冷却する(水量を変えることでも冷却速度が変わる)、<3>溶湯の鋳込み量を減らす、などの方法がある。この3つの工夫により冷却速度を変えることができる。
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
Feを0.1〜0.4mass%、Cuを0.1〜0.3mass%、Mgを0.02〜0.2mass%、Siを0.02〜0.2mass%含み、さらに、TiとVを合計で0.001〜0.01mass%含み、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金を、黒鉛坩堝を用いてシリコニット炉で溶解し、これを10〜300℃/秒の冷却速度で鋳造して、25×25mm×300mmのインチバー鋳塊を製造した。この時、鋳型内部にK型熱伝対をセットし、0.5秒毎連続的に温度がモニターできるようにして、凝固から200℃までの平均冷却速度を求めるようにした。この鋳塊に熱間溝ロール圧延を施して、約10mmφの棒材とした。次いで、表面の皮むきを実施して、9〜9.5mmφとし、これを冷間線引き加工して、2.6mmφとした。この冷間線引きした加工材に温度300〜400℃で1〜4時間の熱処理を施し、さらに、0.3mmφまで伸線加工を行って最後に温度300〜400℃で1〜4時間の熱処理を施し、供試材を作成した。
最後に、必要に応じて冷間加工率5〜50%の冷間加工を付与した。
(実施例2)
Feを0.3〜0.8mass%、さらに、Cu、Mg、Siの中で1元素以上から選択された元素を合計で0.02〜1.0mass%含有し、かつ、Ti+Vをその合計で0.001〜0.01mass%含み、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム黒鉛坩堝を用いてシリコニット炉で溶解し、これを10〜300℃/秒の冷却速度で鋳造して、25×25mm×300mmのインチバー鋳塊を製造した。この時、鋳型内部にK型熱伝対をセットし、0.5秒毎連続的に温度がモニターできるようにして、凝固から200℃までの平均冷却速度を求めるようにした。この鋳塊に熱間溝ロール圧延を施して、約10mmφの棒材とした。次いで、表面の皮むきを実施して、9〜9.5mmφとし、これを冷間線引き加工して、2.6mmφとした。この冷間線引きした加工材に温度300〜400℃で1〜4時間の熱処理を施し、さらに、0.3mmφまで伸線加工を行って最後に温度300〜400℃で1〜4時間の熱処理を施し、供試材を作成した。
最後に、必要に応じて冷間加工率5〜50%の冷間加工を付与した。
作製した各々の供試材について、下記の方法により各特性を測定した。その結果を表1および表2に示す。表1は実施例(本発明例)、表2は比較例を示し、表2の比較例において、以下に示す評価基準をはずれる値については、斜体太字で表した。なお、表1の実施例(本発明例)のうち、サンプルNo.1〜16は実施例1、サンプルNo.17〜22は実施例2を示す。
(a)引張強度(TS)
伸線方向から切り出した試験片をJIS Z2241に準じて各3本ずつ試験し、その平均値を求めた。
(b)導電率(EC)
伸線方向から切り出した長さ350mmの試験片を20℃(±0.5℃)に保持した恒温漕に浸し、四端子法を用いて、その比抵抗を測定して導電率を算出した。端子間距離は300mmとした。
(c)強度低下率
上記(a)で引張強度の測定を行った供試材を、150℃(±2℃)に管理された恒温槽中(大気中)で、100時間の熱処理を行い、その後、自然冷却(放冷)した。その後、上記(a)と同様の引張試験を行った。熱処理前の引張強度と熱処理後の引張強度を測定し、強度低下率(%)を求めた。
(d)結晶粒径
伸線方向から切り出した供試材の横断面を樹脂で埋め、機械研磨後、電解研磨を行った。電解研磨条件は、研磨液が過塩素酸20%のエタノール溶液、液温は0〜5℃とし、電流は10mA、電圧は10V、時間は30〜60秒とした。この組織を200〜400倍の光学顕微鏡で観察、撮影を行って、交差法による粒径測定を行った。具体的には、撮影された写真を約4倍に引き延ばし、直線を引いて、その直線と粒界が交わる数を測定して平均粒径を求めた。なお、粒界は100〜200個が数えられるように直線の長さと数を変えて評価した。
(e)第二相粒子の寸法(粒子径)と分布密度(粒子密度)
実施例および比較例の導体を電解研磨薄膜法(ツインジェット研磨法)にて薄膜にして、透過電子顕微鏡(TEM)を用い、倍率2000〜10000倍で任意の視野を観察し、任意に3枚の写真を撮影して、その写真を解析することで求めた。この時、入射方位角度は(111)または(200)を用いた。
約50〜1000個の第二相粒子をカウントすることによりその寸法(PPT:Particle of Precipitation)と分布密度(PPT×10)を算出した。粒子の寸法が大きい場合には、その数が少なくなるため、極端に少ない場合は視野を更に3枚追加して撮影している。この撮影した写真を画像解析装置により解析し、第二相粒子数と平均寸法を算出した。
Figure 2010163676
Figure 2010163676
表1から明らかなように、本発明例ではいずれも引張強度が80MPa以上、導電率が55%IACS以上、強度低下率が10%以下という結果が得られ、移動体用途のアルミニウム合金線材として適するものとなった。これに対して、表2の比較例では、引張強度80MPaを下回る、導電率が55%IACSを下回る、または強度低下率が10%を上回るもののいずれかとなり、移動体用途のアルミニウム合金線材としては適さないものとなった。

Claims (5)

  1. Feを0.1〜0.4mass%、Cuを0.1〜0.3mass%、Mgを0.02〜0.2mass%、Siを0.02〜0.2mass%含有し、さらに、TiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部がAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜25μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下であるアルミニウム合金線材。
  2. Feを0.3〜0.8mass%含有し、さらに、Cu、MgおよびSiの群から選ばれる1元素以上を総計で0.02〜1.0mass%含有し、かつ、TiとVを合計で0.001〜0.01mass%含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金線材であって、該線材の伸線方向の垂直断面における平均結晶粒径が5〜30μm、かつ、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下のアルミニウム合金線材。
  3. 前記線材に加工率が5〜50%の冷間加工を施した後の、温度150℃で100時間経過前後の引張強度低下率が10%以下である、請求項1または請求項2記載のアルミニウム合金線材。
  4. 前記線材の引張強度が80MPa以上、かつ導電率が55%IACS以上であり、前記線材内に分散する第二相粒子の寸法が粒径換算で50〜500nm、その分布密度が1〜10個/μmである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
  5. 前記線材が移動体中で、バッテリーケーブルやハーネス用途、各種モータ用の導線として使用される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
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