JP2010163362A - 軸性近視抑制剤及び遠視抑制剤 - Google Patents
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Abstract
優れた軸性近視抑制剤あるいは遠視抑制剤を提供することを課題とする。さらに軸性近視抑制効果と遠視抑制効果の両方の機能を併せ持つ薬剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
アントシアニン、特にカシスアントシアニンを有効成分として含有することを特徴とする軸性近視抑制剤、遠視抑制剤さらには軸性近視抑制剤兼遠視抑制剤を提供する。
【選択図】図1
Description
遠視は、近視とは反対に網膜の後ろで光の焦点が結ばれてしまい、ピントが合わず、近くのものがぼんやり見えてしまう屈折異常のことである。遠視は軸性遠視と屈折性遠視の2種類に分けられる。軸性遠視は眼軸が短いため網膜上で焦点が結べず、網膜の後ろで焦点が結ばれるという状態である。屈折性遠視は角膜や水晶体の屈折力が弱すぎるため、網膜上で焦点を合わせることができず、網膜よりさらに奥でピントが合ってしまう状態である。
強度の遠視の場合には近くだけでなく、遠くもよく見えなくなるため、かなりの注意が必要とされている。
一方、アントシアニン類は、果実類(カシス、ブルーベリー、モモ、オリーブなど)、穀類(オオムギ、コメなど)、豆類(インゲンマメ、エンドウなど)、イモ類(サツマイモなど)、野菜類(アスパラガス、ダイコンなど)などの多くの植物に存在することが知られている。そして、アントシアニンが抗酸化作用、脂質改善作用、抗変異原・抗腫瘍作用、抗潰瘍、血小板凝集抑制及び視覚機能改善作用を有することが報告されている(非特許文献1)。例えば、ブルーベリー由来アントシアニンの視覚改善効果が広く知られているが、その詳細な解析はなされていなかった。また他の報告によれば、カシス由来のアントシアニン(以下、カシスアントシアニンともいう)のロドプシン再生促進効果(非特許文献3)、エンドセリンBレセプターを介した毛様体筋弛緩効果が見出されている(非特許文献4)。
さらに、アントシアニンは、その構造・起源が異なれば、含まれる成分の種類及び割合が異なり、当然その機能性が異なってくることが当技術分野では知られている(非特許文献2)。例えば、同じインゲンマメ由来のアントシアニンの抗酸化性であっても、種皮の色や部位によりその活性に大きな差がある(非特許文献1)。また、アントシアニンの作用は、in vitroとin vivoで異なることも多く、容易に予測することができない(非特許文献1)。従って、由来などによってアントシアニンの薬理効果には差異があり、多種多様なアントシアニンのヒトに対する効果は容易に推測することができるものではない。
アントシアニンは、種々の生物に含まれるが、その起源や部位が異なれば、含まれる成分の種類及び割合(組成)が異なる。例えば、本発明において好ましく用いられるカシスアントシアニンは、シアニジン−3−O−グルコシド(以下、C3Gと略記する)、シアニジン−3−O−ルチノシド(以下C3Rと略記する)、デルフィニジン−3−O−グルコシド(以下、D3Gと略記する)及びデルフィニジン−3−O−ルチノシド(以下D3Rと略記する)の4成分がアントシアニン類として含まれている。
遠視と同じく、老眼(老視)は凸レンズの眼鏡を使用して矯正を行う。遠視は遠いところを見るときの屈折異常であるのに対し、老眼は水晶体の老化による調節異常で、近いところを見る時に問題が生じる。一般的に、近視の人は老眼になるのが遅く、遠視の人は老眼になるのが早いといわれている。アントシアニンが遠視抑制効果を示すことは、すなわち、老眼の発現の抑制につながることが期待される。
本発明の抑制剤は、有効成分であるアントシアニンの他、薬学的に許容される担体又は添加物を共に含むものであってもよい。このような担体及び添加物の例として、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが挙げられる。使用される添加物は、剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
[方法]
1. 試験動物
雄性白色レグホンのヒヨコ(株式会社 I・ひよこ)を孵化の翌日(1日齢)に入手し、1週間の予備飼育後、8日齢で実験に用いた。実験期間中は個別ケージにて飼育した。
2. 飼育環境
動物は、温度25℃、湿度60%RH、照明12時間周期(明期:7〜19時)の飼育条件下で飼育し、水道水および餌は自由摂取とした。
3. BCAの調製
カランテックス20(BCA24.7%、組成比:delphinidin-3-O-glucoside 12.3%、delphinidin-3-O-rutinoside 38.0%、cyanidin-3-O-glucoside 7.3%、cyanidin-3-O-
rutinoside 42.4%含有 Lot No. J22107138、Just The Berry社)を用い、BCA量で投与量を設定した。BCAは注射用蒸留水に50mg/5mLあるいは100mg/5mLの濃度に懸濁した。なお、BCAの調製は用時調製とした。
4. 近視用レンズ(-8D)付きゴーグルの作製
直径17 mm 、高さ5 mmのプラスチックのガイドの片側に直径16 mmの-8Dの近視用レンズをアロンアルファA「三共」(第一三共株式会社)で接着し、重さ約0.7gの近視用レンズ(-8D)付ゴーグル(以下 -8Dゴーグル)を作製した。
5. 眼軸長および眼球長の測定
眼軸長(角膜から網膜まで)はソムノペンチル(ペントバルビタールナトリウム、共立製薬)65 mg/kgの腹腔内投与によりヒヨコを麻酔し、超音波眼軸長測定装置 オフサスキャンB(中央産業貿易株式会社)によるA-scan測定(測定精度 0.1mm)を行った。眼球長(角膜から眼球後方まで)はヒヨコに追加麻酔をかけ、安楽死させた後、眼球を取り出し、ノギス(測定精度 0.01mm)により計測した。
6.実験方法
8日齢のヒヨコにBCA を50 mg/kgあるいは100 mg/kgの用量で経口投与(Day 1)し、投与30分後に-8DゴーグルをShaeffel ら、および Fujikado ら の方法に準じて、片眼(右眼)に装着した。左眼は裸眼対照とした。さらに、-8Dゴーグル装着の1日後(Day 2)および2日後(Day 3)の午前中に同様にBCAを1日1回、経口投与した。 溶媒対照として、蒸留水を5 mL/kgの容量でBCAと同様に経口投与した。最終投与の翌日(Day4)に眼軸長および眼球長を測定した。眼軸長延長および眼球長延長は以下の式にて算出した。
眼軸長延長(mm)=右眼軸長(mm)-左眼軸長(mm)
眼球長延長(mm)=右眼球長(mm)-左眼球長(mm)
7.データ処理および統計解析
データは平均値±標準誤差で示した。各群の眼軸長延長および眼球長延長の比較は、Dunnett’s multiple comparison testにより解析した。なお、有意水準は5%以下とした。
[結果]
図1に-8Dゴーグル4日間装着によるDay4の眼軸長延長および眼球長延長を示した。蒸留水、BCA 50mg/kgおよびBCA 100mg/kg 投与群の眼軸長延長はそれぞれ、OLE_LINK20.41±0.042、0.32±0.033、0.22±0.033OLE_LINK2であり、BCA 100mg/kg群で眼軸長延長の有意な抑制が認められた。一方、蒸留水、BCA 50mg/kgおよびBCA 100mg/kg 投与群の眼球長延長は0.47±0.039、0.29±0.031、0.19±0.038であり、BCA 50mg/kgから有意な抑制が認められた。
[目的]
アントシアニン中成分の軸性近視抑制に対する効果の違いを確認するために、BCAとBBAの経口投与量を100 mg/kgのアントシアニン等量として-8Dレンズ装着による眼軸長および眼球長延長に対する有効性の比較をおこなった。
[方法]
1. 試験動物
雄性白色レグホンのヒヨコ(株式会社 I・ひよこ)を孵化の翌日(1日齢)に入手し、1週間の予備飼育後、8日齢で実験に用いた。実験期間中は個別ケージにて飼育した。
2. 飼育環境
動物は、温度25℃、湿度60%RH、照明12時間周期(明期:7〜19時)の飼育条件下で飼育し、水道水および餌は自由摂取とした。
3. BCAおよびBBAの調製
カランテックス20(BCA 24.7%、Lot No. J22107138、Just The Berry社)およびビルベロン25(BBA 28.2%、Lot No. 80860102、常磐植物化学研究所)を実験に用いた。BCAおよびBBAは注射用蒸留水で100 mg/5mLの濃度に懸濁した。なお、BCAおよびBBAは用時調製とした。カランテックス20のアントシアニン成分組成を表1に示し、ビルベロン25のアントシアニン成分組成を表2に示す。
眼軸長(角膜から網膜まで)はペントバルビタールナトリウム(ソムノペンチル、共立製薬)65 mg/kgの腹腔内投与によりヒヨコを麻酔し、超音波眼軸長測定装置 オフサスキャンB(中央産業貿易株式会社)によるA-scan測定(測定精度 0.1mm)を行った。眼球長(角膜から眼球後方まで)はヒヨコに追加麻酔をかけ、安楽死させた後、眼球を取り出し、ノギス(測定精度 0.01mm)により計測した。
5. 実験方法
8日齢のヒヨコにBCAあるいはBBAを100 mg/kgのアントシアニン等量で経口投与し、投与30分後に-8DゴーグルをShaeffel ら、および Fujikado ら の方法に準じて、片眼(右眼)に装着した。左眼は裸眼対照とした。さらに、-8Dゴーグル装着の1(Day2)および2日後(Day3)の午前中に、同様にBCAあるいはBBAを1日1回、経口投与した。対照として蒸留水を5mL/kgの容量 でBCAおよびBBAと同様に投与した。最終投与の翌日(Day4)に眼軸長および眼球長を測定した。眼軸長延長および眼球長延長は以下の式にて算出した。
眼軸長延長(mm)=右眼軸長(mm)-左眼軸長(mm)
眼球長延長(mm)=右眼球長(mm)-左眼球長(mm)
6. データ処理および統計解析
データは平均値±標準誤差で示した。各群の眼軸長延長および眼球長延長の比較は、Dunnett’s multiple comparison testにより解析した。なお、有意水準は5%以下とした。
[結果]
図2に-8Dゴーグル4日間装着によるDay4の眼軸長延長および眼球長延長を示した。蒸留水、BCA 100 mg/kgおよびBBA 100mg/kgの投与群の眼軸長延長はそれぞれ、0.43±0.030、0.20±0.029および0.32±0.057であり、BCA 100mg/kgの投与群で蒸留水投与群に比べ眼軸長延長の有意(P=0.0005)な抑制が認められた。一方、BBA 100mg/kg投与群では蒸留水投与群に比べ有意な作用は認められなかった。蒸留水、BCA 100 mg/kgおよびBBA 100 mg/kgの投与群の眼球長の延長はそれぞれ、0.44±0.032、0.20±0.027および0.32±0.59であり、BCA 100 mg/kg投与群で蒸留水投与群に比べ眼球長延長の有意(P=0.0003)な抑制が認められた。一方、BBA 100mg/kg投与群では蒸留水投与群に比べ有意な作用は認められなかった。
[目的]
遠視抑制効果を確認するための一般的な方法として、ある一定濃度のET-1 を硝子体内に注射することにより生じるヒヨコの球面屈折値の増加(遠視化)を指標として、薬剤などの効果を評価できる。そこでアントシアニンの遠視抑制効果並びにアントシアニン中成分の遠視抑制に対する効果の違いを確認するために、ヒヨコの硝子体内にET-1を注射することにより生ずる球面屈折値の遠方化に対するBCAとBBAの効果の比較を行った。
[方法]
5週齢のヒヨコにBCAあるいはBBAを、50mg/kg のアントシアニン等量(蒸留水で50 mg/10mL の濃度に溶解)を経口投与し、30mim 後にET-1(10-4M) 10μL を硝子体内に注射し、球面屈折値の変化をオートレフラクトメーター で測定した。なおBCAはカシスポリフェノール20(BCA 21.9%、Just The Berry社)を使用した。またBBAは実施例2と同様にビルベロン25を使用した。カシスポリフェノール20のアントシアニン成分組成を表3に示す。
溶媒対照群には蒸留水を10mL/kgの容量で投与した。球面屈折値は経口投与前、注射前、注射 10, 30, 60 および120 分後に測定した。
結果を図3に示す。図3にはET-1注射後の球面屈折値の変化(注射後−注射前)を示した。蒸留水投与群はET-1注射後に球面屈折値の有意な増加(10, 30 min)が見られた。 BCA投与群はET-1注射による球面屈折値の変化は認められなかった。さらに、BCA投与群はET-1注射30min後の時点で 蒸留水群に比べ、有意な球面屈折値の増加の抑制が認められた。このことから、BCAの遠視抑制効果が確認された。
Claims (6)
- アントシアニンを有効成分として含有することを特徴とする軸性近視抑制剤。
- アントシアニンを有効成分として含有することを特徴とする遠視抑制剤。
- アントシアニンを有効成分として含有することを特徴とする軸性近視抑制剤兼遠視抑制剤。
- アントシアニンが、シアニジン−3−O−グルコシド、シアニジン−3−O−ルチノシド、デルフィニジン−3−O−グルコシド及びデルフィニジン−3−O−ルチノシドの4成分のうち1種又は2種以上を含有するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抑制剤。
- アントシアニンがカシスアントシアニンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抑制剤。
- 飲食品に用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抑制剤。
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Cited By (1)
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WO2018212152A1 (ja) * | 2017-05-15 | 2018-11-22 | 株式会社坪田ラボ | 近視予防用組成物及び機能性食品 |
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WO2001001798A1 (fr) * | 1999-07-02 | 2001-01-11 | Meiji Seika Kaisha, Ltd. | Composition pour aliments, procede de production de cette composition et aliments et boissons fonctionnels contenant cette composition |
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