JP2013173720A - 網膜症の予防又は改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、糖尿病性網膜症を初めとする網膜症に対して優れた予防又は改善効果を奏する網膜症の予防又は改善剤を提供することである。
【解決手段】カロテノイドの1種であるクリプトキサンチン及び/又はそのエステル体が網膜症に対して優れた予防又は改善効果を奏し、網膜症の予防又は改善剤の有効成分として使用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、網膜症の予防又は改善剤に関する。より詳細には、本発明は、経口、経皮又は経粘膜での投与により、網膜症(特に糖尿病性網膜症)を効果的に予防又は改善できる、網膜症の予防又は改善剤に関する。
糖尿病は、何らかの原因により血液中のグルコース濃度の調節機能が障害を受け、血糖値が病的に高く維持されている状態である。糖尿病には、すい臓からのインシュリン分泌が低下する1型糖尿病と、インシュリンは分泌されていても何らかの原因で血糖値の低下効果が発揮されにくくなっている2型糖尿病があり、いわゆる生活習慣病として取りざたされるのは2型糖尿病であることが多い。
糖尿病の怖さは、血糖値の上昇そのものよりも、それによって引き起こされる合併症にあると言える。代表的な合併症としては糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症、糖尿病性下腿潰瘍等がある。これらはいずれも患者のQOLを著しく低下させるのみならず、失明、透析導入、下肢切断等、多大な肉体的・精神的負担を患者本人やその家族に強いることになり、更に、医療費の増大等、国家的な負担をも増大させている。このため、「糖尿病の予防は治療に勝る」というコンセプトの下、様々なキャンペーンや啓蒙活動が行われている。
糖尿病の合併症の内、糖尿病性網膜症の予防又は改善のためには、医薬品のみならず、様々なサプリメントが提唱されている。中でもカロテノイドの1種であるルテインは、加齢性黄斑変性(AMD)に対する処置又は予防効果が知られており(特許文献1参照)、特にアメリカではドクターズサプリとして広く用いられている。糖尿病性網膜症に対するルテインの作用機序は、次のように考えられている:(1)先ず、内服されたルテインが小腸から吸収され、血中に移行する (2)血中のルテインが血液網膜関門(BRB)を越えて網膜に移行・局在する (3)網膜に局在したルテインは、その抗酸化作用によって糖尿病により生じる酸化ストレスを低減し、網膜の保護効果を発揮する(非特許文献1参照)。しかしながら、糖尿病予防や糖尿病患者のQOL向上に対する要望は日増しに高まっており、ルテインを凌ぐ糖尿病性網膜症の予防又は改善効果の実現が望まれている。
また、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペン、フィトエン、フィトフルエン、カルノシン酸、及び薬学上許容される担体又は賦形剤を含有する医薬組成物は、AMD、緑内障、糖尿病性網膜症及び白内障に対する予防、軽減、又は治療に有効であることも報告されている。しかしながら、特許文献2では、カロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチン、及びリコペン)と補助薬(フィトエン、フィトフルエン、及びカルノシン酸)との組み合わせによって、予防、軽減、又は治療効果の相乗的な向上を図っており、単一成分でルテインを凌ぐ効果を実現しているものではない。
一方、糖尿病性網膜症以外に、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症、未熟児網膜症等の網膜症も知られている。これらの糖尿病性網膜症以外の網膜症に対する治療についても、レーザー光凝固や硝子体手術などの対処療法としての外科的な処置が主体となっており、非外科的手法による有効な予防又は改善方策が確立されていないのが現状である。
このような従来技術を背景として、糖尿病性網膜症を初めとする網膜症に対して著効を示す網膜症の予防又は改善剤の開発が切望されている。
特公表2009−512626号公報 特公表2009−515821号公報
M. Sasaki, Y. Ozawa, T. Kurihara, S. Kubota, K. Yuki, K. Noda, S. Kobayashi, S. Ishida, K. Tsubota, Diabetologia (2010) 53:971−979
本発明の目的は、糖尿病性網膜症を初めとする網膜症に対して優れた予防又は改善効果を奏する網膜症の予防又は改善剤を提供することである。
本発明者は、この課題を解決するために鋭意検討した結果、カロテノイドの1種であるクリプトキサンチン及び/又はそのエステル体が網膜症に対して優れた予防又は改善効果を奏することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成するに至った。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体を有効成分とする、網膜症の予防又は改善剤。
項2. クリプトキサンチンがβ−クリプトキサンチンである、項1に記載の網膜症の予防又は改善剤。
項3. 網膜症が糖尿病性網膜症である、項1又は2に記載の網膜症の予防又は改善剤。
項4. 更に、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及びビタミン類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、項1〜3のいずれかに記載の網膜症の予防又は改善剤。
項5. クリプトキサンチンが温州みかん由来である、項1〜4のいずれかに記載の網膜症の予防又は改善剤。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の網膜症の予防又は改善剤を含有する、網膜症の予防又は改善用の経口剤。
本発明の網膜症の予防又は改善剤は、糖尿病性網膜症を初めとする網膜症に対して優れた予防又は改善効果を奏する。また、本発明の網膜症の予防又は改善剤は、経口、経皮又は経粘膜という簡易な投与形態で網膜症を効果的に予防又は改善できるので、糖尿病患者や高齢者等の網膜症を罹患し易い人に対して負担が少ない手法で網膜症を予防又は改善することができる。
試験例2において、糖尿病を発症したマウスにおいて、クリプトキサンチン又はルテイン投与が網膜厚に与える影響を評価した結果である。 試験例3において、糖尿病と網膜症を発症したマウスにおいて、クリプトキサンチン又はルテイン投与が網膜厚に与える影響を評価した結果である。
本発明の網膜症の予防又は改善剤は、クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体(以下、これらを「クリプトキサンチン類」と総括して表記することもある)を有効成分とすることを特徴とする。以下、本発明の網膜症の予防又は改善剤について詳述する。
網膜症の予防又は改善剤の含有成分
本発明の網膜症の予防又は改善剤の有効成分として使用されるクリプトキサンチンについては、その種類は特に制限されず、α−クリプトキサンチンであっても、またβ−クリプトキサンチンであってもよい。
本発明の網膜症の予防又は改善剤の有効成分として使用されるクリプトキサンチンのエステル体としては、具体的には、クリプトキサンチンの脂肪酸エステルが挙げられる。クリプトキサンチンの脂肪酸エステルについては、その種類については特に制限されず、α−クリプトキサンチン又はβ−クリプトキサンチンに脂肪酸がエステル結合したものであればよい。クリプトキサンチンの脂肪酸エステルを構成する脂肪酸については、特に制限されないが、例えば、炭素数8〜32好ましくは10〜24の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられる。当該脂肪酸の例として、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)が挙げられる。これらのクリプトキサンチンの脂肪酸エステルは、温州みかんに含まれており、クリプトキサンチンの脂肪酸エステルとして、温州みかん由来のクリプトキサンチン類が好適に使用される。
本発明で使用されるクリプトキサンチン類の由来については、特に制限されず、植物から得られたものであってもよく、また化学合成や酵素合成等によって得られたものであってもよい。安全性、製造コストの低減等の観点から、植物由来のクリプトキサンチン類を使用することが好ましい。
クリプトキサンチン類が含まれる植物としては、例えば、柑橘類の他、柿、パパイヤ、マンゴー等が挙げられる。柑橘類として、具体的には、温州みかん、イヨカン、夏みかん、オレンジ、カボス、カワバタ、キシュウミカン、清見、キンカン、グレープフルーツ、ゲッキツ、三宝柑、シイクワサー、ジャバラ、スウィーティー、スダチ、ダイダイ、タチバナ、デコポン、ナツダイダイ、ハッサク、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、晩白柚、ヒュウガナツ、ブンタン、ポンカン、マンダリンオレンジ、ヤツシロ、ユズ、ライム、レモン、カラタチ等が挙げられる。これらの植物の中でも柑橘類、とりわけ温州みかんは、生産量が多く、β−クリプトキサンチン含有量も高いことから、クリプトキサンチン類の原料として好適である。
本発明において、植物由来のクリプトキサンチン類を使用する場合、当該クリプトキサンチン類は、他の植物由来成分が除去されて精製されたものであってもよいが、クリプトキサンチン類以外の植物由来成分が含まれていてもよい。例えば、本発明で使用されるクリプトキサンチン類は、クリプトキサンチン類を含む前記植物の加工物の状態であってもよく、また前記植物原料からクリプトキサンチン類を抽出した抽出物の状態であってもよい。
クリプトキサンチン類を含む前記植物の加工物としては、具体的には、前記植物を搾汁した残渣、当該残渣の酵素処理物、これらの乾燥物等が例示される。
前記残渣は、前記植物の果実をインライン搾汁機、チョッパーヘルパー搾汁機、ブラウン搾汁機等により搾汁した後、パドル型又はスクリュー型のフィニシャー等でろ過又は篩別、或いは遠心分離を行うことによって得ることができる。
また、前記酵素処理物は、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、キシラーゼ、プロテアーゼ、ペプチターゼ、リパーゼ、マレーションエンザイム(細胞壁崩壊酵素)等の酵素を前記残渣に作用させることにより得ることができる。当該酵素処理物は、温州みかんからジュースを絞った後の残渣に多量に含まれる食物繊維を水に可溶化・除去することにより残渣を減容でき、相対的にクリプトキサンチン類濃度を高めることが可能であるため、本発明において好適に使用される。
前記残渣及び酵素処理物は、水洗処理(水での洗浄処理)に供されたものであってもよい。前記残渣及び乾燥物を水洗処理に供することにより、残渣及びその酵素処理物中に存在する酸や糖等の水溶性不純物を除去し、クリプトキサンチン類濃度を高めることができる。更に、前記残渣及び酵素処理物は、クリプトキサンチン類濃度を高めるために、固液分離により水分が減じられたものであってもよい。
また、前記乾燥物は、前記残渣又は酵素処理物を、熱風乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、遠赤外線加熱乾燥等の乾燥処理に供することにより得ることができる。当該乾燥物は、水分が除去されることにより、前記残渣又は酵素処理物中のクリプトキサンチン類濃度が高められているため、本発明において好適に使用される。
斯して得られる前記植物の加工物は、粉末化、懸濁液化等の処理に供して所望の形状に調整してもよい。
クリプトキサンチン類を含む前記植物の抽出物としては、例えば、前記植物の果実、前記植物を搾汁した残渣、当該残渣の酵素処理物、これらの乾燥物等を抽出原料として用いて、溶媒抽出、超臨界抽出等の抽出処理に供することにより得ることができる。
前記抽出原料の内、前記植物の果実については、果実そのままであってもよいが、果実をすり潰し、破砕、粉砕、加熱、脱水、乾燥等の物理的処理に供したものであってもよい。また、前記抽出原料として使用される残渣及びその酵素処理物は、クリプトキサンチン類を含む前記植物の加工物として使用される残渣及びその酵素処理物と同様である。
前記溶媒抽出は、前記抽出原料を抽出溶媒に静置又は撹拌しながら浸漬することにより行われる。前記溶媒抽出に使用される抽出溶媒としては、クリプトキサンチン類を抽出可能な溶媒であることを限度として特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類等の有機溶媒が挙げられる。これらの抽出溶媒は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、アルコール類、特にエタノールは、クリプトキサンチン類の抽出効率が高く、前記抽出溶媒として好適である。また、クリプトキサンチン類の抽出効率を高めるために、必要に応じて、水、酵素、界面活性剤等の添加物を抽出溶媒中に添加してもよい。
また、前記超臨界抽出は、前記抽出原料を、超臨界二酸化炭素等の超臨界流体と接触させることにより行われる。
斯して得られた抽出物は、必要に応じて、更に濃縮、乾燥、脱塩、活性炭処理、再結晶法、分配精製、カラムクロマトグラフィー等の精製処理に供することにより、不純物類を取り除いてもよい。これらの処理は、同一処理を複数回繰り返して実施してもよく、2以上の異なる処理を組み合わせて実施してもよい。また、得られた抽出物は、更に粉末化や乳化等の処理に供して、所望の形状に調整してもよい。
本発明の網膜症の予防又は改善剤は、その有効成分として、α−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン、及びこれらのエステル体の中から、1種を単独で含有してもよく、また2種以上を含有してもよい。これらのクリプトキサンチン類の中でも、好ましくはβ−クリプトキサンチン及びそのエステル体、更に好ましくはβ−クリプトキサンチンが挙げられる。これらのクリプトキサンチン類の原料としては、安全性の観点から、食経験のある植物又は果物に由来するものが好ましく、温州みかん由来のクリプトキサンチン類が一層好ましい。
更に、より一層効果的に網膜症の予防又は改善作用を発揮させるという観点から、本発明の網膜症の予防又は改善剤の有効成分として、好ましくは温州みかんの抽出物、更に好ましくは温州みかんの搾汁残渣の抽出物、特に好ましくは温州みかんの搾汁残渣の酵素処理物の抽出物が挙げられる。温州みかんには、後述するクリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及びビタミン類が含まれており、本発明の網膜症の予防又は改善剤の有効成分として使用される温州みかんの抽出物には、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及びビタミン類が含まれた状態であってもよい。
また、本発明の網膜症の予防又は改善剤は、クリプトキサンチン類に加えて、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及びビタミン類の中の少なくとも1種が含まれていてもよい。クリプトキサンチン類と共に、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及び/又はビタミン類を含有することにより、網膜症の予防又は治療作用をより一層有効に発揮させ得ることがある。限定的な解釈を望むものではないが、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及び/又はビタミン類等の作用により、クリプトキサンチン類の体内への吸収性や吸収後の体内での安定性が高まることがあり、クリプトキサンチン類の単独使用の場合よりも、網膜症の予防又は治療作用が向上することがあると推測される。
クリプトキサンチン以外のカロテノイドとしては、具体的には、α‐カロテン、β‐カロテン、リコピン、フィトエン等のカロテン類;これらのカロテン類のエポキシ体;アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、ツナキサンチン、サルモキサンチン、パラシロキサンチン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ククルビタキサンチン、ディアトキサンチン、アロキサンチン、ペクテノール、ペクテノロン、マクトラキサンチン、カプサンチン、カプサンチノール、フコキサンチン、フコキサンチノール、ペリジニン、ハロシンチアキサンチン、アマロウシアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、ロドキサンチン、ビキシン、ノルビキシン等のキサントフィル類;ノルカロテノイド類;アポカロテノイド類;これらの脂肪酸エステル体が例示される。これらのカロテノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、好ましくは、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン及びこれらの脂肪酸エステル体が挙げられる。これらのカロテノイドは、β−カロテンやルテイン等が予め混合された市販のマルチカロテノイド製剤を用いてもよい。
また、クリプトキサンチン以外のカロテノイドは、天然物から抽出・精製して得られた天然カロテノイドであってもよく、また発酵法又は合成法で得られたものであってもよい。天然カロテノイドとしては、例えば、アナトー色素、イモカロテン、クチナシ黄色素、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カニ色素、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素(別名:パプリカ色素)、トウモロコシ色素、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ベニノキ末色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素等が挙げられる。これらの天然カロテノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の網膜症の予防又は改善剤にクリプトキサンチン以外のカロテノイドを含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、使用するカロテノイドの種類等に応じて適宜設定される。
ポリフェノールとしては、具体的には、フラボノイド、リグナン、これらの配糖体が例示される。これらのポリフェノールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、アントシアニンは、抗酸化力を有することに加え、ロドプシンの再生を促進することから好適である。また、ヘスペリジンは、ビタミンPとも呼ばれ、毛細血管の機能向上や血流改善効果を有し好適である。これらのポリフェノールは、粗精製品、精製品、これらを含有する製剤等を用いることができる。
アントシアニンはアントシアニジンをアグリコンとする配糖体であり、植物の花、果実、種子、葉、茎、根等に含まれ、赤〜紫〜青色を呈する色素として植物界に広く存在する。本発明で使用されるアントシアニンとしては、例えば、赤キャベツ、赤米、アカダイコン、アズキ、黒大豆種皮、シソ、ハイビスカス、ブラックキャロット、ムラサキイモ、ムラサキトウモロコシ、ムラサキヤマイモ等の植物の抽出物;エルダーベリー、イチゴ、イチジク、カウベリー、カシス、グースベリー、クランベリー、サーモンベリー、スィムブルーベリー、ストロベリー、ダークスィートチェリー、チェリー、ハルクベリー、ビルベリー、ブドウ、ブラックカーラント、ブラックベリー、ブルーベリー、プラム、ホワートルベリー、ボイセンベリー、マルベリー、ラズベリー、レッドカーラント、ローガンベリー等の植物の濃縮果汁又は抽出物等が挙げられる。これらのアントシアニンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の網膜症の予防又は改善剤にポリフェノールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、使用するポリフェノールの種類等に応じて適宜設定される。
ビタミン類としては、具体的には、ビタミンA、B、C、E、P、これらの誘導体・類縁体が挙げられる。これらのビタミン類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、好ましくは、ビタミンC、E及びこれらの誘導体が挙げられる。
ビタミンC及びその誘導体としては、具体的には、L−アスコルビン酸;アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレート等のアスコルビン酸モノアルキルエステル類;アスコルビン酸モノリン酸エステル及びそのマグネシウム塩等のアスコルビン酸モノエステル類;アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレート等のアスコルビン酸ジアルキルエステル類;アスコルビン酸ジリン酸エステル及びその塩等のアスコルビン酸ジエステル類;アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレート等のトリアルキルエステル類;アスコルビン酸トリリン酸エステル等のアスコルビン酸トリエステル類;3−O−エチル,6−アセチルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ブチルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ラウロイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−パルミトイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−オレオイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ステアロイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ベヘルミノイルL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等が挙げられる。これらのビタミンC及びその誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのビタミンC及びその誘導体の中でも、好ましくはL−アスコルビン酸−2−グルコシドが挙げられる。
また、ビタミンE及びその誘導体としては、具体的には、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールと各異性体のニコチン酸、酢酸、コハク酸等のエステル等が挙げられる。また、ビタミンE類縁体としては、例えば、トコトリエノール及びその誘導体が挙げられる。これらのビタミンE及びその誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の網膜症の予防又は改善剤にビタミン類を含有させる場合、その含有量については、特に制限されず、使用するビタミン類の種類等に応じて適宜設定される。
網膜症の予防又は改善剤の使用態様
本発明の網膜症の予防又は改善剤は、経口、経腸、注射、経粘膜、経皮等の任意の投与形態で使用できるので、種々の形態の製品に配合して使用できる。本発明の網膜症の予防又は改善剤が配合される製品の形状についても、特に制限されず、固形状、半固形状、液状のいずれあってもよい。本発明の網膜症の予防又は改善剤が配合される製品形態として、好ましくは経口剤、外用剤が挙げられ、更に好ましくは経口剤が挙げられる。当該経口剤には、飲食品、内服用医薬品(内服用医薬部外品を含む)が含まれる。また、当該外用剤には、外用医薬品(外用医薬部外品を含む)、化粧料が含まれる。
本発明の網膜症の予防又は改善剤を経口剤に使用する場合、本発明の網膜症の予防又は改善剤を単独で又は他の添加成分と組み合わせて所望の形態に調製して、網膜症の予防又は改善用の経口剤として提供される。
より具体的には、経口剤が飲食品である場合には、本発明の網膜症の予防又は改善剤を単独で又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製して、網膜症の予防又は改善用の飲食品として提供される。当該飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、具体的には、パン、うどん、そば、ご飯等の主菜;チーズ、ハム、ウインナー、ソーセージ、魚介加工品等の副菜;調味料;果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料、コーヒー、茶、牛乳、果汁飲料、清涼飲料水等の飲料;アイスクリーム、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、チューインガム、ヨーグルト、グミ、チョコレート、ビスケット等の菓子類;錠剤、顆粒、粉剤、カプセル、ソフトカプセル、栄養ドリンク等のサプリメント等が例示される。なお、前記病者用食品については、網膜症の予防又は改善が望まれる患者、特に糖尿病患者用の食品として、好適に使用される。
更に、本発明の網膜症の予防又は改善剤を飲食品に使用する場合、本発明の網膜症の予防又は改善剤を単独で又は他の成分と組み合わせて、網膜症の予防又は改善用の食品添加剤として提供することもできる。
また、経口剤が内服用医薬品である場合には、本発明の網膜症の予防又は改善剤を単独で又は他の薬理活性成分、薬学的に許容される基材や添加成分等と組み合わせて所望の形態に調製して、網膜症の予防又は改善用の内服用医薬品として提供される。当該内服用医薬品の形態としては、特に制限されないが、具体的には、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤等が挙げられる。
本発明の網膜症の予防又は改善剤を経口剤に使用する場合、経口剤における本発明の網膜症の予防又は改善剤の配合割合については、経口剤の種類や形態等に応じて異なるが、例えば、該経口剤100g当りのクリプトキサンチン類が総量で2g〜1ng、好ましくは500mg〜100ng、更に好ましくは200mg〜20μgが挙げられる。
また、本発明の網膜症の予防又は改善剤として、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール類、及び/又はビタミン類を含むものを使用する場合、これらの成分の経口剤における各配合割合の例として以下の範囲が挙げられる。
クリプトキサンチン以外のカロテノイドの場合:経口剤100g当り、10ng〜25g、好ましくは1μg〜5g。
ポリフェノール類の場合:経口剤100g当り、1μg〜50g、好ましくは0.1mg〜10g。
ビタミン類の場合:ビタミンB群の場合、経口剤100g当り、0.01mg〜10g、好ましくは1mg〜5g;ビタミンCの場合、経口剤100g当り、0.1mg〜20g、好ましくは10mg〜10g;ビタミンEの場合、経口剤100g当り、1mg〜20g、好ましくは100mg〜1g。
本発明の網膜症の予防又は改善剤を外用剤に使用する場合、本発明の網膜症の予防又は改善剤を他の添加成分と組み合わせて所望の形態に調製して、網膜症の予防又は改善用の外用剤として提供される。当該外用剤の形態としては、特に制限されないが、具体的には、クリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤、ローション剤、パップ剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤等の外用医薬品;乳液、クリーム、化粧水(ローション)、パック、美容液、洗浄剤、メーキャップ化粧料等の化粧料等が挙げられる。これらの外用剤の中でも、眼粘膜又はその目元に適用される製剤形態であることが望ましく、かかる観点から、点眼剤、或いはアイマスク又はアイパッチ形態の外用医薬品又は化粧料が好適である。
本発明の網膜症の予防又は改善剤を外用剤に使用する場合、外用剤における本発明の網膜症の予防又は改善剤の配合割合については、外用剤の種類や形態等に応じて異なるが、例えば、外用剤100g当たり、クリプトキサンチン類が総量で10pg〜10g、好ましくは100pg〜1g、更に好ましくは10ng〜500mgとなる範囲が挙げられる。
本発明の網膜症の予防又は改善剤は、網膜症を予防する作用と、一旦発症した網膜症の症状を改善する作用を併せ持っているので、網膜症を罹患するおそれがある者に止まらず、網膜症を罹患している患者に対しても適用できる。ここで、網膜症を罹患するおそれがある者としては、具体的には、糖尿病患者、老齢者等が挙げられる。
本発明の網膜症の予防又は改善剤の適用対象となる網膜症については、特に制限されず、例えば、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、腎性網膜症、網膜静脈閉塞症、血管障害性網膜症、動脈硬化性網膜症、高血圧性網膜症、加齢黄斑変性症等が挙げられる。これらの網膜症の中でも、より一層優れた予防又は改善効果を奏させるという観点から、糖尿病性網膜症が挙げられる。
本発明の網膜症の予防又は改善剤の投与又は摂取量については、その投与形態、投与対象者の年齢、期待される効果等に応じて、網膜症の予防又は改善に有効な量を適宜設定すればよい。例えば、経口投与又は摂取される場合であれば、クリプトキサンチン類の成人1日当たりの投与又は摂取量を、通常10ng〜5000μg程度、好ましくは1〜2500μg程度に設定すればよい。
また、本発明の網膜症の予防又は改善剤として、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール類、及び/又はビタミン類を含むものを使用する場合、これらの成分の投与又は摂取量の例として以下の範囲が挙げられる。
クリプトキサンチン以外のカロテノイドの場合:成人1日当たり、10ng〜25g、好ましくは1μg〜5g。
ポリフェノール類の場合:成人1日当たり、1μg〜50g、好ましくは0.1mg〜10g。
ビタミン類の場合:ビタミンB群の場合、成人1日当たり、1μg〜80mg、好ましくは0.1〜25mg;ビタミンCの場合、成人1日当たり、0.01〜5000mg、好ましくは0.5〜200mg;ビタミンEの場合、成人1日当たり、0.1〜500mg、好ましくは5〜20mg。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<測定方法>
(1)β−クリプトキサンチン
島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(HPLC) LC−10Aを用い、ウォーターズ社製ResolveC18(φ3.9×150mm)カラムを接続し、水:メタノール(容量比)=50:50に試料を溶解させたものをInjectionした。移動相として、メタノール:酢酸エチル(容量比)=7:3、カラム温度30℃、流速1.0ml/min、検出波長450nmで、試料中のクリプトキサンチン含有量を分析した。
<網膜症の予防又は改善剤の調製>
製造例1
温州みかん搾汁残渣(みかんジュース粕、水分率約90%)1kgに食品加工用ペクチナーゼ酵素剤であるスミチームPX(新日本化学工業株式会社製、ペクチナーゼ5,000ユニット/g、アラバナーゼ90ユニット/g)1gとセルラーゼ/ヘミセルラーゼ酵素剤であるセルラーゼY-NC(ヤクルト薬品工業株式会社製、セルラーゼ30,000ユニット/g)1gを添加し、よくかき混ぜて室温で8時間静置反応を行った。この反応液を遠心分離して上清を除去した後、水を添加して撹拌し、再度遠心分離により上清を除去した。この沈殿物を凍結乾燥機により乾燥し、ナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)にて5分間粉砕後、300メッシュの篩を通過する粉砕物(以下、「β−クリプトキサンチン含有組成物1」と表記する)50gを得た。β−クリプトキサンチン含有組成物1には、β−クリプトキサンチンがフリー体換算で1mg/g含まれていた。
製造例2
前記製造例1で製したβ−クリプトキサンチン含有組成物1の50gに対し500mlのエタノールを添加し、室温で2時間撹拌後に固形分をろ過・除去したろ液を濃縮し、20gの濃縮物(以下、「β−クリプトキサンチン含有組成物2」と表記する)を得た。β−クリプトキサンチン含有組成物2には、β−クリプトキサンチンがフリー体換算で2.5mg/g含まれていた。
製造例3
前記製造例1で製したβ−クリプトキサンチン含有組成物1の50gに対し500mlのエタノールを添加し、室温で2時間撹拌後、ろ過してみかん抽出液480mlを得た。得られた抽出液100mlに100mlの10%(w/v)γ-シクロデキストリン水溶液と300mlの蒸留水を加えて室温で30分撹拌した後、凍結乾燥・粉砕して粉砕物(以下、「β−クリプトキサンチン含有組成物3」と表記する)10gを得た。β−クリプトキサンチン含有組成物3には、β−クリプトキサンチンがフリー体換算で1.5mg/g含まれていた。
製造例4
前記製造例2で製したβ−クリプトキサンチン含有組成物2の20gに対し、100mgの乳化剤(三菱化学社製 ポリグリセリン酸エステル)と飲料水を混合・分散して1Lに調整し、クリプトキサンチン含有飲料を製造した。得られたクリプトキサンチン含有飲料には、β-クリプトキサンチンがフリー体換算で0.05mg/ml含まれていた。
製造例5
次に示す製法により、ソフトカプセル(サプリメント)を製造した。
成分 含有量(100g中)
1)β−クリプトキサンチン含有組成物1 50g
2)サフラワー油 50g
製法:1)と2)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に200mg/カプセルで充填した。得られたソフトカプセルには1カプセル当たりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.1mg含まれていた。
製造例6
次に示す製法により、ソフトカプセル(サプリメント)を製造した。
成分 配合量(100g中)
1)β−クリプトキサンチン含有組成物1 50g
2)ビタミンE 10g
3)ビタミンC誘導体 5g
4)サフラワー油 35g
製法:1)から4)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に200mg/カプセルで充填した。得られたソフトカプセルには1カプセル当たりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.1mg含まれていた。
製造例7
次に示す製法により、錠剤(サプリメント)を製造した。
成分 配合量(100g中)
1)β−クリプトキサンチン含有組成物3 10g
2)マルチトール 50g
3)結晶セルロース 26g
4)ショ糖脂肪酸エステル 8g
5)ビタミンC 2g
6)マリーゴールド色素 1g
7)甘味料 適量
8)酸味料 適量
9)香料 適量
製法:1)から9)を混合し、更に全体の重量を結晶セルロースにより100gとした後に均一に混合し、常法により顆粒状にした後、0.5g/錠で打錠した。得られた錠剤には1錠当たりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.075mg含まれていた。
製造例8
次に示す製法により、ドリンク剤を製造した。
成分 配合量(100mL中)
1)β−クリプトキサンチン含有組成物2 100mg
2)ハチミツ 320mg
3)環状オリゴ糖 600mg
4)ビルベリーエキス 100mg
5)ビタミンC 50mg
6)甘味料 適量
7)酸味料 適量
8)保存料 適量
9)香料 適量
10)水 残余
製法:10)に1)から9)を順次添加した。得られたドリンク剤には100ml当たりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.25mg含まれていた。
製造例9
次に示す製法により、点眼剤を製造した。
成分 配合量(100mL中)
1)β−クリプトキサンチン含有組成物2 2.00g
2)酢酸トコフェロール 0.05g
3)ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
4)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.50g
5)エデト酸ナトリウム 0.01g
6)ホウ酸 0.50g
7)ホウ砂 0.10g
8)塩化ナトリウム 0.60g
製法:80mlの精製水に1)から8)を順次添加・混合したのち、希塩酸にてpHを7.0に調整した。これに精製水を加えて体積を100mlとした後、フィルター滅菌し、滅菌済みの容器に分注した。製造物9には1mlあたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.05mg含有されていた。
製造例10
次に示す製法により、アイマスクを製造した。
成分 配合量(100g中)
1)β−クリプトキサンチン含有組成物2 2.00g
2)白色ワセリン(日本薬局方) 80.00g
3)パラオキシ安息香酸ブチル 0.05g
4)流動パラフィン 17.95g
製法:上記1)〜4)を均一に混合し、厚手の不織布に1平方センチ当たり1gとなるよう均一に塗布し、更に局方ガーゼを重ねた。得られたアイマスクには1平方センチ当たりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.05mg含有されていた。
比較製造例1
製造例4のクリプトキサンチン含有飲料の成分の内、β−クリプトキサンチン含有組成物2に代えてルテインを使用し、製造例4と同様の製法でルテイン含有飲料(ルテイン濃度がフリー体換算で0.05mg/ml)を製造した。
比較製造例2
100mgの乳化剤(三菱化学社製 ポリグリセリン酸エステル)と飲料水を混合・分散して1Lに調整し、クリプトキサンチン及びルテイン非含有飲料を製造した。
<クリプトキサンチンの体内動態>
試験例1
ウズラ(メス)に飼料100g当たりβ−クリプトキサンチン含有組成物1を5g添加したものを与えて飼育した。2週間後にウズラを屠殺して眼球を摘出し、眼球組織の構造体毎のβ−クリプトキサンチン及びルテインの含有量を定量した。得られた結果を表1に示す。
表1から分かるように、経口摂取されたβ−クリプトキサンチンは、網膜と強膜に局在することが明らかとなった。なお、この部位には、ルテインとゼアキサンチンも多量に存在していたが、これは飼料に含まれるトウモロコシに由来するものと考えられた。
<糖尿病性網膜症予防・改善効果>
試験例2
6週齢の雄性C57BL/6マウスを1週間の予備飼育の後にストレプトゾトシン(シグマ)を腹腔内投与して糖尿病を誘導させた。1週間後にマウスの血糖値を測定し、糖尿病の発症を確認したマウスを3群(1群当たり、6匹)に分割し、それぞれにβ−クリプトキサンチンが0.02質量%となるようにβ−クリプトキサンチン含有組成物1を混合した飼料(クリプトキサンチン添加群)、ルテインを0.02質量%となるように混合した飼料(ルテイン添加群)、添加物なしの飼料(無添加群)を供与して飼育した。また比較のために、糖尿病誘導をしていないマウスに対して添加物なしの飼料を供与して飼育した(対照群)。
試験飼料を供与して8週間飼育後、各群のマウスを儀死させた後に眼球を摘出し、神経乳頭部を通る最大面積が出るよう赤道面で切片を作成してヘマトキシリン・エオジン(HE)染色した。染色標本は顕微鏡下で網膜及びその構成層の厚みを比較した。なお、網膜及び各構成層の厚みは、標本切断部位による網膜厚のばらつきの影響を排除するため、糖尿病性網膜症により厚みが変わらない外顆粒層に対する比率で比較した。
得られた結果を図1に示す。無添加群(図1中、Blankと表記)では、対照群(図1中、Controlと表記)に比べて網膜の厚みが減少しており、糖尿病性網膜症を発症していた。一方、ルテイン添加群(図1中、Luteinと表記)では、網膜のひ薄化に対して一定の抑制効果は認められたが、対照群よりは網膜厚が薄く、効果は限定的であった。これに対して、クリプトキサンチン添加群(図1中、CXと表記)では、網膜の厚みは対照群と同等であり、網膜症の発症が有効に予防されていた。
試験例3
試験例2と同様にして糖尿病を誘導したマウスを、無添加の通常飼料と水で4週間飼育して糖尿病と網膜症を発症させた後に3群(1群当たり、6匹)に分割した。その後、各群のマウスに、製造例4の飲料(クリプトキサンチン添加群)、比較製造例1の飲料(ルテイン添加群)、比較製造例2の飲料(無添加群)を自由に摂取できる状態で供与して8週間飼育した後、網膜を摘出・HE染色して試験例2と同様に比較した。また比較のために、糖尿病誘導をしていないマウスに対して添加物なしの飼料を供与して飼育した(対照群)。
得られた結果を図2に示す。ルテイン添加群(図2中、Luteinと表記)では、マウスの網膜厚はブランク群(図2中、Blankと表記)と同等であり、対照群(図2中、Controlと表記)と比べ有意にひ薄化していた。これに対し、クリプトキサンチン添加群(図2中、CXと表記)のマウスの網膜厚は、対照群と有意な差がなく、更にブランク群に比べて有意に厚かった。これらの結果から、クリプトキサンチンの投与によって、一旦発症した糖尿病性網膜症の進行が抑制され、その症状が改善していることが確認された。

Claims (6)

  1. クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体を有効成分とする、網膜症の予防又は改善剤。
  2. クリプトキサンチンがβ−クリプトキサンチンである、請求項1に記載の網膜症の予防又は改善剤。
  3. 網膜症が糖尿病性網膜症である、請求項1又は2に記載の網膜症の予防又は改善剤。
  4. 更に、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、及びビタミン類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の網膜症の予防又は改善剤。
  5. クリプトキサンチンが温州みかん由来である、請求項1〜4のいずれかに記載の網膜症の予防又は改善剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の網膜症の予防又は改善剤を含有する、網膜症の予防又は改善用の経口剤。
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