JP2010161897A - 回転子、回転電機及び、密閉型圧縮機 - Google Patents

回転子、回転電機及び、密閉型圧縮機 Download PDF

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Abstract

【課題】界磁磁束がケーシングに漏洩することを回避又は抑制する。
【解決手段】回転軸Qの周りで環状配置される界磁発生部12の複数を備え、回転軸Qの一方側で固定子20と対向する回転子10であって、回転子10は、界磁発生部12を、回転軸Qを中心とする円の周方向に沿って予め定められた間隔を空けて保持する非磁性体の保持部材14と、保持部材14の外周側を覆う磁性体環16とを有する。界磁発生部12から漏洩する磁束は密閉型圧縮機100のケーシング60へ到達する前に磁性体環16で短絡される。
【選択図】図3

Description

本発明は、回転電機に採用される回転子に関し、当該回転電機は密閉型圧縮機に搭載することができる。
回転電機の構成の一例として、界磁磁束を発生する界磁子たる回転子と、電機子巻線を有してこれに流れる電機子電流によって回転磁界を発生する電機子たる固定子とを備えるものがある。
これらの回転子と固定子とが、当該回転子の回転軸方向に空隙を介して対向するアキシャルギャップ型モータがある。このアキシャルギャップ型モータを、磁性体で形成された容器(ケーシング)の内部に収容して密閉型圧縮機を構成する技術が提案されている(例えば下記特許文献1)。
特開2008−228363号公報
圧縮機の運転効率向上を図るために、モータのトルクを向上することが望ましい。トルクを向上させるには界磁子が有する永久磁石の量を増加させ、磁気装荷を高める必要があるが、永久磁石の量を増加させようとすると、回転軸方向からの平面視で界磁子の面積が増大し、もって永久磁石とケーシングとの距離が近接する事態を招来する。
永久磁石とケーシングとの距離が近接すると例えば、次のような問題が生じる。すなわち、永久磁石の磁束の一部が固定子に渡ることなく外周を短絡し、ケーシングにも短絡した磁束が通ることにより、ケーシング内に渦電流が発生して損失となる。特に、弱め磁束制御時には弱め磁束制御を行わない場合と比較して、界磁子と電機子とが同じ極性の磁極を呈して対向する状態が多くなるため、界磁磁束が電機子以外に漏洩しやすい。
したがって、永久磁石とケーシングとの距離が小さい場合には、特に、弱め磁束制御時に界磁磁束がケーシングに漏洩する事態を招来する。ケーシングに漏洩した界磁磁束は渦電流を発生させ運転効率を損なう要因となる。
本発明は、上記課題に鑑み、界磁磁束がケーシングに漏洩することを回避又は抑制する技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明に係る回転子の第1の態様は、所定の軸(Q)の周りで環状配置される界磁発生部(12)の複数を備え、前記軸の一方側で固定子(20)と対向する回転子(10)であって、前記回転子は、前記界磁発生部を、前記軸を中心とする円の周方向に沿って予め定められた間隔を空けて保持する非磁性体の保持部材(14)と、前記保持部材の外周側を覆う磁性体環(16)とを有する。
本発明に係る回転子の第2の態様は、その第1の態様であって、前記磁性体環(16)は、前記軸(Q)方向の端部において、前記保持部材(14)の前記界磁発生部(12)が呈する主面側に屈曲する屈曲部(16c)を呈する。
本発明に係る回転子の第3の態様は、その第1又は第2の態様であって、第前記磁性体環(16)は、前記保持部材(14)と溶接している。
本発明に係る回転子の第4の態様は、その第1ないし第3の態様のいずれかであって、前記保持部材(14)の剛性は前記磁性体環(16)の剛性よりも低い。
本発明に係る回転子の第5の態様は、その第1ないし第4の態様のいずれかであって、前記保持部材(14)の剛性は、前記界磁発生部(12)の剛性よりも低い。
本発明に係る回転子の第6の態様は、その第4又は第5の態様であって、前記保持部材(14)は、前記磁性体環(16)と、前記界磁発生部(12)との間で空隙(14h)を呈する。
本発明に係る回転子の第7の態様は、その第1の態様であって、前記界磁発生部(12)のそれぞれは、永久磁石(122)と、前記軸方向からの平面視で前記永久磁石と略同形状を呈し、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方側で隣接する磁性体コア(124)とを含み、前記磁性体コア(14)の飽和磁束密度は、前記磁性体環(16)の飽和磁束密度よりも低い。
本発明に係る回転子の第8の態様は、その第1の態様であって、前記界磁発生部(12)のそれぞれは、永久磁石(122)と、前記軸方向からの平面視で前記永久磁石と略同形状を呈し、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方側で隣接する磁性体コア(124)とを含み、前記磁性体コア(14)のシリコン含有量は、前記磁性体環(16)のシリコン含有量よりも多い。
本発明に係る回転子の第9の態様は、その第1の態様であって、前記界磁発生部(12)のそれぞれは、永久磁石(122)と、前記軸方向からの平面視で前記永久磁石と略同形状を呈し、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方側で隣接する磁性体コア(124)とを含み、前記磁性体コア(14)は圧粉磁芯が採用され、前記磁性体環(16)は環状の鋼板が採用される。
本発明に係る回転子の第10の態様は、その第1の態様であって、前記界磁発生部(12)が前記固定子(20)と対向する主面のうち前記軸(Q)から最も遠い外縁部(12e)は、前記磁性体環(16)の前記軸方向の端部(16e)よりも前記軸方向に突出する。
本発明に係る回転子の第11の態様は、その第1の態様であって、前記界磁発生部(12)が前記固定子(20)と対向する主面は、予め定められた位置において、前記磁性体環(16)の前記軸(Q)方向の端部よりも前記軸方向に突出する。
本発明に係る回転子の第12の態様は、その第1の態様であって、前記磁性体環(16)は、前記界磁発生部(12)が呈する主面と接する磁性体板と一体を呈する。
本発明に係る回転子の第13の態様は、その第1の態様であって、前記保持部材(14)は、非磁性金属、樹脂又はセラミックのいずれかが採用される。
本発明に係る回転子の第14の態様は、その第1の態様であって、前記保持部材(14)は、前記軸(Q)方向に沿って配設される第1フレーム(142)及び第2フレーム(144)を含む。
本発明の第1ないし第14の態様のいずれかの回転子(10)と、前記回転子の前記軸(Q)の少なくとも一方側で前記回転子と対向する固定子(20)とを備える回転電機(50)を構成することができる。当該回転電機(50)と、前記回転子(10)の外周に近接して磁性体ケーシング(60)とを備えて密閉型圧縮機(100)を構成することができる。
本発明に係る回転子の第1の態様によれば、軸を法線とする面内でロータの外側に漏洩する磁束を低減できる。
第2の態様によれば、磁性体環で保持部材を把持できる。もって、磁性体環に対して保持部材が軸方向に移動することを回避又は抑制できる。
第3の態様によれば、磁性体環で保持部材を把持できる。もって、磁性体環に対して保持部材が軸方向に移動することを回避又は抑制できる。
第4の態様によれば、磁性体環を配設するときに軸へと向けて作用する力を保持部材が吸収するので、磁性体環及び保持部材の破損を回避又は抑制できる。
第5の態様によれば、磁性体環を配設するときに軸へと向けて作用する力を保持部材が吸収するので、磁性体環及び保持部材の破損を回避又は抑制しつつ、界磁発生部及び磁性体コアの破損も回避又は抑制できる。
第6の態様によれば、磁性体環を保持部材の周囲に配設するときに軸へと向けて作用する力を、磁性体環と界磁発生部との間で保持部材が呈する空隙が吸収できる。もって、磁性体環及び保持部材の破損を回避又は抑制しつつ、界磁発生部の破損も回避又は抑制できる。
本発明に係る回転子の第7の態様によれば、磁性体環よりも軸に対して外側に漏洩する磁束を低減できる。
本発明に係る回転子の第8の態様によれば、磁性体コアでの鉄損が磁性体環での鉄損よりも少ない。もって、電機子巻線の高調波磁束の影響がより大きい部分に鉄損の小さい部材を用い、それ以外の部分ではできるだけ磁束密度(透磁率)を高めることで、鉄損の低減及び漏洩磁束の低減を効率的に図ることができる。つまり、磁性体環よりも回転軸に対して外側に漏洩する磁束を低減できる。
本発明に係る回転子の第9の態様によれば、磁性体コアでの鉄損が磁性体環での鉄損よりも少ない。もって、電機子巻線の高調波磁束の影響がより大きい部分に鉄損の小さい部材を用い、それ以外の部分ではできるだけ磁束密度(透磁率)を高めることで、鉄損の低減及び漏洩磁束の低減を効率的に図ることができる。
本発明に係る回転子の第10の態様によれば、回転子を回転電機に採用した場合に、エアギャップの外周側からゲージを挿入することにより、当該回転子と固定子との間のエアギャップの測定に資する。また、回転子と固定子との空隙を小さくすることができる。
本発明に係る回転子の第11の態様によれば、回転子を回転電機に採用した場合に、当該回転子と固定子との間のエアギャップの測定に資する。
本発明に係る回転子の第12の態様によれば、磁性体環よりも回転軸に対して外側に漏洩する磁束を低減できるとともに、界磁発生部の磁束の一部を短絡することで、ロータに対して両側のエアギャップに働く吸引力の差を縮小することができる。
本発明に係る回転子の第13の態様によれば、製造コストを抑制できる。
本発明に係る回転子の第14の態様によれば、界磁発生部を安定的に保持できる。
本発明に係る回転電機の第1の態様によれば、回転電機の効率向上に資する。
本発明に係る密閉型圧縮機の第1の態様によれば、密閉型圧縮機の効率向上に資する。
本発明の第1実施形態に係る回転子の分解斜視図である。 回転子の斜視図である。 圧縮機の断面図である。 本発明の第2実施形態に係る回転子の部分断面図である。 界磁発生部を保持部材に固定する手法を説明する図である。 回転子と電機子用磁芯との位置関係を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る回転子の部分断面図である。 変形例に係る回転子の部分断面図である。 変形例に係る回転子の部分断面図である。 変形例に係る回転子の部分断面図である。 変形例に係る回転子の部分断面図である。 変形例に係る回転子の部分断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図1を初めとする以下の図には、本発明に関係する要素のみを示す。
〈第1実施形態〉
〈構成〉
図1は本発明の第1実施形態に係る回転子10の分解斜視図であり、図2は回転子10の斜視図である。なお、図1は回転軸Q方向に沿って分解したものを示している。また、図3は密閉型圧縮機100の断面図である。ただし、回転電機50については側面図を示している。
本実施形態における回転子10は複数(例えば図1では6個)の界磁発生部12を備えている。複数の界磁発生部12のそれぞれは、回転軸Q方向からの平面視で互いに略同形状を呈する永久磁石122と磁性体コア124とを有している。永久磁石122と磁性体コア124とが回転軸Q方向に積層することで界磁発生部12を形成する。
磁性体コア124は、一の永久磁石122それぞれの磁極面上に設けられる。磁性体コア124は、永久磁石122より導電率の低い部材(例えば圧粉磁芯)又は、回転軸Qに直交する方向に積層された電磁鋼板を用いることで、回転軸Qの少なくとも一方側で回転子10と空隙を介して対向する電機子たる固定子20からの電機子磁束による永久磁石122での渦電流を低減するコアとして機能し、永久磁石122の減磁を防止する。
なお、図1では1つの永久磁石122に対して2つの磁性体コア124が回転軸Q方向の双方で隣接している例を示しているが、いずれか一方側にのみ配置する態様であっても良い。永久磁石122に対して磁性体コア124が設けられる側には固定子20が対向する。換言すれば、永久磁石122には、回転子10と固定子20とが対向する側に磁性体コア124を設けることが望ましい。図1では回転子10に対して回転軸Q方向で相互に反対側から対向する固定子20が一対設けられる(図3参照)構成の回転電機50に対応した構成が示されている。
複数の界磁発生部12のそれぞれは、非磁性体の保持部材14によって、回転軸Qを中心とする円の周方向に沿って予め定められた間隔を空けて保持されている。ここで、保持部材14の具体的な材料としては例えば、ステンレス、アルミ若しくは真鍮等の非磁性金属、樹脂又はセラミックを採用することが望ましく、予め定められた形状に成形又は焼結等の一体成形により、又は、界磁発生部12をモールド成形やダイカスト等によりインサート成形しても良い。
なお、本実施形態では保持部材14が回転軸Q方向に配列した2つのフレーム(第1フレーム142及び第2フレーム144)を有する態様を示している。第1フレーム142と第2フレーム144とが協同して、例えば永久磁石122を保持することにより、第1フレーム142と第2フレーム144とのうち、一方が他方に対して回転することを抑止する。つまり、界磁発生部12のうち永久磁石122は、第1フレーム142と第2フレーム144との境界に跨って保持される。なお、第1フレーム142と第2フレーム144との位置関係を保つことができれば、両者の境界に跨って保持されるものは、必ずしも永久磁石122である必要はなく、磁性体コア124であっても良い。
具体例を挙げれば、保持部材14は、第1フレーム142及び第2フレーム144のそれぞれは、略車輪状に形成された非磁性体が採用され、車輪のこしき(ボス)に相当する第1環状体141と、第1環状体141よりも外側にあって車輪に相当する第2環状体143と、車輪の輻(スポーク)に相当する複数の架橋体145とを有している。そして、第1環状体141の外周側、第2環状体143の内周側及び、周方向に隣接する2つの架橋体145とで1つの保持枠14Fを規定する。
保持枠14Fはこれら第1環状体141、第2環状体143及び、2つの架橋体145で規定されて多角形(具体的には略アーチ状)を呈する。一の保持枠14Fには一の界磁発生部12が配置される。つまり、回転軸Q方向からの平面視で保持枠14Fが呈する形状と、同平面視で界磁発生部12が呈する形状とは略等しいことが望ましい。
保持部材14の外周側には磁性体環16が設けられる。図2に示す如く、磁性体環16は回転軸Q方向の端部において、保持部材14の、界磁発生部12が呈する主面12S側に屈曲する屈曲部16cを呈している。屈曲部16cが保持部材14を把持することができ、もって磁性体環16に対して保持部材14が回転軸Q方向に移動することを回避又は抑制できる。また、2つに分割された保持部材14同士を密着固定させる働きをも有する。
磁性体環16の飽和磁束密度は、磁性体コア124の飽和磁束密度よりも高いことが望ましい。磁性体環16は径R方向の厚みが薄い鋼板を採用することが望ましく、かつ当該厚みを呈しつつ以下の働きをすることが必要となる。すなわち、磁性体コア124で磁束が飽和し、漏洩したとしても外周側に設けられた磁性体環16が当該漏洩磁束を吸収できるからである。
また、磁性体環16よりも外周側に漏洩する磁束の低減と、電機子巻線23(図3参照)による高調波磁束の影響が大きい磁性体コア124の鉄損の低減とを図るには、磁性体コア124での素材鉄損(単位重量当たりの鉄損値)が、磁性体環16での素材鉄損よりも少ないことが望ましい。具体的には例えば、シリコン含有量が多い材質は、シリコン含有量が少ない材質に比べて鉄損が小さいので、磁性体コア124のシリコン含有量が、磁性体環16のシリコン含有量よりも多いことが望ましい。又は、磁性体コア124を圧粉磁芯で形成し、磁性体環16を鉄板で形成することが望ましい。また、磁性体環16は通常の磁路、すなわちトルク発生に資する磁束が通る鉄芯及びエアギャップとしては機能しないため、専ら界磁磁束がケーシング60(図3参照)に漏洩する磁束を通すために機能する。
このような回転子10が回転軸Q方向の両側で空隙を介して固定子20と対向し回転電機50を構成する。
次に、回転子10の好適な組立手順について説明する。
まず、界磁発生部12が、保持枠14Fのそれぞれに配置される。次に、界磁発生部12を配置された保持部材14が、磁性体環16の内周側に配置される。その後、磁性体環16の回転軸Q方向の端部を内周側に屈曲させて屈曲部16cを形成する。図1は屈曲部16cを形成する前の構成を分解して示している。
磁性体環16の当該端部を屈曲させるとき、界磁発生部12及び保持部材16には回転軸Qへと向かう応力が作用することが望ましい。当該応力によって保持枠14Fの内部で界磁発生部12を強固に保持し、もって回転電機50の運転中のガタツキ防止に資する。当該応力による界磁発生部12の破損を回避又は低減するために、保持部材14の剛性は、界磁発生部12の剛性よりも低いことが望ましい。また、保持部材14の剛性は、磁性体環16の剛性よりも低いことが望ましい。
さらに、保持部材14のうち、界磁発生部12と磁性体環16との間の領域、すなわち第2環状体143のうち保持枠14Fの外周側となる領域において、例えば回転軸Q方向に貫通する空隙14hを呈することも望ましい。磁性体環16が保持部材14の外周側に配置されるときに作用する応力のうち、界磁発生部12の保持に必要な応力よりも大きな応力を空隙14hが吸収して界磁発生部12の破損を回避又は抑制するからである。つまり、屈曲部16cを形成するときに作用する回転軸Qへと向かう応力のうち、一部は界磁発生部12の保持に寄与し、その他は空隙14hによって吸収される。
界磁発生部12が固定子20と対向する主面は、予め定められた位置において、磁性体環16の回転軸Q方向の端部よりも回転軸Q方向に突出している。
具体的には、磁性体環16の回転軸Q方向の端部たる部位16pは、予め定められた位置において回転軸Q方向に延在する切欠16nを呈しており、部位16pは切欠16nを呈する位置以外では界磁発生部12の主面12S側に屈曲して屈曲部16cを呈し、屈曲部16cが主面12Sよりも回転軸Q方向に突出している。
部位16pが切欠16nを呈することにより、回転子10を固定子20と対向させて回転電機50を構成する場合に、回転子10と固定子20との間のエアギャップの測定に資する。具体的には、回転電機50が組上げられた後に、厚みゲージを切欠16nを経由して外側から回転子10と固定子20との間に差し込むことでエアギャップが測定される。
図3に示す如く、固定子20は例えば、バックヨークとして機能するコア21と、コアに連接された複数の電機子用磁芯22と、複数の電機子用磁芯22のそれぞれに巻回された電機子巻線23とを有している。コア21は回転軸Qを法線とする面内に延在しており、回転子10に保持されるシャフト51を貫通させる孔が設けられている。
電機子用磁芯22はコア21の回転軸Qを法線とする主面のうち、回転子10と対向する側の主面において回転軸Qの周りで環状に配置され、電機子巻線23が巻回される芯として機能する。
電機子巻線23は、電機子用磁芯22に絶縁体(図示省略)を介して巻回される。なお、本願では特に断りのない限り、電機子巻線23はこれを構成する導線の1本1本を指すのではなく、導線が一纏まりに巻回された態様を指すものとする。これは図面においても同様である。また、巻始め及び巻終わりの引出線及び、それらの結線も図面においては省略している。
本実施形態では回転子10に対して回転軸Q方向の両側に固定子20を配置する態様を示しているが、何れか一方のみであっても良い。その場合には、回転子10に対して固定子20とは反対側に回転しない磁性体(図示省略;電機子巻線を有さない固定子として把握できる)を配置することが望ましい。当該磁性体と回転子10との間に働く磁気的な吸引力によって、回転子10と固定子20との間に働くスラスト力をキャンセルできるからである。当該スラスト力はシャフト51を支持する軸受74,75に働くので、当該スラスト力をキャンセルすることで軸受損失を低減できる。
このような回転電機50をケーシング60内に収容して密閉型圧縮機100を構成する。
密閉型圧縮機100は、アキシャルギャップ型の回転電機50とケーシング60と圧縮機機構部70とを備えている。圧縮機構部70はケーシング60内に配置され、ケーシング60内かつ圧縮機構部70の上側に回転電機50が配置される。そして圧縮機機構部70は、シャフト51を介して回転電機50によって駆動される。
ケーシング60の下側下方には吸入管61が接続される一方、ケーシング60の上側には吐出管62が接続されている。吸入管61から供給される冷媒は、圧縮機構部70に導かれる。吸入管61及び吐出管62も、図3においてはその側面が示されている。
ケーシング60内側にコア21が固定されて、回転電機50が固定される。シャフト51の下端側が圧縮機構部70に連結されている。
圧縮機構部70は、シリンダ状の本体部71と、上端板72及び下端板73とを備える。上端板72及び下端板73は、それぞれ本体部71の開口側の上側と下側に取付けられる。シャフト51は、上端板72及び下端板73を貫通して、本体部71の内部に挿入されている。
シャフト51は、圧縮機構部70の上端板72に設けられた軸受74と、圧縮機構部70の下端板73に設けられた軸受75により回転自在に支持されている。本体部71内のシャフト51にはクランクピン76が設けられる。クランクピン76にはピストン77が嵌合して駆動される。ピストン77及びこれに対応するシリンダとの間に形成された圧縮室78において、冷媒が圧縮される。ピストンは偏芯した状態で回転し、又は公転運動を行い、圧縮室78の容積を変化させる。
回転電機50が回転することにより、圧縮機構部70が駆動されると、吸入管61から圧縮機構部70に冷媒が供給され、圧縮機構部70(とりわけ圧縮室78)で冷媒を圧縮する。圧縮機構部70で圧縮された高圧冷媒は、圧縮機構部70の吐出ポート79からケーシング60内に吐出される。さらに高圧冷媒は、シャフト51の周りに設けられた溝(図示省略)、回転子10及び固定子20の内部を回転軸Q方向に貫通する孔(図示省略)、固定子20及び回転子10の外周部とケーシング60の内面との間の空間等を通って回転電機50の上部空間に運ばれる。その後、吐出管62を介してケーシング60の外部に吐出される。
以上のように、回転子10を搭載した回転電機50は、回転子10の外側に漏洩する磁束を低減できるので、密閉型圧縮機100に採用されるケーシング60が磁性体であった場合でも、漏洩磁束によってケーシング60に発生する渦電流を低減できる。よって、回転電機50の運転効率を高め、ひいては密閉型圧縮機100の圧縮効率を高めることができる。
〈第2実施形態〉
上記第1実施形態では、回転子10に対して回転軸Q方向の両側に固定子20が配置している態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ここでは、本発明の第2実施形態として、固定子20が片側にのみ配置する場合の回転子の態様について図面を参照しながら説明する。なお、特に断りのない限り、以降の実施形態の説明において上記第1実施形態と同様の機能を有する要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
図4は本発明の第2実施形態に係る回転子10Aの部分断面図であり、図2の位置A−Aでの断面視に相当する領域を示している。つまり、回転軸Q方向と回転軸Qを中心とする径R方向とで規定される面における断面のうち、径R方向の一方側で界磁発生部12を含む断面について示している。
図4で示す回転子10Aでは例えば、保持部材14が呈する保持枠14Fに永久磁石122と磁性体コア124とが配置され、磁性体環16Aが保持部材14の外周側に跨って、保持部材14の回転軸Q方向の両端に配置される。具体的には、磁性体環16Aは回転軸Q方向の一方側の端部において屈曲部16dを呈して界磁発生部12が呈する主面と接する。磁性体コア124は永久磁石122に対して、回転軸Q方向の他方側にのみ配置されており、屈曲部16dは永久磁石122が上記一方側に呈する主面と接触して界磁発生部12を保持する。また、磁性体環16Aは上記他方側において屈曲部16cを呈して、保持部材14が上記他方側で呈する主面と接する。
そして、回転子10Aは、界磁発生部12の上記他方側(磁性体コア124側)で空隙を介して固定子と対向して回転電機を構成する。なお、回転子10Aの上記一方側には回転しない磁性体が空隙を介して設けられ、当該磁性体はスラスト力を相殺する。当該磁性体は電機子巻線を巻回するための溝を呈する必要がない。そのため、当該磁性体と回転子10Aとの対向面積は、当該固定子と回転子10Aとの対向面積よりも大きくなる。対向面積が大きくなるにつれて吸引力は大きくなるので、屈曲部16dにおいて磁束の一部を短絡することにより、回転子10Aの回転軸Q方向の両側で作用するスラスト力の差が抑制できる。
磁性体環16Aが保持部材14の外周側及び回転軸Q方向の双方に跨って配置されることにより、漏洩磁束の低減を図りつつ、界磁発生部12を保持できる。
ここで、界磁発生部12を保持部材14に固定する手法について説明する。なお、ここで説明する手法は他の実施形態においても同様に適用可能である。
図5は界磁発生部12を保持部材14に固定する手法を説明する図である。図5(a)に示す如く、保持部材14は、保持部材14と一体となった固定部材14bを含み、磁性体コア124bは磁性体コア124が回転軸Q方向を法線とする面内で呈する主面から回転軸Q方向に突出する段差を呈する。固定部材14bは、磁性体コア124bが呈する当該段差のうち、回転軸Q方向からの平面視で回転軸Qを中心とする外周側端縁で呈する段差と、内周側端縁で呈する段差とのそれぞれに嵌合し、磁性体コア124bの回転軸Q方向の移動を抑制する。固定部材14bは必ずしも保持部材14と一体製造である必要はなく、別体として製造し、接着や溶接等により一体化しても良い。
なお、図5(b)に示す如く、必ずしも主面が段差を呈する磁性体コア124bを採用する必要はなく、主面が段差を呈していない磁性体コア124を、固定部材14bを含む保持部材14で保持しても良い。ただし、図5(a)、(b)のように固定部材14bが保持枠14Fの辺縁よりも内側に張り出す場合には、界磁発生部12及び磁性体環16Aと、電機子用磁芯22(図3参照)の回転子10A側の先端とは次の関係を満たしていることが望ましい。
図6は回転子10Aと電機子用磁芯22との位置関係を説明する図である。電機子用磁芯22には通常、電機子巻線23が巻回される。そのため、回転軸Q方向を法線とする面内で回転軸Qを中心とする電機子用磁芯22の最外周部は、同面内で同中心とする回転子10の最外周部よりも内周側となる傾向にある。図6(a)に示す如く、回転軸Q方向からの平面視において、回転軸Qを中心とする界磁発生部12の外周側端縁と回転軸Qとの間の距離と、電機子用磁芯22の回転子10A側の先端の外周側端縁と回転軸Qとの間の距離とが一致する場合、永久磁石122の磁束は最も効率良く電機子用磁芯22に流れる。しかしながら図6(b)に示す如く、界磁発生部12の外周側端縁が、電機子用磁芯22の外周側端縁よりも回転軸Qから離れている場合には、永久磁石122の磁束が固定子20(図3参照)に流れずに回転子10Aの外周部で短絡する磁束が発生しやすい。本発明はこのような場合において有効に奏功する。
〈第3実施形態〉
ここでは、本発明の第3実施形態として、磁性体環の回転軸Q方向の長さが短い態様について図面を参照しながら説明する。
図7は本発明の第3実施形態に係る回転子10Bの部分断面図であり、図2の位置A−Aでの断面視に相当する領域を示している。つまり、回転軸Q方向と回転軸Qを中心とする径R方向とで規定される面における断面のうち、径R方向の一方側で界磁発生部12を含む断面について示している。
界磁発生部12が固定子20(図3参照)と対向する主面のうち回転軸Qから最も遠い外縁部12eは、磁性体環16Bの回転軸Q方向の端部16eよりも、回転軸Q方向に突出していても良い。換言すれば、回転子10Bが有する磁性体環16Bは図7に示す如く、その回転軸Q方向の長さが界磁発生部12の同方向の長さよりも短くても良い。何となれば、回転子10Bを採用して回転電機(図示省略)を構成する場合に固定子20とのエアギャップの測定に資するからである。
磁性体環16Bと保持部材14とは、溶接等によって固定される。溶接箇所は任意であるが、磁性体環16Bの回転軸Q方向の端部W1,W2で溶接しても良いし、磁性体環16Bを貫通できるレーザ溶接であれば、磁性体環16Bの外周部W3から保持部材14へと向けてレーザを照射して溶接しても良い。
〈変形例〉
以上、本発明の好適な態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回転子の構成については上述の構成の他、以下の態様であっても奏功する。
図8ないし図12は変形例に係る回転子の部分断面図であり、図2の位置A−Aでの断面視に相当する領域を示している。つまり、回転軸Q方向と回転軸Qを中心とする径R方向とで規定される面における断面のうち、径R方向の一方側で界磁発生部12を含む断面について示している。
図8で示す回転子10Dは界磁発生部12として永久磁石122のみを採用している。図9で示す回転子10Eは図7で示した回転子10Bにおける磁性体環16Bに代えて磁性体環16を採用している。図10で示す回転子10Fは図9で示した回転子10Eにバックヨーク18Fを更に有している。図11で示す回転子10Gは略環状に形成されたバックヨーク18Gの主面上に永久磁石122と磁性体コア124を順に積み重ねて界磁発生部12を構成し、界磁発生部12の外周側に非磁性19Gを設けて磁性体環16で保持する。具体的には屈曲部16cが回転子10Gの磁性体コア124側の主面12S側及び、バックヨーク18G側の主面18Sのそれぞれに設けられる。界磁発生部12の外周側に設けられる非磁性体19Gは樹脂等で形成されたホルダを採用して実現しても良いし、絶縁塗料を塗布することによって実現しても良い。図12で示す回転子10Hはバックヨーク18Gの主面上に永久磁石122を環状に配置し、バックヨーク18G及び永久磁石122の外周側に、環状に形成された非磁性ホルダ19Hを配置して磁性体環16で保持する。
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H 回転子
12 界磁発生部
12e 外縁部
122 永久磁石
124 磁性体コア
14 保持部材
14h 空隙
142 第1フレーム
144 第2フレーム
16,16A,16B 磁性体環
16c 屈曲部
16e 端部
20 固定子
50 回転電機
60 ケーシング
100 密閉型圧縮機

Claims (16)

  1. 所定の軸(Q)の周りで環状配置される界磁発生部(12)の複数を備え、前記軸の一方側で固定子(20)と対向する回転子(10)であって、
    前記回転子は、
    前記界磁発生部を、前記軸を中心とする円の周方向に沿って予め定められた間隔を空けて保持する非磁性体の保持部材(14)と、
    前記保持部材の外周側を覆う磁性体環(16)と
    を有する、回転子。
  2. 前記磁性体環(16)は、前記軸(Q)方向の端部において、前記保持部材(14)の前記界磁発生部(12)が呈する主面側に屈曲する屈曲部(16c)を呈する、
    請求項1記載の回転子(10)。
  3. 前記磁性体環(16)は、前記保持部材(14)と溶接している、
    請求項1又は請求項2記載の回転子(10)。
  4. 前記保持部材(14)の剛性は前記磁性体環(16)の剛性よりも低い、
    請求項1ないし請求項3のいずれか記載の回転子(10)。
  5. 前記保持部材(14)の剛性は、前記界磁発生部(12)の剛性よりも低い、
    請求項1ないし請求項4のいずれか記載の回転子(10)。
  6. 前記保持部材(14)は、前記磁性体環(16)と、前記界磁発生部(12)との間で空隙(14h)を呈する、
    請求項4又は請求項5記載の回転子(10)。
  7. 前記界磁発生部(12)のそれぞれは、永久磁石(122)と、前記軸方向からの平面視で前記永久磁石と略同形状を呈し、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方側で隣接する磁性体コア(124)とを含み、
    前記磁性体コアの飽和磁束密度は、前記磁性体環(16)の飽和磁束密度よりも低い、
    請求項1記載の回転子(10)。
  8. 前記界磁発生部(12)のそれぞれは、永久磁石(122)と、前記軸方向からの平面視で前記永久磁石と略同形状を呈し、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方側で隣接する磁性体コア(124)とを含み、
    前記磁性体コア(14)のシリコン含有量は、前記磁性体環(16)のシリコン含有量よりも多い、
    請求項1記載の回転子(10)。
  9. 前記界磁発生部(12)のそれぞれは、永久磁石(122)と、前記軸方向からの平面視で前記永久磁石と略同形状を呈し、前記永久磁石に対して前記軸方向の一方側で隣接する磁性体コア(124)とを含み、
    前記磁性体コア(14)は圧粉磁芯が採用され、前記磁性体環(16)は環状の鋼板が採用される、
    請求項1記載の回転子(10)。
  10. 前記界磁発生部(12)が前記固定子(20)と対向する主面のうち前記軸(Q)から最も遠い外縁部(12e)は、前記磁性体環(16)の前記軸方向の端部(16e)よりも、前記軸方向に突出する
    請求項1記載の回転子。
  11. 前記界磁発生部(12)が前記固定子(20)と対向する主面は、予め定められた位置において、前記磁性体環(16)の前記軸(Q)方向の端部よりも前記軸方向に突出する、
    請求項1記載の回転子(10)。
  12. 前記磁性体環(16)は、前記界磁発生部(12)が呈する主面と接する磁性体板と一体を呈する、
    請求項1記載の回転子(10)。
  13. 前記保持部材(14)は、非磁性金属、樹脂又はセラミックのいずれかが採用される、
    請求項1記載の回転子(10)。
  14. 前記保持部材(14)は、前記軸(Q)方向に沿って配設される第1フレーム(142)及び第2フレーム(144)を含む、
    請求項1記載の回転子(10)。
  15. 請求項1ないし請求項14のいずれか記載の回転子(10)と、
    前記回転子の前記軸(Q)の少なくとも一方側で前記回転子と対向する固定子(20)と
    を備える、回転電機(50)。
  16. 請求項15記載の回転電機(50)と、
    前記回転子(10)の外周に近接して磁性体ケーシング(60)と
    を備える、密閉型圧縮機(100)。
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