図1は本発明に係る電子機器の一例としてのカメラ10を後側から模式的に示す斜視図であり、図2は、カメラ10を前側から模式的に示す斜視図である。
以下の説明および各図面では、カメラ10を基準として、撮影光軸方向を前後方向(被写体側が前方)とし(矢印FB参照)、カメラ10を正面視した高さ方向を上下方向とし(矢印UD参照)、前後方向および上下方向を含む面に直交する方向を左右方向(カメラ10を正面視して左手が右側方向となる)とする(矢印LR参照)。
実施例1では、本発明に係る電子機器の一例として、図1に示すように、デジタルカメラであるカメラ10を用いて説明する。このカメラ10は、図示は略すが、被写体を撮影する等のカメラとしての機能のための内部機構であるカメラ機構が、外装部であるケース11に収容されて構成されている。カメラ10は、図示は略すが、カメラ機構において、撮影光学系により結像された映像をCCD撮像素子で電気信号に変換し、この電気信号をデジタル処理することにより被写体の静止画像(スティル画像)または動画像(ムービー画像)のデジタル画像データを得て、このデジタル画像データをメモリーカードに格納する構成とされている。
ケース11は、表面に非導電性処理が施されている。このケース11は、背面から見た右側がグリップ部12とされ、このグリップ部12を把持した手での操作を可能とすべく各種操作機構が設けられている。
ケース11には、グリップ部12の上壁面にシャッターボタン(レリーズボタン)13と、ズームレバー14と、モード切替ダイヤル15と、電源ボタン16とが設けられている。ズームレバー14は、シャッターボタン13を取り囲むように設けられて回転可能とされており、シャッターボタン13とともに回転スイッチ機構17として一体的な構成とされている。この回転スイッチ機構17については後に詳述する。
また、ケース11には、グリップ部12の背壁面に、上から順に、再生ボタン18とADJボタン19とMENUボタン20とセルフボタン21とDISPボタン22とが設けられ、その左側に液晶ディスプレイ23が設けられている。
さらに、ケース11には、前壁面の略中央に飾りリング24に取り囲まれるように撮影レンズ25が設けられ、この斜め上方に補助光LED26とストロボ27とが設けられている。
カメラ10では、液晶ディスプレイ23に画像を映し出しつつ被写体を撮影することができる。また、カメラ10では、方向指示用スイッチであるADJボタン19を適宜操作することにより、各種機能を選択することができ、シャッターボタン13を押圧操作することにより被写体を撮影することができる。さらに、カメラ10では、ズームレバー14を回転操作することにより、ズーム機能を利用して被写体を撮影することができる。
本発明に係るカメラ10では、ズームレバー14およびシャッターボタン13を備える回転スイッチ機構17の構造が従来のカメラとは異なる構造とされている。以下では、この回転スイッチ機構17の構造について、図3ないし図9を用いて説明する。
図3は、回転スイッチ機構17の構成を説明するために、その周辺を分解して背面側斜め上方から示す模式的な斜視図であり、図4は、回転スイッチ機構17の構成を説明するために、その周辺を分解して前面側斜め下方から示す模式的な斜視図である。図5は、回転スイッチ機構17の構成を説明するために部分的に示す模式的な斜視図であり、(a)はズームレバー14を示し、(b)はズームレバー14に押え板42を取り付けた様子を示す。図6は、図5(b)の矢印A1から見た底面図であり、図7は、図6のI−I線に沿って得られた断面図である。図8は、FPC69上の導電性パターン72を説明するための説明図であり、図9は、図6のII−II線に沿って得られた断面図である。
回転スイッチ機構17は、図3および図4に示すように、ケース11の上壁部近傍を構成するカバー部30の裏面に受け台31が取り付けられた個所からなるカメラ10の外装部に設けられている。カバー部30は、ケース11の一部を構成するものであり、表面に非導電性処理が施されている。このカバー部30には、回転スイッチ機構17の取り付けのために貫通された取付孔としての取付開口32が設けられている。
受け台31は、樹脂材料から形成されており、カバー部30の裏面側に取り付け可能な形状とされている。この受け台31には、カバー部30の取付開口32に嵌合可能な環状リブ部33と、その環状リブ部33の内方を貫通する挿通孔34と、が設けられている。また、受け台31には、図4に示すように、裏面側(ケース11の内方側であり、図面では下側となる。)に、全体に円柱形状を呈し挿通孔34よりも大きな内径寸法とされた空間を形成する収容部35が設けられている。この収容部35は、後述する押え板42を回転可能に収容する個所であり、その側壁を部分的に切り欠くように規制凹所36が設けられている。
この収容部35には、挿通孔34の中心軸(後述する操作部39の回転中心)から半径方向に並列するように、第1突起部37と、第2突起部38とが設けられている。第1突起部37は、中心軸から離間した位置とされており、円柱状を呈する。第2突起部38は、第1突起部37よりも中心軸側に位置し、柱状を呈し、下端に鍔部分38aが設けられている。
この受け台31は、下側(裏面側)から、環状リブ部33を取付開口32に挿通させるようにカバー部30に取り付けられる。この取り付け状態において、環状リブ部33は、カバー部30の表面(ケース11の上壁面)から突出されている(図7参照)。
回転スイッチ機構17は、図3に示すように、操作部39とスイッチ機構部40とを有する。この操作部39は、シャッターボタン13と、ズームレバー14と、シャッターバネ41と、押え板42と、が連結されて構成されている。この操作部39では、カバー部30の上方側(ケース11の外側)にシャッターボタン13、ズームレバー14およびシャッターバネ41が位置され、カバー部30の下方側(ケース11の内側)に押え板42が位置され、カバー部30および受け台31を介在させるように上下方向に連結されて構成されている。
シャッターボタン13は、樹脂材料で形成され、表面にメッキ処理が施されて導電性を有する。このシャッターボタン13は、押圧部13aと軸部13bと一対の係合突起13cとを有する。押圧部13aは、上面が平坦とされ全体に円板形状を呈し、使用者が押圧操作する個所となる。この押圧部13aには、その円板形状の同心状に下方へ向けて突出する軸部13bが設けられるとともに、その軸部13bを取り囲むように下方へ向けて突出する環状突起13e(図4および図7参照)が設けられている。
係合突起13cは、押圧部13aの縁部において下方へ向けて突出されており、軸部13bを中心とするように対を為す位置に設けられている。両係合突起13cには、その下端に係合個所13dが設けられている。この係合個所13dは、軸部13bから離間する方向(押圧部13aの半径方向外側)へと突出されている。この係合個所13dは、後述するように、係合突起13cがズームレバー14の係合孔47に挿通された状態において、その係合孔47の縁部47a(ズームレバー14の小径部44の下面側)に係合可能とされている。
このシャッターボタン13は、ズームレバー14に組み付けられる。ズームレバー14は、樹脂材料で形成され、表面にメッキ処理が施され導電性を有する。ズームレバー14は、全体に段付きの円柱形状を呈し、上方側が大径部43とされ、下方側が同心状の小径部44とされている。この大径部43は、受け台31の環状リブ部33よりも大きな径寸法とされており、小径部44は、その環状リブ部33の内方に設けられた挿通孔34に遊嵌可能な径寸法とされている。また、この小径部44は、その高さ寸法が、環状リブ部33の挿通孔34の高さ寸法よりも大きな高さ寸法とされている。なお、実施例1では、ズームレバー14が段付きの円柱形状とされていたが、後述するように介在させたカバー部30および受け台31からの離脱の防止を可能としつつカバー部30(および受け台31)に対して回転可能とすべく押え板42と協働して操作部39を構成するものであればよく、実施例1に限定されるものではない。例えば、操作部は、ズームレバーを段付きの形状とすることに代えて、押え板を段付きの円柱形状を呈しかつ上方側に小径部が下方側に大径部が位置するものとし、その小径部を環状リブ部33の挿通孔34に遊嵌させて、段のないズームレバーに連結させる構成としてもよい。
ズームレバー14には、中央にシャッターボタン13の受け入れのための受入凹所45が設けられ、大径部43の側面に回転操作のための操作突起14aが設けられている。このズームレバー14には、受入凹所45の内方であって、中心位置を貫通する貫通孔46と、この貫通孔46を挟むように対を為す係合孔47と、が設けられている。ズームレバー14の上面(受入凹所45の内方)および下面(小径部44の下面)には、貫通孔46を取り囲むように中心ボス部48、49が設けられ、上面には、中心ボス部48を取り囲むように環状溝50が設けられている(図7参照)。また、ズームレバー14の下面すなわち小径部44の下面には、貫通孔46が設けられた中心ボス部49を中心とするように対を為す連結ボス部51が設けられており、それぞれの中心に連結孔52が設けられている。以下では、連結ボス部51および連結孔52を個別に示す場合には、連結ボス部51a、51bおよび連結孔52a、52bとする。この両連結ボス部51は、後述する押え板42の厚さ寸法よりも小さな高さ寸法(小径部44の下面からの突出寸法)とされている。
実施例1では、一方の連結ボス部51aとそこに設けられた連結孔52aとが、表面にメッキ処理が施されておらず、非導電性とされている。このような処理は、ズームレバー14の表面にメッキ処理を施す際、この連結ボス部51aとそこの連結孔52aとにマスキング処理を施すことにより容易に行うことができる。
このズームレバー14とシャッターボタン13との間にシャッターバネ41が配置される。このシャッターバネ41は、円筒形状を呈しており、その軸線方向に圧縮されると元の状態へと復元するように付勢する。シャッターバネ41は、ズームレバー14の受入凹所45において、貫通孔46が設けられた中心ボス部48を取り囲むように環状溝50に配置される(図7参照)。シャッターバネ41は、その上端が、シャッターボタン13の下面において、軸部13bを取り囲むように環状突起13e内に当接されることとなる。
操作部39では、上述したようにシャッターバネ41を介在させた状態で、ズームレバー14の受入凹所45にシャッターボタン13の押圧部13aが嵌入されて、シャッターボタン13とズームレバー14とが組み合わされる。このとき、シャッターボタン13の軸部13bが、ズームレバー14の貫通孔46に挿通され、シャッターボタン13の係合突起13cが、ズームレバー14の係合孔47に挿通され、その係合突起13cの先端の係合個所13dがズームレバー14の係合孔47の縁部47aに係合可能な状態とされる。これにより、操作部39では、シャッターボタン13が、ズームレバー14に対して上下移動可能とされており、上方への移動が係合突起13cの係合個所13dと係合孔47の縁部47aとの当接(係合)により規制され、下方への移動が押圧部13aと受入凹所45との当接により規制されている。このシャッターボタン13は、圧縮されたシャッターバネ41により上方へと付勢されていることから、外部からの力を受けていない状態において、上方へと移動して係合突起13cの係合個所13dがズームレバー14の係合孔47の縁部47aに係合して、移動範囲の上端に位置する。
このシャッターボタン13が組み合わされたズームレバー14に連結される押え板42は、樹脂材料で形成され、全体に円板形状を呈し、受け台31の収容部35に回転自在に収容可能な大きさ寸法とされている。この押え板42は、表面にメッキ処理が施されてはおらず、非導電性とされている。押え板42には、中心に貫通孔である嵌入孔53が設けられ、その嵌入孔53を挟むように貫通孔である一対の受入孔54が設けられ、嵌入孔53を挟みつつ両受入孔54とは異なる位置に矩形状の貫通孔である一対の逃げ孔55が設けられている。
嵌入孔53は、ズームレバー14に設けられた中心ボス部49の嵌入が可能とされており、ズームレバー14と押え板42とを連結すべく重ね合わせる際の位置決めの役割を果たす。適切に重ね合わせられた状態において、一対の受入孔54は、ズームレバー14に設けられた一対の連結ボス部51に対応して設けられ、それぞれが対応する連結ボス部51に接触することなく当該連結ボス部51を受け入れ可能とされている。
また、適切に重ね合わせられた状態において、一対の逃げ孔55は、ズームレバー14にシャッターボタン13が組み合わされることにより、ズームレバー14の係合孔47に挿通されて当該係合孔47から下方に突出されるシャッターボタン13の一対の係合突起13c(その係合個所13d)に接触することなく受け入れ可能とされている。これにより、押え板42では、ズームレバー14に連結された状態において、一対の係合突起13c(その係合個所13d)がズームレバー14の係合孔47からの突出量を変化させることを阻害することが防止されているので、シャッターボタン13(その押圧部13a)への押圧操作を阻害することはない。
この押え板42の周縁部には、回転規制部56とバネ受け突起部57とが設けられている。回転規制部56は、下方へと突出された突起部であり、その下端(突出端)に規制係合部分56aが設けられている。この規制係合部分56aは、押え板42における水平方向の外側へ向けて突出されており、押え板42が受け台31の収容部35に収容された際、その収容部35に設けられた規制凹所36内に位置される。回転規制部56は、規制凹所36の両側壁に規制係合部分56aが当接(係合)することにより、収容部35内での受け台31の回転を規制する、すなわち操作部39の回転範囲を規制する。このため、この回転規制部56は、規制突起として機能し、収容部35の規制凹所36は、規制部分として機能し、規制凹所36が設けられた受け台31は、規制部材として機能する。
バネ受け突起部57は、下方へと突出された突起部であり、柱状を呈し、下端に鍔部分57aが設けられている。このバネ受け突起部57は、収容部35に設けられた第1突起部37および第2突起部38と、コイルバネ58と、協働して、押え板42の回転位置を後述する基準位置Pb(図8参照)へと復帰させるものである。
このコイルバネ58は、巻回部58aと一対の腕部58bとを有しており、後述するようにカバー部30を介在させて操作部39が連結された状態において、巻回部58aに収容部35の第1突起部37が挿通されるとともに、両腕部58bの間に収容部35の第2突起部38と、押え板42のバネ受け突起部57とが挟持されるように設けられる。コイルバネ58は、押え板42が後述する基準位置Pbから回転されると、その回転方向(順方向および逆方向)に拘らずバネ受け突起部57すなわち押え板42を基準位置Pbへ向けて付勢する。このため、押え板42(操作部39)は、基準位置Pbからの回転に対して適度な抗力が与えられているとともに、外力が解除されると基準位置Pbへと復帰される。
また、押え板42の下面には、2つの位置決め突起59と、2つの位置決めリブ60とが設けられている。両位置決め突起59は、一対の逃げ孔55の近傍に設けられており、先端が丸められた円柱形状を呈する。両位置決めリブ60は、板状を呈し、矩形状の一対の逃げ孔55の一辺に沿って設けられている。
この押え板42の下面には、第1当接部材61および第2当接部材62が取り付けられる。両当接部材61、62は、金属材料から形成されており、第1取付部61a、第2取付部62aと、第1脚部61b、第2脚部62bと、を有する。以下では、第1取付部61aおよび第2取付部62aは、単に取付部61aおよび取付部62aと、第1脚部61bおよび第2脚部62bは、単に脚部61bおよび脚部62bと記載する。各取付部61a、62aは、全体に押え板42の下面に当接可能な平板状を呈している。各脚部61b、62bは、それぞれ取付部61a、62aから延出されて形成され、後述するように電路を形成するものである。実施例1では、第1当接部材61には対を為すように脚部61b1、61b2が設けられており、第2当接部材62には単一の脚部62bが設けられている。この各脚部61b1、61b2および脚部62bは、実施例1では、各当接部材61、62の各取付部61a、62aから斜め下方へ向けて延出されて形成され、それぞれが対を為して並列された2本の薄板部分で構成されている。これは、各脚部61b1、61b2および脚部62bは、後述するように、それぞれがFPC69に設けられた導電性パターン72との接触により単一の電路として機能するものであるが、2本の薄板部分を並列させる構成とすることより、導電性パターン72上に塵埃等が存在した場合であっても、いずれか一方を導電性パターン72に接触させることで、当該導電性パターン72との接触状態を確保するためである。
また、各脚部61b1、61b2および脚部62bは、後述するように操作部39がカバー部30に対して回転可能に設けられた状態において、先端(図8の符号61b1t、61b2tおよび62bt参照)が、後述するFPC69よりも下方に位置するように、各取付部61a、62aに対して傾斜されている。このため、各脚部61b1、61b2および脚部62bは、後述するように操作部39がカバー部30に対して回転可能に設けられた状態において、先端(図8の符号61b1t、61b2tおよび62bt参照)で後述するFPC69を付勢しつつ当接することとなる。
この両当接部材61、62には、ネジ挿通孔63、64と位置決め孔65、66とが設けられている。ネジ挿通孔63、64は、後述するネジ67の軸部13bの挿通を許すものであり。位置決め孔65、66は、押え板42の下面に設けられた位置決め突起59との嵌合が可能とされている。各当接部材61、62におけるネジ挿通孔63、64と位置決め孔65、66との位置関係は、押え板42の下面における各受入孔54と各位置決め突起59との位置関係に適合されている。
この第1当接部材61は、表面にメッキ処理が施されていない一方の連結ボス部51aを受け入れる側の受入孔54に対応され、第2当接部材62は、表面にメッキ処理が施された他方の連結ボス部51bを受け入れる側の受入孔54に対応されている。
この両当接部材61、62は、押え板42の受入孔54にネジ挿通孔63、64を対応させつつ、押え板42の位置決め突起59を位置決め孔65、66に挿通させた状態で、逃げ孔55の位置決めリブ60に縁部が当接するように、押え板42に宛がわれる。両当接部材61、62は、この状態で、後述する2つのネジ67が、押え板42とズームレバー14とを連結させることにより、押え板42すなわち操作部39に取り付けられる。
実施例1では、第1当接部材61と第2当接部材62とは、一方から延出された脚部61b1、61b2と、他方から延出された脚部62bとが、操作部39の回転中心から離間するように縁部近傍に位置されており、かつそれらが後述するFPC69に当接する位置も操作部39すなわち押え板42で見た外縁部に相当するものとされている。また、第1当接部材61と第2当接部材62とは、各第1脚部61b、62bの各取付部61a、62aからの延出位置およびFPC69への当接位置が、操作部39の回転方向で見た互いの間隔が可能な限り離間するように設けられている。ここでいう可能な限りとは、望ましくは操作部39の回転中心からその回転方向で見て略180度、すなわち操作部39の回転中心を対称軸とする回転対称な状態であって、他の部材の配置の関係や後述するFPC69上での導電性パターンの配置の関係等を考慮したものである。また、脚部61b1、61b2の第1当接部材61からの延出方向と、脚部62bの第2当接部材62からの延出方向とが、操作部39に対しては互いに相反する関係とされており、操作部39の回転方向で見ると互いに等しい関係とされている。
操作部39は、上方側(カメラ10の外方側)のシャッターボタン13が組み付けられたズームレバー14と、下方側(カメラ10の内方側)の押え板42とで、受け台31が装着されたカバー部30を介在させるように連結される。詳細には、次のようになる。
ズームレバー14は、その小径部44が、カバー部30に装着された受け台31の環状リブ部33の内方の挿通孔34に挿通される。この状態において、受け台31(カバー部30)の下方側から、ズームレバー14の小径部44の下面に、押え板42が宛がわれる。このとき、押え板42では、ズームレバー14の中心ボス部49が嵌入孔53に嵌入され、かつズームレバー14の一対の連結ボス部51が一対の受入孔54内に位置される。この状態において、押え板42の下方側から、2つのネジ67が、対応する両当接部材61、62のネジ挿通孔63、64に挿通され、押え板42の受入孔54に受け入れられたズームレバー14の連結ボス部51の連結孔52に螺合される。これにより、操作部39は、受け台31が装着されたカバー部30を介在させてズームレバー14と押え板42とが連結され、当該カバー部30すなわちカメラ10の外装部に取り付けられる。この両ネジ67は、導電性を有する材料から形成されている。このことから、カバー部30の取付開口32に加えて、受け台31の挿通孔34も操作部39の取り付けのための取付孔として機能する。
この状態において、上述したように、ズームレバー14の小径部44の高さ寸法が、受け台31の挿通孔34の高さ寸法よりも大きくされていることから、操作部39では、ズームレバー14の大径部43の下面、または押え板42の上面の一方のみが、受け台31(環状リブ部33)に当接することとなる。このため、操作部39は、受け台31が装着されたカバー部30に対して回転可能とされ、かつ当該カバー部30からの離脱が防止されている。なお、このズームレバー14の小径部44の高さ寸法と、受け台31の挿通孔34の高さ寸法との差異は、カバー部30に対する操作部39の回転を可能とする最小限なものとされている。
また、両連結ボス部51は、上述したように、押え板42の厚さ寸法よりも小さな高さ寸法とされていることから、第1当接部材61および第2当接部材62は、図9に示すように、ネジ67の頭部67aの縁部と押え板42とにより挟持され、押え板42の受入孔54に接触することなく受け入れられた両連結ボス部51に当接されてはいない。
この操作部39が設けられたカバー部30(受け台31)には、板金68を介してフレキシブルプリント基板(以下、FPC69という)が取り付けられる。板金68は、実施例1では、ステンレス鋼から形成されており、全体に板形状を呈する。この板金68は、固定部材70により受け台31に固定され、図示は略すが後述する基準電位位置に電気的に接続されている。また、板金68は、カバー部30(受け台31)に設けられた操作部39の押え板42の下面に取り付けられた第1当接部材61の両脚部61bおよび第2当接部材62の脚部62bの先端(図8の符号61b1t、61b2tおよび62bt参照)がFPC69を付勢するような位置関係となるように、受け台31に固定されている。換言すると、操作部39とFPC69との間隔は、押え板42の下面に取り付けられた第1当接部材61の両脚部61bおよび第2当接部材62の脚部62bが無負荷とされた状態において、高さ方向で見て押え板42からそれぞれの先端(図8の符号61b1t、61b2tおよび62bt参照)が位置するまでの距離よりも小さく設定されている。
このため、カバー部30(受け台31)に対して回転可能とされた操作部39は、FPC69および板金68に対して相対的に回転可能とされ、これに伴って操作部39の押え板42の下面に取り付けられた第1当接部材61および第2当接部材62も、FPC69および板金68に対して相対的に回転可能とされている。このとき、第1当接部材61の両脚部61bおよび第2当接部材62の脚部62bは、先端(図8の符号61b1t、61b2tおよび62bt参照)がFPC69(板金68)を付勢しつつ、操作部39の回転中心を中心とする円弧状の軌道T(図8参照)を描くようにFPC69上を摺動する。なお、この軌道Tを個別に示す場合には、第1当接部材61の脚部61b1(その先端61b1t)の軌道を符号T1で示し、第1当接部材61の脚部61b2(その先端61b2t)の軌道を符号T2で示し、第2当接部材62の脚部62b(その先端62bt)の軌道を符号T3で示す。
FPC69は、カメラ10のカメラ機構すなわちカメラとしての動作のための電子回路の一部を構成する電子回路基板であり、図示は略すが、種々の部材が実装されるとともに種々のパターンが設けられている。実施例1では、回転スイッチ機構17に関するものだけを説明および図示し、その他については省略する。
FPC69には、スイッチ素子71が実装されるとともに、複数の導電性パターン72が形成されている。スイッチ素子71は、その中心に受圧部71aが設けられており、この受圧部71aに為された押圧操作に応じて所定の電子回路を切り換えるべく動作する。実施例1では、スイッチ素子71は、半押し状態と完全に押し下げられた全押し状態との2段階の押圧操作が可能とされており、被写体の撮影のための電子回路をそれぞれの操作状態に応じて切り換える。このスイッチ素子71は、上下方向で見て、受圧部71aがシャッターボタン13の軸部13bの下端(先端)と正対するようにFPC69上に設けられており、ズームレバー14に対して押し下げられるシャッターボタン13の軸部13bにより、受圧部71aに押圧操作が為される。このとき、スイッチ素子71では、受圧部71aの押圧に対して所定のバネ力が設定されており、当該バネ力と操作部39に設けられたシャッターバネ41のバネ力とにより、シャッターボタン13の操作感(押圧感)が決定される。このスイッチ素子71は、FPC69に設けられた導電性パターン72(図8参照)を介して電子回路の一部を形成している。
この導電性パターン72は、実施例1では金メッキが蒸着されることにより形成されており、図8に示すように、FPC69上において、スイッチ用パターン73と、ズーム用パターン74と、放電用パターン75と、が設けられている。なお、この図8では、理解容易のために、ズームレバー14に設けられた第1当接部材61の脚部61b1および脚部61b2を、回転操作に伴うその先端61b1tおよび先端61b2tの位置のみで示し、第2当接部材62の脚部62bを、その先端62btの位置のみで示している。FPC69上では、操作部39の回転操作に伴って、図8に示すように、先端61b1tが軌道T1に沿って摺動し、先端61b2tが軌道T2に沿って摺動し、先端62btが軌道T3に沿って摺動することとなる。
スイッチ用パターン73は、スイッチ素子71(図8では2点鎖線で示す)に対応して設けられたものであり、スイッチ素子71に設けられた接点71bと電気的に接続されている。このスイッチ用パターン73は、スイッチ素子71と協働してシャッター操作のための電子回路の一部を構成している。
ズーム用パターン74は、ズームレバー14に取り付けられた第1当接部材61に対応して設けられたものであり、その第1当接部材61の脚部61bの先端61b1tの軌道T1および先端61b2tの軌道T2上に位置されている。このため、ズーム用パターン74は、ズームレバー14の回転操作に合わせるべくスイッチ素子71の中心位置すなわち操作部39の中心位置を中心とする円弧上に並ぶように設けられている。このズーム用パターン74は、円弧上の並び方向(回転方向)で見て、後述する基準位置Pbを中心として対称に位置するように順方向パターン群76と逆方向パターン群77とが設けられている。順方向パターン群76と逆方向パターン群77とは、中心位置から離れた円弧上に基準位置Pb側から順に第1パターン76a、77aと第2パターン76b、77bとを有し、それらよりも中心位置に近接する円弧に沿って延在する第3パターン76c、77cを有する。
この順方向パターン群76と逆方向パターン群77とでは、先端61b1tの摺動する軌道T1上に第1パターン76a、77aおよび第2パターン76b、77bが設けられ、先端61b2tの摺動する軌道T2上に第3パターン76c、77cが設けられている。
ここで、上述した基準位置Pbとは、操作部39が取り付けられた際に、脚部61b1の先端61b1tおよび脚部61b2の先端61b2tがFPC69に当接する初期設定位置、すなわちズームレバー14に対して回転方向への力が付与されていない状態において先端61b1tおよび先端61b2tがFPC69に当接するニュートラル位置をいう。このため、基準位置Pbは、実施例1では、軌道T1および軌道T2の中間位置となる。
ズームレバー14は、基準位置Pbを中心として受け台31が装着されたカバー部30に対して回転可能とされていることから、受け台31に固定された板金68に取り付けられたFPC69に対して基準位置Pbを中心として回転可能とされている。このため、ズームレバー14の第1当接部材61の脚部61b1の先端61b1tおよび脚部61b2の先端61b2tは、FPC69上において、基準位置Pbから順方向パターン群76側へと摺動可能であるとともに、基準位置Pbから逆方向パターン群77側へと摺動可能である。この明細書では、操作部39(ズームレバー14)において、両脚部61bが基準位置Pbから順方向パターン群76側へと移動するような回転方向を順方向とし、基準位置Pbから逆方向パターン群77へと移動するような回転方向を逆方向とする。
ここで、第1当接部材61では、上述したように、取付部61aから脚部61b1および脚部61b2が延出されて単一の金属材料により構成されていることから、脚部61b1と脚部61b2とが取付部61aを介して電気的に導通している。このため、第1当接部材61では、脚部61b1の先端61b1tが導電性パターンのいずれかに当接し、かつ脚部61b2の先端61b2tが導電性パターンの他のいずれかに当接すると、当該2つの導電性パターンを導通させることができる。ここで、脚部61b1および脚部61b2は、それぞれが2本の薄板部分が並列されて構成されているが、2本の薄板部分の双方が同一のパターン(76a、76b、77a、77b)に接触されるように位置設定されており、脚部61b1と脚部61b2とは、それぞれが単一の電路として機能する。
ズーム用パターン74は、この第1当接部材61によりFPC69に設けられた電子回路の一部(図示は略すがズーム動作に拘る電子回路)の通電状態が切り換えられるように設けられている。詳細には、上述したように、第1パターン76a、77aおよび第2パターン76b、77bは、基準位置Pbを中心として、脚部61b1の先端61b1tの軌道T1上に設けられており、第3パターン76c、77cは、基準位置Pbを中心として、脚部61b2の先端61b2tの軌道T2上に設けられている。これらの位置関係は、先端61b1tが第1パターン76aもしくは第2パターン76bの上に位置するときは先端61b2tが第3パターン76c上に位置し、先端61b1tが第1パターン77aもしくは第2パターン77bの上に位置するときは先端61b2tが第3パターン77c上に位置し、先端61b1tが第1パターン76aと第1パターン77aとの間でいずれの上にも位置していないときは先端61b2tが第3パターン76cと第3パターン77cとの間でいずれの上にも位置しない、ものとされている。
この回転スイッチ機構17では、ズームレバー14が、回転操作されていない基準位置Pbから、そこを中心とする所定の範囲で回転操作されても、先端61b1tおよび先端61b2tが、順方向パターン群76と逆方向パターン群77との間に位置されて、第1パターン76a、77a、第2パターン76b、77bおよび第3パターン76c、77cのいずれにも接触していない状態であり、いずれのズーム用パターン74間も導通させない状態である。これを無通電範囲Rdとする。カメラ10の電子回路では、ズームレバー14が無通電範囲Rdとされると、撮像光学系の倍率の変更のための電子回路がいずれも非通電状態とされ、撮像光学系の倍率が現状態で維持される。
ズームレバー14が、無通電範囲Rdから順方向側に回転操作された所定の範囲では、先端61b1tが第1パターン76aに接触し、かつ先端61b2tが第3パターン76cに接触する状態となり、第1パターン76aと第3パターン76cとが導通される。この所定の範囲を順方向範囲R1とする。実施例1では、カメラ10の電子回路は、ズームレバー14が順方向へと回転操作されると、撮像光学系をズーム側へと倍率を変更させるように設定されており、ズームレバー14が順方向範囲R1とされて第1パターン76aと第3パターン76cとが導通されることにより、ズーム側への倍率の変更を低速で行う電子回路が通電状態とされる。
ズームレバー14が、順方向範囲R1から順方向側に回転操作された所定の範囲では、先端61b1tが第2パターン76bに接触し、かつ先端61b2tが第3パターン76cに接触する状態となり、第2パターン76bと第3パターン76cとが導通される。この所定の範囲を順方向範囲R2とする。実施例1では、カメラ10の電子回路は、ズームレバー14が順方向範囲R2とされて第2パターン76bと第3パターン76cとが導通されることにより、ズーム側への倍率の変更を高速で行う電子回路が通電状態とされる。
ズームレバー14が、無通電範囲Rdから逆方向側に回転操作された所定の範囲では、先端61b1tが第1パターン77aに接触し、かつ先端61b2tが第3パターン77cに接触する状態となり、第1パターン77aと第3パターン77cとが導通される。この所定の範囲を逆方向範囲R3とする。実施例1では、カメラ10の電子回路は、ズームレバー14が逆方向へと回転操作されると、撮像光学系をワイド側へと倍率を変更させるように設定されており、ズームレバー14が逆方向範囲R3とされて第1パターン77aと第3パターン77cとが導通されることにより、ワイド側への倍率の変更を低速で行う電子回路が通電状態とされる。
ズームレバー14が、逆方向範囲R3から逆方向側に回転操作された所定の範囲では、先端61b1tが第2パターン77bに接触し、かつ先端61b2tが第3パターン77cに接触する状態となり、第2パターン77bと第3パターン77cとが導通される。この所定の範囲を逆方向範囲R4とする。実施例1では、カメラ10の電子回路は、ズームレバー14が逆方向範囲R4とされて第2パターン77bと第3パターン77cとが導通されることにより、ワイド側への倍率の変更を高速で行う電子回路が通電状態とされる。
ここで、ズームレバー14では、上述したように、回転規制部56により受け台31に対する回転範囲が規制されており、その規制された回転範囲の一方の端位置が順方向範囲R2における順方向側の端位置に相当し、規制された回転範囲の他方の端位置が逆方向範囲R4における逆方向側の端位置に相当するように設定されている。
このように、回転スイッチ機構17では、脚部61b1および脚部61b2の位置関係と、第1パターン76a、77a、第2パターン76b、77bおよび第3パターン76c、77cの位置関係と、から、ズームレバー14の回転姿勢に応じて先端61b1tおよび先端61b2tのズーム用パターン74への接触状態が上記した5つの態様に切り換えられることにより、FPC69に設けられた電子回路の一部の通電状態を切り換える、すなわち、当該電子回路を適宜断続する(オンおよび/またはオフ状態とする)。このため、ズーム用パターン74は、電子回路基板としてのFPC69に設けられた第1の導電部として機能する。
よって、カメラ10の電子回路は、ズームレバー14に為された回転操作の位置に応じて、撮像光学系のズーム位置を変更させる構造となっている。換言すると、カメラ10の電子回路は、FPC69上の導電性パターン72と第1当接部材61とにより、ズーム位置の変更操作を検出できる構造となっている。
放電用パターン75は、ズームレバー14に取り付けられた第2当接部材62に対応して設けられたものであり、第2当接部材62の脚部62bの先端62btの軌道T3を網羅するように当該軌道T3上に位置されている。このため、放電用パターン75は、ズームレバー14の回転操作に合わせるべくスイッチ素子71の中心位置すなわち操作部39の中心位置を中心とする円弧に沿って延在するように設けられている。この放電用パターン75は、図示は略すが、FPC69が一部を構成している電子回路において基準電位とされている個所すなわち基準電位位置に電気的に接続されている。このため、放電用パターン75は、電子回路基板としてのFPC69に設けられた第2の導電部すなわち基準電位部として機能する。
この放電用パターン75は、軌道T3に合致されていることから、ズームレバー14(先端61b1tおよび先端61b2t)が基準位置Pbとされているとき、先端62btが延在方向で見た中央(符号Pb´参照)に位置し、ズームレバー14が順方向の端位置まで回動操作された(順方向範囲R2における順方向側の端位置)とき先端62btが一方の端部(符号R2´参照)に位置し、ズームレバー14が逆方向の端位置まで回動操作された(逆方向範囲R4における逆方向側の端位置)とき先端62btが他方の端部(符号R4´参照)に位置する。このため、第2当接部材62の脚部62bの先端62btは、ズームレバー14の回転位置(基準位置Pbからの回転角度)に拘らず常に放電用パターン75に接触している。ここで、脚部62bは、2本の薄板部分が並列されて構成されているが、2本の薄板部分の双方が同一の放電用パターン75に接触されることから、単一の電路として機能する。このため、FPC69に実装されたスイッチ素子71と、FPC69に設けられた導電性パターン72と、操作部39(ズームレバー14)に設けられた第1当接部材61および第2当接部材62とが、回転スイッチ機構17におけるスイッチ機構部40として機能することとなる。
次に、本発明に係る電子機器とは異なる構成の問題点について図10を用いて説明する。図10は、回転スイッチ機構17´を分解して示す図3と同様の説明図である。この回転スイッチ機構17´は、上述したカメラ10の回転スイッチ機構17と基本的に同じ構造であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
回転スイッチ機構17´では、操作部39´の押え板42に装着される接片の構成が、上述した回転スイッチ機構17(カメラ10)とは異なるものとされている。
押え板42には、単一の接片61´のみが設けられる。この接片61´は、基本的には回転スイッチ機構17の第1当接部材61と同様の機能を有するものであり、FPC69´に設けられたズーム用パターン74に対応する脚部61b1´、61b2´が設けられている。
ここで、回転スイッチ機構17´では、操作部39´の押え板42に、単一の接片61´のみが設けられ、そこから延出された並列する脚部61b1´、61b2´がFPC69´のズーム用パターン74に接触されている。この脚部61b1´、61b2´は、ズームレバー14の回転操作に応じてFPC69´のズーム用パターン74への接触態様が変化されるものであることから、操作部39´の回転中心に対して偏心された位置に設けられている。また、脚部61b1´、61b2´は、FPC69´のズーム用パターン74への接触を確実なものとするために、回転スイッチ機構17´が適切に組み付けられた状態においてFPC69´の上面を付勢するように設定されている。このため、操作部39´では、回転中心に対して偏心する脚部61b1´、61b2´がFPC69´のズーム用パターン74に接触されることにより、適切な設置姿勢から傾いた状態となってしまう。これは、以下のことによる。
操作部39´は、ズームレバー14と押え板42とが受け台31が装着されたカバー部30を介在させつつ連結されて構成されている。このとき、操作部39´では、ズームレバー14の小径部44の高さ寸法が、受け台31の挿通孔34の高さ寸法よりも大きくされていることにより、ズームレバー14の大径部43の下面と、押え板42の上面との一方のみが、受け台31(環状リブ部33)に当接するものとされている。これにより、操作部39´は、受け台31が装着されたカバー部30に対して回転可能とされ、かつカバー部30からの離脱が防止されている。このため、操作部39´は、基本的には、ズームレバー14の大径部43の下面が、受け台31の環状リブ部33に全周に渡って当接された状態で、カバー部30の表面に対して略平行となるように設定されており、これが適切な設置姿勢となる。ここで、ズームレバー14の小径部44の高さ寸法と、受け台31の挿通孔34の高さ寸法との差異は、操作部39´の回転を可能とする最小限なものとされていることから、カメラ自体を傾けても操作部39´が適切な設置姿勢を略維持している。ところが、回転中心に対して偏心する脚部61b1、61b2がFPC69´のズーム用パターン74に接触されると、この脚部61b1、61b2がFPC69´(それが取り付けられた板金68)を付勢することの反力をうけて、操作部39´が適切な設置姿勢に対して傾いた状態となってしまうことによる。
次に、カメラ10における作用について説明する。
カメラ10では、ズームレバー14およびシャッターボタン13が表面にメッキ処理が施されて導電性を有するものとされており、このズームレバー14の両連結ボス部51の連結孔52には、押え板42および両当接部材61、62を介在させて導電性を有する材料から形成されたネジ67が螺合されている(図9参照)。ここで、押え板42は、樹脂材料からなり導電性を有するものではないことから、ズームレバー14およびシャッターボタン13と、第1当接部材61および第2当接部材62とを導通させることはない。
ここで、連結ボス部51aおよびその連結孔52aは、表面にメッキ処理が施されておらず非導電性とされており、連結ボス部51bおよびその連結孔52bは、表面にメッキ処理が施されて導電性とされている。また、両連結ボス部51は、その高さ寸法が押え板42の厚さ寸法よりも小さく設定されていることから、図9に示すように、両ネジ67の頭部67aと押え板42(その下面)とにより挟持された第1当接部材61および第2当接部材62とは直接的には当接されていない。
この導電性とされた連結ボス部51bおよびその連結孔52bに対応して設けられた第2当接部材62は、その脚部62bの先端62btが、ズームレバー14の回転位置(基準位置Pbからの回転角度)に拘らず常に放電用パターン75に接触しており、その放電用パターン75は、基準電位位置に電気的に接続されている。この第2当接部材62は、ネジ67を介して連結ボス部51bおよびその連結孔52bと接触している。
このため、カメラ10では、帯電した物体の一例としての使用者が、ズームレバー14またはシャッターボタン13に触れた場合であっても、シャッターボタン13およびズームレバー14のメッキ処理された表面、ズームレバー14の連結ボス部51bおよびその連結孔52b、そこに螺合されたネジ67、そのネジ67に接触する第2当接部材62、そこから延出された脚部62b、およびその脚部62bの先端62btに接触する放電用パターン75に至る経路が導通することとなるので、この経路を経て静電気を基準電位位置に逃がすことができる。
また、カメラ10では、ズームレバー14の回転位置(基準位置Pbからの回転角度)に応じて撮像光学系のズーム位置を変更させるための第1当接部材61に対しては、連結ボス部51aおよびその連結孔52aが非導電性とされているとともに、この連結ボス部51aが第1当接部材61に直接的に当接されてはいないことから、ズームレバー14またはシャッターボタン13から直に接触する各部材による電気的な経路が形成されてはいない。すなわち、連結孔52aおよび連結ボス部51aは、非導電性とされていることから、その連結孔52aに第1当接部材61に接触されたネジ67が螺合されていても、直に接触する各部材による電気的な経路が形成されることはない。
本発明に係る電子機器としてのカメラ10では、以下の(1)〜(8)効果を得ることができる。
(1)直に接触する各部材により形成された電気的な経路を経て静電気を逃がすことができることから、確実に当該経路を経て放電することができ、意図しない位置への放電に起因してFPC69等を破損させたりその電子回路での誤動作を生じさせたりすることを、確実に防止することができる。
(2)帯電した物体の一例としての使用者が、ズームレバー14またはシャッターボタン13に触れた場合であっても、静電気がズームレバー14に設けられた第1当接部材61を介して電子回路へと放電されることを防止することができるので、当該電子回路に誤動作が生じることを防止することができる。
(3)回転スイッチ機構17において、操作部39の押え板42に第1当接部材61および第2当接部材62が設けられており、両当接部材61、62は、一方から延出された脚部61b1、61b2と、他方から延出された脚部62bとが、操作部39の回転中心から離間するように縁部近傍に位置されかつ操作部39の回転方向で見た互いの間隔が可能な限り離間するように設けられていることから、脚部61b1、61b2がFPC69(それが取り付けられた板金68)を付勢することの反力を受けても、脚部62bもFPC69(それが取り付けられた板金68)を付勢することの反力を受けるので、操作部39では双方の反力を相殺させることができ、操作部39が適切な設置姿勢に対して傾くことを抑制することができる。
(4)脚部61b1、61b2および脚部62bは、両当接部材61、62から斜め下方へ向けて延出されて形成されているが、脚部61b1、61b2の第1当接部材61からの延出方向と、脚部62bの第2当接部材62からの延出方向とが、操作部39に対しては互いに相反する関係とされていることから、脚部61b1、61b2がFPC69(それが取り付けられた板金68)を付勢することに起因して第1当接部材61に作用する回転力と、脚部62bがFPC69(それが取り付けられた板金68)を付勢することに起因して第2当接部材62に作用する回転力と、を相反するものとすることができるので、互いに相殺することができ、操作部39が適切な設置姿勢に対して傾くことを抑制することができる。
(5)FPC69上において、基準電位位置へと電気的に接続された放電用パターン75を設ければよいことから、FPC69の設計を変更するだけで実現することができる。このように、カバー部30とそこに装着される受け台31に導電性処理を施したり導電性テープのように新たに導電性の部材を設けたりすることなく、静電気対策を施すことができるとともに操作部39の適切な設置姿勢を維持させることができるので、部品コストおよび製造コストの増加を大幅に抑制することができる。
(6)より簡易な構成の回転スイッチ機構17´(図10参照)の構成および組み立て方法からの大きな変更を招くことがないので、部品コストおよび製造コストの大幅な増加を招くことなく、静電気対策を施すことができるとともに、操作部39の適切な設置姿勢を維持させることができ、製品の質感を向上させることができる。
(7)単一の電路として機能する各脚部61b1、61b2および脚部62bが、2本の薄板部分を並列させる構成とされていることから、導電性パターン72上に塵埃等が存在した場合であっても当該導電性パターン72との接触状態を確保することができる。このため、確実に静電気を逃がすことができるとともに、回転操作による切り換えを確実なものとすることができる。
(8)放電のための経路を構成すべく第2当接部材62の脚部62bの先端62btが接触される放電用パターン75が金メッキにより形成されていることから、先端62btが放電用パターン75上を摺動されるものであっても良好な導電性を得ることができるので、回転操作に拘らず確実に静電気を逃がすことができる。
したがって、本発明に係る電子機器の一例としてのカメラ10では、コストの増加を抑制しつつ静電気を確実に意図した位置すなわち基準電位位置へと放電させることができる。
なお、実施例1では、第1当接部材61および第2当接部材62は、一方から延出された脚部61b1、61b2と、他方から延出された脚部62bとが、操作部39の回転方向で見た互いの間隔が可能な限り離間するように設けられていたが、静電気を確実に逃がすことができるものであればよく、この位置関係は実施例1に限定されるものではない。しかしながら、操作部39が適切な設置姿勢に対して傾くことを抑制する観点から、一方から延出された脚部61b1、61b2と、他方から延出された脚部62bとが、操作部39の回転中心が中間となる直線上に位置する、すなわち回転方向で見て脚部61b1、61b2と脚部62bとの間隔が順方向側と逆方向側とで差異をできる限り小さくすることが望ましい。このような構成とすると、両脚部61b、脚部62bは、FPC69に対して操作部39を最もバランス良く2点支持することができ、操作部39が適切な設置姿勢に対して傾くことを防止することができる。