JP2010159858A - ダンパー構造及び回転機械 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸受に支持された軸3の前記軸受より外側に延びる軸端部3aに設けられたダンパー構造10において、軸端部3aの外周に設けられるスリーブ11と、このスリーブ11と軸3の径方向に間隔を置いて設けられたハウジング12と、ハウジング12とスリーブ11とを軸方向に相対移動させる移動部13とを備え、互いに対向するスリーブ11の外周面11aとハウジング12の内周面12bとの間にスクイズフィルムS(S1)が形成される一方、このスクイズフィルムS(S1)の形成域が変更可能に構成されたことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
このようなスクイズフィルムを利用したダンパー構造としては、下記特許文献1のものがある。
これに起因して、軸に不安定振動が発生し、回転機械の運転が継続できなくなるという問題がある。
(1)目標とする振動特性に近づけることができるダンパー構造を提供する。
(2)不安定振動の発生を抑止する。
(3)回転機械の安定的な運転を継続して行う。
すなわち、本願発明に係るダンパー構造では、前記軸端部の外周に設けられるスリーブと、このスリーブと前記軸の径方向に間隔を置いて設けられたハウジングと、前記ハウジングと前記スリーブとを軸方向に相対移動させる移動部とを備え、互いに対向する前記スリーブの外周面と前記ハウジングの内周面との間にスクイズフィルムが形成される一方、このスクイズフィルムの形成域が変更可能に構成されたことを特徴とする。
この構成によれば、移動部によってスリーブとハウジングとが相対移動するので、スリーブの外周面とハウジングの内周面との間のスクイズフィルムの形成域が変更される。これにより、スクイズフィルムのダンパー特性を変更することができるので、実測のダンパー特性が目標のダンパー特性と異なるものであっても、目標のダンパー特性となるように調整することができる。従って、軸系全体の振動特性を目標とする振動特性に近づけることができるダンパー構造を提供することができ、軸の不安定振動の発生を抑止することができる。
なお、本明細書において、「スクイズフィルムの形成域」とは、「スクイズフィルムが形成される位置・大きさ・範囲」という意味で用いている。
この構成によれば、ハウジングの内周面とスリーブの外周面がそれぞれ一定の径で形成されているので、ハウジングとスリーブとが軸方向に相対移動することにより、内周面と外周面とが互いに対向する範囲が軸方向に増減する。換言すれば、スクイズフィルムの形成域の軸方向の長さが増減し、スクイズフィルムの軸方向の長さ(幅)が変更される。これにより、ダンパー特性を高精度で調整することが可能となり、不安定振動の発生をより確実に抑止することができる。
この構成によれば、ハウジングの内周面とスリーブの外周面とが、それぞれテーパ面とされているので、スリーブとハウジングとが軸方向に相対移動すると、内周面及び外周面の法線方向における両者の距離が増減する。換言すれば、スクイズフィルムの形成域の厚さが増減し、スクイズフィルムの厚さが変更される。これにより、ダンパー特性を大きく変更することができ、ダンパー特性が目標のダンパー特性と大きく離れたものであったとしても、これに応じて調整することができ、不安定振動の発生を抑止することができる。
この構成によれば、径方向における位置が異なるスクイズフィルムのいずれか一を選択可能に構成されているので、スリーブとハウジングとが軸方向に相対移動すると、径方向における位置が異なるスクイズフィルムに変更される。これにより、ダンパー特性を大きく変更することができ、ダンパー特性が目標のダンパー特性と大きく離れたものであったとしても、これに応じて調整することができ、不安定振動の発生を抑止することができる。
この構成によれば、ハウジング及びスリーブを精度よく位置決めすることができる。従って、スクイズフィルムの形成域を精度よく変更することができる。
この構成によれば、上記いずれかの構成のダンパー構造を備えるので、軸を理想的に減衰させることができ、不安定振動の発生が抑止される。これにより、回転機械の安定的な運転を継続して行うことができる。
(第一実施形態)
図1は、本願発明の第一実施形態に係る遠心圧縮機Aの全体構成を示す横断面図である。この遠心圧縮機Aは、ケーシング2と、シャフト(軸)3と複数のインペラ4とから構成される多段ロータ5と、シャフト3の両端近傍を回転可能に支持する軸受6と、シャフト3の一方の軸端部3aに設けられたダンパー構造10とを備えている。
また、ケーシング2は、一方の端面から外方に突出する軸端ケース部2dを備えている。この軸端ケース部2dについては、後述のダンパー構造10と共に説明する。
シャフト3は、ケーシング2の長手方向に延在して、ケーシング2の収容空間を貫通するように設けられ、図示しない駆動源に連結されて回転駆動するようになっている。
複数のインペラ4は、回転軸O方向に沿って所定の間隔を空けてシャフト3に固定されている。各インペラ4は、円盤上に複数の羽根(図示せず)が立設され、該羽根の先端にシュラウドが取り付けられて構成されている。上記円盤とシュラウドとの間に形成される空間は、圧縮する気体の通り道として機能する流路とされ、上述したケーシング2内の流路2cと繋げられている。
図2に示すように、ダンパー構造10は、ケーシング2の軸端ケース部2dに設けられている。この軸端ケース部2dは、ケーシング2の一方の端面から回転軸O方向に環状に突出して軸端部3aを囲繞する囲繞壁部2gと、囲繞壁部2gの端部を略閉塞する端壁部2hとを備えており、端壁部2hには回転軸O上に位置する貫通孔2fが形成されている。
環状部材15は、軸線を回転軸Oに重ねた状態で、外縁15aがケーシング2の内壁面2eに固定されており、シャフト3を挿通させている。
センタリングバネ16は、ばね鋼により円筒状に形成されたバネ部材であり、軸線を回転軸Oに重ねた状態で、その一端部16aが環状部材15の内縁15bに固定されると共に、他端部16bがスリーブ11の端面11aに固定されている。このセンタリングバネ16は、径方向のみに変位し、回転軸O方向、周方向には変位しないように設定されている。
このようなハウジング12は、上述したケーシング2の軸端ケース部2dの内方において、回転軸O方向に移動可能かつ回動不可能に収容されており、円柱状穴12a及び雌ネジ部12cの中心軸をシャフト3の回転軸Oに重ねている。この状態において、ハウジング12は、円柱状穴12aにスリーブ11の少なくとも一部を収容しており、円柱状穴12aの内周面12bとスリーブ11の外周面11aとの間には間隙が形成されている。
なお、上記の説明において、本実施形態では、外筒がハウジング12に相当し、内筒がスリーブ11に相当する。
まず、設計段階において、遠心圧縮機Aのシャフト3、軸受6及びダンパー構造10について、軸径全体が目標となる振動特性となるように、所定の寸法及びクリアランスを設定する。これら設定された寸法及びクリアランスを基準に、各部材を所定の寸法公差で製作し、各部材を所定の位置決め公差及び組立公差で組み立てる。このような各公差により、組み立てられた軸受6及びダンパー構造10は、目標とされた振動特性と若干異なる振動特性となる。
上記目標とされた振動特性と若干異なる振動特性によって、特定の使用条件において、シャフト3に不安定振動が発生する。全ての使用条件に亘って振動特性を実測した後に遠心圧縮機Aを停止する。
具体的には、ダンパー構造10の調整用ボルト13を回動させる。この調整用ボルト13は回転軸O方向に不動であるため、調整用ボルト13の回動によって、雌ネジ部12cを介してハウジング12が回転軸O方向に螺進する。
このようにして、遠心圧縮機Aの軸径全体の振動特性を目標とする振動特性に調整する。
次に、本願発明の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態は、上述した第一実施形態に係る遠心圧縮機A(図1参照)のダンパー構造10を変更したものである。図4は、本願発明の第二実施形態に係るダンパー構造20を示す横断面図である。なお、図4及び図5において、図1から図3と同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
スリーブ21は、二つの異なる外半径D1,D2(D1>D2)で構成されて段状となった円筒状部材である。すなわち、このスリーブ21の外周面は、中心軸から外半径D1だけ離れた位置に延在する第一外周面(外周面)21aと、外半径D2だけ離れた位置に延在する第二外周面(外周面)21bとを有している。これら第一外周面21aと第二外周面21bとは、回転軸O方向の長さが同一の長さMとされている。
このような構成のスリーブ21は、間隙を介して軸端部3aを囲繞した状態で、第一実施形態のスリーブ11と同様に、環状部材15と、センタリングバネ16とにより位置決めされている。
段状穴22aは、同軸で内半径の異なる三つの円柱状空間が連通する構成とされており、具体的には、開口側から穴底側に向けて、内半径d1〜d3で形成された三つの円柱状空間から構成とされている。
内半径d1〜d3の大小関係は、d2>d1>d3となっており、内半径d1がスリーブ21の外半径D1よりもやや大きく、内半径d3が外半径D2よりもやや大きくされている。また、内半径d1と外半径D1との差分と、内半径d3と外半径D2との差分とは、同大とされている。
第三内周面22dと第二外周面21bとが対向すると、スクイズフィルムS21が消滅してスクイズフィルムS22が形成される。
すなわち、例えば、実測されたダンパー特性が目標とするダンパー特性よりもはるかに大きい場合には、スクイズフィルムS21からスクイズフィルムS22となるようにして、ダンパー減衰係数Cが小さくなるようにダンパー特性が調整される。
次に、本願発明の第三実施形態について説明する。以下に説明する第三実施形態は、上述した第一実施形態に係る遠心圧縮機A(図1参照)のダンパー構造10を変更したものである。図6は、本願発明の第三実施形態に係るダンパー構造30を示す横断面図である。なお、図6及び図7において、図1から図5と同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
このスリーブ31は、間隙を介して軸端部3aを囲繞した状態で、第一実施形態のスリーブ11と同様に、環状部材15と、センタリングバネ16とにより位置決めされている。
テーパ穴32aは、開口側から穴底側に向けて漸次径が減少する内周面32bを有している。このテーパ穴32aは、ハウジング32の外周面31aが内周面32bと対向するように、ハウジング32を収容可能に構成されている。
このようなハウジング32は、上述したケーシング2の軸端ケース部2dの内方において、回転軸O方向に移動可能かつ回動不可能に収容されており、テーパ穴32a及び雌ネジ部12cの中心軸をシャフト3の回転軸Oに重ねている。
スクイズフィルムの厚さcの増減は、式(1)に示すように、スクイズフィルムの幅Lの増減よりも、ダンパー減衰係数Cの増減への影響が大きく、ダンパー減衰係数Cを広い範囲で調整することができる。
例えば、上述した実施の形態では、ダンパー構造10,20においてハウジング12とハウジング22を調整用ボルト13によって移動させる構成としたが、ダンパー構造30のようにサーボモータ33により移動させる構成としても構わない。同様にダンパー構造30において、サーボモータ33の代わりに調整用ボルト13を用いる構成としても構わない。
3a…軸端部
6…軸受
10,20,30…ダンパー構造
11,21,31…スリーブ
11a,31a…外周面
12,22,32…ハウジング
12a…円柱状穴
12b,32b…内周面
12c…雌ネジ部
12d…底部
13…調整用ボルト(移動部)
21a…第一外周面(外周面)
21b…第二外周面(外周面)
22b…第一内周面(内周面)
22c…第二内周面(内周面)
22d…第三内周面(内周面)
33…サーボモータ
S(S1,S21,S22,S3)…スクイズフィルム
A…遠心圧縮機
L…幅(軸方向の長さ)
c…厚さ
Claims (6)
- 軸受に支持された軸の前記軸受より外側に延びる軸端部に設けられたダンパー構造において、
前記軸端部の外周に設けられるスリーブと、
このスリーブと前記軸の径方向に間隔を置いて設けられたハウジングと、
前記ハウジングと前記スリーブとを軸方向に相対移動させる移動部とを備え、
互いに対向する前記スリーブの外周面と前記ハウジングの内周面との間にスクイズフィルムが形成される一方、
このスクイズフィルムの形成域が変更可能に構成されたことを特徴とするダンパー構造。 - 前記ハウジングの内周面及び前記スリーブの外周面は、前記軸方向に向けてそれぞれ一定の径で形成されて前記スクイズフィルムが円筒状に形成され、
このスクイズフィルムの前記軸方向の長さが変更可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。 - 前記ハウジングの内周面及び前記スリーブの外周面は、前記軸方向のいずれか一方向に向けてそれぞれ漸次径が減少するテーパ面とされて前記スクイズフィルムがテーパ状に形成され、
このスクイズフィルムの前記径方向の厚さが変更可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。 - 前記ハウジングの内周面及び前記スリーブの外周面は、前記軸方向に向けて段状となるようにそれぞれ異なる径で形成された複数の段状面とされて、前記内周面におけるいずれか一の段状面と前記外周面における一の段状面とが対向する場合に前記スクイズフィルムが一つ形成される構成とされ、
前記径方向における位置が異なるスクイズフィルムのいずれか一を選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパー構造。 - 前記移動部は、サーボモータを備えることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載のダンパー構造。
- 請求項1から5に記載のうちいずれか一項に記載のダンパー構造を備えることを特徴とする回転機械。
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