JP2010159173A - シリカ容器及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コスト、高寸法精度、高耐久性のシリカ容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(1)シリカ粒子である第一原料粉、非晶質シリカからなり平均粒径が小さい第二原料粉、主成分がシリカであり、Al元素及び/又はOH基を含有するか、結晶核材を含有する第三原料粉、及び、高純度結晶質シリカである第四原料粉の準備、(2)第一及び第二原料粉を含有する基体形成用混合スラリーの作製、(3)基体形成用混合スラリーを鋳込み型枠の中に導入、(4)鋳込み型枠内の基体形成用混合スラリーを加熱脱水して基体を仮成形、(5)基体の焼成、(6)基体の内側から第三原料粉を散布して供給しながら溶融し、基体の内表面上に中間層を形成、(7)中間層が形成された基体の内側から第四原料粉を散布して供給しながら溶融し、中間層の内表面上に内側層を形成、の各工程を有し、(5)と、(6)(7)とのいずれかを先に行うシリカ容器の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シリカを主な構成成分とするシリカ容器及びその製造方法に関し、特には、低コスト、高寸法精度、高耐久性のシリカ容器及びその製造方法に関する。
シリカガラスは大規模集積回路(LSI)製造用投影露光装置(リソグラフィー装置)のレンズ、プリズム、フォトマスクやディスプレイ用TFT基板、ランプ用チューブ、窓材、反射板、半導体工業用洗浄容器等の治具、及びシリコン半導体溶融容器等の材料として用いられている。しかしながら、これらシリカガラスの原料としては高価な四塩化ケイ素等の化合物や高純度化処理された石英粉を用いなければならず、またシリカガラス溶融温度や加工温度は約2000℃と著しく高温であるため、エネルギー消費量が多く地球温暖化ガスの1つとして考えられる二酸化炭素の大量排出を引き起してしまう。
そこでその対策の1つとして従来、比較的安価なシリコン化合物や粉体原料を用いたシリカガラスの製造方法が考えられてきた。
例えば特許文献1では、シリコンアルコキシドを加水分解してシリカゾルとし、次いでゲル化させてウエットゲルとし、乾燥によりドライゲルとし、最後に高温焼成により透明ガラス体を得る方法(ゾル−ゲル法)が示されている。また特許文献2では、テトラメトキシシランもしくは、テトラエトキシシランと、シリカ微粒子を含むシリカゾル溶液とから構成されるシリカゾル混合溶液から、ゾル−ゲル法によって透明シリカガラスを得る方法が示されている。また、特許文献3では、シリコンアルコキシド及びシリカ微粒子を主原料として、透明シリカガラスを製造する方法において、200℃〜1300℃未満の加熱処理は酸素ガス含有雰囲気で行い、更に1700℃以上に昇温させる加熱処理を水素ガス含有雰囲気で行い、かつ前記2つの加熱処理の間に減圧雰囲気加熱処理を行うことが示されている。
しかし、これら従来のゾル−ゲル法では、作製されたシリカガラスの寸法精度や耐久性に問題があるばかりではなく、高温下での焼成工程が必要なことからエネルギーコストの面でもそれほど安価ではなかった。
また、例えば特許文献4では、少なくとも2つの異なる寸法のシリカガラス粒子、例えばシリカガラス微粉末とシリカガラス粒を混合して水含有懸濁液とし、次いで加圧成形し、乾燥後に高温下で焼結してシリカ含有複合体を得る方法が示されている。また、特許文献5では、100μm以下のサイズのシリカガラス粒子と100μm以上のサイズのシリカガラス顆粒を含有する混合水溶液(スラリー)の作製、成形型枠への注入、次いで乾燥、焼結により不透明シリカガラス複合材を作製する方法が示されている。
しかし、これら従来の鋳込み成形・焼成法では、乾燥工程や焼結工程での水分の大量蒸発による成形体の収縮が大きく、寸法精度の高い肉厚のシリカガラス成形体を作ることは出来なかった。
特開平7−206451号公報 特開平7−277743号公報 特開平7−277744号公報 特開2002−362932号公報 特開2004−131380号公報
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、高寸法精度、高耐久性の、シリカを主な構成成分とするシリカ容器を、安価な比較的低品位のシリカ粉体を主原料として、投入エネルギー量を少なく、低コストで製造するためのシリカ容器の製造方法、及び、このようなシリカ容器を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、
シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ容器の製造方法であって、少なくとも、
(1)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉、非晶質シリカからなり、平均粒径が前記第一の原料粉の平均粒径よりも小さい第二の原料粉、主成分がシリカであり、アルミニウム元素及び/又はOH基を含有することとシリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有することとの少なくとも一方を満足する第三の原料粉、及び、結晶質シリカからなり、前記第一の原料粉及び前記第二の原料粉よりもシリカ純度が高い第四の原料粉を準備する工程と、
(2)前記第一の原料粉と前記第二の原料粉と水とを含有する基体形成用混合スラリーを作製する工程と、
(3)前記基体形成用混合スラリーを、回転対称性を有する鋳込み型枠の中に導入する工程と、
(4)前記鋳込み型枠に導入した基体形成用混合スラリーを加熱脱水することにより基体を仮成形する工程と、
(5)前記基体を酸素含有雰囲気下で焼成する工程と、
(6)前記基体の内側から前記第三の原料粉を散布して供給しながら前記基体の内側に配置した加熱源により溶融することで、前記基体の内表面上に、シリカガラスからなる中間層を形成する工程と、
(7)前記中間層が形成された基体の内側から前記第四の原料粉を散布して供給しながら前記中間層が形成された基体の内側に配置した加熱源により溶融することで、前記中間層の内表面上に、透明シリカガラスからなる内側層を形成する工程と
を有し、前記(4)の工程終了後に、前記(5)の工程と、前記(6)及び(7)の工程とのいずれかを先に行うことを特徴とするシリカ容器の製造方法を提供する。
このような工程によるシリカ容器の製造方法であれば、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有し、高寸法精度、高耐久性、特に耐熱変形性を有するシリカ容器を、少ないエネルギー消費量で、高生産性かつ低コストで製造することができる。
この場合、前記第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすることが好ましい。
このように、第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすれば、より安価なシリカ原料から製造し、低コストのシリカ容器とすることができる。
またこのような、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したシリカ粉を原料としても、本発明のシリカ容器の製造方法であれば、容器に収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
また、前記第一の原料粉のシリカ純度を99.5〜99.999wt.%とすることが好ましい。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法の場合、原料とする第一の原料粉のシリカ純度を99.5〜99.999wt.%と比較的低純度のものとしても、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記基体形成用混合スラリーを作製する工程よりも前に、前記第二の原料粉を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して顆粒体作製用混合スラリーとし、該顆粒体作製用混合スラリーを乾燥させることにより、前記第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とし、該第二の原料粉の顆粒体を用いて前記基体形成用混合スラリーを作製することができる。
このように、基体形成用混合スラリーを作製する工程よりも前に、第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とし、該第二の原料粉の顆粒体を用いて前記基体形成用混合スラリーを作製するようにすれば、第二の原料粉の取り扱いが簡便になる。
また、前記基体形成用混合スラリーを作製する際の前記第一の原料粉と前記第二の原料粉との配合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%以上50wt.%未満とすることが好ましい。
このように、基体形成用混合スラリーを作製する際の前記第一の原料粉と前記第二の原料粉との配合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%50wt.%未満とすれば、シリカ容器の製造コストを十分に低減しながらも、寸法精度や耐久性を十分に確保することができる。
また、前記基体形成用混合スラリーの加熱脱水を、100〜200℃の温度範囲で行うことが好ましい。
このように、前記基体形成用混合スラリーの加熱脱水を、100〜200℃の温度範囲で行えば、本発明に係るシリカ容器の製造をより確実に行うことができる。
また、前記基体形成用混合スラリーを、アルミニウム元素を含有するものとすることが好ましい。
このように、基体形成用混合スラリーを、アルミニウム元素を含有するものとすれば、不純物金属元素の容器内表面への拡散を防止する効果を付与することができる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記第三の原料粉に含有するアルミニウム元素及びOH基の合計濃度を50〜5000wt.ppmとすること、及び、前記第三の原料粉に含有する結晶核材となる化合物粉の割合を50〜5000wt.ppmとすることの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
このように、第三の原料粉にアルミニウム元素及び/又はOH基を含有する場合には、第三の原料粉に含有するアルミニウム元素及びOH基の合計濃度を50〜5000wt.ppmとし、第三の原料粉にシリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有する場合には、第三の原料粉に含有する結晶核材となる化合物粉の割合を50〜5000wt.ppmとすれば、製造したシリカ容器を使用する際に、シリカ容器の、特に基体に含まれる不純物の拡散をより効果的に防ぐことができる。その結果、シリカ容器に収容する内容物への不純物汚染をより効果的に防止することができる。
また、前記内側層を形成する工程の際の溶融雰囲気に水素ガス及び/又は水蒸気を含有させ、該内側層にOH基を1〜200wt.ppmの濃度で含有させることが好ましい。
このように、内側層にOH基を1〜200wt.ppmの濃度で含有させれば、シリカ容器内表面のエッチングや溶解への耐性をさらに高くすることができる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記第四の原料粉にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有させる工程を有すること、及び、前記内側層の表面にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含む溶液を塗布する工程を有することの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。また、この場合、前記第四の原料粉に含有させるカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度を、50〜5000wt.ppmとすること、及び、前記内側層の表面に塗布する溶液中のカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度を、5〜500μg/cmとすることの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法において、第四の原料粉にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有させる工程と、内側層の表面にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含む溶液を塗布する工程との少なくともいずれか一方の工程を有するようにすれば、製造後のシリカ容器を、1300〜1600℃のような高温下で使用する際に、内側層が再結晶化し、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができるとともに、内側層表面のエッチングや溶解を抑制することができる。また、特に上記のような濃度であればさらに効果的である。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記基体を焼成する工程よりも後に、前記基体を徐冷点から歪点までの温度域を徐冷することにより歪除去する工程を有することが好ましい。
このように、所定の温度域を徐冷することにより歪除去を行えば、シリカ容器の耐熱変形性をさらに向上させることができる。
また、前記シリカ容器を、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして使用するものとすることができる。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法によって製造されたシリカ容器は、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして好適に使用することができる。その結果、シリコン単結晶製造のための総投入エネルギーや総コストを低減することができる。
また、本発明は、回転対称性を有するシリカ容器であって、少なくとも、気泡を含有し、白色不透明であり、かさ密度が1.90〜2.15g/cmであり、シリカ純度が99.5〜99.999wt.%である不透明シリカ層からなる基体を有し、該基体の内側に、アルミニウム元素及び/又はOH基を含有することとシリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物成分を含有することとの少なくとも一方を満足するシリカガラスからなり、厚さが0.1〜5mmである中間層を有し、該中間層の内側表面上に、実質的に気泡を含有しない透明シリカガラス層からなり、かさ密度が2.19〜2.21g/cmであり、厚さが0.1〜5mmである内側層を有し、前記基体の含有するガスの分子濃度が、該基体から測定用試料を切り出し、該測定用試料のガス放出量を真空下において1000℃に加熱して測定した場合に、COガスについて1×1017分子/cm以下であり、COガスについて5×1016分子/cm以下であることを特徴とするシリカ容器を提供する。
このようなシリカ容器であれば、低コストのシリカ容器でありながらも、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有し、高寸法精度、高耐久性を有する安価なシリカ容器とすることができる。
この場合、前記基体のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの合計濃度が10〜1000wt.ppmであることが好ましい。
このように、基体のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの合計濃度が10〜1000wt.ppmとすれば、シリカ容器を高温下で使用する際にクリストバライト微結晶の生成を促進させ、シリカ容器の耐熱変形性を向上させることができる。
また、前記中間層が含有するアルミニウム元素及びOH基の合計濃度が50〜5000wt.ppmであること、及び、前記中間層が含有する結晶核材となる化合物成分の濃度が50〜5000wt.ppmであることの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
このように、中間層がアルミニウム元素及び/又はOH基を含有する場合には、そのアルミニウム元素及びOH基の合計濃度が50〜5000wt.ppmであることが好ましい。また、中間層が結晶核材となる化合物成分を含有する場合には、その結晶核材となる化合物成分の濃度が、50〜5000wt.ppmであることが好ましい。このような値とすることにより、シリカ容器基体に含まれる不純物金属元素の内表面への拡散をより効果的に防ぐことができる。
また、前記内側層がOH基を1〜200wt.ppm含有するものであることが好ましい。
このように、内側層にOH基を1〜200wt.ppm含有すれば、シリカ容器内表面のエッチングや溶解への耐性を高くすることができる。
また、前記内側層がカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有するものであること、及び、前記内側層の内側に、さらに、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有する塗布層を有することの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。また、この場合、前記内側層が含有するカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度が50〜5000wt.ppmであること、及び、前記塗布層に含有されるカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度が5〜500μg/cmであることの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
このように、シリカ容器が、内側層にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有するものであるか、内側層の内側に、さらに、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有する塗布層を有するものであるか少なくともいずれか一方を満たすものであれば、シリカ容器を1300〜1600℃程度の温度下において内側層の透明シリカガラスが再結晶化し、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができるとともに、シリカガラス表面のエッチングや溶解を抑制することができる。また、特に上記のような濃度とすればさらに効果的である。
また、前記基体がアルミニウムを30〜3000wt.ppm含有するものであることが好ましい。
このように、基体がアルミニウムを30〜3000wt.ppm含有するものであれば、基体にも不純物拡散防止効果を付与することができ、基体に含まれるリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムを基体内部に固定させることにより、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができる。
以上のように、本発明に従うシリカ容器の製造方法であれば、安価な比較的低品位のシリカ粉体を原料とし、これを成形、焼成して所定形状のシリカ容器を得るものであり、高寸法精度、高耐久性を有し、かつエネルギー消費量の少ない、高生産性かつ低コストの製造方法及びシリカ容器を得ることができる。
また、本発明に従うシリカ容器であれば、低コスト、低エネルギー消費量で得られるシリカ容器でありながらも、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有するのみならず、高温で長時間使用しても熱変形しにくく、内容物による容器内表面のエッチングや溶解の少ない、高寸法精度、高耐久性を有する安価なシリカ容器とすることができる。
特に太陽光発電用(太陽電池用、ソーラー用)シリコン結晶の製造に使用されるシリカルツボでは、シリコン結晶の大型化に従って大口径ルツボが必要とされ、金属シリコン溶融時のルツボの軟化、変形を防止することが第1の課題として考えられる。また、シリコン結晶の作製時に、シリカルツボに含まれている不純物金属元素、アルカリ金属元素Li、Na、Kのみならず、特にTa、Mo、Nd、Zr、W、Ti、V、Au、Cr、Mnの10元素が、その他としては、Co、Fe、Pb、Ag、Al、Ni、Cu等がシリコン結晶に取り込まれた場合、光電変換効率の低下を引き起してしまう。従って、シリカルツボに含まれる金属不純物がシリコン融液に拡散して来ない様にシリカルツボに不純物金属元素のシールド作用(遮蔽作用)を持たせることが第2の課題と考えられる。更に、シリコン結晶の作製時にシリカルツボがシリコン融液に溶解し、酸素元素がこのシリコン結晶に含有されると、大幅に光電効率の低下を引き起してしまうことがある。従って、シリコン融液に対して溶解しにくい(耐エッチング性のある)シリカルツボ表面を形成することが第3の課題と考えられる。
更に、シリコン融液にシリコン種結晶を接合し、徐々に種結晶のネッキング処理を行ったり、その後単結晶を大口径化させるためのショルダー形成処理を行ったりする際、出来る限り該シリコン融液表面の湯面振動を抑制する必要がある。この湯面振動を抑制することが第4の課題と考えられる。最後に出来る限り安価な原料を使用し、かつ出来る限り低い温度でルツボを焼成してエネルギーコストを低減する必要がある。つまり低コストとすることが第5の課題と考えられる。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、以下では主に本発明を好適に適用できる一例として、太陽電池(太陽光発電、ソーラー発電)の材料とされる金属シリコン(Si)溶融用容器(ルツボ)として使用することができるシリカ容器の作製方法の説明を行うが、本発明はこれに限定されることなく、シリカを主な構成成分とする回転対称性を有するシリカ容器に広く適用することができる。
上記のように、ソーラー用シリコン結晶を作製するために使用されるシリカルツボに対しては、耐熱変形性、不純物金属元素シールド性(遮蔽性)、耐シリコン融液エッチング性、湯面振動抑制及び低コストの5つの特性を同時に満足させることが要求される。
図3に本発明に係るシリカ容器の一例の概略断面図を示す。
本発明に係るシリカ容器71は回転対称性を有し、その基本構造は、最外層の基体51、中間層56、及び内側層58の3層構造から成る。そして、これらのそれぞれの層は主には、基体51は耐熱変形性等の耐久性を担う層として、中間層56は不純物シールド層として、内側層58は高純度であるとともに内容物に対する耐エッチング性を担う層として位置づけられる。
基体51では、主成分がシリカであるが、あえてアルカリ金属元素であるリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)及びアルカリ土類元素であるカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)の合計値を10〜1000wt.ppm含有させることが好ましく、20〜200wt.ppm含有させることがさらに好ましい。また同時に、アルミニウム元素(Al)を30〜3000wt.ppm含有させることが好ましく、50〜500wt.ppm含有させることがさらに好ましい。このことにより、シリコン結晶作成時の約1400〜1600℃の温度下において、シリカ基体中にクリストバライト等の微結晶が大量に生成し、基体51の耐熱変形性及び不純物金属元素シールド性を大幅に向上させることが可能となる。また、基体51にOH基を10〜1000wt.ppm好ましくは20〜500wt.ppmの濃度で含有させてもよい。OH基濃度の調整は後述するシリカ容器の製造における乾燥工程や焼結工程の雰囲気、温度、時間条件を変化させることなどによって行うことができる。
不純物拡散防止効果(不純物シールド効果)を持たせるべき中間層56では、一つの態様としては、アルミニウム(Al)元素及び/又はOH基を含有するシリカガラス層とする。この場合、アルミニウム元素及びOH基の合計濃度を50〜5000wt.ppmとすることが好ましい。Al元素を含有させた不純物シールドの考えは文献(特許3764776号)にLSI用シリコン単結晶引き上げ用ルツボを例として示されている。Al元素のみをドープしたシリカガラスが不純物シールド性を有することはある程度認められる。しかしながら、比較的高濃度の不純物金属元素が存在する場合、Al元素のみでは完全なシールドは困難である。この場合、Al元素と同時にOH基を含有させたシリカガラスでは大幅に不純物シールド特性を向上させることが可能となる。
この不純物シールド効果はAl元素又はOH基の一方でも認められるが、Al元素とOH基を同時に含有させることで大きな効果が生ずる。
別の態様としては、中間層56をシリカ微結晶を有するシリカガラス層、すなわちグラスセラミックスで形成する。グラスセラミックスの作成方法は文献(特許2931742号)に示されている。シリカガラス、好ましくはOH基を含有するシリカガラスの中に耐熱性セラミック粒子からなる結晶核生成剤、例えば酸化物としてはAl、CaO、MgO、BeO、ZrO、HfO、ホウ化物としてはZrB、HfB、TiB、LaB、炭化物としてはZrC、HfC、TiC、TaC、窒化物としてはZrN、HfN、TiN、TaNの少なくとも1種を含有させておく。その後容器として使用する時前に1400〜1500℃にて加熱処理しておくか又は、容器として使用され1500℃前後の温度下に置かれると、その結晶核生成剤を中心としてクリストバライト、オパール等の微結晶が生成し、不純物シールド効果を発現するようになる。
内側層58、すなわち、耐シリコン融液エッチング性を有するべき透明シリカガラス層では、シリコン原子に比較してイオン半径の大きいアルカリ土類金属元素であるバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)の少なくとも1種を50〜5000wt.ppm均一にドープしておくか、又は表面に5〜500μg/cmでコーティングすることにより目的を達成することが出来る。結晶化促進剤については文献(特許3100836号、特許3046545号)に示されている。
しかし本発明では特に、中間層56の不純物シールド層の表面上に耐シリコン融液エッチング性の透明シリカガラス層からなる内側層58を重ねて形成することにより、内側層中へのガラスの粘性度を低下させるようなアルカリ金属元素の拡散を防止し、より高い耐シリコン融液エッチング性を保持することが可能となる。
さらに、内側層58中に含まれるOH基を1〜200wt.ppm、好ましくは10〜100wt.ppmとすることによりある程度の不純物金属元素シールド性を有しつつ、かつ耐シリコン融液エッチング性を長時間保持することが可能となる。また、前述の通り、特定のアルカリ土類金属元素Ba、Sr、Caの少なくとも1種を50〜5000wt.ppm及びOH基を1〜200wt.ppm含有させておくと、シリコン融液が存在する1400〜1600℃程度の温度下で内側層58(すなわち透明シリカガラス層)の表面がクリストバライト化し、細かな凹凸が形成し、いわゆるザラザラ面となる。理論的に明らかではないが、このザラザラ面が湯面振動を抑制する効果があるものと推定している。
以上の通り、基体51、中間層56、内側層58の各々が別々の機能を有することにより、シリカ容器として必要とされる、耐熱変形性、不純物シールド性、耐シリコン融液エッチング性、湯面振動抑制性の4つの特性を同時に充分満足させることができ、比較的低純度のシリカ粉体原料を使用することにより低コストとすることも達成できる。
以下では、上記のようなシリカ容器の製造方法を説明する。
図1に、本発明に係るシリカ容器の製造方法の一例を示す。
(工程1:各原料粉の準備)
まず、図1の(1)に示すように、シリカ容器を製造するにあたって原料となるシリカ粉を準備する。なお、それぞれの原料粉は、少なくとも該原料粉を使用する工程の前に準備すれば良い。
ここで準備する原料粉は以下の通りである。
(a)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉11、
(b)非晶質シリカからなり、平均粒径が第一の原料粉11の平均粒径よりも小さい(好ましくは球状である)第二の原料粉12、
(c)主成分がシリカであり、アルミニウム元素及び/又はOH基を含有することとシリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有することとの少なくとも一方を満足する第三の原料粉13、
(d)結晶質シリカからなり、第一の原料粉11及び第二の原料粉12よりもシリカ純度が高い第四の原料粉14。
なお、本明細書中では、シリカ純度(SiO純度)とは材料中のシリカ(SiO)分の割合を意味する。ただし、金属元素は不純物とするが、OH基やOガス、Nガス、COガス、COガス等のガス成分は不純物としては考えない。
以下では、第一、第二、第三及び第四のそれぞれの原料粉の準備について一つずつ説明する。
(第一の原料粉)
第一の原料粉11は、本発明に係るシリカ容器のうち、不透明シリカ層からなる基体の骨材となるものであり、基体の主な構成材料となるものである。
この第一の原料粉は例えば以下のようにしてシリカ塊を粉砕、整粒することにより作製することができるが、これに限定されない。
まず、直径5〜50mm程度の天然シリカ塊(天然に産出する水晶、石英、珪石、珪質岩石、オパール石等)を大気雰囲気下、600〜1000℃の温度域にて1〜10時間程度加熱する。次いで該天然シリカ塊を水中に投入し、急冷却後取出し、乾燥させる。この処理により、次のクラッシャー等による粉砕、整粒の処理を行いやすくできるが、この加熱急冷処理は行わずに粉砕処理へ進んでもよい。
次いで、該天然シリカ塊をクラッシャー等により粉砕、整粒し、粒径を好ましくは0.01〜5mm、より好ましくは0.1〜1mmに調整して天然シリカ粉を得る。
次いで、この天然シリカ粉を傾斜角度を有するシリカガラス製チューブから成るロータリーキルンの中に投入し、キルン内部を塩化水素(HCl)又は、塩素(Cl)ガス含有雰囲気とし、700〜1100℃にて1〜100時間程度加熱することにより高純度化処理を行う。ただし高純度を必要としない製品用途では、この高純度化処理を行わずに次処理へ進んでもよい。
以上のような工程後に得られる第一の原料粉は結晶質のシリカであるが、シリカ容器の使用目的によっては、第一の原料粉として非晶質のシリカガラススクラップを使用することもできる。
第一の原料粉の粒径は、上記のように、0.01〜5mmとすることが好ましく、0.1〜1mmとすることがより好ましい。
第一の原料粉のシリカ純度は、99.5wt.%以上とすることが好ましく、99.99wt.%以上とすることがさらに好ましい。また、本発明のシリカ容器の製造方法であれば、第一の原料粉のシリカ純度は99.999%以下と比較的低純度のものとしても、製造されるシリカ容器は、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。そのため、従来よりも低コストでシリカ容器を製造することができることになる。
(第二の原料粉)
第二の原料粉12は、本発明に係るシリカ容器のうち、不透明シリカ層からなる基体を第一の原料粉11とともに構成する材料となるものである。この第二の原料粉12に必要な条件は非晶質シリカからなること(非晶質シリカ粉)と、平均粒径が第一の原料粉の平均粒径よりも小さいことである。また、さらに球状であること(球状非晶質シリカ粉)が好ましい。
本発明のシリカ容器の製造方法において、基体を構成するために好ましい第二の原料粉12の粒径は0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜5μmである。第二の原料粉12としての非晶質シリカ粉の作製方法は特に限定されないが、大きく分けて湿式法のゾル−ゲル法(アルコキシド法)と乾式法の溶融法(溶射法、燃焼法)があり、各種の公知の方法(例えば、「高純度シリカの応用技術」(株式会社シーエムシー、1991年3月1日発行、PP.306−310)に概要が記載されている)によって作製することができる。また、第二の原料粉12としてはその他にも、四塩化珪素(SiCl)等の珪素化合物原料の火炎加水分解法によって作製するシリカガラス微粉体、いわゆるスート粉を用いることができる。この場合のスート粉の粒径も0.1〜10μm程度が好ましい。
なお、第一の原料粉11または第二の原料粉12に、例えば金属元素のアルミニウム(Al)を含有(ドープ)させておくと、製造するシリカ容器の不透明シリカ層からなる基体にアルミニウムを含有させることができる。アルミニウムを含有させると、後述のシリカガラス層中にOH基を含有する場合の効果と同様に、基体内部に含まれる不純物金属元素を固定したり不純物金属元素の拡散を低減させ、製造したシリカ容器に収容する被処理物に対する不純物金属元素汚染を防止する効果があるので好ましい。
このアルミニウムの含有方法は特に限定されず、水やアルコールに可溶性のアルミニウム化合物溶液に原料粉を浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥するなどの方法を用いることができる。
また、このアルミニウムのドープは、後述する、第一の原料粉と第二の原料粉(または第二の原料粉の顆粒体)とを基体形成用混合スラリーとする際に行ってもよい。
(第三の原料粉)
第三の原料粉13として、主成分がシリカである原料粉を準備する。この第三の原料粉13は、不純物金属元素の拡散を防止するシールド性シリカガラス層を形成するためのシリカ粉であり、そのために、アルミニウム元素(Al元素)及び/又はOH基を含有するか、シリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有するかのいずれか少なくとも一方を満足する必要がある。
第三の原料粉13の材質は、高純度化処理された天然石英粉、天然水晶粉、又は合成クリストバライト粉、合成シリカガラス粉が考えられる。これらに上記Al元素及び/又はOH基を含有させるか、シリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有させる。粒径は10〜500μm、好ましくは50〜200μmである。
第三の原料粉13にAl元素及び/又はOH基を含有させる場合には、第三の原料粉に含有するAl元素及びOH基の合計濃度を50〜5000wt.ppmとし、シリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有させる場合には、第三の原料粉に含有する結晶核材となる化合物粉の割合を、50〜5000wt.ppmとすることが好ましい。
第三の原料粉13にAl元素、OH基を含有させる方法は特に限定されないが、例えば以下のようにすることができる。すなわち、Al元素を含有させるためには、Alの硝酸塩、塩化物又は炭酸塩の水溶液又はアルコール溶液を調製し、その中に高純度シリカ粉を浸漬させて乾燥することにより作製できる。また、OH基は、第三の原料粉13を合成粉とする場合は、合成条件を調整することにより10〜1000wt.ppm程度を第三の原料粉13中に含有させることが可能である。そして、これらのようにして第三の原料粉に含有させるAl元素及びOH基の濃度を、上記のように合計して50〜5000wt.ppmとすることが好ましい。
シリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉(以下、単に結晶核剤と呼ぶことがある)としては、例えば約2000℃以上のような高融点を持つ化合物の微粉体が挙げられ、例えば酸化物としてはAl、CaO、MgO、BeO、ZrO、HfO、ホウ化物としてはZrB、HfB、TiB、LaB、炭化物としてはZrC、HfC、TiC、TaC、窒化物としてはZrN、HfN、TiN、TaNの中から少なくとも1種以上を均一に混合することにより作製することができる。
このように、第三の原料粉13にAl元素及び/又はOH基を含有するか結晶核材を含有させることにより、シリカ容器71を製造した際に、中間層56が、特に基体51に含まれる不純物の容器内側への拡散をより効果的に防ぐことができる。その結果、シリカ容器71に収容する内容物への不純物汚染をより効果的に防止することができる。
(第四の原料粉)
第四の原料粉14として、内側層用の高純度のシリカ粉を準備する。
この第四の原料粉14の材質としては、高純度化処理された天然石英粉、天然水晶粉、又は合成クリストバライト粉、合成シリカガラス粉が考えられる。透明シリカガラスから成る内側層の気泡量を少なくする目的であれば結晶質シリカ粉が好ましい。また、より高純度な内側層とする目的であれば、合成シリカガラス粉や合成クリストバライト粉が好ましい。粒径は10〜500μm、好ましくは50〜200μmである。
また、第四の原料粉14としては、純度はシリカ(SiO)成分が99.9999wt.%以上であることが好ましい。また、好ましくはアルカリ金属元素リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)の各々が10wt.ppb以下、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)の各々が1wt.ppb以下である。
また、本発明によって製造するシリカ容器を、例えば太陽電池製造におけるシリコン単結晶連続引き上げ(マルチプリング)用容器のような、高耐久性が要求されるシリコン金属溶融用容器として用いる場合には、収容物のシリコン融液による内側層(すなわち透明シリカガラス層)のエッチング溶解を低減する目的から、2族(2A族)のカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の少なくとも一種を第四の原料粉14に含有させる工程を有することが好ましい。含有させる2族元素はSr又はBaであることがさらに好ましく、シリコン単結晶中に取り込まれづらい点からBaであることが特に好ましい。これらの2族元素が含有された第四の原料粉は、水又はアルコールに溶解する2族元素の塩化物、硝酸塩又は炭酸塩を選び、この化合物の水溶液又はアルコール溶液を作製し、この中にシリカ原料粉を浸漬させ、その後乾燥させることにより得ることができる。この第四の原料粉14に含有させるカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度は50〜5000wt.ppmとすることが好ましい。
(付加的な工程:第二の原料粉の顆粒体の作製)
次に、上記した工程1において準備した第二の原料粉12をバインダーコーティングされた顆粒体とすることができる。このように顆粒体とすることで、第二の原料粉の取り扱いが簡便になるので好ましい。
第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とするには、例えば以下のような手順により行うことができる。
まず、第二の原料粉12を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して顆粒体作製用混合スラリーとする。具体的には、顆粒体のコアとなる非晶質シリカ粉である第二の原料粉12に、パラフィン系バインダー(融点40〜70℃)又はステアリン酸系バインダー(融点70〜150℃)を好ましくは重量比率1〜10wt.%程度さらに好ましくは2〜5wt.%程度混合し1〜10/secのせん断速度における粘性値30〜300mPa・Sとなるように純水を加え(水分率として10〜40%程度))、その後20〜30μmに設定されたメッシュフィルターにより異物を除去して顆粒体作製用の混合スラリー(シリカスラリー、懸濁液)を作製する。
有機バインダーは上記のパラフィン系バインダー、ステアリン酸系バインダーに限定されるものではないが、これらであれば、安価でありながらも比較的低温の熱処理下で安定して顆粒体を作製でき、基体を作製できるので好ましい。
また、有機バインダーはその他ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル系バインダー、エチルセルロース、メチルセルロース等を適宜複数種類混合してもよい。
この顆粒体作製用混合スラリーを乾燥させることにより、バインダーコーティングされた顆粒体を作製する。混合スラリーの乾燥方法は特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)に投入してバインダーが表面にコーティングされている非晶質シリカ粉の顆粒体を作製することができる。このスプレードライヤーは円柱状のホッパー型チャンバーと該チャンバーの上部に設置された顆粒体作製用混合スラリーを噴霧する装置(アトマイザー)と、該チャンバーの横に設置された熱風給気ダクトと該チャンバー下部に設置された顆粒体捕集口からなる。熱風給気ダクトから流出する空気温度は使用するバインダーの融点より高く設定する必要があり、100〜250℃の範囲に設定する。これにより作製される顆粒体は、バインダーが表面にコーティングされた非晶質シリカ粉の集合体であり、粒径20〜200μmの範囲で所定の平均粒径に設定することが可能である。
(工程2:第一の原料粉と第二の原料粉と水とを含有する基体形成用混合スラリーを作製する工程)
次に、図1の(2)に示すように、第一の原料粉11と第二の原料粉12と水とを含有する基体形成用混合スラリー31を作製する。第二の原料粉12は顆粒体の状態から混合されてもよい。
この基体形成用混合スラリー31の作製は、具体的には下記のように、(a)第一の原料粉と第二の原料粉の混合、(b)混合スラリーの作製、(c)スラリーの均質混合、(d)スラリーの真空脱ガス、等の各サブステップを経て行うことができるが、これに限定されるものではない。
(a)第一の原料粉と第二の原料粉の混合
まず、第一の原料粉11を主原料とし、第二の原料粉12を5wt.%以上50wt.%未満、好ましくは20〜40wt.%範囲で均一に混合する。製造コストを低減させる目的からは、なるべく比較的低コストの第一の原料粉11の主原料を多くする必要がある。第二の原料粉12の混合比率が5wt.%未満では、成形、焼成後のシリカ容器の基体の空隙が多くなり、密度が高くならず、その結果、シリカ容器の寸法精度、強度や耐熱性が悪くなる。また、第二の原料粉12の混合比率が50wt.%以上では、成形、焼成後のシリカ容器の基体の空隙が少なくなり密度がシリカガラスの値の2.2(g/cm)に近づくものの、製造コストが上昇するので好ましくない。混合手法としては、比較的量が少ない場合、V型ミキサーを用いることもできるが、この手法に限定されるわけではない。
(b)スラリー(混合水溶液)の作製
上記で作製した第一の原料粉11、第二の原料粉12の混合粉を主原料として95〜80wt.%、純水を5〜20wt.%とする。シリカ容器の基体中のNa、K、Li、Ca、Mgの合計値が10〜1000wt.ppm好ましくは20〜200wt.ppmとなる様に調整する。調整方法はこれらアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素の硝酸塩、炭酸塩、塩化物のいずれかを微量、純水に溶解混合することで可能である。しかし、最初から原料粉に含まれている場合は、これら元素の濃度調整は行わなくてもよい。
また、このスラリーにアルミニウムを含有させ、焼成後のシリカ容器71の基体中にアルミニウム元素を30〜3000wt.ppm程度含有させるようにすることが好ましい。Al濃度の調整は、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウムのいずれかを微量純水に溶解混合することなどによって行うことができる。
また、このスラリーには、更に必要に応じて分散剤(例えばポリアクリル酸塩)消泡剤(例えばポリエチレングリコール)、潤滑剤(例えばステアリン酸、ワックス)、結合剤(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリステレンアクリル系レジン、パラフィン系ワックス、エポキシレジン、メチルセルロース、エチルセルロース)を適量混合することができる。
(c)スラリーの均質混合
円筒状シリカガラス容器及びシリカガラスボールから成るボールミルの中に混合液を投入し1〜2時間混合する。作製されたスラリーの密度は1.7〜2.1g/cm好ましくは1.8〜2.0g/cmとし、粘性度は1〜10/secのせん断速度において300〜3000mPa・secとする。
(d)スラリーの真空脱ガス
シリカガラスチャンバー内にスラリーを設置し、室温下にて10Pa以下の真空度で1〜30min真空脱ガス処理を行う。ただし、この処理は作製されるシリカ容器の用途によっては行わない場合もある。
(工程3:基体形成用混合スラリーの鋳込み型枠への導入)
次に、図1の(3)に示すように、基体形成用混合スラリー31を成形するための回転対称性を有する鋳込み型枠に導入する。
この鋳込み型枠の様子を模式的に図4に示す。鋳込み型枠110は、基本的には石膏等の多孔質セラミックまたは多孔質プラスチック等の材質からなる、鋳込み内型111と鋳込み外型112とから成り、鋳込み外型112にはスラリーを注入するためのスラリー鋳込み口113が開口している。
この鋳込み型枠110の、スラリーを導入する空間(鋳込み内型111と鋳込み外型112の間の空間)の形状が、形成する基体51の形状、さらに最終的に製造するシリカ容器71の形状に影響する。例えば、図4(a)に示すように形成する基体内部の底面が略平面状になるようにしても、図4(b)に示すように基体内部の底面が曲面状になるようにしてもよく、製造するシリカ容器の用途等によって適宜選択することができる。
(工程4:基体形成用混合スラリーの加熱脱水)
次に、図1の(4)に示すように、上記の工程3で鋳込み型枠に導入した基体形成用混合スラリー31を、型に入ったスラリーをクリーンオーブン内に入れ、室温から5〜20℃/時間で昇温後、100〜200℃にて10〜100時間保持して、水分を蒸発させ乾燥する。これにより、基体51を仮成形する。
(工程5:雰囲気加熱処理による基体の焼成)
次に、図1の(5)に示すように、基体51を酸素含有雰囲気下で焼成することにより基体51を不透明シリカ層からなるものとする。
図5を参照しながら説明する。
まず、基体51を鋳込み型枠110から取り出した後、高純度アルミナボードを保温材とし、二珪化モリブデンをヒーター306とする電気抵抗加熱炉301内に設置する。なお、電気抵抗加熱炉301は、その他、雰囲気ガスを供給するガス供給口302、雰囲気ガスを排出するガス排出口303、ガス供給口302、ガス排出口303を通過するガスをそれぞれ制御する開閉バルブ304、305等を具備している。
なお、後述の工程6(中間層形成)及び7(内側層形成)をこの工程5(基体焼成、歪除去)よりも先に行う場合には、図5の基体51には既に中間層56及び内側層58が形成されていることになる。
次いで、酸素ガス含有雰囲気にて、室温から1000℃に至るまで50℃/時間〜200℃/時間の昇温速度にて昇温し、基体に含まれているバインダー等の有機物質を酸化、燃焼、除去する。次いで1000℃から1200〜1500℃に至るまでに、20℃/時間〜100℃/時間にて昇温し、引き続き1200〜1500℃好ましくは1300〜1400℃の範囲の所定温度にて、1〜10時間保持し、シリカ基体51中の第一の原料粉11であるシリカ骨材と第二の原料粉12を含有する基体形成用混合スラリー31を焼結させる。焼結中の電気抵抗加熱炉301内の雰囲気は酸素ガス含有雰囲気のままでも良いし、又は窒素ガス100%雰囲気とする事も可能であり、原料粉の特性に対応して、任意に選定することが出来る。
本発明では、基体51の焼成をクリーンな電気炉内において、雰囲気を制御した電気抵抗加熱処理により行うため、従来のカーボン電極のアーク放電加熱処理に比べて炭素化合物の生成が少なく、その結果として焼成後の基体51に含有される一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)の溶存ガス量を少なくすることができる。この溶存ガス量は基体51からの放出ガスを測定することにより間接的に評価することができる。特に、本発明のシリカ容器71を、シリコン結晶作成に使用されるシリカルツボに適用する場合においてCO、CO放出ガス量が少ないことは、作製されるシリコン結晶の品質に、例えば構造欠陥を低減させる等、良い結果となる。従来法によるルツボでは、COの放出量は2×1017〜4×1018(分子/cm)、CO放出量は1×1017〜1×1018(分子/cm)程度の値であるが、本発明のルツボでは、CO放出量は1×1017(分子/cm)以下、CO放出量は5×1016(分子/cm)以下の値とすることが出来る。
また、焼成した基体51を少なくとも徐冷点から歪点までの温度域を徐冷して歪除去することもできる。
例えば、焼成完了後、1150℃程度(シリカガラスの徐冷点付近)まで降温し、次いで1000℃程度(シリカガラスの歪点付近)まで5℃/時間〜20℃/時間で徐々に降温を行い、シリカ容器基体51の残留歪を除去し、室温まで放冷させればよい。
また、この徐冷による歪除去処理は、後述の中間層56及び内側層58を形成する工程(工程6及び7)よりも後に行ってもよい。
(工程6:基体内表面上への放電溶融法による中間層の形成)
次に、図1の(6)に示すように、基体51の内側から第三の原料粉13を散布して供給しながら基体51の内側に配置した加熱源により溶融することで、基体51の内表面上に、中間層56を形成する。基本的な形成方法は、例えば特公平4−22861及び特公平7−29871に示される内容に従う。図6を参照しながら説明する。
基体51の内表面上への中間層56を形成する装置は、回転軸対称性を有する回転可能な回転枠201、回転モーター(図示せず)、及び中間層56形成用の第三の原料粉13が入ったホッパー203、ホッパー203内で第三の原料粉13を攪拌する攪拌用スクリュー204、計量フィーダ205、及び放電溶融(アーク溶融)の熱源となるカーボン電極212、電線、高圧電源ユニット211等から成る。放電溶融に耐えるため、回転枠201は、カーボン等の材料から成る。また、放電溶融雰囲気の制御のため、回転枠201を取り囲むように、雰囲気ガスシールド用(回転枠保護を兼ねる)カバー214、蓋213等を備え、雰囲気ガスを供給するための雰囲気ガス供給装置215等を備える。
中間層56の形成手段としては、先ず回転枠201を所定の回転速度に設定し、高圧電源ユニットから徐々に高電圧を負荷するのと同時に原料ホッパー203から徐々に中間層56形成用の第三の原料粉13を基体51の上部から散布する。この時カーボン電極間に放電は開始されており、基体51内部はシリカ粉の溶融温度域(1800〜2000℃程度と推定)にあるため、散布された第三の原料粉13(シリカ粉)はシリカの溶融粒子となって基体51の内表面に付着していく。基体51の上部開口部に設置されているカーボン電極、原料粉投入口、蓋213は基体51に対して前後、左右に位置が水平移動できる機構となっており、これらの位置を変化させることにより、基体51の全内表面に均一厚さで中間層56を形成することができる。中間層56は、気泡の含有が少なく、無色半透明〜無色透明である。
なお、中間層56の厚さは0.1〜5mmとして形成することが好ましい。中間層の厚さは0.1mm以上であれば、シリカ容器内側への不純物拡散を十分に抑制することができ、収容する内容物への汚染を十分に防止できる。また、中間層の厚さが5mm以下であれば、製造に必要な投入エネルギーが大きくなりすぎることもなく、十分に低コストにシリカ容器を製造することができる。
放電溶融中のシリカ基体内部の雰囲気ガスはカーボン電極の消耗を少なくするために、一般に窒素ガス(N)100%を用いるが水素ガス(H)含有雰囲気にするとより気泡の少ない高純度な中間層56が得られる。また、この雰囲気ガス中の水蒸気含有濃度を制御することにより、中間層56中のOH基濃度を所定の値に設定することが出来る。OH基を含有させる効果としては、例えば基体の中に含まれるアルカリ金属元素等の不純物金属元素の拡散を低減させることにより、シリカ容器として使用するときに中に入れる被処理物質に対する汚染を防止することが出来る。
(工程7:放電溶融法による中間層表面上への内側層の形成)
次に、図1の(7)に示すように、中間層56が形成された基体51の内側から第四の原料粉14を散布して供給しながら中間層56が形成された基体51の内側に配置した加熱源により溶融することで、中間層56の内表面上に、内側層58を形成する。基本的な形成方法は、上記の工程6と同様である。
なお、内側層58の厚さは0.1〜5mm、実質的に気泡を含有せず、無色透明として形成することが好ましい。内側層の厚さは0.1mm以上であれば、収容する内容物への汚染を十分に防止することができる。また、内側層の厚さが5mm以下であれば、製造に必要な投入エネルギーが大きくなりすぎることもなく、十分に低コストにシリカ容器を製造することができる。
第四の原料粉14を供給するためのホッパーとその一部を構成する攪拌用スクリュー、計量フィーダは、工程6の第三の原料粉13のためのものと同一のものとしてもよいが、別のものを準備しても用いてもよい。
なお、上記工程5と工程6及び工程7とはどちらを先に行ってもよい。工程6及び工程7を工程5よりも先に行う場合を、図2に示す。
この場合、内側層58と中間層56が高温で焼成されることになるので、工程5を工程6及び工程7よりも先に行うことが好ましいことが多い。
このようにして、本発明のシリカ容器71を得ることができるが、必要に応じて以下のようにシリカ容器の洗浄を行う。
(シリカ容器の洗浄、乾燥)
例えば、フッ化水素酸水溶液(HF)1〜10%程度にて、5〜30分間の表面エッチングを行い、次いで純水で洗浄し、クリーンエア中で乾燥させてシリカ容器を得る。
(塗布層の形成)
さらに、本発明では、内側層58の内表面にカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の少なくとも一種を含む溶液を塗布する工程を設けることができる。
作製されたシリカ容器71の内表面部分(すなわち内側層58の内表面)に、結晶化促進剤としてCa、Sr、Baの少なくとも1種以上をコーティングする。これらCa、Sr、Baの硝酸塩、塩化物、炭酸塩のいずれかの水溶液又はアルコール溶液を作製し、これを内側層58の内表面に塗布し、乾燥させる。このCa、Sr、Baの合計濃度は、5〜500μg/cmとすることが好ましい。
この処理は、シリカ容器の用途に応じて行わない場合もある。
以上のような工程を経て、上記したような、図3に示す本発明に係るシリカ容器71を製造することができる。
シリカ容器71を構成する各層のうち、基体51は、気泡を含有し、白色不透明であり、不透明シリカ層からなる。また、基体51のかさ密度は典型的には1.90〜2.15g/cmであり、このようなかさ密度であれば、基体51の耐熱変形性をより高くすることができる。
また、本発明のシリカ容器71の場合、基体51はシリカ純度が99.5〜99.999wt.%のような比較的低純度であっても、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
さらに、本発明のシリカ容器71は、基体51の含有する分子濃度が、基体部分から測定用試料を切り出し、該測定用試料のガス放出量を真空下において1000℃に加熱して測定した場合に、COガスについて1×1017分子/cm以下であり、COガスについて5×1016分子/cm以下であるようなシリカ容器とすることができる。これは、本発明では基体形成用混合スラリーを用いた鋳込み成形によって基体51の作製を行い、中間層56及び内側層58のみをカーボン電極による放電溶融によって行うため、カーボン電極やカーボン等の材料で成る回転枠201の影響によるCO、COガスの取り込みが従来よりも大幅に少ないためである。
そして、このようにCO、COガスの含有が少ないために、シリカ容器71に収容する内容物(シリコン等)への汚染をより効果的に防止できる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示した本発明のシリカ容器の製造方法に従い、シリカ容器を以下のように製造した。
まず、第一の原料粉11を以下のように準備した。
天然珪石を100kg準備し、大気雰囲気下で、1000℃、10時間の条件で加熱後、純水の入った水槽へ投入し、急冷却した。これを乾燥後、クラッシャーを用いて粉砕し、粒径50〜500μm、シリカ(SiO)純度99.995wt.%、総重量80kgのシリカ粉(天然珪石粉)とした。
また、以下のように、第二の原料粉12を準備した。
溶融法によって球状非晶質シリカ粉(第二の原料粉)を合成した。この球状非晶質シリカ粉は、粒径0.2〜5μm、平均粒径1μm、平均比表面積4m/g、重量20kgであった。
このようにして準備した第二の原料粉12を、以下のようにしてバインダーコーティングされた顆粒体とした。
第二の原料粉12の20kgに対して、パラフィン系バインダー(融点55℃)200g、ステアリン酸系バインダー(融点100℃)200g、純水10kgを混合して、顆粒体形成用混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、スプレードライヤーにより乾燥させ、バインダーコーティングされた顆粒体を作製した。このバインダーコーティングされた球状非晶質シリカ粉の顆粒体の、顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
また、第三の原料粉13を以下のようにして準備した。まず、高純度天然石英粉(粒径50〜500μm、シリカ純度99.9999wt.%以上)を重量2kg準備し、次に、塩化アルミニウム(AlCl)を含む水溶液に浸漬、乾燥した。
また、第四の原料粉14として、粒径50〜300μm、シリカ純度99.99999wt.%以上の、高純度処理を施した合成クリストバライト粉を、重量2kg準備した。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉80wt.%に対して第二の原料粉の顆粒体を20wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と第二の原料粉の顆粒体の混合粉90wt.%に対して純水10wt.%、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム)を少量混合してスラリー状とした。次に、円筒型シリカガラス製容器、及びシリカガラスボールから成るボールミルにて1時間、このスラリーを均一混合した。この均一混合したスラリーに、密度が1.8〜1.9g/cm、粘度が1〜10/secせん断速度にて約500〜1000mPa・secになる様に、純水を適量加えて調整した。次に、このスラリーを容器に入れ、シリカガラスチャンバー内に設置し、室温にて10Pa以下の真空にて10分間真空脱ガス処理を行った。
このようにして基体形成用混合スラリー31とした。
次に、図4(a)に示すような、石膏製の鋳込み型枠110の中へ基体形成用混合スラリー31を注入した。
次に、クリーンオーブン中にて100℃で10時間保持、次いで200℃10時間保持し、その後室温まで冷却し、基体51を仮成形した。
次に、図5に示すように、基体51の焼成を行った。
二珪化モリブデンヒータ306を具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉301内に基体51を設置した。そして、室温から1000℃まで200℃/時間の昇温速度で約5時間かけて昇温、1350℃まで20℃/時間の昇温速度で昇温した後、1350℃にて3時間保持した。
次いで放冷して室温に戻した。このようにして、外型300mm、高さ300mm、厚さ10mmの寸法を有する基体51とした。
次に、図6に示すように、放電溶融(アーク溶融)によって、基体51の内面上に中間層56を厚さ約2mmで形成した。
具体的には、回転枠201内に挿入された基体51の内部にカーボン電極212を挿入し、原料粉供給口、蓋213を設定した。その後、回転枠201を回転しながら、第三の原料粉を徐々に投入しつつ水蒸気含有窒素ガス雰囲気下で、カーボン電極212を用いて放電加熱(電気アーク加熱)した。
これにより、Al及びOH基がドープされた厚さ約2mmシリカガラス層(中間層56)を形成した。
引き続き、ほぼ同様の放電溶融(アーク溶融)によって、基体51とその内表面上に形成された中間層56の内表面上に、内側層58を厚さ約3mmで形成した。
具体的には、原料粉の原料供給口を第四の原料粉を入れたホッパーに接続し、回転枠201を回転しつつ水素ガスを3vol.%含有する窒素ガス97vol.%雰囲気とし第四の原料粉を徐々に投入しつつ、放電加熱を行った。
これにより、厚さ約3mmの透明シリカガラス層(内側層58)を形成した。
ここまでの工程で基本的にはシリカ容器71を製造できたが、続いて以下の工程を行った。
シリカ容器71全体の歪除去処理(アニール処理)を以下のように行った。
まず、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材、二珪化モリブデンヒータの電気炉内にシリカ容器71を設置した。
次に、室温から1000℃まで200℃/hr、約5時間かけて昇温、1150℃まで50℃/hrで昇温した。1150℃にて1時間保持後、1150℃から950℃まで20℃/hrで降温、徐冷を行った。次いで放冷して室温に戻した。
このようにして製造したシリカ容器71を5wt.%フッ酸水溶液(HF)にて3分間洗浄後、純水洗浄し、乾燥させた。
次に、シリカ容器71の内表面に塗布層を形成した(コーティング処理)。具体的には、硝酸バリウムBa(NOの水溶液を作製し、内側層58の内表面に均一に塗布し、乾燥させた。
(実施例2)
実施例1と同様に、ただし、第四の原料粉14にバリウムをドープする一方で内側層58の内表面上に塗布層を形成せず、シリカ容器の製造を行った。
なお、第四の原料粉14にバリウムをドープする具体的な工程は、以下の通りである。まず、第四の原料粉14として、粒径50〜300μm、シリカ純度99.99999wt.%以上の高純度処理したクリストバライト粉を2kg準備した。また、硝酸バリウム(Ba(NO)を、エチルアルコールCOH50wt.%を含む水溶液5Lに入れ、溶解させてバリウム含有溶液を作製した。その後、円筒型シリカガラス製容器の中に上記高純度処理したクリストバライト粉を入れ、次いでバリウム含有溶液を入れ、撹拌し、クリーンオーブン内で100℃にて乾燥し、バリウムドープクリストバライト粉を作製した。
(実施例3)
以下のようにシリカ容器の製造を行った。
まず、第一の原料粉11を実施例1と同様の作製方法により準備した(シリカ純度99.99wt.%)。
次に、第二の原料粉12として、四塩化珪素(SiCl)の火炎加水分解法によって球状の非晶質シリカ微粉体(スート粉)を作製した。この球状非晶質シリカ粉は、粒径0.2〜5μm、平均粒径1μm、平均比表面積4m/g、重量30kgであった。
この第二の原料粉12を、実施例1の場合と同様の方法により、バインダーコーティングされた顆粒体とした。このバインダーコーティングされた球状非晶質シリカ粉(スート粉)の顆粒体の、顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
また、第三の原料粉13を以下のようにしてジルコニアを混入したものとして準備した。まず、高純度天然石英粉(粒径50〜500μm、シリカ純度99.9999wt.%以上)を重量2kg準備した。次いで、粒径0.5〜3μm程度に調整されたジルコニア(ZrO)を、上記高純度天然石英粉に対し700wt.ppm程度の割合になるように、V型混合器を使用して混入した。
また、第四の原料粉14を実施例1、2の場合と同様の方法によって準備し、この第四の原料粉14に対して実施例2の場合と同様の方法によりバリウムをドープした。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉70wt.%に対して第二の原料粉の顆粒体を30wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と第二の原料粉の顆粒体の混合粉90wt.%に対して純水10wt.%、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム)を少量混合してスラリー状とした。次に、円筒型シリカガラス製容器、及びシリカガラスボールから成るボールミルにて1時間、このスラリーを均一混合した。この均一混合したスラリーに、密度が1.8〜1.9g/cm、粘度が1〜10/secせん断速度にて約500〜1000mPa・secになる様に、純水を適量加えて調整した。次に、このスラリーを容器に入れ、シリカガラスチャンバー内に設置し、室温にて10Pa以下の真空にて3分間真空脱ガス処理を行った。
このようにして基体形成用混合スラリー31とした。
次に、図4(a)に示すような、石膏製の鋳込み型枠110の中へ基体形成用混合スラリー31を注入した。
次に、クリーンオーブン中にて100℃で10時間保持、次いで200℃10時間保持し、その後室温まで冷却し、基体51を仮成形した。
次に、図5に示すように、基体51の焼成を行った。
二珪化モリブデンヒータ306を具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉301内に基体51を設置した。そして、室温から1000℃まで200℃/時間の昇温速度で約5時間かけて昇温、1350℃まで20℃/時間の昇温速度で昇温した後、1350℃にて1時間保持した。
次いで放冷して室温に戻した。
次に、上記したように事前に準備した、第三の原料粉13及び第四の原料粉14の散布・溶融を、実施例1、2と同様の溶融条件によって行った。
このようにして製造したシリカ容器71を5%フッ酸水溶液(HF)にて5分間洗浄後、純水洗浄し、乾燥させた。
(実施例4)
基本的に実施例3と同様にシリカ容器の製造を行ったが、以下の点が異なる。
第一の原料粉11として、シリカガラス粉(粒径100〜1000μm、シリカ純度99.995wt.%)のものを準備した。
第三の原料粉13に混入する粒子をジルコニアの代わりにマグネシア(MgO)とした。また、第一の原料粉11と第二の原料粉12の顆粒体の混合比率を重量比で90:10とした。
また、仮成形後の基体51の焼成を1250℃、3時間で行った。
(比較例1)
概ね従来法に従ってシリカ容器(シリカルツボ)を作製した。すなわち、本発明のシリカ容器の基体に相当する部分も放電溶融(アーク溶融)によって形成した。
まず、第一の原料粉に相当する原料粉としてシリカ純度99.9999wt.%以上の高純度である天然石英粉(粒径50〜300μm)を準備した。また、本発明のシリカ容器の基体に相当する部分を作製する原料として第二の原料粉に相当するものを用いず、上記第一の原料粉に相当する高純度処理した天然石英粉のみを用いた。また、第三の原料粉に相当するものを用いなかった。
また、第四の原料粉に相当する原料粉として、粒径50〜300μm、シリカ純度99.99999wt.%以上の高純度合成クリストバライト粉を準備した。
これらの原料粉を用いて、図6に示すような装置を用いてシリカルツボを製造した。具体的には、まず、窒素ガス100%雰囲気下で、カーボン製の回転枠に対して直接高純度天然石英粉を投入して回転枠内に石英粉層を形成し、これをカーボン電極で放電溶融して外層部(本発明の基体51に相当)を形成した。この間60分であり、外層部の温度は2000℃程度と推定される。
その後、外層部の内表面に高純度クリストバライト粉をホッパーから散布、放電溶融により内層部(本発明の内側層58に相当)を形成した。
その後、実施例1と同様の条件でシリカ容器全体の歪除去処理、洗浄・乾燥を行った。
(比較例2)
まず、第一の原料粉に相当する原料粉として、低コストなシリカ容器を作製するために、比較的低純度な天然石英粉を、実施例1の第一の原料粉の場合と同様の方法により準備した。また、本発明のシリカ容器の基体に相当する部分を作製する原料として第二の原料粉に相当するものを用いず、上記第一の原料粉に相当する高純度処理した天然石英粉のみを用いた。また、第三の原料粉に相当するものを用いなかった。
また、第四の原料粉に相当する原料粉として、粒径50〜300μm、シリカ純度99.99999wt.%以上の、高純度処理を施したクリストバライト粉を準備した。
これらの原料粉を用いて、比較例1と同様の条件によりシリカ容器の作製を行い、歪除去処理、洗浄・乾燥を行った。
次に、シリカ容器の内層の内表面に塗布層を形成した。具体的には、硝酸バリウムBa(NOの水溶液を作製し、内側層の内表面に均一に塗布し、乾燥させた。
[実施例及び比較例における評価方法]
各実施例及び比較例において製造したシリカ容器の物性、特性評価を以下のようにして行った。
(不純物金属元素濃度分析)
不純物金属元素濃度が比較的低い(高純度である)場合は、プラズマ発光分析法(ICP−AES、Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectroscopy)又はプラズマ質量分析法(ICP−MS、Inductively Coupled Plasma − Mass Spectroscopy)で行い、不純物金属元素濃度が比較的高い(低純度である)場合は、原子吸光光度法(AAS、Atomic Absorption Spectroscopy)で行った。
(かさ密度(比重))
水槽と精密重量計を使用して、アルキメデス法により測定した。
(各原料粉の粒径測定方法)
光学顕微鏡又は電子顕微鏡で各原料粉の二次元的形状観察及び面積測定を行った。次いで、粒子の形状を真円と仮定し、その面積値から直径を計算して求めた。この手法を統計的に繰り返し行い、粒径の範囲の値とした(この範囲の中に99wt.%以上の粒子が含まれる)。
(シリカ容器の層厚測定)
シリカ容器の側壁の全高さの半分部分における容器断面をスケールで測定することにより、基体及び透明シリカガラス層の厚さを決めた。
(OH基濃度測定)
赤外線吸収分光光度法で行った。OH基濃度への換算は、以下文献に従う。
Dodd,D.M. and Fraser,D.B.(1966) Optical determination of OH in fused silica. Journal of Applied Physics, vol.37, P.3911.
(各種ガス放出量の測定方法)
シリカ容器基体部分から10×50×厚さt5mmの寸法の測定用サンプルを作製し、これを真空チャンバー内に設置し、1000℃真空下におけるガス放出量を測定した。詳細は以下の文献に従う。
Nasu,S.et al.(1990) “Gas release of various kinds of vitreous silica”, Journal of Illuminating Engineering Institute of Japan, vol. 74, No.9, pp 595−600.
(シリコン単結晶連続引き上げ(マルチ引上げ)評価)
シリカ容器の中に純度99.99999wt.%の金属ポリシリコンを投入し、昇温を行いシリコン融液とし、次いでシリコン単結晶の引上げを10回繰り返して行い(マルチ引上げ)、単結晶育成の成功率として評価した。引上げ条件は、CZ装置内を10Paアルゴン(Ar)ガス100%雰囲気で、引上げ速度0.5mm/分、シリコン単結晶寸法、直径100mm、長さ100mmとした。また、1バッチの操業時間は約20時間とした。単結晶育成10回繰り返しの成功率の評価分類は以下の通りとした。
8回以上 ◎(特に良好)
6回以上〜8回未満 ○(良好)
4回以上〜6回未満 △(やや不良)
4回未満 ×(不良)
(シリカ容器の耐熱変形性評価)
前記のシリコン単結晶連続引き上げにおいて、5回目終了後のシリカ容器の側壁上端部の内側への倒れ込み量を評価した。
内側への倒れ込み量が1cm未満 ○(良好)
内側への倒れ込み量が1cm以上3cm未満 △(やや不良)
内側への倒れ込み量が3cm以上 ×(不良)
(シリカ容器のシリコン湯面振動(相対的)評価)
前記のシリコン単結晶連続引き上げ時におけるシリコン融液表面の湯面振動量を目視により相対的に評価した。
湯面振動が極めて少ない ○(良好)
湯面振動が少しある △(やや不良)
湯面振動が大きい ×(不良)
(シリカ容器の製造コスト(相対的)評価)
シリカ容器の製造コストを評価した。特に、シリカ原料費、鋳込み型枠と成形費、シリカ仮成形体の焼結費、溶融エネルギー費等の合計値を相対的に評価した。
コストが低い ○(従来製法コストの50%未満)
コストが中程度 △(従来製法コストの90〜50%)
コストが大きい ×(従来製法コストを100%とする)
(シリカ容器の透明シリカガラス層の不純物拡散防止効果)
製造したシリカ容器を、高純度アルミナボードの耐熱材とし、二珪化モリブデンをヒーターとする電気炉内に設置し、大気雰囲気、1450℃、12時間加熱処理を行った。次いで、該容器の内表面部分100μmをフッ化水素酸(HF)水溶液で洗浄除去した。次いで、該容器の内表面部分の厚さ100μmをフッ化水素酸(HF)50%水溶液にて溶解エッチング処理を行い、このエッチング溶液のアルカリ金属元素濃度値を分析することにより、シリカ純度の低い容器基体から高純度透明シリカガラス層への不純物金属元素の拡散が多かったか、少なかったかを評価した。
内表面厚さ100μm部分におけるLi、Na、Kの合計濃度値による分類は以下の通りとした。
0.1wt.ppm未満 ○(良好)
0.1以上〜1wt.ppm未満 △(やや不良)
1wt.ppm以上 ×(不良)
(シリカ容器の内表面結晶化効果)
製造したシリカ容器を、高純度アルミナボードを耐熱材とし二珪化モリブデンをヒーターとする電気炉内に設置し、大気雰囲気、1450℃、12時間加熱処理を行う。次いで該容器内表面部分の白色失透(クリストバライト結晶)部分を目視観察することにより再結晶化効果を評価した。再結晶化効果の評価分類は以下の通りとした。
全内表面積の80%以上が白色失透化 ○(良好)
全内表面積の50%以上〜80%未満が白色失透化 △(やや不良)
全内表面積の50%未満が白色失透化 ×(不良)
実施例1〜4、比較例1〜2で製造したそれぞれのシリカ容器の製造条件と、測定した物性値、評価結果をまとめ、下記の表1〜3に示す。なお、実施例1〜4のシリカ容器71について内側層58の不純物元素濃度(比較例1、2のシリカ容器については、内側層に相当する、最内層の透明シリカガラス層の不純物濃度)を下記の表4に示す。また、実施例1〜4、比較例1、2のシリカ容器について、基体の放出ガス量を下記の表5に示す。
Figure 2010159173
Figure 2010159173
Figure 2010159173
Figure 2010159173
Figure 2010159173
表1〜5からわかるように、本発明に係るシリカ容器の製造方法に従った実施例1〜4では、比較例1より安価で、高生産性で供給できる低純度シリカ粒子を用いているにもかかわらず、単結晶引上げにおいて比較例1の従来のシリカ容器と遜色ない結果を出せるシリカ容器を製造することができた。
また、実施例1〜4では、比較例1、2に比較して、大幅にCO、COガスの含有が少ない。
そして、このようにCO、COガスの含有が少ないために、作製したシリコン単結晶の気泡や構造欠陥の生成をより効果的に防止できるシリカ容器とすることができた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
本発明に係るシリカ容器の製造方法の一例を示すフローチャート図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法の別の一例を示すフローチャート図である。 本発明に係るシリカ容器の一例を示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法において用いる鋳込み型枠を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係る焼成工程の一例を模式的に示す説明図である。 本発明に係る透明シリカガラス層の形成工程の一例を模式的に示す説明図である。
11…第一の原料粉、 12…第二の原料粉、 13…第三の原料粉、
14…第四の原料粉、31…基体形成用混合スラリー、
51…基体、 56…中間層、 58…内側層、 71…シリカ容器、
110…鋳込み型枠、 111…鋳込み内型、 112…鋳込み外型、
113…スラリー鋳込み口、
201…回転枠、
203…ホッパー、 204…攪拌用スクリュー、 205…計量フィーダ、
211…高電圧電源ユニット、 212…カーボン電極、 213…蓋、
214…雰囲気ガスシールド用カバー、 215…雰囲気ガス供給装置、
301…電気抵抗加熱炉、 302…ガス供給口、 303…ガス排出口、
304、305…開閉バルブ、 306…ヒーター。

Claims (20)

  1. シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ容器の製造方法であって、少なくとも、
    (1)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉、非晶質シリカからなり、平均粒径が前記第一の原料粉の平均粒径よりも小さい第二の原料粉、主成分がシリカであり、アルミニウム元素及び/又はOH基を含有することとシリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物粉を含有することとの少なくとも一方を満足する第三の原料粉、及び、結晶質シリカからなり、前記第一の原料粉及び前記第二の原料粉よりもシリカ純度が高い第四の原料粉を準備する工程と、
    (2)前記第一の原料粉と前記第二の原料粉と水とを含有する基体形成用混合スラリーを作製する工程と、
    (3)前記基体形成用混合スラリーを、回転対称性を有する鋳込み型枠の中に導入する工程と、
    (4)前記鋳込み型枠に導入した基体形成用混合スラリーを加熱脱水することにより基体を仮成形する工程と、
    (5)前記基体を酸素含有雰囲気下で焼成する工程と、
    (6)前記基体の内側から前記第三の原料粉を散布して供給しながら前記基体の内側に配置した加熱源により溶融することで、前記基体の内表面上に、シリカガラスからなる中間層を形成する工程と、
    (7)前記中間層が形成された基体の内側から前記第四の原料粉を散布して供給しながら前記中間層が形成された基体の内側に配置した加熱源により溶融することで、前記中間層の内表面上に、透明シリカガラスからなる内側層を形成する工程と
    を有し、前記(4)の工程終了後に、前記(5)の工程と、前記(6)及び(7)の工程とのいずれかを先に行うことを特徴とするシリカ容器の製造方法。
  2. 前記第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすることを特徴とする請求項1に記載のシリカ容器の製造方法。
  3. 前記第一の原料粉のシリカ純度を99.5〜99.999wt.%とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリカ容器の製造方法。
  4. 前記基体形成用混合スラリーを作製する工程よりも前に、前記第二の原料粉を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して顆粒体作製用混合スラリーとし、該顆粒体作製用混合スラリーを乾燥させることにより、前記第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とし、該第二の原料粉の顆粒体を用いて前記基体形成用混合スラリーを作製することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  5. 前記基体形成用混合スラリーを作製する際の前記第一の原料粉と前記第二の原料粉との配合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%以上50wt.%未満とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  6. 前記基体形成用混合スラリーの加熱脱水を、100〜200℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  7. 前記基体形成用混合スラリーを、アルミニウム元素を含有するものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  8. 前記第三の原料粉に含有するアルミニウム元素及びOH基の合計濃度を50〜5000wt.ppmとすること、及び、前記第三の原料粉に含有する結晶核材となる化合物粉の割合を50〜5000wt.ppmとすることの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  9. 前記内側層を形成する工程の際の溶融雰囲気に水素ガス及び/又は水蒸気を含有させ、該内側層にOH基を1〜200wt.ppmの濃度で含有させることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  10. 前記第四の原料粉にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有させる工程を有すること、及び、前記内側層の表面にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含む溶液を塗布する工程を有することの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  11. 前記第四の原料粉に含有させるカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度を、50〜5000wt.ppmとすること、及び、前記内側層の表面に塗布する溶液中のカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度を、5〜500μg/cmとすることの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項10に記載のシリカ容器の製造方法。
  12. 前記基体を焼成する工程よりも後に、前記基体を徐冷点から歪点までの温度域を徐冷することにより歪除去する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  13. 前記シリカ容器を、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして使用するものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
  14. 回転対称性を有するシリカ容器であって、少なくとも、
    気泡を含有し、白色不透明であり、かさ密度が1.90〜2.15g/cmであり、シリカ純度が99.5〜99.999wt.%である不透明シリカ層からなる基体を有し、
    該基体の内側に、アルミニウム元素及び/又はOH基を含有することとシリカガラスの結晶化のための結晶核材となる化合物成分を含有することとの少なくとも一方を満足するシリカガラスからなり、厚さが0.1〜5mmである中間層を有し、
    該中間層の内側表面上に、実質的に気泡を含有しない透明シリカガラス層からなり、かさ密度が2.19〜2.21g/cmであり、厚さが0.1〜5mmである内側層を有し、
    前記基体の含有するガスの分子濃度が、該基体から測定用試料を切り出し、該測定用試料のガス放出量を真空下において1000℃に加熱して測定した場合に、COガスについて1×1017分子/cm以下であり、COガスについて5×1016分子/cm以下であることを特徴とするシリカ容器。
  15. 前記基体のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの合計濃度が10〜1000wt.ppmであることを特徴とする請求項14に記載のシリカ容器。
  16. 前記中間層が含有するアルミニウム元素及びOH基の合計濃度が50〜5000wt.ppmであること、及び、前記中間層が含有する結晶核材となる化合物成分の濃度が50〜5000wt.ppmであることの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項14または請求項15に記載のシリカ容器。
  17. 前記内側層がOH基を1〜200wt.ppm含有するものであることを特徴とする請求項14ないし請求項16のいずれか一項に記載のシリカ容器。
  18. 前記内側層がカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有するものであること、及び、前記内側層の内側に、さらに、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有する塗布層を有することの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項14ないし請求項17のいずれか一項に記載のシリカ容器。
  19. 前記内側層が含有するカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度が50〜5000wt.ppmであること、及び、前記塗布層に含有されるカルシウム、ストロンチウム、バリウムの合計濃度が5〜500μg/cmであることの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項18に記載のシリカ容器。
  20. 前記基体がアルミニウムを30〜3000wt.ppm含有するものであることを特徴とする請求項14ないし請求項19のいずれか一項に記載のシリカ容器。
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