JP2010156715A - Ble遺伝子によってコード化されるタンパク質およびブレオマイシン・ファミリー由来抗生物質の新しい使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、特異的な結合特性を有する“ble”融合タンパク質を含むタンパク質複合体を使用する方法を提供する。
【解決手段】前記タンパク質複合体は、ブレオマイシン・ファミリー由来抗生物質に可逆的に結合することが可能であり、その特性は様々な固定化方法に活用される。本発明の好ましい態様では、複合体を、タンパク質発現及び/又は折り畳み用のマーカー、又はアフィニティー・タギング用のマーカーとして使用する。本発明は、また、検体捕捉部分として作用する、ブレオマイシン・ファミリー由来の固定化した抗生物質のアレイを含むプローブを提供する。別の態様では、ブレオマイシン・ファミリーの抗生物質を検体捕捉部分として含む精製媒体が提供される。また、タンパク質を“ble”融合タンパク質として発現し、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質の存在下で選別することによって不溶なタンパク質の可溶な形態を生成する方法が提供される。更なる態様では、“ble”タンパク質を融合タンパク質として細胞内で発現し、該細胞内に、ブレオマイシン・ファミリーの標識した抗生物質を導入し、それによって、タンパク質の細胞の局在性の特定を可能にする。
【選択図】なし
【解決手段】前記タンパク質複合体は、ブレオマイシン・ファミリー由来抗生物質に可逆的に結合することが可能であり、その特性は様々な固定化方法に活用される。本発明の好ましい態様では、複合体を、タンパク質発現及び/又は折り畳み用のマーカー、又はアフィニティー・タギング用のマーカーとして使用する。本発明は、また、検体捕捉部分として作用する、ブレオマイシン・ファミリー由来の固定化した抗生物質のアレイを含むプローブを提供する。別の態様では、ブレオマイシン・ファミリーの抗生物質を検体捕捉部分として含む精製媒体が提供される。また、タンパク質を“ble”融合タンパク質として発現し、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質の存在下で選別することによって不溶なタンパク質の可溶な形態を生成する方法が提供される。更なる態様では、“ble”タンパク質を融合タンパク質として細胞内で発現し、該細胞内に、ブレオマイシン・ファミリーの標識した抗生物質を導入し、それによって、タンパク質の細胞の局在性の特定を可能にする。
【選択図】なし
Description
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年3月31日に出願された英国特許出願第0307379.8号、2002年10月25日に出願された英国特許出願第0224872.8号、及び2002年12月20日に出願された英国特許出願第0229640.8号の優先権を主張するものであり、それぞれの内容を本願に参照することにより援用する。
本出願は、2003年3月31日に出願された英国特許出願第0307379.8号、2002年10月25日に出願された英国特許出願第0224872.8号、及び2002年12月20日に出願された英国特許出願第0229640.8号の優先権を主張するものであり、それぞれの内容を本願に参照することにより援用する。
(本発明の分野)
本発明は、“ble”遺伝子、例えば、Sh ble、Tn5 ble、及びSa bleのファミリー、並びにブレオマイシン・ファミリーの抗生物質に可逆的に結合することが可能なこれらの遺伝子によって発現されたタンパク質のファミリーの新規使用方法に関する。ブレオマイシン・ファミリーの抗生物質は、DNA切断グリコペプチドであり、該ファミリーには、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)が含まれる。本発明は、また、これらの抗生物質の新規使用方法に関する。より詳細には、bleタンパク質を含む融合タンパク質、bleタンパク質とブレオマイシン・ファミリーの抗生物質との間の特異性によるツール、方法及び生成物に関する。
本発明は、“ble”遺伝子、例えば、Sh ble、Tn5 ble、及びSa bleのファミリー、並びにブレオマイシン・ファミリーの抗生物質に可逆的に結合することが可能なこれらの遺伝子によって発現されたタンパク質のファミリーの新規使用方法に関する。ブレオマイシン・ファミリーの抗生物質は、DNA切断グリコペプチドであり、該ファミリーには、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)が含まれる。本発明は、また、これらの抗生物質の新規使用方法に関する。より詳細には、bleタンパク質を含む融合タンパク質、bleタンパク質とブレオマイシン・ファミリーの抗生物質との間の特異性によるツール、方法及び生成物に関する。
これらのble遺伝子を、別のタンパク質と共に融合タンパク質として発現する場合、また、別な方法で、ble遺伝子産物を、他の分子、とりわけタンパク質に融合させるか、もしくは結合させる場合、それらを使用して、例えば、アレイ、特にマイクロアレイ、スライドグラス、もしくはマイクロタイタープレートなどの表面(強く結合することが概して望ましい場合)に加えて、例えばアフィニティー精製に使用されるビーズもしくは他の同様の形状のもの(弱い結合が概して望ましい場合)に融合タンパク質を強くもしくは弱く結合させることができる。
しかしながら、本発明は、表面、必須ではないが、特に配列可能な表面に分子を結合させるのにこのような組み合わせを使用する方法のみならず、ble融合タンパク質を、折り畳み及び溶解度のマーカーとして使用する方法にも関する。また、bleタンパク質への特異性により、細胞の局在性のマーカーとして有用なブレオマイシン・ファミリー由来の“標識した”抗生物質の使用方法にも関する。
細菌、酵母、昆虫細胞又は哺乳類細胞などの異種のシステムでヒトタンパク質を発現すると、不正確に折り畳まれたタンパク質が生産され、不溶な凝集体が形成されるか、かつ/又は発現したタンパク質の収量が少なくなる。総ての機能的なタンパク質の研究にとって、正確に折り畳まれた、又は天然のタンパク質の生産は必須であり、個々のタンパク質の発現を最適化するために多くの研究が行われている。
不正確な折り畳みと乏しい溶解度が重大である2つの場合を以下に記載する。
(人工的なタンパク質の問題のある不溶性)
遺伝子工学によってタンパク質の機能を操作することは、力のある商業上の操作者及び学術研究の操作者による研究の主要な分野である。そのような人工タンパク質から求められている望ましい特性としては、基質特異性の変化、新規な触媒機能、結合特異性の改善、耐熱性又はpH耐性の向上がある。しかしながら、タンパク質に導入される主要な変異によって、たびたび可溶な発現が失われ、可溶性を回復する補整的な変異は通常予測できない。
(人工的なタンパク質の問題のある不溶性)
遺伝子工学によってタンパク質の機能を操作することは、力のある商業上の操作者及び学術研究の操作者による研究の主要な分野である。そのような人工タンパク質から求められている望ましい特性としては、基質特異性の変化、新規な触媒機能、結合特異性の改善、耐熱性又はpH耐性の向上がある。しかしながら、タンパク質に導入される主要な変異によって、たびたび可溶な発現が失われ、可溶性を回復する補整的な変異は通常予測できない。
(異種宿主内で組み換えにより発現したタンパク質の問題のある不溶性)
発酵の容易さ、異種の翻訳後修飾がないこと、その後の加工ステップが簡単であること、物質の収量が高いことから、組換えタンパク質を大腸菌(Escherichia coli)内で発現することが、特に大量のタンパク質の生産(例えば、産業用酵素、X線結晶学のための)にとって多くの場合好ましい。しかしながら、組み換え物質が不溶化して発現し、そのため不活性化するという問題に、特に真核生物のタンパク質では遭遇する。そのような問題のあるタンパク質は、より複雑なシステム(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、バキュロウイルス)において、可溶化して発現することが可能であるが、収量が少なく、プロセスがより高価であることによって、産物は商業的に魅力的でなくなる。
発酵の容易さ、異種の翻訳後修飾がないこと、その後の加工ステップが簡単であること、物質の収量が高いことから、組換えタンパク質を大腸菌(Escherichia coli)内で発現することが、特に大量のタンパク質の生産(例えば、産業用酵素、X線結晶学のための)にとって多くの場合好ましい。しかしながら、組み換え物質が不溶化して発現し、そのため不活性化するという問題に、特に真核生物のタンパク質では遭遇する。そのような問題のあるタンパク質は、より複雑なシステム(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、バキュロウイルス)において、可溶化して発現することが可能であるが、収量が少なく、プロセスがより高価であることによって、産物は商業的に魅力的でなくなる。
Gatignol(ガティノール),A.,Durand(デュランド),H.及びTiraby(ティラビー),G. Bleomycin resistance conferred by a drug-binding protein(薬物結合タンパク質によって与えられるブレオマイシン耐性). FEBS Lett(FEBSレターズ)230, 171-175.(1988)
これらの両ケースにおいて、不溶なタンパク質の可溶な形態を生成する方法が非常に有用である。変異体のライブラリーを生成するためにタンパク質のランダムな突然変異を誘発し、その後、可溶な発現をするものについて選択するか、又は検索することが一つのアプローチとしてある。これは、しばしば、“定方向進化(directed evolution)”と呼ばれている。関連するライブラリーが大きい(多くの場合、メンバーが106を超える)ので、そのような検索に必要とされていることは、多くの変異体のクローンを同時に評価できることである。いくつかのケースにおいて、目標のタンパク質の活性が直接アッセイされる。しかしながら、これは比較的珍しく、多くの場合、各クローンをマイクロタイタープレートのウェル内で溶解する必要があり、タンパク質がアッセイ可能な活性を有さない。
より有効な方法は、タンパク質を、視覚的にアッセイ可能な表現型を有する第2の“レポーター”タンパク質に融合することである。2つのタンパク質が物理的に結合しているので、レポーターの可溶性(及び、それ故の観察可能な表現型の存在)は、もう一つのタンパク質の溶解度に依存する。いくつかのそのようなレポーターシステムが報告されている。好ましくは、表典型は処理ステップなしで(すなわち、クローンを寒天プレート上でコロニーとして培養している際に)観察でき、これによって高処理の分析が可能となる。
タンパク質アレイを製造するための組換えタンパク質の大量発現は、同時にタンパク質の機能的なキャラクタリゼーションをすることを含むプロテオミクスの一領域である。何千ものタンパク質を可溶な状態で、かつ折り畳まれた状態で発現することが必要とされている。発現ライブラリーが通常使用されており、それによって遺伝子は、プロモーターの制御下に置かれ、その後遺伝子の発現が誘導される。次のステップは、どのクローンが折り畳まれた組換えタンパク質を発現するのか判断することである。このことは、個々に、遠心し、次にゲル電気泳動によって画分を分析することによって、可溶な成分と不溶な成分に細胞の溶解物を分画することで達成される。このアプローチは、処理能力が低く、ライブラリーを検索するのに必要とされるレベルまで拡大することがロジスティック上実行不可能である。従って、機能研究に使用することが可能な、可溶で、折り畳まれたタンパク質を生産するクローンについて発現ライブラリーを検索する方法が必要とされている。組換えタンパク質をレポータータンパク質と融合させることによって、その溶解度を簡単に決定することが可能となる。
現在までに成されていることを考慮する前に、収集物のメンバー総てを評価し、一部を望ましい特性に応じ確認し、分離する“検索”と、所定のメンバーのみ観測される“選別”とを区別することが必要であり、重要である。
多数のクローンを取り扱い、分析することに関して、実際には制限があるので、非常に多数のメンバーを扱う場合、選別は検索より有力である。分子生物学に用いられる検索のよく用いられる例は、青と白の選別、及びGFPの蛍光である。
記述されている色素による(目に見える)検索をもたらす溶解度/折り畳みレポーターは、β−ガラクトシダーゼ(Wigley,W.C.,Stidham,R.D.,Smith,N.M.,Hunt,J.F.及びThomas,P.J. Protein solubility and folding monitored in vivo by structural complementation of a genetic marker protein. Nat. Biotechnol. 19, 131-135(2001))及び緑色蛍光タンパク質(GFP)(Waldo,G.S.,Standish,B.M.,Berendzen,J.及びTerwilliger,T.C. Rapid protein-folding assay using green fluorescent protein. Nat. Biotechnol. 17, 691-695(1999))を使用する。
構造研究に用いる定方向進化によるタンパク質溶解度の最適化も、GFPを用いて行われる(Pedelacq(ピーデルラック),J.D.ら Engineering soluble proteins for structural genomics(構造ゲノム学のためのエンジニアリング可溶性タンパク質). Nat. Biotechnol.(ネイチャー・バイオテクノロジー)20,927-932(2002))。
タンパク質の折り畳み及び溶解度の指標として融合マーカーを使用するいくつかの例が文献に記載されている。これらのシステムの根底にある原理は、不適当に折り畳まれたタンパク質が、通常不溶性の凝集体を形成するか、又は宿主細胞によって激しくタンパク質分解されるので、タンパク質の折り畳みと溶解度は密接に相関しているという見解である。したがって、タンパク質がタンパク質分解されない形態で、可溶して発現する場合、該タンパク質は正確に折り畳まれた形態であることが想定される。あるタンパク質と別のタンパク質とが融合する場合、あるドメインの折り畳み及び溶解度は、もう1つのものの折り畳み及び溶解度と関係がある。このことは、遺伝子Xの発現産物の溶解度を評価するための折り畳みマーカーの原理を図示する図1に示されている。遺伝子Xのタンパク質産物が溶解できる場合のみ、融合の表現型は明らかである。このケースにおいて、融合によって、明瞭に識別することができる緑色蛍光のコロニーが生じる。
クロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ(CAT)を使用する溶解度及び折り畳みについての生死の選別が述べられている(Maxwell,K.L.,Mittermainer,A.K.,Forman-Kay,J.D.及びDavidson,A.R. A simple in vivo assay for increased protein solubility. Protein Sci. 8, 1908-1911(1999))。
(定義)
本明細書に記載されている“ble”遺伝子は、ブレオマイシン・ファミリーのグリコペプチド抗生物質を可逆的に結合するタンパク質を発現する遺伝子のファミリーであり、該遺伝子としては、Sh ble、Tn5 ble及びSa bleが挙げられるがこれらに限定されない。概して、これらの遺伝子(又はより正確にはこれらの遺伝子によってコードされている遺伝子産物)は、その宿主に、ブレオマイシン・ファミリーのグリコペプチド抗生物質に対する耐性を与える。
本明細書に記載されている“ble”遺伝子は、ブレオマイシン・ファミリーのグリコペプチド抗生物質を可逆的に結合するタンパク質を発現する遺伝子のファミリーであり、該遺伝子としては、Sh ble、Tn5 ble及びSa bleが挙げられるがこれらに限定されない。概して、これらの遺伝子(又はより正確にはこれらの遺伝子によってコードされている遺伝子産物)は、その宿主に、ブレオマイシン・ファミリーのグリコペプチド抗生物質に対する耐性を与える。
“ブレオマイシン・ファミリーの抗生物質”は、DNA切断グリコペプチドであり、該抗生物質としては、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書で使用する“タンパク質”という用語は、全タンパク質、ポリペプチド、及びそのサブユニット又はドメインを含むものとして用いられる。
本明細書で使用する“融合タンパク質”とは、ブレオマイシン・ファミリーの抗生物質のメンバーに結合する、N末端及び/又はC末端にタグを有するタンパク質を指す。融合タンパク質を、ble遺伝子含有遺伝子コンストラクト由来の融合タンパク質として発現するか、又は例えば2種の別個のポリペプチドの、スプライシングを媒介されたインテインによって、もしくは本技術分野で既知である方法に従って当該2種のペプチドを化学的にライゲーションすることによって形成してもよい。
次に、“タグ”は、融合タンパク質をさらに操作するシグナル成分及び/又は手段として使用される。したがって、表面、もしくは例えば蛍光分子などの目に見える指標分子といった別の分子に融合タンパク質を結合させるために、又は機能を有する可能性があるように折り畳まれているという融合タンパク質の特性を示すためにタグは用いられる。
“強いバインダー”と“弱いバインダー”、“高密度”と“低密度”という相対語は、実質的に不可逆な結合を達成することが望ましい例と、アフィニティー生成などの結合が逆行することを目的とする状況とを機能上区別するために本明細書で使用される。したがって、例えばSh bleタンパク質はブレオマイシンの2種の分子を協同して結合することができる(第1の親和性が〜600nMであり、第2の親和性が〜100nMである)ダイマーであるので、bleタンパク質の結合特性を選択して使用することができる。例えば、低密度でブレオマイシンが被覆された表面(例えばビーズ)を有する場合、あるSh bleダイマーが、1つのブレオマイシン分子によって結合していることが概して予測される。対照的に、高密度でブレオマイシンが被覆された表面を有する場合、特に、ブレオマイシン分子自身が柔軟なリンカー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)に付着している場合、あるSh bleダイマーが、2つのブレオマイシン分子によって結合している(それぞれ、2つのダイマーのサブユニットの1つを結合する)ことが概して予測される。後者のケースでは、2つのブレオマイシン分子が表面を介して共に有効に結合しているので、第2の結合親和性が、2つの分子が共に結合していない場合よりも数オーダー分大きい。言い換えれば、結合親和性はキレート効果によって著しく増大される。例えば、アレイ(実質的に不可逆な結合が求められる場合)、及びビーズなどの可逆的な捕捉システムにおいて異なる結合親和性が求められるので、この効果を有利になるように用いることができる。
それ故に、ブレオマイシンなどの抗生物質の表面密度を調整することによって、Sh bleの融合物が表面に弱く結合しても、強く結合しても容易に制御することができる。弱い結合はアフィニティー精製に適し、強い結合は固定化してアレイとするのに適している。
ブレオマイシン分子を表面上に固定化する別の方法として、例えば、NHS活性化フルオレセイン、Cy3、Cy5、及びローダミンなどのアミン反応性蛍光色素に共有結合させることができる。蛍光ブレオマイシン誘導体を全細胞(原核細胞と真核細胞の両方)に拡散させ、すると該誘導体がSh ble融合タンパク質に選択的に結合することができる。このようにして、Sh bleタグを細胞の局在性のマーカーとして使用することができる(GFPが現在使用されているのと同様に)。このことによって、Sh bleタグを、選別可能な(すなわち生死の)マーカーと、検索可能な(すなわち蛍光による)マーカーとして使用することもできる。
本発明の一態様において、支持体は、レーザー脱離イオン化質量分析、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)による分析においてターゲットとして作用することが可能なプローブの形をとる。プローブは、検体、例えば、タンパク質を当該処理過程の間有し、検体がガス状のイオンに変換されて分析可能となるように、本技術分野のレーザー脱離イオン化飛行時間(TOF)型質量分析器に見られるイオン光学アセンブリーのリペラレンズ(repeller lens)と相互作用する。例えば、本発明のプローブは、後の分析のために、Sh ble融合タンパク質を結合するプローブ表面上に高親和性のタンパク質結合部分、例えばZeocinが存在するように処理された、本技術分野で既知であるMALDI分析用のターゲットから得ても良い。例えば、従来のガラス又は金のMALDIターゲットを用いて良い。
本明細書に記載されている“マイクロアレイ”は、別々のターゲット領域、すなわちレーザーによって探られる個々の領域の大きさがマイクロメーター又はそれ未満の程度であるアレイである。大きさの上限、直径約1000マイクロメーターにおいては、裸眼で見ることができ、一方で、大きさの下限においては、別々のターゲット領域が裸眼によってあまり明確に区別できない。
“アレイ”は、いくつかの行と列を含むマトリックス内で典型的には配列されている。別々のターゲット領域の数は検索されるもの次第であるが、高処理の検索を容易にするので、プローブ表面上のこれらの別々の領域の密度が高いことが概して望ましい。典型的には、プローブは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも1000、10,000又はそれを超えるほどの該プローブ上に生成されるターゲット領域を含む(典型的には、プローブ表面は、約10,000mm2の面積を有し、Brukerのプローブは10292mm2の面積を有するが、プローブの全体を使用する必要はなく、マイクロアレイを1種又は複数種のマトリックスでその上に加えても良い)。所定のマトリックス内での実際の密度は、別々のターゲット領域(通常はスポットとしてプリントされている)の大きさと、隣接するスポット間の間隔次第である。したがって、別々のターゲット領域は、典型的には、任意のマトリックス内で、mm2当たり1つ以上の別々のターゲット領域という密度で存在する。
“リンカー分子”は、その名前が意味する機能を果たす分子である。該分子は、異なる分子間に架橋を形成させる官能基を有する分子である。
(本発明の概略)
(本発明の概略)
例えば、Sh ble遺伝子のタンパク質産物は、細胞で発現した際に、抗生物質に結合し、該抗生物質を隔離することによって、Zeocinを含むブレオマイシン・ファミリーの抗生物質に対する耐性を与えるタンパク質をコードする(Gatignol,A.,Durand,H.及びTiraby,G. Bleomycin resistance conferred by a drug-binding protein. FEBS Lett 230, 171-175.(1988))。
これらの抗生物質は、その他の点では、DNAストランドの破損をもたらす。例えば、Sh ble遺伝子が所定の第2の遺伝子と縦に一列に並んで融合し、それによって融合タンパク質をコードする場合、融合タンパク質の発現によって、Zeocinに対する耐性が与えられる。所定の遺伝子が不溶タンパク質又はタンパク質断片をコードする場合、融合タンパク質は不溶で、抗生物質を結合することができないので、Zeocin耐性を与える表現型が見られない。このことによって、折り畳まれ、可溶なタンパク質について新規な生死の選別の基盤が得られる。
さらに、例えば、Sh bleタンパク質は、Zeocinを堅くかつ協調して結合することから、本発明者らは、例えば、Zeocin又は類似物質で誘導体化された表面を提供する場合、Sh bleタンパク質をアフィニティータグとして用いることができることを示した。
しかも、例えば、目に見える指標を抗生物質に結合させ、標識した抗生物質がタグを介して融合タンパク質を結合できるようにすることによって、例えば、細胞の局在性のマーカーとしてble融合タンパク質を使用することができる。
本発明の第1の態様によれば、ble融合タンパク質を、発現及び折り畳みのマーカー及び/又はアフィニティータグとして使用する方法が提供される。
一実施態様では、ble融合タンパク質は、単に折り畳みマーカーとして用いられる。
別の実施態様では、ble融合タンパク質は、単にアフィニティータグとして用いられる。
好ましい実施態様では、融合タンパク質は、折り畳みマーカーとアフィニティータグの両方として用いられる。
本発明の第2の態様及び関連した態様によれば、タンパク質がble融合タンパク質として表面に与えられ、該表面は、ブレオマイシン・ファミリー由来抗生物質で誘導体化されている、タンパク質を表面に固定化する方法が提供される。
ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質としては、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましいメンバーとしては、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンA5、ブレオマイシンA6、ブレオマイシンB2及びZeocin(商標)が挙げられる。
ブレオマイシンA5とA6の利点は、それらが、例えば、アミン反応性表面にタンパク質をカップリングするために用いることができる末端の第1級アミン基を有することである。アミン反応性表面を生成するために用いられる典型的な基としては、アルデヒド、エポキシド、N−ヒドロキシコハク酸アミド、及びイソチオネートが挙げられるがこれらに限定されない。当然、抗生物質上に存在する他の官能基を用いて、抗生物質を表面にカップリングしてもよく、このことは当業者に自明である。
好ましい例では、アミン基を、例えば、NHS活性表面、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体化表面などのアミン反応性表面と反応させることによってカップリングを達成してもよい。
好ましい実施態様では、表面は、アレイの表面、より詳細にはマイクロアレイの表面、さらにより詳細には、MALDIのアレイであるが、マイクロタイタープレート、スライドグラス(表面がプローブの表面である)、又はビーズ(表面が精製媒体の表面である)であっても良い。
本発明の第3の態様によれば、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を含む1又は複数の検体捕捉部分を示す複数の別々のターゲット領域を有するアレイを含むターゲット表面を有することを特徴とするプローブが提供される。
ターゲットの検体が、高親和性で、好ましくは400nM以下、より好ましくは200nM以下、さらにより好ましくは150nM以下で捕捉されるように、当該ターゲット表面は、典型的には、高密度の抗生物質の被覆を有する。特定の例では、ブレオマイシンの2分子が結合する場合、Sh bleが100nM又はそれ未満の程度の親和性を有することが分かった。
本発明の第4の態様によれば、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を含む1種又は複数種の検体捕捉部分を示すターゲット表面を含む精製媒体が提供される。
ターゲットの検体が、低親和性で、典型的には、400nM以上のオーダーで、より好ましくは500nM以上のオーダーで捕捉されるように、当該ターゲット表面は、典型的には、低密度の抗生物質の被覆を有する。特定の例では、ブレオマイシンの単独の分子が結合する場合、Sh bleが600nMのオーダーの親和性を有することが分かった。理想的には、親和性は、μMの範囲内であるが、タンパク質を結合するのに充分なものである。
いずれのケースでも、抗生物質を、活性化したポリエチレングリコール(PEG)などの柔軟なリンカーを介して表面に結合してもよい。
本発明の第5の態様によれば、マーカーによってタグが付されていることを特徴とするブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質が提供される。
好ましくは、マーカーは、例えば蛍光マーカーなどの目に見えるマーカーである。別の方法としては、マーカーは、放射性同位体で標識することができる。好ましい蛍光マーカーとしては、NHS活性フルオレセイン、Cy3、Cy5、及びローダミンが挙げられるがこれらに限定されない。
融合タンパク質を生産する手段は、特に、使用時に、切り取られ、ble融合タンパク質として発現されるタンパク質をコードするDNAに置換されるリンカーDNAのble遺伝子下流部分から成るベクターである。
一実施態様では、bleベクターは、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質で誘導体化された表面と共にアレイを作製するキットの構成成分の一つとして、又は当該誘導体化された表面を作製する構成成分の一つとして提供される。
本発明の第6の態様によれば、不溶なタンパク質の可溶な形態を生成する方法が提供され、該方法は:
i)タンパク質変異体のライブラリーを生成することと、
ii)タンパク質をble融合タンパク質として発現し、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質で選別することによって可溶なタンパク質が存在するかどうかコロニーを選別することとを有する。
i)タンパク質変異体のライブラリーを生成することと、
ii)タンパク質をble融合タンパク質として発現し、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質で選別することによって可溶なタンパク質が存在するかどうかコロニーを選別することとを有する。
好ましくは、前記方法は、選別したコロニーを液体培養で成長させ、溶解し、粗溶解物を表面上にプリントし、タグを付した表面を洗浄して結合していない物質を除去することをさらに有する。
これまで、クロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ(CAT)を利用する生死の選別が知られているが、その毒性の領域が狭い、すなわち、CATを持たない細胞を殺す抗生物質の濃度が、CATを持つ細胞が生存することが可能となる濃度に近いので、あまり有効ではない(Maxwell,K.L.,Mittermaier,A.K.,Forman-Kay,J.D.及びDavidson,A.R. A simple in vivo assay for increased protein solubility. Protein Sci. 8, 1908-1911(1999))。また、CATは酵素的に抗生物質を破壊し、有意な親和性で生成物を結合しないので、発現したタンパク質の後に続く精製又は固定化がすぐに可能とならない。
本発明の第7の態様によれば、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を介して表面上にSh ble融合タンパク質を固定化する工程と、任意に、該表面から該融合タンパク質を解放する工程とを有する、粗抽出物からSh ble融合タンパク質を精製する方法が提供される。
本発明の第8の実施態様によれば、タンパク質の細胞の局在性を特定する方法であって、
i)タンパク質をble融合タンパク質として細胞内で発現することと、
ii)ブレオマイシン・ファミリー由来の標識した抗生物質を細胞内に導入し、標識した抗生物質を検出することとを含む、タンパク質の細胞の局在性を特定する方法が提供される。
i)タンパク質をble融合タンパク質として細胞内で発現することと、
ii)ブレオマイシン・ファミリー由来の標識した抗生物質を細胞内に導入し、標識した抗生物質を検出することとを含む、タンパク質の細胞の局在性を特定する方法が提供される。
前記方法は、定性的なもの、又は定量的なものであっても良く、その場合、前記方法は、標識した抗生物質を定量する工程を更に有する。これは、標識した抗生物質が蛍光的に標識された蛍光の強度を測定することによって行われる。
本発明の種々の態様を、以下の図及び実施例を参照して説明する。
折り畳みマーカーを、“遺伝子X”の発現産物の溶解度を評価するのに使用する原理を示す略図である。遺伝子Xのタンパク質産物が可溶である場合のみ、融合物の表現型は明らかとなる。この場合、融合物によって、明瞭に識別することができる緑色蛍光のコロニーが生じる。
本発明の一態様に従う、Sh ble遺伝子を挿入するベクターを示す図である。
A及びBは、ブレオマイシンSepharose上でのSh ble融合タンパク質の精製を示す図である。A)はクマシー染色したゲル、B)はストレプトアビジンで探索したウェスタンを示す図である。レーン1〜6を以下の通りにロードした。1)溶解物、2)溶解物とインキュベート後のブレオマイシン−Sepharose、3)ブレオマイシン−Sepharoseとインキュベート後の非結合溶解物、4)ブレオマイシン溶出、5)ブレオマイシンで溶出後のブレオマイシン−Sepharose、6)ブレオマイシン−Sepharoseとインキュベート後の非結合溶解物。
ブレオマイシン誘導体化マイクロタイタープレート上でのSh ble融合タンパク質の固定化を示す図である。2種の異なるSh ble融合タンパク質クローンの溶解物を、ブレオマイシン誘導体化マイクロタイタープレート及びコントロールのマイクロタイタープレートに、競合するブレオマイシンの存在下及び非存在下で添加した。
ブレオマイシンで被覆したマイクロウェル上での固定化したSh ble融合タンパク質の精製を示す図である(ブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上で溶解物から捕捉したSh ble融合タンパク質をSDS PAGE上で泳動した。投入(input)溶解物も比較のために泳動した。投入(input)溶解物は2倍の希釈シリーズであり、レーン1は未希釈の溶解物に、レーン7は1/64希釈物に相当する)。
ブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上でのSh ble融合タンパク質の固定化の割合を示す図である(Sh ble融合タンパク質クローン1の透明な溶解物をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに種々の時間でインキュベートした。A)固定化された融合タンパク質の量を示す銀染色したSDS PAGE。B)バンドを定量し、時間に対してプロットした)。
ブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上でのSh ble融合タンパク質の保持を示す図である(Sh ble融合タンパク質クローン1をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに結合させた。洗浄後、ウェルを、バッファー内で種々の時間、インキュベートした。A)固定化された融合タンパク質の保持量を示すクマシー染色したSDS PAGE。B)バンドを定量し、時間に対してプロットした)。
ブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上でのSh ble融合タンパク質の保持を示す図である(Sh ble融合タンパク質クローン1をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに結合させた。洗浄後、ウェルを、過剰なブレオマイシンを含有するバッファー内で種々の時間、インキュベートした。A)固定化された融合タンパク質の保持量を示すクマシー染色したSDS PAGE。B)バンドを定量し、時間に対してプロットした)。
ブレオマイシン誘導体化マイクロアレイスライド上でのSh ble融合タンパク質の固定化を示す図である(Sh ble融合タンパク質クローン2の1μlの透明な溶解物を、ブレオマイシン誘導体化マイクロアレイスライド上に、過剰な遊離のブレオマイシンの存在下及び非存在下でスポットした。A)融合タンパク質について、抗Flag抗体及びCy3標識抗マウス二次抗体を用いて探索した後、Cy3フルオロフォアを可視化した。B)スポットの蛍光強度の総量を、過剰なブレオマイシンの存在下及び非存在下におけるスポットについてのヒストグラムにおいてプロットした)。
1.0 Sh bleのアフィニティータグとしての使用
cDNAライブラリーを、改変した大腸菌(E.coli)発現ベクターにライゲーションして(図2と対照)、遺伝子のN末端及びC末端の両方にタグを付し、N末端にはFLAGタグを、C末端には、Sh ble、BCCP(大腸菌(E.coli)ACCBのビオチン化ドメイン)、及びMycタグを付した。
cDNAライブラリーを、改変した大腸菌(E.coli)発現ベクターにライゲーションして(図2と対照)、遺伝子のN末端及びC末端の両方にタグを付し、N末端にはFLAGタグを、C末端には、Sh ble、BCCP(大腸菌(E.coli)ACCBのビオチン化ドメイン)、及びMycタグを付した。
XL10 Goldにトランスフォーメーションした後、クローンを、50μg/mlのZeocinを含むLB寒天培地上で培養することによって選別した。
2つのZeocin耐性クローンを選別し、LB-amp内で、OD600が約0.4となるまで培養し、その後、100μg/mlのIPTGで、30℃で4時間クローンを誘導した。細胞を、4000gで15分間、4℃で遠心することによって回収し、将来の研究に使用するために等分して-20℃で保存した。これらを、“クローン1”及び“クローン2”と称す。各実験前に、新鮮な大腸菌の溶解物を用意した。
各一定分量の細胞(40mlの誘導培養物由来)に、300μlの溶解バッファー(200mM Tris pH8、100mM EDTA、1xプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)、10mM メルカプトエタノール、200μg/ml リゾチーム)を添加し、細胞を再懸濁した。15分間、4℃でインキュベートした後、細胞を、1.7mlのバッファー(1xプロテアーゼ阻害剤、20mM MgCl2、50μg/ml DNAse)で希釈し、4℃でさらに30分間インキュベートした。20000gで10分間、4℃で遠心した後、透明な溶解物を得た。
1.1 ブレオマイシンによるセファロース(Sepharose)の誘導体化、及びそのアフィニティー精製への使用
ブレオマイシンA6(2mg/ml)を、Pharmacia 1ml HiTrap NHS activated Sepharoseカラムに、製造業者の説明書に従ってカップリングした。
ブレオマイシンA6(2mg/ml)を、Pharmacia 1ml HiTrap NHS activated Sepharoseカラムに、製造業者の説明書に従ってカップリングした。
カップリング後、Sepharoseをカラムから取り出し、Sh ble融合タンパク質のバッチ式精製に使用した。
6μlのブレオマイシン−SepharoseのPBS-Tween溶液のスラリー(約50%の膨潤したビーズ)に、4μlのクローン1の溶解物(上記の通り製造したもの)を添加し、4℃で30分間、振盪しながらインキュベートした。簡単に遠心した後、上清を取り除き、ビーズを10μlのPBS-Tween溶液で3回洗浄した。ブレオマイシン−Sepharoseの同様に処理したバッチに結合したタンパク質を、300μg/mlのブレオマイシンA6を含有する10μlのPBS-Tween内で、ビーズを4℃で10分間、振盪しながらインキュベートすることによって溶出した。
次に、サンプルを、SDSサンプルバッファー内で煮沸し、2つの同一の10〜20%Tris Grycine SDS PAGEプレートにロードした。電気泳動後、1つのゲルをクマシーで染色し、もう1つのゲルを、ニトロセルロース膜に転写し、ストレプトアビジンHRPで探索してから、DABを用いてバンドを可視化した(図3)。
図3を参照すると、クマシー染色したゲル及びウェスタンブロットの両方においてSh ble融合タンパク質がブレオマイシン・Sepharoseに結合していることが明らかに分かる(図3A及びB、レーン2)。また、結合したSh ble融合タンパク質が、かなり純粋で、クマシー染色したゲル上で1つのバンドのみ生じたことも分かる。タンパク質が、特異的に結合し、融合タンパク質の溶解物から著しく減少したことのみならず、遊離のブレオマイシンで特異的に溶出され(図3A及びB、レーン4)、相互作用と溶出手段の両方の特異性の証拠が得られた。しかしながら、これらの条件下では、一部しかSh ble融合タンパク質がブレオマイシン−Sepharoseから溶出されなかった。
1.2 ブレオマイシンによるマイクロタイタープレートの誘導体化
アミン反応性末端を有するPEGで被覆したマイクロタイターの8ウェルのストリップ(“タンパク質イモビライザー”プレート)をExiqonから購入した。プレートを、ブレオマイシンA6で、製造業者のプロトコールに従って効果的に被覆した。簡単に述べると、ブレオマイシンA6を100mM KPO4バッファー pH8に1mg/mlの濃度で溶解した。100μlのブレオマイシン溶液を各ウェルに添加し、ウェルを密封し、4℃で18時間インキュベートした。その後、ブレオマイシン溶液をウェルから取り除き、ウェルをPBS-Tweenで5分間、3回洗浄した。コントロールのウェルをブレオマイシンA6を添加しなかったこと以外は上記の通りに調整した。
アミン反応性末端を有するPEGで被覆したマイクロタイターの8ウェルのストリップ(“タンパク質イモビライザー”プレート)をExiqonから購入した。プレートを、ブレオマイシンA6で、製造業者のプロトコールに従って効果的に被覆した。簡単に述べると、ブレオマイシンA6を100mM KPO4バッファー pH8に1mg/mlの濃度で溶解した。100μlのブレオマイシン溶液を各ウェルに添加し、ウェルを密封し、4℃で18時間インキュベートした。その後、ブレオマイシン溶液をウェルから取り除き、ウェルをPBS-Tweenで5分間、3回洗浄した。コントロールのウェルをブレオマイシンA6を添加しなかったこと以外は上記の通りに調整した。
1.3 アフィニティー固定化へのブレオマイシン表面の使用
ブレオマイシンで被覆したウェルとコントロールのウェルに、50μlの2種の異なるSh ble融合タンパク質クローンの溶解物(上記の通りに製造したクローン1溶解物及びクローン2溶解物)を5mg/mlのブレオマイシンの存在下、及び非存在下で添加した。溶解物をウェル内で30分間、室温で軽く攪拌しながらインキュベートし、その後、溶解物をウェルから吸引し、ウェルをPBS-Tweenで各洗浄において5分間、3回洗浄した。
ブレオマイシンで被覆したウェルとコントロールのウェルに、50μlの2種の異なるSh ble融合タンパク質クローンの溶解物(上記の通りに製造したクローン1溶解物及びクローン2溶解物)を5mg/mlのブレオマイシンの存在下、及び非存在下で添加した。溶解物をウェル内で30分間、室温で軽く攪拌しながらインキュベートし、その後、溶解物をウェルから吸引し、ウェルをPBS-Tweenで各洗浄において5分間、3回洗浄した。
50μlのSDSサンプルローディングバッファーを添加することによってタンパク質を表面から溶出し、ウェルを100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱した。20μlの各サンプルを10〜20%Tris Glycine SDS PAGEで泳動した。ゲルをニトロセルロース膜に転写し、ストレプトアビジンHRP抱合体を用いて探索した。ブロットを、ECL(Amersham)を用いて可視化し、写真用フィルムを図4に示す。
図4から、両方のSh ble融合タンパク質のみブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上に固定化されており、さらに、溶解物を過剰な遊離のブレオマイシンと予めインキュベートすることによって、この相互作用を競合させることができることが明らかである。
1.4 ブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上にて精製し、これに固定化したSh ble融合タンパク質の分析
上記の通りに製造したSh ble融合クローン1の透明な溶解物を異なる希釈率で希釈したもの50μlをブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに添加した。40分間室温でインキュベートした後、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄した。SDSサンプルバッファー内で、100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱することによってタンパク質をウェルから溶出し、15μlを、等量の投入(input)溶解物と共にSDS PAGE上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを、標準の銀染色のプロトコールを用いて可視化した。
上記の通りに製造したSh ble融合クローン1の透明な溶解物を異なる希釈率で希釈したもの50μlをブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに添加した。40分間室温でインキュベートした後、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄した。SDSサンプルバッファー内で、100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱することによってタンパク質をウェルから溶出し、15μlを、等量の投入(input)溶解物と共にSDS PAGE上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを、標準の銀染色のプロトコールを用いて可視化した。
結果を図5に示す。図5より、ブレオマイシンで被覆したマイクロウェル上において、固定化したSh ble融合タンパク質が精製されたことが示された。溶解物からブレオマイシン誘導体化マイクロウェル上に捕捉されたSh ble融合タンパク質をSDS PAGE上で泳動した。投入(input)溶解物も比較のために泳動した。投入(input)溶解物は2倍の希釈シリーズであり、レーン1は未希釈の溶解物、レーン7は64倍希釈したものを示す。
図5は、マイクロウェル上に捕捉された全長の精製Sh ble融合タンパク質の1つの主要なバンドが優勢にあることを示す。見られた他の軽微なバンドは、図4に示すウェスタンブロッティングを用いた同様の実験との比較によって示されるように、Sh ble融合物のタンパク質分解産物に相当することが推定される。
1.5 ブレオマイシン誘導体化マイクロウェルへのSh ble融合タンパク質の結合の割合
50μlのSh ble融合クローン1の透明な溶解物をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに添加した。室温で、5、10、20、30、40、50、60分間インキュベートした後、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄した。SDSサンプルバッファー内で、100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱することによってタンパク質をウェルから溶出し、15μlをSDS PAGE上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを標準の銀染色のプロトコールを用いて可視化した(図6A)。ゲル・イメージ上のSh bleのバンドを定量し、平均密度をプロットした(図6B)。これらのデータによって、約40分インキュベートした後、大部分のタンパク質が固定化されたことが示された。
50μlのSh ble融合クローン1の透明な溶解物をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに添加した。室温で、5、10、20、30、40、50、60分間インキュベートした後、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄した。SDSサンプルバッファー内で、100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱することによってタンパク質をウェルから溶出し、15μlをSDS PAGE上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを標準の銀染色のプロトコールを用いて可視化した(図6A)。ゲル・イメージ上のSh bleのバンドを定量し、平均密度をプロットした(図6B)。これらのデータによって、約40分インキュベートした後、大部分のタンパク質が固定化されたことが示された。
1.6 Sh ble融合タンパク質と、ブレオマイシン誘導体化マイクロウェルとの相互作用の安定性
50μlのSh ble融合クローン1の透明な溶解物をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄した。洗浄後、ウェルを、PBS-Tweenで満たし、時間経過を得るのに望ましい時間インキュベートした。これを、同一のウェルのセットで繰り返し、洗浄した後、ウェルを0.5mMのブレオマイシン・PBS-Tween溶液内でインキュベートした。これらの時間経過の後、SDSサンプルバッファー内で、100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱することによってタンパク質をウェルから溶出し、15μlを、等量の投入(input)溶解物と共にSDS PAGE上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルをクマシー染色によって可視化した(図7A及び8A)。
50μlのSh ble融合クローン1の透明な溶解物をブレオマイシン誘導体化マイクロウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄した。洗浄後、ウェルを、PBS-Tweenで満たし、時間経過を得るのに望ましい時間インキュベートした。これを、同一のウェルのセットで繰り返し、洗浄した後、ウェルを0.5mMのブレオマイシン・PBS-Tween溶液内でインキュベートした。これらの時間経過の後、SDSサンプルバッファー内で、100℃で10分間、ヒートブロック上で加熱することによってタンパク質をウェルから溶出し、15μlを、等量の投入(input)溶解物と共にSDS PAGE上で電気泳動した。電気泳動後、ゲルをクマシー染色によって可視化した(図7A及び8A)。
ゲル・イメージ上のSh ble融合タンパク質のバンドを定量し、平均密度をプロットした(図7B及び8B)。
固定化したSh ble融合タンパク質は、PBS-Tween内で24時間までの間インキュベートした後においても、ブレオマイシン誘導体化マイクロウェルにほとんど大部分が結合したままだった(図7)。過剰な遊離のブレオマイシンをバッファー内に含めることによって、マイクロウェルから融合タンパク質が解離する割合が増加することが予測されたが、過剰な遊離ブレオマイシンの存在下(図8)でも、固定化したSh ble融合タンパク質の損失がほとんど見られなかった。
1.7 マイクロアレイ上にタンパク質を固定化するための、Sh ble融合物の使用
Exiqon Eurayスライドを本研究に使用し、該スライドは、これまで使用されているマイクロタイタープレートで基本的に見られる表面被覆を有し、スライドを被覆するために、アミン活性末端を有するPEG分子が用いられている。これらのスライドの誘導体化を、マイクロタイタープレートのウェルについて、400μlの3mg/mlブレオマイシンA6を、顕微鏡スライドのハイブリダイゼーション・チャンバーの下、表面に加えて行った。
Exiqon Eurayスライドを本研究に使用し、該スライドは、これまで使用されているマイクロタイタープレートで基本的に見られる表面被覆を有し、スライドを被覆するために、アミン活性末端を有するPEG分子が用いられている。これらのスライドの誘導体化を、マイクロタイタープレートのウェルについて、400μlの3mg/mlブレオマイシンA6を、顕微鏡スライドのハイブリダイゼーション・チャンバーの下、表面に加えて行った。
Sh ble融合タンパク質のクローン1の透明な溶解物を1/2、1/4、1/8に100mM KPO4バッファーを用いて希釈した。溶解物を、384ウェルのマイクロタイタープレートにマイクロアレイをするために移した。溶解物を、6つのパターンずつ、ブレオマイシンで誘導体化された1つのスライドと、エタノールアミンで同様に被覆したものの上にマイクロアレイした。300ミクロンの硬いピンを備え付けたGenetix Qarrayロボットを用いてマイクロアレイを達成した。マイクロアレイを、湿潤チャンバー内で1時間、室温でインキュベートした。PBS-Tweenで洗浄後、スライドを、マウス抗FLAG抗体で探索し、続いてCy3標識抗マウスIgG抗体で探索した。窒素の気流で乾燥した後、Cy3のフルオロフォアを検出するのに適切なレーザーとフィルターを備えたAffymetrix 428アレイスキャナーを用いてスライドを可視化した(図9A)。スポットの蛍光の総量を定量し、同一のスポットの平均を取り、プロットした(図9B)。
図9のデータから、Sh ble融合タンパク質がブレオマイシン誘導体化顕微鏡スライド上に特異的に固定化されていることが示された。これは、Sh bleがマイクロアレイの形式でのタンパク質の固定化用アフィニティータグとして使用するのに適していることを示す。
Claims (39)
- Ble融合タンパク質の、発現及び折り畳みのマーカー、及び/又はアフィニティータグとしての、使用。
- 発現及び折り畳みのマーカーとしての、請求項1記載のBle融合タンパク質の使用。
- アフィニティータグとしての、請求項1記載のBle融合タンパク質の使用。
- 発現及び折り畳みのマーカー、及びアフィニティータグとしての、請求項1記載のBle融合タンパク質の使用。
- Ble融合タンパク質は、Sh ble、Tn5 ble又はSa ble遺伝子の発現産物である、先行するいずれか1項に記載のBle融合タンパク質の使用。
- タンパク質をble融合タンパク質として表面に与え、表面は、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質で誘導体化されている表面である、タンパク質を表面に固定化する方法。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質は、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)からなる群より選ばれる、請求項6記載の方法。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質は、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンA5、ブレオマイシンA6、ブレオマイシンB2及びZeocin(商標)からなる群より選ばれる、請求項7記載の方法。
- 抗生物質を表面に結合させるために抗生物質上の官能基を用いる、請求項6〜8項のいずれか1項に記載の方法。
- 抗生物質を表面にカップリングするために抗生物質上に存在するアミン基を用いる、請求項9記載の方法。
- 抗生物質を、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体化表面にアミン基を介してカップリングする、請求項10記載の方法。
- 表面は、アレイ、マイクロタイタープレート、スライド、又はビーズの表面である、請求項6〜11項のいずれか1項に記載の方法。
- アレイはマイクロアレイである、請求項12記載の方法。
- アレイはMALDIのアレイである、請求項13記載の方法。
- ble融合タンパク質を表面から取り除くことをさらに含む、請求項12記載の方法。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を含む1又はそれよりも多くの検体捕捉部分を示す複数の別々のターゲット領域を有するアレイを含むターゲット表面をもつことを特徴とするプローブ。
- 抗生物質は、高い表面密度でターゲット表面上に与えられる、請求項16記載のプローブ。
- 捕捉部分は、100nMのオーダーで捕捉することを目的とする、部分に対する親和性を有する、請求項17記載のプローブ。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質は、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)からなる群より選ばれる、請求項16〜18項のいずれか1項に記載プローブ。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質は、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンA5、ブレオマイシンA6、ブレオマイシンB2及びZeocin(商標)からなる群より選ばれる、請求項19記載のプローブ。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を含む1又はそれよりも多くの検体捕捉部分を示すターゲット表面を備える容量領域に対し大きな表面を有する、精製媒体。
- ビーズである、請求項21記載の精製媒体。
- 抗生物質は、低い表面密度でターゲット表面上に与えられる、請求項21又は22に記載の精製媒体。
- 捕捉部分は、600nMのオーダーで捕捉することを目的とする、部分に対する親和性を有する、請求項23記載の精製媒体。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質は、ブレオマイシン、フレオマイシン、タリソマイシン、ペプロマイシン、及びZeocin(商標)からなる群より選ばれる、請求項21〜24項のいずれか1項に記載の精製媒体。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質は、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンA5、ブレオマイシンA6、ブレオマイシンB2及びZeocin(商標)からなる群より選ばれる、請求項21〜25項のいずれか1項に記載の精製媒体。
- 抗生物質は、柔軟なリンカー分子を介して表面に結合する、請求項21〜26項のいずれか1項に記載の精製媒体。
- 柔軟なリンカー分子はポリエチレングリコール(PEG)である、請求項27記載の精製媒体。
- マーカーでタグが付されることを特徴とするブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質。
- マーカーは目に見えるマーカーである、請求項29記載の抗生物質。
- 目に見えるマーカーは蛍光マーカーである、請求項30記載の抗生物質。
- 蛍光マーカーは、NHS活性フルオレセイン、Cy3、Cy5及びローダミンからなる群より選ばれる、請求項31記載の抗生物質。
- 不溶なタンパク質の可溶な形態を生成するための方法であって、
i)タンパク質変異体のライブラリーを生成すること、および
ii)タンパク質をble融合タンパク質として発現し、ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質で選別することによって可溶なタンパク質の存在についてコロニーを選別すること
を含む、方法。 - 選別したコロニーを増殖させること、それらのコロニーを溶解すること、および融合タンパク質を表面に結合させることをさらに含む、請求項33記載の方法。
- 表面は、融合タンパク質が結合するブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を含む、請求項34記載の方法。
- ブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質を介して表面上にble融合タンパク質を固定化するステップ、および随意にその表面からその融合タンパク質を解放することを含む、粗抽出物からble融合タンパク質を精製する方法。
- タンパク質の細胞の局在性を識別する方法であって、
i)タンパク質をble融合タンパク質として細胞内で発現させること、
ii)ブレオマイシン・ファミリー由来の標識した抗生物質を細胞内に導入すること、および
iii)標識した抗生物質を検出すること
を含む、方法。 - 抗生物質は、請求項29〜32項のいずれか1項に記載のものである、請求項37記載の方法。
- bleベクター、およびブレオマイシン・ファミリー由来の抗生物質で誘導体化された表面又は前記誘導体化表面を作成するための構成成分を含む、アレイの生産のためのキット。
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