JP2010156228A - 内燃機関の燃料供給装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関に供給する燃料の圧力を簡易な構成で変更できる内燃機関の燃料供給装置を提供する。
【解決手段】圧力調整機構30は、ケーシング31に形成されて加圧室26に通じる燃料導入通路33と、燃料導入通路33を開通及び閉鎖できる可動部材32と、可動部材32の移動により燃料導入通路33が開通したときに燃料導入通路33と通じる第1室35と、デリバリパイプ8内の燃料が導入されるとともに、その燃料の圧力により可動部材32を燃料導入通路33が開通する側へ付勢する第2室36と、可動部材32を燃料導入通路33が閉鎖する側へ付勢する圧縮スプリング45と、可動部材32を挟んで第2室36の反対側に位置し圧縮スプリング45が内部に設けられた第3室37と、を備えており、低圧通路9から分岐して圧力調整機構30の第1室35に接続された低圧接続通路50が設けられている。
【選択図】図1
【解決手段】圧力調整機構30は、ケーシング31に形成されて加圧室26に通じる燃料導入通路33と、燃料導入通路33を開通及び閉鎖できる可動部材32と、可動部材32の移動により燃料導入通路33が開通したときに燃料導入通路33と通じる第1室35と、デリバリパイプ8内の燃料が導入されるとともに、その燃料の圧力により可動部材32を燃料導入通路33が開通する側へ付勢する第2室36と、可動部材32を燃料導入通路33が閉鎖する側へ付勢する圧縮スプリング45と、可動部材32を挟んで第2室36の反対側に位置し圧縮スプリング45が内部に設けられた第3室37と、を備えており、低圧通路9から分岐して圧力調整機構30の第1室35に接続された低圧接続通路50が設けられている。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関にて駆動される高圧燃料ポンプに対して低圧燃料ポンプを利用して燃料を送り、高圧燃料ポンプにて加圧された燃料を内燃機関に供給する内燃機関の燃料供給装置に関する。
内燃機関の燃料供給装置として、低圧燃料ポンプから供給された燃料を加圧する加圧室から燃料を排出するリリーフ通路をハウジング内に形成し、そのハウジング内を移動する弁体によってリリーフ通路を開通及び閉鎖させ、ハウジング内に形成された圧力室にコモンレール内の燃料を導入してリリーフ通路を開通させる側に弁体を付勢する一方で、ハウジング内に設けられた圧縮スプリングによりリリーフ通路を閉鎖させる側に弁体を付勢するようにしたものが知られている(特許文献1)。この装置は、圧力室に導入されるコモンレール内の圧力が圧縮スプリングの弾性力に打ち勝つと弁体が移動してリリーフ通路を開通させるので、コモンレール内の圧力を略一定圧に維持できる。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2〜4が存在する。
特許文献1の燃料供給装置は、電磁スピル弁等の制御要素を利用せずに圧縮スプリングの弾性力を適宜設定することによりコモンレール内の圧力を一定圧に維持できるが、内燃機関の運転中に高圧燃料ポンプの吐出圧力を変更できないため適用範囲が限られる。
そこで、本発明は内燃機関に供給する燃料の圧力を簡易な構成で変更できる内燃機関の燃料供給装置を提供することを目的とする。
本発明の内燃機関の燃料供給装置は、燃料タンクから燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプと、内燃機関にて駆動される高圧燃料ポンプと、前記低圧燃料ポンプと前記高圧燃料ポンプとを接続する低圧通路と、前記高圧燃料ポンプにて加圧された燃料を前記内燃機関の各気筒に分配するための分配手段と、を具備し、前記高圧燃料ポンプは、前記低圧燃料ポンプから供給された燃料を加圧する加圧室と、前記加圧室に接続されて前記分配手段内の圧力を調整可能な圧力調整機構と、を備えた内燃機関の燃料供給装置において、前記圧力調整機構は、ケーシングと、前記ケーシングに形成されて前記加圧室に通じる燃料導入通路と、前記ケーシング内に移動可能に設けられてその移動により前記燃料導入通路を開通及び閉鎖できる可動部材と、前記ケーシング内に形成されて前記可動部材の移動により前記燃料導入通路が開通したときに前記燃料導入通路と通じる第1室と、前記ケーシング内に形成されて前記分配手段内の燃料が導入されるとともに、その燃料の圧力により前記可動部材を前記燃料導入通路が開通する側へ付勢する第2室と、前記可動部材を前記燃料導入通路が閉鎖する側へ付勢する付勢部材と、前記ケーシング内に形成されて前記可動部材を挟んで前記第2室の反対側に位置し前記付勢部材が内部に設けられた第3室と、を有し、前記低圧通路から分岐して前記圧力調整機構の前記第1室又は前記第3室のいずれか一方に接続された低圧接続通路を更に具備するものである(請求項1)。
この燃料供給装置によれば、低圧通路から分岐した低圧接続通路が圧力調整機構の第1室又は第2室のいずれか一方に接続されるため、低圧通路内の圧力を変化させることにより可動部材に作用する力のバランスを変更できる。可動部材は付勢部材によって加圧室に通じる燃料導入通路を閉鎖する側に付勢されつつ、第2室に導入される分配手段内の燃料の圧力によって燃料導入通路を開通する側に付勢されている。この状態で第1室又は第2室に低圧通路内の燃料の圧力が更に付加されるので、その圧力が変わることにより可動部材に作用する力のバランスが変わり、その結果として、燃料導入通路を開通させるために必要な分配手段内の圧力が変わることになる。従って、分配手段を介して内燃機関に供給される燃料の圧力を低圧通路内の圧力に応じて変更できる。
低圧接続通路は第1室又は第3室のいずれに接続された場合でも内燃機関に供給される燃料の圧力を変更可能である。例えば、本発明の一態様においては、前記低圧接続通路が前記第1室に接続され、前記第3室と前記燃料タンクとを接続するリターン通路を更に具備してもよいし(請求項2)、また、他の態様としては、前記低圧接続通路が前記第3室に接続され、前記第1室と前記燃料タンクとを接続するリターン通路を更に具備してもよい(請求項3)。これらの態様によれば、第1室又は第3室のいずれか他方がリターン通路を通じて燃料タンクに接続されるから、第1室又は第3室のいずれか他方の圧力を大気圧と同等にすることができる。
前記リターン通路は、所定の設定圧力で開弁するリリーフ弁を介して前記分配手段に接続されてもよい(請求項4)。この場合には分配手段の余剰燃料をリターン通路を通じて燃料タンクに戻すことができる。
本発明の一態様においては、前記ケーシングと前記可動部材との間に所定のクリアランスを設定することにより前記第2室と前記第3室との間での燃料漏れを許容するクリアランスシール部が前記ケーシングと前記可動部材との間に設けられてもよいし(請求項5)、前記ケーシングと前記可動部材との間に所定のクリアランスを設定することにより前記第1室と前記第2室との間での燃料漏れを許容するクリアランスシール部が前記ケーシングと前記可動部材との間に設けられてもよい(請求項6)。これらの態様によれば、分配手段内の燃料が導入される第2室からリターン通路に通じる室へ燃料漏れが許容されるため、分配手段の余剰燃料をリリーフ弁を介してリターン通路に戻す必要がない。これにより、リリーフ弁を設けて分配手段の余剰燃料をリターン通路に導く場合と比較して部品点数を削減することができる。
本発明の一態様においては、前記低圧通路内の圧力を変化させる調圧手段と、前記内燃機関の負荷が高い場合に前記低圧通路内の圧力が高く、前記内燃機関の負荷が低い場合に前記低圧通路内の圧力が低くなるように、前記調圧手段を制御する制御手段と、を更に具備してもよい(請求項7)。この場合には、内燃機関の負荷に応じて調圧手段を制御することにより、内燃機関の負荷に適した燃料の圧力を得ることができる。
低圧接続通路が第3室に接続された場合にあっては、前記低圧接続通路から分岐して前記リターン通路に接続される分岐通路と、前記低圧接続通路の分岐位置に設けられて、前記分岐通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記低圧接続通路とを開通させる第1位置と前記低圧接続通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記分岐通路とを開通させる第2位置との間で動作可能な通路切替手段と、を更に具備してもよい(請求項8)。この態様によれば、通路切替手段にて通路を切り替えることにより、低圧通路内の圧力が同一であっても可動部材に作用する力のバランスを変化させることができる。従って、低圧通路内の圧力変更と通路切替手段の制御とを組み合わせることにより、内燃機関に供給する燃料の圧力の変更範囲を拡大することができる。例えば、前記内燃機関の負荷が高い場合は前記第1位置に、前記内燃機関の負荷が低い場合は前記第2位置に動作するように、前記通路切替手段を制御する制御手段と、を更に具備してもよい(請求項9)。
本発明の一態様においては、前記低圧接続通路が前記第1室に接続され、前記第3室と前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁下流の負圧源とを接続する負圧導入通路を更に具備してもよい(請求項10)。スロットル弁下流の負圧源は内燃機関の負荷(スロットル開度)に応じて負圧の大きさが連続的に変化するので、その負圧源と第3室とを負圧導入通路にて接続することにより、内燃機関に供給する燃料の圧力を内燃機関の負荷に応じて連続的に変化させることができる。
この態様においては、前記負圧導入通路から分岐して前記リターン通路に接続される分岐通路と、前記負圧導入通路の分岐位置に設けられて、前記分岐通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記負圧導入通路とを開通させる第1位置と前記負圧導入通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記分岐通路とを開通させる第2位置との間で動作可能な通路切替手段と、を更に具備してもよい(請求項11)。この場合には、通路切替手段を適宜操作することにより、内燃機関に供給する燃料の圧力を負荷に応じて連続的に変化させる状態と、その連続的な変化を中止させる状態とを切り替えることができる。
本発明の一態様においては、前記低圧接続通路が前記第1室に接続され、前記第3室と前記内燃機関の油圧源とを接続する油圧導入通路を更に具備してもよい(請求項12)。内燃機関の油圧源の油圧は、冷却水温や油温に代表される機関温度と相関する。即ち、機関温度が高いほど油圧が低くなる関係にある。この態様によれば、その油圧源と第3室とを油圧導入通路にて接続することにより、内燃機関に供給する燃料の圧力を機関温度に応じて連続的に変化させることができる。
この態様においては、前記油圧導入通路から分岐して前記低圧接続通路に接続される分岐通路と、前記油圧導入通路の分岐位置に設けられて、前記分岐通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記油圧導入通路とを開通させる第1位置と前記油圧導入通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記分岐通路とを開通させる第2位置との間で動作可能な通路切替手段と、を更に具備してもよい(請求項13)。この場合には、通路切替手段を適宜操作することにより、内燃機関に供給する燃料の圧力を機関温度に応じて連続的に変化させる状態と、その連続的な変化を中止させる状態とを切り替えることができる。
本発明の一態様において、前記第1室と前記第2室との間及び前記第2室と前記第3室との間の少なくとも一方には、室間の燃料漏れを阻止できかつ前記可動部材の移動方向に弾性変形可能なシール部材が前記ケーシング及び前記可動部材のそれぞれに固定されてもよい(請求項14)。この態様によれば、ケーシング及び可動部材のそれぞれに固定されたシール部材によって各室間が仕切られて燃料漏れが完全に阻止される。このため、燃料漏れの完全な阻止が困難なOリング等の可動部に対して摺動するシール部材を利用する場合と比べて高圧燃料ポンプの吐出効率を高めることができる。
本発明の一態様において、前記圧力調整機構には、前記可動部材が前記燃料導入通路を開通する側に移動したときに前記可動部材と前記ケーシングとの間に隙間が確保された状態で前記ケーシングの内壁又は前記可動部材の後端面に突き当たる突部が設けられてもよい(請求項15)。この態様によれば、可動部材が移動してケーシングに突き当たったときに突部によって可動部材とケーシングとの間に隙間が確保されるので、可動部材がケーシングに密着して吸い付いてしまうスクイーズ現象の発生を防止できる。これにより、燃料導入通路が開通したままの状態となる不具合を防止できる。
以上説明したように、本発明の燃料供給装置によれば、第1室又は第2室に低圧通路内の燃料の圧力が更に付加されるので、その圧力が変わることにより可動部材に作用する力のバランスが変わり、その結果として、燃料導入通路を開通させるために必要な分配手段内の圧力が変わることになる。従って、分配手段を介して内燃機関に供給される燃料の圧力を低圧通路内の圧力に応じて変更できる。
(第1の形態)
図1は、本発明の一形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。内燃機関1は不図示の車両に走行用動力源として搭載される。内燃機関1は燃料供給装置2Aが適用されることにより直列4気筒型で筒内直接噴射型の火花点火内燃機関として構成されている。燃料供給装置2Aは内燃機関1の気筒毎に設けられた燃料噴射弁3を備えていて、各燃料噴射弁3は先端部を気筒内に臨ませるようにして不図示のシリンダヘッドに取り付けられている。
図1は、本発明の一形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。内燃機関1は不図示の車両に走行用動力源として搭載される。内燃機関1は燃料供給装置2Aが適用されることにより直列4気筒型で筒内直接噴射型の火花点火内燃機関として構成されている。燃料供給装置2Aは内燃機関1の気筒毎に設けられた燃料噴射弁3を備えていて、各燃料噴射弁3は先端部を気筒内に臨ませるようにして不図示のシリンダヘッドに取り付けられている。
各燃料噴射弁3による燃料供給を行うため、燃料供給装置2Aは燃料であるガソリンが貯留された燃料タンク5から燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプ6と、内燃機関1に供給する燃料の圧力(燃圧)を高圧化する高圧燃料ポンプ7と、高圧燃料ポンプ7にて加圧された燃料を各気筒へ分配する分配手段としてのデリバリパイプ8とを備えている。
低圧燃料ポンプ6と高圧燃料ポンプ7とは低圧通路9によって接続されており、その低圧通路9には燃料を濾過する不図示のフィルタやポンプ駆動に伴う燃料の脈動を減衰させる不図示のパルセーションダンパ等が取り付けられている。高圧燃料ポンプ7とデリバリパイプ8とは高圧通路10にて接続されている。
デリバリーパイプ8には余剰燃料を燃料タンク5に戻すリターン通路11が接続されている。リターン通路11にはリリーフ弁14が取り付けられていて、そのリリーフ弁14は燃圧が所定の設定圧力を超えた場合に開弁してリターン通路11を開通させる。これにより、余剰燃料は燃料タンク5に戻される。
低圧燃料ポンプ6は燃料タンク5内に取り付けられている。低圧燃料ポンプ6は、その内部構造の詳細な図示を略したが、直流電動モータとそのモータにて駆動されるインペラーとを備えた周知の回転型電動式ポンプとして構成されている。また、低圧燃料ポンプ6には低圧通路9内の圧力(フィード圧)を高低2段階に切替設定可能な調圧手段としてのプレッシャーレギュレータ15が設けられている。
高圧燃料ポンプ7は内燃機関1のカムシャフト17から取り出した動力にて駆動される周知のプランジャ式ポンプとして構成されている。高圧燃料ポンプ7はポンプハウジング18に形成された吸入通路19及び吐出通路20を有しており、吸入通路19には低圧通路9が吐出通路20には高圧通路10がそれぞれ接続されている。吸入通路19及び吐出通路20のそれぞれには燃料の逆流を防止するチェック弁21が図示の向きで設けられている。ポンプハウジング18にはプランジャ25が往復動自在に収容される加圧室26が形成されいて、この加圧室26は吸入通路19及び吐出通路20のそれぞれと連通している。低圧燃料ポンプ6から吸入通路19を経由して加圧室26に供給された燃料は加圧室26にて加圧されて吐出通路20から吐出される。高圧燃料ポンプ7にはカムシャフト17の回転をプランジャ25の往復運動に変換するプランジャ駆動装置27が設けられており、この駆動装置27はカムシャフト17に形成されたポンプ駆動カム28と、プランジャ25に連結されたカムフォロア29とを備えている。
高圧燃料ポンプ7は、加圧室26及びデリバリパイプ8のそれぞれに接続されてデリバリパイプ8内の圧力(燃圧)を調整可能な圧力調整機構30を更に備えている。圧力調整機構30はケーシング31と、このケーシング31内に移動可能に設けられた可動部材32とを備えている。なお、図示の便宜上、ケーシング31とポンプハウジング18とは別部材として図示されているがこれらは一体に構成されている。但し、これらを別体として構成することも可能である。ケーシング31には加圧室26に通じる燃料導入通路33が形成されている。ケーシング31に可動部材32が収納されることにより、ケーシング31には第1室35、第2室36及び第3室37がそれぞれ形成される。可動部材32の先端側(図の左側)にはボール状の弁体39が設けられている。可動部材32の移動によりその弁体39が燃料導入通路33に形成された弁座33aに着座及び離座して燃料導入通路33は開通及び閉鎖される。
可動部材32が基端側(図1の右側)に移動して弁体39が弁座33aから離座すると燃料導入通路33は第1室35と通じるようになっている。第2室36はケーシング31の内周面に形成された段差部40と可動部材32の段差部41とによって区画されており、第2室36にはデリバリパイプ8に接続された高圧接続通路43を介してデリバリパイプ8内の燃料が導入される。第2室36は、導入された燃料の圧力により可動部材32を燃料導入通路33が開通する側(図1の右側)に付勢することができる。第3室37は可動部材32を挟んで第2室36の反対側に位置している。第3室37の内部には可動部材32を燃料導入通路33が閉鎖する側(図1の左側)に付勢する付勢部材としての圧縮スプリング45が設けられている。ケーシング18と可動部材32との摺動部をシールするため、第1室35と第2室36との間の燃料漏れを防止する小径Oリング46が、第2室36と第3室37との間の燃料漏れを防止する大径Oリング47がそれぞれ設けられている。第1室35は低圧接続通路50によって低圧通路9に接続されており、第3室37はリターン通路11を介して燃料タンク5に接続されている。
燃料供給装置2Aは低圧通路9内の圧力(フィード圧)の切り替えに応じて内燃機関1に供給する燃料の圧力(燃圧)が切り替え可能となるように、圧力調整機構30の各種パラメータが設定されている。その設定により、燃料供給装置2Aはフィード圧が低圧の場合に燃圧が設定圧である高圧となり、フィード圧が高圧の場合に燃圧が設定圧よりも低い低圧となるように動作する。フィード圧が高圧の場合の燃圧はフィード圧と等しい。以下、こうした動作を実現するための各種パラメータの設定方法について図2を参照しながら説明する。図2は燃料導入通路33が閉鎖されている場合に可動部材32に作用する力を図示した説明図である。
ここで、(1)弁体39のシート面積(弁体39と弁座33aとの接触部を含む平面で弁体39を切断したとき断面積)をA、(2)第1室35の断面積をB、(3)第2室36の断面積をC、(4)第3室37の断面積をD(=A+B+C)、(5)圧縮スプリング45のセット荷重(燃料導入通路33の閉鎖時における可動部材32に対する押し付け力)をF、(6)フィード圧をPl、(7)フィード圧の高低2段階の切替値をP1(低圧)及びP2(高圧)、(8)高圧燃料ポンプ7の吐出圧(デリバリパイプ8内の圧力)をPh、(9)燃圧の設定値をP3とする。
燃料導入通路33の閉鎖時に可動部材32を開通方向(図2の右方向)に押す力は式1の通りである。また、燃料導入通路33の閉鎖時に可動部材32を閉鎖方向(図2の左方向)に押す力は式2の通りである。
Ph×A+Pl×B+Ph×C ……1
F+0 ……2
フィード圧が低圧の場合に燃圧を設定値である高圧にするためには、高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phが設定値P3未満の場合に燃料導入通路33が閉鎖状態に維持されつつ、吐出圧Phが設定値P3になった時点で弁体39が弁座33aから離座して燃料導入通路33が開通しなければならない。従って、式1=式2とした上で、Pl=P1及びPh=P3を代入すると式3が得られ、これを整理すると式4が得られる。
P3×A+P1×B+P3×C=F ……3
F=(A+C)×P3+B×P1 ……4
一方、フィード圧が高圧の場合に燃圧を設定値よりも低い低圧即ちフィード圧と等しくするためには、フィード圧Pl及び高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phのそれぞれが切替値P2の状態で燃料導入通路33の開通が維持されなければならない。従って、式1>式2とした上で、Pl=P2及びPh=P2を代入すると式5が得られ、これを整理すると式6が得られる。
P2×A+P2×B+P2×C>F ……5
F<(A+B+C)×P2 ……6
式4及び式6を共に満たすように、各パラメータを設定することにより上述した燃料供給装置2Aの動作が実現される。
フィード圧を切り替えるタイミングは内燃機関1の運転状態に適した燃圧となるように制御される。図1に示したように、フィード圧を切り替えるためのプレッシャーレギュレータ15の制御は内燃機関1の運転状態を適正に制御するために設けられたエンジンコントロールユニット(ECU)60にて行われる。ECU60はマイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を備えたコンピュータユニットとして構成されており、ROMに保持された所定のプラグRAMに従って各種センサからの情報に基づいて燃料噴射量や点火時期等の様々な制御を行っている。ここでは、本発明に関連する制御のみを説明しその他の制御に関する説明を省略する。ECU60に接続されるセンサのうち、本発明に関連するものとしては、内燃機関1の回転速度(回転数)に応じた信号を出力するクランク角センサ61、内燃機関1の負荷を代表する物理量であるスロットル開度に応じた信号を出力するスロットル開度センサ62及び内燃機関1の冷却水温に応じた信号を出力する水温センサ63が設けられている。
図3はECU60が行う第1の形態に係る制御内容を図示した説明図である。図示したように、ECU60は、燃圧が高い高圧噴射と、燃圧が低い低圧噴射とが内燃機関1の負荷に応じて切り替えられるようにプレッシャーレギュレータ15を制御している。高圧噴射領域と低圧噴射領域との境界に相当する負荷の閾値Kl1は約20%に設定されている。つまり、その閾値Kl1を下回る低負荷の場合には燃圧が低圧に設定され、その閾値Kl1を上回る高負荷の場合には燃圧が高圧に設定される。低負荷の場合に燃圧が低圧になるので、各燃料噴射弁3のダイナミックレンジを確保できる。ダイナミックレンジは最小噴射量から最大噴射量までの変化範囲である。ダイナミックレンジが確保されることにより低負荷へ対応可能になるので燃料噴射弁3の設計が容易になる。また、低負荷の場合に燃圧が低下するので軽負荷時に耳障りなノイズバイブレーションを低減することが可能になる。一方、高負荷の場合に燃圧が高圧になるので気筒内における燃料の微粒化が促進される。これにより、気筒内壁への燃料付着が抑制されるため、ピストンリングで掻き落とされる燃料が低減してオイル希釈を抑制できる。オイル希釈が起こるとオイルに溶け込んだ燃料が水温上昇に伴って一気に蒸発してブローバイガスとともに吸気通路に戻されると、瞬間的に空燃比がリッチ側に移行する。こうした空燃比変化をECU60が異常と判断することにより燃焼悪化を招くおそれがある。本形態によればオイル希釈を抑制できるため、オイル希釈を原因とした燃焼悪化を防止することができる。
図4は図3の制御を実現するためにECU60が行う制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU60のROMに保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ステップS1において、ECU60は負荷率Klが所定の閾値Kl1未満であるか否かを判定し、肯定的判定の場合はステップS2に進み、否定的判定の場合はステップS3に進む。負荷率Klは、ECU60が取得したスロットル開度の他、負荷に相関又は影響を与える各種物理量に基づいて演算される周知の物理量である。閾値Kl1は約20%に設定される。
ステップS2では、フィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。一方、ステップS3では、フィード圧Plが低圧P1となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。図4のルーチンによれば、フィード圧Plの切り替えに伴って燃圧が図3に示すように負荷に応じて高低2段階に切り替えられるため、内燃機関1の負荷に適した燃圧を得ることができる。ECU60が図4のルーチンを実行することにより、ECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第2の形態)
図5は本発明の第2の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第1の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Bは、低圧接続通路50が圧力調整機構30の第3室37に接続され、第1室35がリターン通路11を介して燃料タンク5に接続されている。
図5は本発明の第2の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第1の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Bは、低圧接続通路50が圧力調整機構30の第3室37に接続され、第1室35がリターン通路11を介して燃料タンク5に接続されている。
燃料供給装置2Bはフィード圧の切り替えに応じて燃圧が切り替え可能となるように、圧力調整機構30の各種パラメータが設定されている。その設定により、燃料供給装置2Bはフィード圧が低圧の場合に燃圧が高圧となり、フィード圧が高圧の場合に燃圧が低圧となるように動作する。各種パラメータの設定方法は第1の形態に準じたものであるので説明を省略する。こうした動作は以下の原理に基づいている。図6は燃料導入通路33が閉鎖されている場合に可動部材32に作用する力を図示した説明図である。ここで、第1の形態と同様に、(1)弁体39のシート面積をA、(2)第1室35の断面積をB、(3)第2室36の断面積をC、(4)第3室の断面積をD(=A+B+C)、(5)圧縮スプリング45のセット荷重をF、(6)フィード圧をPl、(7)フィード圧の高低2段階の切替値をP1(低圧)及びP2(高圧)、(8)高圧燃料ポンプ7の吐出圧(デリバリパイプ8内の圧力)をPhとする。そして、可動部材32を燃料導入通路33が開通させる側(図6の右側)へ移動させるために要する圧力(開弁圧)によって、図6の左右方向の力が釣り合うことになる。そこで、式7が得られ、この式7を整理すると式8が得られる。
Ph×A+Ph×C=F+Pl(A+B+C) ……7
Ph=[F+Pl(A+B+C)]/(A+C) ……8
式8から明らかなように、本形態の燃料供給装置2Bにおいては、フィード圧Plが低圧P1と高圧P2との間で切り替わると、高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phの大きさが高圧と低圧との間で変化する。この場合、フィード圧Plの設定圧の差にもよるが、第1の形態に比べて比較的近い2値間での燃圧の切り替えとなる。なお、燃圧の切り替え幅が大きくなるほど燃料噴射弁3のダイナミックレンジが拡大する特性があるため、第1の形態と第2の形態のいずれを採用するかはその特性を勘案して決定すればよい。また、式8から明らかなようにフィード圧Plに応じて燃圧を変化させることができるため、フィード圧を無段階に変化させることによって燃圧も無段階に変化させることができる。フィード圧を無段階に設定するためには、プレッシャーレギュレータ15を無段階に設定圧力の変更が可能なものに置き換えれば実現できる。また、低圧燃料ポンプ6自体の吐出量が無段階に変化するように制御することによってフィード圧を無段階に設定することもできる。
図7及び図8はECU60が行う第2の形態に係る制御内容を図示した説明図であり、図7は内燃機関1の温間時における制御を、図8は内燃機関1の冷間時における制御をそれぞれ示している。ここでは、温間時を水温80℃以上、冷間時を80℃未満としている。これらの図から明らかなようにECU60は冷却水温に応じて制御内容を切り替えている。図7に示した温間時では第1の形態と同様に、高燃圧による高圧噴射と、高燃圧よりも低い中燃圧による中圧噴射とが内燃機関1の負荷に応じて切り替えられている。これにより、第1の形態と同様の効果を得ることができる。一方、図8に示した冷間時では負荷の閾値として高低2つの閾値Kl1、Kl2を設けるとともに回転数にも閾値Ne1を設定し、回転数に応じて2つの閾値Kl1、Kl2を使い分ける制御を行っている。従って、回転数の閾値Ne1よりも低回転側では閾値Kl1を下回る負荷の場合に燃圧が中圧に設定され、その閾値Kl1を上回る負荷の場合に燃圧が高圧に設定される。一方、回転数の閾値Ne1よりも高回転側では閾値Kl2を下回る負荷の場合に燃圧が中圧に設定され、その閾値Kl2を上回る負荷の場合には燃圧が高圧に設定される。冷間時においては、低回転低負荷の領域で燃圧が高められるため、当該領域で生じ易いオイル希釈を低減することができ、燃焼の安定性が向上する。また、本形態は温間時及び冷間時(の一部)のそれぞれで、中負荷領域で燃圧が中圧に設定された噴射が行われるため、この領域でのポンプ駆動仕事が減少するので内燃機関1の燃費改善が見込まれる。
図9は図7及び図8の制御を実現するためにECU60が行う制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU60のROMに保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ステップS21において、ECU60は負荷率Klの判定を行う。その判定の結果、負荷率Klが低負荷側の閾値Kl1未満である場合(Kl<Kl1)はステップS22に、負荷率Klが高負荷側の閾値Kl2を超える場合(Kl>Kl2)はステップS23に、負荷率Klが閾値Kl1以上で閾値Kl2以下の場合(Kl1≦Kl≦Kl2)はステップS24にそれぞれ進む。
ステップS22では、中圧噴射を行うべくフィード圧Plが低圧P1となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。ステップS23では、高圧噴射を行うべくフィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。
ステップS24では、冷却水温Twが閾値Tw1(例えば80℃)未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合は温間時に相当するものと判断してステップS25に進み中圧噴射を行うべくフィード圧Plを低圧P1に設定し、その後ルーチンを終える。一方、肯定的判定の場合は冷間時に相当するものと判断してステップS26に進む。
ステップS26では、内燃機関1の回転数Neが閾値Ne1(例えば2800rpm)未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合は中圧噴射を行うべくステップS25に進む。肯定的判定の場合はステップS27に進み高圧噴射を行うべくフィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。ECU60が図9のルーチンを実行することにより、ECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第3の形態)
図10は本発明の第3の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第2の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Cは、低圧接続通路50から分岐してリターン通路11に接続される分岐通路51と、低圧接続通路50の分岐位置に設けられた通路切替手段としての切替弁52とを備えている。切替弁52は、分岐通路51を閉鎖する一方で第3室37と低圧接続通路50とを開通させる第1位置V1と、低圧接続通路50を閉鎖する一方で第3室37と分岐通路51とを開通させる第2位置V2との間で動作可能に構成されている。切替弁52の当該動作はECU60によって制御される。燃料供給装置2Cはフィード圧の切替動作に切替弁52の動作が組み合わされるため燃圧を3段階に変化させることが可能である。圧力調整機構30の各種パラメータの設定は上記各形態と同様に行われる。
図10は本発明の第3の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第2の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Cは、低圧接続通路50から分岐してリターン通路11に接続される分岐通路51と、低圧接続通路50の分岐位置に設けられた通路切替手段としての切替弁52とを備えている。切替弁52は、分岐通路51を閉鎖する一方で第3室37と低圧接続通路50とを開通させる第1位置V1と、低圧接続通路50を閉鎖する一方で第3室37と分岐通路51とを開通させる第2位置V2との間で動作可能に構成されている。切替弁52の当該動作はECU60によって制御される。燃料供給装置2Cはフィード圧の切替動作に切替弁52の動作が組み合わされるため燃圧を3段階に変化させることが可能である。圧力調整機構30の各種パラメータの設定は上記各形態と同様に行われる。
切替弁52が第1位置V1に制御されて第3室37と低圧接続通路50とが繋がれば第2の形態と同様の制御が可能になる。また、切替弁52が第2位置V2に制御されて第3室37と分岐通路51とが繋がり第3室37と燃料タンク5とが接続されれば、フィード圧が大気圧になる。従って、第2の形態の式8にPl=0を代入することにより、式9が得られる。
Ph=F/(A+C) ……9
式9と式8とを比べれば明らかなように、高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phを第2の形態に比べて更に下げることができる。そのため、ECU60は更にきめ細かな制御が可能になる。
図11及び図12はECU60が行う第3の形態に係る制御内容を図示した説明図であり、図11は内燃機関1の温間時における制御を、図12は内燃機関1の冷間時における制御をそれぞれ示している。ここでは、温間時を水温80℃以上、冷間時を80℃未満としている。これらの図から明らかなように、第3の形態に係る制御では、第2の形態で実施した中圧噴射よりも低い燃圧による低圧噴射領域が付加されている。即ち、図12に示した温間時では、高燃圧による高圧噴射と、高燃圧よりも低い中燃圧による中圧噴射と、中燃圧よりも低い低燃圧による低圧噴射とが内燃機関1の負荷に応じて切り替えられている。これにより、上記各形態と同様の効果を得ることができる。一方、図12に示した冷間時では内燃機関1の回転数に拘わらず、低負荷側の閾値Kl1を下回る場合に低圧噴射(フィード圧による噴射)が行われるようになっている。
図13は図11及び図12の制御を実現するためにECU60が行う制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU60のROMに保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ステップS31において、ECU60は負荷率Klの判定を行う。その判定の結果、負荷率Klが低負荷側の閾値Kl1未満である場合(Kl<Kl1)はステップS32に、負荷率Klが高負荷側の閾値Kl2を超える場合(Kl>Kl2)はステップS33に、負荷率Klが閾値Kl1以上で閾値Kl2以下の場合(Kl1≦Kl≦Kl2)はステップS35にそれぞれ進む。
ステップS32では、低圧噴射を行うべく切替弁52の弁位置Vvが第2位置V2に設定されるように切替弁52を制御し、その後ルーチンを終える。ステップS33では、弁位置Vvが第1位置V1に設定されるように切替弁53を制御してステップS34に進む。ステップS34では、高圧噴射を行うべくフィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御し、その後ルーチンを終える。
ステップS35では、冷却水温Twが閾値Tw1(例えば80℃)未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合は温間時に相当するものと判断してステップS36に進み中圧噴射を行うべくフィード圧Plを低圧P1に設定し、その後ルーチンを終える。一方、肯定的判定の場合は冷間時に相当するものと判断してステップS37に進む。
ステップS37では、内燃機関1の回転数Neが閾値Ne1(例えば2800rpm)未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合は中圧噴射を行うべくステップS36に進む。肯定的判定の場合はステップS38に進み高圧噴射を行うべくフィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。ECU60が図13のルーチンを実行することにより、ECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第4の形態)
図14は本発明の第4の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第1の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Dは、低圧接続通路50が第1室35に接続され、第3室37と内燃機関1の吸気通路54に設けられたスロットル弁55下流の負圧源54aとを接続する負圧導入通路56を備えている。吸気通路54は内燃機関1のシリンダヘッド57に空気を導く通路であり、スロットル弁55の開度が絞られることにより、スロットル弁55下流の圧力は大気圧よりも低い負圧となる。その負圧源54aは内燃機関1の負荷(スロットル開度)に応じて負圧の大きさが連続的に変化するので、その負圧源54aと第3室37とを負圧導入通路56にて接続することにより、燃圧を内燃機関1の負荷に応じて連続的に変化させることができる。
図14は本発明の第4の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第1の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Dは、低圧接続通路50が第1室35に接続され、第3室37と内燃機関1の吸気通路54に設けられたスロットル弁55下流の負圧源54aとを接続する負圧導入通路56を備えている。吸気通路54は内燃機関1のシリンダヘッド57に空気を導く通路であり、スロットル弁55の開度が絞られることにより、スロットル弁55下流の圧力は大気圧よりも低い負圧となる。その負圧源54aは内燃機関1の負荷(スロットル開度)に応じて負圧の大きさが連続的に変化するので、その負圧源54aと第3室37とを負圧導入通路56にて接続することにより、燃圧を内燃機関1の負荷に応じて連続的に変化させることができる。
燃料供給装置2Dに設けられた圧力調整機構30の各種パラメータは以下の方法で設定される。図15は燃料導入通路33が閉鎖されている場合に可動部材32に作用する力を図示した説明図である。
ここで、(1)弁体39のシート面積をA、(2)第1室35の断面積をB、(3)第2室36の断面積をC、(4)第3室37の断面積をD(=A+B+C)、(5)圧縮スプリング45のセット荷重(燃料導入通路33の閉鎖時における可動部材32に対する押し付け力)をF、(6)フィード圧をPl、(7)フィード圧の高低2段階の切替値をP1(低圧)及びP2(高圧)、(8)負圧源54aの圧力をPb、(9)Pbの最小値をP4(P4<0、なおPbの最大値は0である。)、(10)高圧燃料ポンプ7の吐出圧(デリバリパイプ8内の圧力)をPh、(11)燃圧の設定値をP3(Pbが0における設定圧)とする。
燃郎導入通路33の閉鎖時に可動部材32に作用する力は図15の通りとなる。即ち、可動部材32を開通方向(図15の右方向)に押す力は第1の形態で説明した式1と同じである。また、燃料導入通路33の閉鎖時に可動部材32を閉鎖方向(図15の左方向)に押す力は式10の通りである。
F+Pb×(A+B+C) ……10
フィード圧が低圧の場合に燃圧を設定値にするためには、高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phが設定値P3未満の場合に燃料導入通路33が閉鎖状態に維持されつつ、吐出圧Phが設定値P3になった時点で弁体39が弁座33aから離座して燃料導入通路33が開通しなければならない。従って、式1=式10とした上で、Pl=P1、Ph=P3及びPb=0を代入すると式11が得られ、これを整理すると式12が得られる。
P3×A+P1×B+P3×C=F ……11
F=(A+C)×P3+B×P1 ……12
一方、フィード圧が高圧の場合に燃圧を設定値よりも低い低圧と等しくするためには、フィード圧Pl及び高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phのそれぞれが切替値P2の状態で燃料導入通路33の開通が維持されなければならない。従って、式1>式10とした上で、Pl=Ph=P2及びPb=P4を代入すると式13が得られ、これを整理すると式14が得られる。
P2×A+P2×B+P2×C>F+P4(A+B+C) ……13
F<(A+B+C)×(P2−P4) ……14
式12及び式14を共に満たすように、圧力調整機構30の各パラメータを設定することにより燃料供給装置2Dの上述した動作が実現される。ここで、フィード圧Plが低圧P1に設定された場合の高圧燃料ポンプ7の吐出圧Phは、式1=式10とした上で、Pl=P1を代入し、式12にてFを消去してPhについて整理すると式15が得られる。
Ph=P3+[(A+B+C)/(A+C)]×Pb ……15
式15から明らかなように、フィード圧Plが低圧P1に設定された場合には負圧源54aの圧力Pbが小さくなると(大きさが大きくなると)、吐出圧Phは小さくなる関係にある。
図16はECU60が行う第4の形態に係る制御内容を図示した説明図である。この図から明らかなように、負荷が閾値Kl1を上回った場合にフィード圧が低圧となるようにプレッシャーレギュレータ15をECU60が制御することにより、負荷(スロットル開度に応じて中圧から高圧まで連続的に燃圧を変化させることができる。この連続的な変化の実現は負圧源54aの負圧の変化を利用しているため、ECU60はフィード圧を高低2段階に切り替えるだけでよい。一方、負荷が閾値Kl1を下回った場合にはフィード圧が高圧となるようにプレッシャーレギュレータ15をECU60が制御することにより、燃圧をフィード圧と等しい低圧に設定できる。以上の制御は第1の形態の図4の制御ルーチンをECU60が実行することにより実現できる。この場合にECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第5の形態)
図17は本発明の第5の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第4の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Eは、負圧導入通路56から分岐してリターン通路11に接続される分岐通路58と、負圧導入通路56の分岐位置に設けられた通路切替手段としての切替弁59とを備えている。切替弁59は、分岐通路58を閉鎖する一方で第3室37と負圧導入通路56とを開通させる第1位置V1と、負圧導入通路56を閉鎖する一方で第3室37と分岐通路58とを開通させる第2位置V2との間で動作可能に構成されている。切替弁59の当該動作はECU60によって制御される。燃料供給装置2Eはフィード圧の切替動作に切替弁59の動作が組み合わされるため、燃圧を負圧に応じて連続的に変化させる状態と、その連続的な変化を中止させる状態とを切り替えることができるようになる。
図17は本発明の第5の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第4の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Eは、負圧導入通路56から分岐してリターン通路11に接続される分岐通路58と、負圧導入通路56の分岐位置に設けられた通路切替手段としての切替弁59とを備えている。切替弁59は、分岐通路58を閉鎖する一方で第3室37と負圧導入通路56とを開通させる第1位置V1と、負圧導入通路56を閉鎖する一方で第3室37と分岐通路58とを開通させる第2位置V2との間で動作可能に構成されている。切替弁59の当該動作はECU60によって制御される。燃料供給装置2Eはフィード圧の切替動作に切替弁59の動作が組み合わされるため、燃圧を負圧に応じて連続的に変化させる状態と、その連続的な変化を中止させる状態とを切り替えることができるようになる。
図18及び図19はECU60が行う第5の形態に係る制御内容を図示した説明図であり、図18は内燃機関1の温間時における制御を、図19は内燃機関1の冷間時における制御をそれぞれ示している。ここでは、温間時を水温80℃以上、冷間時を80℃未満としている。これらの図から明らかなように、第5の形態に係る制御は温間時の制御が第4の形態と同一であって格別な違いはないが冷間時における制御に特徴がある。即ち、冷間時においては、燃圧を連続的に変化させる状態とそれを中止させる状態とを内燃機関1の回転数に応じて切り替えている。内燃機関1の回転数が閾値Ne1よりも低回転側でかつ負荷が閾値Kl1よりも高い場合には燃圧が一定の高圧噴射を行う一方で、回転数が閾値Ne1よりも高回転側でかつ負荷が閾値Kl1よりも高い場合には燃圧を負荷に応じて中圧から高圧までの間で連続的に変化させる燃料噴射を行っている。低回転側で一定燃圧の高圧噴射が行われるので、冷間時で低回転域で弊害が顕著になるオイル希釈を抑制することができる。
図20は図18及び図19の制御を実現するためにECU60が行う制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU60のROMに保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ステップS51において、ECU60は負荷率Klが所定の閾値Kl1未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合はステップS52に進み、肯定的判定の場合はステップS53に進む。
ステップS52では、フィード圧Plが低圧P1となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、ステップS54に進む。一方、ステップS53では、低圧噴射を行うべくフィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。
ステップS54では、冷却水温Twが閾値Tw1(例えば80℃)未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合は温間時に相当するものと判断してステップS55に進む。一方、肯定的判定の場合は冷間時に相当するものと判断してステップS56に進む。
ステップ55では、負荷に応じて燃圧が変化する燃料噴射を行うべく切替弁59の弁位置Vvが第1位置V1に設定されるように切替弁59を制御して今回のルーチンを終える。ステップS56では、内燃機関1の回転数Neが閾値Ne1(例えば2800rpm)未満であるか否かを判定し、否定的判定の場合はステップS55に進み、負荷に応じて燃圧が変化する燃料噴射を行う。肯定的判定の場合はステップS57に進み、燃圧一定の高圧噴射を行うべく切替弁59の弁位置Vvが第2位置V2に設定されるように切替弁59を制御して今回のルーチンを終える。ECU60が図20のルーチンを実行することにより、ECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第6の形態)
図21は本発明の第6の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、上記各形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。第6の形態に係る燃料供給装置2Fは、ケーシング31と可動部材32との間のシール方法に特徴を有している。燃料供給装置2Fには、所定のクリアランスCを設定することにより第2室36と第3室37との間での燃料漏れを許容するクリアランスシール部71がケーシング31と可動部材32との間に設けられている。クリアランスCの大きさは各室36、37間に生じる圧力差を考慮して適宜設定される。燃料供給装置2Fによれば、デリバリパイプ8内の燃料が導入される第2室36からリターン通路11を通じる第3室37へ燃料漏れが許容される。このため、Oリングでシールする形態(第1の形態等)のように、デリバリパイプ8の余剰燃料をリリーフ弁14を介してリターン通路11に戻す必要がなり。従って、この燃料供給装置2Fによれば、リリーフ弁14を省略することができるので、部品点数を削減することができる。また、リターン通路11の長さも短くすることができる。なお、本形態の変形例としては、図22に示すようにクリアランスシール部71を第1室35と第2室36との間に設けることもできる。この変形例においても、第1室35及び第2室36間の燃料漏れが許容されるので、リリーフ弁14を省略でき部品点数を削減できる。また、第1室35及び第2室36間の燃料漏れは、第1室35と第2室36との間で圧力が釣り合った場合に止まる。そのため、第2室36から燃料が抜け切ることはない。
図21は本発明の第6の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、上記各形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。第6の形態に係る燃料供給装置2Fは、ケーシング31と可動部材32との間のシール方法に特徴を有している。燃料供給装置2Fには、所定のクリアランスCを設定することにより第2室36と第3室37との間での燃料漏れを許容するクリアランスシール部71がケーシング31と可動部材32との間に設けられている。クリアランスCの大きさは各室36、37間に生じる圧力差を考慮して適宜設定される。燃料供給装置2Fによれば、デリバリパイプ8内の燃料が導入される第2室36からリターン通路11を通じる第3室37へ燃料漏れが許容される。このため、Oリングでシールする形態(第1の形態等)のように、デリバリパイプ8の余剰燃料をリリーフ弁14を介してリターン通路11に戻す必要がなり。従って、この燃料供給装置2Fによれば、リリーフ弁14を省略することができるので、部品点数を削減することができる。また、リターン通路11の長さも短くすることができる。なお、本形態の変形例としては、図22に示すようにクリアランスシール部71を第1室35と第2室36との間に設けることもできる。この変形例においても、第1室35及び第2室36間の燃料漏れが許容されるので、リリーフ弁14を省略でき部品点数を削減できる。また、第1室35及び第2室36間の燃料漏れは、第1室35と第2室36との間で圧力が釣り合った場合に止まる。そのため、第2室36から燃料が抜け切ることはない。
(第7の形態)
図23は本発明の第7の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、上記各形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。第7の形態に係る燃料供給装置2Gは、ケーシング31と可動部材32との間のシール方法に特徴を有している。燃料供給装置2Gの第1室35と第2室36との間及び第2室36と第3室37との間のそれぞれには、室間の燃料漏れを阻止できダイヤフラム71、72が設けられている。各ダイヤフラム71、72はケーシング31及び可動部材32間の隙間に対応した幅を持つ波板状に構成されている。各ダイヤフラム71、72はケーシング31及び可動部材32のそれぞれに溶接部73によって全周に亘り固定されている。従って、室間の燃料漏れを完全に阻止できる。各ダイヤフラム71、72はその板厚が十分に薄いため、可動部材32の移動方向に弾性変形することができる。従って、各ダイヤフラム71、72は本発明に係るシール部材として機能する。燃料供給装置2Gによれば、各ダイヤフラム71、72によって各室間が仕切られて燃料漏れが完全に阻止されるため、燃料漏れの完全な阻止が困難なOリング等の可動部に対して摺動するシール部材を利用する場合と比べて高圧燃料ポンプ7の吐出効率を高めることができる。また、燃料供給装置2Gは、第3室37内に燃料が浸入するおそれがないので、第3室37とリターン通路11とを接続する必要がなく配管を簡略化することができる。なお、ダイヤフラム71、72のどちらか一方のみを採用して、残りのシールは上記各形態で用いたOリング等で行うこともできる。
図23は本発明の第7の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、上記各形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。第7の形態に係る燃料供給装置2Gは、ケーシング31と可動部材32との間のシール方法に特徴を有している。燃料供給装置2Gの第1室35と第2室36との間及び第2室36と第3室37との間のそれぞれには、室間の燃料漏れを阻止できダイヤフラム71、72が設けられている。各ダイヤフラム71、72はケーシング31及び可動部材32間の隙間に対応した幅を持つ波板状に構成されている。各ダイヤフラム71、72はケーシング31及び可動部材32のそれぞれに溶接部73によって全周に亘り固定されている。従って、室間の燃料漏れを完全に阻止できる。各ダイヤフラム71、72はその板厚が十分に薄いため、可動部材32の移動方向に弾性変形することができる。従って、各ダイヤフラム71、72は本発明に係るシール部材として機能する。燃料供給装置2Gによれば、各ダイヤフラム71、72によって各室間が仕切られて燃料漏れが完全に阻止されるため、燃料漏れの完全な阻止が困難なOリング等の可動部に対して摺動するシール部材を利用する場合と比べて高圧燃料ポンプ7の吐出効率を高めることができる。また、燃料供給装置2Gは、第3室37内に燃料が浸入するおそれがないので、第3室37とリターン通路11とを接続する必要がなく配管を簡略化することができる。なお、ダイヤフラム71、72のどちらか一方のみを採用して、残りのシールは上記各形態で用いたOリング等で行うこともできる。
(第8の形態)
図24は本発明の第8の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、上記各形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。第8の形態に係る燃料供給装置2Hは、各室間の燃料漏れを完全に阻止できる第7の形態(図23)の構成を前提とする。燃料供給装置2Hは、第3室37とオイルポンプ80の下流側に位置する油路81とを接続する油圧導入通路83を備えている。オイルポンプ80は内燃機関1の不図示のクランク軸にて駆動される周知のものである。油路81内の油圧はオイルポンプ80にて高められる。つまり、油路81は本発明に係る油圧源として機能する。油路81内の油圧は冷却水温や油温に代表される機関温度が高いほど低くなる性質があるので、油圧導入通路83を通じて第3室37にオイルが導かれると、その機関温度に応じて連続的に変化する。第3室37の圧力が高いほど燃圧が高燃圧となる。
図24は本発明の第8の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、上記各形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。第8の形態に係る燃料供給装置2Hは、各室間の燃料漏れを完全に阻止できる第7の形態(図23)の構成を前提とする。燃料供給装置2Hは、第3室37とオイルポンプ80の下流側に位置する油路81とを接続する油圧導入通路83を備えている。オイルポンプ80は内燃機関1の不図示のクランク軸にて駆動される周知のものである。油路81内の油圧はオイルポンプ80にて高められる。つまり、油路81は本発明に係る油圧源として機能する。油路81内の油圧は冷却水温や油温に代表される機関温度が高いほど低くなる性質があるので、油圧導入通路83を通じて第3室37にオイルが導かれると、その機関温度に応じて連続的に変化する。第3室37の圧力が高いほど燃圧が高燃圧となる。
図25はECU60が行う第8の形態に係る制御内容を図示した説明図である。この図から明らかなように、負荷が閾値Kl1を上回った場合にフィード圧が低圧となるようにプレッシャーレギュレータ15をECU60が制御することにより、機関温度に応じて中圧から高圧まで連続的に燃圧を変化させることができる。この連続的な変化の実現は機関温度の変化を利用しているため、ECU60はフィード圧を高低2段階に切り替えるだけでよい。一方、負荷が閾値Kl1を下回った場合にはフィード圧が高圧となるようにプレッシャーレギュレータ15をECU60が制御することにより、燃圧をフィード圧と等しい低圧に設定できる。以上の制御は第1の形態の図4の制御ルーチンをECU60が実行することにより実現できる。この場合にECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第9の形態)
図26は本発明の第9の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第8の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Iは、油圧導入通路83から分岐して低圧接続通路50に接続される分岐通路85と、油圧導入通路83の分岐位置に設けられた通路切替手段としての切替弁86とを備えている。切替弁86は、分岐通路85を閉鎖する一方で第3室37と油圧導入通路83とを開通させる第1位置V1と、油圧導入通路83を閉鎖する一方で第3室37と分岐通路85とを開通させる第2位置V2との間で動作可能に構成されている。切替弁86の当該動作はECU60によって制御される。燃料供給装置2Iはフィード圧の切替動作に切替弁86の動作が組み合わされるため、燃圧を機関温度に応じて連続的に変化させる状態と、その連続的な変化を中止させる状態とを切り替えることができるようになる。
図26は本発明の第9の形態に係る燃料供給装置が適用された内燃機関の燃料供給系を模式的に示している。なお、以下においては、第8の形態と共通する構成には同一の参照符号を図面に付して重複する説明を省略する。燃料供給装置2Iは、油圧導入通路83から分岐して低圧接続通路50に接続される分岐通路85と、油圧導入通路83の分岐位置に設けられた通路切替手段としての切替弁86とを備えている。切替弁86は、分岐通路85を閉鎖する一方で第3室37と油圧導入通路83とを開通させる第1位置V1と、油圧導入通路83を閉鎖する一方で第3室37と分岐通路85とを開通させる第2位置V2との間で動作可能に構成されている。切替弁86の当該動作はECU60によって制御される。燃料供給装置2Iはフィード圧の切替動作に切替弁86の動作が組み合わされるため、燃圧を機関温度に応じて連続的に変化させる状態と、その連続的な変化を中止させる状態とを切り替えることができるようになる。
図27はECU60が行う第9の形態に係る制御内容を図示した説明図である。この図から明らかなように、第9の形態に係る制御は機関温度に応じて燃圧を連続的に変化させる状態とそれを中止させる状態とを内燃機関1の負荷に応じて切り替えている。内燃機関1の負荷が高負荷側の閾値Kl2を上回る場合は燃圧が高圧に設定された高圧噴射を行い、内燃機関1の負荷が低負荷側の閾値Kl1を下回る場合はフィード圧と同一の燃圧による低圧噴射が行われる。そして、内燃機関1の負荷が閾値Kl1以上で閾値Kl2以下の場合は機関温度に応じて燃圧を連続的に変化させる燃料噴射が行われる。機関温度が低く負荷が中程度の場合に燃圧が高圧に設定されるため、当該条件で弊害が顕著になるオイル希釈を抑制することができる。
図28は図27の制御を実現するためにECU60が行う制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU60のROMに保持されており、適時に読み出されて所定間隔で繰り返し実行される。ステップS91において、ECU60は負荷率Klの判定を行う。その判定の結果、負荷率Klが低負荷側の閾値Kl1未満である場合(Kl<Kl1)はステップS92に、負荷率Klが高負荷側の閾値Kl2を超える場合(Kl>Kl2)はステップS93に、負荷率Klが閾値Kl1以上で閾値Kl2以下の場合(Kl1≦Kl≦Kl2)はステップS95にそれぞれ進む。
ステップS92では、低圧噴射を行うべくフィード圧Plが高圧P2となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御して、その後ルーチンを終える。なお、低圧噴射を行う際には切替弁86の弁位置Vvは第1位置V1又は第2位置V2のどちらに制御してもよい。ステップS93では、高圧噴射を行うべくフィード圧Plが低圧P1となるようにECU60がプレッシャーレギュレータ15を制御してステップS95に進む。ステップS95では、切替弁86の弁位置Vvが第2位置V2に設定されるように切替弁86を制御して今回のルーチンを終える。
ステップS94では、機関温度に応じて燃圧が変化する燃料噴射を行うべくフィード圧Plを低圧P1に制御し、続くステップS96において弁位置Vvが第1位置V1に設定されるように切替弁86を制御してルーチンを終える。なお、以上の制御を成立させる前提として、第3室37に導かれる油圧の最大値が高圧P1以下に設定されている必要がある。ECU60が図28のルーチンを実行することにより、ECU60は本発明に係る制御手段として機能する。
(第10の形態)
図29は本発明の第10の形態に係る燃料供給装置に適用される圧力調整機構を示しており、図30は図29のXXX-XXX線に関する圧力調整機構の断面を示している。図示された圧力調整機構30には、可動部材32の後端面32aに固定されたリング状の突部90が設けられている。突部90は図29の右側、即ち可動部材32が燃料導入通路33を開通させる側に突出しており、可動部材32が移動したときには突部90の先端部91がケーシング31に突き当たる。従って、可動部材32とケーシング31との間に突部90が介在するので、突部90がケーシング31の内壁31aに突き当たる際にはこれらの間に隙間Sが確保された状態となる。これにより、可動部材32の後端面32aがケーシング31の内壁31aに密着して吸い付いてしまうスクイーズ現象の発生を防止できる。従って、燃料導入通路33が開通したままの状態となる不具合を防止できる。また、突部90には半径方向に向かって延びて突部90の半径方向内外を連通する複数の貫通孔92が形成されている。これにより、突部90がケーシング31に突き当たった際に突部90の内外に圧力差が生じないため、スクイーズ現象の発生を更に効果的に防止することができる。
図29は本発明の第10の形態に係る燃料供給装置に適用される圧力調整機構を示しており、図30は図29のXXX-XXX線に関する圧力調整機構の断面を示している。図示された圧力調整機構30には、可動部材32の後端面32aに固定されたリング状の突部90が設けられている。突部90は図29の右側、即ち可動部材32が燃料導入通路33を開通させる側に突出しており、可動部材32が移動したときには突部90の先端部91がケーシング31に突き当たる。従って、可動部材32とケーシング31との間に突部90が介在するので、突部90がケーシング31の内壁31aに突き当たる際にはこれらの間に隙間Sが確保された状態となる。これにより、可動部材32の後端面32aがケーシング31の内壁31aに密着して吸い付いてしまうスクイーズ現象の発生を防止できる。従って、燃料導入通路33が開通したままの状態となる不具合を防止できる。また、突部90には半径方向に向かって延びて突部90の半径方向内外を連通する複数の貫通孔92が形成されている。これにより、突部90がケーシング31に突き当たった際に突部90の内外に圧力差が生じないため、スクイーズ現象の発生を更に効果的に防止することができる。
本発明は上記各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。本発明の燃料供給装置は、上記各形態のように筒内直噴型の火花点火内燃機関に適用して実施できる他、ディーゼル機関にも適用して実施することも可能である。ディーゼル機関に適用した場合には、各気筒に燃料を分配するコモンレールが本発明に係る分配手段に相当することになる。また、上記各形態は単独で又は、矛盾を生じない限度において任意に組み合わせて実施することができる。
1 内燃機関
6 低圧燃料ポンプ
7 高圧燃料ポンプ
9 低圧通路
26 加圧室
30 圧力調整機構
31 ケーシング
32 可動部材
33 燃料導入通路
35 第1室
36 第2室
37 第3室
50 低圧接続通路
60 ECU(制御手段)
6 低圧燃料ポンプ
7 高圧燃料ポンプ
9 低圧通路
26 加圧室
30 圧力調整機構
31 ケーシング
32 可動部材
33 燃料導入通路
35 第1室
36 第2室
37 第3室
50 低圧接続通路
60 ECU(制御手段)
Claims (15)
- 燃料タンクから燃料を汲み上げる低圧燃料ポンプと、内燃機関にて駆動される高圧燃料ポンプと、前記低圧燃料ポンプと前記高圧燃料ポンプとを接続する低圧通路と、前記高圧燃料ポンプにて加圧された燃料を前記内燃機関の各気筒に分配するための分配手段と、を具備し、前記高圧燃料ポンプは、前記低圧燃料ポンプから供給された燃料を加圧する加圧室と、前記加圧室に接続されて前記分配手段内の圧力を調整可能な圧力調整機構と、を備えた内燃機関の燃料供給装置において、
前記圧力調整機構は、ケーシングと、前記ケーシングに形成されて前記加圧室に通じる燃料導入通路と、前記ケーシング内に移動可能に設けられてその移動により前記燃料導入通路を開通及び閉鎖できる可動部材と、前記ケーシング内に形成されて前記可動部材の移動により前記燃料導入通路が開通したときに前記燃料導入通路と通じる第1室と、前記ケーシング内に形成されて前記分配手段内の燃料が導入されるとともに、その燃料の圧力により前記可動部材を前記燃料導入通路が開通する側へ付勢する第2室と、前記可動部材を前記燃料導入通路が閉鎖する側へ付勢する付勢部材と、前記ケーシング内に形成されて前記可動部材を挟んで前記第2室の反対側に位置し前記付勢部材が内部に設けられた第3室と、を有し、
前記低圧通路から分岐して前記圧力調整機構の前記第1室又は前記第3室のいずれか一方に接続された低圧接続通路を更に具備することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。 - 前記低圧接続通路が前記第1室に接続され、
前記第3室と前記燃料タンクとを接続するリターン通路を更に具備する請求項1に記載の燃料供給装置。 - 前記低圧接続通路が前記第3室に接続され、
前記第1室と前記燃料タンクとを接続するリターン通路を更に具備する請求項1に記載の燃料供給装置。 - 前記リターン通路は、所定の設定圧力で開弁するリリーフ弁を介して前記分配手段に接続されている請求項2又は3に記載の燃料供給装置。
- 前記ケーシングと前記可動部材との間に所定のクリアランスを設定することにより前記第2室と前記第3室との間での燃料漏れを許容するクリアランスシール部が前記ケーシングと前記可動部材との間に設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
- 前記ケーシングと前記可動部材との間に所定のクリアランスを設定することにより前記第1室と前記第2室との間での燃料漏れを許容するクリアランスシール部が前記ケーシングと前記可動部材との間に設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
- 前記低圧通路内の圧力を変化させる調圧手段と、前記内燃機関の負荷が高い場合に前記低圧通路内の圧力が高く、前記内燃機関の負荷が低い場合に前記低圧通路内の圧力が低くなるように、前記調圧手段を制御する制御手段と、を更に具備する請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
- 前記低圧接続通路から分岐して前記リターン通路に接続される分岐通路と、前記低圧接続通路の分岐位置に設けられて、前記分岐通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記低圧接続通路とを開通させる第1位置と前記低圧接続通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記分岐通路とを開通させる第2位置との間で動作可能な通路切替手段と、を更に具備する請求項3に記載の燃料供給装置。
- 前記内燃機関の負荷が高い場合は前記第1位置に、前記内燃機関の負荷が低い場合は前記第2位置に動作するように、前記通路切替手段を制御する制御手段と、を更に具備する請求項8に記載の燃料供給装置。
- 前記低圧接続通路が前記第1室に接続され、
前記第3室と前記内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁下流の負圧源とを接続する負圧導入通路を更に具備する請求項1に記載の燃料供給装置。 - 前記負圧導入通路から分岐して前記リターン通路に接続される分岐通路と、前記負圧導入通路の分岐位置に設けられて、前記分岐通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記負圧導入通路とを開通させる第1位置と前記負圧導入通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記分岐通路とを開通させる第2位置との間で動作可能な通路切替手段と、を更に具備する請求項10に記載の燃料供給装置。
- 前記低圧接続通路が前記第1室に接続され、
前記第3室と前記内燃機関の油圧源とを接続する油圧導入通路を更に具備する請求項1に記載の燃料供給装置。 - 前記油圧導入通路から分岐して前記低圧接続通路に接続される分岐通路と、前記油圧導入通路の分岐位置に設けられて、前記分岐通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記油圧導入通路とを開通させる第1位置と前記油圧導入通路を閉鎖する一方で前記第3室と前記分岐通路とを開通させる第2位置との間で動作可能な通路切替手段と、を更に具備する請求項12に記載の燃料供給装置。
- 前記第1室と前記第2室との間及び前記第2室と前記第3室との間の少なくとも一方には、燃料室間の燃料漏れを阻止できかつ前記可動部材の移動方向に弾性変形可能なシール部材が前記ケーシング及び前記可動部材のそれぞれに固定されている請求項1〜11のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
- 前記圧力調整機構には、前記可動部材が前記燃料導入通路を開通する側に移動したときに前記可動部材と前記ケーシングとの間に隙間が確保された状態で前記ケーシングの内壁又は前記可動部材の後端面に突き当たる突部が設けられている請求項1〜14のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008334040A JP2010156228A (ja) | 2008-12-26 | 2008-12-26 | 内燃機関の燃料供給装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008334040A JP2010156228A (ja) | 2008-12-26 | 2008-12-26 | 内燃機関の燃料供給装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2013018131A1 (ja) * | 2011-08-01 | 2013-02-07 | トヨタ自動車株式会社 | 燃料供給装置 |
JP2017517669A (ja) * | 2014-04-21 | 2017-06-29 | スタナダイン エルエルシー | シングルプランジャ型燃料ポンプの圧力解放弁 |
-
2008
- 2008-12-26 JP JP2008334040A patent/JP2010156228A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013018131A1 (ja) * | 2011-08-01 | 2013-02-07 | トヨタ自動車株式会社 | 燃料供給装置 |
US8944030B2 (en) | 2011-08-01 | 2015-02-03 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Fuel supply apparatus |
JP2017517669A (ja) * | 2014-04-21 | 2017-06-29 | スタナダイン エルエルシー | シングルプランジャ型燃料ポンプの圧力解放弁 |
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