JP2010154805A - 水溶性多糖類からバイオエタノールを製造する方法 - Google Patents

水溶性多糖類からバイオエタノールを製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶性多糖類からバイオエタノールを安価且つ効率的に製造する。
【解決手段】微生物作用により、水溶性多糖類の糖化と、C5糖/C6糖並行アルコール発酵とを行い、バイオエタノールを生成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性多糖類からバイオエタノールを製造する方法に関する。
循環型社会の構築に向けて、あるいは地球温暖化の抑制に向けて、森林バイオマスを有効に使おうという考え方が広く定着しつつある。かかる森林バイオマスの利用方法の中でも、森林バイオマスからバイオエタノールを生産しようとする試みは、環境的にも産業的にも重要な位置を占めており、世界各地でその試みが精力的に行われている。
日本、特に信州地方では戦後、多くのカラマツ(Larix leptolepis)が植林されたが、その建材としての利用率は低く、間伐材は放置されている。よってカラマツは、カラマツ林床にしばしば群生するクマザサ(Sasa nipponica、ミヤコザサ)とともに、日本、特に信州地方に豊富に存在するバイオマス資源であり、それらの高度利用が求められている。
しかしながら、森林バイオマスを用いてバイオエタノールを製造する場合、その糖化処理が容易ではなく、薬剤を用いて処理する場合には、環境に与える影響が懸念される。
また、代表的な森林バイオマスにはセルロースやヘミセルロースがあるが、セルロース系バイオマスの糖化・発酵に関しては、セルロースが水不溶性であることが桎梏となり、実用的ではないとされている。
一方、カラマツ、シラカバ、カエデ等の樹木や、クマザサ等の植物には、アラビノガラクタンやキシログルカン等の水溶性多糖類が多量に含まれているが、かかる水溶性多糖類を利用して、バイオエタノールを安価且つ効率的に生産しようとする試みはなかった。
本発明は、水溶性多糖類からバイオエタノールを安価且つ効率的に製造する方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、微生物を適切に組み合わせて作用させ、水溶性多糖類の糖化と、C5糖/C6糖並行アルコール発酵とを同時に行わせることによって、水溶性多糖類からバイオエタノールを安価且つ効率的に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の主旨は、以下の通りである。
(1)水溶性多糖類からバイオエタノールを製造する方法であって、
微生物作用により、水溶性多糖類の糖化と、C5糖/C6糖並行アルコール発酵とを行い、バイオエタノールを生成する工程を含んでなる方法。
(2)水溶性多糖類が森林バイオマス由来である、第1項に記載の方法。
(3)水溶性多糖類がカラマツ及び/又はクマザサ由来である、第2項に記載の方法。
(4)水溶性多糖類がアラビノガラクタン及び/又はキシログルカンである、第1〜3項のいずれかに記載の方法。
(5)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)由来のβ−グルコシダーゼを用いて水溶性多糖類の糖化を行う、第1〜4項のいずれかに記載の方法。
(6)黒麹黴を用いて水溶性多糖類の糖化を行う、第1〜5項のいずれかに記載の方法。
(7)β−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母を用いて、水溶性多糖類の糖化及びアルコール発酵を行う、第1〜6項のいずれかに記載の方法。
(8)β−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母が、β−グルコシダーゼ遺伝子でサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC7323を形質転換した株である、第7項に記載の方法。
(9)カンジダ・アラビノ・フェルメンタス(Candida arabino fermentans)JCM10727T及び/又はカンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840Tを用いてC5糖アルコール発酵を行う、第1〜8項のいずれかに記載の方法。
(10)ザイモモナス・モビリス・モビリス亜種(Zymomonas mobilis subsp. mobilis)NBRC13756を用いてC6糖アルコール発酵を行う、第1〜9項のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、水溶性多糖類からバイオエタノールを安価且つ効率的に製造することが可能となる。
本発明の方法は、水溶性多糖類からバイオエタノールを製造する方法であって、微生物作用により、水溶性多糖類の糖化と、C5糖/C6糖並行アルコール発酵とを行い、バイオエタノールを生成する工程を含んでなる。
本発明の方法は、植物由来の多糖類、中でも水溶性の多糖類を原料とする。水溶性多糖類は、前処理の必要がなく、糖化性も高いことから、セルロース等の水不溶性の多糖類よりも容易且つ効率的に、バイオエタノールを生成することが可能となる。
水溶性多糖類の原料としては、通常は森林バイオマスを用いる。森林バイオマス由来のβ−グリコシド結合を主体とする多糖類(いわゆる木質系バイオマス)は、米やトウモロコシ等の作物由来の多糖類と異なり、ヒトの食料資源と競合しないので、食物価格に影響を与えることなく、安価にバイオエタノールを生成することが可能となる。
森林バイオマスとしては、限定されるものではないが、カラマツ、クマザサ、シラカバ、カエデ等が挙げられる。これらの樹木や植物は、水溶性多糖類が比較的豊富に含まれることから好ましい。中でも、日本、特に信州地方に豊富に存在するバイオマス資源である、カラマツ及び/又はクマザサを用いることが好ましい。
水溶性多糖類の種類としては、限定されるものではないが、アラビノガラクタン、キシログルカンが好ましい。アラビノガラクタンはカラマツに、キシログルカンはクマザサに、それぞれ豊富に含まれている。
森林バイオマスから水溶性多糖類を抽出する手法は、制限されるものではないが、例えば、森林バイオマスを公知の粉砕手法によって粉末化し、得られた粉末に水等の抽出溶媒を加えて抽出を行う手法が挙げられる。
例えば、森林バイオマスとしてカラマツ材を用いる場合、カラマツ材を必要に応じて細断した上で、公知の粉砕機を用いて粉砕し、平均粒径450μm以下(40メッシュパス)、好ましくは300μm以下(60メッシュパス)の粉末とする。得られたカラマツ粉末に対して蒸留水を加え、適当な処理を加えて抽出を行う。抽出のための処理は特に制限されず、振盪機による振盪処理、ストマッカーによるホモゲナイズ処理、ミキサーによる混合処理、スターラーやガラス棒による攪拌処理等、任意の手法を用いることが可能である。抽出後、遠心分離等によってカラマツ材の残滓を分離し、水溶性多糖類(主にアラビノガラクタン)の抽出液を得る。
かかるカラマツ材からの水溶性多糖類の詳細な抽出法の例としては、実施例の欄に記載の手法が挙げられる。また、クマザサ葉についても、同様の手法で水溶性多糖類(主にキシログルカン)の抽出を行うことが可能である。
なお、得られた抽出液における森林バイオマス由来の水溶性多糖類の含有量については、例えばフェノール硫酸法による全糖濃度測定等によって確認することができる。
なお、本発明の方法の原料としては、水溶性多糖類のみからなる原料のほか、水溶性多糖類に加えて不水溶性の多糖類(例えば、セルロース系多糖類等)が混在する原料も用いることができる。但し、その場合でも、水溶性多糖類の比率が高いことが好ましい。
また、原料となる水溶性多糖類は一種でもよいが、二種以上の水溶性多糖類の組み合わせからなるものでもよい。
多糖類からのエタノールの製造は、多糖類の糖化による糖の生成と、糖のアルコール発酵によるエタノールの生成の二つの工程を伴う。本発明では、適切に組み合わせた複数の微生物の作用により、これらの糖化及び発酵を並行して行う。これにより、糖化効率及び発酵効率を向上させ、効率的にバイオエタノールを生成することが可能となる。
また、森林バイオマス等の植物系バイオマス由来の多糖類には、グルコースやガラクトース等のヘキソース(C6糖と略す)に加えて、アラビノースやキシロース等のペントース(C5糖と略す)が共存している。本発明では、適切に組み合わせた複数の微生物の作用により、これらのC5糖及びC6糖のアルコール発酵を並行して行う(C5糖/C6糖並行アルコール発酵)。これにより、C6糖に加えてC5糖の発酵効率を向上させ、効率的にバイオエタノールを生成することが可能となる。
具体的に、水溶性多糖類の糖化には、任意の糖化酵素を用いることが可能であるが、本発明では、黴由来の糖化酵素、及び/又は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属(ビフィズス菌)由来のβ−グルコシダーゼを用いることが好ましい。
黴由来の糖化酵素を用いる場合、カビは好気性であるため、これをそのまま発酵系に用いることはできない。よって、糖化能に優れた麹黴、特に黒麹黴を用いることが好ましい。また、予め糖化酵素を大量に含む種麹(麹スターター)を作製し、これを糖化・発酵系に加えることが好ましい。種麹(麹スターター)の作製法としては、制限されるものではないが、例えば後出の実施例の欄で詳述する手法が挙げられる。
ビフィズス菌由来のβ−グルコシダーゼを用いる場合、その種類は制限されるものではないが、実施例の欄で後述する本発明者等の検討によれば、乳児の腸内菌叢由来のビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ブレビ(Bifidobacterium breve)が特に好ましい。
β−グルコシダーゼを糖化・発酵系に加える手法は、制限されるものではないが、ビフィズス菌のβ−グルコシダーゼ遺伝子を大腸菌に形質転換し、β−グルコシダーゼを大量発現させ、得られたβ−グルコシダーゼ(組み換えβ−グルコシダーゼ)を糖化・発酵系に加えることが好ましい。組み換えβ−グルコシダーゼの作製法としては、制限されるものではないが、例えば後出の実施例の欄で詳述する手法が挙げられる。
或いは、β−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母を用いて、水溶性多糖類の糖化及びアルコール発酵を並行して行うことも好ましい。このようにβ−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母の例として、本発明者等は、後出の実施例の欄で詳述するように、β−グルコシダーゼ遺伝子でサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC7323を形質転換した組み換え株を作製した(製品評価技術基盤機構寄託申請済;微生物の識別の表示Saccharomyces cerevisiae ON;受領番号NITE AP-682;受領日2008年12月2日)。よって、かかる組み換え株を糖化・発酵に用いることが好ましい。
但し、β−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母を用いる場合でも、十分な糖化効率及び発酵効率を得るためには、他の糖化酵素(例えば、麹黴由来の糖化酵素)及び酵母(後述する各種の酵母)と併用することが好ましい。
一方、水溶性多糖類の発酵には、C5糖アルコール発酵を行う微生物と、C6糖アルコール発酵を行う微生物とを組み合わせて用いる。
C5糖アルコール発酵を行う微生物は、制限されるものではないが、例えば、アラビノースを発酵可能な微生物としては、カンジダ・アラビノ・フェルメンタス(Candida arabino fermentans)JCM10727T等が挙げられる。また、キシロースを発酵可能な微生物としては、カンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840T、パチソレン・タノフィラス(Pachysolen tannophilus)JCM1633T、ピキア・セゴビエンシス(Pichia segobiensis)JCM10740T等が挙げられる。中でも、実施例の欄で後述する本発明者等の検討によれば、カンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840Tが好ましい。
C6糖アルコール発酵を行う微生物としては、制限されるものではないが、ザイモモナス・モビリス・モビリス亜種(Zymomonas mobilis subsp. mobilis)NBRC13756が挙げられる。
糖化及び発酵に用いられる微生物は、上述の条件に基づいて選択されるが、特にアラビノガラクタン及びキシログルカンを含む水溶性多糖類の糖化及び発酵に好適な微生物種の組み合わせを以下に挙げる。
水溶性多糖類の糖化及び発酵の手順は特に制限されず、当業者に公知の任意の手法を用いればよいが、通常は上述の条件に基づいて選択された組み合わせの微生物を水溶性多糖類に加え、その微生物に応じた適切な条件下で培養し、糖化及び発酵を行わせればよい。例えば、アラビノガラクタンを含む水溶性多糖類について、上記表1に記載の組み合わせの微生物種を用いて糖化・発酵を行う場合、その条件の例としては、後述の実施例に記載の条件が挙げられる。
以上、本発明をその具体的な実施形態に即して説明したが、以上の説明はあくまでも実施形態の一例であって、本発明は上述の説明に限定されるものではない。当業者には明らかなように、本発明の目的及び趣旨に反しない範囲において、上述の実施形態に任意の変更を加えて実施することが可能である。
続いて、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
1.水溶性多糖類の効率的抽出法
森林バイオマスから水溶性多糖類を効率的に抽出する手法の検討を行った。
まず、森林バイオマスとしてカラマツ芯材を用い、水溶性多糖類であるアラビノガラクタンの抽出を試みた。
すなわち、平均直径約30cm(樹齢約40年)の新鮮なカラマツ材を、屋内に一週間放置した後、約1cmの厚さにスライスし、約1cm×1cm角のスティック状に切りそろえた。これを屋内で一週間自然乾燥させた後、約10cmの長さに細断し、公知の粉砕機で平均粒径約300μm以下(60メッシュパス)まで粉砕した。
このカラマツ粉末10gに対して100mLの蒸留水を加え、以下の5種類の方法で抽出液(1)〜(5)を調製した。
(1)振盪抽出液〔振盪機(IUCHIPI301型)を用いて、室温で5時間振盪後、1.3krpmで5分間遠心分離して得られた上清液〕
(2)ストマッカー抽出液〔ストマッカー(オルガノBA6021型)を用いて、室温で1時間ホモゲナイズ後、(1)と同様に遠心分離して得られた上清液〕
(3)ミキサー抽出液〔ミキサー(ZOJIRUSHI BM−FG08型)を用いて,室温で5分間ミキシング後、(1)と同様に遠心分離して得られた上清液〕
(4)スターラー抽出液〔スターラー(ADVANTEC SR500型)を用いて,室温で5分間攪拌後、(1)と同様に遠心分離して得られた上清液〕
(5)攪拌機器を用いずに調製した抽出液〔10分おきに1回、ガラス棒で1分間の攪拌処理を1時間にわたって加えた後、(1)と同様に遠心分離して得られた上清液〕
上記(1)〜(5)のカラマツ抽出液について、フェノール硫酸法を用いて、以下の手順で全糖濃度を測定した。
試験管にサンプル(上記(1)〜(5)のカラマツ抽出液)100μLをとり、これに5%フェノールを0.5mL加えてよく混合し、得られた溶液に濃硫酸2.5mLを勢いよく注入した。サンプル中に糖が存在する場合には黄〜茶褐色となる。490nmの吸光度を測定し、標準物質にガラクトースを用いて同様にして得られた検量線に基づいて、サンプル中の全糖濃度を算出した。検出限界は0.01mg/mLである。
測定結果を下記表3に示す。表3から明らかなように、(5)攪拌機器を用いずに調製した抽出液でも、5.08%という高濃度の糖が回収できることが明らかにされた。
また、森林バイオマスとしてクマザサを用い、同様の手順で抽出を行うことにより、キシログルカンを抽出できることを確認した。
2.水溶性多糖類の効率的糖化法
森林バイオマス由来水溶性多糖類が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属(ビフィズス菌)由来のβ−グルコシダーゼによってどの程度、加水分解されるかについて確認した。まず、β−グルコシダーゼ活性の強い優良なビフィドバクテリウム属のスクリーニングを行った。その結果を表4に示す。表4から明らかなように、B.ブレビ(B. breve )JCM1273が強い活性を有することが明らかになった。
そこで、B.ブレビのβ−グルコシダーゼ遺伝子をクローニングし、大腸菌に形質転換し、組換え体を調製した。組換え大腸菌を用いてβ−グルコシダーゼを大量発現し、得られた組換えβ−グルコシダーゼの糖分解能力に関する検討を行った。その結果、この組換えβ−グルコシダーゼは、β−グリコシド結合を主体とするセルロース型の多糖類を分解する能力を持つことが明らかにされた。
一方、黒麹黴(Aspergillus awamori NBRC 4388)による加水分解の確認も行った。3%アラビノガラクタン含有(100mLあたり3gのアラビノガラクタン)の糖資化性培地を調製し、黒麹黴を接種し、30℃で2日間、激しく振盪培養したものを薄層クロマトグラフィー(TLC)にかけた。また、アラビノガラクタンの代わりにガラクトースを用いて、同様の実験を行った。得られたTLCの結果を図1に示す。図1において、「AG」はアラビノガラクタンを表し、「G」はガラクトースを表す。図1から明らかなように、黒麹黴はアラビノガラクタンを分解していることが認められた。
3.C5/C6並行発酵法
植物系バイオマス多糖にはグルコースやガラクトースなどのヘキソース(C6糖と略す)に加えて、アラビノースやキシロースなどのペントース(C5糖と略す)が共存していることから、これらを同時に発酵させる技術(C5/C6並行発酵)の確立が求められる。本実施例では、C6糖発酵微生物の代表である酒母(サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC2373)に加えて、エタノール生産細菌(ザイモモナス・モビリス・モビリス亜種(Zymomonas mobilis subsp. mobilis)NBRC13756)も利用した。また、バイオマスに含まれるアラビノースやキシロースといったC5糖を発酵するために、本実施例ではアラビノース発酵酵母(カンジダ・アラビノ・フェルメンタス(Candida arabino fermentans)JCM10727T)及びキシロース発酵酵母(カンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840T、パチソレン・タノフィラス(Pachysolen tannophilus)JCM1633T、ピキア・セゴビエンシス(Pichia segobiensis)JCM10740T)を用いた。イースト・ニトロジェン・ベース(Yeast nitrogen base)にN源として硫酸アンモニウムを加え、これにアラビノース又はキシロースを5%(w/v)加えて30℃で2日間、静置培養した。
その結果、いずれの培地でも微生物の増殖に基づく培地の懸濁がみられたことから、カンジダ・アラビノ・フェルメンタス(Candida arabino fermentans)JCM10727Tはアラビノースを、また、カンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840T、パチソレン・タノフィラス(Pachysolen tannophilus)JCM1633T、ピキア・セゴビエンシス(Pichia segobiensis)JCM10740Tはいずれもキシロースを発酵できることが示された。キシロースについては、中でもカンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840Tのキシロース発酵能が最も優れていることが明らかになった。
4.種麹(麹スターター)の調製及びこれを用いた並行複発酵法
カビは好気性のため、これをそのまま発酵システムに用いることはできない。糖化能に優れた麹カビを用いて糖化酵素を大量に含む種麹(麹スターター)を調製する必要がある。そこで本実施例では、オートクレーブ(121℃、1.2atm、15分)滅菌した粒径1〜2mmのカラマツ芯材チップに黒麹黴(A. awamori NBRC 4388)胞子を噴霧したものを28℃で3日間培養して、カラマツ芯材種麹(麹スターター)を製造した。以下の酵母との並行複発酵では、森林バイオマス由来の水溶性多糖類にこの麹スターター及びアルコール発酵微生物を加え、糖化と発酵を同時に行なわせた。
5.ビフィズス菌由来の組換えβ−グルコシダーゼ調製法
ビフィズス菌B.ブレビ(B. breve)JCM1273由来のβ−グルコシダーゼ遺伝子を大腸菌に発現させ、組換え酵素を調製した。得られた組換えβ−グルコシダーゼのβ−グルカン分解スペクトラムを調べた。その結果を以下の表5に示す。表5から明らかなように、β1→2、β1→3、β1→4のいずれのベータ結合でも、50%以上の分解性を示すことが明らかになった。また、基質特異性にはバラエティーがあり、pNP−β−D−ガラクトシドは約50%、pNP−β−D−キシロシドは5%であった。
このことから、森林バイオマス多糖の糖化には、ビフィズス菌由来の組換えβ−グルコシダーゼに加えて、前出の黒麹黴由来の糖化酵素を併用することが好ましいことが示唆された。ただし、形質転換大腸菌によって組換えβ−グルコシダーゼが安価でかつ容易に調製可能であることから、以下の実験では、並行複発酵の際に黒麹黴スターターに加えて、組換えβ−グルコシダーゼも加えることにした。
6.β−グルカン糖化能を有するアルコール発酵酵母の調製法
ビフィズス菌B.ブレビ(B. breve)JCM1273由来のβ−グルコシダーゼ遺伝子を、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の菌体外分泌ベクターであるpGAPαベクターのGAPプロモーター下流に導入してβ−グルコシダーゼ分泌ベクターを作成し、かかるβ−グルコシダーゼ分泌ベクターでサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC7323を形質転換することにより、β−グルカン糖化能を有するアルコール発酵酵母(形質転換サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae ON); NITE AP-682)を創出した。この組換え酵母を用いて、アラビノガラクタンを唯一のC源として含有する5%アラビノガラクタン培地〔イースト・ニトロジェン・ベース(Yeast nitrogen Base)W/O(Difco)1.7g、(NH42SO45.0g、アラビノガラクタン5g、水100mL〕で30℃、静置という条件下で5日間培養し、培養後の培養液を高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)で分析したところ、図2に示すように、エタノールの生産が確認された。
なお、図2のHPLCの測定条件は以下の通りである。
使用カラム:Shodex SH1011(昭和電工)
流速:1.0ml/分
検出器:RI-1530
溶出溶媒:0.01N H2SO4
また、上述の組換え酵母のβ−グルカン糖化能を調べるべく、以下の実験を行った。前出の5%アラビノガラクタン培地を培養管に入れ、上述の組換え酵母(形質転換サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae ON);NITE AP-682)と、前出の麹スターターとを播種し、30℃、静置という条件下で5日間培養した。また、上述の組換え酵母の代わりに野生型酵母(サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))を用いた系で、同様の実験を行った。培養後の培養管の写真を図3(a)及び(b)に示す。野生型酵母を用いた系(図3(a))に比べ、上述の組換え酵母を用いた系(図3(b))の方が、明らかに多くのガスを産出していることが認められた。
7.組換え酵酵母の並行複発酵系への応用
水溶性森林バイオマス多糖の並行複発酵系におけるβ−グルコシダーゼ遺伝子組換え酵母の応用を検証すべく、上記項目1で得られたカラマツ抽出液(5)(攪拌機器を用いずに調製した抽出液)に対して、上記表1に示す微生物種の組合せを用いて糖化・発酵を行い、エタノール生産を試みた。糖化・発酵は、水溶性多糖類に対して上記表1に示す微生物種の組合せを加え、30℃、静置という条件下で5日間培養することにより実施した。培養後、培養液を高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)で分析した。得られたHPLCチャートを図4に示す。図4から明らかなように、エタノールの生産が確認された。
なお、図4のHPLCの測定条件は以下の通りである。
使用カラム:Shodex SH1011(昭和電工)
流速:1.0ml/分
検出器:RI-1530
溶出溶媒:0.01N H2SO4
また、キシログルカンを主体とする水溶性多糖類の糖化・発酵には、上記表2に示す微生物種の組合せが有効であることも確認された。
8.組換え酵酵母の並行複発酵系への応用
以上の実施例で検証した手法は、シラカバやカエデのように、水溶性多糖類を多く含有し、それらを容易に抽出できる可能性のある樹種に対しても、そのまま適用することができることが予想される。
黒麹黴(A. awamori)によるアラビノガラクタン(AG)の加水分解性を示すTLCの結果である。 組換え酵母のアラビノガラクタン発酵能を示すHPLCチャートである。 組換え酵母のアラビノガラクタン発酵能を示す発酵管を用いた実験結果を示す写真である。(a)は、対照として野生型酵母を用いて発酵を行った発酵管を表し、(b)は、組換え酵母を用いて発酵を行った発酵管を表す。 組換え酵母を用いた並行複発酵によるアラビノガラクタンからのエタノール生産例を示すHPLCチャートである。

Claims (10)

  1. 水溶性多糖類からバイオエタノールを製造する方法であって、
    微生物作用により、水溶性多糖類の糖化と、C5糖/C6糖並行アルコール発酵とを行い、バイオエタノールを生成する工程を含んでなる方法。
  2. 水溶性多糖類が森林バイオマス由来である、請求項1に記載の方法。
  3. 水溶性多糖類がカラマツ及び/又はクマザサ由来である、請求項2に記載の方法。
  4. 水溶性多糖類がアラビノガラクタン及び/又はキシログルカンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)由来のβ−グルコシダーゼを用いて水溶性多糖類の糖化を行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 黒麹黴を用いて水溶性多糖類の糖化を行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. β−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母を用いて、水溶性多糖類の糖化及びアルコール発酵を行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. β−グルコシダーゼ産生能を有するアルコール発酵酵母が、β−グルコシダーゼ遺伝子でサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC7323を形質転換した株である、請求項7に記載の方法。
  9. カンジダ・アラビノ・フェルメンタス(Candida arabino fermentans)JCM10727T及び/又はカンジダ・シャハタエ・シャハタエ変種(Candida shehatae var. shehatae)JCM9840Tを用いてC5糖アルコール発酵を行う、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. ザイモモナス・モビリス・モビリス亜種(Zymomonas mobilis subsp. mobilis)NBRC13756を用いてC6糖アルコール発酵を行う、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
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