JP2010150501A - 固体状重金属処理剤及び製造方法並びにその用途 - Google Patents

固体状重金属処理剤及び製造方法並びにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の固体状の重金属処理剤はキレート剤の他に大量の賦形剤(担体)を含むものであり、重金属処理性能が低かった。
【解決手段】ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤は大気中の水分の影響による重量(有効成分含有率)の変動がなく、結晶粒子の固結がないため処理剤の輸送性並びに長期安定性に優れる。また保存時及び使用時(重金属含有物との直接混合)に有害ガス(硫化水素、二硫化炭素)の発生がなく、さらに有害な鉛と選択的に不溶性錯体を形成するため、効率的に重金属固定化処理が可能である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、輸送経済性、保存安定性(有効成分濃度の安定、固結防止)に優れ、使用時における安全性(有害ガス非発生)及び有害な鉛に対する反応選択性に優れる固体状の重金属処理剤を提供するものである。
アミンのカルボジチオ酸塩は飛灰、土壌、廃水等の重金属の固定化処理剤として用いられている。重金属処理剤としてのアミンのカルボジチオ酸塩は通常は30〜60%程度の水溶液が用いられているが、昨今、固体(粉末状)の重金属処理剤の要求が高まっている。
これまで、固体状の賦形剤にアミンのカルボジチオ酸塩を含む固体状の重金属処理剤が提案されている。例えば、カルボジチオ酸塩3〜30重量部に対してアルカリ水酸化物やアルカリ土類水酸化物を100重量部用いる方法(特許文献1)、ケイ酸カルシウムを担体とする方法(特許文献2)、不溶性である遷移金属のカルボジチオ酸塩を用いる方法(特許文献3)、カルボジチオ酸塩溶液を高温で噴霧乾燥したものを用いる方法(特許文献4)、デンプンにキレート剤を含ませて粉末状にしたもの(特許文献5)等がある。
しかし、従来の固形の重金属処理剤は、固体中の有効成分濃度が低いものしかなかった。さらに従来水溶液の重金属処理剤を用いているところで不溶性のカルボジチオ酸塩を水に分散してスラリーとして用いた場合、配管の詰まり等の原因となり、使い難いという問題があった。濃縮や噴霧乾燥によって固体状の重金属処理剤を得る方法では、水溶液の蒸発に多大なエネルギーが必要であり、経済的でなかった。溶媒の除去におけるエネルギー消費を避けるため、賦形剤にカルボジチオ酸塩を含ませる方法では、重金属処理剤中の賦形成分の比率が大きいため、単位重量当りの薬剤の性能が低いという問題があった。
一方、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸塩では重金属処理能が高く、有害ガスの発生がない優れた重金属処理剤として知られている(特許文献6参照)。従来のピペラジン−N、N'−ビスカルボジチオ酸塩を有効成分とする飛灰処理は、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸塩の水溶液として用いられているだけであった。
固体状のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸塩は、有機溶媒中での再結晶によって得られたピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩(固体)の無水物、4水和物(又は4.5水和物)又は6水和物が微量金属の比色分析用に用いる試薬として知られているに過ぎず、重金属処理剤としては用いられていなかった(非特許文献1〜4参照)。
特許第3895018号 特開2004−97927号 特開2003−301165号 特開2003−336035号 特開2003−113362号 特許第3391173号
明治大学研究報告 第67号 23〜30頁 (1985年) 明治大学研究報告 第67号 31〜36頁 (1985年) Spectrochemica Acta,Vol.40A,pp343−346,(1984) CHEMICA ANALITYCZNA,Vol.10,p837-844,(1965)
本発明の目的は、輸送経済性に優れ、保存中に有効成分濃度の変動がなく、固結せず保存安定性に優れ、保存時及び使用時に有害ガスの発生がなく、なおかつ有害な鉛に対する選択性の高い重金属処理剤を提供することにある。
本発明者等は、重金属処理能及び取扱い性(経済性、保存安定性、安全性)に優れた固体状の重金属処理剤について鋭意検討を重ねた結果、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩・6水和物は、当該塩の他の形態の水和物或いは無水和物にはない高い結晶性を有し、保存中に重量の変化及び固結の問題がなく、重金属含有物に直接混合して用いた場合における二硫化炭素等の有害ガスの発生を極限まで低減でき、なおかつ特に有害な鉛に対する反応選択性が高いことを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
以下に本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤について説明する。
本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤は、特に以下の主要なX線回折ピークを有する高い結晶性を有するものが好ましい。
Figure 2010150501
高い結晶性を有するピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物では、大気中の保存において有効成分(ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム)の含有量に変動がなく、保存中に固結し難いという特徴を有する。
ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの無水和物、2水和物は大気中の水分を吸収して重金属処理剤の有効成分の重量比が変化するため、重金属処理に用いる前に有効成分濃度の確認が必要となるが、本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物では、大気中の水分の吸収による重量変化がないためにその様な確認の必要がない。
本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩・6水和物を有効成分とする重金属処理剤は、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの含有量が70%以上であることが好ましい。重金属処理剤の結晶粉末が全て6水和物の場合にピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの含有量は72.3重量%である。ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物は、従来の固体状の重金属処理剤の様にアミンのカルボジチオ酸塩を他の固体塩(担体)と混合したものでなく、純粋な結晶であるため、重金属処理剤中の有効成分の含有率が高いものである。なお本発明では、6水和物の結晶の内部に無水和物或いは低水和物が一部含まれても、少なくとも粒子の表層部分を6水和物で構成することにより固結防止等の効果を発揮することができる。
本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤は、薬剤の保存時及び重金属含有物と混合して用いた際において有害ガスの発生がないものである。固体状のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの無水和物、2水和物では水溶液で用いた場合に比べて二硫化炭素の発生量の増大が認められるが、6水和物ではその様な問題が一切ない。
さらに本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤は、有害な鉛への反応選択性が高く、有害な鉛を効率的に固定化処理できる。例えば重金属含有物の重金属処理におけるピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物の鉛への反応選択性(対銅比較)は総固形分(飛灰+キレート剤)に対する水分添加量が20重量%程度の場合、2水和物、無水和物に比べ5倍以上高いものである。水分添加量が増大した場合にも、6水和物の鉛への反応選択性の優位性は維持される。
本発明の重金属処理剤を用いた重金属処理における重金属含有物及び重金属処理剤の総固形分に対する水分添加量は特に限定はないが、10重量%以上50重量%以下が好ましく、特に20重量%以上40重量%以下が好ましい。例えば重金属含有物の飛灰の処理において、水分添加量が多すぎると巨大な塊状又はスラリー状となり処理灰のハンドリングが難しくなるため、水分添加量は通常、固形分に対して20〜40重量%の範囲となるよう行われる。従って、本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤は、通常の水分添加量の飛灰処理において鉛への高い反応選択性を発揮することができる。
本発明の重金属処理剤は、安定性向上のためにさらにアルカリ水酸化物、アルカリ土類水酸化物を含有させてもよい。これらのアルカリ成分は賦形剤(担体)として用いるものではないため、その含有量はピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム成分に対して0.01〜5重量%、特に0.1〜2重量%の範囲で十分である。用いるアルカリ水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ土類水酸化物としては水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムが好ましい。
本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤の製造法は特に限定されるものではないが、以下の製造方法によって効率的に製造することができる。
ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物は、ピペラジン、二硫化炭素及び水酸化ナトリウムをピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの飽和水溶液中で反応し、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩を析出し、当該塩を水溶液から分離することによって製造することができる。
ピペラジンとピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸塩とでは、水に対する溶解度がピペラジンの方が高い(ピペラジンは約1.8モル/L、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの溶解度は0.9モル/L(約25重量%))ため、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和溶液に対してもピペラジンをさらに溶解することができる。また生成するピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの飽和水溶液は液粘性が低いため、反応性(取扱い性)に優れる。
ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸塩以外のアミンのカルボジチオ酸塩、例えばテトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等のカルボジチオ酸塩の過飽和溶液では固体が析出せずに粘調物となるため、安定な固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得ることが困難である。
本発明の方法では、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和水溶液中にピペラジンを溶解し、二硫化炭素を先に添加し、後から水酸化ナトリウムを添加することが好ましい。ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和水溶液中では、水酸化ナトリウムが過剰の状態でピペラジンと二硫化炭素を反応させるとゲル状の副生物が生成し、連続的な反応が困難となる場合がある。
本発明の方法では、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和水溶液中へのピペラジン溶解及び二硫化炭素の添加と水酸化ナトリウムの添加を交互に繰り返すことによって、連続的にピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを製造することができる。
特に好ましい実施形態としては、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの飽和水溶液中でのピペラジン、二硫化炭素及び水酸化ナトリウムの反応において先にピペラジンをピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの飽和水溶液に溶解させた後、水酸化ナトリウムに対して二硫化炭素を過剰な状態を維持して反応させる方法が例示できる。二硫化炭素を水酸化ナトリウムよりも過剰で反応した場合には固体状のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸が一旦析出するが、水酸化ナトリウムを先に添加した場合に比べて、粘性が低く、反応性及びハンドリングが良好となり、最終的には純粋なピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの結晶が得られる。特に二硫化炭素及び水酸化ナトリウムの添加をそれぞれ2回以上に分割又は時間差をつけて同時に添加する方法が好ましい。
水溶液中におけるピペラジン、二硫化炭素及び水酸化ナトリウムの反応では、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの他にピペラジン−N−カルボジチオ酸ナトリウム、チオ炭酸塩が副生する場合や未反応のピペラジンが残存する場合がある。官能基がひとつしかなく重金属処理能が低いピペラジン−N−カルボジチオ酸ナトリウムはピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムに比べて、溶解性が高いため、本発明の方法では、重金属処理能の高いピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムのみを選択的に結晶として回収することができる。
ピペラジン、チオ炭酸塩も同様に水溶性が高いために水溶液中に残存し、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムと分離できる。濃縮や、有機溶媒抽出による方法では、ピペラジン−N−カルボジチオ酸ナトリウム、ピペラジン及びチオ炭酸塩がピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムと同時に析出するという問題があるが、本発明の方法では重金属処理能の高いピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム成分を選択的に結晶として得ることが可能である。
本発明において、析出した結晶の乾燥方法は6水和物を得る方法であれば特に限定されるものではなく、析出した結晶の乾燥によって結晶性が低下しても、さらに水分を含有する雰囲気中で水和することによって再結晶化が可能であり、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物の結晶とすることができる。乾燥後の水和による結晶化は、粉砕及び/又は強制流動中で行うことが好ましい。
本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤は、重金属を含有した土壌、排水、廃棄物、焼却灰等と混合することにより、重金属の溶出を防止することができる。本発明の重金属処理剤の重金属固定化処理における使用方法は、通常の他の重金属処理剤と同様の方法が適用でき、重金属処理剤に必要に応じて水、アルカリ水酸化物や塩化鉄等のpH調整剤と適宜混合して用いてもよい。
ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物は、水に溶解した後に重金属含有物と混合して用いても良いが、水と同時に直接混合することが好ましく、特に直接混合した後に水を添加して用いることが好ましい。
本発明のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物の重金属処理剤は重金属処理能を有する成分の含有率が高く、保存時の重量変化や固結の問題がないため輸送性、保存安定性に優れ、重金属含有物と直接混合によって重金属処理が可能であり、保存時及び使用時に有害ガスの発生がなく、なおかつ有害な鉛への反応選択性が高い。
ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの無水和物、2水和物及び6水和物のX線回折図を示す。図の横軸(X軸)はX線回折における2θ値(単位はdeg)を示し、縦軸(Y軸)はX線回折におけるピークの強度を示し、スケールは任意である。6水和物は高い結晶性を有する。 ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの6水和物、2水和物及び無水和物と塩化鉛及び純水(塩化鉛とピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの水和物の総固形分に対して20重量%)を混合した際の鉛錯体の生成をX線回折で評価した図である。 ピペラジン−N、N'−ビスジチオカルバミン酸ナトリウムの6水和物、2水和物及び無水和物と塩化銅及び純水(塩化銅とピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの水和物の総固形分に対して20重量%)を混合した際の銅錯体の生成をX線回折で評価した図である。
以下発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ピペラジン61.01gを純水212.4gに40℃で溶解させた後、窒素気流中で攪拌しながら二硫化炭素106.77gと48%水酸化ナトリウム119.82gをそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムが析出したスラリー溶液が得られた。
析出したピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを濾別し、真空乾燥機で付着水分を除去、乾燥した。
得られたピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムは熱分析の結果、6水和物であり、X線回折パターンは図1に示す通り高い結晶性を有するものであった。
得られたピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を純水に溶解し13C−NMR測定を行った結果、ピペラジン及びピペラジン−N−ビスカルボジチオ酸ナトリウムは検出されなかった。
実施例2
実施例1でピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを濾別した濾液(ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの飽和水溶液)250gにさらにピペラジン42.57gと純水50.73gを加え、40℃で溶解し、窒素気流中で攪拌しながら二硫化炭素74.50gと48%水酸化ナトリウム82.19gをそれぞれ交互に2分割して滴下した。滴下終了後、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムが析出したスラリー溶液が得られた。
飽和溶液を繰り返し用いて、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸塩が得られることが確認された。
比較例1
実施例1の6水和物をさらに乾燥機中50℃、乾燥機中100℃、で乾燥し、それぞれ2水和物、及び無水和物を得た。
X線回折パターンを図1に示す。2水和物、及び無水和物は結晶性が低いものであった。
比較例2
ピペラジンをテトラエチレンペンタミンとし、テトラエチレンペンタミン88.11g、純水128.11g、二硫化炭素127.50g、48%水酸化ナトリウム156.28gとした以外は実施例1と同様の操作を行ったが、固体状のカルボジチオ酸塩は得られなかった。
(保存安定性評価1 重量変化)
実施例1及び比較例1で得られたピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの6水和物、2水和物及び無水和物を大気中に放置し、重量変化の経時変化を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2010150501
無水和物、2水和物は経時的に重量変化したが、6水和物では重量変化がなく、大気中の保存において安定であることが確認された。
大気中放置後、6水和物は固結が認められなかったが、2水和物及び無水和物は流動性の低下、容器への付着が認められた。
(重金属処理試験)
飛灰A(Pb=2500ppm)50重量部に対し、実施例1のピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を0.5部(無水和物換算)水25重量部に溶解して灰と混練、及び6水和物0.5部(無水和物換算)を直接灰に添加した後25重量部の水を灰に添加して混練した。その後、環境庁告示第13号試験に従い溶出試験を行った。
鉛の溶出はいずれも0.05ppm未満であり、環境基準を満たすものであった。
(ガス測定1)
テドラーバッグ(容積1L)中に、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの6水和物2.74g(ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム換算で2g相当)、空気を500mL装填し、室温及び65℃で1時間放置した。放置後、テドラーバッグ中のヘッドスペースの二硫化炭素濃度を検知管で測定した。
比較のため、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの2水和物及び無水和物を装填(それぞれピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム換算で6水和物と同量)し、二硫化炭素濃度を測定した。結果を表3に示す。
2水和物、無水和物では二硫化炭素の発生が認められたが、6水和物では発生がない(ND)若しくは著しく少なかった。
Figure 2010150501
(ガス測定2)
テドラーバッグ(容積1L)中に、飛灰B(Pb=2700ppm)30gに対して純水35重量%及びピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を0.74重量%装填し、混合した後空気を500mL装填し、65℃で1時間加熱した。加熱後、テドラーバッグ中のヘッドスペースの硫化水素及び二硫化炭素濃度を検知管で測定した。
飛灰C(Pb=9800ppm)に純水20重量%及びピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を3.0重量%添加し、同様のガス測定を行った。
比較のために同様の飛灰に対してピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの無水物及び2水和物を添加(それぞれピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム換算で6水和物と同量)し、ガス濃度を測定した。結果を表4、5に示す。
いずれも硫化水素の発生はなかったが、6水和物では二硫化炭素の発生は1ppm未満であったが、2水和物、無水和物では二硫化炭素の発生が認められた。
Figure 2010150501
Figure 2010150501
(鉛に対する反応選択性)
ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの6水和物、2水和物及び無水和物をピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム成分換算で各10gをそれぞれ塩化鉛9.8g及び塩化銅4.8gと純水(塩化鉛又は塩化銅及びピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの水和物の総固形分に対して20重量%及び30重量%)とで混合し、混合後の各金属錯体の生成をX線回折で測定した。
鉛錯体、銅錯体及びピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを回折角9.4°(鉛錯体由来のピーク(a))、12.9°(銅錯体由来のピーク(b))及び21.3°(ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム成分由来のピーク(c))の各回折強度に対し、a/cを鉛反応性(1)とし、b/cを銅反応性(2)とし、(1)/(2)の比を鉛の選択性(3)とした。水分含有量20重量%及び30重量%の場合の結果を表6及び表7に示した。
6水和物は2水和物、無水和物に比べて鉛への選択性が高く、その傾向は重金属含有物(キレート剤含む)中の水分含有量が少ないほうが顕著であった。
Figure 2010150501
Figure 2010150501
本発明の重金属処理剤は重金属含有物中の重金属の固定化処理に使用することができ、特に大量の鉛を含む飛灰中の重金属処理に好適に使用できる。

Claims (10)

  1. ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる重金属処理剤。
  2. 表1のX線回折パターンの結晶性を有するピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム・6水和物を含んでなる請求項1に記載の重金属処理剤。
    Figure 2010150501
  3. ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを70%以上含有する請求項1又は2に記載の重金属処理剤。
  4. アルカリ水酸化物及び/又はアルカリ土類水酸化物をさらに含んでなる請求項1乃至3のいずれかに記載の重金属処理剤。
  5. ピペラジン、二硫化炭素、水酸化ナトリウムをピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和水溶液中で反応し、ピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩を析出し、当該塩を分離することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の重金属処理剤の製造方法。
  6. ピペラジンを溶解したピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和水溶液中に、二硫化炭素を先に添加し、後から水酸化ナトリウムを添加することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
  7. ピペラジンを溶解したピペラジン−N,N'−ビスカルボジチオ酸ナトリウム塩の飽和水溶液中への二硫化炭素の添加と水酸化ナトリウムの添加を交互に繰り返す請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. 請求項1乃至4のいずれかに記載の重金属処理剤を重金属含有物と直接混合する重金属の処理方法。
  9. 重金属含有物及び請求項1乃至4のいずれかに記載の重金属処理剤の総固形分に対する水分添加量が10重量%以上50重量%以下である請求項8に記載の重金属の処理方法。
  10. 請求項1乃至4のいずれかに記載の重金属処理剤を水に溶解し、当該水溶液と重金属含有物と混合する重金属の処理方法。
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