JP2010150368A - 繊維強化プラスチック - Google Patents

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誠司 辻
Hidehiro Takemoto
秀博 竹本
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Abstract

【課題】繊維強化プラスチックを成形するとき、複数の繊維基材を並べて配置する層を設けながらも、成形品の表面品位を損なわず、かつ境目における成形品の強度を低下させない繊維強化プラスチックを提供する。
【解決手段】複数の繊維基材を積層した積層体に樹脂を含浸させ、前記樹脂を硬化させてなる繊維強化プラスチックであって、少なくとも一層の前記繊維基材が複数の繊維基材片を接合されてなるものであるとともに、互いに接合された一対の前記繊維基材片のうち少なくとも一方の繊維基材片が主目付部と副目付部とから構成されることを特徴とする繊維強化プラスチック。
【選択図】図6

Description

本発明は、繊維強化プラスチックの表面品位向上を可能にする方法に関する。
繊維強化プラスチック(以下、FRPという)、特に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、軽量かつ高い機械的特性を有する複合材料として様々な分野で利用されている。中でも、軽量化による燃費向上でCO削減などの環境対策をめざす自動車分野では、CFRPの利用は実用化に向けて特に注目されている。
自動車分野においても、CFRP部材に求められる機能は軽量性と機械的特性が主であるが、部材の種類によっては更なる付加価値を求められることがある。例えばボンネットやルーフなどの外板部材にCFRPを使用する場合には、軽量性や機械的特性に加え、繊維基材として用いる炭素繊維織物の美しいデザインをそのまま外観に生かした、高い表面品位のCFRPを成形することが求められることがある。
FRPにおいては、強度などの点から1層の繊維基材が1枚の繊維基材で構成されていることが望ましいが、自動車外板部材のような比較的大型のFRPを成形する場合、1枚で繊維基材を用意するには、重量や取り扱いやすさ、コストの点から製造可能な大きさに限度がある。そこで小さい繊維基材を複数並べて配置し、成形品を得る方法が用いられることがある。
繊維基材を並べて配置するとき、最も一般的に行われている方法は、図1に示すように一方の繊維基材片1aの端部と、もう一方の繊維基材片1bの端部とを重ね合わせる方法である。このような重ね合わせをせず、単に繊維基材片を複数並べて配置することで、全体を一つの繊維基材として見たとき、繊維が分断されている箇所があるため、FRPの強度がその部分だけ周囲に比べて低下してしまうためである。重ね合わせをすることにより、一方の繊維基材片と接合部、もう一方の繊維基材片との接合部の間で繊維が分断されていないため、FRPの強度低下を防ぐことができる。
しかしこの方法では、繊維基材片を重ね合わせた部分の繊維目付だけが大きくなる。このような繊維目付が大きい部分があると、FRPを成形したときに、繊維目付が大きい部分の繊維密度が大きくなるために、FRPの硬化収縮量に差が生じることによって、平らな金型で成形しても、FRPの厚みがその部分だけ厚くなる。この現象は、たとえ繊維基材を重ね合わせた層が、複数の繊維基材を積層して成るFRPの、表層ではなくより内側の層にあったとしても同様に起こる。このようなFRPは、図2に示すように、そのFRP表面2にたとえば蛍光灯の明かりをあててその写像3を観察すると、繊維基材を重ね合わせた部分4のところで写像が歪んで見え、表面品位が損なわれている。従って、高い表面品位を求められるFRP成形品を得るには、端部同士を重ね合わせる方法は問題がある。
一方、図3に示すように、一方の繊維基材片5aの端部と、もう一方の繊維基材片5bの端部とを、繊維基材片の端部同士が重なり合わないように隙間無く連結させる方法もある。この方法であれば、繊維目付が一部分だけ大きくなってしまうことはないため、FRPの表面品位が劣化するのを防ぐことができる。しかし、このような構造をもつFRPは、前述したように繊維基材を構成する繊維が連結の境目で分断されているため、FRPの強度がその部分だけ周囲に比べて低くなるという問題がある。
図1の具体例として、強化繊維基材の端部同士を重ね合わせた後、縫合糸で縫合する態様が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、繊維強化プラスチックで構成された補強シートの形成を目的としており、繊維強化プラスチックが備える高強度、高弾性等が発現できればよく、必ずしも所望される幅や長さとなるような1枚の補強シート等に形成する必要はなく、また補強シート表面の凹凸等の意匠性を考慮したりする必要もない。
また、図3の具体例として、一方向に強化繊維を配向した一方向強化繊維基材を所定の幅になるよう複数枚並べ、隣接する外縁同士を縫合糸で拘束する態様が特許文献2に開示されている。特許文献2では、外縁に耳部を持たない一方向強化繊維基材のみを用いるのであればこの方法は有効であるものの、大型になればなるほど縫合作業に工数や大掛かりな装置を要する。また、一方向強化繊維基材以外の耳部を有する強化繊維基材を使用する場合には、この方法は適用できないといった限界がある。
特開平10−246003号公報 特開2006−200094号公報
このように、従来用いられている、複数の小さい繊維基材を並べて配置する方法では、FRPの強度と表面品位とを同時に確保することは困難であった。さらに、いずれの場合もロール等に巻き取られた強化繊維基材を所定の長さに裁断して並べることを前提としており、本発明のように所定長さに満たないロール端部や、本来は屑として捨てられていたような切れ端を有効活用することには何ら言及されていない。
そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、FRPを成形するとき、複数の繊維基材を並べて配置する層を設けながらも、成形品の表面品位を損なわず、かつ境目における成形品の強度を低下させないFRPを提供することにある。
上記の課題を解決するための手段は、本発明のような構造をもつFRPを成形することである。
(1)複数の繊維基材を積層した積層体に樹脂を含浸させ、前記樹脂を硬化させてなる繊維強化プラスチックであって、少なくとも一層の前記繊維基材が複数の繊維基材片を接合されてなるものであるとともに、互いに接合された一対の前記繊維基材片のうち少なくとも一方の繊維基材片が主目付部と副目付部とから構成されることを特徴とする繊維強化プラスチック。
(2)前記繊維基材片を接合した接合部における繊維目付が、前記接合部を構成しない部分における繊維目付の50%〜160%であることを特徴とする(1)に記載の繊維強化プラスチック。
(3)前記接合部は、一方の繊維基材片の主目付部と副目付部との境界線から他方の繊維基材片の外縁までの距離が5mm以内となるように重ね合わせて接合することを特徴とする(1)または(2)に記載の繊維強化プラスチック。
(4)前記接合部を有する繊維基材を、最外層に載置しないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化プラスチック。
本発明において主目付部6とは、たとえば図4に示すような他の繊維基材との接合に用いない部分のことであり、接合に用いる部分は副目付部と称す。
また、繊維目付とは、繊維基材の単位面積当たりの重さであり、g/mで表されるが、本発明においては、10cm四方の主目付部および副目付部の繊維目付を測定したものとする。ただし、10cm四方の基材を切り取ることが出来ない場合は、出来得る限りにおいて10cm四方と同等の面積を持つように主目付部および副目付部を切り取り、その繊維目付を測定したものとする。
本発明に係る特徴をもつFRPは、本発明を用いずに、繊維基材の端部同士を重ね合わせたり、繊維基材の端部同士を隙間なく連結したりした層を持つFRPに比べて、表面の外観に周囲との違いをもたらすことが少ないため、表面品位の高いFRPを得ることができる。また、一方の繊維基材片と他方の繊維基材片との副目付部を重ね合わせた接合部において繊維が交絡しているため、接合部におけるFRPの強度低下を防ぐ効果も得ることができる。
以下、本発明の繊維基材を具体化した実施の態様を、図面を参照しながら説明する。
図19は、本発明における、複数の繊維基材を積層させた積層体の積層状態を示した概略図である。目的とする成形品に必要な強度、弾性率等に応じて、積層枚数や、それぞれの繊維基材の配向方向を決めることができる。
このように積層された積層体は、図20に示すような金型に組み込まれ、積層体を構成する繊維基材の空隙部に樹脂が注入され、金型により樹脂を加熱硬化するとFRPが得られる。樹脂を積層体に満遍なく含浸させるために、積層体にメッシュなどの樹脂流動層を挟持させ、樹脂が積層体の内部で均一に拡散させることも好ましい。
本発明で使用する繊維基材としては、特に規定しないが、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる、織物や編物、不織布などが挙げられる。織物の種類としては、特に規定しないが、平織り、綾織り、朱子織り、多軸織物、縦糸を強化繊維糸条とし横糸を補助糸とした一方向性織物などが挙げられる。
本発明で使用する樹脂としては、特に規定しないが、粘度が低く強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が好適である。熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、また、ビスマレイド・トリアジン樹脂等のポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリジアリルフタレート樹脂、さらにメラミン樹脂、ユリア樹脂やアミノ樹脂等が挙げられる。
また、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン11樹脂などのポリアミド樹脂、またはこれらポリアミド樹脂の共重合ポリアミド樹脂、また、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂などポリエステル樹脂、またはこれらポリエステル樹脂の共重合ポリエステル樹脂、さらにポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂など、更にまた、ポリエステルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂などに代表される熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。
また、上記の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴムから選ばれた複数をブレンドした樹脂を用いることもできる。このうち、樹脂と繊維との接着力によるFRPの強度発現性が高い点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
本発明に用いる成形方法としては、特に規定しないが、ドライな繊維基材に樹脂を含浸させるRTM(Resin Transfer Molding)成形法や、あらかじめ真空吸引してから樹脂を含浸させるVaRTM(Vacuum Assisted RTM)成形法、ハンドレイアップ成形法などが挙げられる。
本発明は、少なくとも一層の繊維基材が複数の繊維基材片を接合されてなるものであるとともに、互いに接合された一対の前記繊維基材片のうち少なくとも一方の繊維基材片が主目付部と副目付部とから構成されることを特徴としている。前述したように、大型部材に対して全ての繊維基材を1枚のシートで用意するには限界があり、複数の繊維基材片を接合して使用することがあった。しかし、既存の繊維基材を単に重ね合わせると接合部の厚みが厚くなったり、並べて成形すると強化繊維が分断されて所定の強度が得られなかったりする、という不都合があった。本発明では、既存の繊維基材に限らず、例えば斜め方向にカットした繊維基材の切れ端等の繊維基材片を有効に活用することで、大型の成形品であっても、強化繊維の連続性を維持して強度を発揮でき、なおかつ繊維基材を積層させても接合部の凹凸が積層体の表面まで影響を与えないため良好な意匠性が確保できる、といった効果が得られる。またさらに、本来破棄する切れ端を有効活用することで材料費を低減させることができる。
また本発明は、複数の繊維基材片を接合するにあたり、互いに接合された一対の繊維基材片のうちの少なくとも一方の繊維基材片が主目付部と副目付部とから構成されることを特徴としている。前述したように、同じ繊維基材を重ね合わせて接合しただけでは、接合部の目付が繊維基材の200%となって部分的に厚みが増す等といった弊害が生じていた。そこで、接合部にあたる副目付部を少なくともいずれか一方の繊維基材片に設けることとした。
副目付部の具体的な態様は後述するが、繊維基材の端部にある繊維端をそのまま用いたり、主目付部から繊維を梳いたり、圧縮加工したりして得られる。副目付部の繊維目付は、同じ繊維基材片の主目付部の繊維目付に対して25〜100%とすることが好ましい。25%以下とすると主目付部との繊維の連続性が低下し、他の繊維基材片と接合しても接合部のFRP強度が低下する。繊維目付が100%の場合は副目付部が設けられていない態様であり、少なくとも一方の繊維基材片が副目付部のないものを組み合わせて用いてもよいこととした。以下、図を用いて、具体的な繊維基材片の接合部の構成について説明する。
図5は本発明を実施した繊維基材の一例である。接合部を有する繊維基材8において、接合部9における繊維目付は、接合部を構成しない部分10aおよび10bの繊維目付の50%〜160%になるようにすることが好ましい。160%を超えると、接合部を構成しない部分10aおよび10bとの繊維目付の差が大きすぎることにより、FRPの厚みがその部分だけ厚くなるため、その表面に蛍光灯の明かりを映して見ると、写像が歪んで見え、表面品位が損なわれている。また、接合部の繊維目付が50%未満になると、FRPの厚みが薄くなるため、蛍光灯の明かりを映して見ると、同様に蛍光灯の写像が歪んで見えて表面品位が損なわれるだけでなく、接合部におけるFRPの強度が低下する。
好ましい形態について、図6を用いて説明する。繊維基材として縦横の糸に同じものを使用した平織りの織物11aを使用する場合、基材端部において縦糸を抜き取って横糸のみを残すことにより、横糸のみで構成されている部分を繊維目付が主目付部の50%である副目付部12aとすることができる。同様にした副目付部12bをもつ同じ繊維目付の平織りの織物11bを用意し、これら2つの繊維基材の副目付部12aと12bとを重ね合わせて接合すると、接合部13の繊維目付は、接合部を構成しない部分14aおよび14bの繊維目付に対し50%+50%=100%で同じになる。このような接合部を持つFRPは、内側の層に接合部を有していても、その表面において蛍光灯の明かりの写像に歪みは認められず、高い表面品位を保つことが可能となる。
本発明を実施するにあたって、主目付部と副目付部で繊維目付が異なる繊維基材を用意する方法は、上に述べた方法に限られるものではなく、例えば、繊維基材の端部から繊維の一部を除去して残った部分を副目付部とする方法(図7)や、一枚の繊維基材が様々な長さの繊維を数多く堆積させて作られているマット状の繊維基材を作る段階で、場所によって繊維量を変えて主目付部と副目付部を設ける方法(図8)、織物を製織する段階で、予め場所によって用いる糸の目付を変えることによって、主目付部と副目付部で繊維目付が異なる織物(図9)とし、これを用いる方法なども挙げられる。
本発明を実施するにあたっては、接合部全体を一体的に見て、接合部と隣接する部分との間で繊維が分断されていなければ良いのであって、繊維基材を接合する形態や方法については、主目付部や副目付部を重ね合わせるという方法に限定されるものではない。例えば図10に示すように、端部のカットラインを直線的ではなく凹凸形状にした繊維基材21aおよび21bを用意して、この凹凸同士がかみ合うようにして連結させても、接合部全体を一体的に見れば、接合部と隣接する部分との間で繊維が分断されていないと見なすことができる。
本発明を実施するにあたって、繊維基材を接合するとき、繊維基材の状態や接合の仕方などにより、接合部の幅が必ずしも一定にはならない。そのため接合部においては、図11に示すような、一方の繊維基材の副目付部22が他方の繊維基材の副目付部23と重なり合わない部分24、ならびに図12に示すような、一方の繊維基材の副目付部25が他方の繊維基材の副目付部26を越えて主目付部27と重なり合う部分28が発生する。これらは一方の繊維基材片の主目付部と副目付部との境界線から他方の繊維基材片の外縁までの距離(図11および12では29および30)が5mmを超える場合、繊維目付が隣接する部分の繊維目付と大きく異なる部分の幅が大きいため、FRPの表面の外観に影響を及ぼして、表面品位は損なわれてしまうが、5mm以内であれば、FRPの表面の外観に影響を及ぼすことが少なく、表面品位を保つことができる。
また、上記のように接合部を有する繊維基材は、積層体の最外層に載置しないことが好ましい。特に成形品表面の意匠性が重要とされるものについては、最外層に見映えのよいクロス織物が好んで用いられる。このような最外層に接合部を有する繊維基材を用いるのは、織物としての織り目に不連続箇所が生じたり、接合部に繊維の配列乱れに起因する凹凸が生じたりするため好ましくない。ただし、後加工で塗装を施すなど、外観にとくに配慮する必要のない成形品を得るにあたっては、接合部を有する繊維基材を最外層に載置することも可能である。
これまでの説明は、繊維基材にあらかじめ樹脂を含浸させない(ドライ)状態の繊維基材について説明してきたが、本発明は、これに限定されることなく、繊維基材にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグを使用することも好ましい。プリプレグを用いると、金型に組み込んだ後に樹脂を注入することなく、プレス成形法やオートクレーブ成形法等を用いて、目的とするFRPを得ることができる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例は、本発明を用いて100cm四方の平板状CFRPを得たものである。繊維基材は次の3種類を使用した。
繊維基材(A):東レ(株)製炭素繊維織物CK6252C
(織り組織:T700SC平織り、繊維目付315g/m、機幅100cm)
繊維基材(B):東レ(株)製炭素繊維織物CK6244C
(織り組織:T700SC平織り、繊維目付213g/m、機幅100cm)
繊維基材(C):日東紡績(株)製サーフェースマットMF30P−104LS
(繊維目付30g/m、104cm幅)
繊維基材(A)および(B)には、図13に示すように幅方向両端に11mm〜13mm、平均12mmの幅で横糸のみで構成される部分があり、これを副目付部31とした。主目付部および副目付部の繊維目付については、実際に使用する部分を切り取って測定することが出来ないため、使用する部分に隣り合う部分を使用して測定した。繊維基材(A)の主目付部を10cm四方に切り取って測定した重さは3.17gであり、繊維目付は317g/mであった。一方副目付部については、幅が12mmと狭く、10cm四方の副目付部を得ることが出来ないため、100cmの長さに切り取って100cm×12mm分の繊維目付を測定し、その重さは1.85gであり、繊維目付は154g/mであった。繊維基材(B)の主目付部および副目付部の繊維目付も同様にして測定し、主目付部は213g/m、副目付部は105g/mであった。
まず、図14に示すように繊維基材(A)からなる基材32を100cm四方にカットして、基材33を2枚得た。この基材33は、全面にわたりほぼ同様の繊維目付を有している。
次に、図15に示すように繊維基材(B)からなる基材34をカットして、基材片36および基材片38を得た。これらは副目付部35および副目付部37を有しており、これら副目付部35と副目付部37とを図16に示すように重ね合わせて接合し、接合部39を有する基材40を得た。この接合部39の繊維目付は、2つの副目付部の繊維目付を足した105+105=210g/mであり、接合部を構成しない部分の繊維目付213g/mに対して99%である。同様に基材34からもう1枚基材40を得て計2枚用意した。
図17は基材40の接合部39付近を拡大したものである。接合部39には、図11および12で説明した一方の繊維基材の副目付部が他方の繊維基材の副目付部と重なり合わない部分41、ならびに一方の繊維基材の副目付部が他方の繊維基材の副目付部部分を越えて主目付部に重なり合うなる部分42があり、これらの部分における一方の繊維基材片の主目付部と副目付部との境界線から他方の繊維基材片の外縁までの距離はどちらも0〜2mmの範囲におさまっていた。
さらに、図18に示すように繊維基材(C)からなる基材43を100cm角にカットし、基材44を2枚得た。
このようにして得た6枚の基材を、図19に示す積層構成図に従って積層し、積層体45を得た。2枚の基材40aおよび40bの接合部39aおよび39bは同じ位置にならないように積層した。
図20にRTM成形型を示す。上型46および下型47から成る平板成形金型の下型47のキャビティ48に、前記積層体45を載置した。金型を構成する上型46および下型47は、熱媒体流路49aおよび49bを出入り口として金型内に設けられた配管を通る熱媒体により、100℃に加熱した。図示していない金型昇降装置によって上型46を降ろして型締めし、金型昇降装置の油圧シリンダーにて上型46を加圧した後、樹脂排出口50に樹脂製チューブ51aを通じて接続された図示していない真空ポンプを用いて金型のキャビティ48を減圧した。一方、樹脂注入口52に樹脂製チューブ51bを通じて接続された図示していない樹脂注入機を用いて、東レ(株)製エポキシ樹脂TR−C38をキャビティ48に加圧注入した。積層体に樹脂が含浸し、樹脂排出口50から樹脂が出てくるのを確認後、樹脂排出口50側の樹脂製チューブ51aをバイスグリップで挟んで閉止し、樹脂注入口52側の樹脂製チューブ51bをバイスグリップで挟んで閉止した。この状態を15分間保持することにより樹脂を硬化させ、上型46を上昇させて硬化したCFRPを取り出した。
このようにして得たCFRPは、内側の層に接合部を有する部分があっても、蛍光灯の明かりの写像に歪みは認められず、表面品位が保たれていた。
(実施例2)
図21に示すように、実施例1で用いている繊維基材(B)からなる基材34の副目付部から一部の繊維を鋏で切り落とし、副目付部の繊維目付を小さくした繊維基材(B)53を得た。実施例1と同様の方法で副目付部の繊維目付を測定すると、繊維目付は60g/mであった。これをカットして、基材片36および基材片38と同じ形状の基材片54および基材片55を得た後、これらを図16に倣って接合し、接合部56を有する基材57を得た。このとき接合部56の繊維目付は、2つの副目付部の繊維目付を足した60+60=120g/mであり、接合部を構成しない部分の繊維目付213g/mに対して56%である。同様に基材53からもう1枚基材57を得て計2枚用意した。
これらと、実施例1で用いた基材33および基材44と同じものを各2枚得て、計6枚の基材を、図19に示す積層構成図に倣って、基材40aおよび基材40bの代わりに基材57aおよび基材57bを用いて積層し、積層体を得た。接合部の配置についても図19に倣った。
以降の成形工程については実施例1と同様に実施してFRP成形品を得た。この方法で得たFRPは、内側の層に接合部を有する部分において、蛍光灯の明かりの写像に歪みは認められず、表面品位を保っていた。
(実施例3)
図21に示すように、実施例2と同様に実施例1で用いている繊維基材(B)からなる基材34の副目付部から一部の繊維を鋏で切り落とし、副目付部の繊維目付を小さくした繊維基材(B)58を得た。実施例1と同様の方法で副目付部の繊維目付を測定すると、繊維目付は40g/mであった。これをカットして、基材片36および基材片38と同じ形状の基材片59および基材片60を得た後、これらを図16に倣って接合し、接合部61を有する基材62を得た。このとき接合部の繊維目付は、2つの副目付部の繊維目付を足した40+40=80g/mであり、接合部を構成しない部分の繊維目付213g/mに対して38%である。同様に基材58からもう1枚基材62を得て計2枚用意した。
これらと、実施例1で用いた基材33および基材44と同じものを各2枚得て、計6枚の基材を、図19に示す積層構成図に倣って、基材40aおよび基材40bの代わりに基材62aおよび基材62bを用いて積層し、積層体を得た。接合部の配置についても図19に倣った。
以降の成形工程については実施例1と同様に実施してFRP成形品を得た。この方法で得たFRPは、内側の層に接合部を有する部分において、蛍光灯の明かりの写像に歪みが認められ、表面品位が劣っていた。
(実施例4)
図22に示すように、実施例1で用いている繊維基材(B)からなる基材34をカットして、主目付部のみで構成された基材片63と副目付部を持つ基材片64を得て、これらの端部を図16に倣って接合し、接合部65を有する基材66を得た。このとき、接合部の繊維目付は、主目付部の繊維目付と副目付部の繊維目付とを足した213+105=318g/mであり、接合部を構成しない部分の繊維目付213g/mに対して149%である。同様に基材34からもう1枚基材66を得て計2枚用意した。
これらと、実施例1で用いた基材33および基材44と同じものを各2枚得て、計6枚の基材を、図19に示す積層構成図に倣って、基材40aおよび基材40bの代わりに基材66aおよび基材66bを用いて積層し、積層体を得た。接合部の位置についても図19に倣った。
以降の成形工程については実施例1と同様に実施してFRP成形品を得た。この方法で得たFRPは、内側の層に接合部を有する部分において、蛍光灯の明かりの写像に歪みは認められず、表面品位を保っていた。
(実施例5)
図23に示すように、実施例4と同様に実施例で用いている繊維基材(B)からなる基材34をカットして、主目付部のみで構成された基材片67および基材片68を得た後、基材片68の端部から一部の繊維を鋏で切り落とし、副目付部を有する基材片69を得た。実施例と同様の方法で副目付部の繊維目付を測定すると、繊維目付は150g/mであった。これらの端部を図16に倣って接合し、接合部70を有する基材71を得た。このとき、接合部の繊維目付は、主目付部の繊維目付と副目付部の繊維目付とを足した213+150=363g/mであり、接合部を構成しない部分の繊維目付213g/mに対して170%である。同様に基材34からもう1枚基材71を得て計2枚用意した。
これらと、実施例1で用いた基材33および基材44と同じものを各2枚得て、計6枚の基材を、図19に示す積層構成図に倣って、基材40aおよび基材40bの代わりに基材71aおよび基材71bを用いて積層し、積層体を得た。接合部の位置についても図19に倣った。
以降の成形工程については実施例1と同様に実施してFRP成形品を得た。この方法で得たFRPは、内側の層に接合部を有する部分において、蛍光灯の明かりの写像に歪みが認められ、表面品位が劣っていた。
繊維基材の端部同士を重ね合わせる従来技術を示した概略図である。 図1で得られたFRPの表面に蛍光灯の写像を映した様子を示した図である。 繊維基材の端部同士が重なり合わないように隙間なく連結させる他の従来技術を示した概略図である。 本発明に用いられる主目付部と副目付部とを有する繊維基材の概略図である。 本発明に係る接合部を有する繊維基材の一実施態様を示す概略図である。 平織物を用いて接合部を有する繊維基材とした、本発明に係る他の実施態様を示す概略図である。 繊維基材片の端部から繊維の一部を除去して副目付部とした繊維基材片を示す概略図である。 一部の場所の繊維量を変えて副目付部とした繊維基材片を示す概略図である。 一部の場所に用いる糸の目付を変えて副目付部とした繊維基材片を示す概略図である。 凹凸形状とした端部のカットラインを有する2枚の繊維基材片の凹凸同士がかみ合うようにして連結させた繊維基材を示す概略図である。 一方の繊維基材片の副目付部が他方の繊維基材片の副目付部と重なり合わない状態を示す概略図である。 一方の繊維基材片の副目付部が他方の繊維基材片の副目付部を越えて主目付部と重なり合う状態を示す概略図である。 両端に副目付部を有する繊維基材を示す概略図である。 実施例1における繊維基材(A)のカット図である。 実施例1における繊維基材(B)のカット図である。 実施例1において副目付部同士の接合方法を示した概略図である。 図16における接合部の拡大図である。 実施例1における繊維基材(C)のカット図である。 実施例1における繊維基材の積層構成図である。 実施例1に用いるRTM成形型の構成を示した概略図である。 実施例2および3における繊維基材(B)を材料とする基材の準備方法を示した概略図である。 実施例4における繊維基材(B)を材料とする基材の準備方法を示した概略図である。 実施例5における繊維基材(B)を材料とする基材の準備方法を示した概略図である。
符号の説明
1a 繊維基材片
1b 繊維基材片
2 FRP表面
3 蛍光灯の写像
4 繊維基材を重ね合わせた部分
5a 繊維基材片
5b 繊維基材片
6 主目付部
7 副目付部
8 接合部を有する繊維基材
9 接合部
10a 接合部を構成しない部分
10b 接合部を構成しない部分
11a 平織りの織物
11b 平織りの織物
12a 縦糸を抜き取って横糸のみを残した副目付部
12b 縦糸を抜き取って横糸のみを残した副目付部
13 接合部
14a 接合部を構成しない部分
14b 接合部を構成しない部分
15 主目付部
16 副目付部
17 主目付部
18 副目付部
19 主目付部
20 副目付部
21a 端部のカットラインを凹凸形状にした繊維基材
21b 端部のカットラインを凹凸形状にした繊維基材
22 副目付部
23 副目付部
24 重なり合わない部分
25 副目付部
26 副目付部
27 主目付部
28 重なり合う部分
29 一方の繊維基材片の主目付部と副目付部との境界線から他方の繊維基材片の外縁までの距離
30 一方の繊維基材片の主目付部と副目付部との境界線から他方の繊維基材片の外縁までの距離
31 副目付部
32 繊維基材(A)
33 カットした基材
34 繊維基材(B)
35 副目付部
36 カットした基材片
37 副目付部
38 カットした基材片
39 接合部
39a 接合部
39b 接合部
40 接合部を有する基材
40a 接合部を有する基材
40b 接合部を有する基材
41 重なり合わない部分
42 重なり合う部分
43 繊維基材(C)
44 カットした基材
45 積層体
46 上型
47 下型
48 キャビティ
49a 熱媒体流路
49b 熱媒体流路
50 樹脂排出口
51a 樹脂製チューブ
51b 樹脂製チューブ
52 樹脂注入口
53 副目付部の繊維目付を小さくした繊維基材(B)
54 基材片36と同じ形状にカットした基材片
55 基材片38と同じ形状にカットした基材片
56 接合部
57 接合部を有する基材
57a 接合部を有する基材
57b 接合部を有する基材
58 副目付部の繊維目付を小さくした繊維基材(B)
59 基材片36と同じ形状にカットした基材片
60 基材片38と同じ形状にカットした基材片
61 接合部
62 接合部を有する基材
62a 接合部を有する基材
62b 接合部を有する基材
63 主目付部のみで構成された基材片
64 副目付部を持つ基材片
65 接合部
66 接合部を有する基材
66a 接合部を有する基材
66b 接合部を有する基材
67 主目付部のみで構成された基材片
68 主目付部のみで構成された基材片
69 副目付部を持つ基材片
70 接合部
71 接合部を有する基材
71a 接合部を有する基材
71b 接合部を有する基材

Claims (4)

  1. 複数の繊維基材を積層した積層体に樹脂を含浸させ、前記樹脂を硬化させてなる繊維強化プラスチックであって、少なくとも一層の前記繊維基材が複数の繊維基材片を接合されてなるものであるとともに、互いに接合された一対の前記繊維基材片のうち少なくとも一方の繊維基材片が主目付部と副目付部とから構成されることを特徴とする繊維強化プラスチック。
  2. 前記繊維基材片を接合した接合部における繊維目付が、前記接合部を構成しない部分における繊維目付の50%〜160%であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック。
  3. 前記接合部は、一方の繊維基材片の主目付部と副目付部との境界線から他方の繊維基材片の外縁までの距離が5mm以内となるように重ね合わせて接合することを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化プラスチック。
  4. 前記接合部を有する繊維基材を、最外層に載置しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック。
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