JP2010149164A - 配管溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接箇所から離れた位置の配管内部に誰でも簡単に傷付けることなくバルーンをセットできるうえ、長時間に亘ってバルーンを配管に密着させることができ、配管の突き合わせ溶接を確実に行うこと。
【解決手段】水溶性のバルーンを利用して配管を突き合わせ溶接する方法であって、揮発又は昇華によって気化する気化性材料を萎んだ状態のバルーン内に収納した後、導入筒を塞いで内部に密閉する工程S1と、気化性材料が収納されたバルーンを配管内に押し込むと共に接合端から離間した位置にセットする工程S2と、気化性材料の気化により発生した気体によりバルーンを膨張させて配管に密着させる工程S3と、両配管の接合端同士を突き合わせて内部空間を不活性ガスに置換する工程S4と、両配管の突き合せ部分を溶接する工程S5と、両配管内に流体を供給してバルーンを溶解させる工程S6と、を備える配管溶接方法を提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ステンレス鋼管やクロム鋼管等の配管同士を突き合わせ溶接する際の配管溶接方法に関するものである。
一般的にアーク溶接を行う際、空気中の酸素や窒素等の影響を受けて溶接部に割れ等の不具合が発生してしまうことを防止するため、高温でも金属と反応しない不活性ガス(Inert Gas)を溶接部周辺に供給し、この不活性ガスの雰囲気の中で溶接を行っている。不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスが好適に使用されている。
従って、ステンレス鋼管やクロム鋼管等の配管を溶接する場合も同様に、不活性ガスの雰囲気の中で行っている。特に、この種の配管を突き合わせ溶接する場合には、配管の外側だけでなく内側、即ち、内部空間も不活性ガスの雰囲気にしておく必要がある。そのため、溶接前の段階で配管内に不活性ガスを供給し、配管内を不活性ガスに置換しておく必要がある。
ところが、ステンレス鋼管やクロム鋼管等の配管は、原子力配管やボイラーチューブとして利用されているように、長尺であるうえ、原子力や火力プラント等の設備機器の構成品として複雑に入り組んだ状態で配設されている。そのため、既に配設されている配管の一部を交換する場合等には、設備機器を含めて配管全体の内部空間を不活性ガスに置換せざるを得ない場合がある。このような場合には、不活性ガスに置換するという事前準備に多大な工数、工期を要することが多々あった。
そこで、配管全体の内部空間を不活性ガスに置換するのではなく、配管内に封止物となる仮栓を一時的に設置して、溶接箇所周辺の内部空間だけを不活性ガスの雰囲気にする手法が考えられている。
この場合の具体的な手順としては、配管内に先に仮栓を設置した後、配管同士を突き合わせる。そして、突き合せた配管の内部に不活性ガスを供給する。これにより、仮栓で両側が封止された配管内を不活性ガスの雰囲気にすることができる。つまり、溶接箇所周辺の内部空間だけを不活性ガスの雰囲気にすることができる。このように、配管内の必要な領域だけを不活性ガスに置換できるので、配管全体の内部空間を不活性ガスに置換する上記方法に比べれば効率的である。
しかしながら、この手法は、溶接終了後に設置した仮栓を回収するという手間がどうしても必要となってしまう。特に、仮栓を確実に回収するために、後で回収し易いポイント、例えば配管の末端部や配管の途中に介在されている弁体等の近くに設置しなくてはならず、設置場所が限られてしまう。そのため、溶接箇所の近くに仮栓を設置することが難しく、溶接箇所から遠く離れた位置に仮栓を設置せざるを得ない場合がほとんどであった。
従って、不活性ガスを多量に使用してしまううえ、置換作業に多くの時間を要してしまい、依然として事前準備を効率良く行うことができなかった。
そこで、新たな方法として、水溶性フィルム(例えば、ポリビニルアルコールフィルム)を用いて仮栓を袋状に作製し、該仮栓を利用することで不活性ガスを溶接部周辺だけに閉じ込める方法が考えられている(特許文献1参照)。
この方法は、仮栓として水に溶解するものを利用するので、溶接後に仮栓を回収する手間を省くことができる方法である。具体的な手順としては、溶接箇所である接合端から配管内に押し込んだ位置に膨らませた仮栓を設置した後、配管同士を突き合わせる。そして、配管内部に不活性ガスを供給して、仮栓で両側が封止された配管内、即ち、溶接箇所周辺の内部空間を不活性ガスの雰囲気に置換(アルゴンガスを用いて置換した場合にはアルゴンバックと言う)する。この状態で溶接を行った後、配管内に温水等の流体を流す。すると、配管内に設置された仮栓は、この流体によって溶解する。これにより、仮栓を流体と共に配管外へ簡単に排出することができる。
このように、封止物を回収するのではなく流体を利用して簡単に排除できるので、制約を受けることなく仮栓を自由に配管内に設置することができる。従って、仮栓を溶接箇所の近くに設置することができる。その結果、不活性ガスの使用量を少量にすることができるうえ、置換作業にかける時間を短縮することができる。
特開平5−245633号公報
ところで、水溶性フィルムからなる仮栓は、温度や湿度の影響を受け易い。そのため、仮栓を設置する場合には、不活性ガスの使用量を少なくするという点では溶接箇所にできるだけ近い位置に設置することが好ましいが、実際には溶接時の熱影響を受けないように溶接箇所から離れた位置に設置せざるを得ない。つまり、溶接箇所である配管の接合端から、溶接時の熱影響を受けない位置まで押し込んだ状態で設置する必要がある。しかも、仮栓をその位置で確実に膨らませた状態で維持し、配管の内面に密着させておく必要がある。
この点、特許文献1に記載の方法では、仮栓に空気吹き込みノズルを差し込んだ状態で配管内に押し込む工程と、押し込んだ後、空気吹き込みノズルから空気を吹き込んで仮栓を膨らませる工程と、膨らませた後、空気吹き込みノズルを抜き取る工程と、を行っている。
しかしながら、空気吹き込みノズルを差し込んだまま仮栓を押し込むので、ノズルによって仮栓に傷を付けてしまう可能性があった。また、空気吹き込みノズルが途中で外れてしまう可能性もあった。よって、注意を要しながら行う作業となってしまい、手間がかかり効率の良い作業を行えるものではなかった。加えて、空気吹き込みノズルを抜き取った後、仮栓から空気が漏れてしまう可能性があり、長時間に亘って確実な密着性を期待し難かった。そのため、溶接に悪影響を与えてしまい、酷い場合には溶接を行うこと自体が困難になってしまう恐れがあった。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、溶接箇所から離れた位置の配管内部に誰でも簡単に傷付けることなく仮栓であるバルーンをセットできるうえ、長時間に亘ってバルーンを配管に密着させることができ、配管の突き合わせ溶接を確実に行うことができる配管溶接方法を提供する。
本発明は、前記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を提供する。
本発明に係る配管溶接方法は、膨張可能な水溶性のバルーンを利用して、不活性ガスの環境下で2本の配管を突き合わせ溶接する配管溶接方法であって、揮発又は昇華によって気化する気化性材料を萎んだ状態の前記バルーン内に導入筒を介して収納した後、該導入筒を塞いで気化性材料を内部に密閉する収納工程と、前記気化性材料が収納された前記バルーンを2本の前記配管の内部にそれぞれ押し込むと共に、接合端から規定値以上離間した位置に移動させて溶接時の高温領域から外れる領域外にセットするセット工程と、前記バルーンのセット後、前記気化性材料の気化により発生した気体により前記バルーンを膨張させ、該バルーンを前記配管の内面に密着させる膨張工程と、2本の前記配管の接合端同士を突き合わせると共に、前記バルーンで囲まれた両配管の内部空間を前記不活性ガスの環境下に置換する置換工程と、置換が終了した後、前記不活性ガスを供給しながら前記両配管の突き合せ部分を外面側から溶接する溶接工程と、溶接終了後、前記両配管内に流体を供給して前記バルーンを溶解させ、流体と共に両配管内からを排出させるフラッシング工程と、を備えていることを特徴とする。
この発明に係る配管溶接方法においては、まず、萎んだ状態のバルーン内に導入筒を介して気化性材料を収納する収納工程を行う。収納した後、バルーンの導入筒を塞いで気化性材料を内部に密閉する。
続いて、気化性材料が収納された萎んだバルーンを2本の配管の内部にそれぞれ押し込むと共に、接合端から予め決められた規定値以上離間するように移動させて溶接時の熱影響を受けない高温領域外にセットするセット工程を行う。すると、気化性材料は自然に揮発又は昇華して気化し、気体を発生するので、該気体によってバルーンが膨張する。この膨張工程により、配管の内面にバルーンを密着させることができ、配管を途中で塞ぐことができる。
2本の配管にそれぞれバルーンをセットした後、両配管の接合端同士を突き合わせる。この際、溶接箇所周辺の両配管の内部空間は、バルーンで囲まれた閉塞空間となっている。そして、この閉塞した内部空間に不活性ガスを供給して該不活性ガスの環境下に置換する置換工程を行う。つまり、溶接箇所の裏側を不活性ガスの環境下にすることができる。
そして、置換が終了した後、不活性ガスを供給しながら両配管の突き合わせ部分を外面側から溶接する溶接工程を行う。これにより、突き合せた接合端を一体的に結合することができ、両配管を1本に連結することができる。特に、溶接箇所の外側だけでなく内側に関しても、不活性ガスの環境下となっているので、空気中の酸素や窒素等の影響を受けることなく溶接でき、割れ等がない高品質な溶接作業を行うことができる。
そして、溶接終了後、両配管内に流体を供給して水溶性のバルーンを溶解させ、流体と共に溶解したバルーンの成分を両配管内から排出させるフラッシング工程を行う。これにより、配管内を途中で塞いでいたバルーンを確実に排除することができ、これ以降両配管を直ちに使用することができる。
特に、本発明に係る方法によれば、バルーン本体を萎んだ状態で溶接箇所である接合端から離れた位置に押し込めるので、容易に行えると共に所望の位置に確実にセットすることができる。しかも、従来のように空気吹き込みノズル等を使用する必要がないので、バルーンを傷付ける恐れもない。また、気化性材料を利用するので、自然にしかも確実にバルーンを膨張させることができる。従って、効率の良い作業を行うことができる。
更に、気化性材料を利用するので、導入筒を確実に塞いでからバルーンを膨張させることができる。従って、気体が漏れてしまうことを確実に防ぐことができ、長時間に亘ってバルーンを配管の内面に密着させ続けることができる。よって、高いガスシール性を期待でき、高品質な溶接作業を行うことができる。
また、本発明に係る配管溶接方法は、上記本発明の配管溶接方法において、前記収納工程の際、前記気化性材料を保持皿で保持した状態で、前記バルーン内に収納することを特徴とする。
この発明に係る配管溶接方法においては、気化性材料を直接バルーンの内部に収納するのではなく、保持皿で保持した状態で収納する。そのため、収納されてから気化するまでの間、気化性材料がバルーンに直接接触してしまうことを防止できる。よって、気化性材料の気化時に生じる吸熱反応によってバルーンの温度が局所的に急激に低下することを未然に防止できる。そのため、急激な温度低下によってバルーンが破れてしまう等の可能性を低減することができる。
更に、吸熱反応によって配管が局所的に冷却され、結露が発生してしまうことを防止することもできる。従って、結露によるバルーンの破れ等の可能性についても低減することができる。
また、本発明に係る配管溶接方法は、上記本発明の配管溶接方法において、前記セット工程の際、粘度を有する水溶性の粘着液を前記バルーンの表面全体に塗布した後、前記配管の内部に押し込むことを特徴とする。
この発明に係る配管溶接方法においては、バルーンの表面に粘着液が塗布されているので、粘着液の表面張力を利用してバルーンを配管の内面に対してより密着させ続けることができる。従って、長時間に亘ってより確実なガスシール性を期待することができる。また、バルーンが何らかの理由によって若干張りを失ってしまった場合であっても、失った張りの部分に粘着液が入り込むので密着状態を引き続き維持させることができる。この点においても、より確実なガスシール性を期待することができる。
なお、粘着液は水溶性であるので、フラッシング工程によって配管内から排除することができ、配管内に残留する恐れがない。
また、本発明に係る配管溶接方法は、上記本発明の配管溶接方法において、前記フラッシング工程の際、有機物を吸着するフィルタを利用して、溶解した前記バルーンの成分をフラッシング後の前記流体から除去する除去工程を行うことを特徴とする。
この発明に係る配管溶接方法においては、フラッシング時にフィルタを利用した除去工程を行うので、溶解したバルーンの成分を流体から高精度に除去することができる。従って、バルーンの成分が配管内に残留してしまうことを防止することができる。よって、配管に接続されている設備機器側にバルーンの成分が回りこんでしまうことを防止でき、設備機器側に動作不良等の悪影響が生じてしまうことを未然に防ぐことができる。
また、本発明に係る配管溶接方法は、上記本発明の配管溶接方法において、前記膨張工程の際、前記バルーンが前記配管の内面に密着したか否かを確認する確認工程を行うことを特徴とする。
この発明に係る配管溶接方法においては、バルーンを膨張させた後、バルーンの弾力具合等から、バルーンが配管の内面に確実に密着したか否かを確認する確認工程を行う。従って、より確実なガスシール性を期待することができる。特に、置換工程前に確認するので、不活性ガスを無駄に供給してしまうことを未然に防止できる。
本発明に係る配管溶接方法によれば、溶接箇所から離れた位置の配管内部に誰でも簡単に傷付けることなくバルーンをセットできるうえ、長時間に亘ってバルーンを配管に密着させることができる。従って、高いガスシール性を期待でき、不活性ガスの環境下で配管の突き合わせ溶接を確実に行うことができ、高品質な溶接作業を行うことができる。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図16を参照して説明する。
本実施形態の配管溶接方法は、図1(a)に示すように、水溶性のバルーン(配管溶接用バルーン)1を利用して、アルゴンガス(不活性ガス)Gの環境下で2本の配管2を突き合わせ溶接する方法である。なお、図1では、バルーン1を簡略的に図示している。
この配管溶接方法は、図2に示すように、萎んだ状態のバルーン1内に気化性材料であるドライアイスDを収納する収納工程(S1)と、ドライアイスDを収納したバルーン1を配管2内にセットするセット工程(S2)と、バルーン1を膨張させる膨張工程(S3)と、配管2の内部をアルゴンガスGの環境下に置換する置換工程(S4)と、2本に配管2を突き合わせ溶接する溶接工程(S5)と、バルーン1を配管2から排出させるフラッシング工程(S6)と、を備えている。
なお、本実施形態では、気化性材料として、昇華によって気化するドライアイスDを用いた場合を例に挙げて説明する。以下、これら各工程について、詳細に説明する。
はじめに、各工程について説明する前にバルーン1について説明する。
本実施形態で使用するバルーン1は、図3に示すように、膨張可能なバルーン本体10と、該バルーン本体10に一体的に形成され、バルーン本体10にドライアイスDを入れるための導入筒11と、で構成されている。
このバルーン1は、水溶性材料の1つであるPVA(ポリビニルアルコール:Polyvinyl alcohol)、具体的にはビニロンVF−L(クラレ製)で作製されており、略70℃の温水(流体)Wで溶解する水溶性のバルーンである。なお、バルーン1の製造方法については、後に説明する。
バルーン本体10は、膨らんだ際に円筒状になるように形成されており、配管2の内面にフィットするようになっている。バルーン本体10の一端側は、完全に塞がって閉塞している。一方、バルーン本体10の他端側は、一部開口した状態で塞がっており、この一部開口した部分に導入筒11が繋がった状態で形成されている。
バルーン本体10の外径φは、配管2の内径よりも大きいサイズとされ、長さLは配管2の内径よりも少なくとも2倍以上長くすることが好ましい。例えば、呼び径がB呼称サイズで2Bの配管2の場合には約150mm、6Bの場合には約375mm、10Bの場合には約625mm、14Bの場合には約900mmにすると良い。但し、これら数値に限定されるものではなく、さらに長く形成しても構わないし、配管2の内径の2倍以下の長さであっても構わない。
導入筒11は、バルーン本体10よりも遥かに小さい外径の円筒状に形成されており、溶着によって閉塞可能とされている。
ところで、本実施形態の配管2は、例えば、原子力配管やボイラーチューブ等として利用されるステンレス鋼管やクロム鋼管であり、図1に示すようにそれぞれ端部がプラント設備(設備機器)Pに繋がっている。
次に、上述した各工程を詳細に説明しながら、バルーン1を利用して配管2を溶接する場合について説明する。
まず、ドライアイスDをバルーン1内に収納する収納工程(S1)を行う。具体的には、図4に示すように、萎んだ状態のバルーン1内に導入筒11を介してドライアイスDを収納した後、図5に示すように導入筒11を溶着によって塞ぎ、ドライアイスDを内部に密閉する。この際、ドライアイスDは、固定であるので扱い易い。
この工程が終了した後、セット工程(S2)を行う。つまり、図6に示すように、ドライアイスDが収納された萎んだバルーン1を配管2の内部に押し込むと共に、接合端2aから予め決められた規定値H以上離間するように移動させて、溶接時の熱影響を受けない高温領域外にセットする。
なお、規定値Hとは、配管2の材質やサイズ、溶接条件等によって変化する数値であるが、経験的に100mm程度である。
すると、ドライアイスDは、自然に昇華して気化し、気体を発生するので、図7に示すように、この気体によってバルーン1が膨張する。これにより、配管2の内面にバルーン1を密着させることができ、配管2を途中で塞ぐことができる。この工程が、膨張工程(S3)である。
膨張させた後、バルーン1が配管2の内面に確実に密着したか否かを確認する確認工程(S3a)を行う。確認する方法としては、例えば、配管2の内面とバルーン本体10との間に隙間があるか否かを目視することで密着具合を確認する。また、バルーン本体10を押し、そのときの弾力具合の感触で密着具合を確認する。いずれの方法であっても、バルーン本体10の密着具合を確認することができる。この時点で、膨張工程(S3)が終了する。
上述した各工程を2本の配管2に対してそれぞれ行った後、置換工程(S4)に移行する。まず、図8に示すように、2本の配管2の接合端2a同士を突き合わせる。この際、溶接箇所周辺の両配管2の内部空間は、バルーン1で囲まれた閉塞空間となっている。そして、この閉塞した内部空間にアルゴンガスGを供給してアルゴンガスGの環境下に置換する。つまり、溶接箇所の裏側をアルゴンガスGの環境下にする。
なお、アルゴンガスGを供給する場合には、接合端2aの隙間から供給しても構わない。或いは、接合端2a付近の配管2に凹みを形成すると共に、この凹みに後に穴埋め可能な穴部を形成し、該穴部を通じてアルゴンガスGを供給しても構わない。
アルゴンガスGへの置換が終了した後、図1(a)に示すように、溶接用トーチTによりアルゴンガスGを供給しながら両配管2の突き合わせ部分を外面側から溶接する溶接工程(S5)を行う。これにより、突き合せた接合端2a同士を一体的に結合することができ、両配管2を1本に連結することができる。特に、溶接箇所の外側だけでなく内側に関しても、アルゴンガスGの環境下となっているので、空気中の酸素や窒素等の影響を受けることなく溶接でき、割れ等がない高品質な溶接作業を行うことができる。
溶接が終了した後、フラッシング工程(S6)を行う。つまり、図9に示すように、両配管2内に温水Wを供給する。これにより、水溶性のバルーン1を溶解することができ、温水Wと共に溶解したバルーン1の成分を両配管2内から排出させることができる。
その結果、図1(b)に示すように、配管2内を途中で塞いでいたバルーン1を確実に排除することができ、これ以降、両配管2を直ちに使用することができる。
上述したように、本実施形態の配管溶接方法によれば、バルーン本体10を萎んだ状態で溶接箇所である接合端2aから離れた位置に押し込めるので、容易に行えると共に所望の位置に確実にセットすることができる。しかも、従来のように空気吹き込みノズル等を使用する必要がないので、バルーン1を傷付ける恐れもない。
また、ドライアイスDを利用するので、自然にしかも確実にバルーン1を膨張させることができる。従って、効率の良い作業を行うことができる。
更に、ドライアイスDを利用するので、導入筒11を完全に塞いでからバルーン1を膨張させることができる。従って、ドライアイスDが昇華した気体が漏れてしまうことを確実に防ぐことができ長時間に亘ってバルーン1を配管2の内面に密着させ続けることができる。よって、高いガスシール性を期待でき、高品質な溶接作業を行うことができる。
また、本実施形態では、バルーン1を膨張させた後、配管2の内面に密着しているか否かを確認する確認工程(S3a)を行っている。従って、より確実なガスシール性を期待することができる。特に、アルゴンガスGに置換する置換工程(S4)を行う前に確認するので、アルゴンガスGを無駄に供給してしまうことを未然に防止できる。
次に、本実施形態で用いたバルーン1の製造方法について説明する。
この製造方法は、溶着を繰り返すだけの簡単な工程でバルーン1を低コストで効率良く製造できる方法であって、図10に示すように、第1の溶着工程(S10)と、第2の溶着工程(S11)と、第3の溶着工程(S12)と、を主に行う方法である。
以下、これら各工程について詳細に説明する。
最初に第1の溶着工程(S10)を行う。具体的には、図11に示すように、水溶性材料であるPVA(ビニロンVF−L:クラレ製)からなる平面視四角形状のシート体15を用意する。なお、厚さとしては、温度、湿度等に対する耐性を付与するため、なるべく厚いものを使用すれば良い。例えば、30μm以上。続いて、図12に示すように、このシート体15を端部同士が重なるように丸め、両端が開口した円筒状に形作る。そして、重なった端部同士を連続的に溶着する。この際、配管2の内径に応じて円筒状の径を決定すれば良い。これで第1の溶着工程(S10)が終了する。なお、図12に示す符号S1は、溶着した後の溶着ラインである。
続いて、第2の溶着工程(S11)を行う。具体的には、図13に示すように、両端が開口した円筒状のシート体15の一端側をさらに溶着して、開口していた一端側を完全に塞いで閉塞させる。これにより、シート体15は、他端側だけが開口した状態となる。なお、この工程を行う際、溶着ラインS2が略C型を描くように溶着する。そして、図14に示すように、溶着後、溶着ラインS2の外側に位置する余剰部分を切り離す。
続いて、第3の溶着工程(S12)に行う前に、裏返し工程(S13)を行う。つまり、一端側が略C型状に閉塞した図14に示すシート体15の表裏が反転するように裏返しにする。これにより、図15に示すように、第1の溶着工程(S10)及び第2の溶着工程(S11)で溶着した溶着ラインS1、S2をそれぞれ内面側に反転させて隠すことができる。
この裏返し工程(S13)を行った後、第3の溶着工程(S12)を行う。具体的には、図16に示すように、円筒状のシート体15の他端側を一部開口したままの状態で溶着すると共に、一部開口した部分に先端が開口した導入筒11が一体的に繋がった状態で形成されるように溶着する。
この際、第1の溶着工程(S10)で溶着した溶着ラインS1を除く領域を使用して、導入筒11を形成するように溶着する。つまり、導入筒11には、第3の溶着工程(S12)で溶着した溶着ラインS3だけが残るように溶着を行う。
その結果、バルーン本体10と導入筒11とを有する図3に示すバルーン1を作製することができる。特に、このバルーン1は、膨張した際に円筒状に膨らむ。従って、配管2の内部にセットされた際に、外周面が配管2の内面に沿った状態となるので、自然と配管2の内面にフィットして隙間なく密着する。よって、配管2を途中でしっかりと塞ぐことができ、高いガスシール性を発揮することができるうえ、長時間に亘って密着させ続けることができる。そのため、先に説明したように、割れ等がない高品質な溶接作業を行うことができる。
しかも、上記製造方法によれば、1枚のシート体15から単なる溶着を繰り返すだけの簡単な工程でバルーン1を作製することができる。従って、低コストで効率良くバルーン1を作製することができる。
また、裏返し工程(S13)により、第1の溶着工程(S10)及び第2の溶着工程(S11)時での溶着ラインS1、S2を内面側に隠しているので、これら溶着ラインS1、S2が外表面にでることなく、外表面を滑らかな仕上がりにすることができる。従って、配管2の内面により隙間なくバルーン1を密着させることができ、より高いガスシール性を期待することができる。
また、第2の溶着工程(S11)の際、溶着ラインS2が略C型の軌跡を描くように溶着している。これにより、バルーン1を膨らませた際に、できるだけ角張らせることなく一端側を膨らますことができる。過度に角張ってしまうと、アルゴンガスGが局所的に集中してしまい、他の部分よりも圧力が高まってリークに繋がる恐れがある。しかしながら、角張りをできるだけなくした状態で膨らませるので、リークの可能性を低減することができ、信頼性をより向上することができる。
また、第3の溶着工程(S12)の際、第1の溶着工程(S10)時に生じた溶着ラインS1を除く領域を使用して溶着を行っている。そのため、導入筒11に、第1の溶着工程(S10)及び第3の溶着工程(S12)の2つの工程で生じた2つの溶着ラインS1、S3が残存するのではなく、第3の溶着工程(S12)で生じた溶着ラインS3だけが残存する。そのため、導入筒11の外周面をできるだけ継ぎ目が少ない滑らかな形状にすることができ、リークの可能性を低減することができる。
また、上述した製造方法の際、全て溶着工程で溶着ラインが内側と外側とで2重に並ぶように溶着することが好ましい。こうすることで、溶着ラインからのリークの可能性を低くすることができ、より信頼性の高いバルーン1とすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図17から図19を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態ではドライアイスDとバルーン1とが直接接触していたが、第2実施形態ではドライアイスDとバルーン1との直接的な接触を防止する点である。
即ち、本実施形態の配管溶接方法は、図17に示すように、収納工程(S1)の際、ドライアイスDを保持皿21で保持した状態でバルーン1内に収納する。そのため、図18に示すように、収納されてから昇華により気化するまでの間、ドライアイスDがバルーン1の直接接触してしまうことを防止できる。よって、ドライアイスDの昇華時に生じる吸熱反応によってバルーン1の温度が局所的に急激に低下することを未然に防止できる。そのため、急激な温度低下によってバルーン1が破れてしまう等の可能性を低減することができる。
更に、吸熱反応によって配管2が局所的に冷却され、結露が発生してしまうことを防止することができる。そのため、結露によるバルーン1の破れ等の可能性についても低減することができる。
なお、この場合のバルーン1を製造する方法としては、図19に示すように、第2の溶着工程(S11)と第3の溶着工程(S12)との間に、保持皿21を円筒状のシート体15の内側に固定する固定工程(S14)を行えば良い。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、ドライアイスDを利用してバルーン1を膨張させたが、ドライアイスDに限定されるものではなく、昇華又は揮発により気化する気化性材料であれば構わない。但し、ドライアイスD等の昇華により気化する昇華性材料を、気化性材料として用いることが好ましい。この場合には、固体の状態で取り扱うことができるので、好ましい。なお、気化性材料として昇華性材料を用いる場合には、ナフタレンを利用しても構わない。
また、上記各実施形態において、図20に示すように、セット工程(S2)の際に一定の粘度を有する水溶性の粘着液Mをバルーン1の表面全体に塗布した後、配管2の内部に押し込んでも構わない。
この場合には、バルーン1の表面に粘着液Mが塗布されているので、粘着液Mの表面張力を利用してバルーン本体10を配管2の内面に対してより密着させ続けることができる。従って、長時間に亘ってより確実なガスシール性を期待することができる。また、バルーン本体10が何らかの理由によって若干張りを失ってしまった場合であっても、失った張りの部分に粘着液Mが入り込むので密着状態を引き続き維持させることができる。この点においても、より確実なガスシール性を期待することができる。
なお、粘着液Mは、水溶性であるので、フラッシング工程(S6)によって配管2内から排除することができ、配管2内に残留する恐れがない。このような粘着液Mとしては、例えば、グリセリンやペースト、糊等である。
また、この場合には、バルーン1を製造する際、図21に示すように、第3の溶着工程(S12)の後に、粘着液Mをバルーン1の表面全体に塗布する塗布工程(S15)を行えば良い。
また、上記各実施形態において、図22及び図23に示すように、フラッシング工程(S6)の際に有機物を吸着する吸収フィルタ(フィルタ)20を利用して、溶解したバルーン1の成分をフラッシング後の温水Wから除去する除去工程(S6a)を行っても構わない。
この工程を行うことで、溶解したバルーン1の成分を温水Wから高精度に除去することができる。従って、バルーン1の成分が配管2内に残留してしまうことを防止することができる。よって、配管2に接続されているプラント設備P側にバルーン1の成分が回り込んでしまうことを防止でき、プラント設備P側に動作不良等の悪影響が生じてしまうことを未然に防ぐことができる。
なお、フィルタとして活性炭フィルタを用いても構わない。この場合には、主に炭素を除去することができ、配管2内に炭素を残留させることがない。
また、上記各実施形態では、PVA、具体的にはビニロンVF−L(クラレ製)を利用してバルーン1を作製した場合を例に挙げたが、ビニロンVF−L以外のPVAで作製しても構わないし、PVA以外の材料で作製しても構わない。但し、PVAは、分子中に多くのヒドロキシ基(−OH)を有しているので、水溶性材料としては好適である。
特に、バルーン1に求められる性質としては、湿度には強いが、温水Wには溶け易いという性質が求められる。従って、PVAを利用してバルーン1を作製する場合には、鹸化度及び分子量のグレードを選択することで、溶解温度や高温高湿耐性を所望する状態に近づけることが可能である。例えば、鹸化度を高くした場合には、ヒドロキシ基が少なくなるので、温水Wに溶け難くなり耐水溶性が高くなる反面、透湿性が低下して湿気を通し難くなる。反対に鹸化度を低くした場合には、温水Wに溶け易くなり耐水溶性が低くなる反面、透湿性が増加して湿気を通し易くなる。
このように、温水Wに溶け易くする点に注目すれば鹸化度を低くする必要があるが、湿気を通し難くする点に注目すれば鹸化度を高くする必要がある。従って、上記の相反する性質、即ち、湿度には強いが温水Wには溶け易いという性質を達成するためには、鹸化度を最適なバランスで調整する必要がある。この点、鹸化度を96〜98に調整することが好ましい。こうすることで、温度40℃、湿度90%という高温高湿の環境下であってもバルーン1をセットすることができるうえ、70℃程度の温水Wでバルーン1を溶解することが可能になる。
本発明に係る1実施形態を示す図であって、(a)はバルーンがセットされた2本の配管の突き合わせ部分を溶接している状態の図であり、(b)は溶接終了後、バルーンを除去した状態の図である。 図1に示す配管の突き合わせ溶接を行う際のフローチャートである。 図1に示すバルーンの拡大斜視図である。 図2に示すフローチャートに沿って配管の突き合わせ溶接を行う際の一工程図であって、萎んだバルーン内にドライアイスをセットした状態を示す図である。 図4に示す状態の後、バルーンの導入筒の先端を溶着して塞いだ状態を示す図である。 図5に示す状態の後、配管の内部にバルーンをセットした状態を示す図である。 図6に示す状態の後、ドライアイスの昇華によって2つのバルーンが膨張した状態を示す図である。 図7に示す状態の後、2本の配管を突き合わせ、内部にアルゴンガスを供給している状態を示す図である。 図1(a)に示す状態の後、配管内に温水を供給し、バルーンを溶解させる直前の状態を示す図である。 図3に示すバルーンを製造する際のフローチャートである。 図10に示すフローチャートに沿ってバルーンを製造する際の一工程図であって、水溶性のシート体を用意した状態を示す図である。 図11に示す状態の後、シート体を丸めて円筒形状にした後、シート体の端部を溶着した状態を示す図である。 図12に示す状態の後、円筒状に形成されたシート体の一端側を溶着して完全に塞いだ状態を示す図である。 図13に示す状態の後、溶着した外側の余剰部分を切り離した状態を示す図である。 図14に示す状態の後、表裏が反転するようにシート体を裏返した状態を示す図である。 図15に示す状態の後、シート体の他端側を溶着して、バルーン本体と導入筒とを形成した状態を示す図である。 本発明に係る第2実施形態を示す図であって、ドライアイスを保持する保持皿が固定されたバルーンを示す図である。 図17に示す状態の後、保持皿に保持されたドライアイスの昇華によってバルーンが膨張した状態を示す図である。 保持皿を有するバルーンを製造する際のフローチャートである。 本発明に係る変形例を示す図であって、バルーンの外表面に粘着液を塗布した状態を示す図である。 粘着液を塗布したバルーンを製造する際のフローチャートである。 本発明に係る変形例を示す図であって、温水を利用してバルーンを溶解する際に、バルーンの溶解成分を除去する吸収フィルタを配管にセットした状態を示す図である。 吸収フィルタを利用しながら配管の突き合わせ溶接を行う際のフローチャートである。
符号の説明
D…ドライアイス(気化性材料)
G…アルゴンガス(不活性ガス)
M…粘着液
H…規定値
W…温水(流体)
1…バルーン(配管溶接用バルーン)
2…配管
2a…配管の接合端
10…バルーン本体
11…導入筒
20…吸収フィルタ
21…保持皿
S1…収納工程
S2…セット工程
S3…膨張工程
S3a…確認工程
S4…置換工程
S5…溶接工程
S6…フラッシング工程
S6a…除去工程

Claims (5)

  1. 膨張可能な水溶性のバルーンを利用して、不活性ガスの環境下で2本の配管を突き合わせ溶接する配管溶接方法であって、
    揮発又は昇華によって気化する気化性材料を萎んだ状態の前記バルーン内に導入筒を介して収納した後、該導入筒を塞いで気化性材料を内部に密閉する収納工程と、
    前記気化性材料が収納された前記バルーンを2本の前記配管の内部にそれぞれ押し込むと共に、接合端から規定値以上離間した位置に移動させて溶接時の高温領域から外れる領域外にセットするセット工程と、
    前記バルーンのセット後、前記気化性材料の気化により発生した気体により前記バルーンを膨張させ、該バルーンを前記配管の内面に密着させる膨張工程と、
    2本の前記配管の接合端同士を突き合わせると共に、前記バルーンで囲まれた両配管の内部空間を前記不活性ガスの環境下に置換する置換工程と、
    置換が終了した後、前記不活性ガスを供給しながら前記両配管の突き合せ部分を外面側から溶接する溶接工程と、
    溶接終了後、前記両配管内に流体を供給して前記バルーンを溶解させ、流体と共に両配管内からを排出させるフラッシング工程と、を備えていることを特徴とする配管溶接方法。
  2. 請求項1に記載の配管溶接方法において、
    前記収納工程の際、前記気化性材料を保持皿で保持した状態で、前記バルーン内に収納することを特徴とする配管溶接方法。
  3. 請求項1又は2に記載の配管溶接方法において、
    前記セット工程の際、粘度を有する水溶性の粘着液を前記バルーンの表面全体に塗布した後、前記配管の内部に押し込むことを特徴とする配管溶接方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の配管溶接方法において、
    前記フラッシング工程の際、有機物を吸着するフィルタを利用して、溶解した前記バルーンの成分をフラッシング後の前記流体から除去する除去工程を行うことを特徴とする配管溶接方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の配管溶接方法において、
    前記膨張工程の際、前記バルーンが前記配管の内面に密着したか否かを確認する確認工程を行うことを特徴とする配管溶接方法。
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