JP5291454B2 - 配管溶接方法 - Google Patents
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Description
この場合の具体的な手順としては、配管内に先に仮栓を設置した後、配管同士を突き合わせる。そして、突き合せた配管の内部に不活性ガスを供給する。これにより、仮栓で両側が封止された配管内を不活性ガスの雰囲気にすることができる。つまり、溶接箇所周辺の内部空間だけを不活性ガスの雰囲気にすることができる。このように、配管内の必要な領域だけを不活性ガスに置換できるので、配管全体の内部空間を不活性ガスに置換する上記方法に比べれば効率的である。
従って、不活性ガスを多量に使用してしまううえ、置換作業に多くの時間を要してしまい、依然として事前準備を効率良く行うことができなかった。
この方法は、仮栓として水に溶解するものを利用するので、溶接後に仮栓を回収する手間を省くことができる方法である。具体的な手順としては、溶接箇所である接合端から配管内に押し込んだ位置に膨らませた仮栓を設置した後、配管同士を突き合わせる。そして、配管内部に不活性ガスを供給して、仮栓で両側が封止された配管内、即ち、溶接箇所周辺の内部空間を不活性ガスの雰囲気に置換(アルゴンガスを用いて置換した場合にはアルゴンバックと言う)する。この状態で溶接を行った後、配管内に温水等の流体を流す。すると、配管内に設置された仮栓は、この流体によって溶解する。これにより、仮栓を流体と共に配管外へ簡単に排出することができる。
しかしながら、この場合であっても、溶接時の熱の影響を受けてしまう可能性があり、仮栓の張りが失われて仮栓と配管との間に隙間が生じる恐れがあった。すると、ガスシール性が低下してしまうので、長時間に亘って不活性ガスの雰囲気を溶接部周辺に作り出すことが困難となってしまう。その結果、溶接に悪影響を与えてしまい、酷い場合には溶接を行うこと自体が困難になってしまう恐れがあった。
本発明に係る配管溶接方法は、気体の導入により膨張可能な水溶性のバルーンを利用して、不活性ガスの環境下で2本の配管を突き合わせ溶接する配管溶接方法であって、2本の前記配管内に膨張した前記バルーンを内面に密着するようにそれぞれ複数セットするセット工程と、2本の前記配管の接合端同士を突き合わせると共に、前記バルーンで囲まれた両配管の内部空間を前記不活性ガスの環境下に置換する置換工程と、置換が終了した後、前記不活性ガスを供給しながら前記両配管の突き合せ部分を外面側から溶接する溶接工程と、溶接終了後、前記両配管内に流体を供給して複数の前記バルーンを溶解させ、流体と共に両配管内から排出させるフラッシング工程と、を備え、前記セット工程の際、揮発又は昇華によって気化する気化性材料を萎んだ状態の前記バルーン内に導入筒を介して収納した後、該導入筒を塞いで気化性材料を内部に密閉する収納工程と、前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットすると共に、前記気化性材料の気化により発生した前記気体によりバルーンを膨張させ、該バルーンを配管の内面に密着させる膨張工程と、を行い、前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットする際、複数の前記バルーンのうち前記接合端側に位置するバルーンが、接合端から規定値以上離間し、溶接時の高温領域から外れる領域外に位置するようにセットすることを特徴とする。
従って、湿気が配管の奥側から流れ込んできたとしても、接合端側にセットされたバルーンに関しては、確実なガスシール性を期待することができる。よって、長時間に亘って溶接箇所周辺を不活性ガスの環境下に維持することができ、高品質な溶接作業を行うことができる。
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図13を参照して説明する。
本実施形態の配管溶接方法は、図1に示すように、複数の水溶性のバルーン(配管溶接用バルーン)1を利用して、アルゴンガス(不活性ガス)Gの環境下で2本の配管2を突き合わせ溶接する方法である。なお、図1では、バルーン1を簡略的に図示している。また、本実施形態では、1つの配管2に対してバルーン1を2個セットする場合を例に挙げて説明する。
以下、これら各工程について、詳細に説明する。
本実施形態で使用するバルーン1は、図3に示すように、膨張可能なバルーン本体10と、該バルーン本体10に一体的に形成され、バルーン本体10に気体Eを導入するための導入筒11と、で構成されている。
このバルーン1は、水溶性材料の1つであるPVA(ポリビニルアルコール:Polyvinyl alcohol)、具体的にはビニロンVF−L(クラレ製)で作製されており、略70℃の温水(流体)Wで溶解する水溶性のバルーンである。なお、バルーン1の製造方法については、後に説明する。
バルーン本体10の外径φは、配管2の内径よりも大きいサイズとされ、長さLは配管2の内径よりも少なくとも2倍以上長くすることが好ましい。例えば、呼び径がB呼称サイズで2Bの配管2の場合には約150mm、6Bの場合には約375mm、10Bの場合には約625mm、14Bの場合には約900mmにすると良い。但し、これら数値に限定されるものではなく、さらに長く形成しても構わないし、配管2の内径の2倍以下の長さであっても構わない。
導入筒11は、バルーン本体10よりも遥かに小さい外径の円筒状に形成されており、溶着によって閉塞可能とされている。
まず、図4に示すように、それぞれの配管2内に膨張した2個のバルーン1を内面に密着するようにセットするセット工程(S1)を行う。この際、2個のバルーン1は、それぞれ配管2の内面に密着しているので、配管2を2箇所で塞ぐことができる。また、セットする際、2個のバルーン1の間に隙間が確保されて互いに非接触となるようにセットする。しかも、接合端2a側に位置するバルーン1が、接合端2aから予め決められた規定値H以上離間して、溶接時の熱影響を受けない高温領域外に位置するようにセットする。
なお、規定値Hとは、配管2の材質やサイズ、溶接条件等によって変化する数値であるが、経験的に100mm程度である。
なお、アルゴンガスGを供給する場合には、接合端2aの隙間から供給しても構わない。或いは、接合端2a付近の配管2に凹みを形成すると共に、この凹みに後に穴埋め可能な穴部を形成し、該穴部を通じてアルゴンガスGを供給しても構わない。
なお、2つのバルーン1は、互いに非接触状態となっているので、どちらかのバルーン1が何らかの理由で若干張りが失われた場合であっても、隣のバルーン1が連鎖して張りを失うことがない。
この製造方法は、溶着を繰り返すだけの簡単な工程でバルーン1を低コストで効率良く製造できる方法であって、図7に示すように、第1の溶着工程(S10)と、第2の溶着工程(S11)と、第3の溶着工程(S12)と、を主に行う方法である。
以下、これら各工程について詳細に説明する。
この際、第1の溶着工程(S10)で溶着した溶着ラインS1を除く領域を使用して、導入筒11を形成するように溶着する。つまり、導入筒11には、第3の溶着工程(S12)で溶着した溶着ラインS3だけが残るように溶着を行う。
また、裏返し工程(S13)により、第1の溶着工程(S10)及び第2の溶着工程(S11)時での溶着ラインS1、S2を内面側に隠しているので、これら溶着ラインS1、S2が外表面にでることなく、外表面を滑らかな仕上がりにすることができる。従って、配管2の内面により隙間なくバルーン1を密着させることができ、より高いガスシール性を期待することができる。
また、第3の溶着工程(S12)の際、第1の溶着工程(S10)時に生じた溶着ラインS1を除く領域を使用して溶着を行っている。そのため、導入筒11に、第1の溶着工程(S10)及び第3の溶着工程(S12)の2つの工程で生じた2つの溶着ラインS1、S3が残存するのではなく、第3の溶着工程(S12)で生じた溶着ラインS3だけが残存する。そのため、導入筒11の外周面をできるだけ継ぎ目が少ない滑らかな形状にすることができ、リークの可能性を低減することができる。
次に、本発明に係る第2実施形態を、図14から図18を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、気化性材料の1つである、昇華によって気化するドライアイスDを利用してバルーン1を膨張させる点である。
本実施形態では、図14に示すように、セット工程(S1)の際に、収納工程(S20)と膨張工程(S21)とを行う。具体的には、まず。図15に示すように、萎んだ状態のバルーン本体10内に導入筒11を介してドライアイスDを収納する収納工程(S20)を行う。この際、ドライアイスDは、固体であるので扱い易い。そして、収納した後、図16に示すように、バルーン1の導入筒11を溶着によって塞ぎ、ドライアイスDを内部に密閉する。
次に、本発明に係る第3実施形態を、図19から図21を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態ではドライアイスDとバルーン1とが直接接触していたが、第3実施形態ではドライアイスDとバルーン1との直接的な接触を防止する点である。
更に、吸熱反応によって配管2が局所的に冷却され、結露が発生してしまうことも防止することができる。そのため、結露によるバルーン1の破れ等の可能性についても低減することができる。
この場合には、バルーン1の表面に粘着液Mが塗布されているので、粘着液Mの表面張力を利用してバルーン本体10を配管2の内面に対してより密着させ続けることができる。従って、長時間に亘ってより確実なガスシール性を期待することができる。また、バルーン本体10が何らかの理由によって若干張りを失ってしまった場合であっても、失った張りの部分に粘着液Mが入り込むので密着状態を引き続き維持させることができる。この点においても、より確実なガスシール性を期待することができる。
また、この場合には、バルーン1を製造する際、図23に示すように、第3の溶着工程(S12)の後に、粘着液Mをバルーン1の表面全体に塗布する塗布工程(S15)を行えば良い。
この工程を行うことで、溶解したバルーン1の成分を温水Wから高精度に除去することができる。従って、バルーン1の成分が配管2内に残留してしまうことを防止することができる。よって、配管2に接続されているプラント設備P側にバルーン1の成分が回り込んでしまうことを防止でき、プラント設備P側に動作不良等の悪影響が生じてしまうことを未然に防ぐことができる。
なお、フィルタとして活性炭フィルタを用いても構わない。この場合には、主に炭素を除去することができ、配管2内に炭素を残留させることがない。
特に、バルーン1に求められる性質としては、湿度には強いが、温水Wには溶け易いという性質が求められる。従って、PVAを利用してバルーン1を作製する場合には、鹸化度及び分子量のグレードを選択することで、溶解温度や高温高湿耐性を所望する状態に近づけることが可能である。例えば、鹸化度を高くした場合には、ヒドロキシ基が少なくなるので、温水Wに溶け難くなり耐水溶性が高くなる反面、透湿性が低下して湿気を通し難くなる。反対に鹸化度を低くした場合には、温水Wに溶け易くなり耐水溶性が低くなる反面、透湿性が増加して湿気を通し易くなる。
E…気体
G…アルゴンガス(不活性ガス)
H…規定値
M…粘着液
W…温水(流体)
1…バルーン(配管溶接用バルーン)
2…配管
2a…配管の接合端
10…バルーン本体
11…導入筒
20…吸収フィルタ(フィルタ)
S1…セット工程
S1a…確認工程
S2…置換工程
S3…溶接工程
S4…フラッシング工程
S4a…除去工程
S20…収納工程
S21…膨張工程
Claims (7)
- 気体の導入により膨張可能な水溶性のバルーンを利用して、不活性ガスの環境下で2本の配管を突き合わせ溶接する配管溶接方法であって、
2本の前記配管内に膨張した前記バルーンを内面に密着するようにそれぞれ複数セットするセット工程と、
2本の前記配管の接合端同士を突き合わせると共に、前記バルーンで囲まれた両配管の内部空間を前記不活性ガスの環境下に置換する置換工程と、
置換が終了した後、前記不活性ガスを供給しながら前記両配管の突き合せ部分を外面側から溶接する溶接工程と、
溶接終了後、前記両配管内に流体を供給して複数の前記バルーンを溶解させ、流体と共に両配管内から排出させるフラッシング工程と、を備え、
前記セット工程の際、
揮発又は昇華によって気化する気化性材料を萎んだ状態の前記バルーン内に導入筒を介して収納した後、該導入筒を塞いで気化性材料を内部に密閉する収納工程と、
前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットすると共に、前記気化性材料の気化により発生した前記気体によりバルーンを膨張させ、該バルーンを配管の内面に密着させる膨張工程と、を行い、
前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットする際、複数の前記バルーンのうち前記接合端側に位置するバルーンが、接合端から規定値以上離間し、溶接時の高温領域から外れる領域外に位置するようにセットすることを特徴とする配管溶接方法。 - 気体の導入により膨張可能な水溶性のバルーンを利用して、不活性ガスの環境下で2本の配管を突き合わせ溶接する配管溶接方法であって、
2本の前記配管内に膨張した前記バルーンを内面に密着するようにそれぞれ複数セットするセット工程と、
2本の前記配管の接合端同士を突き合わせると共に、前記バルーンで囲まれた両配管の内部空間を前記不活性ガスの環境下に置換する置換工程と、
置換が終了した後、前記不活性ガスを供給しながら前記両配管の突き合せ部分を外面側から溶接する溶接工程と、
溶接終了後、前記両配管内に流体を供給して複数の前記バルーンを溶解させ、流体と共に両配管内から排出させるフラッシング工程と、を備え、
前記セット工程の際、
粘度を有する水溶性の粘着液を前記バルーンの表面全体に塗布した後、前記配管の内部にセットすると共に、そのセットの際、複数の前記バルーンのうち前記接合端側に位置するバルーンが、接合端から規定値以上離間し、溶接時の高温領域から外れる領域外に位置するようにセットすることを特徴とする配管溶接方法。 - 気体の導入により膨張可能な水溶性のバルーンを利用して、不活性ガスの環境下で2本の配管を突き合わせ溶接する配管溶接方法であって、
2本の前記配管内に膨張した前記バルーンを内面に密着するようにそれぞれ複数セットするセット工程と、
2本の前記配管の接合端同士を突き合わせると共に、前記バルーンで囲まれた両配管の内部空間を前記不活性ガスの環境下に置換する置換工程と、
置換が終了した後、前記不活性ガスを供給しながら前記両配管の突き合せ部分を外面側から溶接する溶接工程と、
溶接終了後、前記両配管内に流体を供給して複数の前記バルーンを溶解させ、流体と共に両配管内から排出させるフラッシング工程と、を備え、
前記セット工程の際、
揮発又は昇華によって気化する気化性材料を萎んだ状態の前記バルーン内に導入筒を介して収納した後、該導入筒を塞いで気化性材料を内部に密閉する収納工程と、
前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットすると共に、前記気化性材料の気化により発生した前記気体によりバルーンを膨張させ、該バルーンを配管の内面に密着させる膨張工程と、を行い、
前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットする際、複数の前記バルーンのうち前記接合端側に位置するバルーンが、接合端から規定値以上離間し、溶接時の高温領域から外れる領域外に位置するようにセットし、
さらに、前記気化性材料が収納された前記バルーンを前記配管の内部にセットする前に、粘度を有する水溶性の粘着液を前記バルーンの表面全体に塗布しておくことを特徴とする配管溶接方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の配管溶接方法において、
前記セット工程の際、複数の前記バルーンが互いに非接触となるように、バルーン間に隙間を確保することを特徴とする配管溶接方法。 - 請求項2に記載の配管溶接方法において、
前記セット工程の際、前記気体として不活性ガス或いは二酸化炭素を用いて前記バルーンを膨張させることを特徴とする配管溶接方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の配管溶接方法において、
前記フラッシング工程の際、有機物を吸着するフィルタを利用して、溶解した前記バルーンの成分をフラッシング後の前記流体から除去する除去工程を行うことを特徴とする配管溶接方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の配管溶接方法において、
前記セット工程の際、前記バルーンが前記配管の内面に密着したか否かを確認する確認工程を行うことを特徴とする配管溶接方法。
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