JP2010149062A - 流体の混合装置及び混合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】流体の剥離及び逆流を極力生じさせることなく、複数種の液体を均一且つ迅速に混合することができる。
【解決手段】
第1液、第2液をそれぞれ供給する液体供給路12A、12Bと、液体供給路12A、12Bと連通し、第1液、第2液を合流させる合流部14と、合流部14と連通し、該合流した液体の流れ方向に拡径するテーパ部を有する混合部16と、を備えた。
【選択図】 図2

Description

本発明は、複数種の流体を混合する流体の混合装置及び混合方法に関し、特に、化学工業や医薬品工業において、マイクロミキサを用いて例えば流体材料を混合、反応させて天然由来素材の微粒子(分散物等)を製造する技術に関する。
化学反応を行うための流体成分の混合や水溶液と油状物質の乳化、分散等を目的として、各種ミキサが提案されている。中でも、混合する複数種の流体を、相当径1mm以下のマイクロ流路内に導入する構造を有するマイクロミキサ(広義にはマイクロデバイスともいう)が、効率的な混合・分散を行えることから注目されている。
このようなマイクロミキサとしては、例えば、特許文献1では、複数種の流体を接触させる液接触部と、これにより混在状態となった複数種の流体を層流混合するための混合用細孔と、よりなるT字型流路を備えたマイクロミキサが提案されている。これにより、有機化合物を溶解させた第1液と、溶解させていない第2液とを接触させた後、層流混合させることにより有機化合物の微粒子を析出・生成することが記載されている。
特許文献2では、複数種の流体を供給流路から合流領域に供給して合流させた後、排出流路から排出させるマイクロデバイスが開示されている。そして、排出流路の一部を縮径することで、拡散距離を短くし、混合を促進することが記載されている。
特許文献3では、複数種の流体を混合する流体混合部内に流体の流れ方向に沿って移動可能な背圧弁を設けたマイクロミキサが提案されている。これにより、流体混合ディスクと混合流体排出口との間で任意の圧力差をつけることができ、圧力や温度が精密に制御された環境で混合プロセスを行うことができるとされている。
特開2007−8924号公報 特開2005−288254号公報 特開2007−136411号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3において流体を混合する混合部では、複数種の流体を層流混合するため、拡散に依存した混合となり、混合に時間がかかるという問題がある。
一方、流路径をパルス的に拡大させて複数種の溶液を乱流混合する場合、拡大部で流体の剥離と逆流が発生することにより、混合反応によって生成される粒子が多分散化されるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、流体の剥離と逆流を生じさせることなく、複数種の流体を均一且つ迅速に混合することができる流体の混合装置及び混合方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、複数種の流体をそれぞれ供給する複数の供給流路と、前記複数の供給流路と連通し、前記複数種の流体を合流させる合流部と、前記合流部と連通し、該合流した流体の流れ方向に拡径するテーパ部を有する混合部と、を備えたことを特徴とする混合装置を提供する。
ここで、本発明において「流体」とは、液体、液体として扱うことができる液体混合物、及び気体を含むものとして定義する。液体は、溶解していない他の種類の液体を含むものであってもよく、例えばエマルジョンを例示することができる。液体混合物としては、固体及び/又は気体を含むものを挙げることができ、固体として例えば粉末のような微小固体(例えば金属微粒子)を例示でき、気体として例えば微細気泡を例示できる。また、気体は固体又は固体微粒子を含んでいてもよい。
請求項1によれば、複数種の流体を混合する混合部が、流体の流れ方向に拡径するテーパ部を有するので、合流後の流体が剥離されることなく乱流混合を行うことができる。これにより、合流後の流体が剥離することで生じる流体の逆流を抑制でき、均一且つ迅速に混合することができる。したがって、複数の流体を混合反応させて微粒子を生成する場合、流体の逆流が生じないので、微細で且つ単分散性の良い微粒子を効率的に生成することができる。
請求項2は請求項1において、前記テーパ部は、前記流体の流れ方向において前記合流部の直後に設けられたことを特徴とする。
請求項2によれば、テーパ部は、流体の流れ方向において合流部の直後に設けられるので、複数種の流体を合流させた直後から乱流状態で混合させることができる。これにより、複数種の流体を短時間で混合することができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記テーパ部を含む平面内において、前記流体の流れ方向に対する前記テーパ部の拡径角度は10度以下であることを特徴とする。
請求項3によれば、テーパ部を含む平面内において、該テーパ部の流れ方向(流体を水平方向に流した場合には水平方向)に対する拡径角度を10度以下にするので、混合部において流体の剥離が生じるのを抑制できる。これにより、剥離によって生じる流体の逆流を抑制できる。
テーパ部の拡径角度は2度以上10度以下であることがより好ましい。
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記複数の供給流路は、等価直径が1mm以下の断面を有することを特徴とする。
請求項4によれば、複数の供給流路は、その断面の等価直径が1mm以下であるため、複数種の流体を安定な層流状態で合流部に供給することができる。
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記複数の供給流路は、同一線上で対向するように設けられたことを特徴とする。
請求項5によれば、複数の供給流路が同一線上で対向するように設けられたので、複数種の流体を衝突させるエネルギーを利用して混合性能を高めることができる。
請求項6は請求項1〜4の何れか1項において、前記複数の供給流路は、その前記合流部への連通口が互いに前記合流部の径方向断面の中心に対して偏心するように対向配置され、前記複数種の流体に旋回流を生じさせるように設けられたことを特徴とする。
請求項6によれば、複数種の流体を偏心させて合流させることで、旋回流を生じさせるので旋回エネルギーを利用して混合性能を高めることができる。
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、複数種の流体を請求項1〜6の何れか1項に記載の混合装置を用いて混合することを特徴とする流体の混合方法を提供する。
請求項7によれば、複数種の流体を請求項1〜6の何れか1項に記載の混合装置を用いて混合するので、混合部において流体の剥離に起因する逆流を生じることなく乱流混合できる。これにより、複数種の流体同士を迅速且つ均一に混合させることができる。したがって、複数の流体を混合反応させて微粒子を生成する場合、流体の逆流が生じないので、微細で且つ単分散性の良い微粒子を効率的に生成することができる。
請求項8は請求項7において、前記混合部において前記複数種の流体は分散剤を含み、該複数種の流体を混合することにより微粒子を生成することを特徴とする。
請求項8によれば、少なくとも前記混合部において複数種の流体は分散剤を含む流体であるため、乱流混合により生成した微粒子が再凝集・合一するのを抑制できる。このように、分散剤を含むことと、前述した流体が逆流しないこととが相まって、一層単分散性に優れた微粒子を効率よく生成できる。
請求項9は請求項7又は8において、前記複数種の流体は、天然由来成分に対する溶解性が相対的に高い易溶媒と、該溶解性が相対的に低い貧溶媒とを含み、前記易溶媒と前記貧溶媒とを混合することにより前記天然由来成分の微粒子を生成することを特徴とする。
本発明の流体の混合方法は、天然由来成分を含む溶液同士の混合・反応を迅速且つ均一に行って天然由来成分の微粒子を析出させるような析出法において特に有効である。
本発明によれば、流体の剥離に起因する流体の逆流を極力生じさせることなく乱流混合することができるので、複数種の流体を均一且つ迅速に混合することができる。したがって、複数の流体を混合反応させて微粒子を生成する場合、流体の逆流が生じないので、微細で且つ単分散性の良い微粒子を効率的に生成することができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る混合装置及び方法の好ましい実施の形態について説明する。
本実施形態では、第1液、第2液の少なくとも一方が分散剤を含み、該第1液、第2液を混合反応することにより微粒子を生成する場合で説明する。
図1は、本発明の流体の混合装置及び混合方法が適用されるマイクロミキサ10の一例を示す概念図である。図2は、マイクロミキサ10の上面図である。
マイクロミキサ10は、主に、第1液、第2液をそれぞれ供給する流体供給路12A、12Bと、該第1液、第2液を合流させる合流部14と、合流後の第1液、第2液を混合させる混合部16と、混合後の液を回収する回収部18と、を備えている。
流体供給路12A、12Bは、合流部14に連通しており、第1液、第2液をそれぞれ合流部14に供給する。流体供給路12は第1液、第2液の混合を促進する上で、互いに正面衝突させるように同一直線上に設けられている。
合流部14は、流体供給路12A、12Bから流れる第1液、第2液を接触させ、混在状態にする。
混合部16は、合流部14の直後から第1液、第2液の流れ方向に拡径するテーパ状に形成され、混在状態となった第1液、第2液を混合、反応させる。テーパの拡径角度θは、図2に示すように、液の流れ方向(図2においては、水平方向)に対して0°よりも大きく90°よりも小さい値であり、2°以上10°以下に設定されることが好ましい。
混合部16の液の流れ方向の長さLは、第1液、第2液の混合が進み、反応が終了するのに十分な長さに設定される。このため、第1液、第2液の線速度やテーパの角度θにもよるが、例えば、5mm〜15mmの範囲が好ましく例えば10mmに設定することができる。
流体供給路12A、12B、合流部14の断面積は、特に限定はないが、例えば単分散性の高い微小サイズの微粒子やエマルションを生成する反応の場合、等価直径1mm以下のマイクロ流路とすることが好ましい。
等価直径(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意断面形状の配管(本発明では流路)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、一辺aの正四角形管ではdeq=4a/4a=a、一辺aの正三角形管では、deq=a/√3、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2h、となる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
流体供給路12A、12B、合流部14、混合部16の断面形状は、特に限定されず、矩形の他にも、例えば円形、半円形、V字型、楕円形、台形等であってもよい。
第1液、第2液としては、溶媒だけでなく、溶媒に溶質(固体も含む)を溶解させた溶液も含まれる。
このように構成することで、まず、流体供給路12A、12Bから第1液、第2液を供給し、合流部14において衝突・接触させる。
次いで、混合部16において、混在状態の第1液、第2液が乱流状態で混合される。このとき、第1液、第2液は流れ方向に徐々に減圧されるため、急激に減圧されることがない。これにより、流路径がパルス的(例えば拡径角度θが90°)に拡大する場合とは異なり、液体の流れが急激に拡大されることによる液体の剥離と、剥離に起因する逆流とを効果的に抑制できる。したがって、例えば微粒子を生成する反応の場合、逆流によって反応場が不均一になるのを抑制でき、更に微粒子同士が凝集するのを防止できる。
これにより、複数の流体を混合反応させて微粒子を生成する場合、流体の逆流が生じないので、微細で且つ単分散性の良い微粒子を効率的に生成することができる。
なお、本発明において製造される乳化・分散物の粒径は市販の粒度分布計等で計測することができる。乳化・分散物の粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明の乳化・分散物粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA−EX150(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。本発明における粒径は、前記動的光散乱式粒径分布測定装置ナノトラックUPA−EX150(日機装(株))を用いて測定した値を採用する。
本実施形態では、第1液、第2液の混合性能を高める上で、流体供給路12A、12Bを同一線上で互いに対向するように配置したT字型流路の例で説明したが、これに限定されず、流体供給路12A、12Bが所定の角度で交差するY字型流路であってもよい。
また、本実施形態では、混合部16が2次元方向のみで拡径するテーパ状に形成された例を示したが、これに限定されず、3次元で拡径するテーパ状であってもよい。また、混合部16に単一のテーパ部を形成する例を示したが、これに限らず、複数のテーパ部を形成してもよい。また、混合部16全体をテーパ部としたが、これに限定されず、混合部16の一部(流れ方向上流側)をテーパ部としてもよい。
更には、テーパの角度θを多段階で変えてもよい。これにより、乱流混合の度合いを調整することができる。
第1液、第2液の混合性能を高める上で、合流部14直前の流体供給路12A、12Bの形状や配置を以下のようにすることもできる。
図3は、マイクロミキサ10の別態様を示す上面図である。
図3に示すように、マイクロミキサ10は、流体供給路12A、12Bの断面積を、合流部14の直前で小さくした以外は図2とほぼ同様に構成されている。これにより、第1液、第2液の線速度を大きくした状態で合流部14で衝突させるので、混合性能を高めることができる。
流体供給路12A、12Bの断面積は、合流部14の直前において等価直径が1mm以下とすることが好ましい。
図4は、マイクロミキサ10の別態様を示す模式図であり、このうち図4(A)はマイクロミキサ10の上面図であり、図4(B)はa−a線断面図である。
図4(B)に示すように、マイクロミキサ10は、合流部14、混合部16及び回収部18の径方向の断面形状が円形に形成され、且つ流体供給路12A、12Bの合流部14への流体導入口が、合流部14の流路断面中心に対して偏心するように対向し、それぞれ円周方向に流体を導入するように配置された以外は図2とほぼ同様に構成されている。
このように構成することで、流体供給路12A、12Bから第1液、第2液を導入すると、合流部14、混合部16内に同一方向の旋回流を生じる。これにより、第1液、第2液の混合性能を一層高めることができる。
なお、上記各実施形態では、第1液、第2液のうち少なくとも一方に分散剤等を含む場合について述べたが、これに限定されず、第1液、第2液とは別に分散剤溶液を供給する流路を設けてもよい。
図5は、マイクロミキサ10の別態様を説明する説明図である。このうち、図5(a)はマイクロミキサ10の斜視図であり、図5(b)は図5(a)の上面図である。
図5のマイクロミキサ10は、分散剤溶液を供給する分散剤供給流路13を合流部14に連通するように設けた以外は同様に構成されている。
このように構成することで、第1液、第2液中に予め分散剤を含まない場合でも、合流部14において分散剤を混合できる。これにより、例えば混合部16で微粒子を生成する反応を行う際、乱流混合しても生成した微粒子同士が凝集するのを防ぐことができる。この分散剤の添加と、上述した液体の逆流抑制とが相まって、生成される微粒子の微細化と単分散性を一層向上できる。
次に、本発明の混合方法及び装置の応用例について説明する。
図6は、本発明の混合装置を適用したマイクロミキサ30の一例を示す斜視図である。
同図に示すように、マイクロミキサ30は、主に、それぞれが円板状に形成された供給ディスク32、合流ディスク34、混合ディスク36、及び排出ディスク38とより構成されている。マイクロミキサ30を構成するに際しては、これらの各ディスク32、34、36、38が円柱状となるように一体に締結して組み立てる。この組み立てには、例えば、各ディスク32、34、36、38の周辺部に円柱を貫通する孔(不図示)を等間隔に設けてボルト/ナットで各ディスク32、34、36、38を一体に締結すればよい。
供給ディスク32の合流ディスク34に対向する面には、断面が矩形の環状チャンネル39および40が同心状に形成されている。図示した態様では、供給ディスク32をその厚さ(または高さ)方向に貫通してそれぞれの環状チャンネルに到る孔42、44が形成されている。
合流ディスク34は、その厚さ方向に貫通する孔46が形成されている。この孔46は、マイクロミキサ30を構成するために各ディスク32、34、36、38を締結した場合、供給ディスク32に対向する合流ディスク34の面に位置する孔46の端部が環状チャンネル39に開口するようになっている。図示した態様では、孔46は2つ形成され、これらが環状チャンネル39の周方向で等間隔に配置されているが、流路56の本数に合わせて2つ以上でもよい。
合流ディスク34には、孔46と同様に孔48が貫通して形成されている。孔48も、孔46と同様に、環状チャンネル40に開口するように形成されている。図示した態様では、孔48も環状チャンネル40の周方向で等間隔に2つ配置され、かつ、孔46と孔48が交互に位置するように配置されている。この場合も孔48は流路54の本数に合わせて2つ以上でもよい。
合流ディスク34の混合ディスク36に対向する面52には、マイクロチャンネル54、56が形成されている。このマイクロチャンネル54、56の一端は、孔46、48の開口部であり、他方の端部は、面52の中心58であり、全てのマイクロチャンネルはこの中心である合流部58に向かって孔から延在して中心で合流する。マイクロチャンネルの断面は、例えば矩形であってよい。
混合ディスク36は、その中心を通過して厚さ方向に貫通し、且つ液体の流れ方向にテーパ状に拡径する拡径孔60が形成されている。この拡径孔60は、一端が合流部58に開口し、他端にて排出ディスク38の中心に開口している。
排出ディスク38は、その中心を通過して厚さ方向に貫通する排出孔62が形成されている。この排出孔62は、一端にて混合ディスク36の中心にある拡径孔60に開口し、他端にてマイクロミキサ30の外部に開口している。
即ち、孔42及び44の端部にてマイクロミキサの外部から供給される第1液、第2液は、それぞれ孔42及び44を経由して環状チャンネル39及び40に流入する。
環状チャンネル39に流入した第1液は、該チャンネルと連通する孔46を経由してマイクロチャンネル56に入る。また、環状チャンネル40と孔48が連通し、環状チャンネル40に流入した第2液は、孔48を経由してマイクロチャンネル54に入る。そして、第1液、第2液は、合流領域において2つに分割され、それぞれマイクロチャンネル54及び56に流入し、その後、合流部58に向かって流れる。
そして、マイクロチャンネル54の中心軸とマイクロチャンネル56の中心軸は、合流部58にて交差する。合流部58で合流した液体は、拡径孔60を流れる中で乱流混合される。その後、排出孔62を経由してマイクロミキサ30の外部に排出される。
このように、テーパ状の拡径孔60において、第1液、第2液を乱流混合する際に、第1液、第2液の流れが急激に拡大されないので、液体の剥離及び剥離に起因する逆流の発生を抑制できる。したがって、例えば微粒子を生成する反応の場合、逆流によって反応場が不均一になるのを抑制でき、更に微粒子同士が凝集するのを防止できる。
なお、マイクロミキサの製造、特に各要素の製造には、半導体加工技術、特にエッチング(例えばフォトリソエッチング)加工、超微細放電加工、光造型法、鏡面仕上げ加工技術、拡散接合技術等の精密機械加工技術を利用でき、また汎用的な旋盤、ボール盤を用いる機械加工技術も利用できる。
マイクロミキサに使用する材料は、特に限定されるものではなく、上述の加工技術を適用できる材料であって、合流させるべき流体によって影響を受けないものであればよい。具体的には、金属材料(鉄、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、各種の合金等)、樹脂材料(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(シリコン、石英等)を用いることができる。
なお、マイクロミキサに第1液、第2液を供給する導管を接続するため、またマイクロミキサから反応生成物を含む反応生成液Cを排出する導管を接続するために、孔42、44及び62にはネジ部を設けている。
以上説明したように、本発明に係る混合方法及び装置を採用することにより、液体の剥離及び逆流の発生を極力抑制しながら、第1液、第2液を乱流状態で混合できる。これにより、例えば、第1液、第2液とを混合反応させて微粒子を生成する際でも、生成後の微粒子の再凝集を防ぐと共に、単分散性に優れた微粒子を迅速に生成できる。
なお、上記図6の実施形態では、合流ディスク34において各液の流れをそれぞれ2つに分割する例を示したが、これに限定されず、3つ以上に分割してもよい。また、分散液を第1、第2液のうち少なくとも一方に含有させる例で説明したが、これに限定されず、例えば供給ディスク32、合流ディスク34の中心に厚み方向に貫通孔を設け、該孔から分散剤溶液を供給するようにしてもよい。
次に、本実施形態に使用される各種材料について説明する。以下、第1液、第2液として油相、水相とを混合し、水中油滴型エマルションを製造する場合について説明する。
〔界面活性剤〕
本発明で用いられる界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤より任意に選択される。前記界面活性剤は、油相及び水相のいずれか一方に含有しても、また、双方に含有してもよいが、少なくとも1つは水相に添加すること好ましい。本発明で使用できる界面活性剤の少なくとも一つはエマルション粒径の微細化の観点から、水溶性の界面活性剤であることが好ましい。水溶性の界面活性剤としては、水性媒体に溶解する界面活性剤であれば、特に限定は無い。
本発明で好適に使用できる非イオン性界面活性剤の例としては、(モノ、ジ、トリ)グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、などが挙げられる。上記の中でも、エマルションの安定性向上の観点から、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルである。
これらの非イオン性界面活性剤をそれぞれ単独または、それらの2種以上を任意の割合で併用することもできる。
また、上記の非イオン性界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が4以上、好ましくは6〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−15D、理研ビタミン(株)社製ポエムJ−0381V、ポエムJ−0021Vなどが挙げられる。
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170S、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、OWA−1570、L−1695、LWA−1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルF140、DKエステルF160、DKエステルSS等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明には上記の水溶性非イオン性界面活性剤と併用してレシチンを用いることができる。本発明に用いられるレシチンは、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、リン脂質とも称されるものである。
レシチンは、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油性成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
このようなレシチンの具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。
このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
これら非イオン性界面活性剤の添加量は、エマルション全質量に対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。
また、機能性油性成分に対しては、好ましくは10〜1000質量%、より好ましくは50〜500質量%である。
非イオン性界面活性剤の添加量を0.1質量%以上とすることにより、微細な粒径の乳化物が得られ易くなり、得られた乳化物の安定性が向上する点で好ましい。また、50質量%以下とすることにより、乳化物の泡立ちが激しくなる等の問題点を生じ難くなる点で好ましい。
アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸カリウム、ベヘニン酸カリウム等の高級脂
肪酸塩、P O E ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩、N − ステアロイル− L − グルタミン酸モノナトリウム塩等のN − アシル− L − グルタミン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、P O E ラウリル硫酸トリエタノールアミン、P O E ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN − アシルサルコシン酸塩、N − ミリストイル− N − メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、P O E オレイルエーテルリン酸ナトリウム、P O E ステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のアルキルエーテルリン酸塩、ジ− 2 − エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼン、スルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ( N 、N −ジメチル− 3 、5 − メチレンピペリジニウム) 、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、P O E アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、2 − ウンデシル− N 、N 、N − ( ヒドロキシエチルカルボキシメチル) − 2 − イミダゾリンナトリウム、2 − ココイル− 2 − イミタゾリニウムヒドロキサイド− 1 − カルボキシエチロキシ2 ナトリウム塩等の、イミダゾリン系両性界面活性剤、2 − ヘプタデシル− N − カルボキシメチル− N − ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
また、これらを単独で添加することも可能であり、また二種以上を組み合わせて添加することも可能である。
エマルションの経時安定性を高めるという理由から、イオン性界面活性剤を含有することが好ましく、クラフト点の低いイオン性界面活性剤が特に望ましい。
一般にイオン性界面活性剤は水溶性溶媒への溶解度が低いが、この場合、未中和形態のイオン性界面活性剤を水溶性溶媒に溶解し、中和剤を溶解した水相に注入することにより、水相中で親水基をイオン化させ親水化することができる。
イオン性界面活性剤は、水溶性溶媒に溶解させる場合、N − ステアロイル− L − グルタミン酸、イソステアリン酸、P O E ( 4 . 5 ) ラウリルエーテルカルボン酸等が好適であり、水相のp H を調整することにより水中でイオン化し親水性界面活性剤として作用する。水相に溶解させる場合、N − ステアロイル− L − グルタミン酸モノナトリウム、イソステアリン酸カリウム、P O E ( 4 . 5 ) ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N − ステアロイル− N − メチルタウリンナトリウム等が好適である。
界面活性剤の配合量は、組成物全量に対して0.001〜1質量%であり、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
〔油性成分〕
本発明における油相には油性成分、機能性油性成分を含有する。また、必要に応じて、後述の本発明における非イオン性界面活性剤、及びその他の添加物を添加することができる。
ここで、「機能性油性成分」とは、食品や化粧品に使用した際に有用な効果を示す油性成分を表す。
また、本発明における「化粧品用機能性材料」とは、前記機能性油性成分のうち、化粧品用材料として用いることができる全ての成分を言う。
本発明における「食品用機能性材料」とは、前記機能性油性成分のうち、食品用材料として用いることができる全ての成分をいう。
本発明に使用できる油性成分としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の流体油脂、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、 P O E ラノリンアルコールエーテル、 P O E ラノリンアルコールアセテート、 P O E コレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、P O E 水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類、流動パラフィン、スクワレン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、1 2 − ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、2 − デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 1 2 − ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ− 2 − エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N − アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ− 2 − ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ− 2 − エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ− 2 −エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ− 2 − エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル− 2 − エチルヘキサノエート、2 −エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ− 2 − ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸− 2 − ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N − ラウロイル− L − グルタミン酸− 2 − オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ− 2 − ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ− 2 − エチルヘキシル、ミリスチン酸− 2 − ヘキシルデシル、パルミチン酸− 2 − ヘキシルデシル、アジピン酸2 − ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸− 2 − エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン、3 次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコンゴム等のシリコーンが挙げられる。
さらに、ステロール類、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2 − ヒドロキシ− 4 − メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ビタミンA 及びその誘導体、ビタミンD 及びその誘導体、ビタミンE 及びその誘導体、ビタミンK 及びその誘導体等のビタミン類、動植物抽出物、油溶性薬剤、色素、香料等が挙げられる。
前記機能性油性成分として、化学構造面からは、油脂類、炭化水素、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などがある。また、それらの混合物である、各種の植物由来油、動物由来油も含まれる。
また、前記機能油性成分の機能面からは、紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、毛髪保護剤、分散剤、溶剤、美白剤、抗シミ剤、細胞賦活剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、ビタミン類、メタボリックシンドローム改善剤、降圧剤、鎮静剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる好ましい機能性油性成分の例としては、カロテノイド類、ビタミンE類(トコフェロール、トコトリエノール等)、コエンザイムQ類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)などを挙げることができる。
本発明において、これらの機能性油性成分の中で、特に油溶性機能色素であるカロテノイド(カロチノイドとも言う)類に本発明の製造方法を適用すると体内への吸収性が良く且つ保存安定性に優れるという顕著な効果を有する水中油滴型エマルションとすることができる。
本発明に用いられるカロテノイド類は常法に従って得られるものが使用できる。カロテノイド類は、天然に存在する黄色から赤色のテルペノイド類の色素であり、これには植物類、藻類、及びバクテリアのものが含まれる。
カロテノイド類としては、炭化水素類(カロテン類)及びこれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
これらの例として、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
カロテノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロテノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
本発明において用いられるカロテノイド類は乳化粒径の微細化の観点から、好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチンである。
アスタキサンチンは、着色料としてだけでなく酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果を有することから、従来より、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等に添加されている。
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38−165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C40H5204、分子量596.82)である。
本発明においては、上記のアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステル等の誘導体を含めて「アスタキサンチン類」と称する。
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411−1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen−Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625−627.)。
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)−Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009−1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003−1007.)。
アスタキサンチンおよび同エステル体はR. Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465−466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571−587.)。
前記アスタキサンチン及びアスタキサンチンのエステル(アスタキサンチン類)を含有するアスタキサンチン含有オイルは、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出することができる。例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは異なることが知られている。
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物(抽出エキス)、またさらにこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であっても良い。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
前記ヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含み、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものである。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7等が挙げられる。
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
本発明における機能性油性成分は機能性の異なる成分同志を組み合わせる事で相乗効果をもたらす場合がある。例えば、カロテノイド類とトコフェロール類を組み合わせで含有するエマルション組成物は特に抗酸化力において好ましいものである。トコフェロール類とはトコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群から選ばれるものである。トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。本発明のエマルション組成物におけるカロテノイドに対するトコフェロールの含有量は、特に限定されないが、カロテノイド量に対して0.1〜5の比率であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.5〜2の比率である。
本発明の水中油滴型エマルションにおける機能性油性成分の含有量は、乳化粒径の微細化と生産効率の観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である。
〔水溶性溶媒〕
水中油滴型エマルションにおける油相には、機能性油性成分及びその他の成分を溶解するために、また、得られるエマルション中の油滴の平均粒径をより微細化するために有機溶媒を添加することが好ましい。
本発明に使用できる有機溶媒としては水溶性であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品、化粧品等への用途を考慮したとき、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましく、エタノールが特に好ましい。尚、本発明においては、油相中における有機溶媒の含有量は、少ないほど好ましい。
[酸化防止剤]
水中油滴型エマルションは、機能性油性成分の安定性保持の観点から、酸化防止剤を含むこが好ましい。
前記酸化防止剤は、油相及び水相のいずれか一方に含有しても、また、双方に含有してもよいが、少なくとも1つは油相に添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはそれらの塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはそれらの塩からなる化合物群、(b)ポリフェノール類からなる化合物群、(c)ラジカル捕捉剤等が挙げられる。
また、親水性の酸化防止剤、及び/又は、油溶性の酸化防止剤を、単独又は併用して使用することができる。例えば、親水性の酸化防止剤としては化合物群(a)に属する化合物、油溶性の酸化防止剤としては化合物群(b)に属する化合物が挙げられる。
以下、前記酸化防止剤として、前記化合物群(a)〜(c)の具体的な例を挙げるが、本発明に使用できる酸化防止剤を制限するものではない。
(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはそれらの誘導体またはそれらの塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはそれらの塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸2−グルコシド等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩が特に好ましい。
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはそれらの塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
(b)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルテイン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。
また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。
これらのポリフェノール類のうち、安定化効果の大きさの点で特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
(c)ラジカル捕捉剤からなる群
ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である。
本発明において用いることができるラジカル捕捉剤としては、ラジカル捕捉剤としての機能を有するものであればいずれでもよい。
ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
前記酸化防止剤の含有量は、水中油滴型エマルションの全質量に対して、一般的には0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%である。
〔安定化剤〕
エマルションの安定化剤および、後述するような乾燥粉末化のキャリア素材として、種々の水溶性高分子化合物や水分散性微粒子を用いることができる。以下、前記安定化剤およびキャリア素材を併せて安定化剤というものとする。
前記水溶性高分子化合物としては、広く合成高分子、天然高分子、半合成高分子のいずれも用いることができる。
本発明では水溶性高分子化合物の中でも、安定性及び粉末化の容易性の観点から、特に糖類、タンパク質類およびそれらの複合体が好ましい。
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、デキストリン、デンプン誘導体、ガム類、ムコ多糖類、セルロース類等を含むがこれらに限定されるものではない。
これらの中で、代表的なものは、アガロース、アラビノース、アミロース、アミロペクチン、アカシアガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルキルグリコシド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルドース、イヌリン、オリゴ糖、ガッティガム、カードラン、カラギーナン、ガラクトマンナン、ガラクトース、キサンタンガム、キシロース、キシログルカン、キチン、キトサン、グアーガム、クラスターデキストリン、β−グルカン、グルクロン酸、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グリセルアルデヒド、グルコサミン、グルコース、グルコマンナン、ケトース、コンドロイチン硫酸、サイリウムシードガム、ジェランガム、シクロデキストリン、スクロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セロビオース、ソルビトール、デオキシリボース、デキストリン、マルトデキストリン、転化糖、デンプン、大豆多糖類、糖アルコール、糖タンパク質、トラガントガム、トレハロース、ヒアルロン酸、フコース、フルクトース、プルラン、ペクチン、ヘパリン、ヘミセルロース、マルトース、マンニトール、マンナン、ラクトース、リボース等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらの糖類の中では、粉末の取り扱い性の観点から、特に多糖類が好ましい。多糖類の中でも、乳化粒径の微細化および粉末の取り扱い性の点で、安定化および粉末化素材として、アラビアガム、イヌリン、デキストリン、マルトデキストリンが好ましく、アラビアガム、イヌリンが特に好ましい。
また、本発明で用いることができるタンパク質類は、アミノ酸がペプチド結合で重合したポリマー又はオリゴマーであればいかなる種類のものも用いることができるが、より好ましくは天然由来で且つ水溶性のものである。
タンパク質にはアミノ酸からなる単純タンパク質と、アミノ酸以外の構成成分を含む複合タンパク質とがあり、いずれも用いることができる。
単純タンパク質の例としては、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロイン、セリシン、ケラチン、プロタミン等が挙げられる。
また複合タンパク質としては、炭水化物に結合したタンパク質である糖タンパク質、脂質に結合したタンパク質であるリポタンパク質、金属イオンに結合したタンパク質である金属タンパク質、リボ核酸に結合したタンパク質である核タンパク質、リン酸基に結合したタンパク質であるリンタンパク質等がある。
一方、一般的には、タンパク質原料から呼称される場合も多く、動物性筋肉タンパク質、乳タンパク質、卵タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質(小麦グルテン)、大豆タンパク質、酵母タンパク質、細菌タンパク質等が挙げられる。
これらは、いくつかのタンパク質の混合物である事が多いが、本発明でそのまま使用することもできる。
これらのタンパク質類の中では、特にゼラチンと水溶性コラーゲンが好ましい。
これらの安定化剤は、機能性油性成分に対して任意の割合で添加することができるが、エマルションの安定化のためには、機能性油性成分に対して10質量%以上500質量%以下が好ましく、50質量%以上200質量%以下がより好ましく、また、粉末化キャリア素材として用いる場合には機能性油性成分の総量と等量以上10000倍以下用いることが好ましく、特に好ましくは、3倍以上100倍以下である。
(実施例A)
以下、本発明の混合装置と、比較例の混合装置とを使用した試験により、本発明の特徴を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<組成物の調製方法>
(油相組成物L1)
下記成分を液が透明になるまで、超音波処理(液温50℃、照射時間5分)と、スターラーによる攪拌処理(液温50℃、攪拌時間1分)とを、交互に30分間繰り返し、油相組成物L1を得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 3.0g
・ミックストコフェロール 0.8g
・ショ糖ラウリン酸エステル(HLB=16) 3.0g
・モノラウリン酸デカグリセリル(HLB=15.5) 3.0g
・エタノール 135ml
(水相組成物L2)
水相組成物L2として純水を用いた。
<実施方法>
上述の調製方法により製造された油相組成物L1と水相組成物L2を使用して実験を行った。実施例及び後記する比較例とも同じ油相組成物L1と水相組成物L2を使用した。
また、実施例では図6に示した本発明の混合装置を使用した。但し、油相組成物L1を3分割するための3本のマイクロチャンネル56(孔46も3個)と、水相組成物L2を3分割するための3本のマイクロチャンネル54(孔48も3個)と、を備えるものを使用し、3本の液体L1と3本の液体L2とが合流部38で合流するようにした。
油相組成物L1を流す3本のマイクロチャンネル56は、流路幅を0.1mm、深さを0.4mmとした。水相組成物L2を流す3本のマイクロチャンネル54は、流路幅を0.4mm、深さを0.4mmとした。油相組成物L1及び水相組成物L2を各マイクロチャンネル54、56へ供給する手段としては、それぞれ3連プランジャーポンプを使用した。そして、油相組成物L1を50mL/分(1マイクロチャンネル当たりの供給量)で供給すると共に、水相組成物L1を350mL/分(1マイクロチャンネル当たりの供給量)で供給し、各3本の液体L1,L2を合流部58(直径0.8mm)で衝突させるように合流させた。
そして、実施例1では、図7(A)に示すように、合流後は長さ12mm、拡径角度3°のテーパ状の拡径孔60(入口直径0.8mm、出口直径2mm)を有する混合部で乱流混合し、混合流体を排出孔62から排出した。これにより、油相組成物L1と水相組成物L2とを混合させてエマルジョン微粒子を生成した。
また、実施例2では、図7(B)に示すように、合流後に長さ12mm(テーパ部3.5mm+ストレート部8.5mm)、拡径角度10°のテーパ状の拡径孔60(入口直径0.8mm、出口直径2mm)を有する混合部で乱流混合し、混合流体を排出孔62から排出した。これにより、油相組成物L1と水相組成物L2とを混合させてエマルジョン微粒子を生成した。
実施例1及び2で生成したエマルジョン微粒子の体積平均粒径(Mv)、微粒子全体のうち100nm以上の粒径が占める体積比率(%)、及び生成された微粒子の透明性を調べた。
<比較例>
比較例は、図7(C)に示すように、直径0.8mmの合流部58に、長さ12mm、直径2mm(拡径孔60の出口直径と同じ)のストレート孔を有する混合部で乱流混合した点が実施例と相違する混合装置を使用した。その他の装置構成及び液体流量等は上記実施例と同様である。
そして、比較例の混合装置により生成したエマルジョン微粒子の体積平均粒径(Mv)、微粒子全体のうち100nm以上の粒径が占める体積比率(%)、及び生成された微粒子の透明性を調べた。
<試験結果>
[実施例1] [実施例2] [比較例]
・拡径角度 3° 10° 急拡大
・体積平均粒径(Mv) 29nm 35nm 81nm
・体積比率(%) 0.8% 4% 16%
・透明性 濁りなし 濁りなし 濁りあり
上記結果より分かるように、油相組成物L1と水相組成物L2とを合流部58で合流させた後、テーパ状の拡径孔60(混合部)で乱流混合するようにした実施例は、合流部58から流路径をパルス的に拡大させるストレート状の拡径孔(混合部)で乱流混合した比較例よりも、体積平均粒径(Mv)、体積比率(%)、透明性の全ての点で優れた結果を得ることができた。
これは、混合部をテーパ状に拡大することで、急激に拡大したときに生じる流体の剥離及び逆流を抑制でき、これにより単分散性に優れた微細な微粒子を生成できるものと考える。
(実施例B)
実施例Bは、油相組成物L1と水相組成物L2とを合流部58で合流させた後、テーパ状の拡径孔60(混合部)で乱流混合するようにした実施例と、合流部58から流路径をパルス的に拡大させるストレート状の拡径孔60’(混合部)で乱流混合した比較例とで、混合部における流体の流れがどのように相違するかを市販の数値解析ソフト(FLUENT6.3、乱流k−εモデル、メッシュサイズ0.02)を使用して解析した。実施例及び比較例は、混合部60、60’の形状以外、流体の流量及び流路径、合流部の径等の条件を全て同じにした。解析したシミュレーション図は、そのままでは分かりにくいので、シミュレーション図に沿って模式的に図示した。
図8は、本願発明の実施例であり、テーパ状の混合部60の拡径角度を3度に設定した。図9は比較例であり、合流部58から流路径をパルス的に拡大させるストレート状の混合部60’に形成したものである。図8及び図9における矢印の向きは流体の流れ方向を示し、矢印の長さは速度の大きさを示す。
図8の実施例は、混合部60における矢印方向(流体の流れ方向)が全て合流部58から排出口62に向かって同一方向であるのに対して、図9の比較例は混合部60’の流路壁近傍において排出口62から合流部58に向かう逆流が発生した。
本実施形態におけるマイクロミキサの一例を説明する斜視図 図1のマイクロミキサの主要部を説明する上面図 本実施形態におけるマイクロミキサの変形例を説明する上面図 本実施形態におけるマイクロミキサの変形例を説明する上面図 本実施形態におけるマイクロミキサの変形例を説明する説明図 本発明を適用したマイクロミキサの一例を示す斜視図 実施例及び比較例の混合部を説明した説明図 実施例での流体流れを示す模式図 比較例での流体流れを示す模式図
符号の説明
10、30…マイクロミキサ、12A、12B…流体供給路、14…合流部、16…混合部、16A、16B…テーパ部、18…排出部、32…供給ディスク、34…合流ディスク、36…混合ディスク、38…排出ディスク、58…合流部、60…テーパ状の拡径孔(混合部)、62…排出孔

Claims (9)

  1. 複数種の流体をそれぞれ供給する複数の供給流路と、
    前記複数の供給流路と連通し、前記複数種の流体を合流させる合流部と、
    前記合流部と連通し、該合流した流体の流れ方向に拡径するテーパ部を有する混合部と、
    を備えたことを特徴とする流体の混合装置。
  2. 前記テーパ部は、前記流体の流れ方向において前記合流部の直後に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の流体の混合装置。
  3. 前記テーパ部を含む平面内において、
    前記流体の流れ方向に対する前記テーパ部の拡径角度は10度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体の混合装置。
  4. 前記複数の供給流路は、等価直径が1mm以下の断面を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の流体の混合装置。
  5. 前記複数の供給流路は、同一線上で対向するように設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の流体の混合装置。
  6. 前記複数の供給流路は、その前記合流部への連通口が互いに前記合流部の径方向断面の中心に対して偏心するように対向配置され、前記複数種の流体に旋回流を生じさせるように設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の流体の混合装置。
  7. 複数種の流体を、請求項1〜6の何れか1項に記載の混合装置を用いて混合することを特徴とする流体の混合方法。
  8. 前記混合部において前記複数種の流体は分散剤を含み、該複数種の流体を混合することにより微粒子を生成することを特徴とする請求項7に記載の流体の混合方法。
  9. 前記複数種の流体は、天然由来成分に対する溶解性が相対的に高い易溶媒と、該溶解性が相対的に低い貧溶媒とを含み、前記易溶媒と前記貧溶媒とを混合することにより前記天然由来成分の微粒子を生成することを特徴とする請求項7又は8に記載の流体の混合方法。
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