以下、本発明のヘッドマウントディスプレイの実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
はじめに、図1を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2が使用されるシステムの一例である合唱練習システム1の概要について説明する。図1は、ヘッドマウントディスプレイ2が使用される合唱練習システム1の概要を示す模式図である。
図1に示すように、本発明のヘッドマウントディスプレイ2は、例えば合唱隊6の指揮を行う指揮者3に装着される。ヘッドマウントディスプレイ2では、合唱隊6の発声する音声のレベルずれやテンポずれ、音程ずれの発生の検出、及び、これらの音声を発声した者の居る方向の特定が行われる。検出結果や特定された方向の情報はヘッドマウントディスプレイ2にて表示され、指揮者3により視認される。これにより指揮者3は、レベルやテンポ、音程のずれた音声を発声した者を特定することが可能となるので、該当者を特定して矯正を促すことが可能となる。
合唱練習システム1では、音声を入力する為のマイク12が設けられる(マイク121〜マイク125)。マイク12により検出された音声の情報は、無線によりヘッドマウントディスプレイ2に送信される。マイク121〜125には、無線信号間の混信を防止するために、マイク毎に異なる周波数チャネルがあらかじめ設定される。これにより、無線信号の受信側(ヘッドマウントディスプレイ2、後述)にてそれぞれの無線信号を区別して受信することが可能となっている。またマイク12として、指向性を有する従来周知のマイクが使用される。マイク12は、受信強度の強い方向(指向方向)を合唱隊6に向け、且つ、マイク121〜125が其々異なる指向方向となるように配置される。図1に示す例では、マイク121は、合唱隊6を指揮者3側から見た場合の最左方向に指向方向を向けた状態で配置されている。マイク122は左中方向(最左方向と中央方向との間)、マイク123は中央方向、マイク124は右中方向(最右方向と中央方向との間)、マイク125は最右方向に其々指向方向を向けた状態で配置されている。これによりマイク12では、合唱隊6の個々の構成員より発声される音声を、その到来方向を特定して取得することが可能となる。
ヘッドマウントディスプレイ2では、マイク12より無線送信される音声の情報(以下「音声情報」という。)が受信される。そして、予めヘッドマウントディスプレイ2のフラッシュメモリ49(図3参照、後述)に記憶されている音声の情報であって、合唱隊6により合唱されている楽曲と同一の楽曲の音声の情報(以下「楽曲音情報」という。)と、受信された音声情報とが比較される。双方が比較された結果相違すると判断された場合、合唱隊6のうち特定の者の音のレベルやテンポ、音程がずれていると判断される。音のレベルやテンポ、音程がずれている旨の通知は、該当する音声の到来方向の情報とともに、ヘッドマウントディスプレイ2に表示される。これにより指揮者3は、音程やテンポのずれた音声を発声した者を特定することが可能となる。
なお本実施の形態では、指向性を有するマイク12が複数使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。従って例えば、音の到来方向を特定可能な唯一のマイクアレイを使用してもかまわない。また、マイク12とヘッドマウントディスプレイ2とは、無線電波を用いて音声情報の通信が行われているが、本発明はこれに限定されない。従って、マイク12とヘッドマウントディスプレイ2とを通信ケーブルを介して接続させ、通信ケーブルを介して音声情報の通信が行われる構成であってもよい。
図2を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2の概略構成について説明する。図2は、指揮者3に装着された状態のヘッドマウントディスプレイ2の外観構成を示した図である。
図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2は、画像信号に応じて変調、走査されたレーザ光(以下「画像光4」という。)を出射させ、指揮者3の少なくとも一方の眼の網膜に画像を直接投影する。これにより、指揮者3に画像を視認させる。図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2は、画像信号に応じて画像光4を出射する出射装置100と、その出射装置100から出射された画像光4を導くと共に、その画像光4を指揮者3の眼に向かって反射させるプリズム150と、出射装置100及びプリズム150を支持する支持部材200とを少なくとも備えている。
出射装置100は、画像光4をプリズム150に対し出射させる。プリズム150は、出射装置100に対して固定的な位置にあり、その出射装置100から出射された画像光4を導き、その画像光4を指揮者3の眼に向かって反射させる。プリズム150は、図示しないビームスプリッタ部を備えており、外界からの外光5を透過させ、指揮者3の眼に導く。プリズム150は、指揮者3の側方から入射された画像光4を指揮者3の眼に入射させると共に、外界からの外光5を指揮者3の眼に入射させる。これにより、実際の視界はもちろん、出射装置100から出射された画像光4に基づく画像が視認可能となる。
またヘッドマウントディスプレイ2は、カメラ7を備えている。カメラ7は、指揮者3の視野方向を撮像することが可能な素子である。撮像された結果の像情報は、状況に応じ、指揮者3に視認させるための映像の基とされる。例えば、カメラ7にて撮影された結果の像情報に基づき合唱隊6の構成員の配置状態が把握される。そして、把握された構成員の配置状態と、音の到来方向とが比較され、音レベルずれやテンポずれ、音程ずれを発生させた者が特定される。このように、合唱隊6の構成員のうち特定者を特定するための情報をヘッドマウントディスプレイ2に表示させ、指揮者3に視認させることが可能となる。
なお本実施形態においては、プリズム150によって外光5と画像光4とを同時に視認することができるような構成とした。しかしながら本発明はこの構成に限定されず、例えば、プリズム150に代えてハーフミラーを用いることもできる。これにより、出射装置100からの画像光4はハーフミラーに反射させて指揮者3の眼に入射させると共に、外光5はハーフミラーを透過させて指揮者3の眼に入射させることが可能となる。
また本実施形態においては、ヘッドマウントディスプレイとして、網膜走査を用いたシースルーのヘッドマウントディスプレイを例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、反射型LCDを利用したヘッドマウントディスプレイであってもよい。
本実施形態のカメラ7としては、従来周知の素子が使用可能である。例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサが使用可能である。
図3を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2の電気的構成について説明する。図3は、ヘッドマウントディスプレイ2の電気的構成を示す模式図である。
図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2は、指揮者3に画像を視認させる表示部40、各種操作やデータの入力を行うための入力部41、マイク12より音声情報を受信するための近距離無線通信部43、音声や映像に関する情報が記憶されるフラッシュメモリ49、ヘッドマウントディスプレイ2全体を制御する制御部46、カメラ7、加速度センサ14、及び電源部47を備えている。
表示部40は、制御部46にて形成された、映像を指揮者3に視認させる場合に必要な制御信号(映像信号)を受信し、指揮者3の網膜に直接投影させるために必要な各信号に変換する為の映像信号処理部70を備えている。また、レーザ光を出力するレーザ群72(青色出力レーザ(Bレーザ)721、緑色出力レーザ(Gレーザ)722、赤色出力レーザ(Rレーザ)723)、及び、レーザよりレーザ光を出力させるための制御を行うレーザドライバ群71を備えている。そして、映像信号処理部70の制御により、所望のレーザ光を所望のタイミングで出力させることが可能なように、映像信号処理部70はレーザドライバ群71と電気的に接続されている。またレーザドライバ群71は、Bレーザ721、Gレーザ722、及びRレーザ723と其々電気的に接続されている。また、映像信号処理部70が制御部46より映像信号を受信することが可能なように、映像信号処理部70と制御部46とはバスを介して電気的に接続されている。
また表示部40は、レーザより出力されたレーザ光を垂直方向に反射させることによって走査を行う垂直走査ミラーであるガルバノミラー812及びガルバノミラー812の駆動制御を行う垂直走査制御回路811、レーザより出力されたレーザ光を水平方向に反射させることによって走査を行う水平走査ミラーであるガルバノミラー792及びガルバノミラー792の駆動制御を行う水平走査制御回路791を備えている。そして、映像信号処理部70の制御により、所望の方向にレーザ光を反射させることが可能なように、映像信号処理部70と垂直走査制御回路811及び水平走査制御回路791とは其々電気的に接続されている。垂直走査制御回路811はガルバノミラー812と電気的に接続されている。水平走査制御回路791はガルバノミラー792と電気的に接続されている。
入力部41は、各種機能キーなどからなる操作ボタン群50、操作ボタン群50のキーが操作されたことを検出し、制御部46に通知する入力制御回路51を備えている。そして、操作ボタン群50のキーに入力された情報を制御部46にて認識することが可能なように、操作ボタン群50は入力制御回路51と電気的に接続されている。また入力制御回路51は制御部46と電気的に接続されている。
近距離無線通信部43は、無線電波の受信を行う近距離無線通信モジュール57と、この近距離無線通信モジュール57を制御し、マイク12より送信される音声情報を受信する近距離無線通信制御回路58とを備えている。近距離無線通信モジュール57は、設置されるマイク12(121〜125)の数分設けられる。其々の近距離無線通信モジュール57は其々のマイク12(121〜125)に対応付けられ、対応付けられたマイク12より送信される音声信号を受信することが可能なように、受信周波数が設定される。このような構成とすることにより、近距離無線通信モジュール57にて受信された音声情報をマイク12のいずれかに対応付けることが可能となっている。なお、受信された音声信号は、所定のフォーマットに変換された後、送信元のマイク12を識別するための情報(マイク識別情報)が対応付けられフラッシュメモリ49に記憶される(詳細は後述する)。そして、制御部46にて音声信号を取得することが可能なように、制御部46と近距離無線通信制御回路58とはバスを介して電気的に接続されている。また、近距離無線通信モジュール57と近距離無線通信制御回路58とは電気的に接続されている。
なお、近距離無線通信モジュール57の通信方式としては特に限定されず、従来周知の無線通信方式が使用可能である。例えば、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)規格、無線LAN(IEEE802.11bなど)規格、WirelessUSB規格などに準拠した無線通信方式が使用可能である。また、赤外線を利用したIrDA(Infrared Data Association)規格に準拠した無線通信方式も使用可能である。
カメラ7は、指揮者3の視野方向を撮像することが可能な撮像素子を備える。そして、撮像された結果の像情報を制御部46にて認識することが可能なように、カメラ7と制御部46とは電気的に接続されている。
加速度センサ14は、ヘッドマウントディスプレイ2を装着する指揮者3の視野の向いている方向を特定するために使用される。ヘッドマウントディスプレイ2では、初期化時に定められた基準位置からの移動角度が、加速度センサ14により求められ、指揮者3の視野方向が特定される。特定された視野方向は、マイク121〜125の設置されている方向と比較される。これにより、マイク121〜125の指向方向と視野方向とのマッチング処理がなされる(詳細は後述する)。
電源部47は、ヘッドマウントディスプレイ2を駆動させるための電源となる電池59、及び、電池59の電力をヘッドマウントディスプレイ2に供給すると共に、充電用アダプタ(図示せず)から供給される電力を電池59へ供給して電池59の充電を行う充電制御回路60を備えている。
フラッシュメモリ49には、受信された音声情報が所定の音声フォーマットに変換された結果の情報(以下「音声データ情報」という。)、楽曲音情報が所定の音声フォーマットに変換された情報(以下「楽曲音データ情報」という。)、指揮者3に視認させる画像(グラフィック)やテキストなどのイメージデータ(以下「映像情報」という。)が記憶される。ファイルフォーマットとしては特に限定されず、従来周知のファイルフォーマット(WAV、WMA、MP3等)が使用可能である。そして、制御部46より各記憶領域に記憶された情報を参照することが可能なように、フラッシュメモリ49はバスを介して制御部46と電気的に接続されている。
制御部46は、ヘッドマウントディスプレイ2全体を制御する機能を有している。例えば、近距離無線通信部43を介してマイク12より音声情報を受信する処理、所望の情報を表示部40に表示させる処理、指揮者3による入力部41の操作に応じて所定の動作を行う処理等が、制御部46により実行される。制御部46は、CPU61、各種プログラムを格納したROM62、各種データが一時的に記憶されるRAM48などから構成されている。制御部46では、CPU61によりROM62に格納された各種プログラムが読み出され、既述の各処理が実行される。RAM48は、CPU61が各処理を実行する場合に必要な各種フラグやデータの記憶領域を提供する。
表示部40にて画像光4が形成される過程の概要について、図4を参照して詳説する。図4は、表示部40の電気的及び光学的構成を示す模式図である。表示部40は、図4に示すように、光源ユニット部65、コリメート光学系77、水平走査系79、第一リレー光学系80、垂直走査系81、第二リレー光学系82を備えている。光源ユニット部65は、映像信号処理部70、レーザドライバ群71、レーザ群72、コリメート光学系73、ダイクロイックミラー群74、及び結合光学系75を備えている。水平走査系79は、水平走査制御回路791及びガルバノミラー792を備えている。垂直走査系81は、垂直走査制御回路811及びガルバノミラー812を備えている。
光源ユニット部65の構成について詳説する。映像信号処理部70は、既述のように、制御部46と電気的に接続されている。そして、制御部46にて形成された映像信号が入力される。映像信号処理部70には、輝度信号66(B輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663)、垂直同期信号67及び水平同期信号68が其々電気的に接続される。映像信号処理部70では、入力された映像情報を網膜に投影させるための要素となる各信号(輝度信号、垂直同期信号、水平同期信号)が生成される。生成された各信号は、輝度信号66、垂直同期信号67、及び水平同期信号68に対して画素毎に出力される。
輝度信号66(B輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663)は、レーザドライバ群71(Bレーザドライバ711、Gレーザドライバ712、Rレーザドライバ713)に其々電気的に接続される。水平同期信号68は、水平走査系79の水平走査制御回路791に接続される。垂直同期信号67は、垂直走査系81の垂直走査制御回路811に接続される。
レーザドライバ群71は、レーザ群72(Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723)に其々電気的に接続される。レーザドライバ群71は、輝度信号66(B輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663)を介して伝達された各信号の各輝度信号に基づいて、強度変調されたレーザ光をレーザ群72より出射させるために、レーザ群72を駆動する。
また、レーザドライバ群71の制御に基づきレーザ群72より出射された3色(青色、緑色、赤色)のレーザ光を平行光にコリメートさせることが可能なコリメート光学系73(731〜733)、コリメート光学系73にてコリメートされたレーザ光を合波させることが可能なダイクロイックミラー群74(741〜743)、合波されたレーザ光を光ファイバ76に導くための結合光学系75が其々設けられる。
尚、レーザ群72(Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723)として、レーザダイオード等の半導体レーザや固体レーザを利用してもよい。
表示部40のうち光源ユニット部65を除く部分の構成について詳説する。光源ユニット部65より光ファイバ76に対して導かれたレーザ光を水平走査系79のガルバノミラー792に導くためのコリメート光学系77が設けられる。ガルバノミラー792は、レーザ光を水平方向に走査させる。ガルバノミラー792の偏向面793に入射されたレーザ光は、水平走査制御回路791の制御により、映像信号処理部70より受信される水平同期信号68に同期して水平方向に走査される。本実施の形態の水平走査系79は、表示すべき画像の1走査線毎に、レーザ光を水平方向に水平走査させるための光学系である。
また、水平走査されたレーザ光を垂直走査系81に導くための第一リレー光学系80と、第一リレー光学系80により導かれたレーザ光を垂直方向に走査させるためのガルバノミラー812が設けられる。ガルバノミラー812の偏向面813に入射されたレーザ光は、垂直走査制御回路811の制御により、映像信号処理部70より受信される垂直同期信号67に同期して垂直方向に走査される。本実施の形態の垂直走査系81は、表示すべき画像の1フレーム毎に、レーザ光を最初の走査線から最後の走査線に向かって垂直に垂直走査する光学系である。
また、垂直走査されたレーザ光(画像光4)をプリズム150に導くための第二リレー光学系82が設けられる。第二リレー光学系82にて導かれた画像光4は、プリズム150に入射される。プリズム150は、既述のように、第二リレー光学系82と指揮者3の瞳孔90との間に配置される。プリズム150は、画像光4を全反射させるなどして、ユーザの瞳孔90に導く。
上述の表示部40では、水平走査系79は、垂直走査系81より高速にすなわち高周波数でレーザ光を走査するように設計される。また、第一リレー光学系80は、水平走査系79のガルバノミラー792と、垂直走査系81のガルバノミラー812とが共役となるように設けられる。第二リレー光学系82は、ガルバノミラー812と、ユーザの瞳孔90とが共役となるように設けられる。
本発明の一実施形態のヘッドマウントディスプレイ2が、外部からの映像信号を受けてから、ユーザの網膜上に映像を投影するまでの過程について、図4を参照して説明する。
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ2では、光源ユニット部65に設けられた映像信号処理部70が制御部46より映像信号を受信する。次いで映像信号処理部70より、赤、緑、青の各色のレーザ光を出力させるためのB輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663からなる輝度信号66と、水平同期信号68と、垂直同期信号67とが出力される。
Bレーザドライバ711、Gレーザドライバ712、Rレーザドライバ713は、各々入力されたB輝度信号661、G輝度信号662、R輝度信号663に基づき、Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723に対してそれぞれの駆動信号を出力する。
上述の駆動信号に基づいて、Bレーザ721、Gレーザ722、Rレーザ723は、それぞれ強度変調されたレーザ光を発生させる。発生されたレーザ光は、コリメート光学系73に出力される。レーザ光は、コリメート光学系73によってそれぞれが平行光にコリメートされ、更に、ダイクロイックミラー群74に入射されて1つのレーザ光となるよう合成される。合成されたレーザ光は、結合光学系75によって光ファイバ76に入射されるよう導かれる。
光ファイバ76を伝達したレーザ光は、光ファイバ76からコリメート光学系77に導かれる。そして水平走査系79に出射される。
水平走査系79に入射されたレーザ光は、ガルバノミラー792の偏向面793にて、水平同期信号68に同期して水平方向に走査される。ガルバノミラー792は、水平同期信号68に同期して、その偏向面793が入射光を水平方向に反射するように往復振動をしている。このガルバノミラー792によってレーザ光は水平方向に走査される。水平走査されたレーザ光は、第一リレー光学系80を介し、垂直走査系81に出射される。
第一リレー光学系80では、ガルバノミラー792の偏向面793とガルバノミラー812の偏向面813とが共役の関係となるように調整され、また、ガルバノミラー792の面倒れが補正される。
垂直走査系81に入射されたレーザ光は、ガルバノミラー812の偏向面813にて、垂直同期信号67に同期して垂直方向に走査される。ガルバノミラー812は、ガルバノミラー792が水平同期信号68に同期することと同様に垂直同期信号67に同期して、その偏向面813が入射光を垂直方向に反射するように往復振動をしている。このガルバノミラー812によってレーザ光は垂直方向に走査される。
水平走査系79及び垂直走査系81によって垂直方向及び水平方向に2次元に走査されたレーザ光(画像光4)は、ガルバノミラー812の偏向面813と、ユーザの瞳孔90とが共役の関係となるように設けられた第二リレー光学系82、プリズム150によりユーザの瞳孔90へ入射され、網膜上に投影される。
以上説明した過程を経ることにより、指揮者3は、2次元走査されて網膜上に投影された画像光4による画像を認識することが可能となる。なお、水平走査系79のガルバノミラー792と、垂直走査系81のガルバノミラー812とは、名称を同じように説明したが、光を走査するように其の反射面が揺動(回転)させられるものであれば、共振タイプ、非共振タイプ等、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等いずれの駆動方式によるものであってもよいことは言うまでもない。
図5乃至7を参照し、フラッシュメモリ49の記憶領域及び記憶される情報について説明する。図5は、フラッシュメモリ49の記憶領域を示す模式図である。図6は、音声関連記憶領域491に記憶される音声データ関連情報を示す模式図である。図7は、相違情報記憶領域493に記憶される相違情報を示す模式図である。
図5を参照し、フラッシュメモリ49の記憶領域について説明する。図5に示すように、フラッシュメモリ49には、音声関連記憶領域491、楽曲音記憶領域492、相違情報記憶領域493、音声記憶領域494、映像記憶領域495、及びその他の領域が設けられている。音声関連記憶領域491には、音声データ情報に関連する情報(以下「音声データ関連情報」という。)が記憶される。楽曲音記憶領域492には、楽曲音データ情報が記憶される。相違情報記憶領域493には、音声データ情報と楽曲音データ情報とが比較された結果の情報(以下「相違情報」という。)が記憶される。音声記憶領域494には、音声データ情報が記憶される。映像記憶領域495には、映像情報が記憶される。以下、記憶される情報の詳細について説明する。
音声関連記憶領域491に記憶されている音声データ関連情報について、図6を参照し説明する。図6に示す例では、音声データ関連情報として「ファイル名」及び「マイク識別情報」の情報項目が設けられている。「ファイル名」としては、音声データ情報のファイル名が記憶される。「マイク識別情報」としては、音声データ情報の基となる音声を受信した近距離無線通信モジュール57に対応付けられているマイク12の識別情報が記憶される。
ヘッドマウントディスプレイ2では、マイク12より音声情報を受信した場合、取得した音声情報を所定の音声データフォーマットに変換し、音声データ情報が作成される。作成された音声データ情報は、音声記憶領域494に記憶される。音声データ情報のファイル名の情報は、基となる音声情報を送信したマイク12の識別情報に対応付けられ、音声データ関連情報として音声関連記憶領域491に記憶される。マイク12は指向性を有しているので、音声データ情報とマイク12の識別情報とを関連付けて記憶することにより、音声の到来方向を特定することが可能となる。
図6に示す例では、音声データ情報のファイル名は「AA1.mp3」であり、マイク識別情報は「121」である。従って、合唱隊6を指揮者3側から見た場合の最左方向より、「AA1.mp3」の基となる音声情報が発せられている。また、音声データ情報のファイル名は「AA2.mp3」であり、マイク識別情報は「122」である。従って、合唱隊6を指揮者3側から見た場合の左中方向より、「AA2.mp3」の基となる音声情報が発せられている。
楽曲音記憶領域492に記憶されている楽曲音データ情報について説明する。楽曲音データ情報としては、合唱隊6により合唱される楽曲の楽曲音データ情報があらかじめ複数記憶されている。これらの情報は、理想的な合唱音声のデータ情報として、音声情報を受信た場合に比較対象とされる。そして双方に相違があると判断された場合に、受信した音声情報にずれ(音レベル、テンポ、音程等)が発生しているものと判断される(詳細は後述する)。
相違情報記憶領域493に記憶されている相違情報について、図7を参照し説明する。相違情報は、音声データ情報と楽曲音データ情報とが比較され、双方の音声が相違すると判断された場合に、相違内容に関する情報が記憶される。なお相違情報は、比較された楽曲データ情報の楽曲に対応付けられ、楽曲毎に記憶される。図7では、それらのうち唯一の楽曲に相当する相違情報のみ示されている。
図7に示すように、相違情報として「マイク識別情報」「相違箇所」「相違内容」「相違量」「累計回数」の情報項目が設けられている。「マイク識別情報」としては、マイク12の識別情報が記憶される。「相違箇所」としては、相違すると判断された箇所の情報として、楽曲の開始時点から相違すると判断された箇所迄の経過時間が記憶される。
「相違内容」としては、相違すると判断された場合の相違内容が記憶される。図7に示す例では、双方の音声の振幅レベルが異なり「レベルずれ」が生じていることを示す「レベル」、双方の音声のタイミングが異なり「テンポずれ」が生じていることを示す「テンポ」、及び、双方の音声の周波数が異なり「音程ずれ」が生じていることを示す「音程」のうちいずれかが「相違内容」として記憶されている。
「相違量」としては、相違すると判断された場合の相違の程度の定量値が記憶される。図7に示す例では、相違内容が「レベルずれ」の場合は、振幅差(単位:dB)が記憶される。相違内容が「テンポずれ」の場合は、タイミングずれの時間(単位:s)が記憶される。相違内容が「音程ずれ」の場合は、周波数差(単位:Hz)が記憶される。「累計回数」としては、相違の回数が相違内容毎に記憶される。
図7に示す例では、マイク121より受信された音声の音声データ情報が楽曲音データ情報と比較された結果、楽曲開始から10s経過後のタイミングでテンポが0.5s遅れ、その累計回数は2である。楽曲開始から24s経過後のタイミングでテンポが1s進み、その累計回数は1である。また、マイク122より受信された音声の音声データ情報が楽曲音データ情報と比較された結果、楽曲開始から21s経過後のタイミングで音程が0.3Hz高域側にずれ、その累計回数は3である。楽曲開始から36s経過後のタイミングでレベルが3dB小さく、その累計回数は4である。
音声記憶領域494には、音声関連記憶領域491に記憶されている音声データ関連情報のファイル名に対応する音声データ情報が記憶される。
映像記憶領域495に記憶されている映像情報としては、合唱隊6のうち所定の構成員を特定するための構成員通知映像情報、相違量を定量的に視認させるための相違量映像情報等が記憶される。映像情報は、指揮者3に映像を視認させるための処理が実行される場合に、制御部46のCPU61より読みだされる。
ヘッドマウントディスプレイ2のCPU61にて実行される処理の詳細について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、CPU61にて実行される相違通知処理のフローチャートである。図9は、相違特定処理のサブルーティンフローチャートである。相違通知処理は、ヘッドマウントディスプレイ2の電源が投入された場合において、CPU61により起動され実行される。
相違通知処理において使用されるフラグについて説明する。フラグ1は、レベルずれが発生したか否かを特定するために使用される。レベルずれが発生した場合に1が記憶される。フラグ2は、テンポずれが発生したか否かを特定するために使用される。テンポずれが発生した場合に1が記憶される。フラグ3は、音程ずれが発生したか否かを特定するために使用される。音程ずれが発生した場合に1が記憶される。なおこれらのフラグは、RAM48に記憶されており、電源投入時において0が記憶され初期化される。以下、上述のフラグに0が記憶される場合に「OFFされる」といい、1が記憶される場合に「ONされる」という。
図8に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2のCPU61では、はじめに、加速度センサ14からの情報が参照され、ヘッドマウントディスプレイ2を装着する指揮者3の視野方向が特定される(S11)。これにより、マイク121〜125の指向方向と指揮者3の視野方向とのマッチングがなされる。具体的には、指揮者3の視野の中心方向が、マイク121〜125の指向方向のうちいずれの指向方向と一致するかが特定される。これにより、ヘッドマウントディスプレイ2の表示領域とマイク12の指向方向との相関が確立される。
次いで、カメラ7により合唱隊6が撮影される。撮影された結果の像情報は画像処理され、合唱隊6の構成員の配置状態が特定される。そして、特定された合唱隊6の構成員の配置状態と、既述のマイク12の指向方向とが関係付けられ、マイク12の指向方向に配置する合唱隊6の構成員が其々特定される。
次いで、近距離無線通信モジュール57及び近距離無線通信制御回路58を介してマイク12より音声情報を受信したか否かが判断される(S13)。マイク12より何ら音声情報が受信されていない状態では(S13:NO)、特段処理を行うことなくS11に戻り、継続してヘッドマウントディスプレイ2を装着する指揮者3の視野方向の特定処理が実行される。
近距離無線通信モジュール57及び近距離無線通信制御回路58を介して音声情報が受信された場合(S13:YES)、次いで、受信された音声情報の音声データ情報への変換処理が開始される。変換された音声データ情報は、フラッシュメモリ49の音声記憶領域494に記憶される。また、音声データ情報の基となった音声情報を受信した近距離無線通信モジュール57に対応付けられているマイク12の識別情報が、変換された音声データ情報のファイル名とともに音声関連記憶領域491に記憶されている音声データ関連情報に記憶される(S15)。
次いで、S13において受信が開始された音声情報の基となる音声が、いずれの楽曲について合唱されたものであるかを特定し、相当する楽曲音データ情報を選択する処理が実行される。具体的には、はじめに、S15にて記憶開始された音声データ情報が音声認識される。音声認識では、音声データ情報に含まれる歌詞のフレーズ抽出が行われて音素に分解される。次いで、分解された音素毎の音声波形の音程及び音素長が、楽曲音記憶領域492に記憶されている楽曲音データ情報に基づく音程及び音素長と比較される。そして双方が一致した場合の楽曲音データ情報が、比較対象とする楽曲音データ情報として選択される(S17)。
なお、上述の選択処理は一例であり、他の方法により楽曲音データ情報を選択してもかまわない。例えば、予め入力部41を介して入力される楽曲の情報に基づいて、比較対象とする楽曲音データ情報を選択してもよい。
また上述の選択処理と同時に、受信中の音声情報の音声が、楽曲音データ情報中のどの演奏部分に相当する音声であるかが特定される。相当する音声が特定された場合、楽曲音データ情報の演奏開始時点から当該音声が演奏されるタイミングまでの経過時間が、RAM48のカウンタに記憶される。以後、カウンタは時間経過とともに更新される。後述の相違特定処理(図9参照)では、楽曲音データ情報中カウンタにて特定される経過時間だけ経過した時点の情報と、受信した直後の音声情報の音声データ情報とが比較される。
次いで、S15にて記憶開始された音声データ情報のうち受信した直後の音声情報部分と、選択された楽曲音データ情報とが比較され、双方間でレベルずれ、テンポずれ、及び音程ずれが生じているか否かが判断される(S19)。
図9を参照し、相違特定処理(S19、図8参照)について説明する。相違特定処理では、記憶開始されている音声データ情報のうち受信した直後の音声情報部分が、マイク識別情報毎に音声記憶領域494より抽出される。そして、S17(図8参照)にて選択された楽曲音データ情報と比較され、双方間のずれ(レベルずれ、テンポずれ、音程ずれ)の有無が判断される。双方間で振幅レベルが相違する場合に「レベルずれ」が発生していると判断され、タイミングがずれている場合に「テンポずれ」が発生していると判断され、周波数が相違する場合に「音程ずれ」が発生していると判断される。RAM48に記憶更新されているカウンタに基づき、音声データ情報と楽曲音データ情報とで演奏箇所が一致する部分の音声どうしが比較され実行される。
図9に示すように、はじめに、音声データ情報に基づき、音声の振幅成分が抽出される。抽出された振幅成分は、楽曲音データ情報に基づいて抽出された音声の振幅成分と比較され、双方の振幅レベルが一致するか否かが判断される(S41)。双方の振幅レベルが一致すると判断された場合には(S41:NO)双方間でレベルずれはないものと判断され、S49に移行される。
双方の振幅レベルが相違すると判断された場合には(S41:YES)、レベルずれが発生していることを示すためにフラグ1がONされる(S43)。次いで、音声データ情報に基づく振幅レベルと楽曲音データ情報に基づく振幅レベルとの差が算出され、レベルずれの相違量とされる(S45)。次いで、演奏開始時点からの経過時間が、カウンタの値に基づいて特定される(特定された情報を「相違箇所情報」という。)。そして、S41にて特定された相違内容(レベルずれ)、S45にて算出された相違量、及び、相違箇所情報が、対象としている音声の音声情報が送信されたマイク12の識別情報とともに、RAM48に一時的に記憶される(S47)。そしてS49に移行される。
S49では、音声データ情報に基づき、音声の振幅成分が抽出される。抽出された振幅成分は、楽曲音データ情報に基づいて抽出された音声の振幅成分と比較され、双方の振幅のピーク位置が一致するか否かが判断される(S49)。双方の振幅のピーク位置が一致すると判断された場合には(S49:NO)、双方のテンポずれはないものと判断され、S57の処理に移行される。
双方の振幅のピーク位置が相違すると判断された場合には(S49:YES)、テンポずれが発生していることを示すためにフラグ2がONされる(S51)。次いで、音声データに基づく振幅のピーク位置と楽曲音データ情報に基づく振幅のピーク位置との差が算出され、テンポずれの相違量とされる(S53)。次いで、カウンタの値に基づいて相違箇所情報が特定される。そして、S49にて特定された相違内容(テンポずれ)、S53にて算出された相違量、及び、相違箇所情報が、対象としている音声の音声情報が送信されたマイク12の識別情報とともに、RAM48に一時的に記憶される(S55)。そしてS57に移行される。
S57では、音声データ情報に基づき、音声の周波数成分が抽出される。抽出された周波数成分は、楽曲音データ情報に基づいて抽出された音声の周波数成分と比較され、双方周波数が一致するか否かが判断される(S57)。例えば、音声データ情報に基づいた音声の周波数成分のうち、大きさが最大の周波数成分が楽曲音データ情報に基づいて抽出された音声の周波数成分と比較され、双方の周波数が一致すると判断された場合には(S57:NO)、双方間の音程ずれはないものと判断され、S67の処理に移行される。
双方の周波数が相違すると判断された場合には(S57:YES)、音程ずれが発生していることを示すためにフラグ3がONされる(S59)。次いで、音声データ情報に基づく周波数と楽曲音データ情報に基づく周波数との差が算出され、周波数ずれの相違量とされる(S61)。次いで、カウンタの値に基づいて相違箇所情報が特定される。そして、S57にて特定された相違内容(音程ずれ)、S61にて算出された相違量、及び、相違箇所情報が、対象としている音声の音声情報が送信されたマイク12の識別情報とともに、RAM48に一時的に記憶される(S63)。そしてS67の処理に移行される。
S67では、音声記憶領域494に記憶されている音声データ情報すべてについて上述の処理が実行されたかどうかが判断される(S67)。比較処理が実行されていない音声データ情報が存在する場合には(S67:NO)、マイク121〜125にて受信された音声のうち上述の処理が実行されていない音声の音声データ情報が残存していると判断される。この場合S41に戻り、残存する音声データ情報について繰り返し上述の処理が実行される。一方、すべての音声データ情報について上述の比較処理が実行された場合には(S67:YES)、相違特定処理を終了して相違通知処理に戻る。
図8に示すように、相違特定処理の後、レベルずれ、テンポずれ、及び音程ずれのいずれか発生したかどうかが判断される(S21)。少なくともいずれかのずれが発生していると判断された場合には、フラグ1〜フラグ3のうち少なくともいずれかがONとされている。そこでこれらのフラグが参照される。そしていずれかのフラグがONされている場合には(S21:YES)、ずれが発生した旨を表示する為の処理が実行される(S23〜S27)。一方、いずれのフラグもONされていない場合には(S21:NO)、指揮者3への映像の表示処理を行う必要はないので、特段の処理を行うことなくS29に移行される。
S23では、フラグ情報に基づいて発生したずれの種別が判別される。フラグ1がONされている場合は、レベルずれが発生していると判断される。フラグ2がONされている場合は、テンポずれが発生していると判断される。フラグ3がONされている場合は、音程ずれが発生していると判断される。
RAM48に記憶されているマイクの識別情報、相違内容、及び相違量が読みだされる。次いで、これらの情報を表示させて指揮者3に視認させるための映像情報が、フラッシュメモリ49の映像記憶領域495より読みだされる。読みだされた映像情報に基づき、制御部46にて映像信号が形成され、表示部40の映像信号処理部70に送信される。表示部40では、指揮者3に視認させるために網膜に出射させる画像光4が形成される。形成された画像光4は、指揮者3の網膜に出射される。これにより、相違情報(該当する構成員の居る方向、相違内容、相違量)を指揮者3に視認させる(S23)。
図10を参照し、ヘッドマウントディスプレイ2を介し指揮者3により視認される像の一例について説明する。図10は、ヘッドマウントディスプレイ2を介して指揮者3が視認する像の一例を示す模式図である。
図10に示すように、指揮者3の視野には、直接プリズム150を透過する合唱隊6の構成員、一部の構成員を特定する為の表示8、相違内容及び相違量を通知する為の表示9がそれぞれ表示される。表示8は、カメラ7にて撮影された結果の像に基づき画像処理を経て認識された構成員の位置に、RAM48に記憶されているマイク識別情報が対応付けられることにより表示される。図10に示す例では、マイク122(指向方向:左中方向、図1参照)にて受信された音声の音声データ情報が楽曲音データ情報と比較され相違すると判断された場合の表示が例示されている。また表示9には、RAM48に記憶されている相違内容及び相違量が表示される。このような映像を指揮者3に視認させることによって、指揮者3は、誤った発声をした合唱隊6の構成員を特定し、その相違内容及び相違量を認識することが可能となっている。
次いで図8に示すように、指揮者3に対して一定期間、表示させた映像を視認させるために、表示開始からの経過時間が監視される(S25:NO)。経過時間が所定時間(例えば1s)経過した場合(S25:YES)、表示を停止させる(S27)。そしてS29に移行される。
S29では、マイク12より継続して音声信号を受信している状態であるかどうかが判断される(S29)。継続して音声信号が受信されている場合には(S29:NO)、S19に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。マイク12からの音声信号の送信が停止され、受信されていない状態となった場合には(S29:YES)、S15にて開始された音声信号の記憶処理が停止される(S31)。
次いで、RAM48に記憶されている情報(マイク識別情報、相違内容、相違量、相違箇所情報)が相違情報記憶領域493の相違情報(図7参照)として記憶される(S33)。はじめに、比較対象とされた楽曲に対応する相違情報が選択される。次いで、同一マイク識別情報として、同一の相違内容及び相違箇所が既に相違情報として相違情報記憶領域493に記憶されているか否かが判断される。同一の相違内容及び相違箇所が相違情報として記憶されていない場合には、RAM48に記憶されている情報(マイク識別情報、相違内容、相違量、相違箇所情報)が相違情報として新たに記憶される。同一の相違内容及び相違箇所が相違情報として既に相違情報記憶領域493に記憶されている場合には、記憶されている情報の累計回数に1加算して更新する。そして相違通知処理は終了される。
以上説明したようにヘッドマウントディスプレイ2は、合唱隊6の構成員のうち、レベルずれやテンポずれ、音程ずれを発生させている構成員の居る方向を特定し、相違内容及び相違量の情報ととともに表示させ、指揮者3に視認させることが可能となる。これにより指揮者3は、該当する構成員に対して矯正を促すことが可能となり、合唱隊6の合唱を理想的な状態に近づけることが可能となる。
また、ヘッドマウントディスプレイ2は、レベルずれ、テンポずれ、及び音程ずれが発生している場合に、その相違内容と相違量とを特定して指揮者3に対して通知することが可能となるので、合唱隊6の構成員に対して、より具体的な矯正指示を行うことが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上述の実施の形態では、合唱隊6の発声する音声について、理想的な楽曲音声と比較して相違の有無を判断し、相違がある場合に指揮者3に通知していた。しかしながら本発明は合唱隊の発声音声の相違の判断に限定されず、例えばオーケストラやブラスバンドによる演奏音声の相違を判断する構成としてもよい。
上述の実施の形態では、ヘッドマウントディスプレイ2が近距離無線通信モジュール57を備え、マイク12より音声情報を受信する構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。従って、ヘッドマウントディスプレイ2とマイク12とは有線ケーブルを介して接続されており、有線ケーブルを介して音声情報の通信が行われる構成としてもよい。また、マイク12より音声情報を受信しフォーマット変換する装置(レシーバ)を別途設けてもよい。この場合、ヘッドマウントディスプレイ2はレシーバよりフォーマット変換された音声データ情報をマイク識別情報とともに受信することにより、上述の処理が実行される。
上述の実施の形態では、受信した直後の音声と楽曲の音声とを比較し、双方が相違すると判断された場合に、相違内容等を指揮者3に対して視認させていた。しかしながら本発明はこの構成に限定されず、例えば、繰り返し同一の楽曲が合唱される場合において、過去に相違が発生していた場合には、予め相違情報を指揮者3に対して通知する構成としてもよい。これにより指揮者3は、合唱隊6の構成員に対して未然に注意を喚起することが可能となる。以下、本実施の形態の変形例について説明する。
<変形例>
以下、本実施の形態の変形例について、図面を参照して説明する。図11は、変形例における相違通知処理のフローチャートである。図12は、変形例における相違事前表示処理のサブルーティンフローチャートである。相違通知処理は、ヘッドマウントディスプレイ2の電源が投入された場合において、CPU61により起動され実行される。以下においては、既述の実施の形態と同様部分については、説明を省略し又は簡略する。
変形例では、ヘッドマウントディスプレイ2は、相違情報記憶領域493に記憶されている相違情報の内容を予め表示し、相違箇所に相当する部分が合唱隊6により合唱される前に指揮者3に認識させる。楽曲中、レベルずれやテンポずれ、音程ずれの発生は、同一箇所にて繰り返されることが想定されるので、指揮者3は、予めずれが発生し易い箇所を認識し、事前に合唱隊6の構成員に注意を喚起することが可能となる。
図11を参照し、相違通知処理のフローチャートについて説明する。図11に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2のCPU61では、はじめに、加速度センサ14からの情報が参照され、ヘッドマウントディスプレイ2を装着する指揮者3の視野方向が特定される(S11)。次いで、マイク12より音声情報を受信したか否かが判断される(S13)。マイクより何ら音声情報が受信されていない状態では(S13:NO)、特段処理を行うことなくS11に戻り、継続してヘッドマウントディスプレイ2を装着する指揮者3の視野方向の特定処理が実行される。
マイク12より音声情報が受信された場合(S13:YES)、受信した音声情報を変換した音声データ情報の記憶が開始され(S15)、次いで受信された音声情報の基となる音声が、いずれの楽曲について合唱されたものであるかが選択される(S17)。同時に、受信中の音声情報の音声が、楽曲音データ情報中のどの演奏部分に相当する音声であるかが特定される。相当する音声が特定された場合、楽曲音データ情報の演奏開始時点から当該音声が演奏されるタイミングまでの経過時間が、RAM48のカウンタに記憶される。以後、カウンタは時間経過とともに更新される。次いで、選択された楽曲に対応する相違情報を表示させるための処理(相違事前表示処理)が実行される(S71)。
図12を参照し、相違事前表示処理について説明する。相違事前表示処理では、S17(図11参照)にて選択された楽曲に対応する相違情報(図7参照)のうち、RAM48のカウンタにて特定される経過時間に所定時間(例えば5s)を加算した時間と一致する相違箇所の情報が記憶されているかが判断される。そして、同一の相違箇所の情報が記憶されていると判断された場合には、当該箇所にて過去に相違が発生していたものと判断される(S81:YES)。この場合、繰り返し同様の相違音声が発声される可能性がある。そこで、該当する相違箇所に対応付けられているマイク識別情報、相違内容、及び相違量の情報を表示させ、指揮者3に視認させる(S83)。これにより、相違音声が発声される可能性が高いタイミングの所定時間(5s)前に、相違音声を発声する可能性が高い構成員を特定し、その相違内容及び相違量の情報とともに指揮者3に認識させることが可能となる。
上述の表示処理は、所定時間(5s)が経過するまで継続して実行される(S85:NO)。そして、所定時間が経過した場合(S85:YES)、表示処理を停止させる(S87)。そして相違事前表示処理は終了し、相違通知処理(図11参照)に戻る。
一方、S17(図11参照)にて選択された楽曲に対応する相違情報に、該当する相違情報が記憶されていない場合には(S81:NO)、特段の処理を行うことなく相違事前表示処理を終了し、相違通知処理(図11参照)に戻る。
相違通知処理では、相違事前表示処理の後、相違特定処理(S19)が実行される。相違特定処理では、受信直後の音声情報が楽曲情報と比較され、相違の有無が判断される。そして、相違があると判断された場合には(S21:YES)、相違内容を表示させ(S23)、指揮者3に視認させる。
上述の処理は、マイク12より送信される音声情報が終了するまで繰り返し実行され(S29:NO)、音声情報の受信が終了した場合には(S29:YES)、発生した相違情報を相違情報記憶領域493の相違情報に記憶させ(S31)、相違通知処理が終了される。
以上説明したように、変形例では、合唱隊6の構成員が誤った音声を発声させてしまう可能性が高い箇所をあらかじめ指揮者3に対して通知することが可能となるので、指揮者3は、事前に合唱隊6の構成員に対して注意を喚起することが可能となる。これにより、より合唱練習の効率を向上させることが可能となる。
なお、図8のS13の処理を行うCPU61が本発明の「音取得手段」に相当し、S13において受信した音声情報の送信元のマイク識別情報より音の到来方向を特定する処理を行うCPU61が本発明の「方向特定手段」に相当する。図5の音声関連記憶領域491を備えたフラッシュメモリ49が本発明の「第一記憶手段」に相当し、図8のS15の処理を行うCPU61が本発明の「第一記憶制御手段」に相当し、S19の処理を行うCPU61が本発明の「音一致判断手段」に相当し、S23の処理を行うCPU61が本発明の「表示制御手段」に相当する。図5の楽曲音記憶領域492を備えたフラッシュメモリ49が本発明の「第二記憶手段」に相当する。
図9のS41にてレベルずれを判断するために、又はS49にてテンポずれを判断するために振幅成分を抽出する処理を行うCPU61が本発明の「取得音振幅抽出手段」に相当し、S41にてレベルずれが発生しているかを判断する処理を行うCPU61、又はS49にてテンポずれが発生しているかを判断する処理を行うCPU61が本発明の「振幅一致判断手段」に相当し、S57にて音程ずれを判断するために周波数成分を抽出する処理を行うCPU61が本発明の「取得音周波数抽出手段」に相当し、S57にて音程ずれが発生しているかを判断する処理を行うCPU61が本発明の「周波数一致判断手段」に相当し、S45、S53、S61にて相違量を算出する処理を行うCPU61が本発明の「相違算出手段」に相当する。
図5の相違情報記憶領域493を備えたフラッシュメモリ49が本発明の「第五記憶手段」に相当し、図8のS33にて相違情報を記憶する処理を行うCPU61が本発明の「第五記憶制御手段」に相当する。図5の相違情報記憶領域493のうち相違量を記憶する領域を備えたフラッシュメモリ49が本発明の「第三記憶手段」「第四記憶手段」に相当し、図8のS33にて相違量を記憶する処理を行うCPU61が本発明の「第三記憶制御手段」「第四記憶制御手段」に相当する。図8のS33にて、累計回数を更新する処理を行うCPU61が本発明の「第一累計手段」に相当する。