JP2010142472A - 胴部に括れを有する突起部を具備する針状体およびその製造方法 - Google Patents

胴部に括れを有する突起部を具備する針状体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】括れを有する突起部を具備する針状体を、安価に且つ簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体の製造方法であって、
基体の第一面に具備される突起部に対して、ディスペンス法によりエッチング液を選択的に塗布し、エッチングすることにより突起部の胴部に括れを形成すること
を具備する方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、針状体の製造方法およびそれにより製造された針状体に関する。
生理活性物質の生体内への供給方法として、非経口投与が広く用いられている。また、非経口投与として、経皮投与が知られている。経皮経路で生理活性物質を供給する場合、角質層のバリア機能によって、生理活性物質の皮膚透過性が低下する。
このため、経皮吸収型の生理活性物質は、比較的皮膚透過性の高いものが選択されており、皮膚透過性の低い生理活性物質の経皮吸収生理活性物質への適用は難しいとされている。
近年、生理活性物質を経皮投与する方法として、微細な突起部を具備する針状体を用いて経皮投与する方法が注目を集めている。
微細な突起部を具備する針状体を用いてバリア性の高い角質層を穿孔することで、生理活性物質の通過経路を形成し、経皮投与の効率を向上することが出来るため、一般的に経皮投与で用いられる脂溶性の生理活性物質だけではなく、水溶性の生理活性物質を経皮投与に適用できるという利点を有する。
このとき、当該突起部が角質層を貫通し、毛細血管や神経まで到達しないように設計することで、使用時に出血や痛みを伴わないようにすることができる。
上記経皮投与の目的で当該突起部を具備する針状体を用いる場合、当該突起部は、皮膚を穿孔するための十分な細さ、および先端角、皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さを有していることが望ましい。
従って、当該突起部の直径は数μmから100μm程度、先端角度は30°以下、長さは数十μmから数百μm程度であることが望ましいとされている。
従来、皮膚の変質部あるいは変色部を化学的に改善する、又は物質的に覆い隠すことによってそれらが視覚認知されないようにすることを目的に、日常生活において、皮膚又は皮膚角質層への機能(即ち、着色化、美麗化、紫外線防御化等)を付与する際に、無痛状態にて、皮膚機能再生行為における簡便性、安全性、効率性を大きく向上させるべく、針状体およびその製造方法が提供されている。(特許文献1)
また、突起部の胴部の括れについては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むX線感光樹脂にシンクロトン放射X線を照射して形成するX線リソグラフィー工程を経て作製するとされる。胴部に括れをもった突起部を具備する針状体は、直進性の高いX線を異なる角度から複数回照射することによって実現している。
特開2003−238347号公報
しかしながら、特許文献1に示すX線リソグラフィー工程については、直進性の高いX線を得るためのシンクロトロン放射施設が必要で、装置が高価で大掛かりになる難点がある。また、露光回数が最低でも4回必要と考えられ、簡便とは言い難い。そこで、括れを設けた同様の針状体の製造方法については、X線リソグラフィー工程を経ずに行い、安価で、簡便に行えることが課題となっている。
従って、本発明の目的は、括れを有する突起部を具備する針状体を、安価に且つ簡便に製造する方法を提供することである。
請求項1に記載の本発明は、
基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体の製造方法であって、
基体の第一面に具備される突起部に対して、ディスペンス法によりエッチング液を選択的に塗布し、エッチングすることにより突起部の胴部に括れを形成すること
を具備する方法
である。
請求項2に記載の本発明は、更に、エッチング液の塗布の前に、当該突起部にエッチング保護剤を塗布して硬化することと、
前記硬化したエッチング保護剤を先端部から形成しようとする括れの位置まで除去することと、
を具備する方法である。
請求項3に記載の本発明は、前記硬化したエッチング保護剤を除去することが灰化処理法により行われることを特徴とする方法である。
請求項4に記載の本発明は、エッチング液の選択的に塗布し、エッチングすることを複数回行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法である。
請求項5に記載の本本発明は、
請求項1〜4の何れか1項に記載の方法により製造した針状体を母型とし、前記母型から複製版を作り、転写加工成形を行うことにより、
基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体を製造する方法である。
請求項6に記載の本発明は、
転写加工成形の成形材料として生体適合性材料が用いられることを特徴とする請求項5に記載の方法である。
請求項7に記載の本発明は、
請求項1から6の何れか1項に記載の製造方法によって製造された針状体の当該突起部の括れに対して、補強材料をディスペンス法により塗布することを更に具備することを特徴とする、基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体を製造する方法である。
請求項8に記載の本発明は、
請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法により製造された針状体である。
本発明によると、括れを有する突起部を具備する針状体を安価に且つ簡便に製造できる方法が提供される。
以下に、本発明の針状体の製造方法について説明を行う。
本発明に従う方法は、
基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体の製造方法であって、
基体の第一面に具備される突起部に対して、ディスペンス法によりエッチング液を選択的に塗布し、エッチングすることにより突起部の胴部に括れを形成すること
を具備する方法である。
特に、本発明は、胴部に括れを有する突起部を具備する針状体を、ディスペンス法によるエッチング液の選択的塗布工程を具備する製造方法により製造することが特徴である。
括れを施す対象となる針状体は、それ自身公知の方法、例えば、精密機械加工などにより針状体形成材料から直接製造してもよく、それ自身公知の方法により金型または複製版を使用して転写成形することにより製造してもよい。
ここで、「胴部」とは、当該突起部の基底部と先端部とに挟まれる部分を指すが、括れの存在する部分に基底部が一部含まれてもよい。
突起部の胴部における括れの位置は、エッチング保護剤の使用により調節することが可能である。例えば、エッチング保護剤を用いない場合には、エッチングにより、当該突起部の胴部から基底部にかけて括れを施すことが可能である。エッチング保護剤を用いることにより、当該突起部の基底部からエッチング保護剤が存在する高さまで、突起部の胴部はエッチングから保護される。従って、エッチングは、エッチング保護剤の存在する位置よりも先端部よりの位置の突起部胴部に施される。それにより目的とする部分に括れを施すことが可能になる。
また、針状体への塗布するエッチング保護剤の膜厚条件、またはエッチング保護剤の除去、例えば、灰化処理法による灰化条件のいずれかを制御することにより、突起部の所望の位置に括れを形成することができる。
さらに、エッチング液の塗布およびエッチングの工程を繰り返すことにより、突起部の胴部に複数の括れを形成してもよい。
そのようにして得た括れを有する突起部を具備する針状体を母型とし、母型から複製版を作り、生体適合性材料による転写加工成形を行うことで、生体適合性材料による括れを設けた針状体を形成してもよい。
このような針状体を生体に穿刺した場合、針状体の高さ方向に対して直行する方向の圧力を加えることで、括れの位置で突起部を容易に折ることができる。それにより、皮膚角質層内に突起部の一部を残留させることができる。生体適合性材料が特に生理活性物質を含んだり、突起部が生理活性物質からなる場合、当該生理活性物質による効果は数日間〜数ヶ月間に亘って安全に持続して作用することが期待される。
更に、針状体の括れに対し、ディスペンス法によって目的に応じた材料を塗布することにより、突起部の強度を補強することができる。例えば、生体適合性材料によって成形した突起部の括れに対し、生体内で溶解しやすい低分子量の成形材料を塗布することなどで、生体に穿刺する前は一定の強度を保っているが、生体に穿刺した後は強度が低下するので、ハンドリング性向上の付加価値を期待することができる。
<突起部の胴部に括れに加工する工程>
突起部の胴部を括れに加工する。
括れを施す突起部を具備する針状体の製造方法としては、特に限定されず、既存の方法により製造されたものを用いることができる。
基底部から胴部の所望の位置に括れを加工する為の針状体の材質は、エッチング液によるエッチング工程が可能である材質であることが望ましい。例えば、具体的には、Si、Al、Mo、Ti、Ta、W、Pt、Au、Ag、Cu、SiO、PSG、BSG、Si、Al等を好適に用いることができる。
当該針状体は、それ自身公知の方法、例えば、精密機械加工などにより針状体形成材料から直接製造してもよく、それ自身公知の方法により金型または複製版を使用して転写成形することにより製造してもよい。
例えば、微細加工技術によって作製する場合には、そのような微細加工技術の例は、これらに限定するものではないが、リソグラフィ、ウェットエッチング、ドライエッチング、プラズマエッチングおよび反応性イオンエッチングなどのエッチング、レーザー加工、収束イオンビーム、サンドブラストなどのブラスト処理および精密機械加工法などを含む。
そのようにして得られた針状態の突起部に対して、エッチング処理を行うことにより、その胴部に括れを形成すればよい。
また、必要性に応じて、上述した針状体の突起部のある第一の面にエッチング保護剤を用いることにより、当該突起部における括れの位置を調整してもよい。即ち、突起部の基底部を含む胴部に括れを作る場合には、エッチング保護剤は必要無い。
エッチング保護剤は、高粘度液体であってよく、所望の形状で硬化することに加え、エッチング液によるエッチングに対して耐性のあるものを使用できる。例えば、具体的には、ネガ型レジストや熱硬化性樹脂などであってよい。
また、前記エッチング保護剤を塗布する工程としては、特に限定されず、使用するエッチング保護剤に応じて適宜選択することができる。例えば、具体的には、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ディスペンス法などを用いることができる。
当該エッチング保護剤は、表面張力により自己整合的に突起部の基底部に曲面の形状を成して留まる。このため、特に、複数の突起部が林立する場合、全ての突起部に一様な曲面を形成することが可能となる。また、エッチング保護剤の粘度を制御することにより、基底部における曲面の曲率半径に付随して、突起部の先端部の膜厚を制御することができる。これにより、所望する針状態基底部の曲率半径および、その先端部に膜厚を持った突起部を設計し、製造することが可能となる。また、このとき、エッチング保護剤が、高粘度であればあるほど曲率半径および膜厚が大きくなる傾向がある。
エッチング保護剤を用いる場合には、エッチング保護剤を塗布した後に、エッチング保護剤を硬化させる。
エッチング保護剤を硬化させる方法としては、使用するエッチング保護剤に適切なものを適宜用いればよい。また、エッチング保護剤の硬化条件を制御することにより、基底部における曲面の曲率半径および、先端部の膜厚を制御することができる。これにより、所望する曲率半径および膜厚を持った突起部を設計し、製造することが可能である。
例えば、エッチング保護剤が熱硬化性樹脂である場合、硬化温度を高くすると室温に戻した体積収縮が大きくなり、結果として曲率半径および膜厚が小さくなる傾向がある。
次に、エッチング保護剤を突起部先端部から所望の位置まで除去する。当該除去は、エッチング保護剤に応じて適宜選択すればよい。
エッチング保護剤として、レジストや熱硬化性樹脂を用いる場合には、不要となるレジストや熱硬化性樹脂などを除去する工程として、灰化処理法を用いてよい。灰化処理法は、液相によるウェットプロセスと、気相によるドライプロセスに大別されるが、特に本発明においては、露出面の表面エネルギー増加処理も必要となることから、活性ガスを用いたドライプロセスを用いることが望ましい。
灰化処理法により、突起部先端部から所望の位置までのエッチング保護剤の除去を行った場合、当該除去により、露出している材質の表面エネルギーの増加処理を行うことが同時に可能である。
上記灰化処理法に用いる装置としては、活性ガスを使用するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、具体的には、光励起灰化装置やプラズマアッシング装置などを用いることができる。
上記アッシング装置で使用する反応ガスとしては、主に酸素ガスが用いることができる。これを光・プラズマで励起し有機高分子であるレジストや熱硬化性樹脂と化学反応を起こさせることによって、灰化処理を進行させる。
突起部に形成されたエッチング保護剤による硬化膜の膜厚分布については、突起部先端部が最も薄く、突起部基底部が最も厚くなる傾向がある。したがって、灰化処理における灰化条件を制御すれば、先端部から胴部にかけて、所望部分までのエッチング保護剤を選択的に除去することができる。
次に、ディスペンス法によりエッチング液を滴下し、突起部の基底部から胴部をエッチング処理することで括れを形成する。また滴下時においては、必要性に応じて針状体を傾斜させても良い。
ディスペンス法によりエッチング液を滴下する工程で用いるディスペンサーは、エッチング液の吐出量を微少に制御できる性能を有している装置であれば特に限定されない。例えば、具体的には、ピエゾ式のインクジェットディスペンサーを用いることができる。また、ディスペンサーヘッドの内径は、吐出が困難にならない程度小さい方が好ましい。
ディスペンサーで吐出するエッチング液は、被エッチング材料に対応したエッチング液を適宜利用できる。また、表面エネルギーが高い材料に対しては、高いぬれ性を示すことが重要となる。例えば、具体的には、被エッチング材料がSiであればエッチング液はKOH、被エッチング材料がAlであればエッチング液はHClを使用できる。また、最適な括れの形状を得るため、場合によってはエッチング液の濃度を調整し、エッチング速度を最適化してもよい。
エッチング液を滴下する箇所は、エッチング保護剤の硬化膜と被エッチング材料の境界部分であることが望ましい。滴下されたエッチング液は、境界部分に着弾した瞬間、硬化膜上での高接触を示す先端部方向へのぬり広がりと、被エッチング材料上での低接触角を示す全方向へのぬり広がりと、エッチング液の自重による基底部方向へのぬり広がりとのバランスによって、突起部の一部に対して周状にぬり広がる。
また、エッチング保護剤の硬化膜の膜厚を変化させることによるエッチング箇所制御を複数回用いることで、同じ針状体内に複数の括れを設けることも可能である。
エッチング処理を行った後は、必要に応じてリンス処理を行い、再び十分な灰化処理を行うことで、括れを設けた針状体を得ることができる。
<針状体の転写加工成形>
まず、前記括れを設けた突起部を有する針状体を母型とし、複製版を形成してもよい。
このとき、複製版の作製方法は、複製版として機能するだけの形状追従性及び、充填した材料を複製版から離型できるだけの柔軟性を有していればよく、例えば、有機シリコンなどの成型用樹脂等を用いることが可能である。形成する樹脂の厚さに制限はないが、少なくとも突起部の高さの2倍以上の厚さに形成することが好ましい。
次に、前記複製版を用いて、種々の材料へ転写加工成形を行う。
前記複製版を用いて、インプリント法、ホットエンボス法、射出成形法、キャスティング法などによって、針状体の複製を行う。複製品の材質は特に限定されないが、生体適合性材料である医療用シリコン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等を用いることで、生体に適用可能な針状体を形成できる。
<針状体の括れへの補強材料滴下>
括れを設けた突起部を有する針状体は、括れがない針状体と比較して、横方向の力に対する強度が低く、ハンドリング性に乏しい。これに対しては、ディスペンス法によって、目的に応じた補強材料を括れに滴下することができる。補強材料は特に限定されないが、生体適合性材料を補強するならば、シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等を用いることができる。また、ディスペンス法による補強材料の滴下時においては、必要性に応じて針状体を傾斜させてもよい。
括れに滴下された補強材料は、表面張力により、自己整合的に括れだけに塗布される。滴下量を調整すれば、針状体の括れは、みかけ上ないようにみられ、生体に穿刺する前は一定の強度を保っているのに対して、生体に穿刺した後は強度が低下するようにすることもできる。したがって、このような用途に用いる補強材料の場合、針状体材料よりも低い分子量の材料を選定することが望ましい。
本発明に従う針状体は、針状体により穿刺対象に対して生理活性物質等を投与することを目的とする場合、当該生理活性物質等を内包又は含有した構造であってよい。その場合、当該生理活性物質は、マイクロカプセル等に内包されて突起部に具備されてもよい。また、生理活性物質が、突起部を形成する部材と直接に混合されて具備されてもよく、更に、突起部が当該生理活性物質により形成されてもよい。
本発明によれば、ディスペンス法によるエッチング液の選択的塗布工程を用いることにより、従来のX線リソグラフィー工程を経ずに、従来と同様の胴部に括れを有する突起部を具備する針状体を、安価かつ簡便に製造することができる。
また、本発明の針状体を生体に穿刺した場合においては、針状体の高さ方向に対して直行する方向の圧力を加えることで、括れにおいて針状体を容易に折ることができ、それにより、皮膚角質層内に残留させることができる。生体適合性材料が特に生理活性物質の場合、生理活性物質による効果が数日間〜数ヶ月間、安全に持続することが期待される。
以上、本発明に従う針状体の製造方法の態様の例について説明したが、これらは、上記態様に限定されるものではなく、種々の変更を加えてもよい。また本発明に従う方法の場合においては、何れかの工程をそれ自身公知の何れかの置換可能な工程に置き換えてもよく、更なる工程などを追加してもよい。そのような態様も本発明の範囲に含まれる。
以下、本発明の実施の一例として図1を用いて説明を行う。
まず、基板101としてシリコンウェハを用意した。このシリコンウェハの結晶方位は(1,0,0)面であり、ウェハの厚みは525μmである。このシリコンウェハ上にDCマグネトロンスパッタ法によりクロムを100nmの膜厚で形成した。この際スパッタ圧力は0.25Pa、投入電力は1000Wである。
次に、このクロム上にクロム膜のエッチングマスクとして東京応化工業製ポジレジストOFPR(粘度:50cp)を膜厚1μmとしてコートし、フォトリソグラフィー法により1辺が30μmの正方形開口パターンを形成した。このレジストパターンをエッチングマスクとして、過塩素酸及び硝酸第二セリウムアンモニウムの混合溶液を用いてクロムをエッチングし、1辺が30μmの正方形開口のクロムパターン102を形成した。(図1(a))。クロムパターニング形成後、有機溶媒にてOFPRを除去し、クロムパターンの寸法を測定したところクロムの正方形開口パターンの寸法は1辺が30μmであった。
このクロムパターン102をエッチングマスクとして、重量濃度25%、液温90℃の水酸化カリウムを用いて結晶方位によるエッチングレート差を利用したシリコンの異方性ウェットエッチングによりシリコンウェハのパターニングを行い穿孔パターン103を形成した。ウェットエッチング後に過塩素酸及び硝酸第二セリウムアンモニウムの混合溶液によりクロムを除去した(図1(b))。これにより形成したシリコン開口パターンの形状を走査型電子顕微鏡により確認したところ、パターンの深さは約20μmであり再深部の開口角度は70°であった。
この基板上の前面に東京応化製ポジ型レジストOFPR−20cpを50nmの膜厚でコートし、シリコン開口パターンに合わせて1辺が30μmの正方形レジストパターン104を形成し(図1(c))、このレジストパターン104をエッチングマスクとして、ウェハ全面に対してフルオロカーボン系ガスを用いたICP(Inductively Coupled Plasma:共有結合型プラズマ)エッチングによりシリコンウェハ上のレジスト104が完全に除去されるまでエッチングを行った。この際に用いたエッチング条件のOFPR及びシリコンのエッチングレートを測定した結果、OFPRとシリコンのエッチング選択比は0.15であった。
全面エッチングを終えた試料を操作型電子顕微鏡で観察したところ、1辺が約30μm、高さ約300μm、先端角度が約10°の角錐型の突起部がマイクロニードルとして形成されていることを確認した。それにより、基体116の第一の面に突出した突起部105を具備する針状体117が得られた(図1(d))。
次に、この原版に東京応化製ネガ型レジストOMR−83をコートした。このとき、スピンコート法(回転数1500rpm、180sec)を用いた。
次に、紫外光によりこのレジストを硬化させた。レジスト硬化後の突起部形状を走査型電子顕微鏡により確認したところ、OMRの膜厚は50nmであった。また、突起部の根元部は機械的な負荷の集中が懸念されるような鋭角部は確認されず、OMRにより完全に被覆された状態で緩やかな曲線形状となっていることを確認した(図1(e))。図1(e)に示すように、当該レジストがエッチング保護剤106として機能する。
レジスト106により被覆された突起部105に対し、先端部のSiのみを選択的に露出させる為、プラズマアッシング装置により、灰化処理(O200sccm、800W、20sec)を行った。灰化処理後の突起部形状を走査型電子顕微鏡により確認したところ、Siの露出面は突起部先端から200μmの範囲であることを確認した。
次にピエゾ式のインクジェットディスペンサーを用いて、Siとレジスト膜の境界部に重量濃度25%、液温90℃の水酸化カリウムを滴下した。ディスペンサーヘッドの内径は50μmで、ヘッド先端のストロボ画像から、1滴の液滴直径が50μmで吐出されていることを確認した。ウェットエッチング処理後の突起部形状を走査型電子顕微鏡により確認したところ、突起部先端から175μmの位置に縦幅50μmの括れを有する突起部107が形成されていることを確認した(図1(f))。
突起部107に被覆された全てのOMRを除去するため、プラズマアッシング装置により、灰化処理(O200sccm、800W、2000sec)を行った。灰化処理後の突起部形状を走査型電子顕微鏡により確認したところ、突起部全体がSiの露出面となっていることを確認した。これにより、突起部と凹凸反転させた複製版を作製した。
この複製版を用いて、インプリント法により作製したポリ乳酸製の突起部を走査型電子顕微鏡で形状を確認したところ、原版とほぼ同等の形状の突起部108が形成されていることを確認した(図1(g))。
最後に、ピエゾ式のインクジェットディスペンサー(ヘッド内径50μm)を用いて、突起部108の括れに対して、コラーゲン水溶液を吐出した。コラーゲンは生体内においてポリ乳酸よりも分解し易いため、突起部108の括れがコラーゲンによる皮膜に覆われていれば、生体に穿刺した後、突起部108を括れにおいて容易に折ることができ、皮膚角質層内に残留させることができる。逆に生体に穿刺する前については、突起部は括れにおけるコラーゲン皮膜により補強され、ハンドリング性を向上させる程度の強度を保つことができる。ディスペンサーによるコラーゲン皮膜形成工程の後、走査型電子顕微鏡で形状を確認したところ、突起部108においてコラーゲン皮膜によって覆われている括れ109が形成されていることを確認した。(図1(h))。
本発明の針状体の製造方法は、例えばMEMSデバイス、医療、創薬に用いる針状体の製造方法として有用である。
本発明の態様の1例を示す図。
符号の説明
101…基板
102…穿孔用パターン形成用レジストパターン
103…穿孔パターン
104…レジスト
105…突起部
106…高粘度液体
107…括れ
108…転写加工成形された針状体
109…補強材料による補強後の括れ
116・・・基体
117・・・針状体

Claims (8)

  1. 基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体の製造方法であって、
    基体の第一面に具備される突起部に対して、ディスペンス法によりエッチング液を選択的に塗布し、エッチングすることにより突起部の胴部に括れを形成すること
    を具備する方法。
  2. 更に、エッチング液の塗布の前に、当該突起部にエッチング保護剤を塗布して硬化することと、
    前記硬化したエッチング保護剤を先端部から形成しようとする括れの位置まで除去することと、
    を具備する方法。
  3. 前記硬化したエッチング保護剤を除去することが灰化処理法により行われることを特徴とする方法。
  4. エッチング液の選択的に塗布し、エッチングすることを複数回行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の方法により製造した針状体を母型とし、前記母型から複製版を作り、転写加工成形を行うことにより、
    基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体を製造する方法。
  6. 転写加工成形の成形材料として生体適合性材料が用いられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 請求項1から6の何れか1項に記載の製造方法によって製造された針状体の当該突起部の括れに対して、補強材料をディスペンス法により塗布することを更に具備することを特徴とする、基体と、前記基体の第一の面から突出し、その胴部に括れを有する突起部を具備する針状体を製造する方法。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法により製造された針状体。
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