JP2010140660A - タンデム飛行時間型質量分析計 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はタンデム飛行時間型質量分析計に関し、イオン検出面の広がりを抑制することができるタンデム型飛行時間型質量分析計を提供することを目的としている。
【解決手段】サンプルをイオン化するイオン源10と、イオンをパルス的に加速する手段を含む第1の飛行時間型質量分析計20と、特定の質量を持つイオンを選択するイオンゲート11と、該イオンゲート11で選択したイオンを開裂させる手段21と、開裂したプロダクトイオンを再加速させるための手段30と、イオンミラ15ーを含む第2の飛行時間型質量分析計25と、該第2の飛行時間型質量分析計25を通過したイオンを検出する検出器12、とで構成され、再加速させるための手段が所定の機能を持つように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明はタンデム飛行時間型質量分析計に関し、更に詳しくは微量化合物の定量分析、定性一斉分析、及び試料イオンの構造解析分野に用いられるタンデム飛行時間型質量分析計に関する。
(飛行時間型質量分析計)
飛行時間型質量分析計はTOFMSとも呼ばれる。図3は直線型TOFMSの構成を示す図である。図において、10はパルスイオン源であり、11は質量の異なるイオンにパルスを印加して加速させるパルス電圧発生器である。12は飛行してくるイオンを質量の小さい順に取り込んで検出する検出器である。
イオンは一定のパルス電圧Vaで加速される。この時のイオンの速度vは、エネルギー保存則から、
mv2/2=qeVa (1)
v=√(2qeV/m) (2)
で与えられる。ここで、mはイオンの質量、qはイオンの電荷、eは素電荷である。
ここで検出器12をパルスイオン源10から一定距離Lの後に置いた検出器12には、飛行時間Tで到達する。飛行時間Tは次式で表される。
T=L/v=L√(m/2qeV) (3)
(3)式より、飛行時間Tがイオンの質量により異なることが分かる。この原理を利用して質量を分析する。また、イオン源10と検出器12の間に反射場を置くことにより、エネルギー収束性の向上と飛行距離を延長することができる反射型TOFMSも広く利用されている。
図4は反射型TOFMSの構成を示す図である。図3と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、14はパルスイオン源10から出射されたイオンを受けてイオンの飛行距離を長くするための反射場である。反射場14では、入射してきたイオンを入射方向に反射させるイオンミラーである。該イオンミラー15で反射されたイオンは、反射場14から出て外部に設けられた検出器12に質量の小さい順に突入する。この例では、飛行時間を長くすることでエネルギー収束性を向上させ、正確な質量分析を行なうことができる。
(MS/MSとTOF/TOF)
一般的な質量分析では、イオン源で生成したイオンを質量分析計にて質量分離した後に検出してマススペクトルを取得する。この時得られる情報は質量のみである。この測定をMS測定と呼ぶ。これに対し、イオン源で生成した特定のイオン(プリカーサイオン)を自発的または強制的に開裂させ、生成したプロダクトイオンを質量分離した後検出し、プロダクトイオンを質量分離した後検出し、プロダクトイオンスペクトルを取得することをMS/MS測定と呼ぶ。
この測定では、プリカーサイオンの質量と複数の経路で生成するプロダクトイオンの質量情報が得られるため、プリカーサイオンの構造情報を得ることができる。図5はプリカーサイオンの構造情報を示す図である。プリカーサイオンは、開裂により複数のプロダクトイオン11〜1nが得られる。このプロダクトイオンを全て質量分析することにより、プリカーサイオンの構造解析を行なうことができる。
TOFMSを2台直列接続したMS/MS測定を行える装置は、一般にTOF/TOFと呼ばれる。TOF/TOF装置は、直線型TOFMSと反射型TOFMSとで構成される。図6は直線型TOFMSと反射型TOFMSで構成された装置の構成を示す図である。図4と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、20は第1TOFMS、25はこれと直列接続される第2TOFMSである。
第1TOFMS20において、10はパルスイオン源、11はプリカーサイオンを選択するためのイオンゲート、21はイオンゲート11で選択されたプリカーサイオンを入力して衝突させる衝突室である。イオンゲート11付近に第1第1TOFMSの時間収束点が配置される。第2TOFMS25において、14はイオンミラーからなる反射場、12は飛行してきたイオンを検出する検出器である。このように構成されたTOF/TOF装置の動作を概説すれば、以下の通りである。
プリカーサイオンは、自発的に開裂する場合や、第1TOFMS若しくは第2TOFMSの反射場14以前に配置された衝突室21で強制的に開裂させられる。開裂生成したプロダクトイオンの運動エネルギーはUpは、プロダクトイオンの質量に比例して配分され、
Up=(Ui×zi/zp)×m/M (4)
となる。ここで、Upはプロダクトイオンの運動エネルギー、Uiはプリカーサイオンの運動エネルギー、zpはプロダクトイオンの価数、ziはプリカーサイオンの価数、mはプロダクトイオンの質量、Mはプリカーサイオンの質量である。反射場14を含む第2TOFMSでは、質量及び運動エネルギーにより飛行時間が異なるため、プロダクトイオンを質量分析することができる。
TOF/TOF装置は、主に1価イオンが生成するMALDIイオン源を採用した装置に使用されている。その理由の一つには、プリカーサイオンが多価イオンで
(zi/zp)×(m/M)>1
を満たす場合、Uiまでのイオンを反射させることを想定したイオンミラーでは分析できないプロダクトイオンが存在してしまうためである。
(TOF/TOFにおける運動エネルギーの圧縮)
TOF/TOFは、前述のように幅広い運動エネルギーをもつプロダクトイオンが分析対象となる。これを可能とする第2TOFのイオン光学系にはいくつかのタイプが存在する。いくつかのものには、減速や再加速などを利用して第2TOFMSで解析するプロダクトイオンの運動エネルギーの分布を圧縮する方法が採られる。ここで、運動エネルギーの圧縮率Rを次のように定義する。
R=1−(Uc/(Uc+Upa))
ここで、Ucは衝突室に入射前のプリカーサイオンの運動エネルギー、Upaは再加速により得る運動エネルギーである。プリカーサイオンが1価イオンの場合、プロダクトイオンの運動エネルギーUproは、
Upa<Upro≦Uc+Upa
となる。さて、次に公知技術であるTOF/TOF装置のタイプ別特徴を示す。
引用文献1:特開昭60−119067号公報
引用文献2:WO9533279号
引用文献3:US6348688号
引用文献4:US6300627号
引用文献5:特開2006−196216号公報
1)引用文献1,2は運動エネルギーの圧縮を行わない。そのため、幅広い運動エネルギー収束性を実現できる曲線型イオンミラーを利用するものである。
2)引用文献3は、コリジョンセルの直前でプリカーサイオンを一度減速機構し、衝突解離させた後再加速機構を行なう。圧縮率は95%程度である。この発明は、運動エネルギー圧縮率が高いため、反射場の運動エネルギー収束性は低くてもよい。
3)引用文献4は、LIFT機構と再加速機構を用いるものである。運動エネルギーの圧縮率は比較的高いため、反射場の運動エネルギー収束性は低くてもよい。
4)引用文献5は、再加速機構と中程度の運動エネルギーをもつイオンミラーを持つ場合である。引用文献5の反射場は直線部と放物線部を合わせ持つオフセットパラボリックイオンミラーを用いている(特許文献1)。
特開2006−196216号公報(段落0035〜0043、図2)
本発明は、引用文献5のタイプの問題点を解決するためのものである。以下の例では、オフセットパラボリックイオンミラーを例に挙げるが、再加速と中程度の運動エネルギー収束性を持つイオン光学系であれば適用可能である。引用文献5の第2TOFのイオン光学系は、圧縮率が比較的フレキシブルに設定できるという特徴をもつ。しかしながら、圧縮率が低くなるにつれてオフセットパラボリックイオンミラーの放物線部の割合が増える。
このため、m/zの小さい、即ち運動エネルギーの小さい、プロダクトイオンとそれが大きいプロダクトイオンの進入距離の差が広くなり、結果として検出面でのイオンビームが広くなってしまう。また、第2TOFMSの性能向上のためオフセットパラボリックイオンミラーの物理に大きくするほど、検出面でのイオンビームは広がる。図7にその様子を示す。
図7は第2TOFMSのイオンの軌跡を示す図である。図6と同一のものは、同一の符号を付して示す。12はイオンの検出器である。この検出器12の近傍に設けられた再加速領域20から再加速されたイオンは、イオンミラー15で反射され、検出器12に突入する。21はイオンの有効検出面である。検出器部の物理サイズは90mmφ、再加速領域の20の長さは16mm、イオンミラー15の反射点は360mmである。
図7は、再加速部20,イオンミラー15,検出器12及びそれらの間の自由空間で構成される第2TOFMSを示している。なお、本趣旨とは関連が少ないので、イオン源,第1TOFMS,イオンゲート及び衝突室は省略して示している。プリカーサイオンの入射エネルギーUiに対して、再加速により得られるエネルギーはUpa=0.5Uiであり、圧縮率33%である。
図7に示す図は、再加速点と、その位置からX方向,Y方向(紙面に向かって垂直方向)に±1mmの5点から衝突室で生成するプロダクトイオンを想定し、0.02Ui〜Uiのイオンを飛行させた場合のイオン群の軌跡である。再加速始点でUiをもつイオンはイオンミラー15内を360mm程度まで進入している。この検出器12の有効検出面21は40mmφであり、通常検出器12は、有効面積の倍程度の物理的な大きさを持つため、その大きさを90mmφとし、分かりやすいように段差をつけて表示している。図7を見ると、イオン群の軌跡が有効検出面21から外れていることが分かる。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、引用文献5の発明において、圧縮率が低い場合、或いはイオンミラーの物理的大きさが比較的大きい場合にも検出面の広がりを抑えることができるタンデム飛行時間質量分析計を提供することを目的としている。
(1)請求項1記載の発明は、サンプルをイオン化するイオン源と、イオンをパルス的に加速する手段を含む第1の飛行時間型質量分析計と、特定の質量を持つイオンを選択するイオンゲートと、該イオンゲートで選択したイオンを開裂させる手段と、開裂したプロダクトイオンを再加速させるための手段と、イオンミラーを含む第2の飛行時間型質量分析計と、該第2の飛行時間型質量分析計を通過したイオンを検出する検出器、とで構成され、再加速させるための手段が以下のような特徴をもつことを特徴とする。
(1)再加速領域を定める2つの電極とその間に少なくとも1つの偏向電極をもつ
(2)偏向電極の1つは少なくともプロダクトイオンを検出面でのプロダクトイオンの位置分布が小さくなるように偏向する機能をもつ
(2)請求項2記載の発明は、前記偏向電極の中心電位を調節し、イオンビームの収束機能を実現できるようにしたことを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、前記偏向電極の1つが前記請求項1の(2)で偏向する方向とは垂直方向の偏向機能を有することを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、再加速による運動エネルギーの圧縮率が20〜70%であることを特徴とする。
(1)請求項1記載の発明によれば、再加速領域に偏向器と集束レンズを兼ね備えた機構を設けることにより、圧縮率が低い場合、或いはイオンミラーの物理的大きさが比較的大きい場合にも検出面の広がりを抑えることができるタンデム飛行時間質量分析計を提供することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、偏向電極がプロダクトイオンを検出面でのプロダクトイオンの位置分布を小さくすることにより、検出面の広がりを抑えることができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、プロダクトイオンの広がりを2次元的に抑制することができる。
(4)請求項4記載の発明によれば、再加速の運動エネルギーの圧縮率を20〜70%にすることで、検出器へ突入するイオンの幅を抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の実施の形態を示す図である。図3,図6,図7と同一のものは、同一の符号を付して示す。なお、本発明発明の趣旨とは関連が少ないので、イオン源,第1TOFMS,イオンゲート,衝突室は図示していない。以下の実施の形態では、第1TOFMSにらせん軌道TOFMSを用いて説明を行なうが、イオンゲートにてプリカーサイオンの一つの同位体イオンを選択することができるTOFMSであれば、反射型TOFMSや同一軌道TOFMSを用いてもよい。
図において、30は第1TOFMS(図示せず)から飛行してきたプロダクトイオンを再加速させる再加速部である。再加速部30の幅は16mm程度であり、2枚の電極32a,32bがイオンの飛行方向に対向配置されている。
31a,31bは加速電極32a,32bの中間に配置された偏向電極である。電極32a,32bは図に示すように、2枚のY方向に2分割されている。この2枚の電極で加速電極を構成している。この分割された電極の直径はほぼ3mmφである。15はイオンが折り返されるイオンミラーである。この偏向電極32a,32b間を通るイオンは軽いイオンほど良く曲がるようになっている。その他の構成は、図7と同じである。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
イオン源10にてサンプルをイオン化し、パルス電圧発生器11により加速する。イオンは第1TOFMS20により質量分離された後衝突室21で開裂させるイオン(プリカーサイオン)をイオンゲート11で選択する。イオンゲート11で選択されたプリカーサイオンは衝突室21で解離し、複数種のプロダクトイオンが生成する。
このプロダクトイオンは再加速部30で再加速され、運動エネルギーが圧縮されると同時に検出器12の方向に再加速部30で偏向される。再加速部30の構造は図1に拡大して示した。この偏向の度合いは、小さいプロダクトイオン(運動エネルギー小)程大きい。再加速部30を出たイオンは、自由空間を飛行後イオンミラー15へと進入する。
イオンミラー15への進入距離は、小さいプロダクトイオンほど短く、イオンミラー15の入射位置と出射位置の距離もまた小さくなる。再加速部30での偏向度合いとイオンミラー15への進入距離を調整することで、検出部12の検出面での広がりを妥当な範囲まで小さくすることができる。図1は図7と同じ条件のイオン軌道を示したものであるが、本発明の効果により検出面でのイオン軌跡が広がっていないことが分かる。なお、本実施の形態で示す装置において、再加速による運動エネルギーの圧縮率は20〜70%であることがイオン検出部の検出面へのイオンの照射面積を小さくする上で好ましい。
本発明によれば、再加速領域に偏向器と集束レンズを兼ね備えた機構を設けることにより、圧縮率が低い場合、或いはイオンミラーの物理的大きさが比較的大きい場合にも検出面の広がりを抑えることができるタンデム飛行時間質量分析計を提供することができる。
また、本発明によれば、偏向電極がプロダクトイオンを検出面でのプロダクトイオンの位置分布を小さくすることにより、検出面の広がりを抑えることができる。
また、本発明によれば、プロダクトイオンの広がりを2次元的に抑制することができる。
更に本発明によれば、再加速の運動エネルギーの圧縮率を20〜70%にすることで、検出器へ突入するイオンの幅を抑制することができる。
(第2の実施の形態)
構成は実施の形態1と同じである。オフセットパラボリックイオンミラーのように、イオンミラーへの進入距離が大きくなるに従って電場が強くなるイオンミラーでは、イオンミラ15ーの中心から外れるほどイオンビームが発散する方向に働く。そこで、図1に示した2分割電極をY方向にも分割し、図2に示すように4分割偏向器(デフレクタ)としてイオンミラー15への入射位置を補正する。これにより、イオンビームが発散するのを防止することができる。
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、引用文献5で示された第2TOFMSのイオン光学系において、比較的低圧縮率の場合でのプロダクトイオンの位置分布を抑え、感度向上に寄与するところが大きい。
本発明の実施の形態の説明図である。 4分割偏向器の構成例を示す図である。 直線型TOFMSの構成を示す図である。 反射型TOFMSの構成を示す図である。 プリカーサイオンの構造情報を示す図である。 直線型TOFMSと反射型TOFMSで構成された装置の構成を示す図である。 第2TOFMSのイオンの軌道を示す図である。
符号の説明
10 パルスイオン源
11 パルス電圧発生器
12 検出器
14 反射場
15 イオンミラー
17 イオンゲート
21 衝突室
24 第1TOFMS
25 第2TOFMS
30 再加速部
31a 加速電極
31b 加速電極
32a 偏向電極
32b 偏向電極

Claims (4)

  1. サンプルをイオン化するイオン源と、
    イオンをパルス的に加速する手段を含む第1の飛行時間型質量分析計と、
    特定の質量を持つイオンを選択するイオンゲートと、
    該イオンゲートで選択したイオンを開裂させる手段と、
    開裂したプロダクトイオンを再加速させるための手段と、
    イオンミラーを含む第2の飛行時間型質量分析計と、
    該第2の飛行時間型質量分析計を通過したイオンを検出する検出器、
    とで構成され、再加速させるための手段が以下のような特徴をもつタンデム飛行時間質量分析計。
    (1)再加速領域を定める2つの電極とその間に少なくとも1つの偏向電極をもつ
    (2)偏向電極の1つは少なくともプロダクトイオンを検出面でのプロダクトイオンの位置分布が小さくなるように偏向する機能をもつ
  2. 前記偏向電極の中心電位を調節し、イオンビームの収束機能を実現できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のタンデム飛行時間型質量分析計。
  3. 前記偏向電極の1つが前記請求項1の(2)で偏向する方向とは垂直方向の偏向機能を有することを特徴とする請求項1記載のタンデム飛行時間型質量分析計
  4. 再加速による運動エネルギーの圧縮率が20〜70%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタンデム飛行時間型質量分析計。
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