JP2010138143A - Glp−1分泌促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、機能性食品素材として利用可能なGLP−1分泌促進剤、及びこれを添加した飲食品、機能性食品、栄養補助食品、または飼料を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、大豆タンパク質のシステインプロテアーゼ分解物を有効成分とするGLP−1分泌促進剤を提供する。また本発明は、前記GLP−1分泌促進剤を含有する血糖値上昇抑制用組成物ならびに抗肥満用組成物を提供する。本発明のGLP−1分泌促進剤は、肥満や糖尿病の予防、治療に有効な飲食品、機能性食品、栄養補助食品、または飼料として利用可能である。
【選択図】 図2
【解決手段】 本発明は、大豆タンパク質のシステインプロテアーゼ分解物を有効成分とするGLP−1分泌促進剤を提供する。また本発明は、前記GLP−1分泌促進剤を含有する血糖値上昇抑制用組成物ならびに抗肥満用組成物を提供する。本発明のGLP−1分泌促進剤は、肥満や糖尿病の予防、治療に有効な飲食品、機能性食品、栄養補助食品、または飼料として利用可能である。
【選択図】 図2
Description
本発明は、大豆タンパク質、特にエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパクのシステインプロテアーゼ分解物を有効成分とするGLP−1分泌促進剤、ならびにこれを含有する血糖値上昇抑制用組成物及び抗肥満用組成物に関する。
近年、糖尿病、脂質異常症、高血圧症等の生活習慣病や肥満が大きな問題となっている。生活習慣病においては、遺伝因子のほか、食生活等の生活習慣が発症に寄与すると考えられている。また肥満は、消費カロリー量に対して摂取カロリー量が過剰となることが発生の原因の一つとなっている。これら生活習慣病や肥満を予防、改善するには生活習慣の改善が有効と考えられているが、その他の手段として、生理系統を調節することができる、生活習慣病の発症や肥満の予防に有用な素材、特に日常的に接種できる飲食品として利用可能な素材の利用に期待が高まっている。
GLP−1(Glucagon Like Peptide−1)は、主として膵臓に作用し、血糖値に依存してβ細胞によるインスリン放出を促進するペプチドホルモンである(非特許文献1)。さらに、GLP−1のインスリン放出促進作用は血漿グルコース濃度に依存しているために(非特許文献2)、低い血漿グルコース濃度ではGLP−1介在性のインスリン放出も低くなり、従ってGLP−1は重篤な低血糖症を招き難いというメリットも有する。
こうした点からGLP−1自身が糖尿病治療薬として開発されており、従って血中へのGLP−1の分泌を促進させることのできる日常的に経口摂取が可能な素材は、血糖値の上昇を回避する必要のある糖尿病患者にとって、有益であり得る。
またGLP−1には、グルカゴンの分泌を抑制し、胃排出を遅らせ、末梢のグルコース処理を高める可能性が示唆されている他、体重を減少させる効果も認められており、抗肥満薬としても注目され、研究が進められている(非特許文献3)。従って血中へのGLP−1の分泌を促進させることのできる日常的に経口摂取が可能な素材は、肥満を防止あるいは解消し得る素材として、有益であり得る。
GLP−1の分泌を促進する飲食品として利用可能な素材としては、これまでにホエーたんぱく質加水分解物(特許文献1)、酵母マンナン(特許文献2)、ならびに卵白加水分解物や肉ペプトン(非特許文献4)等が報告されている。
本発明は、飲食品として利用可能な新たな素材としてのGLP−1分泌促進剤、及びこれを含有する血糖値上昇抑制用組成物又は抗肥満用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、大豆タンパク質、特にエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパク質のシステインプロテアーゼ分解物が、GLP−1の分泌を促進することを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)大豆タンパク質のシステインプロテアーゼ分解物を有効成分とするGLP−1分泌促進剤。
(2)システインプロテアーゼが植物のシステインプロテアーゼである、(1)に記載のGLP−1分泌促進剤。
(3)システインプロテアーゼがパパインである、(1)又は(2)に記載のGLP−1分泌促進剤。
(4)大豆タンパク質がエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパク質である、(1)〜(3)の何れかに記載のGLP−1分泌促進剤。
(5)(1)〜(4)の何れかに記載のGLP−1分泌促進剤を含有する血糖値上昇抑制用組成物。
(6)(1)〜(4)の何れかに記載のGLP−1分泌促進剤を含有する抗肥満用組成物。
本発明のGLP−1分泌促進剤は、GLP−1の分泌を促進し、血糖値の上昇を抑制することができることから、これを含む組成物は血糖値上昇抑制用組成物として、また抗肥満用組成物として、肥満や糖尿病の予防、治療に利用することができる。
本発明で用いる大豆タンパク質の原料となる大豆は、原産地、種類、成分組成、遺伝子組み換えの有無等は問われない。また本発明の大豆タンパク質は、大豆由来のタンパク質であればその種類は特に限定されず、一般的な大豆タンパク質である脱脂大豆、濃縮大豆タンパク、分離大豆タンパク、及びこれらの混合物等を用いることができるが、特にエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパク質の使用が好ましい。
本発明において好ましいエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパク質としては、例えばいわゆるHMF(High Molecular weight Fraction) を用いることができる。
HMFは、公開特許公報昭和62年第143697号、特許公開公報第2005−320562号に記載されているように、動物、植物又は微生物由来のエンド型プロテアーゼ及びエキソ型プロテアーゼを用いて大豆タンパク質を消化した後に回収される未消化残渣タンパク質である。
これまでに、HMFには血中コレステロール低下作用(J.Nutr.,120,977−985(1990))やアゾキシメタン誘導大腸腫瘍形成抑制作用(Biosci. Biotechnol.Biochem.,65(4),999−1002(2001))等が知られているが、本発明は大豆タンパク質を、特に前記HMFをさらにシステインプロテアーゼで消化して得られるペプチドに、GLP−1の分泌を促進する作用を見出したことによりなされた発明である。
本発明で用いられるシステインプロテアーゼは、植物起源のシステインプロテアーゼであることが好ましく、パパイン、ブロメライン、アクチニジン等を挙げることができるが、パパインを用いることが好ましい。これらシステインプロテアーゼは単独で、または複数を合わせて用いることができる。
酵素反応条件は酵素の種類に応じて異なり、その酵素の作用温度範囲、作用pH範囲において、大豆タンパク質、好ましくはエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパク質を分解できる量の酵素を用いて反応を行えば良い。例えばシステインプロテアーゼとしてパパインを使用する場合は、反応温度40〜90℃、反応pH3.0〜12.0で酵素反応を行うことができる。なお酵素反応後は、酵素反応を停止させるため、反応液を加熱処理等に供して酵素を失活させても良い。
上記酵素反応で得られる反応液はそのまま本発明のGLP−1分泌促進剤として用いることもできるし、また凍結乾燥等の公知の操作で反応液から溶媒を除去し、粉末やペーストの状態でも用いることができる。また、反応液を遠心分離等の公知の分画操作に供して得られる各画分についても、単独もしくは併用により、本発明のGLP−1分泌促進剤として用いることができる。
本発明のGLP−1分泌促進剤は、上記酵素反応で得られる反応液や溶媒を除去した粉末ないしペースト等を単体で、あるいは適当な賦形剤や食品あるいは医薬として許容される担体と共に使用することができる。このようにして得られる組成物は、GLP−1分泌促進剤を含有する血糖値上昇抑制用組成物又は抗肥満用組成物として利用することができる。
医薬は、例えば上記酵素反応で得られる反応液や溶媒を除去した粉末ないしペースト等を薬学的に許容され得る種々の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤等を用いて製剤化することにより製造することができる。製剤中の上記酵素反応で得られる反応液や溶媒を除去した粉末ないしペースト等の含有量は2〜30重量%、好ましくは10〜20重量%程度に調節すればよい。
本発明のGLP−1分泌促進剤あるいはこれを含む血糖値上昇抑制用組成物又は抗肥満用組成物の投与経路としては、例えば、経口投与、経腸投与等の非経口投与が挙げられる。投与剤形としては、例えば、注射剤、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、坐剤、軟膏、テープ剤等が挙げられる。
また本発明のGLP−1分泌促進剤あるいはこれを含む血糖値上昇抑制用組成物又は抗肥満用組成物は、飲食品、又は飼料等に配合して投与することもできる。特に、日常的に摂取可能な食品、機能性食品、栄養補助食品として、もしくはこれらに混合して用いることが好ましい。
飲食品は、例えば酵素反応で得られる反応液や溶媒を除去した粉末ないしペースト等に、デキストリン、デンプン等の糖類、ゼラチン、カゼイン、ホエー、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質、アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類、セルロース、グアガム、ジェランガム、アラビアガム等の多糖類、大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等を配合することにより製造することができる。飲食品の形態は問われず、固形物(粉末状、顆粒状等)、半固形物(ゼリー状、ペースト状等)、液状物のいずれであっても良い。
また本発明のGLP−1分泌促進剤の摂取量は、目的とする作用効果、投与方法、期間、年齢、性別、体重等により異なるが、成人1日当たり、通常0.001〜1000mg、好ましくは0.1〜100mgの範囲から適宜選択できる。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定的に解釈されるものではない。
<実施例>
HMF(不二製油株式会社)50gを脱塩水500mLに懸濁し、対基質濃度0.5%のパパインを添加し、pH7.2、55℃にて60分間保持した。反応終了後に、沸騰浴中に60分間保持して、酵素を失活させ、凍結乾燥により、大豆たんぱく質酵素分解物(HMFH)を得た。
<試験例1>
HMF(不二製油株式会社)50gを脱塩水500mLに懸濁し、対基質濃度0.5%のパパインを添加し、pH7.2、55℃にて60分間保持した。反応終了後に、沸騰浴中に60分間保持して、酵素を失活させ、凍結乾燥により、大豆たんぱく質酵素分解物(HMFH)を得た。
<試験例1>
<培養細胞でのGLP−1分泌試験>
マウス大腸由来のGLP−1産生細胞株GLUTagを、10%FBSを含むDulbecco‘s modified Eagle’s mediumにて、37℃、5% CO2存在下、48ウェルプレート中でサブコンフルエントになるまで2日間培養した。サンプル添加前に、Hepesバッファー(140mM NaCl、4.5mM KCl、1.2mM CaCl2、1.2mM MgCl2及び10mM D−グルコースを含む20mM Hepes緩衝液pH7.4)にてウェルを洗浄し、同バッファーに溶解したサンプル溶液を80μL添加し、37℃にて60分間インキュベーションした。上清を回収後、遠心分離(800×g、5分間、4℃)により細胞を沈殿させ、その上清70μLを回収、凍結保存した。上清中のGLP−1濃度を市販のEnzyme immuno assay kit(矢内原研究所製)にて測定した。コントロールとして、Hepesバッファー及び70mM KCl、サンプルとして牛血清アルブミン、卵白加水分解物(シグマ社製)、肉ペプトン(シグマ社製)、上記実施例のHMFH各5mg/mLを用いた。
マウス大腸由来のGLP−1産生細胞株GLUTagを、10%FBSを含むDulbecco‘s modified Eagle’s mediumにて、37℃、5% CO2存在下、48ウェルプレート中でサブコンフルエントになるまで2日間培養した。サンプル添加前に、Hepesバッファー(140mM NaCl、4.5mM KCl、1.2mM CaCl2、1.2mM MgCl2及び10mM D−グルコースを含む20mM Hepes緩衝液pH7.4)にてウェルを洗浄し、同バッファーに溶解したサンプル溶液を80μL添加し、37℃にて60分間インキュベーションした。上清を回収後、遠心分離(800×g、5分間、4℃)により細胞を沈殿させ、その上清70μLを回収、凍結保存した。上清中のGLP−1濃度を市販のEnzyme immuno assay kit(矢内原研究所製)にて測定した。コントロールとして、Hepesバッファー及び70mM KCl、サンプルとして牛血清アルブミン、卵白加水分解物(シグマ社製)、肉ペプトン(シグマ社製)、上記実施例のHMFH各5mg/mLを用いた。
<結果>
HMFHにより、培養細胞においてコントロールに比べ約2倍のGLP−1分泌の増加が見られ、文献で報告のある肉ペプトン並びに卵白加水分解物に比べて有意に高い値が示された(図1)。
HMFHにより、培養細胞においてコントロールに比べ約2倍のGLP−1分泌の増加が見られ、文献で報告のある肉ペプトン並びに卵白加水分解物に比べて有意に高い値が示された(図1)。
<ラットでのGLP−1分泌試験>
Sprague Dawley系雄ラット(8週齢)を予備飼育後、一夜絶食しケタミン・キシラジン麻酔下で開腹した。GLP−1産生細胞は主に回腸部位に分布することから、回腸結紮ループ(30cm)を作成後、回腸腸管膜静脈にカテーテルを留置し、このカテーテルより0分時の採血(0 time)を行った。回腸結紮ループ内へ試料(2mL脱イオン水、上記実施例のHMFH 300mg/脱塩水2mL)を投与し、30、60、90、120分後にそれぞれ採血を行い、血漿中のGLP−1濃度を上述のEnzyme immuno assay kitにて測定した。
Sprague Dawley系雄ラット(8週齢)を予備飼育後、一夜絶食しケタミン・キシラジン麻酔下で開腹した。GLP−1産生細胞は主に回腸部位に分布することから、回腸結紮ループ(30cm)を作成後、回腸腸管膜静脈にカテーテルを留置し、このカテーテルより0分時の採血(0 time)を行った。回腸結紮ループ内へ試料(2mL脱イオン水、上記実施例のHMFH 300mg/脱塩水2mL)を投与し、30、60、90、120分後にそれぞれ採血を行い、血漿中のGLP−1濃度を上述のEnzyme immuno assay kitにて測定した。
<結果>
HMFHを投与したラットにおいて、水投与群よりも有意に高い血中GLP−1濃度の上昇が認められたことから、HMFHはラットに対するGLP−1分泌促進活性を有することが示された(図2)。
HMFHを投与したラットにおいて、水投与群よりも有意に高い血中GLP−1濃度の上昇が認められたことから、HMFHはラットに対するGLP−1分泌促進活性を有することが示された(図2)。
Claims (6)
- 大豆タンパク質のシステインプロテアーゼ分解物を有効成分とするGLP−1分泌促進剤。
- システインプロテアーゼが植物のシステインプロテアーゼである、請求項1に記載のGLP−1分泌促進剤。
- システインプロテアーゼがパパインである、請求請1又は2に記載のGLP−1分泌促進剤。
- 大豆タンパク質がエンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼによる消化反応の残渣大豆タンパク質である、請求項1〜3の何れかに記載のGLP−1分泌促進剤。
- 請求項1〜4の何れかに記載のGLP−1分泌促進剤を含有する血糖値上昇抑制用組成物。
- 請求項1〜4の何れかに記載のGLP−1分泌促進剤を含有する抗肥満用組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008318160A JP2010138143A (ja) | 2008-12-15 | 2008-12-15 | Glp−1分泌促進剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008318160A JP2010138143A (ja) | 2008-12-15 | 2008-12-15 | Glp−1分泌促進剤 |
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JP (1) | JP2010138143A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9061003B2 (en) | 2011-01-27 | 2015-06-23 | Nitta Gelatin Inc. | Therapeutic or preventive agent for diabetes |
JPWO2017018404A1 (ja) * | 2015-07-27 | 2018-05-17 | サントリーホールディングス株式会社 | 環状ジペプチド及び甘味料を含有する組成物 |
JP2019011257A (ja) * | 2017-06-29 | 2019-01-24 | 松谷化学工業株式会社 | D−プシコース及び大豆たんぱく質を有効成分とする生体機能改善用組成物 |
-
2008
- 2008-12-15 JP JP2008318160A patent/JP2010138143A/ja active Pending
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JPWO2017018404A1 (ja) * | 2015-07-27 | 2018-05-17 | サントリーホールディングス株式会社 | 環状ジペプチド及び甘味料を含有する組成物 |
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