JP2010136132A - 音声入力装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型化が可能で高性能の音声入力装置を提供する。
【解決手段】音声入力装置2は、第1の筐体51と、第1の筐体51の内部に配置されるマイクロホンユニット1と、を備える。マイクロホンユニット1は、第1音孔111と第2音孔112とが設けられる第2の筐体11と、第2の筐体11の内部に配置される振動板122と、振動板122の振動に基づいて発生する電気信号を処理する電気回路部13と、を備える。音声入力装置2には、第1の筐体51の外部の音を、第1の開口部511から振動板122の第1の面122aへと導く第1導音空間513と、第2の開口部512から振動板122の第2の面122bへと導く第2導音空間514と、が設けられる。電気回路部13は、第1導音空間513に配置され、音声入力装置2には、第1導音空間513の周波数特性を調整するための音響抵抗部52が設けられている。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えば携帯電話や録音機器等に適用される音声入力装置に関し、詳細には、振動板の両面(前後面)に音圧が加わるように形成され、音圧差に基づく振動板の振動によって音声信号を取得するマイクロホンユニットを備える音声入力装置の構成に関する。
従来、例えば、携帯電話やトランシーバ等の音声通信機器、又は音声認証システム等の入力された音声を解析する技術を利用した情報処理システム、或いは録音機器、などに音声入力装置が適用されている。電話などによる通話、音声認識、音声録音に際しては、目的の音声(ユーザの音声)のみを収音するのが好ましい。このため、目的の音声を正確に抽出し、目的の音声以外の雑音(背景雑音等)を除去する音声入力装置の開発が進められている。
雑音が存在する使用環境で雑音を除去して目的の音声のみを収音する技術として、音声入力装置が備えるマイクロホンユニットに指向性を持たせることが挙げられる。指向性を有するマイクロホンユニットの一例として、振動板(ダイアフラム)の両面に音圧が加わるように形成し、音圧差に基づく振動板の振動によって音声信号を取得するマイクロホンユニットが従来知られている(例えば特許文献1や2参照)。
ところで、近年においては電子機器の小型化が進んでおり、音声入力装置も小型化することが重要になっている。
特開平4−217199号公報 特開2005−295278号公報
従来、音声入力装置が備えるマイクロホンユニットには、振動板の振動に基づいて発生する電気信号を処理(例えば増幅処理等)する電気回路部が備えられる。そして、従来、この電気回路部は、音孔から振動板へと至る導音空間の外部に配置している(例えば、特許文献2の図2参照)。
上述のように近年においては音声入力装置の小型化が重要である。このため、上述の振動板の両面に音圧が加わるように形成したマイクロホンユニットを備える音声入力装置において、電気回路部を音孔からダイアフラムへと至る導音空間内に配置することを検討したところ、特に高周波数帯域において良好な指向特性が得られないことがわかった。すなわち、単に小型化を狙って電気回路部を導音空間内に配置する構成としても音声入力装置の性能が低下することがわかった。
そこで、本発明の目的は、小型化が可能で高性能の音声入力装置を提供することである。
上記目的を達成するために本発明は、第1の筐体と、前記第1の筐体の内部に配置されるマイクロホンユニットと、を備える音声入力装置であって、前記マイクロホンユニットは、第1音孔と第2音孔とが設けられる第2の筐体と、前記第2の筐体の内部に配置される振動板と、前記振動板の振動に基づいて発生する電気信号を処理する電気回路部と、を備え、前記第1の筐体には、前記第1音孔と連通する第1の開口部と、前記第2音孔と連通する第2の開口部と、が設けられて、前記第1の筐体の外部の音を、前記第1の開口部から前記振動板の第1の面へと導く第1導音空間と、前記第2の開口部から前記振動板の前記第1の面の裏面である第2の面へと導く第2導音空間と、が形成されており、前記電気回路部は、前記第1導音空間と前記第2導音空間とのうちのいずれか一方に配置され、前記第1導音空間の周波数特性と前記第2導音空間の周波数特性とのうちの少なくとも一方を調整するための音響抵抗部が設けられていることを特徴としている。
本構成によれば、信号の増幅処理等を行う電気回路部が、第1導音空間と第2導音空間とのうちのいずれか一方に配置される構成となっている。このために、従来のように導音空間の外側に電気回路部を配置する場合に比べて、マイクロホンユニットの小型化が可能である。
ところで、導音空間に電気回路部を配置すると、2つの導音空間(第1導音空間と第2導音空間)の形状がアンバランスとなること等が原因となって、2つの導音空間の周波数特性に差が生じる。具体的には、例えば高周波数帯域で周波数特性に差が生じ、高周波数側で良好なノイズ抑圧性能が得られない。この点、本構成は、音響抵抗部を設けて導音空間の周波数特性を調整する構成となっているために、高周波数側で良好なノイズ抑圧性能を得ることができる。すなわち、本構成によれば、音声入力装置から出力される音声信号(電気信号)を、ノイズが少なく高品質なものとできる。
上記構成の音声入力装置において、前記音響抵抗部は、特定の周波数帯域の音に対して選択的に作用するように形成されているのが好ましい。上述した、導音空間に電気回路部を配置することによって生じる2つの導音空間の周波数特性差は、例えば低周波数帯域ではほとんど認められず、高周波数帯域において認められる。このため、本構成のように、音響抵抗部が特定の周波数帯域(例えば高周波数帯域)に対して選択的に作用する構成とすることで、2つの導音空間の周波数特性差を低減しやすい。
また、上記構成の音声入力装置において、音響抵抗部材を前記第1の筐体又は前記第2の筐体に取り付けて成ることとしても良い。
前記音響抵抗部材を用いる場合の具体的な構成として、前記音響抵抗部材は、前記第1の開口部から前記第1の面へと至る経路の少なくとも一部、或いは、前記第2の開口部から前記第2の面へと至る経路の少なくとも一部を塞ぐように配置されていることとしても良い。
また、前記音響抵抗部材を用いる場合の別の具体的な構成として、前記音響抵抗部材が、前記第1の開口部から前記第1の面へと至る経路の少なくとも一部、及び、前記第2の開口部から前記第2の面へと至る経路の少なくとも一部を塞ぐように配置されていることとしても良い。そして、この場合において、前記音響抵抗部材は、前記第1の筐体又は前記第2の筐体に別々に取り付けられる第1音響抵抗部材と第2音響抵抗部材とから成ることとしても良い。
上記構成の音声入力装置において、前記第1の開口部と前記第2の開口部とのうちの少なくとも一方は複数の貫通孔からなって、前記音響抵抗部を兼ねることとしても良い。
本発明によれば、音声入力装置の小型化が可能である。そして、小型化を達成した場合に発生する可能性がある「ノイズ抑圧性能の劣化」を抑制できる構成となっているために、高品質の音声信号が得られる。
以下、本発明を適用した音声入力装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、音声入力装置が携帯電話である場合を例に説明するが、本発明の音声入力装置は携帯電話に限られる趣旨ではない。
図1は、本実施形態の音声入力装置の概略構成を説明するための図である。図1に示すように、携帯電話としての機能を有する音声入力装置2にはユーザの音声を電気信号に変換するマイクロホンユニット1が備えられている。本実施形態の音声入力装置2においては、マイクロホンユニット1は音声入力装置2の筐体(以下、第1の筐体という)51の下部側に収容配置されている。なお、本実施形態ではマイクロホンユニット1を第1の筐体51の下部側に収容配置する構成としているが、マイクロホンユニット1の位置はこの位置に限定されず適宜変更して構わない。
図2は、図1のA−A位置における概略断面図である。図1及び図2に示すように、第1の筐体51の下部側には、第1の開口部511と第2の開口部512との2つの開口が設けられている。第1の開口部511の上部には音響抵抗部52が配置されているが、これについての詳細は後述する。なお、本実施形態では、第1の開口部511及び第2の開口部512は平面視略円形状に設けられているが、これらの形状は本実施形態の構成に限らず適宜変更可能である。
マイクロホンユニット1は、図2に示すように、第2の筐体11と、MEMS(Micro Electro Mechanical System)チップ12と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)13と、回路基板14と、を備えている。
第2の筐体11は、図1に示すように略直方体形状に形成され、その内部空間に振動膜(振動板)122を含むMEMSチップ12と、ASIC13と、回路基板14とを収容する。なお、第2の筐体11の外形は本実施形態の形状に限定される趣旨ではなく、例えば、立方体であっても良いし、また、直方体や立方体といった六面体に限らず、六面体以外の多面体構造や多面体以外の構造(例えば球状構造、半球状構造等)であっても良い。
第2の筐体11の上面には、平面視略円形状(これに限らずその形状は適宜変更可能)の第1音孔111と第2音孔112とが形成されている。第1音孔111と第2音孔112との間隔は、マイクロホンユニット1から出力される音声のS/N(Signal to Noise)比を良くする等の目的で4〜6mm程度とするのが好ましい。マイクロホンユニット1は、第1音孔111が第1の筐体51に設けられる第1の開口部511の位置と重なるように、また、第2音孔112が第1の筐体51に設けられる第2の開口部512の位置と重なるように配置されている。すなわち、第1音孔111と第1の開口部511、及び、第2音孔112と第2の開口部512は、各々連通した状態となっている。
なお、本実施形態の音声入力装置2においては、マイクロホンユニット1は弾性体53を介して第1の筐体51に配置されている。そして、弾性体53には、第1音孔111と第1の開口部511、及び、第2音孔112と第2の開口部512が各々連通するように開口が形成されている。弾性体53は必ずしも設ける必要はない。しかし、弾性体53を介してマイクロホンユニット1を第1の筐体51に配置することにより、第1の筐体51の振動がマイクロホンユニット1に伝わり難くなって、マイクロホンユニット1の動作精度を高める。このため、本実施形態のように弾性体53を設けるのが好ましい。
マイクロホンユニット1を構成する第2の筐体11の内部空間は、その詳細は後述するMEMSチップ12が有する振動膜(振動板)122によって2つの空間に分割されている。これにより、音声入力装置2には、第1の筐体51の外部の音を、第1の開口部511から振動膜122の上面(第1の面)122aへと導く第1導音空間513と、第2の開口部512から振動膜122の下面(第2の面)122bへと導く第2導音空間514と、が形成された状態となっている。
なお、本実施形態においては、第1の開口部511の上部には音響抵抗部52が設けられているが、第1の筐体51の外部空間で発生した音波は、音響抵抗部52を通過して第1導音空間513へと入るようになっている。
また、本実施形態では、マイクロホンユニット1の第1音孔111と第2音孔112とを第2の筐体11の同一面に形成しているが、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、これらを互いに異なる面に形成しても良く、例えば、隣り合う面や対向する面に形成する構成としても良い。ただし、本実施形態のように2つの音孔111、112を第2の筐体11の同一面に形成した方が、音声入力装置2における音道が複雑とならないので好ましい。
図3は、本実施形態のマイクロホンユニット1が備えるMEMSチップ12の構成を示す概略断面図である。図3に示すように、MEMSチップ12は、絶縁性のベース基板121と、振動膜122と、絶縁膜123と、固定電極124と、を有し、コンデンサ型のマイクロホンを形成している。なお、このMEMSチップ12は半導体製造技術を用いて製造される。
ベース基板121には例えば平面視略円形状の開口121aが形成され、これにより振動膜122の下部側から来る音波は振動膜122に到達するようになっている。ベース基板121の上に形成される振動膜122は、音波を受けて振動(上下方向に振動)する薄膜で、導電性を有し、電極の一端を形成している。
固定電極124は、絶縁膜123を挟んで振動膜122と対向するように配置されている。これにより、振動膜122と固定電極124とは容量を形成する。なお、固定電極124には音波が通過できるように複数の音孔124aが形成されており、振動膜122の上部側から来る音波が振動膜122に到達するようになっている。
このようなMEMSチップ12においては、MEMSチップ12に音波が入射すると、振動膜122の上面122aに音圧pf、下面122bに音圧pbが各々加わる。その結果、音圧pfと音圧pbとの差に応じて振動膜122が振動して振動膜122と固定電極124との間隔Gpが変化し、振動膜122と固定電極124との間の静電容量が変化する。すなわち、コンデンサ型のマイクロホンとして機能するMEMSチップ12によって、入射した音波を電気信号として取り出せるようになっている。
なお、本実施形態では振動膜122の方が固定電極124よりも下となっているが、これとは逆の関係(振動膜が上で、固定電極が下となる関係)となるように構成しても構わない。
図4は、本実施形態のマイクロホンユニット1が備えるASIC13の回路構成を説明するための図である。ASIC13は、本発明の電気回路部の実施形態で、MEMSチップ12における静電容量の変化に基づいて発生する電気信号を信号増幅回路133で増幅処理する集積回路である。本実施形態においては、MEMSチップ12における静電容量の変化を精密に取得できるように、チャージポンプ回路131とオペアンプ132とを含む構成としている。また、信号増幅回路133の増幅率(ゲイン)を調整できるようにゲイン調整回路134を含む構成としている。
図2に戻って、マイクロホンユニット1の回路基板14はMEMSチップ12及びASIC13を実装する基板である。本実施形態においては、MEMSチップ12及びASIC13は、いずれもフリップチップ実装され、回路基板14に形成される配線パターンによって両者は電気的に接続されている。なお、本実施形態においては、MEMSチップ12及びASIC13をフリップチップ実装する構成としているがこの構成に限られる趣旨ではなく、例えばワイヤボンディングを用いて実装する構成等としても構わない。
以上のように構成されるマイクロホンユニット1は、音声入力装置2の第1の筐体51内に配置される実装基板54に、例えばフリップチップ実装等によって実装されている。実装基板54には、ASIC13で増幅処理された電気信号について各種の演算処理を行う演算処理回路(図示せず)が設けられている。
次に、第1の開口部511の上部に設けられる音響抵抗部52について詳細に説明する。音響抵抗部52は、平面視略円形状に形成されるシート状の音響抵抗部材を、第1の筐体51に設けられる第1の開口部511を塞ぐように配置して成る。音響抵抗部材としては、例えばポリエステルやナイロン等の樹脂やステンレス等によって形成されるメッシュ部材が用いられる。メッシュ部材のオープニングは例えば20〜100μm程度とされ、その厚みは例えば0.1mm程度とされる。ただし、これらはあくまでも一例であり、音響抵抗部材として使用されるメッシュ部材のオープニング、メッシュ数、厚み等は、目的に応じて適宜選択されるものであり、上記に限定されるものではない。ここで、メッシュ数とは、1インチ(25.4mm)間にある網の目の数を指している。また、オープニングとは、メッシュを構成する線の径を線径と定義した場合に、以下の式で求められる値を指している。
オープニング(μm)=(25400÷メッシュ数)− 線径
なお、本実施形態では、音響抵抗部52を構成する音響抵抗部材を平面視略円形状に形成しているがこれに限定されず、その形状は適宜変更して良く、例えば平面視略矩形状等としても良い。
音響抵抗部52は、第1導音空間513の周波数特性を調整するために設けられている。これは、第1導音空間513の周波数特性と第2導音空間514の周波数特性との差を低減するためである。以下、このような音響抵抗部52を設ける理由について詳細に説明する。
まず、図5を参照して、本実施形態の音声入力装置2が備えるマイクロホンユニット1に要求される指向特性について説明する。ここで、図5(a)に示すように、第1音孔111と第2音孔112とを結ぶ方向を0°及び180°の方向と設定する。また、第1音孔111と第2音孔112との中間点をMと設定する。
この場合において、図5(b)に示すように、マイクロホンユニット1は、音源と中間点Mとの距離が一定であるとすると、音源が0°又は180°の方向にある時に振動膜122に加わる音圧(pf−pb)が最大となることが要求される。一方、音源が90°又は270°の方向にある時に振動膜122に加わる音圧(pf−pb)が最小(0)となることが要求される。すなわち、本実施形態のマイクロホンユニット1は、0°及び180°の方向から入射される音波を受け易く、90°及び270°の方向から入射される音波を受け難い性質(両指向特性)を有することが望まれる。そして、図5(b)に示すような指向特性の対称性は背景雑音抑圧性能と関係しており、マイクロホンユニット1においては、使用周波数範囲の全域で対称性の良い指向特性を有するのが望まれる。
図6は、本実施形態の音声入力装置2が備えるマイクロホンユニットの問題点を説明するためのグラフである。図6において、横軸(対数軸)は周波数、縦軸はマイクロホンの出力である。また、図6において、実線で示すグラフ(a)は、マイクロホンユニット1の第2音孔112から音波が入射しないようにした場合における周波数特性を示している。また、図6において、破線で示すグラフ(b)は、マイクロホンユニット1の第1音孔111から音波が入射しないようにした場合における周波数特性を示している。
なお、図6のデータを得るにあたって、音源は90°及び270°(図5(a)参照)からずれた方向の一定位置としている。また、各周波数のデータを得るに際して音波の振幅(音圧)は同一としている。
マイクロホンユニット1は、その使用周波数範囲(例えば100Hz〜10kHz)の全ての周波数において、図5(b)に示した両指向特性を発揮することが求められる。このため、音源を90°及び270°からずれた方向としてマイクロホンユニット1に音波を入射した場合、その使用数周波数範囲において、図6のグラフ(a)とグラフ(b)とは、周波数が変化しても一定の出力差を維持することが求められる。なお、一定の出力差は、音源から第1音孔111までの距離と音源から第2音孔112までの距離との差に応じて決まる値である。この点、図6に示す実験結果では、100Hz〜6kHz程度の周波数までは、グラフ(a)とグラフ(b)とが一定の出力差を維持している。しかし、ほぼ6kHzを超えた高周波数帯域では上述の一定の出力差ではなくなり、グラフ(a)とグラフ(b)との間で出力値の大小の逆転も見られる。
高周波数帯域で上述のような傾向となるのは、装置の小型化を狙って音道(導音空間)にASIC13を配置していることが原因として挙げられる。すなわち、ASIC13の導音空間への配置により、振動膜122の上面122aに設けられる導音空間の容積と、振動膜122の下面122bに設けられる導音空間の容積との間のアンバランスが大きくなり、2つの空間の間で周波数特性に差が生じたものと考えられる。そして、この周波数特性の差が原因となって図6のような結果となったと考えられる。
そこで、本実施形態の音声入力装置2では、マイクロホンユニット1の筐体(第2の筐体)11の内部にASIC13を配置することによって生じる不具合を解消すべく、音響抵抗部52を設けている。すなわち、音響抵抗部52によって、ASIC13が配置されている第1導音空間513の周波数特性を調整して、第1導音空間513と第2導音空間514との周波数特性の差を低減することとしている。
上述した図6に示す結果からわかるように、本実施形態の音声入力装置2では、音響抵抗部52を設けない場合、低周波数側(ほぼ6kHzより低周波数側)では所望の両指向特性(図5(b)に示すような特性)が得られるが、高周波数側(ほぼ6kHzより高い周波数側)では所望の両指向特性が得られない。このために、音声入力装置2に設ける音響抵抗部52の特性として、例えば図7の破線で示すマイクホン出力となるような作用を発揮するものを設けることが考えられる。すなわち、低周波数側の音に対してはほとんど作用せず、高周波数(例えば6kHz〜20kHzの間の周波数)側の音に対して選択的に作用する(高周波数側において出力を低下させる)ような音響抵抗部52を設けることが考えられる。
なお、図7は、本実施形態の音声入力装置2が備える音響抵抗部52の特性を説明するための図である。図7において横軸は対数軸である。
図8は、導音空間を塞ぐように音響抵抗部材を配置した場合の効果を説明するための図である。図8において、横軸(対数軸)は周波数、縦軸はマイクロホンの出力である。また、図8において、グラフ(a)は音響抵抗部材を配置しない場合の結果、グラフ(b)は音響抵抗部材aを配置した場合の結果、グラフ(c)は音響抵抗部材aと異なる特性を有する音響抵抗部材bを配置した場合の結果である。なお、図8は、本実施形態のマイクロホンユニット1とは異なる構成のマイクロホンユニットを用いた場合の結果であるが、ここで得られた傾向は、本実施形態のマイクロホンユニット1にも当てはまる。
図8に示すように、音響抵抗部材a、bを配置することによって、低周波数帯域側においてはマイクロホン出力をほぼ変化させず、高周波数帯域側においてマイクロホン出力を選択的に減衰させることができることがわかる。また、音響抵抗部材の特性を変更することで、各周波数におけるマイクロホン出力の減衰量を変更できることもわかる。したがって、本実施形態の音声入力装置2のように第1導音空間513を塞ぐように音響抵抗部52を設けることによって、第1導音空間513と第2導音空間514との周波数特性の差を低減することが可能であることがわかる。
なお、シート状のメッシュ部材で形成された音響抵抗部材の特性を決める主要因は、メッシュ数(メッシュ部材に形成される穴の密度に相当)と、メッシュのオープニング(メッシュ部材の穴の大きさに相当)と、厚みである。このため、これらの要因の調整により所望の特性を有する音響特性部材を得ることが可能である。
ここで、以上のような構成の本実施形態の音声入力装置2を用いた場合の効果について説明しておく。
本実施形態の音声入力装置では、ユーザの音声は第1の開口部511及び第2の開口部512の近傍から発生する。このようにマイクロホンユニット1の振動膜122の近傍で発生するユーザの音声は、振動膜122に至るまでの距離の違いによって音圧に大きな違いを生じる。このため、ユーザの音声によって振動膜122の上面122aと下面122bの間には音圧差が生じ、振動膜122は振動する。
一方、背景雑音等の雑音は、ユーザの音声に比べて第1の開口部511及び第2の開口部512から遠い位置で音波が発生する。このように振動膜122から遠い位置で発生する雑音は、振動膜122に至るまでの距離に違いがあってもほとんど音圧に差を生じない。このため、雑音による音圧差は振動膜122において打ち消されてしまう。
したがって、本実施形態の音声入力装置2においては、振動膜122は近接するユーザの音声のみによって振動しているとみなすことができる。そのため、マイクロホンユニット1から出力される電気信号は、雑音が除去された、ユーザ音声のみを示す信号とみなすことができる。すなわち、本実施形態の音声入力装置2によれば、雑音を除去したユーザ音声を得ることができる。
また、本実施形態の音声入力装置2においては、振動膜122の振動に基づいて発生する電気信号を処理するASIC13を第1導音空間513に配置しているために、小型化が可能である。
第1導音空間513にASIC13を配置すると、第1導音空間513と第2導音空間514との容積のアンバランスによって、特に高周波数帯域で所望の両指向特性が得られずに、良好なノイズ抑圧性能が得られない。しかし、本実施形態の音声入力装置2においては、音響抵抗部52を設けることによって第1導音空間513と第2導音空間514との間の周波数特性の差を低減できるため、高周波数側で良好なノイズ抑圧性能を得ることが可能となっている。すなわち、本実施形態の音声入力装置2は、小型で高性能の音声入力装置であると言える。
以上に示した実施形態は一例であり、本発明の音声入力装置は以上に示した実施形態の構成に限定されるものではない。本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更を行っても構わない。
例えば、以上に示した実施形態では、第1の開口部511の上部に音響抵抗部材を配置して音響抵抗部52を形成した。しかし、音響抵抗部材(音響抵抗部)は第1の開口部511から第1導音空間513を経て振動膜122へと至る音波が通過する位置に設けられれば良い。すなわち、音響抵抗部材は第1の開口部511から振動膜122の上面122aへと至る経路の少なくとも一部を塞ぐように配置すれば良い。なお、本実施形態の場合、音響抵抗部材は第1の開口部511から振動膜122の上面122aへと至る経路の全部を塞いでいることになる。
また、以上に示した実施形態では、音響抵抗部52について、音響抵抗部材を音声入力装置11の筐体(第1の筐体)51に取り付けて成る構成とした。しかし、音響抵抗部52の構成はこれに限定されず、例えば第1の筐体52を加工して成る構成としても構わない。具体的には、例えば図9に示すように、第1の開口部511を複数の細かい貫通孔の集合体として、第1の開口部511が音響抵抗部52を兼ねる構成とした音声入力装置21としても良い。
また、以上に示した実施形態では、第1の開口部511側にのみ音響抵抗部51を設ける構成とした。しかし、この構成に限定されず、第1の開口部511側に加えて第2の開口部512側にも音響抵抗部を設ける構成としても良い。この構成の場合、音響抵抗部を設けて、第1導音空間513と第2導音空間514との両方の周波数特性を調整して、両者の周波数特性を合わせることになる。
第1の開口部511側に加えて第2の開口部512側にも音響抵抗部を設ける構成の具体例として、例えば、図10に示すように、特性の異なる2つの音響抵抗部材を準備して2つの音響抵抗部52、55を設ける構成(音声入力装置31)とすることができる。特性の異なる2つの音響抵抗部材は、例えば別々の材質からなるものであっても良いし、例えば同一の材質で、厚み等のパラメータを変更したものでも良い。
別の具体例として、図11に示すように、例えば1つの音響抵抗部材(一体物)のみで第1の開口部511と第2の開口部512とを塞ぐ構成(音声入力装置41)としても構わない。この構成の場合、例えば図11に示すように、段差部56aを設けて第1の開口部511側と第2の開口部512側とで音響抵抗部材の厚みが異なるように音響抵抗部56を構成しても良い。これにより、第1導音空間513と第2導音空間514との両方の周波数特性を調整して、両者の周波数特性の差を低減することができる。
また、以上に示した実施形態では、音響抵抗部52を第1の開口部511側のみに設けたが、第2の開口部512側にのみ音響抵抗部52を設ける構成としても良い。例えば音声入力装置2の音道形状の変更によって、本実施形態の場合と異なり、第2導音空間514側の周波数特性を調整すれば、第1導音空間513の周波数特性と第2導音空間114の周波数特性との差を低減することができる場合もあり得る。
また、以上に示した実施形態では、振動膜122(振動板)が第2の筐体11の音孔111、112が形成される面と平行に配置される構成とした。しかし、この構成に限定されず、振動板が筐体の音孔が形成される面に対して平行でない構成としても構わない。
また、以上に示した音声入力装置2においては、いわゆるコンデンサ型マイクロホンを備える構成とした。しかし、本発明は、コンデンサ型マイクロホン以外のマイクロホンを備える音声入力装置にも勿論適用できる。コンデンサ型マイクロホン以外の構成として、例えば、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型等のマイクロホン等が挙げられる。
その他、本発明は、携帯電話以外の音声入力装置に適用でき、例えば、トランシーバ等の音声通信機器や、入力された音声を解析する技術を採用した音声処理システム(音声認証システム、音声認識システム、コマンド生成システム、電子辞書、翻訳機、音声入力方式のリモートコントローラ等)、或いは録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに広く適用できる。
本発明は、接話型の音声入力装置に対して好適である。
は、本実施形態の音声入力装置の概略構成を説明するための図である。 は、図1のA−A位置における概略断面図である。 は、本実施形態のマイクロホンユニットが備えるMEMSチップの構成を示す概略断面図である。 は、本実施形態のマイクロホンユニットが備えるASICの回路構成を説明するための図である。 は、本実施形態の音声入力装置が備えるマイクロホンユニットに要求される指向特性を説明するための図である。 は、本実施形態の音声入力装置が備えるマイクロホンユニットの問題点を説明するためのグラフである。 は、本実施形態の音声入力装置が備える音響抵抗部の特性を説明するための図である。 は、導音空間を塞ぐように音響抵抗部材を配置した場合の効果を説明するための図である。 は、本実施形態の音声入力装置の変形例を説明するための図である。 は、本実施形態の音声入力装置の変形例を説明するための図である。 は、本実施形態の音声入力装置の変形例を説明するための図である。
符号の説明
1 マイクロホンンユニット
2、21、31、41 音声入力装置
11 第2の筐体
12 MEMSチップ
13 ASIC(電気回路部)
51 第1の筐体
52 音響抵抗部
111 第1音孔
112 第2音孔
122 振動膜(振動板)
122a 振動膜の上面(振動板の第1の面)
122b 振動膜の下面(振動板の第2の面)
511 第1の開口部
512 第2の開口部
513 第1導音空間
514 第2導音空間

Claims (7)

  1. 第1の筐体と、前記第1の筐体の内部に配置されるマイクロホンユニットと、を備える音声入力装置であって、
    前記マイクロホンユニットは、第1音孔と第2音孔とが設けられる第2の筐体と、前記第2の筐体の内部に配置される振動板と、前記振動板の振動に基づいて発生する電気信号を処理する電気回路部と、を備え、
    前記第1の筐体には、前記第1音孔と連通する第1の開口部と、前記第2音孔と連通する第2の開口部と、が設けられて、前記第1の筐体の外部の音を、前記第1の開口部から前記振動板の第1の面へと導く第1導音空間と、前記第2の開口部から前記振動板の前記第1の面の裏面である第2の面へと導く第2導音空間と、が形成されており、
    前記電気回路部は、前記第1導音空間と前記第2導音空間とのうちのいずれか一方に配置され、
    前記第1導音空間の周波数特性と前記第2導音空間の周波数特性とのうちの少なくとも一方を調整するための音響抵抗部が設けられていることを特徴とする音声入力装置。
  2. 前記音響抵抗部は、特定の周波数帯域の音に対して選択的に作用するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の音声入力装置。
  3. 前記音響抵抗部は、音響抵抗部材を前記第1の筐体又は前記第2の筐体に取り付けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の音声入力装置。
  4. 前記音響抵抗部材は、前記第1の開口部から前記第1の面へと至る経路の少なくとも一部、或いは、前記第2の開口部から前記第2の面へと至る経路の少なくとも一部を塞ぐように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の音声入力装置。
  5. 前記音響抵抗部材が、前記第1の開口部から前記第1の面へと至る経路の少なくとも一部、及び、前記第2の開口部から前記第2の面へと至る経路の少なくとも一部を塞ぐように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の音声入力装置。
  6. 前記音響抵抗部材は、前記第1の筐体又は前記第2の筐体に別々に取り付けられる第1音響抵抗部材と第2音響抵抗部材とから成ることを特徴とする請求項5に記載の音声入力装置。
  7. 前記第1の開口部と前記第2の開口部とのうちの少なくとも一方は複数の貫通孔からなって、前記音響抵抗部を兼ねることを特徴とする請求項1又は2に記載の音声入力装置。
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