しかしながら、従来技術では、フィルタの入力信号レベルと出力信号レベルが大きく異なるという問題があった。図5において、入力信号と出力信号のレベル差はMOSトランジスタ101乃至104に流れる電流と電圧の関係から求めることができる。この電流と電圧の関係式については、MOSトランジスタ101乃至104と電流源105,106は左右対称で動作するので、以下では左半分のMOSトランジスタ101,103と電流源105に関して注目して説明する。また、回路が対象であるので端子113と端子114の電圧V113とV114は等しいとする。MOSトランジスタ101に関して、入力端子109に与えられる入力電圧V109と端子113の電圧V113との関係は、以下の(2)式のように示すことができる。
I11=(W101/2L101)μpCoxp(V109−V113−Vthp)2 ・・・(2)
ここで、I11はMOSトランジスタ101のソース・ドレイン間に流れる電流、W101、L101、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ1のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V109とV113の関係式は、(2)式を変形して以下の(3)式で表すことができる。
V113=V109−Vthp+√{I11/(W101/2L101)μpCoxp} ・・・(3)
ここで、Vthpは通常負の値なので、V113はV109に対してMOSトランジスタ101の閾値電圧VthpにMOSトランジスタ101のオーバーゲート電圧√{I11/(W101/2L101)μpCoxp}を加えた値だけ正の方向になる。同様に端子114(=113)の電圧V114(=V113)と出力端子111の電圧V111の関係は、以下の(4)式のように示すことができる。
I11=(W103/2L103)μpCoxp(V113−V111−Vthp)2 ・・・(4)
ここで、I11はMOSトランジスタ103のソース・ドレイン間に流れる電流、W103、L103、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ103のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V113とV111の関係式は、(4)式を変形して以下の(5)式で表すことができる。
V111=V113−Vthp+√{I11/(W103/2L103)μpCoxp} ・・・(5)
入力電圧V109と出力電圧V111の関係は、上述した(3)式及び(5)式を用いて、以下の(6)式のように示すことができる。
V111=V109−2Vthp
+√{I11/(W101/2L101)μpCoxp}
+√{I11/(W103/2L103)μpCoxp} ・・・(6)
すなわち、図5に示したフィルタの入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、閾値電圧の2倍とMOSトランジスタ101及び103のオーバードライブ電圧をそれぞれ加算したものになる。閾値電圧Vthpは、通常、−0.5乃至−0.9Vであり、また、オーバードライブ電圧は、0.2乃至0.5Vなので、図5に示したフィルタの入力信号に対する出力信号のDC信号レベルシフト電圧は、正の電源側に1.4乃至2.8Vと見込まれる。
図6は、従来の多段にしたSF型フィルタ回路の例を示す構成図である。2次を超える高次のフィルタ特性が必要な場合は、図6に示すように構成することで実現できる。図6において、ブロック121乃至124は、それぞれ図5に示すような2次フィルタ特性を有したフィルタ回路に相当する。125,126は入力端子対で、入力信号がここから供給される。フィルタ回路121の出力は、端子対127,128に出力されて、次の段のフィルタ回路122に供給される。図6に示した場合のフィルタ回路は、4つの2次フィルタ特性を有するフィルタ回路から構成されるので、8次のフィルタ回路となる。
すなわち、上述した(1)式のような伝達関数を用いて表現すると、分母はsの8次の関数で表されることになる。このような場合、入力信号に対する出力信号のDC信号レベルシフト電圧は、正の電源側に5.6乃至11.2Vと見込まれる。このような高い電圧は、通常のICに供給される正の電源電圧を遥かに超えるために正常な信号を得ることができない。これを解消するために各フィルタブロック121,122,123,124の間にHPF(ハイパスフィルタ回路)を挿入して電圧シフトした信号レベルを元のレベルに戻すことか可能であるが、DC信号が通らない、面積が大きくなるという欠点があった。HPFを使わない問題解消方法として、以下に説明する図7のような2次形のフィルタ回路を用いることができる。
図7は、従来の他のソースフォロワ回路をベースにした低域通過特性を有する時間連続フィルタの回路図である。図示したフィルタ回路は、NMOSトランジスタ201乃至204と、電流源205,206と、コンデンサ207,208と、差動入力端子209,210と、差動出力端子211,212と、端子213乃至216とを備えている。端子213乃至216のうち、端子215はアースに接続される負電源端子であり、端子216は正の電源を供給するための正電源端子である。
一般的に、フィルタ回路の特性は、入力端子から出力端子までの伝達関数を求めることによって得ることができる。図7に示した低域通過フィルタ回路の入力端子である端子209,210から出力端子である端子211,212までの伝達関数H10(s)は、非特許文献1に記載されているように、以下の式(7)によって求めることができる。
H10(s)=−gmn2/(C3・C4・s2+gmn・C3・s+gmn2)
・・・(7)
式(7)において、C3はコンデンサ207の2倍の容量値、C4はコンデンサ208の2倍の容量値である(言い換えると、コンデンサ207,208の容量はそれぞれC1/2、C2/2である。)。sはt関数をラプラス変換して得られるs関数である。gmnは、MOSトランジスタ201〜204のトランスコンダクタンス値であって、MOSトランジスタを流れる電流とMOSトランジスタのサイズによって決まる。図7に示した例では、MOSトランジスタ201乃至204のサイズは等しいものとしている。
上述した式(7)において、分母はsの2次形になっているので、このフィルタは2次低域通過フィルタ特性を有する。後述する本発明の図1に示した低域通過フィルタは、ソースフォロワ回路をベースにしているので線形性能に優れ、高速でかつ低消費電流特性を容易に実現できる。
図7において、入力信号と出力信号のレベル差は、MOSトランジスタ201乃至204に流れる電流と電圧の関係から求めることができる。この電流と電圧の関係式については、MOSトランジスタ201乃至204と電流源205,206は左右対称で動作するので、以下では左半分のMOSトランジスタ201,203と電流源205に関して注目して説明する。また、回路が対象であるので端子213と端子214の電圧V213とV214は等しいとする。MOSトランジスタ201に関して、入力端子209に与えられる入力電圧V209と端子213の電圧V213との関係は、以下の(8)式のように示すことができる。
I12=(W201/2L201)μnCoxn(V209−V213−Vthn)2 ・・・(8)
ここで、I12はMOSトランジスタ201のソース・ドレイン間に流れる電流、W201、L201、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ201のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V209とV213の関係式は、(8)式を変形して以下の(9)式で表すことができる。
V213=V209−Vthn−√{I12/(W201/2L201)μnCoxn} ・・・(9)
ここで、Vthnは通常正の値なので、V213はV209に対してMOSトランジスタ201の閾値電圧VthnにMOSトランジスタ201のオーバーゲート電圧√{I12/(W201/2L201)μnCoxn}を加えた値だけ負の方向になる。同様に端子214(=213)の電圧V214(=V213)と出力端子211の電圧V211の関係は、以下の(10)式のように示すことができる。
I12=(W203/2L203)μnCoxn(V213−V211−Vthn)2 ・・・(10)
ここで、I12はMOSトランジスタ203のソース・ドレイン間に流れる電流、W203、L203、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ203のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V213とV211の関係式は、(10)式を変形して以下の(11)式で表すことができる。
V211=V213−Vthn−√{I12/(W203/2L203)μnCoxn} ・・・(11)
入力電圧V209と出力電圧V211の関係は、上述した(9)式及び(11)式を用いて、以下の(12)式のように示すことができる。
V211=V209−2Vthn
−√{I12/(W201/2L201)μnCoxn}
−√{I12/(W203/2L203)μnCoxn} ・・・(12)
すなわち、図7に示したフィルタ回路の入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、閾値電圧の2倍とMOSトランジスタ201及び203のオーバードライブ電圧をそれぞれ加算したものになる。閾値Vthnは通常0.5乃至0.9Vであり、また、オーバードライブ電圧は0.2乃至0.5Vなので、図7に示したフィルタ回路の入力信号に対する出力信号のDC信号レベルシフト電圧は、負の電源側に1.4乃至2.8Vと見込まれる。
図6に示したフィルタ回路において、フィルタ回路121,123のフィルタ回路にはPMOSトランジスタで構成された図5のフィルタ回路を、フィルタ回路122,124のフィルタ回路にはNMOSトランジスタで構成された図7のフィルタ回路を用いた場合、図5に示した2次フィルタ回路と図7に示した2次フィルタ回路の入力信号、出力信号間の電圧変化量は符号が反対であるので、上述した(6)式及び(12)式より、フィルタ回路122の出力では、以下の(13)式のようにレベルシフト電圧V122はお互いにキャンセルすることができる。
V211=V109−2Vthn−2Vthp
+√{I11/(W101/2L101)μpCoxp}
+√{I11/(W103/2L103)μpCoxp}
−√{I12/(W201/2L201)μnCoxn}
−√{I12/(W203/2L203)μnCoxn} ・・・(13)
しかしながら、上述した(6)式及び(12)式に用いられているPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの閾値電圧Vtp、Vtnの大きさ(絶対値)は、同じにすることは困難で、通常の場合、最大0.3V程度の差が見込まれる。言い換えると2段接続した後のレベルシフト電圧は最大で0.3V、4段接続した後のレベルシフト電圧は最大で0.6V見込まれることになる。
このようにして図6においてPMOSトランジスタで構成された図5のフィルタ回路をフィルタ回路121,123と奇数番目のブロックに配置し、NMOSトランジスタで構成された図7のフィルタ回路をフィルタ回路122,124と偶数番目にと交互に配置した場合でも、段数を重ねるごとに電圧変化量は次第に増加していくことになる。特に、図6のフィルタブロック123の出力は、上述した(6)式で示される電圧変化に加えて、(6)式と(12)式の差に相当する電圧変化分を加算したものになるため、高次フィルタ回路の奇数番目のフィルタ出力電圧は入力電圧に対して大きくずれることになる。このため電源電圧が低い場合には、信号が正の電源又は負の電源を越えてフィルタ回路が正常に動作しないという問題があった。
また、図5に示したフィルタ回路の特性は、PMOSトランジスタ101乃至104の性能に依存する一方、図7に示したフィルタ回路の特性は、NMOSトランジスタ201乃至204の性能に依存するので、所謂gm−Cフィルタ回路の特性を自動調整するための回路は、2組必要になり、結果として回路規模が増大するという問題もある。
図8は、従来の回路を活用したSF型フィルタ回路の構成図で、入力電圧と出力電圧が異なるという問題を解決するための別の回路である。図8もまた、ソースフォロワ回路をベースにした低域通過特性を有する時間連続フィルタの回路を例示するための別の図である。図示したフィルタ回路は、MOSトランジスタ141乃至148と、電流源149,150と、コンデンサ153,154と、差動入力端子155,156と、差動出力端子157,158と、端子159乃至166とを備えている。端子159乃至166のうち、端子165はアースに接続される負電源端子であり、端子166は正の電源を供給するための正電源端子である。
図8に示した回路において、PMOSトランジスタ141乃至144と、電流源149,150と、コンデンサ153,154で構成される回路167は、図5で示したフィルタ回路と完全に同じであり、従って、入力端子155,156から端子161,162までのフィルタ特性も図5のものと同じである。
以下では、図5の回路に対して新しく追加されているNMOSトランジスタ145乃至148、電流源151,152で構成される回路について説明する。新しく追加した回路のうち、NMOSトランジスタ146,148と電流源152は、NMOSトランジスタ145,147と電流源151の対となる回路で同じ動作をするので、簡便のために以下では、NMOSトランジスタ145,147、電流源151を含んだ回路のみ説明する。
NMOSトランジスタ145,147に流れる電流は電流源151に流れる電流I13に等しい。ここで、NMOSトランジスタ145のゲート端子161に印加する電圧V161とソース端子163に発生する電圧V163の関係式は、以下の(14)式のように示すことができる。
I13=(W145/2L145)μnCoxn(V161−V163−Vthn)2 ・・・(14)
ここで、I13はNMOSトランジスタ145のソース・ドレイン間に流れる電流、W145、L145、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ145のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V163とV161の関係式は、(14)式を変形して以下の(15)式で表すことができる。
V163=V161−Vthn−√{I13/(W145/2L145)μnCoxn} ・・・(15)
同様にして、NMOSトランジスタ147のゲート端子163に印加する電圧V163とソース端子157に発生する電圧V157の関係式は、以下の(16)式のように示すことができる。
I13=(W147/2L147)μnCoxn(V163−V157−Vthn)2 ・・・(16)
ここで、I13はNMOSトランジスタ147のソース・ドレイン間に流れる電流、W147、L147、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ147のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V163とV157の関係式は、(16)式を変形して以下の(17)式で表すことができる。
V157=V163−Vthn−√{I13/(W147/2L147)μnCoxn} ・・・(17)
端子161の電圧V161と端子157の電圧V157の関係は、上述した(15)式及び(17)式を用いて、以下の(18)式のように示すことができる。
V157=V161−2Vthn
−√{I13/(W145/2L145)μnCoxn}
−√{I13/(W147/2L147)μnCoxn} ・・・(18)
図8に示したフィルタ167に相当する回路の入力端子155の電圧V155と出力端子161の電圧V161の関係式は、図5に示したV109とV111の関係を表す(6)式と同じであるので、以下の(19)式のように表すことができる。
V161=V155−2Vthp
+√{I14/(W141/2L141)μpCoxp}
+√{I14/(W143/2L143)μpCoxp} ・・・(19)
ここで、Vthn、μn、Coxn、I14はPMOSトランジスタ141、143の閾値電圧、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧とソース・ドレイン間を流れる電流値、W141、L141、W143、L143はそれぞれMOSトランジスタ141、143のチャネル幅、チャネル長である。
上述した(18)式及び(19)式から図8の入力端子の電圧V155に対する出力端子157の電圧V157は、以下の(20)式で与えられる。
V157=V155−2Vthp−2Vthn
−√{I13/(W145/2L145)μnCoxn}
−√{I13/(W147/2L147)μnCoxn}
+√{I14/(W141/2L141)μpCoxp}
+√{I14/(W143/2L143)μpCoxp} ・・・(20)
この(20)式において、オーバードライブ電圧はお互いにキャンセルしてゼロにすることができるので、この場合(20)式は、以下の(21)式のように書くことができる。
V157=V155−2Vthp−2Vthn ・・・(21)
PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの閾値電圧Vtp、Vtnの大きさ(絶対値)は、同じにすることは困難で、通常の場合、最大0.3V程度の差が見込まれる。言い換えると図8に示したフィルタ回路を2段接続した後のレベルシフト電圧は、最大で0.6V(図6のフィルタ回路においてフィルタブロック122の出力に相当)、4段接続した後のレベルシフト電圧は、最大で1.2V見込まれることになる(図6のフィルタ回路においてフィルタブロック124の出力に相当)。図8の信号レベルは、前段のレベルシフト電圧が加算しているので、端子161におけるレベルシフト量はより大きくなる。
すなわち、図6に示したフィルタ回路において、フィルタブロック124中に用いられている図8のフィルタ回路中の端子161,162の電圧は、入力端子125,126の電圧に比べ差が積み重なって大きくなっている。このため、電源電圧が低い場合には、信号が正の電源又は負の電源を越えてフィルタ回路が正常に動作しないという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ソースフォロワ回路をベースにした、高速でかつ低消費電流であり、高次フィルタの場合でも低い電源電圧で動作が可能なフィルタ回路を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ソースフォロワ型フィルタ回路(27,327)とドレインフォロワ回路(28a,28b,328a,328b)とを備えたフィルタ回路であって、前記ソースフォロワ型フィルタ回路(27,327)は、第1入力信号を入力するゲート(1G,301G)を有する第1MOSトランジスタ(1,301)と、第2入力信号を入力するゲート(2G,302G)を有する第2MOSトランジスタ(2,302)とを備える第1トランジスタ対(1,2,301,302)と、前記第1MOSトランジスタのソース(1S,301S)に接続するドレイン(3D,303D)を有する第3MOSトランジスタ(3,303)と、前記第2MOSトランジスタのソース(2S,302S)に接続するドレイン(4D、304D)を有する第4MOSトランジスタ(4,304)とを備え、前記第3MOSトランジスタのゲート(3G,303G)が前記第4MOSトランジスタの前記ドレイン(4D,304D)に接続され、前記第4MOSトランジスタのゲート(4G,304G)が前記第3MOSトランジスタの前記ドレイン(3D,303D)に接続される第2トランジスタ対(3,4,303,304)と、前記第1MOSトランジスタ乃至第4MOSトランジスタのソース(1S,2S,3S,4S,301S,302S,303S,304S)の各々に接続されるコンデンサ(25,26,325,326)と、前記第3MOSトランジスタの前記ソース(3S,303S)に接続された第1電流源(9,309)と、前記第4MOSトランジスタの前記ソース(4S,304S)に接続された第2電流源(10,310)とを備える第1電流源対(9,10,309,310)とから構成され、前記第3MOSトランジスタのソース端子を第1出力端子とし、前記第4MOSトランジスタのソース端子を第2出力端子とし、前記ドレインフォロワ回路(28a,28b,328a,328b)は、前記ソースフォロワ型フィルタ回路(27,327)の第1出力端子からの出力信号を入力するソース(5S,305S)を有する第5MOSトランジスタ(5,305)と、前記ソースフォロワ型フィルタ回路(27,327)の第2出力端子からの出力信号を入力するソース(6S,306S)を有する第6MOSトランジスタ(6,306)とを備える第3トランジスタ対(5,6,305,306)と、前記第5MOSトランジスタのドレイン(5D,305D)とゲート(5G,305G)を接続した端子に接続するソース(7S,307S)を有する第7MOSトランジスタ(7,307)と、前記第6MOSトランジスタのドレイン(6D,306D)とゲート(6G,306G)を接続した端子に接続されるソース(8S,308S)を有する第8MOSトランジスタ(8,308)とを備える第4トランジスタ対(7,8,307,308)と、前記第5MOSトランジスタの前記ソース(5S,305S)に接続された第3電流源(29,329)と、前記第6MOSトランジスタの前記ソース(6S,306S)に接続された第4電流源(30,330)とを備える第2電流源対(29,30,329,330)と、第1出力信号を出力する前記第7MOSトランジスタのドレイン(7D,307D)とゲート(7G,307G)を接続した端子に接続される第5電流源(11,311)と、第2出力信号を出力する前記第8MOSトランジスタのドレイン(8D,308D)とゲート(8G,308G)を接続した端子に接続される第6電流源(12,312)とを備える第3電流源対(11,12,311,312)とを備えたことを特徴とする。(図1,図4に対応)
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1電流源(9)と前記第3電流源(29)、及び前記第2電流源(10)と前記第4電流源(30)は、それぞれ1つの電流源で共用されることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、ソースフォロワ型フィルタ回路(53)と第1及び第2ドレインフォロワ回路(41,42)とを備えたフィルタ回路であって、前記ソースフォロワ型フィルタ回路(53)は、第1入力信号を入力するゲート(31G)を有する第1MOSトランジスタ(31)と、第2入力信号を入力するゲート(32G)を有する第2MOSトランジスタ(32)とを備える第1トランジスタ対(31,32)と、前記第1MOSトランジスタ(31)のソース(31S)に接続するドレイン(33D)を有する第3MOSトランジスタ(33)と前記第2MOSトランジスタ(32)のソース(32S)に接続するドレイン(34D)を有する第4MOSトランジスタ(34)とを備え、前記第3MOSトランジスタ(33)のゲート(33G)が前記第4MOSトランジスタ(34)のドレイン(34D)に接続され、前記第4MOSトランジスタ(34)のゲート(34G)が前記第3MOSトランジスタ(33)のドレイン(33D)に接続される第2トランジスタ対(33,34)と、前記第1MOSトランジスタ乃至第4MOSトランジスタのソース(31S,32S,33S,34S)の各々に接続されるコンデンサ(39,40)と、前記第1MOSトランジスタ(31)の前記ソース(31S)に接続された第1電流源(35)と、前記第2MOSトランジスタ(32)の前記ソース(32S)に接続された第2電流源(36)とを備える第1電流源対(35,36)と、前記第3MOSトランジスタ(33)の前記ソース(33S)に接続された第3電流源(37)と、前記第4MOSトランジスタ(34)の前記ソース(34S)に接続された第4電流源(38)とを備える第2電流源対(37,38)とから構成され、前記第3MOSトランジスタ(33)のソース端子(49)を第1出力端子とし、前記第4MOSトランジスタ(34)のソース端子(50)を第2出力端子とし、前記第1及び第2ドレインフォロワ回路(41,42)は、前記ソースフォロワ型フィルタ回路(53)からの出力信号を入力端子(67)から入力するソース(61S)を有する第5MOSトランジスタ(61)と、前記ドレインフォロワ回路(41,42)の出力信号を出力端子(68)から出力するドレイン(62D)と前記第5MOSトランジスタ(61)のドレイン(61D)と接続するソース(62S)を有する第6MOSトランジスタ(62)とを備え、前記第5MOSトランジスタ(61)のゲート(61G)に前記ドレイン(61D)を接続した端子に第1電流源(63)が接続されるとともに、ソース(61S)に第3電流源(65)が接続され、前記第6MOSトランジスタ(62)のソース(62S)に第2電流源(64)が接続されるとともに、ゲート(62G)と前記ドレイン(62D)を接続した端子に第4の電流源(66)が接続され、前記第1ドレインフォロワ回路(41)は、前記第3MOSトランジスタ(33)のソース端子(49)に接続され、前記第2ドレインフォロワ回路(42)は、前記第4MOSトランジスタ(34)のソース端子(50)に接続されていることを特徴とする。(図2,図3に対応)
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記ソースフォロワ型フィルタ回路(53)の前記第3電流源(37)と前記第1ドレインフォロワ回路(41)の前記第3電流源(65)、及び前記ソースフォロワ型フィルタ回路(53)の前記第4電流源(38)と前記第2ドレインフォロワ回路(42)の前記第3電流源(65)は、それぞれ1つの電流源で共用されることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記第1及び第2ドレインフォロワ回路(41,42)の前記第1電流源(63)と前記第2電流源(64)は、それぞれ1つの電流源で共用されることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項3,4又は5に記載の発明において、前記第1,第2,第6MOSトランジスタ(31,32,62)が第1の極性を有しており、前記第3,第4,第5MOSトランジスタ(33,34,61)が前記第1の極性と逆の極性である第2の極性を有することを特徴とする。
本発明によれば、ドレインフォロワ回路を用いているので、MOSトランジスタの閾値変動と関係なく2次フィルタ回路の出力電圧と入力電圧をいつも同じレベルにすることができるので、従来に比べてより低い電源電圧においてもフィルタ回路として正常に動作することができる。
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。
<実施形態1>
図1は、本発明に係るフィルタ回路の実施形態1を説明するための回路図である。この実施形態1のフィルタ回路は、PMOSトランジスタ1乃至8と、コンデンサ25,26と、電流源9乃至12、29,30と、入力端子13,14と、出力端子15,16と、端子17乃至22と、負及び正の電源端子23,24とを備えている。
PMOSトランジスタ1のドレイン1Dは負の電源端子23に接続され、ゲート1Gは入力端子13に接続され、ソース1Sは、PMOSトランジスタ3のドレイン3Dと、PMOSトランジスタ4のゲート4Gと、コンデンサ25の一方の端子と、端子17に接続されている。PMOSトランジスタ2のドレイン2Dは負の電源端子23に接続され、ゲート2Gは入力端子14に接続され、ソース2SはPMOSトランジスタ4のドレイン4Dと、PMOSトランジスタ3のゲート3Gと、コンデンサ25の他端と、端子18に接続されている。
PMOSトランジスタ3のソース3SはPMOSトランジスタ5のソース、電流源9、電流源29、コンデンサ26の一方の端子、端子19に接続されている。PMOSトランジスタ4のソース4SはPMOSトランジスタ6のソース6Sと、電流源10、電流源30と、コンデンサ26の他端と、端子20に接続されている。PMOSトランジスタ5のゲート5Gとドレイン5Dは共通接続され、PMOSトランジスタ7のソース7Sと端子21に接続されている。PMOSトランジスタ6のゲート6Gとドレイン6Dは共通接続され、PMOSトランジスタ8のソース8Sと端子22に接続されている。
PMOSトランジスタ7のゲート7Gとドレイン7Dは共通接続され、電流源11と、出力端子15に接続されている。PMOSトランジスタ8のゲート8Gとドレイン8Dは共通接続され、電流源12と、出力端子16に接続されている。
ここで、MOSトランジスタ1乃至4と、コンデンサ25,26と、電流源9,10と、それに接続する端子を含めた回路は、ソースフォロワ型フィルタ回路27と通常称されていて、そのソースフォロワ型フィルタ回路27の入力は、入力端子13,14から供給され、出力は端子19,20に発生する。このソースフォロワ型フィルタ回路27は、図5に示した従来の回路と完全に同じである。
図1に示したソースフォロワ型フィルタ回路27において、その入力端子13の電圧V13と回路27の出力に相当する端子19の電圧V19の電圧差についてMOSトランジスタ1乃至4に流れる電流と電圧の関係から求めることができる。この電流と電圧の関係式については、MOSトランジスタ1乃至4と、電流源5,6は左右対称で動作するので、以下では左半分のMOSトランジスタ1,3と電流源5に関して注目して説明する。また、回路が対象であるので端子17と端子18の電圧V17とV18は等しいとする。MOSトランジスタ1に関して、入力端子13に与えられる入力電圧V13と端子17の電圧V17との関係は、以下の(22)式のように示すことができる。
I1=(W1/2L1)μpCoxp(V13−V17−Vthp)2
・・・(22)
ここで、I1はMOSトランジスタ1のソース・ドレイン間に流れる電流、W1、L1、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ1のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V13とV17の関係式は、(22)式を変形して以下の(23)式で表すことができる。
V17=V13−Vthp+√{I1/(W1/2L1)μpCoxp}
・・・(23)
ここで、Vthpは通常負の値なので、V17はV13に対してMOSトランジスタ1の閾値電圧VthpにMOSトランジスタ1のオーバーゲート電圧√{I1/(W1/2L1)μpCoxp}を加えた値だけ正の方向になる。同様に端子17(=18)の電圧V17(=V18)と端子19の電圧V19の関係は、以下の(24)式のように示すことができる。
I1=(W3/2L3)μpCoxp(V17−V19−Vthp)2
・・・(24)
ここで、I1はMOSトランジスタ3のソース・ドレイン間に流れる電流、W3、L3、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ3のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V17とV19の関係式は、(24)式を変形して以下の(25)式で表すことができる。
V19=V17−Vthp+√{I1/(W3/2L3)μpCoxp}
・・・(25)
入力電圧V13とフィルタ27の出力電圧V19の関係は、上述した(23)式及び(25)式を用いて、以下の(26)式のように示すことができる。
V19=V13−2Vthp+√{I1/(W1/2L1)μpCoxp}
+√{I1/(W3/2L3)μpCoxp} ・・・(26)
すなわち、図1に示したフィルタ回路27の入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、閾値電圧の2倍とMOSトランジスタ1及び3のオーバードライブ電圧をそれぞれ加算したものになる。
次に、新しく追加したトランジスタ5乃至8と電流源11,12、29,30の動作について説明する。なお、MOSトランジスタ5,6,7,8及び電流源11、12、29,30は、全差動回路構成として左右対称になっており、以下の説明においては、片側の回路すなわちMOSトランジスタ5,7と電流源11、29のみについて説明する。
なお、MOSトランジスタ5と7は電流源29と電流源11に挟まれており、通常電流源29と電流源11のそれぞれの電流値は同じ値であるI11にしている。従って、これらMOSトランジスタに流れる電流は、電流源11で設定される電流値I11である。
MOSトランジスタ5,7と電流源11、29からなる回路を以下ではドレインフォロワ回路28aと称することにする。また同様にMOSトランジスタ6,8と電流源12、30からなる回路もドレインフォロワ回路28bと称することができる。ドレインフォロワ回路と称する理由は出力電圧がドレイン端子に発生するためそのように称する。尚、フィルタ回路27の電流源9とドレインフォロワ回路28aの電流源29をひとつの電流源にまとめることができる。この場合、新しくまとめた電流源の電流値は電流源9と電流源29のそれぞれの電流値を合計したものにすればよい。また同様に、フィルタ回路27の電流源10とドレインフォロワ回路28bの電流源30をひとつの電流源にまとめることができる。この場合、新しくまとめた電流源の電流値は電流源10と電流源30のそれぞれの電流値を合計したものにすればよい。このドレインフォロワ回路28aの入力端子に相当する端子19の電圧V19と端子21の電圧V21の関係は、以下の(27)式のように示すことができる。
I11=(W5/2L5)μpCoxp(V21−V19−Vthp)2
・・・(27)
ここで、I11はMOSトランジスタ5のソース・ドレイン間に流れる電流、W5、L5、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ5のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V19とV21の関係式は、(27)式を変形して以下の(28)式で表すことができる。
V21=V19+Vthp−√{I11/(W5/2L5)μpCoxp}
・・・(28)
また、端子21の電圧V21とドレインフォロワ回路28aの出力に相当する端子である端子15の電圧V15の関係は、以下の(29)式のように示すことができる。
I11=(W7/2L7)μpCoxp(V15−V21−Vthp)2
・・・(29)
ここで、I11はMOSトランジスタ7のソース・ドレイン間に流れる電流、W7、L7、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ7のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V15とV21の関係式は、(29)式を変形して以下の(30)式で表すことができる。
V15=V21+Vthp−√{I11/(W7/2L7)μpCoxp}
・・・(30)
ドレインフォロワ回路28aの入力端子に相当する端子19の端子電圧V19と出力端子に相当する端子15の端子電圧V15の関係は、上述した(28)式及び(30)式を用いて、以下の(31)式のように示すことができる。
V15=V19+2Vthp−√{I11/(W5/2L5)μpCoxp}
−√{I11/(W7/2L7)μpCoxp} ・・・(31)
すなわち、図1に示したドレインフォロワ回路28の入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、閾値電圧の2倍とMOSトランジスタ5及び7のオーバードライブ電圧をそれぞれ減算したものになる。
従って、図1の回路全体における入力端子13の電圧V13に対する出力端子15の電圧V15の電圧は、上述した(26)式及び(31)式より、以下の(32)式で示すことができる。
V15=V13+√{I1/(W1/2L1)μpCoxp}
+√{I1/(W3/2L3)μpCoxp}
−√{I11/(W5/2L5)μpCoxp}
−√{I11/(W7/2L7)μpCoxp} ・・・(32)
この(32)式において以下の(33)式のように
V15=V13 ・・・(33)
入力電圧V15と出力電圧V13が等しくなるように電流I1、I11とMOSトランジスタサイズを選択することは容易である。一番簡単な方法は、電流I1とI11を同じにするとともに、全てのMOSトランジスタサイズを同じにすると良い。図1のフィルタ回路は、全て同じ極性であるPMOSトランジスタを用いているので、入力電圧と出力電圧を同じにすることができる。この回路では、図1に示すフィルタ回路を図6のフィルタ回路121乃至124に適用することで、多段に接続しても出力信号レベルはいつも入力信号レベルと同じであり、低い電源電圧でも動作が可能なフィルタ回路を提供することができる。
なお、追加しているドレインフォロワ回路28は、ソースフォロワで構成されているフィルタ回路27の周波数特性を損なわないように十分高速で動作するように設計することが要求される。このため高速性能が要求される場合は、(33)式を満たしつつ回路に流れる電流を大きくしたり、寄生容量を小さくなるような設計が必要になる。
<実施形態2>
図2は、本発明に係るフィルタ回路の実施形態2を説明するための回路図である。この実施形態2のフィルタ回路は、MOSトランジスタ31乃至34と、コンデンサ39,40と、電流源35乃至38と、ドレインフォロワ回路41,42と、入力端子43,44と、出力端子45,46と、端子47乃至50と,負及び正の電源端子51,52とを備えている。
NMOSトランジスタ31のドレイン31Dは正の電源端子52に接続され、ゲート31Gは入力端子43に接続され、ソース31Sは、PMOSトランジスタ33のドレイン33Dと、PMOSトランジスタ34のゲート34Gと、電流源35と、コンデンサ40の一方の端子と、端子47に接続されている。NMOSトランジスタ32のドレイン32Dは正の電源端子52に接続され、ゲート32Gは入力端子44に接続され、ソース32SはPMOSトランジスタ34のドレイン34Dと、PMOSトランジスタ33のゲート33Gと、電流源36と、コンデンサ40の他端と、端子48に接続されている。
PMOSトランジスタ33のソース33Sは、電流源37と、コンデンサ39の一方の端子に接続されているとともに、ドレインフォロワ回路41の入力端子49に接続されている。PMOSトランジスタ34のソース34Sは、電流源38と、コンデンサ39の他端とに接続されているとともに、ドレインフォロワ回路42の入力端子50に接続されている。ドレインフォロワ回路41の出力は出力端子45に接続されている。ドレインフォロワ回路42の出力は出力端子46に接続されている。
ここで、MOSトランジスタ31乃至34と、コンデンサ39,40と、電流源35乃至38と、それに接続する端子を含めた回路は、ソースフォロワ型フィルタ回路53として知られていて(例えば、非特許文献1参照)、そのソースフォロワ型フィルタ回路53の入力は、入力端子43,44から供給され、出力は端子49,50に発生する。
図2に示したソースフォロワ型フィルタ回路53において、その入力端子43の入力電圧V43と回路53の出力に相当する端子49の電圧V49の電圧差についてMOSトランジスタ31乃至34に流れる電流と電圧の関係から求めることができる。この電流と電圧の関係式については、MOSトランジスタ31乃至34と電流源35乃至38は左右対称で動作するので、以下では左半分のMOSトランジスタ31,33と電流源35,37に注目して説明する。また、回路が対象であるので端子47と端子48の電圧V47とV48は等しいとする。MOSトランジスタ31に関して、入力端子43に与えられる入力電圧V43と端子47の電圧V47との関係は、以下の(34)式のように示すことができる。
I31=(W31/2L31)μnCoxn(V43−V47−Vthn)2
・・・(34)
ここで、I31はMOSトランジスタ31のソース・ドレイン間に流れる電流、W31、L31、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ31のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V43とV47の関係式は、(34)式を変形して以下の(35)式で表すことができる。
V47=V43−Vthn−√{I31/(W31/2L31)μnCoxn}
・・・(35)
ここで、Vthnは通常正の値なので、V47はV43に対してMOSトランジスタ31の閾値電圧VthnにMOSトランジスタ31のオーバーゲート電圧√{I31/(W31/2L31)μnCoxn}を加えた値だけ負の方向になる。同様に端子47(=48)の電圧V47(=V48)と端子49の電圧V49の関係は、以下の(36)式のように示すことができる。
I33=(W33/2L33)μpCoxp(V47−V49−Vthp)2
・・・(36)
ここで、I33はMOSトランジスタ33のソース・ドレイン間に流れる電流、W33、L33、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ33のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V47とV49の関係式は、(36)式を変形して以下の(37)式で表すことができる。
V49=V47−Vthp+√{I33/(W33/2L33)μpCoxp}
・・・(37)
入力電圧V43とフィルタ回路53の出力電圧V49の関係は、上述した(35)式及び(37)式を用いて、以下の(38)式のように示すことができる。
V49=V43−Vthn−Vthp−√{I31/(W31/2L31)μnCoxn}+√{I33/(W33/2L33)μpCoxp} ・・・(38)
すなわち、図2のフィルタ53回路の入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、NMOSトランジスタ31とPMOSトランジスタ33の閾値電圧の差とNMOSトランジスタ31とPMOSトランジスタ33のオーバードライブ電圧の差を加算したものになる。
オーバードライブ電圧は、お互いキャンセルしてゼロにすることができるが、閾値電圧は製造上のばらつきに起因しているため、キャンセルすることができず最大で0.3V程度の差が見込まれる。図2のドレインフォロワ回路41、42はこの差電圧をキャンセルしてゼロにする目的で設置している。
図3は、図2のフィルタ回路におけるドレインフォロワ回路として最適例を示す回路図で、実施形態2のフィルタ回路に用いられるドレインフォロワ回路41,42の回路図である。図3に示した回路は、MOSトランジスタ61,62と、電流源63乃至66と、入力端子67と、出力端子68と、端子69と,70、71の負及び正の電源端子とを備えている。
PMOSトランジスタ61のソース61Sは、電流源65と、入力端子67に接続され、ゲート61Gとドレイン61Dは共通接続され、端子69と、NMOSトランジスタ62のソース62Sと、電流源63,64に接続され、NMOSトランジスタ62のゲート62Gと、ドレイン62Dは共通接続され、出力端子68と、電流源66に接続されている。
図3に示したドレインフォロワ回路において、その入力端子67の電圧V67と出力端子68の電圧V68の電圧差についてMOSトランジスタ61,62に流れる電流と電圧の関係から求めることができる。電流源63と65の電流値は同じ値であるI61、電流源64と66の電流値は同じ値であるI62とする。なお、電流源63と電流源64は電流値がI61+I62となる別の1つの電流源としても同じであるが回路の理解を容易にするために2つに分けて表記している。MOSトランジスタ61に関して、入力端子67に与えられる入力電圧V67と端子69の電圧V69との関係は、以下の(39)式のように示すことができる。
I61=(W61/2L61)μpCoxp(V69−V67−Vthp)2
・・・(39)
ここで、I61はMOSトランジスタ61のソース・ドレイン間に流れる電流、W61、L61、μp、Coxp、VthpはそれぞれPMOSトランジスタ61のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V69とV67の関係式は、(39)式を変形して以下の(40)式で表すことができる。
V69=V67+Vthp−√{I61/(W61/2L61)μpCoxp}
・・・(40)
ここで、Vthpは通常負の値なので、V69はV67に対してMOSトランジスタ61の閾値電圧VthpにMOSトランジスタ61のオーバーゲート電圧√{I61/(W61/2L61)μpCoxp}を加えた値だけ負の方向になる。同様に端子69の電圧V69と出力端子68の電圧V68の関係は、以下の(41)式のように示すことができる。
I62=(W62/2L62)μnCoxn(V68−V69−Vthn)2
・・・(41)
ここで、I62はMOSトランジスタ62のソース・ドレイン間に流れる電流、W62、L62、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ62のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V68とV69の関係式は、(41)式を変形して以下の(42)式で表すことができる。
V68=V69+Vthn+√{I62/(W62/2L62)μnCoxn}
・・・(42)
入力電圧V67と出力電圧V68の関係は、上述した(40)式及び(42)式を用いて、以下の(43)式のように示すことができる。
V68=V67+Vthn+Vthp−√{I61/(W61/2L61)μpCoxp}+√{I62/(W62/2L62)μnCoxn} ・・・(43)
ここで、図2の入力電圧V43と出力電圧V45の関係は、上述した(38)式及び(43)式を用いて、以下の(44)式で示される。
V45=V43−√{I31/(W31/2L31)μnCoxn}
+√{I33/(W33/2L33)μpCoxp}
−√{I61/(W61/2L61)μpCoxp}
+√{I62/(W62/2L62)μnCoxn} ・・・(44)
(44)式において以下の(45)式のように
V45=V43 ・・・(45)
入力電圧V43と出力電圧45が等しくなるように電流I31,I33,I61,I62とMOSトランジスタサイズを選択することは容易である。例えば、電流とサイズの関係式として、以下の(46)式及び(47)式のようにすればV45はV43に一致する。
I31/(W31/2L31)=I62/(W62/2L62) ・・・(46)
I33/(W33/2L33)=I61/(W61/2L61) ・・・(47)
また、(46)式、(47)式の特別なケースとして、電流I31,I33,I61,I62とMOSトランジスタ31,33,61,62のサイズを同じにするとことで簡単に(45)式を満足することができる。このように図2のソースフォロワ型フィルタ回路53にドレインフォロワ回路41、42を追加すれば入力電圧と出力電圧を閾値のプロセス変動の影響を受けることなく同じにすることができる。
なお、図2の電流源37と、ドレインフォロワ回路41の構成図である図3の電流源65とは同じ接続関係となっているのでこれら2つの電流源の代わりに別の電流源Aを用いても構わない。この場合、電流源Aの電流値Iaは電流源37の電流値I33と電流源65の電流値I61の和とすればよい。同様に、図2の電流源38と、ドレインフォロワ回路42の構成図である図3の電流源65とは同じ接続関係となっているのでこれら2つの電流源の代わりに別の電流源Bを用いても構わない。この場合、電流源Bの電流値Ibは電流源38の電流値I33と電流源65の電流値I61の和とすればよい。
<実施形態3>
図4は、本発明に係るフィルタ回路の実施形態3を説明するための回路図である。この実施形態3のフィルタ回路は、NMOSトランジスタ301乃至308と、コンデンサ325,326と、電流源309乃至312と電流源329,330、入力端子313,314と、出力端子315,316と、端子317乃至322と、負及び正の電源端子323,324とを備えている。
NMOSトランジスタ301のドレイン301Dは正の電源端子324に接続され、ゲート301Gは入力端子313に接続され、ソース301Sは、NMOSトランジスタ3のドレイン303Dと、NMOSトランジスタ4のゲート304Gと、コンデンサ325の一方の端子と、端子317に接続されている。NMOSトランジスタ302のドレイン302Dは正の電源端子324に接続され、ゲート302Gは入力端子314に接続され、ソース302SはNMOSトランジスタ304のドレイン304Dと、NMOSトランジスタ303のゲート303Gと、コンデンサ325の他端と、端子318に接続されている。
NMOSトランジスタ303のソース303Sは、NMOSトランジスタ305のソース305Sと、電流源309、329と、コンデンサ326の一方の端子と、端子319に接続されている。NMOSトランジスタ304のソース304Sは、NMOSトランジスタ306のソース306Sと、電流源310、330と、コンデンサ326の他端と、端子320に接続されている。
NMOSトランジスタ305のゲート305Gとドレイン305Dは共通接続され、NMOSトランジスタ307のソース307Sと、端子321に接続されている。NMOSトランジスタ306のゲート306Gとドレイン306Dは共通接続され、NMOSトランジスタ308のソース308Sと、端子322に接続されている。
NMOSトランジスタ307のゲート307Gとドレイン307Dは共通接続され、電流源311と、出力端子315に接続されている。NMOSトランジスタ308のゲート308Gとドレイン308Dは共通接続され、電流源312と、出力端子316に接続されている。
ここで、MOSトランジスタ301乃至304、コンデンサ325,326と、電流源309,310と、それに接続する端子を含めた回路はソースフォロワ型フィルタ回路327と通常称されていて、そのソースフォロワ型フィルタ回路327の入力は、入力端子313,314から供給され、出力は端子319,320に発生する。
図4のソースフォロワ型フィルタ回路327において、その入力端子313の電圧V313と回路327の出力に相当する端子319の電圧V319の電圧差についてMOSトランジスタ301乃至304に流れる電流と電圧の関係から求めることができる。この電流と電圧の関係式については、MOSトランジスタ301乃至304と電流源305,306は左右対称で動作するので、以下では左半分のMOSトランジスタ301,303と電流源305に関して注目して説明する。また、回路が対象であるので端子317と端子318の電圧V317とV318は等しいとする。MOSトランジスタ301に関して、入力端子313に与えられる入力電圧V313と端子317の電圧V317との関係は、以下の(48)式のように示すことができる。
I301=(W301/2L301)μnCoxn(V313−V317−Vthn)2 ・・・(48)
ここで、I301はMOSトランジスタ301のソース・ドレイン間に流れる電流、W301、L301、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ301のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V313とV317の関係式は、(48)式を変形して以下の(49)式で表すことができる。
V317=V313−Vthn‐√{I301/(W301/2L301)μnCoxn} ・・・(49)
ここで、Vthnは通常正の値なので、V317はV313に対してMOSトランジスタ301の閾値電圧VthnにMOSトランジスタ301のオーバーゲート電圧√{I301/(W301/2L301)μnCoxn}を加えた値だけ負の方向になる。同様に端子317(=318)の電圧V317(=V318)と端子319の電圧V319の関係は、以下の(50)式のように示すことができる。
I301=(W303/2L303)μnCoxn(V317−V319−Vthn)2 ・・・(50)
ここで、I301はMOSトランジスタ303のソース・ドレイン間に流れる電流、W303、L303、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ303のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V317とV319の関係式は、(50)式を変形して以下の(51)式で表すことができる。
V319=V317−Vthn−√{I301/(W303/2L303)μnCoxn} ・・・(51)
入力電圧V313とフィルタ327の出力電圧V319の関係は、上述した(49)式及び(51)式を用いて、以下の(52)式のように示すことができる。
V319=V313−2Vthn−√{I301/(W301/2L301)μnCoxn}−√{I301/(W303/2L303)μnCoxn} ・・・(52)
すなわち、図1のフィルタ327の入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、閾値電圧の2倍とMOSトランジスタ301及び303のオーバードライブ電圧をそれぞれ減算したものになる。
次に、新しく追加したトランジスタ305乃至308と電流源311,312、329、330の動作について説明する。なお、MOSトランジスタ305と306、307と308及び電流源311、312、329,330は、全差動回路構成として左右対称になっており以下の説明においては片側の回路、すなわち、MOSトランジスタ305,307と電流源311、329のみについて説明する。なお、MOSトランジスタ305と307は、電流源329と電流源311に挟まれており、通常電流源329と電流源311のそれぞれの電流値は同じ値であるI311にしている。従って、これらMOSトランジスタに流れる電流は、電流源311で設定される電流値I311である。
尚、フィルタ回路327の電流源309とドレインフォロワ回路328aの電流源329をひとつの電流源にまとめることができる。この場合、新しくまとめた電流源の電流値は電流源309と電流源329のそれぞれの電流値を合計したものにすればよい。また同様に、フィルタ回路327の電流源310とドレインフォロワ回路328bの電流源330をひとつの電流源にまとめることができる。この場合、新しくまとめた電流源の電流値は電流源310と電流源330のそれぞれの電流値を合計したものにすればよい。MOSトランジスタ305,307と電流源1311、329からなる回路とMOSトランジスタ306,308と電流源312、330からなる回路を以下ではドレインフォロワ回路328a、328bと称することにする。ドレインフォロワ回路と称しているのは、図4の回路ブロック328aにも示しているように、MOSトランジスタ307のドレイン端子315に現れる電圧を出力しているからである。このドレインフォロワ回路328aの入力端子に相当する端子319の電圧V319と端子321の電圧V321の関係は、以下の(53)式のように示すことができる。
I311=(W305/2L305)μnCoxn(V321−V319−Vthn)2 ・・・(53)
ここで、I311はMOSトランジスタ305のソース・ドレイン間に流れる電流、W305、L305、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ305のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V319とV321の関係式は、(53)式を変形して以下の(54)式で表すことができる。
V321=V319+Vthn+√{I311/(W305/2L305)μnCoxn} ・・・(54)
また、端子321の電圧V321とドレインフォロワ回路328の出力に相当する端子である端子315の電圧V315の関係は、以下の(55)式のように示すことができる。
I311=(W307/2L307)μnCoxn(V315−V321−Vthn)2 ・・・(55)
ここで、I311はMOSトランジスタ307のソース・ドレイン間に流れる電流、W307、L307、μn、Coxn、VthnはそれぞれNMOSトランジスタ307のチャネル幅、チャネル長、キャリア移動度、単位面積あたりのゲート容量、閾値電圧である。V315とV321の関係式は、(55)式を変形して以下の(56)式で表すことができる。
V315=V321+Vthn+√{I311/(W307/2L307)μnCoxn} ・・・(56)
ドレインフォロワ回路328aの入力端子に相当する端子319の端子電圧V319と出力端子に相当する端子315の端子電圧V315の関係は、上述した(54)式及び(56)式を用いて、以下の(57)式のように示すことができる。
V315=V319+2Vthn+√{I311/(W305/2L305)μnCoxn}+√{I311/(W307/2L307)μnCoxn} ・・・(57)
すなわち、図4のドレインフォロワ回路328aの入力信号と出力信号のDC(直流)信号レベル差は、閾値電圧の2倍とMOSトランジスタ305及び307のオーバードライブ電圧をそれぞれ加算したものになる。
従って、図4の回路全体における入力端子313の電圧V313に対する出力端子315の電圧V315の電圧は、上述した(52)式及び(57)式より、以下の(58)式で示すことができる。
V315=V313−√{I301/(W301/2L301)μnCoxn}
−√{I301/(W303/2L303)μnCoxn}
+√{I311/(W305/2L305)μnCoxn}
+√{I311/(W307/2L307)μnCoxn} ・・・(58)
この(58)式において以下の(59)式のように、
V315=V313 ・・・(59)
入力電圧V315と出力電圧V313が等しくなるように電流I301、I311とMOSトランジスタサイズを選択することは容易である。一番簡単な方法は、電流I301とI311を同じにするとともに、全てのMOSトランジスタサイズを同じにすると良い。図4のフィルタ回路は全て同じ極性であるNMOSトランジスタを用いているので、入力電圧と出力電圧を同じにすることができる。この回路では図4に示すフィルタ回路を図6のフィルタ回路121乃至124に適用することで、多段に接続しても出力信号レベルはいつも入力信号レベルと同じであり、低い電源電圧でも動作が可能なフィルタ回路を提供することができる。
なお、追加しているドレインフォロワ回路328は、ソースフォロワで構成されているフィルタ回路327の周波数特性を損なわないように十分高速で動作するように設計することが要求される。このため高速性能が要求される場合は、(59)式を満たしつつ回路に流れる電流を大きくしたり、寄生容量を小さくなるような設計が必要になる。
さて、(48)乃至(57)式において、NMOSトランジスタ301,303,305,307の閾値電圧Vthnは、いつも一定であるとしてきたが、閾値電圧Vthnが一定にするための条件について図9を用いて説明する。
図9は、4端子を用いた時のNMOSトランジスタの記号を表す図で、図4中のNMOSトランジスタ301,303,305,307の端子を表す記号を、4端子を用いてより詳細に記載した図である。NMOSトランジタ301はソース端子301S,ゲート端子301G、ドレイン端子301Dとバルク端子(ウエル端子とも称する)301Bの4つの端子を有している。
一般に、NMOSトランジスタを用いて回路を記述する場合、回路を簡略するためバルク端子の接続関係をしばしば省略することが多い。例えば、図2,図3,図4におけるNMOSのバルク端子301Bは、ソース端子301Sに接続しているとしている。このような場合、閾値電圧Vthnはいつも一定になる。然しながら、近年よく使われるMOSトランジスタプロセスではP型基板のシリコンウエハが用いられており、NMOSトランジスタのウエルの電圧であるバルク電圧(正しくはウエル電圧)はウエルがP型であるため、P型基板の電圧に必然的に等しくなってしまう。
通常、P型基板の電圧は負の電源電圧に固定するため、NMOSトランジスタのウエルの電圧(=バルク電圧)も負の電源電圧に固定される。従ってNMOSトランジスタのバルク電圧(=ウエル電圧)をソース電圧に等しくさせるために、NMOSトランジスタの素子構造において、NMOSトランジスタのP型ウエルの外側にN型のディ−プウエルと呼ばれる領域を形成する。このようにするとNMOSトランジスタのPウエルはP型基板と隔離できるので、Pウエルの電圧を基板と関係なく自由に設定できるので、ソース端子とバルク端子(ウエル端子とも称する)を共通接続することができる。こうして(48)乃至(51)式と(53)乃至(57)式におけるVthnを一定にすることができる。
ところが、ディープウエル構造とするためには余分な不純物拡散工程を必要とするためMOS製造プロセスは複雑になりウエハ価格は高価になるので、安価なMOS製造プロセスとしてディープウエル構造を持たないNMOSトランジスタも頻繁に使用されている。ディープウエルを持たないNMOSトランジスタにおいて、バルク端子は通常負電源端子に接続する。このような場合は、ソース端子とバルク端子電圧の差が一定ではないためNMOSトランジスタの閾値電圧Vthnは、以下の(60)式に示すようにソース電圧に依存する。
Vthn=Vtho+γ{√(2ΦF+Vsb)−√(2ΦF)}
・・・(60)
ここで、Vsbはソース端子電圧とバルク端子電圧の電圧差、Vthoはソース端子電圧とバルク端子電圧が等しい場合(Vsb=0に相当する)の閾値電圧Vthn、γは基板バイアス効果係数と呼ばれる係数、ΦFはフェルミポテンシャルと呼ばれる係数である。ここでディープウエルプロセスにおいては、NMOSトランジスタのソース端子とバルク端子を接続できるのでVsb=0とすることができるが、そうでない場合について説明する。
図4に示したNMOSトランジスタ301において入力端子13に入力する電圧が変化すると端子317の電圧も同時に変化するので、Vsbは一定とすることができない。同様にMOSトランジスタ303,305,307についてもVsbは一定とすることができない。(60)式より閾値電圧が一定でないので、(49)式、(51)式におけるVthnは一定でない。このため、(52)式からわかるように、図4に示したフィルタ回路327の出力電圧V319と入力電圧V313の差は一定ではなくなる。このため、フィルタ回路327の出力電圧V319は入力電圧V313に対して歪を生ずることになり、また利得も1でなくなるという問題がある。ところがNMOSトランジスタ301と307のソース電圧及びNMOSトランジスタ303と305のソース電圧はいつも等しいので、Vsbも等しく、結果としてNMOSトランジスタ301と307及び303と305の閾値電圧は入力電圧V313に関係なくいつも等しい。従って、図4に示したフィルタ回路では(52)式に従って出力電圧V319はVthが一定とした時と比較してずれていても、ドレインフォロワ回路328aにおける(57)式によって出力電圧V315は入力信号電圧V313と完全に等しくなる。このため、出力信号は歪もなくまた利得も正確に1となるという理想的なボルテージフォロワ特性をもたらす。従って、図4に示したフィルタ回路は、ソースフォロワ回路327にドレインフォロワ回路328aと328bを追加することで、フィルタ回路327で発生した歪特性と利得特性の劣化を回復させる働きがあるため、ディープウエル素子構造を持たない安価なプロセスにおいてソースフォロワ回路にドレインフォロワ回路を追加して性能を大幅に向上させる効果がある。