JP2010123315A - 燃料電池 - Google Patents

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慎司 城森
Naoki Takehiro
直樹 竹広
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竜哉 新井
Keiichi Kaneko
桂一 金子
Takumi Taniguchi
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Abstract

【課題】圧力損失の低減を図りつつ低負荷時のフラッディングを防止する。
【解決手段】セパレータ20を備える燃料電池において、セパレータ20の面に第1のガス流路30Aと第2のガス流路30Bとが形成されている。第1のガス流路30Aは、ガス供給マニホールド50と接続される入口部32Aと、ガス排出マニホールド52と接続される出口部34Aと、出口部34A付近に設けられ、ガス流量の増減に応じて開度を増減する弁体36とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、膜電極接合体とセパレータとを備える燃料電池に関する。
従来、燃料電池用のセパレータとして、閉塞流路を有するセパレータが知られている(特許文献1)。閉塞流路とは、例えば櫛形の流路のような流路先端が閉塞されたものである。閉塞流路によれば、流路下のガス拡散層に反応ガス(燃料ガスおよび酸化剤ガス)が強制的に供給されることになり、ガス拡散層下の触媒層近傍の水滴や窒素などの不要ガスが強制的に排出される。このために、流路下に反応ガスが十分に行き渡り、燃料電池性能が向上する。
さらに、燃料電池用のセパレータとして、閉塞流路の閉塞部分を多孔質体で構成したセパレータが提案されている(特許文献2)。閉塞流路の場合、ガス拡散層内をガスが通ることによる圧力損失が大きいが、上記閉塞部分を多孔質体で構成することにより、圧力損失を低減することができる。したがって、このセパレータによれば、燃料電池性能の向上と反応ガスの圧力損失の低減との両立を図ることができる。
特開平11−16591号公報 特開2006−127770号公報
しかしながら、前記従来の技術、すなわち、閉塞部分を多孔体で構成したセパレータを有する燃料電池では、低負荷時のガス流量が少ないときに、ガス拡散層内を潜り込むガス量が少なくなってしまい、フラッディングが発生する問題が発生した。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、圧力損失の低減を図りつつ低負荷時のフラッディングを防止することを課題とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1] 電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、前記膜電極接合体に対向して設けられるとともに、前記電極側の面に第1のガス流路が形成されるセパレータとを備える燃料電池において、前記第1のガス流路は、ガス供給マニホールドと接続される入口部と、ガス排出マニホールドと接続される出口部と、前記出口部もしくは前記出口部付近に設けられ、ガス流量の増減に応じて開度を増減する弁体とを備えることを特徴とする燃料電池。
適用例1に記載の燃料電池によれば、第1のガス流路のガス流量の増減に応じて、第1のガス流路の出口部もしくは出口部付近に設けられた弁体の開度が増減されることから、第1のガス流路のガス流量に応じて出口部からのガス抜け量を調整することができる。出口部からのガス抜け量のガス供給量に対する比率を先端ガス抜け率と呼ぶとすると、ガス流量が大きいときには、弁体の開度は大きく、先端ガス抜け率は大きい。このため、ガス供給量が大きい高負荷時においては、先端ガス抜け率が増大し、膜電極接合体に向かってガス拡散層内に潜り込むガス量が低減しガスの圧力損失は小さくて済む。一方、ガス流量が小さいときには、弁体の開度は小さく、先端ガス抜け率は小さい。このため、ガス供給量が小さい低負荷時においては、先端ガス抜け率が低下し、ガス拡散層内に潜り込むガス量は増大することから、フラッディングを防止することができる。したがって、適用例1に記載の燃料電池によれば、圧力損失の低減を図りながらも、低負荷時にはフラッディングを防止することができる。
[適用例2] 適用例1に記載の燃料電池であって、前記弁体は、ガスの流れに応じて弾性変形する弾性部材により構成されたものである、燃料電池。
適用例2に記載の燃料電池によれば、ガス流量が大きいほど、弾性部材の弾性変形量は大きくなる。したがって、ガス流量の増減に応じて開度が増減する機能を必要とする弁体を弾性部材といった簡単な構成で作成することができる。
[適用例3] 適用例2に記載の燃料電池であって、前記弾性部材はゴム製である、燃料電池。
適用例3に記載の燃料電池によれば、弁体をゴム製にて簡単に構成することができる。
[適用例4] 適用例1ないし3のいずれかに記載の燃料電池であって、前記セパレータは、前記電極側の面に、前記第1のガス流路と対に並べられる第2のガス流路が形成された構成であり、前記第2のガス流路は、閉塞された入口部と、ガス排出マニホールドと接続される出口部とを備える、燃料電池。
適用例4に記載の燃料電池によれば、第1のガス流路からガス拡散層内に潜り込んだガスは、ガス拡散層内で拡散して電極触媒層内に至るとともに、第2のガス流路に達する。この第2のガス流路に達したガスは、第2のガス流路を出口部に向かって流れ、出口部から排ガスとして排出マニホールドへ送られる。このため、膜電極接合体に対する反応ガスの給排を確実に行うことができる。
[適用例5] 電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、前記膜電極接合体に対向して設けられるとともに、前記電極側の面に第1のガス流路が形成されるセパレータとを備える燃料電池において、前記第1のガス流路は、ガス供給マニホールドと接続される入口部と、ガス排出マニホールドと接続される出口部と、前記出口部付近に設けられ、ガスの流れを遮断するとともに当該流路内を摺動し得るピストンと、前記ピストンに対して前記ガスの流れと逆の方向の力を与える弾性部材とを備えることを特徴とする燃料電池。
適用例5に記載の燃料電池によれば、ピストンにより、第1のガス流路の出口部付近が閉塞される。このピストンは、ガスの流れと逆の方向に弾性部材により付勢されていることから、ガス流量が大きいときには出口部に近い側に移動し、ガス流量が小さいときには出口部から離れた側に移動することになる。このため、ガス供給量が大きい高負荷時においては、出口部に近い側で流路が閉塞されることになることから、第1のガス流路を流れてきた大量のガスはその閉塞部であるピストンの直下を潜ってガス排出マニホールドに流出することになり、先端ガス抜け率(ここでは、出口部と出口部直下の部分を含めたガス抜け量のガス供給量に対する比率を「先端ガス抜け率」と呼ぶ)が増大し、膜電極接合体に向かってガス拡散層内に潜り込むガスの圧力損失は小さくて済む。一方、ガス流量が小さい低負荷時においては、出口部から離れた側で流路が閉塞されることになることから、閉塞部であるピストンの直下を潜ってガス排出マニホールドに流出するガス量は小さく、先端ガス抜け率は小さい。このため、ガス供給量が小さい低負荷時においては、先端ガス抜け率が低下し、ガス拡散層内に潜り込むガス量は増大することから、フラッディングを防止することができる。したがって、圧力損失の低減を図りながらも、低負荷時にはフラッディングを防止することができる。
[適用例6] 適用例5に記載の燃料電池であって、前記弾性部材はバネである、燃料電池。
適用例6に記載の燃料電池によれば、簡単な構成により、ピストンに対してガスの流れと逆の方向の力を与えることができる。
[適用例7] 適用例5または6に記載の燃料電池であって、前記セパレータは、前記電極側の面に、前記第1のガス流路と対に並べられる第2のガス流路が形成された構成であり、前記第2のガス流路は、閉塞された入口部と、ガス排出マニホールドと接続される出口部とを備える、燃料電池。
適用例7に記載の燃料電池によれば、第1のガス流路からガス拡散層内に潜り込んだガスは、ガス拡散層内で拡散して電極触媒層内に至るとともに、第2のガス流路に達する。この第2のガス流路に達したガスは、第2のガス流路を出口部に向かって流れ、出口部から排ガスとして排出マニホールドへ送られる。このため、膜電極接合体に対する反応ガスの給排を確実に行うことができる。
本発明は、上記適用例以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、本発明の燃料電池を複数備えた燃料電池スタック、この種の燃料電池スタックを備えた発電システム、この種の発電システムを備えた車両等の移動体とした形態等で実現することが可能である。また、例えば、上記各適用例において、前記燃料電池に備えられる電解質膜は固体高分子膜とすることができる。この構成によれば、燃料電池の取り扱いの利便がよい。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1:燃料電池の構成:
A−2:作用、効果:
B.第2実施例:
C.他の実施形態:
A.第1実施例:
A−1:燃料電池の構成:
図1は、本発明の第1実施例に係る燃料電池を模式的に示す説明図である。燃料電池は、多数の単セル10が積層されたスタック構造としての燃料電池スタック1の形態で提供されており、図1では2つ分の単セル10の縦断面が示されている。燃料電池スタック1の単セル10は、主として、固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」と呼ぶ)13の両面に電極14、15が配置された膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly、以下MEAという)12と、MEA12を両面から挟み込むセパレータ20、20とを備えている。
MEA12は、電解質膜13を二つの電極、つまり燃料極であるアノード14と酸素極であるカソード15とで挟みこんだものである。ここで、電解質膜13は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を有する固体高分子材料で作製された膜であり、具体的にはフッ素系樹脂により形成された膜(デュポン社製のナフィオン膜等)などが挙げられる。
アノード14及びカソード15は、それぞれ電極触媒層14a、15aとガス拡散層14b、15bとによって構成されている。電極触媒層14a、15aは、電解質膜13に接触する側に位置し、白金微粒子を担持させた導電性カーボンブラックにより形成されている。一方、ガス拡散層14b、15bは、電極触媒層14a、15aに積層され(セパレータ20に接触する側に位置し)、炭素繊維からなるカーボンペーパにより形成されている。なお、電極触媒層14a、15aに含まれる白金は、水素をプロトンと電子に分けるのを促進したり酸素とプロトンと電子から水を生成する反応を促進する作用を有するものであるが、同様の作用を有するものであれば白金以外のものを用いてもよい。また、ガス拡散層14b、15bは、カーボンペーパのほか、カーボンフェルト等によって形成してもよく、十分なガス拡散性および導電性を有していればよい。
ここでは、電極は電極触媒層とガス拡散層とによって構成されるものとしているが、狭義には、電極は電極触媒層が対応するものとしてもよい。すなわち、MEA12は、電解質膜13と電極触媒層14a、15aとにより構成するものとしてもよい。
セパレータ20は、板状であり、ガスを透過しない緻密質であると共に、電気伝導性を有する材料で形成される。その形成には、例えば、圧縮成型された緻密質カーボン、金属、導電性樹脂を用いることができる。セパレータ20の両面には、直線状の溝(凹部)が複数形成されている。この溝によって、MEA20との間に、電気化学反応に供される反応ガスの流路が形成される。すなわち、セパレータ20とMEA12のアノード14との間には、水素を含有する燃料ガスが通過する燃料ガス流路(単セル内燃料ガス流路)30が形成される。また、セパレータ20とMEA12のカソード15との間には、空気などの酸素を含有する酸化剤ガスが通過する酸化剤ガス流路(単セル内酸化剤ガス流路)40が形成される。
図2は、セパレータ20を示す説明図である。図2(a)はセパレータ20の平面図であり、図2(b)は図2(a)におけるA−A線矢視図である。図示するように、セパレータ20は、長方形の板形状であり、前述した溝によって構成される燃料ガス流路30や酸化剤ガス流路40の他に、4つの孔(うち2つの孔は図示せず)50、52が設けられている。孔50、52は、セパレータ20の一辺における両端側に離れて設けられており、かつ、複数の単セル10を積層したときに、複数の単セル10を貫くように設けられており、燃料ガスを燃料電池の積層方向(図中、z方向)に流通可能とする流路を形成する。すなわち、セパレータ20に形成された孔50は、上流側の燃料ガスの流路を形成し、孔52は、下流側の燃料ガスの流路を形成する。なお、セパレータに形成された図示しない2つの孔は、上流側の酸化ガスの流路および下流側の酸化ガスの流路を形成する。
上流側の燃料ガスの流路を形成する孔50は、単セル内燃料ガス流路30の一方端(以下「入口部」と呼ぶ)と接続されることで、外部から送られてきた燃料ガスを各単セルに分配する燃料ガス供給マニホールドとして機能する。下流側の燃料ガスの流路を形成する孔52は、単セル内燃料ガス流路30の他方端(上記孔50が接続されたと反対側の端部:以下「出口部」と呼ぶ)とそれぞれ接続されることで、各単セル10から排出された燃料ガスを集合させて燃料電池の外部へ導く燃料ガス排出マニホールドとして機能する。なお、セパレータに形成された図示しない2つの孔は、酸化剤ガス供給マニホールド、酸化剤ガス排出マニホールドとして機能する。
単セル内燃料ガス流路30は、前述したように直線状の溝であり、複数本、用意されている。詳細には、単セル内燃料ガス流路30は、第1の単セル内燃料ガス流路30Aと第2の単セル内燃料ガス流路30Bとの2つの形態をとり、第1の単セル内燃料ガス流路30Aと第2の単セル内燃料ガス流路30Bとが、交互に平行に並べられている。
第1の単セル内燃料ガス流路30Aは、前述したように、入口部32Aに燃料ガス供給マニホールドとしての孔(以下、燃料ガス供給マニホールドと呼ぶ)50が接続され、出口部34Aに燃料ガス排出マニホールドとしての孔(以下、燃料ガス排出マニホールドと呼ぶ)52が接続されている。第1の単セル内燃料ガス流路30Aの出口部34A付近には、ガス流量の増減に応じて開度を増減する弁体36が設けられている。弁体36の構造および動作の詳細については後述する。
一方、第2の単セル内燃料ガス流路30Bについては、その入口部32Bが閉塞されており、出口部34Bに燃料ガス排出マニホールド52が接続されている。
燃料ガス供給マニホールド50に送られてきた燃料ガスは、各第1の単セル内燃料ガス流路30Aの入口部32Aから各第1の単セル内燃料ガス流路30Aに分配される。各第1の単セル内燃料ガス流路30Aにおいては、燃料ガスは出口部34Aに向かって流れるが、出口部34A付近で弁体36により流量が調整されて燃料ガス排出マニホールド52に抜ける。
なお、単セル10内において燃料ガスは、各第1の単セル内燃料ガス流路30Aを通過するだけではなく、図2(b)に示すように、溝の開口部分から積層方向(z方向)に向かって進む。この結果、燃料ガスは、セパレータ20に接合されたMEA12におけるガス拡散層14b内に潜り込む。この潜り込んだガスは、ガス拡散層内で拡散して電極触媒層14a内に至るとともに、各第2の単セル内燃料ガス流路30Bにも達する。この第2の単セル内燃料ガス流路30Bに達したガスは、第2の単セル内燃料ガス流路30Bを出口部34Bに向かって流れ、出口部34Bから排ガスとして燃料ガス排出マニホールド52へ送られる。
図3は、第1の単セル内燃料ガス流路30Aに設けられた弁体36を示す斜視図である。弁体36は、2枚の弁片38、39によって構成される。各弁片38、39は、長方形状の薄板であり、ゴム製であり、短辺側から長辺方向(z方向)に見て湾曲している。各弁片38、39は、長辺側の一方の端面38a、39aで、第1の単セル内燃料ガス流路30Aの内壁面に対して接着剤により接合されている。なお、接合の方向は、長辺の方向が第1の単セル内燃料ガス流路30Aの深さ方向(図中、−z方向)となるものである。このため、弁体36は、第1の単セル内燃料ガス流路30Aの深さ方向に延びるスリット状の開口を備えることになる。なお、この開口は、第1の単セル内燃料ガス流路30Aの下流側に向いている。
第1の単セル内燃料ガス流路30Aにおいて燃料ガスはx方向に流れるが、この燃料ガスの流量、すなわち単位時間当たりの体積流量により上記弁体36の開口の面積が変化する。すなわち、燃料ガスの流量が小さいときは、弁体36の開口面積は小さく、燃料ガスの流量が大きくなると、その流れにより弁片38、39が弾性変形して弁体36の開口面積は大きくなる。詳しくは、燃料ガスの流量が0のときには、開口面積は0であり(開度=0%)、ガス流量の大きさに比例して弁体36の開口面積は増大し、燃料電池スタック1の電流密度が最大となったときの最大流量となったときには、開口面積は最大である(開度=100%)。
なお、図2、図3を用いて説明したのは単セル内燃料ガス流路30についての構成であるが、単セル内酸化剤ガス流路40についても、単セル内燃料ガス流路30と同一の構成を備える。この結果、セパレータ20に設けられた単セル内燃料ガス流路30および単セル内酸化剤ガス流路40を介して、MEA12に対して燃料ガスや酸化剤ガスが滞りなく供給される。こうした結果、燃料電池スタック1は、水素と酸素とを電気化学的に反応させて、化学エネルギを直接電気エネルギに変換する。
A−2:作用、効果:
図4は、第1の単セル内燃料ガス流路30Aおよびその周辺の燃料ガスの流れを示す説明図である。図4(a)は低負荷時のものであり、図4(b)は高負荷時のものである。
図4(a)に示すように、低負荷時においては、ガス供給量が少ないことから、第1の単セル内燃料ガス流路30A内のガス流量は「小」である。ガス流量が小さいときには、前述したように弁体36の開口面積は小さくなることから、出口部からのガス抜け量は小さく、先端ガス抜け率は小さい。これにより、ガス拡散層14b内に潜り込むガス量が増大することになる。したがって、低負荷時においては、ガス拡散層14b内に潜り込むガス量が増大することから、ガス拡散層14bに沿った電極触媒層14a近傍の水滴や窒素などの不要ガスを容易に排出することができ、フラッディングを防止することができる。
図4(b)に示すように、高負荷時においては、ガス供給量が多いことから、第1の単セル内燃料ガス流路30A内のガス流量は「大」である。ガス流量が大きいときには、前述したように弁体36の開口面積は大きくなることから、出口部34Aからのガス抜け量は大きく、先端ガス抜け率は大きい。これにより、ガス拡散層14b内に潜り込むガス量が低減し、ガスの圧力損失は小さくて済む。
図5は、燃料電池スタック1の電流密度と先端ガス抜け率との関係を示すグラフである。このグラフは、実験的に求めたものである。同グラフ中の実線に示すように、燃料電池スタック1の電流密度の増加に比例して、先端ガス抜け率は増大する。なお、図中の破線は、[背景技術]の欄で説明した従来例、すなわち、閉塞部分を多孔体で構成したセパレータを有する燃料電池についてのものである。
図6は、燃料電池スタック1の電流密度とガス拡散層14bにおける燃料ガスの圧力損失との関係を示すグラフである。このグラフは、実験的に求めたものである。同グラフ中の実線に示すように、燃料電池スタック1の電流密度の増加に伴って圧力損失は次第に増加し、電流密度が所定値j1を超えると、圧力損失の増大の比率が極端に小さくなる。図中の破線は、前記従来例、すなわち閉塞部分を多孔体で構成したセパレータを有する燃料電池についてのものである。本実施例と従来例とを比較した場合、電流密度が所定値j1以下の場合には、本実施例の圧力損失は、従来例の圧力損失よりも大きく、電流密度が所定値j1以上である場合には、本実施例の圧力損失は、従来例の圧力損失よりも小さくて済む。
したがって、第1実施例の燃料電池スタック1によれば、理論的にも実験的にも、圧力損失の低減(特に高負荷時の圧力損失の低減)を図りながらも、低負荷時にはフラッディングを防止することができるという効果を奏することが判る。また、第1の単セル内燃料ガス流路30Aの先端ガス抜け率を調整するための弁体36を、ゴム製の弁片38、39だけで構成することができることから、構成が容易であるという効果を奏する。
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について次に説明する。第2実施例の燃料電池スタックは、第1実施例の燃料電池スタック1と比較して、弁体36を除いて同一の構成を備える。
図7は、第2実施例の燃料電池スタック1に備えられるセパレータ120を示す説明図である。図7(a)はセパレータ120の平面図であり、図7(b)は図7(a)におけるB−B線矢視図である。図示するように、セパレータ120に備えられる第1の単セル内燃料ガス流路130Aの出口部134A付近には、燃料ガスの流れを遮断するピストン136が設けられている。ピストン136は、第1の単セル内燃料ガス流路130Aを構成する溝の縦断面に対応した形状(矩形)のピストン面を備えており、第1の単セル内燃料ガス流路130Aを摺動可能な構成となっている。
ピストン136には、コイルばね138が連結されている。図8は、コイルばね138およびその周辺を示す破断斜視図である。図8に示すように、コイルばね138の一方端138aが、ピストン136の裏面136bに固着されている。コイルばね138の他方端138bは、図7(a)に示すように、燃料ガス排出マニホールド152の内壁に固着されている。
上記構成により、ピストン136は、コイルばね138の復元力を受けて、ガスの流れと逆の方向(出口部134Aから入口部132Aに向かう方向)に付勢される。この結果、ピストン136は、第1の単セル内燃料ガス流路130A内の燃料ガスの流れによるピストン面の押圧力とコイルばね138の復元力との釣り合いによって、第1の単セル内燃料ガス流路130A内を往復動する。すなわち、燃料ガスの流量が小さいときには、ピストン136は出口部134Aから離れた側に位置し、燃料ガスの流量が大きくなると、ピストン136は出口部134Aに近い側に位置する。
詳しくは、ピストン面から出口部134Aまでの距離を「閉塞長さ」と呼ぶものとすると、燃料ガスの流量が0のときには、閉塞長さは最大であり、ガス流量の大きさに比例して閉塞長さは短くなり、燃料電池スタック1の電流密度が最大となったときの最大流量となったときには、閉塞長さは最小である。
ピストン136およびコイルばね138は、第1実施例の弁体36に替わるものであり、セパレータ120におけるピストン136およびコイルばね138以外の構成は、第1実施例のセパレータ20と同一である。なお、本実施例においては、セパレータ120以外の部分については第1実施例と同一の符号を付けるものとする。
燃料ガスは、第1の単セル内燃料ガス流路130Aを通過するときに、図7(b)に示すように、溝の開口部分から積層方向(z方向)に向かって進む。この結果、燃料ガスは、セパレータ120に接合されたMEA12におけるガス拡散層14b内に潜り込む。この潜り込んだガスは、ガス拡散層14b内で拡散して電極触媒層内に至るとともに、各第2の単セル内燃料ガス流路130Bにも達する。この第2の単セル内燃料ガス流路130Bに達したガスは、第2の単セル内燃料ガス流路130Bを出口部134Bに向かって流れ、出口部134Bから排ガスとして燃料ガス排出マニホールド152へ送られる。
さらに、第1の単セル内燃料ガス流路130A内からガス拡散層14b内に潜り込んだ燃料ガスの一部は、ガス拡散層14b内の出口部直下の部分から燃料ガス排出マニホールド152へ抜ける。この抜け量は、ピストン136の位置によって変化する。どのように変化するかを次に説明する。
図9は、第1の単セル内燃料ガス流路130Aおよびその周辺の燃料ガスの流れを示す説明図である。図9(a)は低負荷時のものであり、図9(b)は高負荷時のものである。
図9(a)に示すように、低負荷時においては、ガス供給量が少ないことから、第1の単セル内燃料ガス流路130A内のガス流量は「小」である。ガス流量が小さいときには、前述したように閉塞長さLは長くなる。閉塞長さLが長い場合には、第1の単セル内燃料ガス流路130A内からガス拡散層14b内に潜り込み、ガス拡散層14b内の出口部直下の部分から燃料ガス排出マニホールド152へ抜けるガス抜け量は小さくなることから、先端ガス抜け率は小さい。これにより、ガス拡散層14b内に潜り込むガス量が増大することになる。したがって、低負荷時においては、ガス拡散層14b内に潜り込むガス量が増大することから、ガス拡散層14bに沿った電極触媒層14a近傍の水滴や窒素などの不要ガスを容易に排出することができ、フラッディングを防止することができる。
図9(b)に示すように、高負荷時においては、ガス供給量が多いことから、第1の単セル内燃料ガス流路30A内のガス流量は「大」である。ガス流量が大きいときには、前述したように閉塞長さLは短くなる。閉塞長さLが短い場合には、第1の単セル内燃料ガス流路130A内からガス拡散層14b内に潜り込み、ガス拡散層14b内の出口部直下の部分から燃料ガス排出マニホールド152へ抜けるガス抜け量は大きくなることから、先端ガス抜け率は大きい。これにより、ガス拡散層14b内に潜り込むガス量が低減し、ガスの圧力損失は小さくて済む。
なお、第2実施例においても、第1実施例と同様に、電流密度と先端ガス抜け率との関係、および電流密度と圧力損失との関係を調べたが、これらは、第1実施例における図5および図6と同様の結果を得ることができた。
したがって、第2実施例によれば、第1実施例と同様に、圧力損失の低減(特に高負荷時の圧力損失の低減)を図りながらも、低負荷時にはフラッディングを防止することができるという効果を奏する。
C.他の実施形態:
なお、この発明は上記の実施例や変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば次のような他の実施形態も可能である。
(1)上記第1実施例では、弁体36は、第1の単セル内燃料ガス流路30Aの出口部34A付近に設けられていたが、これに換えて、出口部、すなわち燃料ガス排出マニホールドとの接続部分に設ける構成としてもよい。
(2)上記第1実施例では、弁体36を構成する弁片39、39は、ゴム製としたが、これに換えて、樹脂等、他の弾性材料製としてもよい。また、弁片の全体を弾性材料で作る必要は必ずしもなく、ガス流路の壁面との接着部分近くだけを弾性材料として開閉し得る構成としてもよい。また、弁体36は、2枚の弁片39、39により真ん中から左右に開く構成としていた、これに換えて、1枚の弁片により開く構成としてもよい。
(3)上記第2実施例では、ピストン136は、コイルばね138によりガスの流れと逆の方向の力を与えられていたが、コイルばねに換えて他の種類のばねとしてもよい。また、圧縮空気の弾力をピストンに与える、いわゆる空気ばねとしてもよい。空気に替えて窒素等の他の気体としてもよい。さらには、ゴムや樹脂等の他の弾性材料によって構成してもよい。また、第1の単セル内燃料ガス流路30A内において、コイルばね138はピストン136より下流側に設けられていたが、これに換えて、コイルばねをピストンより上流側に設け、ピストンを上流側から引っ張る構成としてもよい。
(4)上記第1実施例および第2実施例では、入口部が閉塞された第2の単セル内燃料ガス流路30B、130Bが、第1の単セル内燃料ガス流路30A、130Aと対になって設けられていたが、必ずしも対となる必要はなく、第1の単セル内燃料ガス流路が2本毎に第2の単セル内燃料ガス流路を設けた構成としてもよい。また、第2の単セル内燃料ガス流路の入口部は必ずしも閉塞されている必要はなく、入口部はガス供給マニホールドと接続された構成としてもよい。さらには、セパレータは、第2の単セル内燃料ガス流路を無くして第1の単セル内燃料ガス流路だけが形成される構成としてもよい。
(5)上記第1実施例および第2実施例では、第1および第2の単セル内燃料ガス流路は、ストレート型のものであったが、これに換えて、蛇行形状であるサーペンタイン型のものとしてもよい。また、燃料ガス流路の形状はいずれの形状とすることもできる。
(6)前記実施例では、燃料電池スタックは固体高分子型燃料電池としたが、固体酸化物型燃料電池やリン酸型燃料電池等、異なる種類の燃料電池に適用することも可能である。
(7)前記実施例や変形例の燃料電池システムは車両に搭載する構成とすることができる。また、これに替えて、船舶、航空機などの他の移動体や、その他各種産業機械などに搭載することも可能である。
本発明の第1実施例に係る燃料電池を模式的に示す説明図である。 セパレータ20を示す説明図である。 第1の単セル内燃料ガス流路30Aに設けられた弁体36を示す斜視図である。 第1の単セル内燃料ガス流路30Aおよびその周辺の燃料ガスの流れを示す説明図である。 電流密度と先端ガス抜け率との関係を示すグラフである。 電流密度とガス拡散層における燃料ガスの圧力損失との関係を示すグラフである。 第2実施例におけるセパレータ120を示す説明図である。 コイルばね138およびその周辺を示す破断斜視図である。 第1の単セル内燃料ガス流路130Aおよびその周辺の燃料ガスの流れを示す説明図である。
符号の説明
1…燃料電池スタック
10…単セル
13…電解質膜
14…アノード
14a…電極触媒層
14b…ガス拡散層
15…カソード
15a…電極触媒層
15b…ガス拡散層
20…セパレータ
30…単セル内燃料ガス流路
30A…第1の単セル内燃料ガス流路
32A…入口部
34A…出口部
30B…第2の単セル内燃料ガス流路
32B…入口部
34B…出口部
36…弁体
38、39…弁片
40…単セル内酸化剤ガス流路
50…燃料ガス供給マニホールド
52…燃料ガス排出マニホールド
120…セパレータ
130A…第1の単セル内燃料ガス流路
132A…入口部
134A…出口部
130B…第2の単セル内燃料ガス流路
132B…入口部
134B…出口部
136…ピストン
138…コイルばね
150…燃料ガス供給マニホールド
152…燃料ガス排出マニホールド

Claims (7)

  1. 電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体に対向して設けられるとともに、前記電極側の面に第1のガス流路が形成されるセパレータと
    を備える燃料電池において、
    前記第1のガス流路は、
    ガス供給マニホールドと接続される入口部と、
    ガス排出マニホールドと接続される出口部と、
    前記出口部もしくは前記出口部付近に設けられ、ガス流量の増減に応じて開度を増減する弁体と
    を備えることを特徴とする燃料電池。
  2. 請求項1に記載の燃料電池であって、
    前記弁体は、ガスの流れに応じて弾性変形する弾性部材により構成されたものである、燃料電池。
  3. 請求項2に記載の燃料電池であって、
    前記弾性部材はゴム製である、燃料電池。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池であって、
    前記セパレータは、
    前記電極側の面に、前記第1のガス流路と対に並べられる第2のガス流路が形成された構成であり、
    前記第2のガス流路は、
    閉塞された入口部と、
    ガス排出マニホールドと接続される出口部と
    を備える、燃料電池。
  5. 電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体に対向して設けられるとともに、前記電極側の面に第1のガス流路が形成されるセパレータと
    を備える燃料電池において、
    前記第1のガス流路は、
    ガス供給マニホールドと接続される入口部と、
    ガス排出マニホールドと接続される出口部と、
    前記出口部付近に設けられ、ガスの流れを遮断するとともに当該流路内を摺動し得るピストンと、
    前記ピストンに対して前記ガスの流れと逆の方向の力を与える弾性部材と
    を備えることを特徴とする燃料電池。
  6. 請求項5に記載の燃料電池であって、
    前記弾性部材はバネである、燃料電池。
  7. 請求項5または6に記載の燃料電池であって、
    前記セパレータは、
    前記電極側の面に、前記第1のガス流路と対に並べられる第2のガス流路が形成された構成であり、
    前記第2のガス流路は、
    閉塞された入口部と、
    ガス排出マニホールドと接続される出口部と
    を備える、燃料電池。
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