JP2010121154A - 圧延銅箔の製造方法および圧延銅箔 - Google Patents

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Abstract

【課題】フレキシブルプリント配線板等の可撓性配線部材に適した高屈曲特性を有する圧延銅箔を安定して効率良く(すなわち、低コストで)製造する製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧延銅箔の製造方法は、生地焼鈍の後で最終冷間圧延工程前の圧延銅箔において、前記圧延銅箔の圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果における銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧10」であり、最終冷間圧延工程途中の圧延銅箔、および最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔の全ての段階の銅箔において、前記銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧1」であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧延銅箔の製造方法に関し、特に、フレキシブルプリント配線板等の可撓性配線部材に好適な優れた屈曲特性を有する圧延銅箔の製造方法に関するものである。
フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit、以下、FPCと称す)は、厚みが薄く可撓性に優れる特長から、電子機器等への実装形態における自由度が高い。そのため、現在では、折り畳み式携帯電話の折り曲げ部・デジタルカメラ・プリンターヘッドなどの可動部、ならびに、HDD (Hard Disk Drive)やDVD (Digital Versatile Disc),CD (Compact Disk)など、ディスク関連機器の可動部の配線等にFPCが広く用いられている。
FPCの導電体としては、種々の表面処理が施された純銅箔または銅合金箔(以下、単に「銅箔」という)が一般的に用いられている。銅箔は、その製造方法の違いにより、電解銅箔と圧延銅箔に大別される。FPCは、前述のように繰り返し可動する部分の配線材として用いられることから優れた屈曲特性(例えば、100万回以上の屈曲特性)が要求され、銅箔としては圧延銅箔が使用されることが多い。
一般的に圧延銅箔は、原材料となるタフピッチ銅(JIS H3100 C1100)や無酸素銅(JIS H3100 C1020)の鋳塊に熱間圧延を施した後、所定の厚さまで冷間圧延と中間焼鈍を繰り返し施すことによって製造される。また、FPC用の圧延銅箔に要求される厚さは、通常50μm以下であるが、最近では十数μm以下と更に薄くなる傾向にある。
FPCの製造工程は、概略的に、「FPC用銅箔と、ポリイミドなどの樹脂からなるベースフィルム(基材)とを貼り合わせてCCL (Copper Clad Laminate)を形成する工程(CCL工程)」と、「該CCLにエッチング等の手法により回路配線を形成する工程」と、「該回路配線上に配線保護のための表面処理を行う工程」などから構成されている。CCL工程には、接着剤を介して銅箔と基材を積層した後、熱処理により接着剤を硬化して密着させる(3層CCL)方法と、接着剤を介さず、表面処理の施された銅箔を基材に直接張り合わせた後、加熱・加圧により一体化する(2層CCL)方法の2種類がある。
ここで、FPCの製造工程においては、製造の容易性の観点から冷間圧延加工上がり(加工硬化した硬質な状態)の銅箔が用いられることが多い。銅箔が焼鈍された(軟化した)状態にあると、銅箔の裁断や基材との積層時に銅箔の変形(例えば、伸び、しわ、折れ、等)が生じ易く、製品不良になりやすいためである。
一方、銅箔の屈曲特性は、再結晶焼鈍を行うことにより、圧延加工上がりの状態よりも著しく向上する。そこで、上述のCCL工程における基材と銅箔とを密着・一体化させるための熱処理で、銅箔の再結晶焼鈍を兼ねる製造方法が一般的に選択されている。なお、このときの熱処理条件は、180〜300℃で1〜60分間(代表的には200℃で30分間)であり、銅箔は再結晶組織に調質した状態となる。
FPCの屈曲特性を高めるためには、その素材となる圧延銅箔の屈曲特性を高めることが有効である。また、一般的に、再結晶焼鈍後の銅箔の屈曲特性は、立方体集合組織が発達するほど向上することが知られている。なお、一般に言われている「立方体集合組織が発達」とは、圧延面において{200}Cu面の占有率が高いこと(例えば、85%以上)のみを意味する。
従来、屈曲特性に優れた圧延銅箔やその製造方法として、次のようなものが報告されている。最終冷間圧延工程の総加工度を高くすること(例えば、90%以上)によって立方体集合組織を発達させる方法、および再結晶焼鈍後の立方体集合組織の発達度合を規定した銅箔(例えば、圧延面のX線回折で求めた(200)面の強度が粉末X線回折で求めた(200)面の強度の20倍より大きい銅箔)。最終冷間圧延工程前の中間焼鈍の際に立方体集合組織を発達させておき、最終冷間圧延工程の総加工度を93%以上にして再結晶後の立方体集合組織を更に発達させる方法。銅箔板厚方向の貫通結晶粒の割合を規定した銅箔(例えば、断面面積率で40%以上が貫通結晶粒である銅箔)。微量添加元素の添加により軟化温度を制御した銅箔(例えば、120〜150℃の半軟化温度に制御した銅箔)。双晶境界の長さを規定した銅箔(例えば、長さ5μmを超える双晶境界が1mm2の面積あたり合計長さ20 mm以下である銅箔)。微量添加元素の添加により再結晶組織を制御した銅箔(例えば、Snを0.01〜0.2質量%添加し、平均結晶粒径を5μm以下、最大結晶粒径を15μm以下に制御した銅箔)などが報告されている(例えば、特許文献1乃至7参照)。
特開2001−262296号公報 特許第3009383号公報 特開2001−323354号公報 特開2006−117977号公報 特開2000−212661号公報 特開2000−256765号公報 特開2005−68484号公報
前述したように、従来技術では、最終冷間圧延工程の総加工度を高くするほど再結晶焼鈍後に圧延銅箔の立方体集合組織が発達して屈曲性が向上すると報告されている。しかしながら、冷間圧延加工においては、総加工度が高くなるほど加工硬化によって材料(銅箔)が硬くなることから、1パスあたりの加工度の制御が難しくなり圧延銅箔の製造効率が低下する(すなわち高コストになりやすい)問題がある。具体的には、冷間圧延の総加工度が93%以上になると、1パスあたりの加工度制御や圧延加工自体が急激に難しくなる。
一方、近年、電子機器類の小型化、高集積化(高密度実装化)や高性能化等の進展に伴い、FPCには従来よりも更なる高屈曲特性の要求が益々高まってきている。FPCの屈曲特性は実質的に銅箔のそれによって決まるため、要求を満たすためには銅箔の屈曲特性を更に向上させることが必須である。加えて、電子部品に対する低コスト化の要求は強まる一方である。
従って、本発明の目的は、フレキシブルプリント配線板(FPC)等の可撓性配線部材に適しており優れた屈曲特性を有する圧延銅箔を提供することにある。さらには、最終冷間圧延工程において従来のような高い総加工度を実施しなくても、高屈曲特性を有する圧延銅箔を安定して効率良く(すなわち、低コストで)製造できる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、圧延銅箔における金属結晶学的な詳細検討を行い、生地焼鈍の後で最終冷間圧延工程前の圧延銅箔(以下「焼鈍生地」と称す)、最終冷間圧延工程途中の圧延銅箔(以下「最終圧延中途銅箔」と称す)および最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔(以下「仕上げ銅箔」と称す)における結晶粒配向状態が、再結晶焼鈍後の結晶粒配向状態および銅箔の屈曲特性との間に特定の相関関係を有することを解明したことに基づき、本発明を完成した。
本発明は、上記目的を達成するため、圧延銅箔の製造方法であって、生地焼鈍の後で最終冷間圧延工程前の圧延銅箔において、前記圧延銅箔の圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果における銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧10」であり、最終冷間圧延工程途中の圧延銅箔、および最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔の全ての段階の銅箔において、前記銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧1」であることを特徴とする圧延銅箔の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る圧延銅箔の製造方法において、前記最終冷間圧延工程における総加工度が80%以上93%未満であることを特徴とする圧延銅箔の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る圧延銅箔の製造方法により製造された圧延銅箔であって、前記最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔における前記圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果で、銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧ 1.2」であることを特徴とする圧延銅箔を提供する。
本発明によれば、フレキシブルプリント配線板(FPC)等の可撓性配線部材に適しており優れた屈曲特性を有する圧延銅箔を提供することができる。さらには、高屈曲特性を有する圧延銅箔を安定して効率良く(すなわち、低コストで)製造する製造方法を提供することができる。
まず、本発明の規定に係わるX線回折装置・測定について簡単に説明する。X線回折(以下、XRDと表記する場合もある)装置において、θ軸は一般的に試料軸と呼ばれている。入射X線に対して、試料と検出器をθ軸で走査し、試料の走査角をθ、検出器の走査角を2θで走査する測定方法を2θ/θ測定という。2θ/θ測定による回折ピークの強度よって、多結晶体である圧延銅箔の試料面(本発明では圧延面)において、どの結晶面が優勢であるのかを評価できる。なお、銅の結晶構造は立方晶であることから、{200}Cu面と{220}Cu面のなす角度は45°である。また、{ }は等価な面を表すものとする。
以下、図を参照しながら、本発明に係る圧延銅箔の製造方法と圧延銅箔について説明する。図1は、本発明に係る圧延銅箔の製造工程の1例を示すフロー図である。
はじめに、原材料となるタフピッチ銅(JIS H3100 C1100)や無酸素銅(JIS H3100 C1020)や銅合金などのインゴット(鋳塊)を用意する(工程a)。次に、熱間圧延を行う熱間圧延工程(工程b)を行う。熱間圧延工程の後、冷間圧延を行う冷間圧延工程(工程c)と冷間圧延による加工硬化を緩和する中間焼鈍工程(工程d)とを適宜繰り返し行うことにより「生地」と呼ばれる銅条が製造される。次に、生地焼鈍工程(工程d’)が行われる。生地焼鈍工程においては、それ以前の加工歪が十分に緩和されること(例えば、略完全焼鈍)が望ましい。
その後、焼鈍した「生地」(「焼鈍生地」と称す)に対して最終冷間圧延工程(工程e、「仕上げ圧延工程」と称される場合もある)を施して、所定厚さの圧延銅箔(「仕上げ銅箔」と称す)が製造される。最終冷間圧延工程後の圧延銅箔は、必要に応じて表面処理等が施され(工程f)、FPC製造工程(工程g)に供給される。前述したように、再結晶焼鈍(工程g’)は工程gの中(例えば、CCL工程)で為されることが多い。本発明において、「最終冷間圧延工程」とは工程eを意味し、「再結晶焼鈍」工程g’とは工程gの中で為されるものを意味するものとする。
ここで、本発明に係る圧延銅箔の製造方法は、焼鈍生地の圧延面における結晶粒配向状態が、圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果で「I{200}Cu / I{220}Cu ≧10」となるX線回折ピークの強度比を有し、最終圧延中途銅箔(最終冷間圧延工程途中の圧延銅箔)および仕上げ銅箔の全ての段階における圧延面の結晶粒配向状態が、圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果で「I{200}Cu / I{220}Cu ≧1」となるX線回折ピークの強度比を有するように制御することを特徴とする。
なお、
I{200}Cu:{200}Cu面の回折ピーク強度
I{220}Cu:{220}Cu面の回折ピーク強度
である。
上述の規定から外れると(例えば、圧延面の結晶粒配向状態が、焼鈍生地で「I{200}Cu / I{220}Cu <10」になったり、最終冷間圧延工程の途中から「I{200}Cu / I{220}Cu <1」になったりすると)、再結晶焼鈍を施した後において良好な屈曲特性を有する圧延銅箔が安定して得られない。特に、仕上げ銅箔の圧延面における結晶粒配向状態は、「I{200}Cu / I{220}Cu ≧ 1.2」であることが好ましい。より好ましくは「I{200}Cu / I{220}Cu ≧2」であり、更に好ましくは「I{200}Cu / I{220}Cu ≧ 2.5」である。
(立方体集合組織の形成に関する考察)
仕上げ銅箔に再結晶焼鈍を施した圧延銅箔は、いわゆる(100)[001]方位の立方体集合組織が形成されており、該立方体集合組織が発達しているほど良好な屈曲特性を有すると言われている。しかしながら、立方体集合組織の形成メカニズムについては幾つかの説があり、未だ統一された見解は無い。
圧延加工時に対象物に掛かる応力は、対象物に対して「圧縮応力成分」と「引張応力成分」に分けて考えることができる。また、銅箔に対する冷間圧延加工において、銅箔中の銅結晶は、圧延加工時の応力により回転現象を起こし、加工の進展とともに圧延集合組織を形成する。このとき、応力方向による結晶の回転方位(圧延面に配向する方位)は、一般的に、圧縮応力の場合が{220}Cu面、引張応力の場合が{311}Cu面や{211}Cu面である。これら回転現象に伴う加工ひずみの蓄積が、再結晶時における立方体集合組織形成の駆動力になると考えられてきた。従来の圧延銅箔においては、上記の観点から、最終冷間圧延工程における総加工度を高め(例えば、93%以上)に設定し、圧縮応力を高めることで{220}Cu面配向(圧延集合組織)と加工ひずみの蓄積を高めることを意図していた。
これに対し、本発明では発明者らの詳細な調査・研究により、最終冷間圧延工程において圧延集合組織の発達を抑制して仕上げ銅箔の圧延面に{200}Cu面配向の結晶粒を積極的に残すことで、再結晶焼鈍を施した後に良好な屈曲特性を有する圧延銅箔が安定して得られることが明らかになった。このとき、圧延面に{200}Cu面配向の結晶粒が残存していても圧延面の結晶粒配向状態が「I{200}Cu / I{220}Cu <1」であると、再結晶焼鈍後に立方体集合組織の発達度合いが高まらず、良好で安定した屈曲特性が得られない。すなわち、少なくとも最終圧延中途銅箔および仕上げ銅箔の圧延面において、結晶粒配向状態を「I{200}Cu / I{220}Cu ≧1」とすることがポイントである。この新規な現象は、加工ひずみを蓄積した最終圧延中途銅箔および仕上げ銅箔中に{200}Cu面配向の結晶粒を分散して残存させることで、該結晶粒が再結晶焼鈍における立方体集合組織形成の種結晶として機能し、高配向の立方体集合組織が得られているものと考えられた。
最終圧延中途銅箔および仕上げ銅箔中に{200}Cu面配向の結晶粒を有効に残存させるためには、生地焼鈍において立方体方位の結晶粒を十分に形成・発達させておくことが望ましい。具体的には、圧延面の結晶粒配向状態が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧10」であることが望ましい。より望ましくは「I{200}Cu / I{220}Cu ≧15」であり、さらに望ましくは「I{200}Cu / I{220}Cu ≧20」である。加えて、続く最終冷間圧延工程において、それら立方体方位の結晶粒の回転現象を制御することが肝要である。
立方体方位の結晶粒の回転現象を制御する方法の1つとしては、最終冷間圧延工程における総加工度を80%以上93%未満とすることが望ましい。総加工度が80%未満では銅箔への加工ひずみの蓄積が少な過ぎて、再結晶焼鈍における立方体集合組織の発達が不十分となる。また、総加工度が93%以上では結晶粒の回転現象を抑制することが困難になり、圧延面の結晶粒配向状態が「I{200}Cu / I{220}Cu <1」となる。いずれの場合も良好で安定した屈曲特性が得られない。
さらに、最終冷間圧延工程における総加工度を93%未満とすることにより、該圧延工程の総パス数を低減することができるのに加えて、過度の加工硬化による圧延加工制御の困難性を回避でき、圧延銅箔製造の低コスト化に寄与できる。すなわち、上記のような特徴を有する本発明の製造方法によって、圧延銅箔における高屈曲特性化と低コスト化を両立することができる。
加えて、本発明に係る圧延銅箔は、最終冷間圧延工程における総加工度を80%以上93%未満としていることから、上述した立方体方位の結晶粒(結晶面の回転現象が生じていない結晶粒)の残存と併せて、銅箔への加工ひずみの蓄積が従来技術の圧延銅箔(例えば、93%以上の総加工度)に比して十分少ないと言える。これは、再結晶焼鈍時における原子再配列の駆動力が小さいことにつながり、再結晶粒の粒成長(結晶粒の粗大化)を抑制できる効果を有する。再結晶粒の過剰粒成長の抑制は、FPC製造工程で最近問題になっている「Dish Down現象」を解決できることにつながる。なお、「Dish Down現象」とは、FPC製造工程中において銅箔をハーフエッチングする際、結晶粒単位でエッチングされる傾向があるために粒径の大きい結晶粒が優先的にエッチングされ、銅箔表面がクレーター状になってしまう現象をいう。
〔他の実施の形態〕
工程aにおいて、溶解・鋳造方法に制限はなく、また、材料の寸法にも制限はない。工程b、工程cおよび工程dにおいても、特段の制限はなく、通常の方法・条件でよい。また、FPCに用いる圧延銅箔の厚みは一般的に50μm以下であり、本発明の圧延銅箔の厚みも、50μm以下であれば制限はないが、20μm以下が特に好ましい。
〔フレキシブルプリント配線板の製造〕
上記実施の形態の圧延銅箔を用いて、通常行われている製造方法により、フレキシブルプリント配線板を得ることができる。また、圧延銅箔に対する再結晶焼鈍は、通常のCCL工程で行われる熱処理でもよいし、別工程で行われてもよい。
〔実施の形態の効果〕
上記の本発明の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)優れた屈曲特性を有する圧延銅箔を安定して効率良く(すなわち、低コストで)製造することができる。
(2)優れた屈曲特性を有するフレキシブルプリント配線板(FPC)等の可撓性配線を得ることができる。
(3)フレキシブルプリント配線板(FPC)のみに留まらず、高い屈曲特性(屈曲寿命)が要求される他の導電部材(例えば、耐振動性が必要な自動車用リチウムイオン電池の負極材料など)にも適用できる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜4および比較例1〜3の作製)
はじめに、原料素材としてタフピッチ銅(酸素含有量150ppm)を作製し、厚さ200 mm、幅650 mmの鋳塊を製造した。その後、図1記載のフローにしたがって、10 mmの厚さまで熱間圧延を行った後、冷間圧延および中間焼鈍を適宜繰り返して、所定の厚さを有する生地を製造した。その後、生地に対して生地焼鈍を施し、焼鈍生地を用意した。生地焼鈍としては、600〜700℃の温度で1〜2分間保持する熱処理を行った。なお、生地焼鈍の温度は、焼鈍炉の設定温度ではなく銅箔の実態温度である。
つぎに、上記の焼鈍生地に対し、最終冷間圧延工程を行うことにより、厚さ16μmの仕上げ銅箔(実施例1〜4および比較例1〜3)を作製した。このとき、最終冷間圧延工程は総加工度が84%、92%、98.5%の3種類で行った(上記生地の所定の厚さとは、厚さ16μmの仕上げ銅箔と総加工度から逆算して定めたものである)。
(圧延銅箔に対するXRD評価)
圧延銅箔(焼鈍生地、各圧延パス毎の最終圧延中途銅箔、仕上げ銅箔)の圧延面に対するXRD評価は次のように行った。XRD測定には、X線回折装置(株式会社リガク製、型式:RAD−B)を用いた。対陰極(ターゲット)はCuを用い、管電圧および管電流はそれぞれ40 kV、30 mAとした。また、XRD測定に供する試料の大きさは、約15×約15 mm2とした。
XRD2θ/θ測定の条件は、一般的な広角ゴニオメータを用い、2θ=40〜100°の範囲で測定した。2θ/θ測定におけるスリット条件は、発散スリットが1°、受光スリットが0.15 mm、散乱スリットが1°とした。図2は、本発明に係る仕上げ銅箔に対して2θ/θ測定を行った結果の1例である。この場合、{200}Cu面の回折ピーク強度I{200}Cuを100とすると{220}Cu面の回折ピーク強度I{220}Cuは48であり、それらの強度比は「I{200}Cu / I{220}Cu ≒ 2.1」であった。
(再結晶焼鈍後の圧延銅箔の屈曲特性)
上記のようにして作製した各仕上げ銅箔(厚さ16μm)に対し、温度180℃で60分間保持する再結晶焼鈍を行った。再結晶焼鈍を施した圧延銅箔(実施例1〜4および比較例1〜3)に対する屈曲特性の評価は、次のように行った。図3は、屈曲特性評価(摺動屈曲試験)の概略を表した模式図である。摺動屈曲試験装置は信越エンジニアリング株式会社製、型式:SEK−31B2Sを用い、R=2.5 mm、振幅ストローク=10 mm、周波数=25 Hz(振幅速度=1500回/分)、試料幅=12.5 mm、試料長さ=220 mm、試料片の長手方向が圧延方向となる条件で測定した。
(各種評価結果)
表1に、各圧延銅箔(実施例1〜4および比較例1〜3)における最終冷間圧延工程の総加工度、X線回折測定結果、屈曲試験結果を示す。
Figure 2010121154
前述したように、従来は最終冷間圧延工程の総加工度をできるだけ高くすること(例えば93%以上)によって、良好な屈曲特性を目指していた。実際、比較例3において良好な屈曲特性を示している。しかしながら、圧延の総加工度が高くなると加工制御が難しくなり圧延銅箔の製造効率が低下する(すなわち高コストになる)問題がある。また、仕上げ銅箔中の加工ひずみのエネルギー蓄積が大きいことから耐熱性が低下しており(極端な場合、常温軟化する場合もある)、後工程(例えば、保管やFPC製造工程)での温度管理が非常に難しい問題もある。一方、従来の製造プロセスで最終冷間圧延工程の総加工度のみを低くした場合(比較例1〜2)、良好な屈曲特性が得られていないことが判る。
これらに対し、本発明に係る圧延銅箔(実施例1〜4)は、低い総加工度にもかかわらず良好な屈曲特性を有していることが判る。特に、実施例2,3においては、比較例3と同等以上の屈曲特性を有していることが確認された。また、実施例1の屈曲特性にあっては、最終冷間圧延工程の総加工度が84%であっても、比較例2のそれよりも十分に高い特性を示した。以上のことから、本発明に係る圧延銅箔の製造方法およびそれによる圧延銅箔は、高屈曲特性化と製造の低コスト化を両立できる優れた発明であることが実証された。
本発明に係る圧延銅箔の製造工程の1例を示すフロー図である。 本発明に係る仕上げ銅箔に対して2θ/θ測定を行った結果の1例である。 屈曲特性評価(摺動屈曲試験)の概略を表した模式図である。
符号の説明
1…銅箔、2…試料固定板、2a…ねじ、3…振動伝達部、4…発振駆動体、
R…曲率。

Claims (3)

  1. 圧延銅箔の製造方法であって、
    生地焼鈍の後で最終冷間圧延工程前の圧延銅箔において、前記圧延銅箔の圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果における銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧10」であり、
    最終冷間圧延工程途中の圧延銅箔、および最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔の全ての段階の銅箔において、前記銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧1」であることを特徴とする圧延銅箔の製造方法。
  2. 請求項1に記載の圧延銅箔の製造方法において、
    前記最終冷間圧延工程における総加工度が80%以上93%未満であることを特徴とする圧延銅箔の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の圧延銅箔の製造方法により製造された圧延銅箔であって、
    前記最終冷間圧延工程の後で再結晶焼鈍前の圧延銅箔における前記圧延面に対するX線回折2θ/θ測定により得られる結果で、銅結晶のX線回折ピークの強度比が「I{200}Cu / I{220}Cu ≧ 1.2」であることを特徴とする圧延銅箔。
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