JP3709109B2 - 張出し加工性に優れたプリント回路基板用圧延銅箔およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばフレキシブルプリント回路基板等の可撓性配線部材の用途として好適なプリント回路基板用圧延銅箔およびその製造方法に係り、特に、優れた張出し加工性を得ることができる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機物を基材としたプリント回路基板は、ガラスエポキシおよび紙フェノール基板を構成材料とする硬質銅張積層板(リジット)と、ポリミイドおよびポリエステル基板を構成材料とする可撓性銅張積層基板(フレキシブル)とに大別され、プリント回路基板の導電材としては主として銅箔が使用されている。また、銅箔はその製造方法の違いにより電解銅箔と圧延銅箔に分類される。
【0003】
上記プリント回路基板のうち、フレキシブルプリント回路基板(FPC)は、樹脂基板に銅箔をラミネートし、接着剤あるいは加熱加圧により一体化して形成される。近年では、高密度実装の有効な手段としてビルドアップ基板と呼ばれる多層回路基板が多く用いられている。このFPCの構成部材となる銅箔には、主に圧延銅箔が用いられている。
【0004】
FPCは、プリンターのヘッド部やハードディスク内の駆動部等の可動部分への配線が必要とされる場所に広く使用され、100万回以上の屈曲が繰り返される。そこで、FPC用の銅箔には電解銅箔よりも屈曲性が優れる圧延銅箔が用いられることが多い。
【0005】
FPCに使用される銅箔の素材には、タフピッチ銅(酸素含有量100〜500重量ppm)または無酸素銅(酸素含有量10重量ppm以下)が用いられ、これらのインゴットを熱間圧延した後、所定の厚さまで冷間圧延と焼鈍とを繰り返して製造される。その後、樹脂基板との接着性を向上させるため、圧延銅箔には表面に粗化めっきが施される。粗化めっき後の銅箔は、裁断された後、樹脂基板と貼り合わされる。銅箔と樹脂との貼り合わせには、例えばエポキシ等の熱硬化性樹脂からなる接着剤が用いられ、張り合わせ後130〜170℃の温度で数時間〜数十時間加熱して硬化させられる。次に、銅箔をエッチングして種々の回路パターンが形成される。
【0006】
銅箔の屈曲性は、再結晶焼鈍を行うことにより圧延したままのものよりも著しく向上する。このため、銅箔は、焼鈍状態でFPCの構成部材として使用されるが、この焼鈍は粗化めっきして裁断した後に加熱処理を行うか、樹脂基板と接着する際の加熱で兼ねる。こうして銅箔は、再結晶組織に調質された状態で、FPCの構成部材として使用される。
【0007】
一方、FPCに組み込まれた銅箔には、コネクターとの電気接点部においてコネクターとの接触圧を得るために直径が数100μmの球頭形の張出し加工(ディンプル加工と呼ばれることもある)が行われることがある。そこで、FPC用の銅箔には、上述した屈曲性以外に、張出し加工性等も求められる。
【0008】
【発明で解決しようとする課題】
近年の電子機器の小型・軽量化により、FPCにおける回路の集積度が増し、回路のピッチ幅はますます微細化している。これに伴い、その素材となる圧延銅箔の特性信頼性に対する要求が急激に高まっており、張出し加工性は銅箔に要求される主要な特性の一つである。
よって、本発明は、従来の圧延銅箔の張出し加工性を改善し、回路の集積度に充分に対応することができるプリント回路基板用圧延銅箔およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を改善するための手段】
純銅を再結晶焼鈍すると立方体集合組織((100)面、[001]方向)が発達することが知られている。この立方体集合組織は銅の機械的特性に様々な影響を及ぼす。例えば、低歪み/高サイクルの疲労特性(疲労寿命が104回以上)は、立方体集合組織が発達するほど向上する。この観点から、特願平10−101858等では、立方体集合組織を発達させ銅箔の屈曲性を高めることを提唱している。
【0010】
一方、銅箔の高歪み/低サイクルの疲労特性(疲労寿命が104回以下)は、立方体集合組織が発達するほど低下するといわれている(江口、藤田、宮武、千種、徳永、佐藤、稲田:古河電工時報、No.86 (1990)、pp.25−31)。また、銅箔の引張り強さと伸びについても、立方体集合組織が発達すると低下するといわれている(特開平9−53162)。
【0011】
本発明者等は、最終圧延加工度および最終圧延前の結晶粒径を変えることにより、立方体集合組織の発達度を種々に変化させ銅箔試料を作製し、その張出し加工性を評価した。その結果、立方体集合組織の発達度を適度な範囲に調整することにより、所望の張出し加工性が得られるという知見を得た。適度な立方体集合組織の発達度とは、焼鈍を行ってFPCとして使用されるときの再結晶組織に調質した状態において、圧延面のX線回折で求めた(200)面の積分強度(I)が、微粉末銅のX線回折で求めた(200)面の積分強度(I0)に対し、I/I0<20の関係で示された。
【0012】
なお、特願平10−101858で述べられているように、I/I0が20より小さくなると焼鈍後の圧延銅箔の屈曲性は低下するが、銅箔の厚みを小さくすることでこの屈曲性の低下を補償することができた。これは、銅箔の厚みを小さくすると屈曲の際に曲げ部の外周に生じる歪みが小さくなり、屈曲寿命が著しく長くなるためである。たとえば、I/I0が20を下回る厚さ18μmの圧延銅箔は、I/I0が50を超える厚さ35μmの銅箔よりも長い屈曲寿命を有していた。
【0013】
また、タフピッチ銅は100〜500重量ppmの範囲で酸素を含有するほか、10〜100重量ppmの範囲で酸素以外の不可避的不純物を含有する。また、無酸素銅の酸素量は10重量ppm以下であるが、10〜100重量ppmの酸素以外の不可避的不純物を含有する。これら銅以外の元素の一部は、銅中で介在物(晶出物、析出物)を形成し、この介在物のうち直径が5μm以上と大きなものは張出し加工の際にクラックの起点として作用し、張出し加工性を低下させる。そこで、所望の張出し加工性を得るためには、この介在物個数を所定のレベル以下に規制する必要がある。
【0014】
次に、本発明者等の検討によれば、張出し加工性の良好な圧延銅箔を製造するためには、最終の冷間圧延を、圧延前の結晶粒径と圧延加工度が図1の斜線で示した領域となる条件で行えば良いことが判明した。斜線の領域とは、加工度と結晶粒径がそれぞれA(90%、60μm)、B(60%、30μm)、C(60%、5μm)、D(75%、5μm)およびE(90%、20μm)の5点を直線で結んだ範囲の内側である。
【0015】
本発明に関わる圧延銅箔は軟質化した状態でFPCの構成部材として用いる。そこで、本発明の銅箔の素材には、軟化温度がそれほど高くない通常のタフピッチ銅(酸素濃度100〜500重量ppm)または無酸素銅(酸素濃度10重量ppm以下)が好適に用いられる。これに対して、多量の合金元素を含有し高温で焼鈍しないと軟質化しないような銅合金は素材として適当ではない。ただし、以下の銅合金は本発明に好適である。
【0016】
▲1▼常温保管時の軟化を防止するため、微量のAg等を添加して軟化温度を適度な範囲に調整したタフピッチ銅(特願平11−9437)。
▲2▼軟化温度を低下させることを目的とし、少量の合金元素を添加した無酸素銅(特許第1582981号、特開昭60−17040、特公昭62−47936、特許第1849316号、特開昭63−140052、特開昭63−45339、特開平1−319640、特許第2737954号)。
▲3▼不純物量を調整することにより軟化温度を適度な範囲に調整した無酸素銅(特開平1−319641、特開平1−11932、特願平11−9332)。
【0017】
本発明のプリント回路基板用圧延銅箔は以上の知見に基づいてなされたもので、酸素を100〜500重量ppm含有するタフピッチ銅または酸素濃度が10重量ppm以下の無酸素銅から製造され、焼鈍を行って再結晶組織にした後の圧延面のX線回折で求めた(200)面の強度(I)が、微粉末銅のX線回折で求めた(200)面の強度(I0)に対し、 I/I0<20であり、さらに上記再結晶焼鈍を行ったときに発現する組織が混粒組織を含まない再結晶組織であり、圧延面と平行な断面において直径5μm以上の介在物が10個/mm 2 以下であり、厚さが20μm以下であることを特徴としている。
【0018】
プリント回路基板用圧延銅箔は、酸素を100〜500重量ppm含有するタフピッチ銅または酸素濃度が10重量ppm以下の無酸素銅であり、圧延面と平行な断面において直径5μm以上の介在物が10個/mm2以下である必要がある。さらに、屈曲寿命を向上させるために、プリント回路基板用圧延銅箔の厚さは20μm以下である必要がある。
【0019】
次に、本発明のプリント回路基板用圧延銅箔の製造方法は、タフピッチ銅または無酸素銅のインゴットを、熱間圧延した後に冷間圧延と焼鈍とを繰り返し、最後に冷間圧延で銅箔に仕上げる製造プロセスにおいて、最終の冷間圧延を圧延前の結晶粒径と圧延加工度が図1の斜線で示した領域となる条件下で行うことを特徴としている。
【0020】
以下、本発明のプリント回路基板用圧延銅箔に関する数値限定の理由を説明する。
焼鈍を行って再結晶組織にした後の圧延面のX線回折で求めた(200)面の積分強度をI/I0<20と規定した理由は、立方体集合組織の発達度(I/I0)が、20より小さい場合に満足できる張出し加工性が得られるためである。
【0021】
銅箔中の直径5μm以上の介在物個数を10個/mm2以下に規制した理由は、直径5μm以上の介在物が張出し加工の際のクラックの起点として作用し、この個数が10個/mm2を超えると張出し加工性の低下が著しくなるためである。なお、介在物の直径は、介在物の形が楕円状、棒状、線状などの場合には、図2に示すように、銅箔の圧延面と平行な断面(厚さ方向と直交する断面)で観察される介在物の短軸L1と長軸L2の平均値とした。
【0022】
厚さが20μm以下に規定した理由は、銅箔の厚みを小さくすると屈曲性が向上するためであり、立方体集合組織の発達を抑制して張出し加工性を高めた銅箔を、とくに屈曲性が要求される用途に用いる場合に有効である。
【0023】
銅箔を製造する際の最終圧延での圧延前の結晶粒径および圧延加工度を、図1の斜線の領域に規定した理由は、優れた張出し加工性を得るためである。最終冷間圧延の条件が、図1の点AとEを結ぶ直線より右方、または点C、DおよびEを結ぶ直線より下方に外れると、(200)面のI/I0値が20を超え張出し加工性が低下する。また、点BとCを結ぶ直線より左方、または点AとBを結ぶ直線より上方に条件が外れると、再結晶焼鈍後の組織が混粒(大きな結晶粒と小さな結晶粒が混在する状態)になり、張出し加工性が低下する。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明する。
厚さ200 mm、幅600 mmのタフピッチ銅(酸素含有量:200重量ppm)および無酸素銅(酸素含有量:2重量ppm)のインゴットを製造し、熱間圧延により厚さ10mmまで圧延した。次に、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、厚さt0mmの圧延上がりの板を得た。この板を焼鈍して再結晶させ、酸化スケールを除去した後、所定の厚みtmmまで冷間圧延した。ここで、最後の冷間圧延での加工度はdは、下記[数1]で与えられる。
【数1】
d=(t0−t)/t0×100(%)
【0025】
また、圧延前の結晶粒径(その直前の焼鈍における焼鈍後の結晶粒径)を、圧延方向に直角な断面において切断法(JISH0501)で測定した。
このように種々の中間焼鈍条件および最終圧延加工度で製造した銅箔試料について以下の特性を評価した。
【0026】
なお、最終圧延後の銅箔を再結晶させるための焼鈍は、試料を半軟化温度より70℃高い温度で30分間加熱することによって実施した。ここで、半軟化温度とは、焼鈍後の引張り強さが、圧延上がりの引張り強さと完全に軟化した後の引張り強さとの中間の値になるときの焼鈍温度であり、焼鈍時間を30分間としてこの温度を最初に測定した。
【0027】
(1)立方体集合組織の発達度
上記条件で試料を再結晶焼鈍した後、X線回折により圧延面における(200)面の積分強度(I)を求めた。この値を予め測定しておいた微粉末銅の(200)面の積分強度(I0)で割り、I/I0の値を計算した。なお、ピーク強度の積分値の測定は、Co管球を用い、2θ=57〜63゜(θは回折角度)の範囲で行った。
【0028】
(2)介在物の観察
上記条件で試料を再結晶焼鈍した後、圧延面を機械研磨して鏡面に仕上げた。その後、走査型電子顕微鏡を用いて、圧延面の二次電子像を写真撮影し、写真上で直径が5μm以上の介在物の個数を計測した。なお、介在物の直径は図2に示す方法で測定した。
【0029】
(3)張出し加工性
上記条件で試料を再結晶焼鈍した後、図3に示す先端が半球形(球の直径は0.5mm)のポンチおよび直径が0.6mmの円筒形の孔を有するダイスから構成される金型を用いて、銅箔試料に張出し加工を施した。ポンチのダイスへの挿入深さは、スペーサーの厚さを変えることによって、0.01mmずつ変化させた。ポンチの挿入速度は5mm/分とし、500kgの荷重で圧下した。この場合において、銅箔試料への潤滑剤の塗布は行わなかった。加工後の銅箔について、球頭部での割れの有無を実体顕微鏡を用いて倍率20倍で観察した。それぞれの挿入深さについて20個の銅箔試料の加工と割れの観察を行い、割れが発生する確率が50%を超えるときの挿入深さを求めた。この挿入深さが0.18mm以上であれば、良好な張出し加工性を有していると判断される。
【0030】
(4)引張り試験
上記条件で試料を再結晶焼鈍した後、IPC規格に準じて引張り速度50mm/minで引張り試験を行い、引張り強さと伸びを求めた。試験片は、幅12.7mm、長さ150mm、とし、試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取した。測定は同じ材料について2回行い、その平均値を求めた。
【0031】
(5)低歪/高サイクルの屈曲性
上記条件で試料を再結晶焼鈍した後、図4に示す装置により、屈曲疲労寿命の測定を行った。この装置は、発振駆動体4に振動伝達部材3を結合した構造になっており、銅箔試料1は、ねじ2の部分と振動伝達部材3の先端部の計4点(図中矢印で示す)で装置に固定される。振動伝達部材3が上下に駆動すると、銅箔試料1の中間部は、所定の曲率半径rを保持したまま屈曲される。本試験では、以下の条件下で屈曲を繰り返した時の破断までの回数を求めた。測定は同じ材料について5回行い、その平均値を求めた。
[試験条件]
試験片幅12.7mm、試験片長さ:200mm、
試験片採取方向:試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取、
曲率半径r:2.5mm、振動ストローク:25mm、
振動速度:1500回/分
【0032】
(6)高歪/低サイクルの屈曲性
上記条件で試料を再結晶焼鈍した後、図5に示す装置により、JIS規格−C5016に準じて屈曲疲労寿命の測定を行った。この装置はMIT耐折試験機と呼ばれるものであり、銅箔試料を固定している治具が135°の角度で左右に回転を繰り返すことにより、試料表面に引張りと圧縮の歪が繰り返し加えられる。治具の先端の曲率半径は0.38mmであり、試料は2.5Nの応力で上方に引張られている。試験片は幅12.7mm、長さ100mmの短冊形状とし、試験片の長さ方向が圧延方向と平行になるように採取した。測定は同じ材料について5回行い、その平均値を求めた。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に、評価した試料の加工履歴、介在物個数、組織および屈曲性を示す。I/I 0 <20を満足するNo.1〜26の圧延銅箔では、割れ発生率が50%を超えるときのポンチ挿入深さが、目標とした0.18mm以上である。一方、比較例として示したNo.27〜31は図1の点AとEを結ぶ直線より右方、または点C、DおよびEを結ぶ直線より下方に外れる条件で製造されたため、(200)面のI/I0が20を超え、ポンチ挿入深さが0.18mmに満たない。No.32、33は、点BとCを結ぶ直線より左方、または点AとBを結ぶ直線より上方の条件で製造されたため、(200)面のI/I0は20未満であるものの、焼鈍組織が混粒組織となり、ポンチ挿入深さが0.18 mmに満たない。No.34、35は規定の条件で製造されたものであるが、直径5μm以上の介在物個数が10個/mm2を超えているため、ポンチ挿入深さが0.18mmに満たない。図6に、割れ発生率が50%を超えるときのポンチ挿入深さを(200)面のI/I0との関係で示した。図6より、I/I0値が小さくなる程張り出し加工性が向上することがわかる。また、本発明の目的をより確実に達成するには、焼鈍組織が混粒組織ではなく、および/または直径5μm以上の介在物個数が10個/mm2以下という条件を満たすことが好ましいことが確認された。
【0035】
次に、表1の33μm銅箔の屈曲寿命のデータを、(200)面のI/I0との関係で整理し、図7に示した。図7から明らかなように、(200)面のI/I0を低くすると、高歪の条件下での疲労寿命は増加するが、低歪の条件下での疲労寿命が低下することがわかる。ところが、表1のNo.1とNo.21〜23、No.10とNo.24、さらにNo.16とNo.25〜26を比較すると明らかなように、銅箔の厚さを薄くすることで、I/I0の低下に伴う低歪条件下の疲労寿命の減少を補うことができる。
【0036】
図8に、33μm銅箔について(200)面のI/I0値と引張り特性との関係を示す。(200)面のI/I0が低くなると、引張り強さ、伸びともに高くなっている。また、図8には、混粒組織となったNo.32,33のデータおよび直径5μm以上の介在物個数が10個を超えたNo.34,35のデータもプロットしているが、これらには引張り特性に対する介在物および混粒組織の影響は認められない。
一方、張出し加工性については(200)面のI/I0値の影響が認められ、さらに、介在物および混粒組織の影響も顕著に認められた(図6参照)。このように、張出し加工性と引張り特性では、介在物と混粒組織の影響の有無が異なる。したがって、張出し加工性は引張り特性だけで決定される特性ではないと言える。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したとおり本発明では優れた張出し加工性を有し、フレキシブルプリント回路基板等の可撓性配線部材として最適な圧延銅箔およびその有効な製造方法を提供することができる。この圧延銅箔は、張出し加工性が優れるだけではなく、高歪/低サイクルの疲労特性にも優れ、また高い引張り強さと伸びを有している。この銅箔は、リチウムイオン電池の電極などのフレキシブルプリント回路以外の用途にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における最終圧延加工度と圧延前の結晶粒径との関係を示す線図である。
【図2】 (a),(b),(c)は介在物の直径の定義を説明するための銅箔の圧延面と平行な断面図である。
【図3】 張出し加工性を試験するための金型を示す断面図であって、(a)は加工前、(b)は加工後の状態を示す図である。
【図4】 低歪/高サイクルの屈曲試験を行う装置の側面図である。
【図5】 高歪/低サイクルの屈曲試験を行う装置の側面図である。
【図6】 (200)面におけるX線強度とポンチの挿入深さとの関係を示す線図である。
【図7】 立方体集合組織の発達度が屈曲特性に及ぼす影響を示すもので、(200)面におけるX線強度と屈曲寿命との関係を示す線図である。
【図8】 立方体集合組織の発達度が引張り特性に及ぼす影響を示すもので、(200)面におけるX線強度と引張り強さとの関係を示す線図である。
Claims (2)
- 酸素を100〜500重量ppm含有するタフピッチ銅または酸素濃度が10重量ppm以下の無酸素銅から製造され、焼鈍を行って再結晶組織にした後の圧延面のX線回折で求めた(200)面の強度(I)が、微粉末銅のX線回折で求めた(200)面の強度(I0)に対し、 I/I0<20であり、さらに上記再結晶焼鈍を行ったときに発現する組織が混粒組織を含まない再結晶組織であり、圧延面と平行な断面において直径5μm以上の介在物が10個/mm 2 以下であり、厚さが20μm以下であることを特徴とする張出し加工性に優れたプリント回路基板用圧延銅箔。
- タフピッチ銅または無酸素銅のインゴットを熱間圧延した後に冷間圧延と焼鈍とを繰り返し、最後に冷間圧延で銅箔に仕上げるプリント回路基板用圧延銅箔の製造方法において、最終の冷間圧延を、圧延前の結晶粒径と圧延加工度が図1の斜線で示した領域となる条件下で行うことを特徴とする張出し加工性に優れたプリント回路基板用圧延銅箔の製造方法。
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