以下に、本発明の実施の形態の第一例の有機EL発光装置を図面を参照して説明する。図1(A)、図1(B)及び図1(C)は、第一例の有機EL発光装置の基本概念を説明するために、有機EL発光装置の最低限の構成要素を図示したものである。なお、図1(B)は図1(A)のA−A’線断面図であり、図1(C)は、図1(A)のB−B’線断面図である。
図1(A)、(B)、(C)に示すように、第一例の有機EL発光装置は、透明基板1(例えば、ガラス基板)上に、ストライプ状(帯状で互いにほぼ平行)に三本のITO(透明電極)からなるアノード2…及びアノード2…と電気的に離間してかつアノード2…と同じ材料でなるカソード端子6が形成され、透明基板1上及びアノード2…上に、アノード2の中央が開口されている開口部8aを備えた絶縁材料からなる隔壁レジスト8が形成されている。このアノード2…に沿った開口部8aにより露出されたアノード2…上にストライプ状の有機EL発光領域5r、5g、5bが形成され、それらの上隔壁レジスト8上、並びに周縁の透明基板1上に、周知の低仕事関数の材料を有する背面電極である一つのカソード4が、それぞれの段差に応じて堆積されている。そして、一つのアノード2と該アノード2に重なる一つの有機EL発光層(3r、3g、3b)と、カソード4のうちの一つの上記有機EL発光層(3r、3g、3b)と重なる部分とから一つの有機EL素子として機能する一つの有機EL発光領域(5r、5g、5b)が形成されている。これにより、図1(A)に示される有機EL発光装置には、ストライプ状に、三本の有機EL発光領域5r、5g、5bが形成されている。なお、図1(A)においては、有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4及び後述する導電性ペースト層7を、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示している。
上記アノード2…は、その一方の端部が有機EL発光層3r、3g、3bの一方の端部側よりさらに先に延出した状態に形成され、有機EL発光層3r、3g、3bと重なっていないアノード2…の一方の端部が、各有機EL発光領域5r、5g、5bのアノード端子2a…となっている。上記有機EL発光層3r、3g、3bは、例えば、上述のようにアノード側から正孔輸送層、発光層、電子輸送層の三層からなるものである。
なお、第一例においては、有機EL発光層3r、3g、3bを形成するに当たって、蒸着によりパターニングした状態で有機EL発光層3r、3g、3bを形成するのではなく、湿式塗布により有機EL発光層3r、3g、3bを形成するものとしている。そして、有機EL発光層3r、3g、3b中の発光層に使用される発光材料としては、低分子系と高分子系とがあり、湿式塗布により有機EL発光層3r、3g、3bを形成する上では、例えば、発光層の材料として高分子系材料が用いられることになる。
そして、上記高分子系材料としては、ポリカルバゾール、ポリパラフェニレン、ポリアリーレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピリジンビニレン、ポリピロールが挙げられる。また、高分子材料としては、上記高分子材料(ポリマー)を形成しているモノマーまたはオリゴマーの重合体や共重合体、或いはモノマーまたはオリゴマーの誘導物の重合体及び共重合体と、オキサゾール(オキサンジアゾール、トリアゾール、ジアゾール)又はトリフェニルアミン骨格を有するモノマーを重合した重合体及び共重合体を挙げることができる。また、これらポリマーのモノマーとしては、熱、圧、UV、電子線などを与える事で上述の化合物を形成しるモノマー及びプレカーサポリマーを含むものである。また、これらモノマー間を結合する非共役系ユニットを導入しても構わない。
高分子材料の具体的な商品としては、ポリピニルカルバゾール:東京化成、ポリトデシルチオフェン:Rieke社、ポリエチレンジオキシチオフェン、PSS(ポリスチレンスルフォン酸)分散体変性物 cpp105:長瀬産業、ポリ9,9−ジアルキルフルオレン、ポリ(チエニレン−9,9−ジアルキルフルオレン)、ポリ(2,5−ジアルキルパラフェニレン−チエニレン)、(ジアルキル:R=C1〜C20):DOWケミカル社、PPV;ポリパラフェニレンビニレン、MEH−PPV;ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−パラフェニレンビニレン)、MMP−PPV;ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル−ペンチロキシ)−パラフェニレンビニレン)、PDMPV ポリ(2,5−ジメチル−パラフェニレンビニレン)、PTV;ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、PDMOPV;ポリ(2,5−ジメトキシパラフェニレンビニレン)、CN−PPV;ポリ(1,4−パラフェニレンシアノビニレン):CDT社などが挙げられる。
また、湿式塗布可能な発光層の材料は、高分子系材料に限られるものではなく、低分子材料をポリマー分散して用いるものとしても良い。また、低分子材料の性質によっては、低分子材料を溶媒に溶かした状態で湿式塗布して使用するものとしても良い。そして、低分子材料をポリマー分散する際のポリマーとしては、周知の汎用ポリマーを含む各種ポリマーを状況に応じて使用することができる。そして、低分子の発光材料(発光物質またはドーパント)としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキゾリン、ビススチリル、ピラジン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物等、4−ジシアノメチレン−4H−ピラン及び4−ジシアノメチレン−4H−チオピラン、ジケトン、クロリン系化合物やこれらの誘導体が挙げられる。
そして、低分子の発光材料となる具体的商品としては、Alq3、キナクリドン:同仁化学研究所、Almq3(Alキノリノール錯体の誘導体):ケミプロ化成クマリン6、DCM:アクロス社、ルモゲンF:山本通商などが挙げられる。なお、発光材料は、上述のものに限定されるものではなく、塗布により有機EL発光層3r、3g、3bを形成することが可能な材料ならば良い。
隔壁レジスト8は、各有機EL発光層3r、3g、3bのいずれかの厚さとアノード2…の厚さと和より厚いために生じる段差により上記カソード4は、各有機EL発光層3r、3g、3b上に面状に形成されるとともに互いに分離されているが、導電性ペースト層7により互いに接続されているため、実質的に同電位になっている。
そして、第一例の有機EL発光装置においては、透明基板1上の有機EL発光層3r、3g、3bの他方の端部側で、かつ、該有機EL発光層3r、3g、3b及びアノード2…から離間した位置にカソード端子6が形成され、導電性ペースト層7と接続されている。カソード端子6は外部回路と接続され、所定の電圧が供給されている。
導電性ペースト層7は、隔壁レジスト8の厚さより十分厚いため、全ての有機EL発光層3r、3g、3bの他方の端部の部分(隔壁レジスト8の開口部8a…の部分)と重なるとともにカソード端子6の一部と重なるように形成されている。なお、導電性ペースト層7は、周知の銀等の導電性ペーストをコーティングして形成されたものである。
なお、第一例においては、有機EL発光層3r、3g、3bの導電性ペースト層7と重なる他方の端部の下にアノード2…が形成されていない状態となっている。これは、導電性ペースト層7をコーティングする際に、その圧力により、有機EL発光層3r、3g、3bを挟んで対向配置されるアノード2…とカソード4とが短絡する可能性が僅かでもあるのを考慮したものであり、歩留まりの向上を図るために、導電性ペースト層7が形成される部分に、アノード2…を設けないものとしたものである。
そして、上記第一例の有機EL発光装置においては、上記有機EL発光層3r、3g、3bを湿式塗布によりパターニング形成する際に用いられる隔壁レジスト8が設けられている。該隔壁レジスト8は、ここでは、ITOからなるアノード2…及びカソード端子6が形成された透明基板1上に形成されるものであり、全ての有機EL発光層3r、3g、3bが配置される部分より広い範囲に渡って形成され、この隔壁レジスト8が形成された範囲内に全ての有機EL発光層3r、3g、3bが形成されるようになっている。そして、隔壁レジスト8には、各有機EL発光層3r、3g、3bが形成される部分に開口部8a…が複数、ストライプ状に形成され、該開口部8a…からアノード2が露出した状態となっている。また、図1(B)に示す隔壁レジスト8は、その厚みL1が例えば、0.015mm(好ましくは、0.005mm以上)とされている。
そして、隔壁レジスト8は、例えば、周知の感光性樹脂からなり、フォトリソグラフィーによりパターニングされたものである。そして、透明基板1上に上述のように開口部8a…を有する隔壁レジスト8を形成することにより、上記開口部8a…の部分が透明基板1上面(実際にはアノード2…上面)を底部とする溝状となる。この部分に、例えば、汎用の高精度ディスペンサにより液状の有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入するようになっている。すなわち、ディスペンサのニードル(針)の先端を各開口部8a…の位置に配置して開口部8a…内に液状の材料を注入する。注入時の有機EL発光層3r、3g、3bの材料の状態は、それ自体が溶融していても、溶剤に渡海した状態でも、溶媒内で均一に分散された状態であってもよい。そして、このときに既に重合されていても、重合が開始されていても、重合がまだ開始されていない状態でもよい。注入された有機EL発光層3r、3g、3bの材料は、後に硬化して有機EL発光層3r、3g、3bとなるが、その際にその厚さが硬化前に比べ薄くなる傾向がある。隔壁レジスト8は、十分に有機EL発光層3r、3g、3bが発光できる程度の厚さになるように開口部8a…内に液状の有機EL発光層3r、3g、3bの材料が注入されても開口部8a…の上からこぼれない程度の厚さに設定して成膜されている。また、各有機EL発光層3r、3g、3bが複数のキャリア輸送層で構成されている場合、例えば、全開口部8a…に最初にホール輸送層となる同じポリマー系材料を注入する。ディスペンサのニードルから注入されたポリマー系材料は、毛細管現象により隔壁レジスト8の開口部8aに沿って進み均一な厚さに堆積される。通常インクジェット法で有機EL材料を吐出してマトリクス状に複数の発光画素を形成した場合、有機EL材料がそれほど拡がらないため、有機ELの発光最小ピッチは吐出した有機EL材料の量が小さいほど短くなるが、最小吐出量が多いと発光最小ピッチが長くなり、高精細なピッチの発光領域が形成できないが、このように、ニードルから注入されるポリマー系材料をより開口部8aに囲まれた細長いスリット内に吐出すると、開口部8aに沿って延びるので吐出量に対し最小発光ピッチをより短くし、均一な厚さにできるとともに、そのピッチを容易に一定にすることができる。次いで、ホール輸送層が硬化した後に、同様に赤に発光する有機EL発光層3rが形成される開口部8a…と、緑に発光する有機EL発光層3bが形成される開口部8a…と、青に発光する有機EL発光層3gが形成される開口部8a…とに、それぞれ、発光色に対応する異なる発光層のポリマー系材料(湿式塗布可能ならば低分子材料でも可)を注入し、各開口部8内にそれぞれ均一な厚さに堆積される。そして、再び、発光層が硬化した後に、全開口部8a…に電子輸送層となるポリマー系材料を注入して硬化させ、有機EL発光層3r、3g、3bを形成するようになっている。
上述のようにすることで、蒸着や、印刷方式等を用いてストライプ状の有機EL発光層3r、3g、3bをパターニング形成した場合に比較して、より細かいパターニングが可能となり(隔壁レジスト8のフォトリソグラフィーにおけるパターニングの精度に基づく)、各帯状の有機EL発光層3r、3g、3b同士の間隔(ピッチ)を短いものとすることができる。なお、有機EL発光層3r、3g、3bのピッチを短いものとすることにより、各有機EL発光層3r、3g、3bの光を混色する場合に、後述するようにより短い距離で混色することが可能となり、有機EL発光装置の厚みを極めて薄いものとすることが可能となる。なお、隔壁レジスト8の各開口部8a…毎にディスペンサーにより有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入する際には、ディスペンサによる最小吐出精度が数μlのオーダーとなり、十分に汎用の高精度ディスペンサーによる塗布量制御が可能である。
また、上述のように隔壁レジスト8を使用するものとした場合に、隔壁レジスト8上に蓋となる板体を例えば取り付けた状態もしくは押し付けた状態とするとともに、該板体等に注入口及び排出口を形成してもよい。そして、隔壁レジスト8の開口部8a…が透明基板1と板体とにより上下の開口を閉塞された状態となることにより、開口部8a…を管の内部状とし、注入口から開口部8a…に有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入するものとしても良い。このようにすれば、毛細管現象により容易に開口部8a…内に有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入することができる。
そして、図1に示される有機EL発光装置の製造方法は、上述のように、透明基板1上にITOによりアノード2…及びカソード端子6をフォトリソグラフィーにより短いピッチでパターン形成し、次いで、隔壁レジスト8を形成後、透明基板1上に有機EL発光層3r、3g、3bを隔壁レジスト8の開口部8a内に形成し、次いで、カソード4を例えば、蒸着成膜するものである。そして、隔壁レジスト8の、開口部8a…に、有機EL発光層3r、3g、3bの材料を毛管注入する(開口部8a…は、溝状であるが、溝を形成する左右の壁の間には、毛細管現象が作用する)。また、有機EL発光層3r、3g、3bの注入に際しては、その層別に行なう。例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順で、材料の注入、乾燥(硬化)を繰り返し行なう。また、隔壁レジスト8を設けた場合には、後述するようにカソード4が開口部8a…毎に独立した(絶縁された)状態となるので、導電性ペースト層7により各開口部8a…内のカソード4同士とカソード端子6とをそれぞれ短絡する。また、上述の各種の有機EL発光層3r、3g、3bの形成方法は、後述する第二例以下の有機EL発光装置や有機EL表示装置にも適用することができる。
そして、図1は、第一例の有機EL発光装置の構成の説明を容易とするために構成を簡略化して図示したものであり、実際には、図1に示されるように、それぞれ異なる色に発光する三本の有機EL発光領域5r、5g、5bを一組とし、この一組の有機EL発光領域5r、5g、5bが、図2に示されるように、この順で多数ストライプ状に配置されたものである。なお、図2は、例えば、3.8インチLCD用バックライトとして用いられる有機EL発光装置の発光面Aを示すものであり、ストライプ状に多数配置された各線の部分が、一組の有機EL発光領域5r、5g、5bを示すようになっている。そして、より具体的に説明すれば、発光面のサイズは、例えば、横方向の幅が82.4mmとされ、縦方向の幅が63.2mmとされている。そして、RGB一組となる三つの有機EL発光領域5r、5g、5bが、274組、ストライプ状に配置されている(有機EL発光領域5r、5g、5bを822本ストライプ状に配置)。
そして、RGBの三色に発光する三つの有機EL発光領域5r、5g、5bからなる一つの帯の幅が0.3mm程度とされている。そして、図1(B)に示すように、各有機EL発光領域5r、5g、5bのピッチL2が0.1mm程度とされている。なお、各有機EL発光層3r、3g、3bの幅L3が0.06mm程度とされ、各有機EL発光層3r、3g、3b同士の間隔L4(隔壁レジストの隔壁の幅)が0.04mm程度とされる。また、隔壁レジスト8の開口部8a…のピッチも0.1mm程度とされることになる。また、アノード2のピッチも0.1mm程度とされ、アノード2の幅L5が0.08mm程度とされ、アノード同士の間の間隔L6が0.02mm程度とされる。なお、これらのサイズは、本発明を限定するものではなく、例えば、透明基板1の厚みを0.3mmとした場合に、後述するように、透明基板1の表面(有機EL発光領域5r、5g、5bが形成された面の反対の面)において、各色の有機EL発光領域5r、5g、5bから発光した色が十分に混色するサイズの一例である。
ここで、背面側に有機EL発光領域5r、5g、5bが形成されたガラス基板(透明基板1)内での各色の有機EL発光領域5r、5g、5bから各色の発光の混色について説明する。図3は、反射板として作用するカソード4と発光体である有機EL発光層3(3r、3g、3b)と、該有機EL発光層3からの光が透過する透明電極であるアノード2と、同じく有機EL発光層3からの光が透過する透明基板1とからなる有機EL発光装置において、光の道筋を矢印で示したものである。なお、有機EL発光層3から発光した光は、一部が直接透明基板1側に向かい、一部がカソードに反射してから透明基板1側に向かうことになる。また、図3においては、有機EL発光層3が完全拡散発光することを想定して、光の道筋を矢印で示している。
そして、図3に示されるように、透明基板の表面の法線方向に対して角度の小さな光は、有機EL発光層3、アノード2、透明基板1を通って気中に放射される。また、上記法線方向に対して角度の大きな光は、前面射出せずに、有機EL発光層3とアノード2の境界面、アノード2と透明基板1との境界面、透明基板1と外気との境界面で反射されてしまう。そして、反射された光は、各層内で反射を繰り返すか、前層に戻るかすることになるが、最終的に反射された光のほとんどは、各層の端面から射出されるか、各層において吸収されてしまうことになる。
従って、法線に対して特定の角度の光だけが最終的に射出されることなるが、ここで、各層の屈折率を、有機EL発光層3が1.60、アノード2が2.00、透明基板1.45、外気が1.0008とした場合に、透明基板内での法線に対する角度が、例えば、38.7度以下(全反射臨界角度)の光が前面放射されることになる。そして、法線方向に対してそれより広い角度を有する光は、無視することができる。従って、有機EL発光装置において、透明基板1内で十分に有機EL発光領域5r、5g、5bからの各発光色を混色させるためには、全反射臨界角度以内の各発色光が透明基板1内で重なるようにする必要がある。
図4は、上述の厚み(0.3mm)有する透明基板1を用い、上述の幅(0.06mm)を有する各有機EL発光層3を上述のピッチ(0.1mm)で配置した場合の、透明基板1内での各発光色の重なりを示したものである。そして、図4においては、透明基板1内において、上述のように法線方向に対して38,7度以内の光、すなわち、上述の条件で各有機EL発光領域の透明基板の前面から放射される光r、g、bだけを扇状に図示しており、各発光色が混色していることが示されている。なお、透明基板1の厚みは上述の厚みに限定されるものではなく、各層の屈折率もその組成や材質の違いにより変化する可能性があるとともに、透明基板1が外気と接しない可能性もあり、各有機EL発光層3r、3g、3bの幅やピッチは、透明基板1の厚み、各層の屈折率等の値に対応して決められる必要がある。また、図4においては、アノード2…の図示を省略している。
そして、第一例の有機EL発光装置によれば、RGB三原色を混色させて白色の発光を行なうことができる。また、この際に、各有機EL発光領域5r、5g、5bにおいては、複数の発光材料を混在させたり、積層させたりする必要がないので、低消費電力で高い輝度を実現することができる。また、各有機EL発光領域5r、5g、5b(有機EL発光層3r、3g、3b)をストライプ状に形成しているので、各有機EL発光領域5r、5g、5bをモザイク状に配置したり、各領域を分散して配置した場合に比較して容易かつ安価に製造することができる。そして、有機EL素子は、透明基板1や封止部分等を除く素子本体の部分が極めて薄く、元々薄型化が可能なものであるとともに、上述のようにストライプ状に配置された有機EL発光領域5r、5g、5bのピッチを狭くすれば、透明基板1を薄くしても各発光色を混色して白色を得られるので、第一例の有機EL発光装置をLCD等の非自発光表示装置のバックライトとして好適に用いることができる。
また、以下に示される表1は、図2に示される第一例の有機EL発光装置の輝度1000(cd/m2)時の50(cm2)当たりの消費電力値と、従来の1層からなる発光層に、それぞれ異なる発光色の発光材料を混在することにより一つの素子で白色発光を行なう有機EL素子をバックライトとして用いた場合の輝度1000(cd/m2)、且つ2(lm/W)時での50(cm2)当たりの消費電力値とを示すものである。なお、これらの値は、発光面の大きさを対角3.8インチ(横:縦の比を4:3)とした場合のものである。また、第一例の有機EL発光装置の特性は、以下に示される表2に示される赤色の有機ポリマEL素子、緑色の有機ポリマEL素子、青色の有機ポリマEL素子のそれぞれの発光効率に基づき、これらの有機EL素子を上述の有機EL発光領域5r、5g、5bとしてストライプ状に配置したものとして試算している。
また、表1に示されるように、第一例の有機EL発光装置が、従来の一つの素子で白色を発光させる有機EL素子に比較して極めて単位面積当たりの消費電力が低く、上記有機EL素子の発光効率が上述の値より多少高くなっても、本発明の有機EL発光装置の方が有利であることがわかる。また、第一例の有機EL発光装置は、蛍光管及び導光板を用いたバックライトと比較しても高効率ということが可能な値となっており、十分に蛍光管及び導光板を用いたバックライトに代えて使用し、これにより、非自発光表示装置の薄型化を図ることが可能である。また、本発明の有機EL発光装置は、有機EL素子を用いているので、適正輝度への調整が容易である。
また、第一例の有機EL発光装置においては、アノード2…が各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立しているので、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎もしくは各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に、駆動電流を制御して輝度を変えられるようになっている。従って、第一例の有機EL発光装置においては、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎もしくは各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に輝度を制御して白色度を調整できる。すなわち、RGBの輝度バランスを変えることで、LCDパネル(例えば、カラーフィルタを備えたLCD)の光の透過特性に適合した任意の白色度を実現することができる。また、上述のように各有機EL発光領域5r、5g、5b(有機EL発光層3r、3g、3b)がストライプ状とされているので、アノード2…やカソード4をストライプ状に形成することで、有機EL発光領域5r、5g、5bをモザイク状に配置した場合や、有機EL発光領域5r、5g、5bを細かく分散して配置した場合に比較して、容易にアノード2…やカソード4を有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立したものとすることができる。
また、第一例の有機EL発光装置においては、白色の発光以外に、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎もしくは各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に輝度を制御することにより、ほぼ任意の色の発光を行なうことができる。また、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎もしくは各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎にスイッチングすることで、RGBの三色の光を順次発光させることも可能であり、このような構成とした場合には、フィールド・シーケンシャル・フルカラーLCDのバックライトとして用いることができる。特に、有機EL発光装置は、基本的に発光体の電気容量が極めて小さく、高速にスイッチングする事が可能なので(例えば、有機EL素子は100nsec以下の高速応答が可能なので)、高速に発光色を変更する必要があるフィールド・シーケンシャル・フルカラーLCDのバックライトとして好適に用いることができる。高速応答LCDに適用する液晶としては強誘電性液晶、反強誘電性液晶が挙げられる。
なお、第一例においては、例えば、図1に示すように、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b(有機EL発光層3r、3g、3b)の幅をほぼ同じものとして、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bの面積をほぼ同じものとしたが、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bは、使用される発光材料により、同じ電力で駆動されてもその輝度が異なるので、各有機EL発光領域5r、5g、5bの発光材料に基づく輝度に対応して、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に幅を変えてその面積を異なるものとしても良い。
すなわち、一般的に、緑色に発光する発光材料を用いた有機EL素子は輝度が高く、赤色に発光する発光材料を用いた有機EL素子は輝度が低いので、緑色に発光する有機EL発光領域5g(有機EL発光層3g)の幅を赤色に発光する有機EL発光領域5r(有機EL発光層3r)の幅より狭くし、ほぼ同じ長さの各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bの面積をそれらの幅に対応したものとすれば、製造段階において、各有機EL発光領域5r、5g、5bの輝度を調整することができる。
また、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎もしくは各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に、アノード2…が分離して形成されているので、最適な色度でバランスのよいの白色発光ができるようにそれぞれに印加する電圧を最適化してもよい。しかしながら等しい印加電圧または印加電流であっても各有機EL発光領域5r、5g、5bの輝度バランスが最適である場合、、例えば、アノード2…とカソード4との両方を各有機EL発光領域5r、5g、5bでそれぞれ1つの共通な共通電極としても、予め設定された望む色に発光させることができる。
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態の第二例の有機EL発光装置を説明する。なお、第二例の有機EL発光装置は、第一例の有機EL発光装置の一部の構成を変更したものであり、第一例の有機EL発光装置と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図5(B)においては、有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4、導電性ペースト層7を、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示している。図5(B)に示される第二例の有機EL発光装置は、第一例と同様に、透明基板1上に、アノード2…、カソード端子6、隔壁レジスト8、有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4、導電性ペースト層7が形成されることにより、ストライプ状に有機EL発光領域5r、5g、5bが形成されたものである。そして、図5は、第二例の有機EL発光装置の概略を図示したものであり、実際には、発光色がそれぞれ赤、緑、青にされた三本の有機EL発光領域5r、5g、5bが互いに平行に帯状に形成されるとともに、図2に示される第1例の有機EL発光装置と同様に、これら三本を一組とする有機EL発光領域5r、5g、5bが互いに平行に多数配置されている。
そして、第一例と第二例とで異なるのは、隔壁レジスト8の形状であり、その他の点においては、第二例の有機EL発光装置は、第一例と同様の構成となっている。そして、第二例の有機EL発光装置における隔壁レジスト8は、図5(A)(B)に示されるように、第一例と同様にストライプ状に開口部8b…が形成されているが、各開口部8b…には、それぞれ、少なくとも一つ以上の拡幅部8c…が形成されている。該拡幅部8c…は、開口部8bの他の箇所に比較して幅を広くされたものである。そして、第二例においては、互いに隣り合う開口部8b…で、拡幅部8c…の位置をずらし、隣り合う開口部8b…同士の間の間隙において、拡幅部8c…同士が重ならないようにし、限られた開口部8b…同士の間の間隙でできるだけ幅の広い拡幅部8c…を形成できるようにしている。
また、拡幅部8c…の開口部8b…の長さ方向に沿った長さは、例えば、拡幅部8c…の幅とほぼ同様か、それより長いことが好ましい。そして、上記拡幅部8c…は、ディスペンサーにより有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入する際に、ディスペンサーのニードルを配置する位置とすることができる。そして、上記拡幅部8c…設けることにより、ディスペンサーのニードル先端の位置精度を補償することが可能となる。すなわち、隔壁レジスト8の開口部8b…の上記ニードル先端を配置する位置の幅が広くなっていることにより、ニードル先端をより容易かつ確実に開口部8b…に合わせることができる。
また、開口部8b…のニードルが配置される位置の幅を広くすることで、ニードルからの材料吐出持に材料が開口部8bの外にこぼれるのを防止することができる。従って、第二例の有機EL発光装置においては、第一例と同様の作用効果を奏することができるとともに、隔壁レジスト8の開口部8bに拡幅部8c…を設けることにより、有機EL発光装置の製造において歩留まりの向上を図ることができる。また、一つの開口部8b…に複数の拡幅部8c…を設けることにより、一つの開口部において複数箇所からニードルにより材料を注入することに対応することができる。なお、一つの開口部8b…に複数箇所から材料を注入できるようにすれば、開口部8b内において、材料の粘性が高い等により開口部8bの長さ方向に沿った伸びが悪い場合に、確実に開口部8b全体に材料を注入することができる。また、同時に複数箇所から材料を注入できれば、作業時間の短縮を図ることができる。
図5(C)は、上記第二例の変形例を示すものであり、この変形例の有機EL発光装置は、隔壁レジスト8の形状を除いて、第二例の有機EL発光装置と同様の構成を有するものである。そして、変形例の隔壁レジスト8においては、第二例と同様に開口部8d…に拡幅部8e…を設けているが、該拡幅部8e…が開口部8d…のどちらか一方の端部に形成される構成となっているとともに、隣り合う一対の開口部8d、8dにおいて、一方の開口部8dと、他方の開口部8dとで、拡幅部8e…が設けられる位置が互いに反対側の端部となっている。そして、一方の開口部8dの拡幅部が設けられていない端部は、他方の開口部8dの一方の端部の拡幅部8eの手前側までとなっている。そして、各開口部8d…においては、拡幅部8eの幅(開口部8dの長さ方向に直交する長さ)が、開口部8d、8d二本分の幅にこれら開口部8d、8d間の間隙の幅を加えたものとなっている。従って、この変形例においても、上記第二例と同様の作用効果を奏することができるとともに、拡幅部8eの幅を上記第二例より広くすることが可能であり、より確実に拡幅部8e…にディスペンサーのニードルを配置できるとともに、ニードルの配置位置におけるこぼれを防止することができる。すなわち、より効率的に、開口部8d…に拡幅部8e…を配置することができる。
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施の形態の第三例の有機EL発光装置を説明する。なお、第三例の有機EL発光装置は、第一例の有機EL発光装置の一部の構成を変更したものであり、第一例の有機EL発光装置と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図6においては、有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4、導電性ペースト層7、7r、7g、7bを、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示し、図7においては、有機EL発光層3r、3g、3b、隔壁レジスト9を、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示するとともに、カソード4及び導電性ペースト層7、7r、7g、7bの図示を省略している。そして、図6及び図7は、同じ有機EL発光装置を図示したものである。
図6及び図7に示される第三例の有機EL発光装置は、第一例と同様に、透明基板1上に、アノード2…、カソード端子6、隔壁レジスト9、有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4、導電性ペースト層7が形成されることによりストライプ状に有機EL発光領域5r、5g、5bが形成されたものである。そして、図6及び図7は、第三例の有機EL発光装置の概略を図示したものであり、実際には、発光色がそれぞれ赤、緑、青にされた三本の有機EL発光領域5r、5g、5bが互いに平行に帯状に形成されるとともに、図2に示される第1例の有機EL発光装置と同様に、これら三本を一組とする有機EL発領域5r、5g、5bが互いに平行に多数配置されている。
そして、第一例と第三例とで異なるのは、透明基板1上に、各色(種類)の有機EL発光領域5r、5g、5b(有機EL発光層3r、3g、3b)毎に、外部と接続できるように、アノード2…の引出配線用の構造を形成したことである。すなわち、第一例及び第二例においては、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に形成されたアノード2…の一方の端部をそのまま各有機EL発光領域5r、5g、5b毎のアノード端子としていたのに対して、第三例においては、透明基板1上において、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎のアノード2…を各色に発光する各種類の有機EL発光領域5r、5g、5b毎にまとめて、各発光色毎のアノード端子2r、2g、2bに接続するようにしたものである。以下に、第三例の第一例と異なる部分を説明する。
図6及び図7に示すように、各アノード2…は、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に長さが異なるようにされており、各アノード2…のカソード端子6側の他方の端部はその位置が揃えられ、一方の端部は各発光色毎に異なる位置とされ(同じ発光色のものは揃えられ)ている。例えば、発光色が赤の有機EL発光領域5rのアノード2は、一方の端部が短く、発光色が青の有機EL発光領域5bのアノード2は、一方の端部が長く、発光色が緑の有機EL発光領域5gのアノード2は、上述の二つのアノード2の間の長さとされている。すなわち、発光色毎にアノード2の一方の端部の位置が変えられるとともに、同じ発光色のアノード2の一方の端子の位置は、アノード2の長さ方向にほぼ直交する直線上にほぼ配置されるようになっている。そして、全てのアノード2…の側方の透明基板1上には、有機EL発光領域5r、5g、5bの発光色の種類の数(ここでは3つ)に対応する数のアノード端子2r、2g、2bがITOから形成されている。
上記アノード端子2r、2g、2bは、アノード2…及びカソード端子6を形成する際に同時に形成されるとともに、その位置が、各発光色毎のアノード2…の一方の端部の位置に対応しており、同じ発光色に対応するアノード端子2r、2g、2bと、アノード2…の一方の端部がアノード2…の長さ方向にほぼ直交する線上に並んだ状態となっている。従って、三つの発光色を有する第三例の有機EL発光装置においては、一つのアノード端子2r、2g、2bと、同じ色に発光する有機EL発光領域5r、5g、5b用の複数のアノード2…からなる列が三つ形成されることになる。
そして、第三例の隔壁レジスト9は、第1例及び第2例と異なり、アノード2の一方の端部を含む、全てのアノード2の全体を含む範囲に形成され、第一例と同様にその開口部8a…の位置で各アノード2…が個別に露出するとともに、後述する開口部9a…の位置で各アノード2…が個別に露出している。隔壁レジスト9には、第一例の隔壁レジスト8と同様の開口部8a…が形成されるとともに、各アノード2…の一方の端部に対応する位置に開口部9a…が形成されている。従って、各開口部9a…の位置も、アノード2…の一方の端部と同様の配置となっている。なお、隔壁レジスト9においても、第一例の場合と同様に開口部8a…に、有機EL発光層3r、3g、3bの液状の材料が注入されるようになっている。
そして、図6に示すように、同じ発光色に対応するアノード端子2r、2g、2b及び開口部9a…に渡って、帯状の導電性ペースト層7r、7g、7bがそれぞれ形成され、各導電性ペースト層7r、7g、7bが同じ発光色に対応するアノード端子2r、2g、2bと接続されるとともに、開口部9a…を介して同じ発光色に対応するアノード2…の一方の端部に接続されるようになっている。すなわち、発光色が赤となる有機EL発光領域5rの全てのアノード2と、発光色が赤用のアノード端子2rとが導電性ペースト層7rにより短絡させられ、発光色が緑となる有機EL発光領域5gの全てのアノード2と、発光色が緑用のアノード端子2gとが導電性ペースト層7gにより短絡させられ、発光色が赤となる有機EL発光領域5bの全てのアノード2と、発光色が赤用のアノード端子2bとが導電性ペースト層7bにより短絡させられている。また、各導電性ペースト層7r、7g、7bは、互いに接触しないようにほぼ平行に配置されている。従って、各アノード端子2r、2g、2b毎に、駆動制御することができるので、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に輝度を変えて、最終的に混色される色を変更したり、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎にオンオフしたりすることが可能となっている。
以上の構成により、第三例の有機EL発光装置においては、第一例と同様の作用効果を得ることができる。また、ガラス基板上で同じ発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bのアノード2…が互いに接続されるとともに、同じ発光色用のアノード端子2r、2g、2bに接続されることになるので、透明基板1の外側で、各発光色毎にアノード端子2r、2g、2bを接続する配線を必要とせず、有機EL発光装置の構成を簡略化できる。また、アノード端子2r、2g、2bは、アノード2…及びカソード端子6を形成する際に同時に形成することができ、隔壁レジスト9は、開口部9a…を有する以外は第一例の隔壁レジスト8とほぼ同様のものであり、パターニングの形状を変えるだけで隔壁レジスト8と同様に形成することができ、導電性ペースト層7r、7g、7bも導電性ペースト層7を形成する際に同時に形成することができる。
従って、特に工程を増やすことなく、透明基板1上に各発光色に対応するアノードをそれぞれひとまとめにする引き出し線を形成することができ、かつ、透明基板1の外部において、各発光色に対応するアノード2…毎に、ひとまとめにする配線を設けなくとも良いので、有機EL発光装置の製造作業を省力化してコストダウンを図ることができる。なお、第三例においても、第二例及びその変形例に示されるように開口部8a…に拡幅部を形成するものとしても良い。
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施の形態の第四例の有機EL発光装置を説明する。なお、第四例の有機EL発光装置は、第三例の有機EL発光装置の一部の構成を変更したものであり、第一例及び第三例の有機EL発光装置と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図8においては有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4、導電性ペースト層7r、7g、7bを、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示し、図9においては有機EL発光層3r、3g、3b、隔壁レジスト9を、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示するとともに、カソード4及び導電性ペースト層7r、7g、7bの図示を省略している。そして、図8及び図9は、同じ有機EL発光装置を図示したものである。
図8及び図9に示される第四例の有機EL発光装置は、第一例と同様に、透明基板1上に、アノード11、カソード端子6、隔壁レジスト9、有機EL発光層3r、3g、3b、カソード4が形成されることにより、ストライプ上に複数の有機EL発光領域5r、5g、5bが形成されたものである。そして、図8及び図9は、第四例の有機EL発光装置の概略を図示したものであり、実際には、発光色がそれぞれ赤、緑、青にされた三本の有機EL発光領域5r、5g、5bが互いに平行に帯状に形成されるとともに、図2に示される第1例の有機EL発光装置と同様に、これら三本を一組とする有機EL発光領域5r、5g、5bが互いに平行に多数配置されている。
そして、第三例と、第四例とで異なる点は、第三例の有機EL発光装置において、各有機EL発光領域5r、5g、5bのカソード4を一つにまとめて共通電極とし、かつ、アノード2…を各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎にまとめて、各発光色の有機EL発光領域毎に駆動できるようにしていたのに対して、第四例の有機EL発光領域において、アノード2…を一つにまとめて共通電極とし、かつ、カソード4を各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎にまとめて、各発光色の有機EL発光領域毎に駆動できるようにしていることである。
そして、第四例の有機EL発光装置は、上記透明基板1と、該透明基板1上にアノード11(アノード端子11aを含む)、カソード配線12r、12g、12b及びカソード端子13r、13g、13bがそれぞれITOから形成されている。アノード11は、第一〜三例のように各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に形成されるのではなく、一つのアノード11で全ての有機EL発光領域5r、5g、5bに対応するように広い面状に形成されて、そのまま共通電極となっている。また、カソード配線12r、12g、12bは、アノード11上にストライプ状に形成される各有機EL発光層3r、3g、3b毎に一つずつ形成されるようになっている。そして、各カソード配線12r、12g、12bは、アノード11から離れた位置において、対応する各有機EL発光層3r、3g、3bと一列になるようにそれぞれ配置されている。
また、各カソード配線12r、12g、12bは、そのアノード11側(有機EL発光層3r、3g、3b側)の端部の位置が、それぞれ、ストライプ状の有機EL発光層3r、3g、3bとほぼ直交する方向に沿った一直線上にほぼ配置されるように揃えられ、他方の端部の位置が、各色の有機EL発光層3r、3g、3bに対応するカソード毎に変えられて異なるものとされている。また、同じ色の有機EL発光層3r、3g、3bに対応するカソード配線12r、12g、12b同士は、一方の端部の位置がストライプ状の有機EL発光層3r、3g、3bとほぼ直交する方向に沿った一直線上にほぼ配置されるように揃えられている。
各カソード端子13r、13g、13bは、透明基板1上のカソード配線12r、12g、12bの側方に形成されるとともに、各発光色に対応するカソード端子13r、13g、13bと各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bに対応するカソード配線12r、12g、12bの一方の端部とがそれぞれ一列に並んだ状態に配置されている。すなわち、カソード端子13r、13g、13bには、それぞれ赤、緑、青の各発光色に対応するものが一つずつあり、赤用のカソード端子13rと全ての赤用のカソード配線12rの一方の端部とが一列に並んで配置され、緑用のカソード端子13gと全ての緑用のカソード配線12gの一方端部とが一列に並んで配置され、青用のカソード端子13bと全ての青用のカソード配線12bの一方の端部とが一列に並んで配置されている。
また、透明基板1上のアノード11とカソード配線12r、12g、12bとの間には、これらを区切るように、発光材料用の塗れ制御層14が形成されている。該塗れ制御層14は、上述のように隔壁レジスト9の開口部8a…に有機EL発光層3r、3g、3bの液状の材料を注入した際に、塗れ制御層14上に液状の材料が塗れないようにするものであり、一種の撥水材として機能するものである。
そして、塗れ制御層14の材料は、基本的に表面エネルギーを低くする物質から構成される。そして、表面エネルギーを低くする物質としては、例えば、長鎖アルキル基、フッ素基、珪素基を有する物質を挙げることができる。具体的に塗れ制御層14の材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも一種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体と、共重合主鎖に環状構造物を有する含フッ素共重合体と、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンと、ジクロロジフルオロエチレンとの共重合体と、アクリロニトリル、ステアリン酸ビニル、ステアリルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ステアリル、その他フッ素原子が含まれるコモノマーと、これらと共重合可能なコモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルや、ビニル基を有する化合物として、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルとを共重合させて得られる共重合体とが挙げられる。また、塗れ制御層14の材料となる具体的な商品としては、フッ素系として、フルオネートK−703:大日本インキ化学工業、フロリナート:住友スリーエム、サイトップCTX−105A:旭硝子、フロロバリアー:泰成商会、テフロン(登録商標)AF:デュポン社、PTFEグリース:ニチアス、などが挙げられる。また、シリコーン樹脂(SH200:東レシリコーンなど)を汎用ポリマー(アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂)などにブレンドして塗布しても良い。また、塗れ制御層14の材料としては、上述のものに限定されるものではなく、有機EL発光層3r、3g、3bの液状の材料をはじいて塗布できないようにできるものならば良い。
そして、アノード11、カソード配線12r、12g、12b、カソード端子13r、13g、13b、塗れ制御層14が形成された透明基板1上に、隔壁レジスト9が形成される。隔壁レジスト9は、第三例の隔壁レジスト9と同様に開口部8a…と、開口部9a…とが形成されている。そして、各開口部8a…は、一つのアノード11上から各カソード配線12r、12g、12bの他方の端部に渡って形成されている。すなわち、開口部8a…とカソード配線12r、12g、12bとが一対一で対応し、各開口部8a…の一方の端部とカソード配線12r、12g、12bの他方の端部とが重なった状態とされ、各開口部8a…からは共通電極とされたアノード11と一つのカソード配線12r、12g、12bの他方の端部とが露出するようになっている。
また、開口部8a…のアノード11が露出する部分と、カソード配線12r、12g、12bの端部が露出する部分との間に、上記塗れ制御層14が露出するようになっている。そして、上記有機EL発光層3r、3g、3bは、各開口部8a…に上述の発光材料を注入することにより形成されるが、この際に、液状の発光材料は、開口部8a…のアノード11が露出する部分に注入される。そして、開口部8a…に注入された発光材料は、開口部8a…内を開口部8a…に沿って流れて開口部8a…内に充填される際に、塗れ制御層14ではじかれることにより、塗れ制御層14を越えてカソード配線12r、12g、12bの他方の端部が露出する部分に流れこまないようにされている。
従って、有機EL発光層3r、3g、3bは、隔壁レジスト9の開口部8a…のアノード11が露出する他方の端部から塗れ制御層14の手前側までの間に形成され、開口部8a…から露出するカソード配線12r、12g、12bの他方の端部上には形成されないようになっている。一方、隔壁レジスト9の開口部9a…は、第三例の場合のアノード2…の一方の端部に変えて各カソード配線12r、12g、12bの一方の端部が露出するようになっている。そして、各カソード配線12r、12g、12bの一方の端部の配置位置に対応して開口部9a…の位置が決められている。
上記カソード4は、隔壁レジスト9の外周より内側に隔壁レジスト9の開口部8a…の大部分を覆うように形成されている(なお、塗れ制御層14より隔壁レジスト9の開口部9a…が形成されている側には、カソード4を形成しないようになっている)。そして、各開口部8a…内のカソード4は、隔壁レジスト9の厚さより薄いため、上述のように隔壁レジスト9の各開口部8a…の部分とそれ以外の隔壁の部分との段差により、開口部8a…では電気的に断線した状態に形成され、各開口部8a…内のカソード4は、他のカソード4の部分と短絡しておらず、各開口部8a…部分毎に独立した電極となっている。そして、各開口部8a…内においては、アノード11が露出する部分で、アノード11とカソード4とが間に有機EL発光層3r、3g、3bを介在させた状態で対向させられ、カソード配線12r、12g、12bの一方の端部が露出する部分で、カソード配線12r、12g、12bとカソード4が直接接触して短絡した状態となっている。従って、各開口部8a…毎、すなわち、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立したカソード4が、それぞれ別のカソード配線12r、12g、12bに接続されている。
そして、同じ発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bに対応するカソード配線12r、12g、12bが露出した複数の開口部9a…上から、カソード端子13r、13g、13b上にわたって、隔壁レジスト9より厚い帯状の導電性ペースト層7r、7g、7bがそれぞれ連続して形成されるようになっている。ここで、導電性ペースト層7r、7g、7bは、隔壁レジスト9より厚く形成されているので、導電性ペースト層7rが、発光色が赤の有機EL発光領域5rに接続される全てのカソード配線12rと開口部9a…で接続されるとともにカソード端子13rに接続され、導電性ペースト層7gが、発光色が緑の有機EL発光領域5gに接続される全てのカソード配線12gと開口部9a…で接続されるとともにカソード端子13gに接続され、導電性ペースト層7bが、発光色が青の有機EL発光領域5bに接続される全てのカソード配線12bと開口部9a…で接続されるとともにカソード端子13bに接続されている。
従って、各有機EL発光層3r、3g、3bは、共通電極とされたアノード11と、隔壁レジスト9の開口部8a…の部分の段差により各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立した電極とされたカソード4とに挟まれた状態とされているので、各有機EL発光領域5r、5g、5bは、個別に駆動されるようになっている。また、独立したカソード4は、開口部8a…の一方の端部内において、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に設けられたカソード配線12r、12g、12bに短絡させられている。
一方、開口部8a…内には、有機EL発光層3r、3g、3bが無い部分を形成するために、隔壁等の段差が形成されていないので、各開口部8a…内においては、カソード4が一体に導通した状態で形成されており、有機EL発光層3r、3g、3bを挟んでアノード11と対向したカソード4部分と、カソード配線12r、12g、12bとが導通した状態となっている。すなわち、開口部8a…内のカソード4とカソード配線12r、12g、12bとを導電性ペースト層7を用いずに導通することができる。なお、第四例においては、カソード4を各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立電極とするとともに、最終的に各有機EL発光領域5r、5g、5b毎の電極を各発光色毎の電極にまとめる際に導電性ペースト層7r、7g、7bを用いているが、第一例から第三例に示すように、カソード4を共通電極とする場合には、導電性ペースト層7、7r、7g、7bを完全に必要としないものとすることができる。
そして、各カソード配線12r、12g、12bは、隔壁レジスト9の開口部9a…において、同じ発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bに導電性ペースト層7r、7g、7bにより短絡させられるとともに、各発光色毎に一つずつ形成されたカソード端子13r、13g、13bに、それぞれ、発光色に対応する導電性ペースト層7r、7g、7bが一対一で短絡させられた状態となっている。従って、各カソード端子13r、13g、13b毎に駆動電圧(電流)を変えることにより、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5b毎に輝度を変えて、最終的に混色される色を変更したり、各発光色の有機EL発光領域5r、5g、5bにオンオフしたりすることが可能となっている。
以上のような構成の第四例の有機EL発光装置によれば、第一例の場合と同様の作用効果を得られるとともに、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立した状態とされたカソード4を、各発光色毎にまとめる配線を透明基板1上に形成しているので、アノードとカソードの違いはあるが第三例の場合と同様の作用効果を得ることができる。また、カソード4は、特に各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に独立して形成されるように微細にパターニングしなくとも、開口部8a…を有する隔壁レジスト9により、各有機EL発光領域5r、5g、5bに独立した形状とすることができるので、カソード4を極めて容易に各有機EL発光領域5r、5g、5bに独立した形状とすることができる。また、隔壁レジスト9の開口部8a…内に表面エネルギーの低い塗れ制御層14を設けることにより、有機EL発光領域5r、5g、5b内のカソード4を容易に外部と接続することができる。なお、第四例においても、第二例及びその変形例に示されるように開口部8a…に拡幅部を形成するものとしても良い。また、透明基板1上に、各発光色毎のカソード端子13r、13g、13bを設けずに、各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に、カソード端子を設けるものとしても良い。また、第四例において、上記塗れ制御層14を設ける変り、隔壁レジスト9の開口部8a…の塗れ制御層14が配置される部分にボトルネック状に開口部8a…の幅を狭くした挟幅部を設けるものとしても良い。このようにすれば、開口部8a…内のアノード11が露出する部分に有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入した際に、ボトルネックとなる挟幅部から先に材料が流入しづらい状態となり、上記塗れ制御層14を設けなくとも、塗れ制御層14を設けたのと同様の作用効果を得ることができる。
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態の第五例の有機EL発光装置を説明する。なお、第5例の有機EL発光装置は、第一例の有機EL発光装置がそれぞれ異なる色(RGB)に発光する三種類の有機EL発光領域5r、5g、5bを用いていたのに対して、二種類の有機EL発光装置5r、5bgを用いるようにしたものであり、第一例と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図10においては、有機EL発光層3r、3bg、カソード4、導電性ペースト層7を、例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示している。
図10に示すように、第五例の有機EL発光装置は、第一例の有機EL発光装置と同様に、透明基板1上に、アノード2r、2bg、隔壁レジスト8、有機EL発光層3r、3bg、カソード4、導電性ペースト層7を形成することにより、ストライプ状に有機EL発光領域5r、5bgを形成したものである。そして、第5例においては、有機EL発光層3r、3bgが、赤から緑に渡る広い波長領域のオレンジ色の発光を行なう有機EL発光層3rと、緑から青に渡る広い波長領域の青緑色の発光を行なう有機EL発光層3bgとの二種類となっており、これら二種類の有機EL発光層3r、3bgから二種類の有機EL発光領域5r、5bgが形成されている。そして、図10に示される有機EL発光装置は、その概略を示すものであり、実際には、二種類の有機EL発光領域5r、5bgを一組として、多数組の有機EL発光領域5r、5bgが互いに平行に帯状に多数配置された状態となっている。例えば、有機EL発光領域5rと有機EL発光領域5bgが交互に並んで多数配置された状態となっている。
そして、第五例の有機EL発光装置においては、図10に示すように、透明基板1上に発光色がオレンジの有機EL発光領域5r用のアノード2rと、発光色が青緑の有機EL発光領域5bg用のアノード2bgとが交互にストライプ状に形成されている。そして、発光色がオレンジの有機EL発光領域5r用の複数のアノード2rの一方の端部が全てオレンジ用のアノード端子15rに接続され、発光色が青緑の有機EL発光領域5bg用の複数のアノード2bgの他方の端部が全てアノード端子15bgに接続されている。従って、各発光色毎に有機EL発光領域5r、5bgを駆動できるように、透明基板1上において、各有機EL発光領域5r、5bg毎に形成されたアノード2r、2bgが、各発光色毎にまとめられて各発光色用のアノード端子15r、15bgに接続されている。
なお、アノード端子15r、15bgは、例えばITOから形成されている。また、アノード2r、2bgは、アノード端子15r、15bgから櫛歯状に形成されており、一方の発光色用の櫛歯状のアノード2rの間に他方の発光色用の櫛歯状のアノード2bgが入った状態となっている。すなわち、一方のアノード2rとアノード端子15rとからなる櫛状のITOと、他方のアノード2bgとアノード端子15bgとからなる櫛状のITOとが、互いに噛合った状態に配置されている。そして、透明基板1上には、第一例とほぼ同様に、ITOからなるカソード端子6が形成されている。なお、カソード端子6は、各有機EL発光領域5r、5bgの両端側にそれそれアノード端子15r、15bgが配置されているので、各有機EL発光領域5r、5bgが形成された部分の側方に配置されている。
そして、アノード2r、2bgが設けられた透明基板1上に、第一例と同様に、隔壁レジスト8が形成されるとともに、隔壁レジスト8の開口部8a…内に各有機EL発光層3r、3bgが形成されている。そして、これら有機EL発光層3r、3bg上の全て覆うように、カソード4が形成されている。そして、上述のように隔壁レジスト8により各有機EL発光領域5r、5bg毎に独立したカソード4を短絡して共通電極とするとともに、カソード端子6に接続するように導電性ペースト層7が形成されている。すなわち、導電性ペースト層7は、各有機EL発光領域5r、5bgに跨るとともに、カソード端子6に至るように帯状に形成されている。
このような構成を有する第五例の有機EL発光装置によれば、有機EL発光領域5r、5bg(有機EL発光層3r、3bg)の種類を三つから二つに減らした状態で、オレンジの発光色と青緑の発光色を混色させて白色の発光色を得ることができるので、第一例と同様の作用効果をより簡単な構成で得ることができる。また、有機EL発光領域5r、5bgの発光色の種類を二つとすることにより、各発光色毎に有機EL発光領域5r、5bgを駆動するために、アノード2r、2bgを独立した電極とするとともに、透明基板1上でこれらの電極を発光色毎にまとめる配線をする際に、上述のように櫛状の電極を互いに噛合った状態に配置するだけで良く、極めて簡単な構成で第三例と同様の作用効果を奏することができる。
なお、第五例の有機EL発光装置においては、第二例及びその変形例のように隔壁レジスト8の開口部8a…に拡幅部を設けるものとしても良い。また、第五例においては、第一例に示されるように、透明基板1上において、各発光色毎にアノード端子をまとめずに、各有機EL発光領域5r、5bg毎にアノード端子を配置するものとして良いし、第三例に示されるように、透明基板1上において、各有機EL発光領域5r、5bg毎に、アノード配線を設け、これを各発光色毎に導電性ペースト層でまとめて、各発光色毎にアノード端子を設けるものとしても良い。また、第4例に示されるように、アノード側を共通電極として、カソード側を各有機EL発光領域5r、5bg毎に独立した電極としても良いし、この際に、透明基板1上において、各有機EL発光領域5r、5bg毎に独立したカソードを各発光色毎のカソード端子にまとめる配線を設けても良い。
次に、図11を参照して本発明の実施の形態の第六例の有機EL表示装置を説明する。なお、第六例の有機EL表示装置は、上述の各例に示される有機EL発光装置を応用して、自発光表示装置としたものであり、各例の有機EL発光装置と同様に、複数の発光色が異なるストライプ状の有機EL発光領域5r、5g、5bを一組として、多数組の有機EL発光領域5r、5g、5bが互いに平行に帯状に形成されている。なお、第六例の有機EL表示装置において、上記各例の有機EL発光装置と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図11において、有機EL発光層3r、3g、3b及びカソード4を例えば、斜め格子状や横格子状の図柄として透けた状態に図示している。
図11に示すように、第六例の有機EL表示装置は、透明基板1上に、ストライプ状、すなわち、互いに平行な複数の帯状に、ITOからなるアノード16、16が形成されている。これらアノード16、16は、有機EL表示装置において、走査電極となるものである。なお、ストライプ状のアノード16、16と、後述する隔壁レジスト8のストライプ状の開口部8a…とは、互いにほぼ直交するように配置される。また、透明基板1上には、ITOからなるカソード端子17r、17g、17bが形成されている。カソード端子17r、17g、17bは、ITOからなるものであり、アノード16、16とともに透明基板1上にITOをパターン形成することにより形成されるものである。また、カソード端子17r、17g、17bは、隔壁レジスト8の開口部8a…と一対一で対応するように形成されるとともに、開口部8a…の一方の端部とカソード端子17r、17g、17bの一方の端部が重なるように配置され、各開口部8a…の一方の端部から各カソード端子17r、17g、17bが露出するようになっている。
そして、アノード16,16が形成された透明基板1上に上記各例の有機EL発光装置と同様にストライプ状の開口部8a…を備えた隔壁レジスト8が形成されている。そして、ストライプ状に形成された開口部8a…内には、上記各例の有機EL発光装置と同様に有機EL発光層3r、3g、3bが形成される。ここでは、フルカラーの表示を可能とするために、発光色がそれぞれ赤、緑、青とされた三種類の有機EL発光層3r、3g、3bが用いられるとともに、こられを一組として多数組の有機EL発光層3r、3g、3bがストライプ状に配置されることになる。
また、第六例の隔壁レジスト8においては、その開口部8a…の一方の端部に、他の部分より幅を狭くしたボトルネック状の挟幅部8f…が形成されている。該挟幅部8fは、開口部8a…の一方の端部側において、最も一方の端部側に形成されたアノード16よりも外側で、かつ、開口部8a…の一方の端より手前の位置に形成されている。そして、開口部8a…内の挟幅部8f…より他方の端部側に上述のように有機EL発光層3r、3g、3bの材料を注入した場合に、挟幅部8f…より先に材料が流入しづらい状態とするものである。この挟幅部により、開口部8a…の一方の端部には、有機EL発光層3r、3g、3bが形成されていない状態となっており、この部分から上記カソード端子17r、17g、17bの一方の端部が露出するようになっている。また、カソード端子17r、17g、17bの他方の端部及びアノード16,16の少なくとも一方の端子は、隔壁レジスト8より外側に配置されて露出するようになっており、外部と接続できるようになっている。
そして、隔壁レジスト8が形成された透明基板1上に、カソード4を形成する。カソード4の形成範囲は、隔壁レジスト8の外周より内側で、かつ、隔壁レジスト8の全ての開口部8a…を完全に覆える範囲である。そして、カソード4は、隔壁レジスト8の開口部8a…部分の段差により、各開口部8a…内の部分と開口部8a…の外部とが断線(絶縁)した状態に形成される。従って、カソード4は、開口部8a…内に形成された各有機EL発光層3r、3g、3bに沿った形状で、各有機EL発光層3r、3g、3b(各有機EL発光領域5r、5g、5br)毎に独立して形成された状態となる。従って、開口部8a…内の有機EL発光層3r、3g、3bを挟んでカソード4とアノード16,16とが対向配置された部分がストライプ状の有機EL発光領域5r、5g、5bとなり、各有機EL発光領域5r、5g、5bにおいては、一つの独立したカソード4が有機EL発光領域5r、5g、5bの長さ方向に沿って配置され、かつ、複数のアノード16、16が、有機EL発光領域5r、5g、5bの長さ方向にほぼ直交するように配置されている。
また、開口部8a…内の挟幅部8f…より他方の端部側においては、ストライプ状のアノード16,16と各開口部8a…内のカソード4とが、有機EL発光層3r、3g、3bを挟んで対向配置されている。一方、開口部8a…内の挟幅部8f…より一方の端部側においては、各開口部8a…毎のカソード端子17r、17g、17bと、開口部8a…内のカソード4とが直接重なって配置されて短絡した状態となっている。そして、開口部8a…内において、挟幅部8f…の部分には、段差等がないので、挟幅部8f…の部分でカソード4が断線することがなく、開口部8a…内全体でカソード4が一体に導通した状態で形成されている。
従って、開口部8a…内において、有機EL発光層3r、3g、3bを挟んでアノード16、16とカソード4とが対向配置されて有機EL発光領域5r、5g、5bとなる部分のカソード4とカソード端子17r、17g、17bとが各有機EL発光領域5r、5g、5b毎に接続された状態となっている。そして、このような構成とすることにより、RGBに発光する三つの有機EL発光領域5r、5g、5bからなる一組の有機EL発光領域5r、5g、5bと、一本のアノード16が重なる部分がRGBの三色に発光する一つの画素となっている。そして、各画素においては、一つの走査電極(アノード16)と、各発光色毎に独立した三つの信号(データ)電極(開口部8a…毎のカソード4部分)と、により、一画素内のRGB三色の各有機EL発光領域5r、5g、5bの輝度をそれぞれ決めることにより任意の色の発光を行なうことができ、各画素毎に望む色を発光することにより、カラー画像の表示を行なうことができる。
そして、この有機EL表示装置の基本的な構成は、第四例のアノード11を面状の共通電極から複数のストライプ状の走査電極となるアノード16,16に代えるとともに、カソード4を発光色毎にまとめずに各有機EL発光領域5r、5g、5b毎のまま外部と接続できるようにしたものであり、上記各例の有機EL発光装置と同様に容易に製造することができる。また、各有機EL発光領域5r、5g、5bのピッチ等を第一例に記載した3.8インチの有機EL発光装置と同様のものとすれば、3.8インチの表示画面において、横:縦の画素が274×210程度の高解像度の表示が可能である。
なお、図11に示される有機EL表示装置は、有機EL表示装置の概略を説明するためのものであり、四画素分だけの構成を示しているが、実際には、横方向に多数の有機EL発光領域5r、5g、5bが並ぶとともに、縦方向に多数のアノード16、16が並び、多数の画素を備えたものとなるものである。また、この有機EL表示装置を駆動する際には、上述のように有機EL素子の応答速度が高速なため、各画素において、一フレーム分の時間程度、走査電極−信号電極間に電圧を印加した状態に保持する必要がある。
また、上記有機EL表示装置においては、挟幅部8f…に変えて、該挟幅部8f…に対応する透明基板1上の位置に、第四例の塗れ制御層14を設けるものとしても良いし、カソード端子17r、17g、17bとカソード4とを第一例のように導電性ペースト層7で接続するものとしても良い。しかし、カソード端子17r、17g、17bと、カソード4を導電性ペースト層7で接続する際には、第一例と異なり、各開口部8a…のカソード4と、カソード端子17r、17g、17bとを一対一で接続する必要がある。また、第六例では、アノード16,16を走査電極として、カソード4を信号電極としたが、その逆としても良い。