JP2010117525A - 紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低消費電力、且つ、低ランニングコストの紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法を提供する。
【解決手段】 紫外線照射装置UVAは、円筒状の包囲体502の一方端に光出射開口502Cを有する包囲体502を備えている。包囲体502の他方端には、ガス導入口が設けられており、このガス導入口にガス導入管503が接続されている。ガス導入管503からは窒素などの不活性なガスGが包囲体502内に導入される。包囲体502内には、紫外線を出射する半導体発光素子35と、包囲体502の光出射開口502Cの近傍に取り付けられ半導体発光素子35からの紫外線を集光する集光レンズ34が設けられている。なお、集光レンズ34の設けられる光出射開口502Cの近傍とは、光ファイバFに向けて紫外線を集光できる包囲体502の先端部の位置である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、光ファイバの表面上に塗布された樹脂を硬化させるための紫外線照射装置、及び光ファイバの被覆形成方法に関するものである。
従来、プリフォームから線引きされた裸光ファイバ、あるいは、一度ボビンに巻き取られた光ファイバ素線の表面上に、樹脂被覆が行われている。光ファイバの外周を紫外線硬化型樹脂(UV光硬化型樹脂)で被覆し、そのUV光硬化型樹脂に紫外線(UV光)を照射してUV光硬化型樹脂を硬化させている。下記特許文献1は、UV光の光源として紫外線レーザダイオード(UV−LD)または紫外線発光ダイオード(UV−LED)などの紫外線半導体発光素子を1個または複数個使用し、消費電力の低減を達成しようと試みている。
特開2003−89555号公報
しかしながら、本願発明者らが鋭意検討した結果、上記従来の装置では、光ファイバを被覆する被覆の硬化が不十分であり、光ファイバの品質に悪影響を及ぼすことが判明した。
すなわち、UV−LEDは、単一で狭い(±5nm程度)帯域の発光スペクトルを有しており、この発光スペクトルのピーク値を与える波長(ピーク波長)は、UV光硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収スペクトルのピーク値やショルダー値を与える波長の近傍には存在していないことがある。その場合、光重合開始剤からのラジカル生成が抑制され、樹脂硬化反応が促進されないという問題がある。
ところで、紫外線ランプ(UVランプ)を用いた場合には、UVランプから照射される紫外線の波長帯域が広いためそのような問題はないが、UVランプは設置スペースが大きい。光ファイバの線引速度を速くすると複数台のUVランプを設置する必要がある。しかし、その設置スペースは限られているため、UVランプを何台も設置出来ない場合に紫外線硬化型樹脂を十分に硬化させるためには、光ファイバの線引速度を低下させて紫外線照射時間を増加させるしかなく、消費電力とランニングコストを低減することができない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、低消費電力、且つ、低ランニングコストの紫外線照射装置を提供し、その紫外線照射装置の使用により高速で光ファイバを製造することができる生産性のよい光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る紫外線照射装置は、光ファイバの表面に塗布された紫外線硬化型樹脂に、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、ガス導入口及び光出射開口を有する包囲体と、包囲体内に設けられ紫外線を出射する半導体発光素子と、半導体発光素子と包囲体の光出射開口との間に設けられ半導体発光素子からの紫外線を集光する集光レンズとを備えることを特徴とする。
半導体発光素子から出射された紫外線は集光レンズによって集光され、紫外線硬化型樹脂に照射される。この半導体発光素子のみで紫外線硬化型樹脂を硬化できない場合には、紫外線硬化に要する別のスペクトルを有する半導体発光素子を併用するか、UVランプを併用する。紫外線硬化型樹脂を硬化させる補助的な手段として本発明の紫外線照射装置を使用する場合はこれで十分である。好適には、この紫外線照射装置は、紫外線帯域内に、この半導体発光素子から出射される紫外線の第1スペクトルとはピーク値を与える波長の異なる第2スペクトルを有する紫外線光源を更に備えている。
この装置によれば、紫外線帯域内に少なくとも2つのスペクトルのピークを有しているため、紫外線硬化型樹脂の硬化を十分に促進させることができる。本発明の紫外線照射装置のみで紫外線硬化型樹脂を硬化することができる。なお、紫外線帯域とは、波長10nm〜400nmの範囲である。半導体発光素子は、UVランプよりも長寿命で、消費電力が低いのでランニングコストが低い。したがって、本発明の装置は、半導体発光素子を用いているにも拘らず、紫外線硬化型樹脂の硬化を十分に促進させることができるため、長寿命、低消費電力、低ランニングコストでの動作が可能となる。
また、上述の包囲体は、半導体発光素子からの紫外線出射方向に向けてガスを排出するガス排出口を更に備えることが好ましい。光ファイバの周囲を覆う包囲管がない場合、ガス排出口から噴出すガスが、集光レンズ方向へ飛散してくる不要物や塵を吹き飛ばすため、集光レンズが曇りにくく、光ファイバに照射される紫外線強度が低下しにくいという利点がある。
なお、このガスが酸素以外の不活性ガスであり、ガスが樹脂に吹き付けられる場合には、樹脂近傍の酸素濃度を低下させることができ、酸素による樹脂硬化阻害作用を抑制することができる。
また、上述の装置は、半導体発光素子をガスにより冷却する構造であるため、その構造が簡単であり、したがって、小型化を達成することができる。
また、本発明に係る光ファイバの被覆形成方法は、紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバに対して、上述の紫外線照射装置から紫外線を照射して硬化させる光ファイバの被覆形成方法において、紫外線照射装置のガス導入口から包囲体内にガスを導入しつつ、半導体発光素子から、集光レンズを介して、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射する工程を備えることを特徴とする。
この方法によれば、包囲体内の半導体発光素子がガスにより冷却されるため、半導体発光素子の温度上昇に伴う出力低下と劣化を抑制し、長寿命化を達成することができる。
本発明の紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法によれば、従来の紫外線照射装置と比較して低消費電力、且つ、低ランニングコストで光ファイバ被覆を形成することができる。また、生産性よく光ファイバを製造することができる。
以下、実施の形態に係る紫外線照射装置及び光ファイバの被覆形成方法について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
以下に説明される紫外線照射装置の適用される光ファイバ製造装置の構造としては、以下の類型があるが、光ファイバ製造装置の概要については後述する。
(1)従来のUVランプに代えて、紫外線を出射する半導体発光素子を複数用いた紫外線照射装置を配置した光ファイバ製造装置。(第一形態)この場合、少なくとも二種類の半導体発光素子を使用する。各種類の半導体発光素子が出射する紫外線のピーク波長が異なる。一つの包囲体に一つの半導体発光素子が収められていて複数種類の半導体発光素子が組み合わされるように複数の包囲体を使用するのでもよく、一つの包囲体に複数種類の半導体発光素子を収めるのでもよい。
(2)従来のUVランプの後段に、紫外線を出射する半導体発光素子を複数用いた紫外線照射装置を配置した光ファイバ製造装置。(第二形態)
いずれの光ファイバ製造装置においても、複数の半導体発光素子からなる紫外線照射装置が適用される。以下では、このような紫外線照射装置50について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る紫外線照射装置50の斜視図である。
紫外線照射装置50は、光ファイバFの表面に塗布された紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化させるものであり、光ファイバFの周囲に配置された複数の紫外線照射装置UVAからなる。XYZ直交座標系において、光ファイバFは、X軸方向に沿って延びており、走行しているものとする。YZ平面はX軸に垂直である。第1の紫外線照射装置UVAは、YZ平面内において、Z軸方向に平行に紫外線UVを出射する。第2及び第3の紫外線照射装置UVAは、YZ平面内において、Z軸からそれぞれ±120度回転した方向に平行に紫外線UVを出射する。いずれの紫外線UVも樹脂被覆された光ファイバFに照射される。
1つのYZ平面内には3つの紫外線照射装置UVAが配置されているが、これらを1セットとして、X軸方向に沿って3セット並んで配置されている。もちろん、この紫外線照射装置のセットの数は3以上であってもよく、1セットに含まれる紫外線照射装置UVAの数は3以上であってもよい。
第1セットの紫外線照射装置に含まれる半導体発光素子が出射する紫外線のピーク波長がいずれの半導体発光素子でも同じとし、別のセットの半導体発光素子は別の波長の紫外線を照射するものとする。例えば、図1において紫外線照射装置1A、1B、1Cから出射される紫外線のピーク波長が同じ波長λ1であるとし、紫外線照射装置2A、2B、2Cから出射される紫外線のピーク波長が同じ波長λ2とし、かつλ1とλ2とが異なるとする。別のセットの半導体発光素子から出射される紫外線のピーク波長は特に限定されずλ1でもλ2でもそれとは別の波長であってもよい。
一つのセットの紫外線照射装置に含まれる半導体発光素子がそれぞれ異なるピーク波長の紫外線を照射するものであってもよい。例えば、図1において紫外線照射装置1Aと紫外線照射装置1Bから出射される紫外線のピーク波長をλ1とし、紫外線照射装置1Cから出射される紫外線のピーク波長がλ2とする。この場合は、光ファイバの走行方向(図1ではX軸方向)に並ぶ紫外線照射装置から出射される紫外線のピーク波長もλ1とλ2とが組み合わされるようにする。例えば紫外線照射装置2Aと紫外線照射装置2Bから出射される紫外線のピーク波長をλ2とし、紫外線照射装置2Cから出射される紫外線のピーク波長をλ1とする。光ファイバの走行方向にそって並ぶ紫外線照射装置1A、2A、3Aから少なくとも2種類の紫外線が照射されることとなる。紫外線照射装置3A、3B、3Cから出射される紫外線のピーク波長はλ1でもλ2でも別の波長でもよい。
紫外線硬化型樹脂が硬化するのに十分な紫外線(5000〜7000mW/cm)が照射されるように、紫外線照射装置UVAの数を揃える(光源ユニットを多段に配列する)。紫外線照射装置UVAの外径(筒の外径)は数mmないし20mmであるので、多段に並べても紫外線照射装置として必要な長さ(高さ)は紫外線ランプの場合よりも短い。例えば、光源ユニットの数を3段構成とし、その高さを60mmとすることができる。
また、同図では、光ファイバFの周囲には包囲管501が設けられているが、この包囲管501を省略し、紫外線UVが包囲管501を介することなく樹脂被覆に照射される構造とすることも可能である。包囲管501を使用する場合、包囲管501の材料は紫外線に対して透光性を有している石英管が好適に用いられるが、これを遮光性の金属からなることとして、包囲管501の外壁に紫外線導入用の貫通孔を設けることもできる。包囲管501内には、窒素ガスなどその温度で反応性のほとんどないガスを流し、ガス中の酸素濃度を0.5vol%以下にして。酸素による紫外線硬化型樹脂の硬化阻害を起こさないようにしつつ紫外線硬化型樹脂から出る揮発成分をガス流とともに流し去る。なお、酸素により硬化が阻害される樹脂は、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン系、等の光重合開始剤を含むラジカル重合系樹脂である。包囲管501内の不活性ガスの流れを層流に近づけることによって、包囲管501内での光ファイバの振動を抑制することも可能となる。
図2は、図1に示した個々の紫外線照射装置UVAのII−II矢印断面図である。
紫外線照射装置UVAは、円筒状の包囲体502の一方端に光出射開口502Cを有する包囲体502を備えている。包囲体502の他方端には、ガス導入口が設けられており、このガス導入口にガス導入管503が接続されている。ガス導入管503からは窒素などの常温でほぼ不活性なガスGが包囲体502内に導入される。包囲体502内には、紫外線を出射する半導体発光素子35と半導体発光素子35からの紫外線を集光する集光レンズ34が入れられる。集光レンズ34は半導体発光素子35の光出射開口502C側に配置する。
包囲体502内には、板状の固定部材39が嵌っており、光源のマウント基台36は、固定部材39を介して包囲体502の内面に固定されている。固定部材39は、包囲体502の先端側の一部を構成している。この固定部材39の材料及び形状は特に限定されず、金属や樹脂の他、接着剤であってもよい。固定部材が包囲体502と一体成形されたものであってもよい。その場合は包囲体502が内面に突き出た固定部を有するということになる。基台36の光出射側には半導体発光素子35が固定されており、半導体発光素子35を覆うように集光レンズ34が基台36に固定されている。基台36の光出射側とは反対側には放熱金属板37を介して放熱フィン38が固定されている。
図3は紫外線UVの出射方向とは逆方向に個々の紫外線照射装置UVAを見た紫外線照射装置UVAの正面図である。なお、図2は、図3におけるII−II矢印線に沿って切った装置の断面図でもある。
包囲体502の固定部材39は、半導体発光素子35からの紫外線出射方向に向けてガスを排出する複数のガス排出口39aを備えていることが好ましい。包囲管501がない場合、ガス排出口39aから噴出するガスが、集光レンズ34方向へ飛散してくる不要物(例えば樹脂硬化時の揮発成分)や塵を吹き飛ばすため、集光レンズ34が曇りにくく、光ファイバFに照射される紫外線強度が低下しにくいという利点がある。なお、包囲体502内に導入され、ガス排出口39aから噴出するガスGが、酸素以外の不活性ガスであり、ガスGが光ファイバ被覆樹脂に吹き付けられる場合には、被覆樹脂近傍の酸素濃度を低下させることができ、酸素による樹脂硬化阻害作用を抑制することができる。このように、円筒形の包囲体502の先端に近い位置に、半導体発光素子35からなる紫外線光源が設置され、包囲体502の後方より前方に向けて不活性ガスGを流すため、紫外線光源と包囲体内面間にはガス排出口39aなどの隙間を設けられた構造になっている。ガス排出口は包囲体の側面や後面(光ファイバと逆側)に設けられてもよい。
なお、不活性ガスGが窒素であれば大気解放が可能であり、また、別の配管を包囲体502に設けて不活性ガスを回収してもよい。冷却が目的であるので、ガスの温度は室温以下で紫外線照射装置が結露しない範囲であるのが好ましい。
また、上述の装置は、半導体発光素子をガスにより冷却する構造であるため、その構造が簡単であり、したがって、小型化を達成することができると共に、半導体発光素子の温度上昇を抑制し、発光出力の低下の抑制と、長寿命化を達成することができる。
図4は、紫外線照射装置UVA内に固定された光源の分解斜視図である。
長方形のセラミックスからなる基台36は、すり鉢状の凹部を有しており、この凹部の底面上に半導体発光素子35が固定されている。半導体発光素子35上には、半導体発光素子35を収容する凹部を有する集光レンズ34が設けられており、集光レンズ34は基台36の凹部内に嵌っている。基台36の凹部の内面には必要に応じてAgやAlなどからなる反射膜が形成されることが好ましい。
次に、本実施形態に係る製造方法によって製造される光ファイバについて説明する。
図5は、光ファイバFの長手方向に垂直な断面図である。
光ファイバ素線は、コアCR及びコアCRの周囲に設けられたクラッドCLからなる裸光ファイバF1と、その表面を被覆している被覆層C1,C2とを含んで構成されている。裸光ファイバF1は、プリフォームを線引きして形成されたガラスファイバである。被覆層C1,C2は、紫外線が照射されると硬化する紫外線硬化型樹脂からなり、裸光ファイバF1の表面を保護する機能を有している。なお、被覆層C1,C2は、裸光ファイバに隣接している内層(プライマリ樹脂)C1と、その内層C1を取り巻く外層(セカンダリ樹脂)C2の2層から構成されている。
本実施形態において、被覆層C1,C2が、顔料・染料などで着色されている場合には、識別性を付与する機能を有することもできる。また、被覆層C2の外に紫外線硬化型樹脂からなる着色層を設けられることもある。
内層C1及び外層C2に含めることができるラジカル系光重合開始剤の一例は、以下の通りであり、これらの光重合開始剤は、いずれか単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
(1)イルガキュア907:(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)
(2)イルガキュア819:(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)
各光重合開始剤の化学構造式を図13(イルガキュア907:以下、I−907)、図14(イルガキュア819:以下、I−819)にそれぞれ示す。なお、「イルガキュア」は登録商標であり、上記光重合開始剤はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のものである。
上述のラジカル系光重合開始剤と共に、内層C1及び外層C2に含有される樹脂材料の一例は以下の通りである。
(内層C1)
内層C1には、軟質(ヤング率が1kg/mm以下のものを言う)の紫外線硬化型樹脂を用いることが望ましい。内層樹脂には、ポリエーテル系或いはポリエステル系ウレタンアクリレートの使用が好ましく、必要に応じて反応性希釈モノマーを含んでも良い。反応性希釈モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の化合物が挙げられ、これらは1種使用しても良いし、2種以上併用しても良い。内層C1のヤング率は、例えば紫外線硬化型樹脂のポリエーテル部分の分子量を大きくすること、または直鎖状の分子量の大きな単官能希釈モノマーを選定することでヤング率を小さくすることが出来る。
(外層C2)
外層C2には、硬質(ヤング率が10kg/mm以上のものを言う)の紫外線硬化型樹脂を用いることが望ましい。外層樹脂には、ポリエーテル系或いはポリエステル系ウレタンアクリレートの使用が好ましく、必要に応じて反応性希釈モノマーを含んでも良い。反応性希釈モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等の化合物が挙げられ、これらは1種使用しても良いし、2種以上併用しても良い。外層C2は、ポリエステル又はポリエーテル部分の分子量を小さくすること、ウレタン基濃度を上げること、またはベンゼン環等の剛直な分子構造を有するモノマーや多官能モノマーを選定することでヤング率を大きくすることが出来る。
図2を参照すると、紫外線照射装置UVAは、単一の半導体発光素子35からなる紫外線光源を備えている。そして、図5に示すように、2種類の樹脂が内層C1及び外層C2として塗布された光ファイバF1が図1に示した包囲管501の中心軸に沿って移動する。なお、上述のように包囲管501は省略することができ、この場合にはガスの吹き付け効果を見込むことができる。
図2に示した半導体発光素子35としては、紫外線レーザダイオード(UV−LD)又は紫外線発光ダイオード(UV−LED)が用いられる。半導体発光素子35は、例えば図示しない制御装置に電気的に接続され、該制御装置により半導体発光素子35への供給電力が制御されても良い。半導体発光素子35の前面には集光レンズ34が固定されており、好ましくは2層の樹脂被覆上でスポット径φ1mm程度または1mm幅×12mm長くらいのラインビーム形状に集光される。紫外線硬化型樹脂を硬化するためには、照射する紫外線の照射強度が5000〜7000mW/cmであることが好ましい。
半導体発光素子35は、自身の発熱によりかなりの高温(〜100℃)となり、高温劣化により照射強度が低下し、且つ自身の寿命を大きく減少させる。これを防ぐため、半導体発光素子35は、これが固定されるマウント用基台36、放熱金属板37を介して、放熱フィン38に熱的に接続され、更に、ガス導入管503から導入されたガスによって冷却される。不活性ガスを包囲体502内に流すことで、紫外線光源が冷却され、その劣化を防ぎ、照射強度の経時的な低下を防ぐことができると共に、光ファイバにガスを吹き付ける場合、光ファイバの被覆樹脂を硬化する時に発生する揮発物が集光レンズに付着することを防ぐことができる。なお、基台36、放熱金属板37、放熱フィン38に用いることができる金属としては、CuやAlが列挙される。放熱フィン38により、半導体発光素子35において発生した熱を、マウント用基台36を介して奪い、半導体発光素子35の温度を約50℃に保持することが可能となる。これにより、半導体発光素子35も長寿命化する。
半導体発光素子35であるUV−LEDは、単一で狭い(±5nm)発光波長を有するが、本システムの紫外線照射装置UVAには、発光スペクトルのピーク値を与える波長(中心波長)が異なる2種類以上の半導体発光素子35を、一つの紫外線照射装置UVAに同時に搭載してもよい。例えば、図1においてすべて紫外線照射装置が二つの異なる半導体発光素子を含み、それらが出射する紫外線のピーク波長が異なる。あるいは、紫外線照射装置1A、1B、1Cが出射する紫外線のピーク波長が異なる二つの半導体発光素子を含み、他の紫外線照射装置2A〜3Cはそれらと同じまたは違うピーク波長の紫外線を照射する半導体発光素子を一つまたは複数含むのでもよい。図1の場合では光ファイバの周囲三方向から紫外線が照射されるので、それら三方向のいずれにおいても、少なくとも一つの紫外線照射装置はピーク波長の異なる波長の紫外線を照射する二つの半導体発光素子を含ませる。例えば、図1において紫外線照射装置1A、2B、3Cにピーク波長の異なる紫外線を照射する二つの半導体発光素子を入れる。
より具体的には、ピーク波長λ1、λ2は、それぞれ、紫外線硬化型樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収スペクトルのピーク値を与える波長λ3±10nmの範囲内、又は吸収スペクトルのショルダー値を与える波長λ4±10nmの範囲内に存在する。すなわち、これらは以下の関係式を有している。
・λ3−10nm≦λ1≦λ3+10nm
・λ3−10nm≦λ2≦λ3+10nm
・λ4−10nm≦λ1≦λ4+10nm
・λ4−10nm≦λ2≦λ4+10nm
図12は、光重合開始剤の種類と、ピーク値を与える波長λ3及びショルダー値を与える波長λ4を示す表である。
なお、実用的には、ピークの波長が365nmより長波長のLEDを用いた場合、発光出力が大きくなる。
例えば、樹脂中に光重合開始剤としてI−819が用いられている場合、その吸収波長のピーク位置λ3は280〜300nm、ショルダー位置λ4は365nmであるから、半導体発光素子35としては、(A)290±10nm、(B)365±10nmの範囲に発光波長のピーク位置λ1、λ2を有する2種類のUV−LEDを用いればよい。
このようなUV−LEDは、以下のような材料から構成することができる。
(A)290nm±10nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
(B)365nm±10nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
また、内層C1および外層C2の樹脂にI−819という光重合開始剤が用いられている場合には、中心波長λ1、λ2が、それぞれ(C)360±5nm及び(D)395±5nmのLEDを使用すればよい。
このようなUV−LEDは、以下のような材料から構成することができる。
(C)365nm±5nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
(D)395nm±5nm
活性層:InAlGaN、InGaN、AlGaN、GaN、C、等
基板:Al、GaN、SiC、Si、等
上述のように、一つのLEDから出る波長の幅が狭いので、一種類のLEDを使用するのでは樹脂の硬化性が不十分であるが、二種類以上のLEDを使用して紫外線硬化型樹脂の吸収ピーク波長の近くのある程度幅のある波長の光を照射すると、紫外線硬化型樹脂を十分に硬化させることができる。なお、UVランプと併用する場合には、一種類のLEDであっても樹脂の硬化性を高めることができる。
半導体発光素子35は、樹脂が塗布された光ファイバを中心として複数個配置されている。外層C2上でスポット径φ1mm程度、若しくは1mm幅×12mm長くらいのラインビーム形状に集光するので、光ファイバの周囲全てに紫外線を照射するには、周囲方向に複数点から紫外線を照射する必要がある。例えば、図1に示した例では、1つのYZ平面内において、3個の紫外線照射装置UVAが配置される。なお、この3個の紫外線照射装置UVAを1セットとし、一つの紫外線照射装置UVAには、光ファイバの走行方向に沿って数セットの光源が並べて配置されている。
図1には、3セットの光源ユニットが描かれているが、これより多くのセット数を並べても、少ないセット数を並べても構わない。2種類以上の紫外線光源を一つの紫外線照射装置50に同時に搭載する場合には、このセット毎に、発光波長のピーク位置が異なる紫外線光源を交互に並べて配置することができる。
なお、反対側の紫外線照射装置(半導体発光素子35)UVAに紫外線UVが当たると、その半導体発光素子35の温度が上昇したり、不要な発振が生じることで、照射量が減り、かつ寿命が短くなるので、好ましくない。そこで、図1に記載のように、光ファイバを挟んで反対側に半導体発光素子35が位置しないように、120°間隔で半導体発光素子35を配置する。換言すれば、1つのYZ平面内の第1、第2、第3の紫外線照射装置UVA(第1、第2及び第3の半導体発光素子35)は、自身以外の半導体発光素子35の光出射面に向けて紫外線を出射しないように配置されている。
図6は、変形例に係る紫外線照射装置UVAの断面図である。図7は紫外線UVの出射方向とは逆方向に個々の紫外線照射装置UVAを見た紫外線照射装置UVAの正面図である。なお、図6は、図7におけるVI−VI矢印線に沿って切った装置の断面図でもある。
この紫外線照射装置UVAと図2に示したものとの相違点は、包囲体502の先端部の形状のみである。本例では、包囲体502の先端部に円錐台状のフード部502aが設けられており、半導体発光素子35の光軸上のフード部502aは開口している。フード部502aの開口502bは光出射開口を構成し、半導体発光素子35から出射され集光レンズ34によって集光される紫外線UVは、開口502bを介して被覆樹脂方向へ出射される。
この構造の場合、包囲体内部へ向かう飛散物がフード部502aによって阻止されるため、集光レンズ34などの汚れや曇りを抑制することができる。また、フード部502aの開口502bはガス排気口も構成しており、その開口径は、固定部材39が取り付けられた包囲体本体の内径よりも小さいので、排出ガスの流速を増加させることができ、勢いよく被覆樹脂にガスを吹き付けることも可能となる。
図8は紫外線照射装置UVAの配置を変えた例を示す斜視図である。
図1に示したものとの相違点は、小型の紫外線照射装置UVAの数と向きのみである。すなわち、第1実施形態では、1つのYZ平面内に配置される紫外線照射装置UVAの数は3つであり、紫外線UVの出射方向はYZ平面に平行であったが、この例では、1つのYZ平面内に正射影される紫外線照射装置UVAの数は4つであり、紫外線UVの出射方向は、光ファイバFの方向に向いているものの、YZ平面には平行ではない。各紫外線照射装置UVAの構造は、上述の通りである。
この形態では、X軸方向で見て、4個の紫外線照射装置UVA(半導体発光素子35)が配置されている。この4個の光源からなる光源ユニットを1セットとし、一つの紫外線照射装置50には、光ファイバの走行方向に沿って数セットの光源ユニットが並べて配置されている。
図8には、3セットの光源が描かれているが、これより多くのセット数を並べても、少ないセット数を並べても構わない。2種類以上の紫外線光源を一つの紫外線照射装置に同時に搭載する場合には、このセット毎に、発光波長のピーク位置が異なる紫外線光源を交互に並べて配置することができる。
1つの紫外線照射装置UVAの反対側の紫外線照射装置UVA(半導体発光素子35)に紫外線UVが当たると、その半導体発光素子35の温度が上昇したり、不要な発振が生じることで、照射量が減り、かつ寿命が短くなるので、好ましくない。そこで、図8記載のように、紫外線照射装置UVAをYZ平面に対して傾けて、反対側の半導体発光素子35に紫外線UVが当たらないようにしてある。換言すれば、図8に示したように、1つの半導体発光素子35は、自身以外の半導体発光素子35の光出射面に向けて紫外線を出射しないように配置されている。
次に、本実施形態に用いられる光ファイバ素線の製造装置について図9及び図10を用いて説明する。なお、図9又は図10において、符号6,7,10,11,12は紫外線照射装置を示しており、上述の第一形態では、これらの紫外線照射装置の一部または全てが本発明の紫外線照射装置である。これらの紫外線照射装置の一部はUVランプを使用したものであってもよい。
なお、UVランプからなる紫外線照射装置は、裸光ファイバの表面に塗布された2種類の樹脂に紫外線を照射して硬化させるための装置であり、紫外線照射装置を通過する光ファイバを覆う円筒管と樹脂を硬化させるための紫外線(UV光)を出力する紫外線光源とを含んで構成されている。裸光ファイバに塗布された2種類の樹脂は、光ファイバが紫外線照射装置を通過することによって硬化し、裸光ファイバを覆う2層の被覆層となり、光ファイバ素線が形成される。
図9は、光ファイバ素線を製造する第1の製造装置を示す図である(タンデムコーティング方式)。
この製造装置は、プリフォーム1を収容する線引炉2、強制冷却装置3、外径測定器4、第1の塗布装置5、紫外線照射装置6,7、外径測定器8、第2の塗布装置9、紫外線照射装置10,11,12、外径測定器13、気泡センサ14、ガイドローラ15、キャプスタン16、巻き取りボビン17を、光ファイバの通過経路に沿う順番に備えている。
図10は、光ファイバ素線を製造する第2の製造装置を示す図である(デュアルコーティング方式)。
この製造装置は、プリフォーム1を収容する線引炉2、強制冷却装置3、外径測定器4、第1の塗布装置5、第2の塗布装置9、偏肉測定器20、紫外線照射装置6,7,10,11、外径測定器13、気泡センサ14、ガイドローラ15、キャプスタン16、巻き取りボビン17を、光ファイバの通過経路に沿う順番に備えている。
上述の製造装置においては、プリフォーム1から引き出された光ファイバFの初期の走行方向は鉛直方向に設定され、気泡センサ14の下部のガイドローラ15よりも後段では、光ファイバの走行方向は水平方向に設定されている。線引炉2は、石英ガラスを主成分とするプリフォーム1を線引きして裸光ファイバF1(光ファイバF)を形成するための装置である。線引炉2は、線引炉2内にセットされるプリフォーム1を挟んで(或いは囲んで)配置されるヒーターを有している。プリフォーム1は、その端部がヒーターにより加熱されて溶融し、線引きされて光ファイバFとなる。線引きされた光ファイバFは、所定の走行方向に沿って移動する。
強制冷却装置3は、線引きされた光ファイバFを冷却するための装置である。強制冷却装置3は、光ファイバFを十分に冷却するために所定の走行方向に沿って所定の長さを備えている。強制冷却装置3は、光ファイバFを冷却するために例えば図示しない吸気口及び排気口を備え、この吸気口及び排気口から冷却用ガスを導入することによって光ファイバFを冷却する。
塗布装置5,9は、裸光ファイバに樹脂を塗布するための装置である。塗布装置5,9には紫外線によって硬化する2種類の液状の樹脂が保持されており、塗布装置の樹脂中を裸光ファイバが通過することによって裸光ファイバの表面に内層樹脂(プライマリ樹脂5A)と外層樹脂(セカンダリ樹脂9A)が塗布される。
図9に示した例では、これらの樹脂が異なる時期に塗布してから順次硬化され(タンデムコーティング)、図10に示した例では、これらの樹脂が同時に塗布されてから同時に硬化される(デュアルコーティング)。但し、タンデムコーティング方式の場合はデュアルコーティング方式に比べてスペース効率が悪くなる。
紫外線照射装置6,7,10,11,12は、裸光ファイバの表面に塗布された2種類の樹脂に紫外線を照射して硬化させるための装置である。表面に2種類の樹脂が塗布された裸光ファイバが紫外線照射装置を通過することによって、裸光ファイバ及び2層の被覆層を有する光ファイバ素線が形成される。
ガイドローラ15は、2種類の樹脂が塗布された光ファイバが所定の走行方向に沿って移動するように光ファイバを案内するための装置である。光ファイバ素線は、ガイドローラー15により走行方向が変更されて、キャプスタン16に引き取られ、巻き取りボビン17へ送られる。巻き取りボビン17は、完成した光ファイバ素線を巻き取るための装置である。
上述の構成では、樹脂被覆の表層部から内部まで十分な硬化特性を持たせることが可能となり、ファイバの品質を良好に保つことができる。特に、短波長側の紫外線が樹脂表面の硬化を促進する。例えば、光重合開始剤がI−819の場合、280〜300nmの範囲内にピークを有する紫外線を各半導体発光素子から照射すると、紫外線硬化型樹脂の表面がまず硬化する。先に表面を硬化させて、その後に別の紫外線照射装置で、例えば、365±10nmの範囲内にピークを有する紫外線を各半導体発光素子から照射し、紫外線硬化型樹脂の内部を硬化させることができる。
(第二形態)
樹脂の表面が硬化していればガイドローラで光ファイバの走行方向を変えることができる。図9又は図10において縦に並んでいる紫外線照射装置10,11,(12)の一部を、ガイドローラ15(図に15が二つあるが、上流側のもの)の下流でキャプスタン16の直前位置までに移動させ、又は別の紫外線照射装置を配置し、すなわち、このような紫外線照射装置50を配置して紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射してさらに硬化させることができる。例えば、図15において線速が速いために紫外線照射装置6、7、・・・で紫外線硬化型樹脂の表面しか硬化できなかった場合でも、ガイドローラの15に配置した紫外線照射装置50でさらに紫外線硬化型樹脂を硬化させて十分な強度の被覆とすることができる。この紫外線照射装置50は、いずれのタイプの製造装置にも適用することができる。
紫外線硬化型樹脂の表面を硬化できる程度に紫外線照射装置7、11、12をなくして、その分紫外線照射装置50で紫外線硬化型樹脂を硬化させることもできる。紫外線照射装置7、11,12の分のスペースは冷却装置を延長するなど光ファイバの冷却にあてることができ、冷却長を延長することにより、光ファイバの線速を上げることができる。紫外線照射装置50は、その長さが数十mmとすることができるため、ガイドローラ15より下流のパスラインに適宜配置できる。複数箇所に分けて配置してもよい。
ガイドローラ15の下流に紫外線照射装置50を配置する場合は、光ファイバFを覆う包囲管501は必要ない。
紫外線照射装置50の位置では紫外線硬化型樹脂がある程度硬化しているので、紫外線照射装置50で照射される紫外線のピーク波長は一つでも構わない。つまり紫外線照射装置50に含まれる半導体発光素子が一種類であっても構わない。その他の構成は第一形態で説明したものと同様である。
また、紫外線照射装置50に含まれる紫外線照射装置UVAは、光ファイバの樹脂被覆層の硬化状態に応じて何セット使用しても良い。
樹脂塗布装置の直後に置かれる紫外線照射装置は広帯域なスペクトルを有するUVランプとすることができる。塗布装置の直下の紫外線照射装置(UVランプ)によって、ある程度、紫外線硬化型樹脂は硬化しているので、樹脂が最初に触れるローラ(直下ローラという)15に、紫外線硬化樹脂が付着したり、樹脂が押されて偏肉することがない。そして、直下ローラ15で、光ファイバの走行方向が縦から横に変えられた後に、紫外線照射装置50から紫外線が照射され、さらに紫外線硬化型樹脂の硬化が進み十分に硬化する。
光ファイバが線引されてから直下ローラ15まで、光ファイバが鉛直に走行する部分は、図9及び図10に示すように種々の装置が配置され混み合っている。そして、この鉛直に走行する部分の長さを延長することは、装置の配置される建物の高さが決まっており、困難である。しかし、直下ローラで向きを変えられてからは、比較的スペースに余裕がある。そこで、直下ローラ15の後に、紫外線照射装置50を配置することが好ましい。
第二形態においても紫外線照射装置UVAのガス導入口から包囲体内にガスを導入しつつ、半導体発光素子から、集光レンズを介して、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射する工程を備えている。この方法によれば、包囲体内の半導体発光素子がガスにより冷却されるため、半導体発光素子の温度上昇に伴う出力低下と劣化を抑制し、素子の長寿命化を達成することができる。
ここまでは第一形態および第二形態とも光ファイバの線引の例を示したが、ボビンに巻き取られた光ファイバを繰り出して、その上にさらに紫外線硬化型樹脂を被覆する場合も、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化することは同様にできる。
なお、照射される紫外線は、連続光であっても、パルス光であってもよい。なお、パルス光の場合には、各パルスの紫外線照射タイミングをずらすことも可能である。
以下実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
タンデムコーティング方式により二層被覆光ファイバを製造した。図15に示した通り、紫外線照射装置50を、気泡センサ14直下のガイドローラ15と次のガイドローラ15の間に配置した。紫外線照射装置50の構造は、図1のように同一のYZ平面内に120度の角度で3個配置したもの光ファイバ走行方向に沿って光源ユニットを4セット並べ(なお、図1では3つの光源ユニットのみ図示されている)、合計12個の小型の紫外線照射装置UVAを配置した。第一セットと第三セットで照射される紫外線のピーク波長を300nmとし、第二セットと第四セットで照射される紫外線のピーク波長を365nmとした。なお、図1に示した包囲管501は用いず、不活性ガスが光ファイバに直接吹き付けられる構成とした。得られた二層被覆光ファイバは、外径125μmφのガラスファイバ外周に内層200μmφ、外層240μmφの二層の紫外線硬化型樹脂を塗布硬化させたものである。
内層樹脂に含まれる光重合開始剤はI−819の一種類、外層樹脂に含まれる光重合開始剤はI−819とI−907を含む物を用いた。内層樹脂及び外層樹脂に含まれる樹脂は、それぞれウレタンアクリレートである。不活性ガスGとしては窒素ガスを用いた。光ファイバの線速1500m/minで試作を実施した。
紫外線照射装置50を使用しない場合、被覆光ファイバの硬化度として樹脂のゲル分率を測定した結果、ゲル分率は81%(比較例1)であった。この被覆光ファイバは巻き取りボビンに巻くと、ボビンの最下層が、その上に巻かれる光ファイバにより圧迫されて変形し、扁平していた。紫外線照射装置50を使用した場合、得られた被覆光ファイバのゲル分率は91%(実施例1)であり、ボビンに巻き取られた被覆光ファイバに扁平は見られなかった。
また、単一の紫外線照射装置50内に含まれるスペクトルが二種類のもの(実施例2)と、一種類のもの(比較例2)を用い、これを従来の紫外線光源6,7,10,11と置換し、被覆樹脂の硬化度を表面摩擦力として測定した。なお、内層及び外層樹脂に含まれる光重合開始剤はI−819の一種類を用いた。スペクトルが二種類の場合の構造は、上記実施例の通りであり、ピークを与える中心波長を365nm及び395nm(実施例2)とし、一種類の場合は、ピークを与える中心波長を395nm(比較例2)又は430nm(比較例3)とした。なお、図1に示した包囲管501は用いることとし、不活性ガスを内部に流し、且つ、光源ユニットの数は5つとし、その他の条件は上記の実施例1と同一である。
ここで、表面摩擦力の測定方法について説明する。
図11は表面摩擦力の測定工程を示す模式図である。先ず、直径6mmの円柱状の棒100に、紫外線照射装置50を除く図10に示す製造装置で製造された光ファイバ素線Fの一部を100回密に1層巻き付け、ファイバ群FBを形成する。光ファイバ素線Fの他の部分(長さ約1000mm)を、光ファイバ素線Fが巻かれた棒100と滑車101とにかける。この際、滑車101と棒100とは、それらの間の光ファイバ素線がほぼ水平になるように配置しておく。
また、滑車101と棒100とに掛けられた光ファイバ素線の一端にはロードセル102を取り付け、他端には約3.4gの重り103を取り付ける。重り103が付けられてつり合っている状態で、ロードセル102に係る荷重を基準値としてのゼロとする。次に、500mm/min.の速さで矢印Mに沿ってロードセル102を200mm引き上げる(この際、重りも引き上げられる)。
この時、ロードセル102で測定される荷重を0.02秒間隔で取得する。ロードセル102が20mmから120mmまで移動する間に取得されたデータを、ロードセル102の移動距離10mm毎に、10の区間に分け、それらの区間の最大値を平均して被覆層の表面摩擦力、言い換えれば光ファイバ素線の表面摩擦力とする。この値が0.4Nより大きい場合、樹脂(表面)は未硬化になる傾向があり、良品の光ファイバを製造しにくくなる場合が生じやすい。表面摩擦力が0.4Nより大きいと、ボビンに巻かれた状態で光ファイバ同士がくっついて、ボビンから光ファイバを繰り出せなくなることがある。0.3N以下ではそういう問題がない。また0.2Nより小さい場合も、必要以上に紫外線が樹脂に照射されているため、石英管内に曇りが生じやすくなる。
内層及び外層樹脂に含まれる光重合開始剤の吸収波長のピーク位置、又はショルダー位置の前後±10nmの範囲に入る発光波長のピーク位置を持つ2種類以上の紫外線光源を採用した場合(実施例2)、0.2〜0.3Nと好ましい表面摩擦力が得られた。それに対し、光重合開始剤の吸収波長のピーク位置、又はショルダー位置±10nmの範囲に入る発光波長のピーク位置を持つ1種類の紫外線光源を採用した場合(比較例2)、表面摩擦力は0.6Nとなった。更に光重合開始剤の吸収波長のピーク位置、又はショルダー位置±10nmの範囲に入らない発光波長のピーク位置をもつ紫外線光源を採用した場合(比較例3)、表面摩擦力は1.0Nを超えた。
また、上述の構造では、個々の紫外線照射装置UVAが向き合わないように、光ファイバの周囲方向の120°間隔で配置し、かつ冷却構造があることにより、紫外線光源の温度は100℃以上から約50℃にまで冷却されており、高温による劣化を防ぎ、照射強度の低下(寿命の低下)を抑制できた。すなわち、UV−LDやUV−LEDなどの光源を樹脂部材内に封止している場合、光源自体が高温になるため、これを封止している樹脂部材やキャビティが劣化し、UV光の光ファイバ被覆樹脂への照射強度が低下し、しがたって、UV光硬化型樹脂の光硬化性が低下するが、上記冷却構造を採用することで、この高温化によるUV−LED自体の寿命の低下を抑制することができる。特に、本実施形態では、複数のUV−LEDが、自身以外の半導体発光素子の光出射面に向けて紫外線を出射しないように、紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射しているので、その温度上昇などが抑制されている。
上記実施例では、一つの紫外線照射装置に複数の発光波長のピークを持つ紫外線発光ダイオードを搭載する場合を説明したが、紫外線照射装置毎に異なる発光波長のピークを持つ紫外線発光ダイオードを搭載することも出来る。また、UV−LEDに代えて、UV−LDを用いることも可能である。また、被覆された光ファイバの上にさらに樹脂を被覆する場合にも上記形態を適用することが可能である。さらに、光ファイバを束ねてテープ化する場合の樹脂被覆にも上記形態は適用することができる。このように、上記光ファイバは、素線に限らず、オーバーコートされてなる光ファイバ心線や、樹脂被覆された光ファイバなどの多様な形態の光ファイバを含んでいる。一旦、巻き取った光ファイバを再度繰り出して、樹脂被覆を行う場合にも、上述の装置は適用することができる。
第1実施形態に係る紫外線照射装置50の斜視図である。 図1に示した個々の紫外線照射装置UVAのII−II矢印断面図である。 紫外線UVの出射方向とは逆方向に個々の紫外線照射装置UVAを見た紫外線照射装置UVAの正面図である。 紫外線照射装置UVA内に固定された光源の分解斜視図である。 光ファイバFの長手方向に垂直な断面図である。 変形例に係る紫外線照射装置UVAの断面図である。 紫外線UVの出射方向とは逆方向に個々の紫外線照射装置UVAを見た紫外線照射装置UVAの正面図である。 第2実施形態に係る紫外線照射装置50の斜視図である。 光ファイバ素線を製造する第1の製造装置を示す図である。 光ファイバ素線を製造する第2の製造装置を示す図である。 表面摩擦力の測定工程を示す模式図である。 光重合開始剤の種類と、ピーク値を与える波長λ3及びショルダー値を与える波長λ4を示す図表である。 化学構造式を示す図である。 化学構造式を示す図である。 光ファイバ素線を製造する第1の製造装置を示す図である。
符号の説明
F1・・・光ファイバ、C1・・・内層、C2・・・外層、35・・・半導体発光素子、34・・・集光レンズ、36・・・基台。

Claims (4)

  1. 光ファイバの表面に塗布された紫外線硬化型樹脂に、紫外線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる紫外線照射装置において、
    ガス導入口及び光出射開口を有する包囲体と、
    前記包囲体内に設けられ紫外線を出射する半導体発光素子と、
    前記半導体発光素子と前記包囲体の前記光出射開口との間に設けられ前記半導体発光素子からの紫外線を集光する集光レンズと、
    を備えることを特徴とする紫外線照射装置。
  2. 出射される紫外線のピーク波長が異なる半導体発光素子が複数種類含まれることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
  3. 前記包囲体は、前記半導体発光素子からの紫外線出射方向に向けてガスを排出するガス排出口を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
  4. 紫外線硬化型樹脂が塗布された光ファイバに対して、紫外線照射装置から紫外線を照射して硬化させる光ファイバの被覆形成方法において、
    前記紫外線照射装置は、
    ガス導入口及び光出射開口を有する包囲体と、
    前記包囲体内に設けられ紫外線を出射する半導体発光素子と、
    前記半導体発光素子と前記包囲体の前記光出射開口との間に設けられ前記半導体発光素子からの紫外線を集光する集光レンズと、
    を備え、
    前記被覆形成方法は、
    前記紫外線照射装置の前記ガス導入口から前記包囲体内にガスを導入しつつ、前記半導体発光素子から、前記集光レンズを介して、前記紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射する工程を備えることを特徴とする光ファイバの被覆形成方法。







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