JP2010114312A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】陽極から有機層へのホール注入障壁を低下させることにより、有機EL素子の駆動電圧をより低電圧化させる。
【解決手段】ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素と金属酸化物を含むホール注入層を有する有機EL素子。
【選択図】図1
【解決手段】ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素と金属酸化物を含むホール注入層を有する有機EL素子。
【選択図】図1
Description
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」とする場合がある。)に関する。
有機EL素子は、有機電界発光素子あるいは有機発光素子とも呼ばれ、有機化合物を含み一般的に積層された薄膜が陽極と陰極に挟持された構造を有する。この有機化合物を含む薄膜に電流を流すと、両電極から電子及びホール(正孔)が注入し、励起子が生成され、この励起子が基底状態に戻る際に光が放射する。これが有機EL素子の発光原理である。複数の有機EL素子をマトリクス状に並べたディスプレイが有機EL表示装置である。有機EL表示装置は自発光型であるので、コントラストが高く、薄型化が容易なことから、フラットパネルディスプレイの有力候補として注目されている。また、有機EL表示装置は、液晶に対して、応答速度が非常に速く、動画表示に適していると考えられている。
有機EL素子の経時的な劣化を抑えながら発光効率を高めるために様々な検討がなされてきた。その1つとして、電極から有機層へのキャリア(電荷)の注入障壁を下げる方法が挙げられる。陰極からの電子の注入障壁を下げる役割を果たす層は電子注入層と呼ばれ、陽極からのホール(正孔)の注入障壁を下げる役割を果たす層はホール(正孔)注入層と呼ばれる。
ホール注入層として、以下のようなものが開示されている。
特許文献1には、銅フタロシアニン錯体化合物を使用するホール注入層が開示されている。また、特許文献2にはオリゴチオフェンを使用するホール注入層が開示されている。
また、特許文献3にはITO(酸化インジウム錫合金)陽極上に、酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化モリブデンなどの金属酸化物薄膜を作製し、有機層とのエネルギー障壁を低減させることが開示されている。
一方、特許文献4は、特許文献3において金属酸化物薄膜の光透過率が低く使用膜厚の上限があることから、ホール注入層として金属酸化物と有機化合物の混合膜を用いる発明が開示されている。特許文献4の中では、ポルフィリン化合物誘導体とアリルアミン化合物などの有機化合物が示されていて、それらの有機化合物のラジカルカチオンと金属酸化物のラジカルアニオンが電荷移動錯体を形成することを特徴としている。金属酸化物としては五酸化バナジウム(V2O5)が例示されている。
また、特許文献5は、特許文献4に類似しているが、ホール輸送性有機物に対する金属酸化物として3酸化モリブデン(MoO3)を使用している。
しかし、上記従来の技術では、陽極から有機層へのホール注入障壁を十分には低下させることができないという問題があった。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、陽極から有機層へのホール注入障壁を低下させることにより、有機EL素子の駆動電圧をより低電圧化させることを目的とする。また本発明は、有機EL素子をより長寿命化させることを目的とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、金属酸化物との組み合わせとして、アリールアミンをはじめとするホール輸送性材料に比べて、ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素の方が、より電圧を低下させること、耐久性を改善させることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の有機EL素子は、ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素と金属酸化物を含むホール注入層を有することを特徴とする。
本発明によれば、陽極から有機層へのホール注入障壁を低下させることにより、有機EL素子の駆動電圧を低電圧化でき、かつ長寿命化させることができる。
本発明の実施形態を詳しく説明する。
以下、低分子有機EL材料を金属マスクを用いて真空蒸着することにより、トップエミッション型のデバイスを作製する場合を例にとり、説明を進めるが、本発明はそれに限定されるものではない。
例えば、デバイスはボトムエミッション型であってもよい。また有機EL材料は高分子材料であってもよい。また有機層を形成する方法は、蒸着に限られるものではなく、スピンコートなどのウェットプロセスを用いても良い。また本発明は、デバイスだけではなく、TFTパネルを用いたアクティブマトリクス型の表示装置やパッシブマトリクス型の表示装置にも適用できる。その他、本発明は有機EL照明やセグメント型の有機ELパネルなどにも適用できる。
図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面模式図である。図1では、基板1側に陽極2を有し、光取り出し側に陰極9を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2に示す様に、基板1側に陰極9を有し、光取り出し側に陽極2を有する素子であっても良い。ただし、いずれの構成であっても光取り出し側の電極の光透過率は高いことが好ましい。なお、図1及び図2に示される構成はあくまで一例であり、場合によって層を省略することや層を追加することが可能である。例えば、電子ブロック層5は、陰極9から注入された電子が、発光層6において十分にホールと再結合せずに陽極2に漏れてしまうことを防ぐために設けられるものであるが、必須ではない。一方、電子輸送層7を2層構造にして、発光層6に接する側の層にホールをブロックする機能を持たせ、ホールが発光層6において電子と再結合せずに陰極9に漏れてしまうことを防止することも可能である。
以下、図1を用いて本発明を詳細に説明する。
まず、基板1としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、石英基板などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明をTFTパネルを用いたアクティブマトリクス型の表示装置に適用する場合、基板上に、平坦化膜や分離膜、TFTなどが必要であるが、ここでは省略する。
次に、陽極2には、ホール注入を容易にするために仕事関数の大きな材料が用いられ、例えば、酸化スズ、アルミニウムドープの亜鉛酸化物、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、Al、Ag、Cr、Auなどが挙げられる。陽極2は、これらの材料が積層されたものでもよい。また、本発明ではホール注入層3を用いるので、比較的仕事関数が小さい材料も使用可能である。なお、図1で示す構成の場合、陽極2が反射膜を兼ねることがあるが、その場合、陽極2は可視域の反射率が高い方が好ましい。もちろんホール注入機能と光反射機能を分離させることも可能であり、その場合、基板1と陽極2の間に反射膜が挿入される。
ホール注入層3は、ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素と金属酸化物を含み、好ましくはヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素と金属酸化物の混合膜によって形成される。
ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素は、炭素原子と水素原子のみから構成され、窒素原子・酸素原子・硫黄原子などの他の原子を含まない化合物である。環構成原子として窒素原子・酸素原子・硫黄原子などが含まれるヘテロ環化合物やアリールアミンなどのヘテロ原子を有する有機化合物は、一般的に錯体形成に関与すると言われるが、本発明のホール注入層3はこれらのヘテロ原子を有する有機化合物を含まない。
特許文献4などによると、ヘテロ原子を有する有機化合物と金属酸化物を共蒸着した場合、ヘテロ原子を有する有機化合物のラジカルカチオンと金属酸化物のラジカルアニオンが電荷移動錯体を形成する。そして、電荷移動錯体中のラジカルカチオンが、電圧印加時に陰極電極層の方向へ移動することにより、発光層へホールが注入される。この場合、ヘテロ原子を有する有機化合物と金属酸化物が相互作用するため化学的な状態が不安定であり、素子に電圧を印加するとキャリアのバランスが崩れ、それが劣化につながるおそれがある。一方、本発明の様にヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素を用いると、錯体形成する部位がないため、相互に作用することなく化学的に安定であり、素子寿命がより改善すると考えられる。もしヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素に金属酸化物を添加せずにホール注入層として用いた場合、素子に電流を流す際に、電圧が大幅に上昇するが、本発明では、添加された金属酸化物が導電性の物質として働き、電圧上昇が抑制されている。
本発明で用いるヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素としては、例えば、下記構造式[1]〜[3]で示される有機が挙げられる。これらのうちでも例えば下記構造式[1][2]で示されるオリゴフルオレンが好ましく、より好ましくは下記構造式[1]で示される化合物である。
本発明で使用する金属酸化物は、光透過率が高く、また導電率が高いものが、より好ましい。具体例として、三酸化モリブデン(MoO3)や二酸化モリブデン(MoO2)をはじめとする酸化モリブデン(MoOx)、五酸化バナジウム(V2O5)をはじめとする酸化バナジウム(VOx)、三酸化タングステン(WO3)をはじめとする酸化タングステン(WOx)、四酸化ルテニウム(RuO4)や二酸化ルテニウム(RuO2)をはじめとする酸化ルテニウム(RuOx)、七酸化レニウム(Re2O7)をはじめとする酸化レニウム(ReOx)等が挙げられる。この中では、特に、三酸化モリブデン(MoO3)が好適である。
ホール注入層3における金属酸化物の含有量は、好ましくは0.01体積%〜20体積%、より好ましくは0.1体積%〜5体積%である。
ホール注入層3は、例えば、真空蒸着法を用いて共蒸着することにより形成できる。蒸着源の一例として、タングステンボートやアルミナからなる坩堝を用いても良い。
ホール輸送層4には、ホール輸送能を有する一般的な有機EL材料を適用できる。例えば、アリルアミン化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。アリルアミン化合物の一例として、以下に示すαNPDが挙げられる。
電子ブロック層5は、発光層6で再結合せずに、陽極2側に漏れる電流を防ぐ目的で、必要に応じて、導入されるものであり、一例として以下に示す有機化合物が挙げられる。
発光層6としては、一般的に有機EL材料として用いられる蛍光材料及び燐光材料が使用可能である。以下に具体例の一部を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
電子輸送層7に用いる電子輸送材料としては、注入された電子を発光層6に輸送する電子輸送能を有する一般的な有機EL材料を使用できる。電子輸送能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体などが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。以下に、具体例の一部を示す。
電子注入層8に用いる電子注入材料としては、電子注入能を有する一般的な有機EL材料を使用できる。例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属、もしくはフッ化リチウム(LiF)などのその化合物を使用できる。また、前述した電子輸送材料に、アルカリ金属やアルカリ土類金属、もしくはその化合物を0.1〜数10%含有させることにより、電子注入材料として用いることもできる。電子注入層8は、必要不可欠な層ではないが、この後に陰極9を形成する際の成膜時に受けるダメージを考慮すると、良好な電子注入性を確保するために10〜100nm程度挿入した方が好ましい。
陰極9は、有機ELに使用される一般的な電極材料を使用することができるが、電子注入を容易にするために比較的仕事関数が小さい材料が好ましい。陰極9の材料としては、例えばAg、Al、Ca、AlとLiの合金、MgとAgの合金、酸化スズ、アルミニウムドープの亜鉛酸化物、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。
<実施例1>
図1に示す構造を有し、緑色発光するトップエミッション型の有機EL素子を作製した。
図1に示す構造を有し、緑色発光するトップエミッション型の有機EL素子を作製した。
基板1としてのガラス基板上に、反射電極として銀合金(AgPdCu)をスパッタ法にて200nmの厚さになるよう形成し、その上に透明電極としてインジウム亜鉛酸化物を70nmの厚さになるよう積層し、あわせて陽極2とした。
続いて、真空蒸着装置(アルバック社製)に、洗浄済みの上記基板1と材料を取り付け、1.3×10-4Pa(1×10-6Torr)まで排気した後、UV/オゾン洗浄を施した。
以下に、真空蒸着による有機層の形成方法について説明する。
まず、ホール注入層3を形成した。UV/オゾン洗浄後の基板1を有機膜形成用のチャンバーにin−situで移動させ、三酸化モリブデン(MoO3)及び下記構造式[1]で表わされる化合物を、あわせて80nmになるまで共蒸着した。化合物[1]の蒸着源としては、モリブデンボートを使用した。一方、三酸化モリブデンの蒸着源としては、フルウチ化学製のタングステンボートを用いた。化合物[1]の蒸着レートは0.953Å/secであり、三酸化モリブデンの蒸着レートは0.047Å/secである。三酸化モリブデンの濃度は4.7体積%である。
次に、ホール輸送層4として、下記構造式[10]で示されるホール輸送材料を20nmの膜厚となるように蒸着した。
発光層6は、下記構造式で示される有機化合物を共蒸着させ、全体が40nmの膜厚となるように形成した。式[11]で示される有機化合物は発光ホスト材料であり、全体の70体積%になるように共蒸着した。式[12]で示される有機化合物は発光層ゲスト材料(発光ドーパント材料)であり、全体の10体積%になるように共蒸着した。式[13]で示される有機化合物はアシストドーパント材料であり、全体の20体積%になるように共蒸着した。本実施例における発光層6は緑色発光する。
電子輸送層7は、下記構造式[14]で示される電子輸送材料を10nmの膜厚となるように蒸着した。
電子輸送層8は、上記構造式[14]で示される電子輸送材料及び炭酸セシウム(Cs2CO3)を60nmの膜厚となるように共蒸着した。炭酸セシウムは約3体積%になるように共蒸着した。
続いて、基板をin−situでスパッタ装置に移動し、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を30nmスパッタリングし、陰極9を形成した。
最後に、基板をグローブボックスに移動させ、窒素ガス中で、掘り込みガラスの縁に紫外線硬化樹脂を塗り、有機EL素子に紫外線が当たらないように紫外線を照射し、封止した。
<実施例2>
化合物[1]に代えて下記構造式[2]で表わされる化合物を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
化合物[1]に代えて下記構造式[2]で表わされる化合物を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
<比較例1>
化合物[1]に代えて下記構造式[15]で表わされるアミン構造を有するホール輸送性材料を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
化合物[1]に代えて下記構造式[15]で表わされるアミン構造を有するホール輸送性材料を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
<評価>
実施例1及び比較例1で作製した有機EL素子を以下の方法で測定した。
実施例1及び比較例1で作製した有機EL素子を以下の方法で測定した。
まず、トプコン製の色彩輝度計BM−7を用いて、電流−電圧−輝度測定を行った。電圧−電流の測定結果を図3に、電流−輝度の測定結果を図4に示す。図3中、実施例1は×印で示され、比較例1は●印で示される。また、図4中、実施例1は●印で示され、比較例1は×印で示される。図3に示すように、電流密度100mA/cm2のときの駆動電圧が、比較例1では4.4Vであるのに対し、実施例1では3.9Vであり、11.4%低下した(以下、この値を「電圧低下率」とする)。また、図4に示すように、電流密度100mA/cm2のときの輝度は、比較例1では14.9cd/Aであるのに対し、実施例1では14.3cd/Aであり、ほぼ同等であった。
次にダイトロン製の耐久装置を用いて、定電流耐久測定を行った。測定条件は、電流密度が100mA/cm2、測定時間が95時間である。測定当初の輝度を1としたときの規格化された耐久測定結果を図5に示す。グラフ中、実施例1は●印で示され、比較例1は×印で示される。測定当初の輝度1に対して、95時間後の比較例1の輝度は0.72であるのに対し、実施例1の輝度は0.78であり、7.6%改善した(以下、この値を「耐久改善率」とする)。
実施例2及び実施例3に対しても同様の測定を行った。実施例1〜3の結果を表1にまとめる。
1 基板
2 陽極
3 ホール注入層
4 ホール輸送層
5 電子ブロック層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
2 陽極
3 ホール注入層
4 ホール輸送層
5 電子ブロック層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
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